説明

靴本体とインソールとの組み合わせから成る外反母趾対応靴

【課題】外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを軽減する外反母趾対応靴を提供する。
【解決手段】第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所を圧迫摩擦しない弾性甲皮構成材料17、18で製造し、第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分を覆うウェスト部分を非弾性構成体で製造した靴本体及び近位部横アーチ及び遠位部横アーチに対応するボールジョイント部、並びに内側アーチに対応する箇所をクッション作用がある盛り高構造にしたインソール19と組合せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外反母趾対応靴に関する。より詳細に述べれば、本発明は、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを軽減する靴本体と前記の効果に寄与する構造を有するインソールとの組合せから成る外反母趾対応靴に関する。
【背景技術】
【0002】
外反母趾の主原因は足に合わない靴を履くことであるが、家族性に発症する傾向がある。特に女性の靴がファッション性を優先して足に合わないことが多いため、外反母趾は女性に多く発症する。外反母趾になると、第1中足骨底部と足根骨から成る足根中足関節が内反するため、開帳足やアーチの低下を惹起する。親指の小指側への転移が起きるため、基節骨、中節骨及び末節骨で形成されている親指の指先は、小指の方を向く。その結果、第1中足骨頭部と母趾基節骨からなる中足指節関節が足の内側に隆起する。このふくらみの下には滑液包がある。滑液包は靴との摩擦で刺激を受けるため、こぶの下で腫れて次第に大きくなる。このような状態を腱膜瘤という。靴の摩擦による腱膜瘤の刺激が続くと、骨も増殖や滑液包の腫れを増大させ、ますます足の幅が広くなり、親指と小指の付け根が形成する、いわゆる横アーチが平で幅広くなり、横アーチが崩れた状態になる。腱膜瘤の痛みや外反母趾が重度に進行すると外科手術で足指の位置を矯正しなければならない。従って、外反母趾の痛みを軽減し、進行を遅らせるために、腱膜瘤を保護するパッドをつけたり、患部の圧迫を軽減するように形成された靴が提案されてきた。
【0003】
特許文献1は、靴が屈曲する趾の付け根関節部分近くの甲皮と内底を伸縮可能な構造又は素材を用い、その下は弾性変形する素材を用い、この弾性素材に横方向から交互に溝を入れる、又は裏と表から深い溝を入れることでアコ−ディオン状にするか、弾性素材が網目状になるように貫通する切込みを入れるか、或いはこれを分割した靴底にすることで足の形状変化に合わせて伸縮できるようにしたことを特徴とする靴を開示している。この従来技術の靴は、歩行運動中最も負荷がかかる底部分の踏みつけ部周辺の内底に伸縮する構造若しくは素材を使用し、中底・外底は爪先の荷重を支える部分と踵の荷重を支える部分に2分割以上に分割し、最大3cmの伸縮を可能としてものである。即ち、歩行運動中最も負荷がかかる底を少なくとも2個以上に分割したので、底の強度が不十分になる。さらに、外反母趾の痛みを軽減したり、進行を押さえるには、親指と小指が形成する横アーチが崩れないようにすることが重要である。この従来技術のように、歩行中靴の長さを長くした場合、一時的には効果があっても、経時的に横アーチが崩れて足幅が広くなり外反母趾を悪化させることになる。
【0004】
特許文献2は、甲皮における親指と小指の外側箇所にシャーリングを設けると共に、そのシャーリングの内側にゴムを用いた素材を重ね合わせたことを特徴とするゴルフシューズを開示している。特許文献2は、甲皮における親指と小指の外側箇所にシャーリングを有して外反母趾を防ぐことができると共に、ゴルフをする場合などは、そのシャーリングの過度な伸び過ぎを抑えて,足の指に対し適度な抵抗を与えて支障なく踏ん張れるようにすることが、極めて良好なフィット感を得られるゴルフシューズ等の靴を提供することを目的とすると記載している([0003])。即ち、特許文献2が記載する靴は、本来ゴルフシューズであって、第1義的目的は、シャーリングの過度な伸び過ぎを抑えて,足の指に対し適度な抵抗を与えて支障なく踏ん張れるようにすることである。他方、外反母趾の痛みを軽減するには、第1趾の第1中足骨の内反箇所に当たる靴の素材が抵抗なく伸縮することであり、また外反母趾の進行を押さえるには、親指と小指が形成する横アーチが崩れないような構造にすることが重要である。従って、この従来技術も、外反母趾の痛みを軽減し且つ外反母趾の進行を押さえることはできない。
【0005】
特許文献3及び4に記載された従来技術は、共に靴の中敷の構造に関するものである。外反母趾の痛みを軽減し且つその進行を押さえるには、中敷(インソール)の構造を改良しただけでは不十分で、甲皮の外装材及び内装材の改良と一体的に行うことが必要である。従って、この従来技術も、外反母趾の痛みを軽減し且つ外反母趾の進行を押さえることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3119977号公報
【特許文献2】実用新案登録第3010154号公報
【特許文献3】特開2001−353005号公報
【特許文献4】特開平9−191904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする第1の課題は、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを軽減する外反母趾対応靴を提供することである。
【0008】
発明が解決しようとする第2の課題は、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みの軽減効果に寄与する解剖学的構造を有するインソールを提供することである。
【0009】
発明が解決しようとする第3の課題は、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを軽減する材料を策定し、提供することである。
【0010】
発明が解決しようとする別の課題及び利点は以下逐次明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するための手段を策定するために外反母趾の原因と症状を検討した。前述したように,外反母趾は、末節骨、中節骨及び基節骨から成る指骨、及び中足骨から構成されている母趾が、中足指関節で小趾側に外転する状態で、常に外反足を伴って母趾外転筋が過度に伸張されるため足底方向へも転移する。従って、内方に突出した第1中足骨骨頭は、靴のために圧迫摩擦されて、粘液嚢や仮骨の形成をみることもある。外反母趾の原因は、足に合わない靴をはくことであるが、家族性に発症する傾向がある。足には縦アーチと横アーチの2つのアーチがある。縦アーチは、いわゆる「土踏まず」で、横アーチは、母趾の付け根、小指の付け根、及び踵の3点で体重を支えている。正常な足は、筋肉や靱帯などで支えられ、アーチの形状と機能が保持されている。女性の靴のようにファッション性を優先して足に合わない靴を履いていると、アーチを支えている靱帯や筋肉が緩んできて支える力が弱くなり、アーチが下方に崩れて平になり、さらにアーチが崩れると、中足骨は徐々に横に広がって前述した外反母趾になる。
【0012】
かくて上記課題は下記の各項に記載した手段により解決される。
1.第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所を圧迫摩擦しない弾性甲皮構成材料で製造し、第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分を覆うウェスト部分を非弾性構成体で製造した靴本体、及び第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチに対応するボールジョイント部をクッション作用がある盛り高構造にし、踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチに対応する箇所をクッション作用がある盛り高構造にしたインソールとの組合せから成る外反母趾対応靴。
【0013】
2.前記1項において、弾性甲皮構成材料は、ストレッチポリウレタン合皮又はストレッチ人工皮革と、スパンデックス、ストレッチサンドイッチメッシュ、ニット素材又はスウェット素材との組合せとする。
【0014】
3.前記1項において、非弾性構成体は、サイドラインの配置またはステッチによるものとする。
【0015】
4.さらに、前記1〜3のいずれか1項において、踵骨外側、立方骨及び第4及び第5中足骨で形成されている外側縦アーチに対応する箇所にクッション作用をもたせる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した発明により下記に例示した効果を奏功する。
1.第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所を圧迫摩擦しない弾性甲皮構成材料で製造したので、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを抑制する効果がある。
【0017】
2.第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分を覆うウェスト部分を非弾性構成体で製造したので、ウェスト部分の甲皮が覆う第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分がしっかりとホールドされ、靴の中で足が前方に滑るのが防止され、指先が押しつけられて足指が窮屈になるのが抑制され、それが無いと外反母趾による痛みが大きくなるのを防止することができる。
【0018】
3.インソールにおいて、第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチに対応するボールジョイント部をクッション作用がある盛り高構造にしたので、ボールジョイント部を下から持ち上げ、外反母趾に最も係わりがある横アーチが崩れ、母趾が外反するのを防止する効果がある。
【0019】
4.運動不足、加齢或いは硬い床面の上で長時間靴を履くことにより、踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチが崩れ、足にかかる衝撃力が足全体に分散され、第1〜第5中足骨及びその先につながる基節骨、中節骨及び末節骨から成る指骨にまで波及し、特に基節骨、中節骨及び末節骨から成る指骨は上方へ持ち上がった状態になり外反母趾に悪影響を与えるが、インソールにおいて踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチに対応する箇所をクッション作用がある盛り高構造にすることにより、それを防止或いは抑制する効果がある。
【0020】
請求項2に記載した発明により、外反母趾対応靴の靴本体の第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所をストレッチポリウレタン合皮又はストレッチ人工皮革と、スパンデックス、ストレッチサンドイッチメッシュ、ニット素材又はスウェット素材との組合せから成る弾性甲皮構成材料で製造したので当該箇所を圧迫摩擦せず、外反母趾による痛みを抑制し、且つストレッチポリウレタン合皮又はストレッチ人工皮革と、スパンデックス、ストレッチサンドイッチメッシュ、ニット素材又はスウェット素材との組合せから成る材料の靴材料として新たな用途が拡大される。
【0021】
請求項3に記載した発明により、外反母趾対応靴の靴本体の第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分を覆うウェスト部分に非弾性構成体としてサイドラインを配置またはステッチを入れたので、当該箇所を十分ホールドし、第1〜第5中足骨及びその先につながる基節骨、中節骨及び末節骨から成る指骨を前方へ移行するのを防止する効果がある。
【0022】
アーチは内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチの全てのアーチが正常な構造を維持することにより、足の機能及び健康が保持される。いずれか一つのアーチが崩れても全体のバランスが崩れる。外側縦アーチが外側に崩れると足が外反状態になり、逆に内側に崩れると足が内反状態になり、内側縦アーチと横アーチのバランス崩れる。請求項4に記載した発明により、踵骨外側、立方骨及び第4及び第5中足骨で形成されている外側縦アーチに対応する箇所を盛り高構造してクッション作用をもたせることにより、上述した欠陥を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1−1】靴の中の正常な足の骨格の状態の一部を示す概念図である。
【図1−2】靴の中の外反母趾に罹患した足の骨格の状態の一部を示す概念
【図1−3】本発明の1実施例に係わる靴本体の一部の構成材料と足の骨格との関係を示す概念図である。
【図2】図1−3において点線で示したウェスト部分を胛皮及び底を付けた靴で示した斜視図である。
【図3】本発明の1実施例に係わる靴本体の一部の構成材料を示す要部断面図である。
【図4−1】図3で示したメッシュ素材の拡大断面図である。
【図4−2】図3で示したメッシュ素材の拡大上面図である。
【図5】本発明の1実施例に係わる靴本体の図3で示した以外の構成材料を示す要部断面図である。
【図6】本発明の1実施例に係わるインソールの側面図である。
【図7】本発明の1実施例に係わるインソールの上面図である。
【図8】本発明の1実施例に係わるインソールと足の骨格の関係を示した透視斜視図である。
【図9】本発明の1実施例に係わるインソールと足の骨格の関係を示した透視上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明を実施するための形態を実施例をもって説明する。
【実施例】
【0025】
図1−1は、靴の中の正常な足の骨格の状態の一部を示す概念図である。図1−1に示すように、正常な足の骨格は、第1中足骨1、第2中足骨2、第3中足骨3、第4中足骨4及び第5中足骨5からなる全ての中足骨、及び爪先に向かって第1中足骨1、第2中足骨2、第3中足骨3、第4中足骨4及び第5中足骨5につながる基節骨、中節骨及び末節骨から形成されている第1指骨6、第2指骨7、第3指骨8、第4指骨9及び第5指骨10の、それぞれが、ほぼ真っ直ぐな状態で靴の中に収まっている。
【0026】
然しながら、家族因に大きく起因するが、デザイン重視の足に合わない窮屈な靴を長時間履いている間に、図1−2に示したような外反母趾になる。即ち、末節骨、中節骨及び基節骨から成る第1指骨6、及び第1中足骨1から構成されている母趾が、中足指関節で指骨10側に外転し、常に外反足を伴って母趾外転筋が過度に伸張されるため足底方向へも転移する。従って、内方に突出した第1中足骨1の骨頭11は、靴のために圧迫摩擦されて、粘液嚢や仮骨の形成をみることもある。重症になると、第1中足骨1の骨頭11が内反、即ち、内側に突出し、第1指骨6が小趾側、即ち第5指骨10へ外反し、さらに進行すると第1指骨6が第2指骨7の上に乗るようになる。外反母趾に罹患した足の自覚症状としては、第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16が靴の胛皮により圧迫摩擦され痛くなる。
【0027】
そこで、図1−3に示したように、第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16を圧迫摩擦しない弾性甲皮構成材料で製造した。図3は、本発明の1実施例に係わる靴本体の一部の構成材料を示す要部断面図である。図3において、17はストレッチ合皮、18は伸縮性メッシュ素材、19はインソール、20は中底、21は靴本底である。図4は、図3で示したメッシュ素材の拡大図で、図4−1は図3で示したメッシュ素材の拡大断面図、図4−2は図3で示したメッシュ素材の拡大上面図である。メッシュ素材18は、図4−1の断面図に示したように、厚さ方向では、蛇腹状スリット22が形成されていて、横方向に自由に伸縮し、また図4−2の上面図に示したように、長手方向では、上から観察すると無数の円形状貫通孔23が穿設されていて長手方向に自由に伸縮する構造になっている。従って、メッシュ素材18は、全体として3次元方向に自由に伸縮する機能を有している。従って、第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16を、図3に示しストレッチ合皮17と3次元方向に伸縮性のあるメッシュ素材18から構成された弾性甲皮構成材料で製造したので、当該箇所を圧迫摩擦することがなく、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを抑制する効果がある。実施例では、ストレッチ合皮17として帝人コードレ株式会社製の商品名「FEEDOM DX」のポリウレタン合皮を使用したが、それに限定されず、たとえば、株式会社志摩商事の商品名「ウイストレッチ」のストレッチポリウレタン合皮、楓澤有限公司製の商品名「断力起毛上抗虹PU」のストレッチ人工皮革等を使用することもできる。また、実施例では、18の伸縮性メッシュ素材として、シンメン株式会社製の商品名「WラッセルPU100」のストレッチサンドイッチメッシュを使用したが、その他クラレトレ−ディング製の商品名「TG−BUCK」のスパンデックス等を使用したが、当然これらに限定されず、市販されているニット素材や、スウェット素材等を使用できることは当業者のよく理解するところである。
【0028】
ところで、外反母趾の痛みの緩和或いは進行を抑制するには、第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16を、図3に示しストレッチ合皮17と3次元方向に伸縮性のあるメッシュ素材18から構成された弾性甲皮構成材料で製造しただけでは不十分である。即ち、第1中足骨1の中央部分、第2中足骨2の中央部分、第3中足骨3の中央部分、第4中足骨4の中央部分及び第5中足骨5の中央部分を覆うウェスト部分(図2の矢印部分)をしっかりとホールドし、靴の中で足、特に第1〜第5指骨が前方に滑るのを防止し、指先が押しつけられて足指が窮屈になるのを抑制する必要がある。そこで、図1−3の点線で囲った部分(図2の矢印部分)にサイドラインを配置するかまたはステッチを入れることにより、当該箇所を十分ホールドし、第1〜第5中足骨及びその先につながる基節骨、中節骨及び末節骨から成る指骨を前方へ移行するのを防止する効果がある。
【0029】
上述した第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16以外の胛皮は、通常使用されている非伸縮性の胛皮を使用した。図5は非伸縮性の胛皮の一例の断面図である。図5において、19、20及び21は図3におけるそれらと同じ内容である。24は、通常製靴業界で使用されているポリウレタン合皮、25は通常通常製靴業界で使用されているナイロン素材である。このように、第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15、及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16を、図3に示しストレッチ合皮17と3次元方向に伸縮性のあるメッシュ素材18から構成された弾性甲皮構成材料で製造し、第1中足骨1の中央部分、第2中足骨2の中央部分、第3中足骨3の中央部分、第4中足骨4の中央部分及び第5中足骨5の中央部分を覆うウェスト部分にサイドラインを配置するかまたはステッチを入れることにより当該箇所をホールドし、靴の中で足、特に第1〜第5指骨が前方に滑るのを防止し、指先が押しつけられて足指が窮屈になるのを抑制し、且つ第1中足骨1の骨頭11から第1基節骨12を含む箇所15及び第5中足骨5の骨頭13から第5基節骨14を含む箇所16以外の胛皮は通常使用されている非伸縮性の胛皮で製造することにより、外反母趾に罹患している部位の痛みを抑制するともに、外反母趾を進行させたり、その痛みを拡大する素因を軽減することができる。非伸縮性の胛皮としては、南亜有限公司の商品名「NAPPA PVC」のPVC合皮、南亜有限公司の商品名「B14紋耐水PU」のPU合皮、裏材として立木有限公司の商品名「K230 NYLON」等を使用しったが、当然これらに限定されないことは当業者のよく理解するところである。
【0030】
ところで、外反母趾に罹患している部位の痛みを抑制するともに、外反母趾を進行させたり、その痛みを拡大する素因を軽減するには、靴本体の構造や材料を改良しただけでは不十分である。理想的には、靴本体の構造や材料を改良し、さらに、インソールの構造を改良し、それらを組合せることによって、外反母趾に罹患している部位の痛みの抑制、外反母趾に罹患している部位の痛みを進行させたり、拡大する素因の軽減作用を相乗的に向上させることができる。
【0031】
図6は、本発明の1実施例に係わるインソールの側面図、図7は本発明の1実施例に係わるインソールの上面図、図8は本発明の1実施例に係わるインソールと足の骨格の関係を示した透視斜視図、及び図9は本発明の1実施例に係わるインソールと足の骨格の関係を示した透視上面図である。図6に示したように、本発明の1実施例に係わるインソール19は、第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチに対応するボールジョイント部26をクッション作用がある盛り高構造にし、踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチに対応する箇所27をクッション作用がある盛り高構造にした。ボールジョイント部26の上面構造は図7〜9に一例を示したように円形である。然しながら、ボールジョイント部26は、年齢、性別、足の形状等諸要素によりバラツキがあるので、たとえば、図7の点線37で示したように楕円形にしてもよい。そのことにより、円形26より広範な部分のクッションを補強することができる。図8は本発明の1実施例に係わるインソールと足の骨格の関係を示した透視斜視図である。また、図9は本発明の1実施例に係わるインソールと足の骨格の関係を示した透視上面図である。図8及び図9に示したように、ボールジョイント部26は、第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチを下方から補強して横アーチが崩れるのを防止している。
【0032】
図9に示したように、第1(内側)楔状骨28、第2(中間)楔状骨29及び第3(外側)楔状骨30、立方骨31、舟状骨32,踵骨33,距骨34,及び距骨滑車35等で形成されている内側アーチに対応する箇所27をクッション作用がある盛り高構造にした。内側アーチに対応する箇所27の盛り高構造の断面形状は、いわゆる「土踏まず」の逆形状にして土踏まずを下から支え、土踏まずが形成する内側アーチが崩れるのを防止できるような形状にする。然しながら、第1(内側)楔状骨28、第2(中間)楔状骨29及び第3(外側)楔状骨30、立方骨31、舟状骨32,踵骨33,距骨34,及び距骨滑車35等で形成されている内側アーチに対応する箇所27は、年齢、性別、足の形状等諸要素によりバラツキがあるので、たとえば、図7の点線36で示したように楕円形にしてもよい。そのことにより、円形26より広範な部分のクッションを補強することができる。
【0033】
図7において38は外側縦アーチである。外側縦アーチ38は、踵骨33−立方骨31−第5中足骨5から形成されていて、歩行時や体躯を左右に移動或いは動かすとき、体重を支え、重心の移動を速やかに行う機能を有していて、外側縦アーチ38が崩れると、横アーチ及び内側縦アーチのバランスが崩れる。従って、外側縦アーチに対応する箇所37を盛り高構造にしてクッション作用をもたせることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は下記に例示する産業上の利用可能性がある。
1.第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所を圧迫摩擦しない弾性甲皮構成材料で製造し、第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分を覆うウェスト部分を非弾性構成体で製造した靴本体、及び第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチに対応するボールジョイント部をクッション作用がある盛り高構造にし、踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチに対応する箇所をクッション作用がある盛り高構造にしたインソールとの組合せから成る外反母趾対応靴として、靴本体とインソールとを組合せたので、外反母趾による痛みのある部分と靴の胛皮との接触を回避し、もって外反母趾に罹患している人の痛みを抑制し、ウェスト部分を非弾性構成体で製造したので、ウェスト部分の甲皮が覆う第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分がしっかりとホールドされ、靴の中で足が前方に滑るのが防止され、指先が押しつけられて足指が窮屈になるのが抑制され、それが無いと外反母趾による痛みが大きくなるのを防止することができ、インソールにおいて、第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチに対応するボールジョイント部をクッション作用がある盛り高構造にしたので、ボールジョイント部を下から持ち上げ、外反母趾に最も係わりがある横アーチが崩れ、母趾が外反するのを防止し、運動不足、加齢或いは硬い床面の上で長時間靴を履くことにより、踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチが崩れ、足にかかる衝撃力が足全体に分散され、第1〜第5中足骨及びその先につながる基節骨、中節骨及び末節骨から成る指骨にまで波及し、特に基節骨、中節骨及び末節骨から成る指骨は上方へ持ち上がった状態になり外反母趾に悪影響を与えるが、インソールにおいて踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチに対応する箇所をクッション作用がある盛り高構造にすることにより、それを防止或いは抑制することができ、ほぼ理想的な外反母趾対応靴とインソールの組合わせが実現され、当業界に寄与する。
【0035】
2.外反母趾対応靴の靴本体の第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所をストレッチポリウレタン合皮又はストレッチ人工皮革と、スパンデックス、ストレッチサンドイッチメッシュ、ニット素材又はスウェット素材との組み合わせから成る弾性甲皮構成材料で製造したので当該箇所を圧迫摩擦せず、外反母趾による痛みを抑制し、且つストレッチポリウレタン合皮又はストレッチ人工皮革と、スパンデックス、ストレッチサンドイッチメッシュ、ニット素材又はスウェット素材との組み合わせから成る材料の靴材料として新たな用途が拡大される。
【符号の説明】
【0036】
1 第1中足骨
2 第2中足骨
3 第3中足骨
4 第4中足骨
5 第5中足骨
6 第1指骨
7 第2指骨
8 第3指骨
9 第4指骨
10 第5指骨
11 第1中足骨骨頭
12 第1基節骨
13 第5中足骨5の骨頭
14 第5基節骨
15 第1基節骨12を含む箇所
16 第5基節骨14を含む箇所
17 ストレッチ合皮
18 伸縮性メッシュ素材
19 インソール
20 中底
21 靴本底
22 蛇腹状スリット
23 円形状貫通孔
24 ポリウレタン合皮
25 ナイロン素材
26 ボールジョイント部
27 内側アーチに対応する箇所
28 第1(内側)楔状骨
29 第2(中間)楔状骨
30 第3(外側)楔状骨
31 立方骨
32 舟状骨
33 踵骨
34 距骨
35 距骨滑車
36 点線
37 点線
38 外側縦アーチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1中足骨骨頭から第1基節骨を含む箇所及び第5中足骨骨頭から第5基節骨を含む箇所を圧迫摩擦しない弾性甲皮構成材料で製造し、第1中足骨中央部分、第2中足骨中央部分、第3中足骨中央部分、第4中足骨中央部分及び第5中足骨中央部分を覆うウェスト部分を非弾性構成体で製造した靴本体、及び第1楔状骨、第2楔状骨及び第3楔状骨の3つの楔状骨と第3楔状骨の外側にある立方骨から形成される近位部横アーチ及び第1〜第5中足骨の5つの中足骨から形成される遠位部横アーチに対応するボールジョイント部をクッション作用がある盛り高構造にし、踵骨内側、舟状骨、第1楔状骨及び第1中足骨で形成されている内側アーチに対応する箇所をクッション作用がある盛り高構造にしたインソールとの組合せから成る外反母趾対応靴外反母趾対応靴。
【請求項2】
前記弾性甲皮構成材料が、ストレッチポリウレタン合皮又はストレッチ人工皮革と、スパンデックス、ストレッチサンドイッチメッシュ、ニット素材又はスウェット素材との組合せである請求項1記載の外反母趾対応靴。
【請求項3】
前記非弾性甲皮構成材料が、サイドライン又はステッチによる請求項1記載の外反母趾対応靴。
【請求項4】
踵骨外側、立方骨及び第4及び第5中足骨で形成されている外側縦アーチに対応する箇所を盛り高構造にしてクッション作用をもたせた請求項1〜3のいずれか1項に記載された外反母趾対応靴。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111469(P2013−111469A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277644(P2011−277644)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【特許番号】特許第5088597号(P5088597)
【特許公報発行日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【出願人】(000167820)広島化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】