説明

鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置

【課題】後輪に装着される後輪ブレーキと、前輪に装着される前輪ブレーキと、乗員の操作によって後輪ブレーキおよび前輪ブレーキを作動せしめることが可能なブレーキ操作子と、ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダとを備える鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置において、組付け工数およびエア抜き作業工数の低減を図る。
【解決手段】マスタシリンダ36からの液圧出力に応じて作動するスレーブシリンダ37と、該スレーブシリンダ37の出力を機械的に後輪ブレーキに伝達する機械的伝動部材67と、マスタシリンダ36から出力される液圧を前輪ブレーキ側に伝達する液圧伝達経路とを備え、マスタシリンダ36およびスレーブシリンダ37が、同一のブロック状のケーシング35A内に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪に装着される後輪ブレーキと、前輪に装着される前輪ブレーキと、乗員の操作によって前記後輪ブレーキおよび前記前輪ブレーキを作動せしめることが可能なブレーキ操作子と、該ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダとを備える鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
後輪ブレーキを主として作動せしめるためのブレーキ操作子を操作するのに応じてマスタシリンダを作動させ、このマスタシリンダから出力される液圧を、前輪および後輪のブレーキシリンダに設けられたポットにそれぞれ作用せしめ、前輪および後輪を連動して制動するようにした連動ブレーキ装置が、特許文献1等によって知られており、この特許文献1では、後輪側のブレーキ液圧が所定圧以上となったときに減圧する減圧弁を後輪側のマスタシリンダと一体に設けることで、後輪のブレーキシリンダに供給される液圧を出力する部分のコンパクト化を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2890215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1で開示されたものでは、後輪側マスタシリンダから後輪のブレーキシリンダのポットまでの液圧経路が長いので、組付け工数や、エア抜き作業の工数が多くかかることがあり、組付け性の向上や、エア抜き作業工数の工数低減が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、組付け工数およびエア抜き作業工数の低減を図ることができるようにした鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、後輪に装着される後輪ブレーキと、前輪に装着される前輪ブレーキと、乗員の操作によって前記後輪ブレーキおよび前記前輪ブレーキを作動せしめることが可能なブレーキ操作子と、該ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダとを備える鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置において、前記マスタシリンダからの液圧出力に応じて作動するスレーブシリンダと、該スレーブシリンダの出力を機械的に前記後輪ブレーキに伝達する機械的伝動部材と、前記マスタシリンダから出力される液圧を前記前輪ブレーキ側に伝達する液圧伝達経路とを備え、前記マスタシリンダおよび前記スレーブシリンダが、同一のブロック状のケーシング内に設けられることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記ブレーキ操作子の操作に対して前記前輪ブレーキの作動を遅らせるディレイバルブが、前記液圧伝達経路の途中に介在して前記ケーシングに設けられることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記スレーブシリンダ側に伝達される前記マスタシリンダの出力が所定値を超えたときに前記マスタシリンダおよび前記スレーブシリンダ間を遮断する遮断弁が前記ケーシングに設けられることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ケーシングの下方に前記ブレーキ操作子が配置され、前記機械的伝動部材が車両長手方向に延びるように配置され、前記スレーブシリンダが前記マスタシリンダの作動軸線と直交する軸線を有して前記ケーシングに設けられることを第4の特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ブレーキ操作子がブレーキペダルであり、前記機械的伝動部材がロッドであることを第5の特徴とする。
【0011】
なお実施の形態のブレーキペダル32が本発明のブレーキ操作子に対応する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1〜第5の特徴によれば、ブレーキ操作子の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダと、マスタシリンダからの液圧出力に応じて作動するとともにその出力を機械的伝動部材によって後輪ブレーキ側に機械的に伝達するスレーブシリンダとが、同一のブロック状のケーシング内に設けられるので、マスタシリンダおよびスレーブシリンダの組付けが簡単であり、後輪ブレーキ側の油圧配管がないのでエア抜き経路が短くなってエア抜き工数の低減が可能となる。
【0013】
また特に本発明の第2の特徴によれば、ディレイバルブがマスタシリンダおよびスレーブシリンダとともにケーシングに設けられるので、マスタシリンダ、スレーブシリンダおよびディレイバルブをコンパクトに纏めることができる。
【0014】
また特に本発明の第3の特徴によれば、遮断弁がケーシングに設けられるので、よりコンパクトになる。
【0015】
さらに特に第4の特徴の構成によれば、マスタシリンダからスレーブシリンダを経て機械的伝動部材に至る伝達経路の伝達効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の自動二輪車の側面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す一部切欠き側面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】実施例2の図3に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1について図1〜図3を参照しながら説明すると、先ず図1において、この鞍乗り型車両は自動二輪車であり、車体フレームFは、フロントフォーク11を操向可能に支承するヘッドパイプ12と、該ヘッドパイプ12から後下がりに延びるメインフレーム13と、該メインフレーム13の後部から下方に垂下されるピボットプレート14と、前記メインフレーム13の後部に連設されて後上がりに延びる左右一対のリヤフレーム15…とを備え、前記フロントフォーク11の下端に前輪WFが軸支され、フロントフォーク11の上部にはバー状の操向ハンドル16が連結される。
【0019】
前記メインフレーム13の下方には、たとえばシリンダ軸線をわずかに前上がりとして車体フレームFに搭載されるエンジンEが配置される。また前記ピボットプレート14には、スイングアーム17の前端部が上下に揺動可能に支承されており、スイングアーム17の後端に後輪WRが軸支され、車体フレームFにおけるリヤフレーム15…およびスイングアーム17間にはリヤクッション18が設けられる。
【0020】
前記エンジンEのクランクケース19には変速機(図示せず)が内蔵されており、その変速機の出力は後輪WRに伝達され、後輪WRの上方には、タンデム型である乗車用シート21が配置される。
【0021】
車体フレームFには、該車体フレームF、前記エンジンEの一部を覆う合成樹脂製の車体カバー22が取付けられており、この車体カバー22は、メインフレーム13の左右両側に配置されるフロントサイドカバー23…と、ライダーの脚部を前方から覆うようにして両フロントサイドカバー23…の前部に連なるレッグシールド24…と、ヘッドパイプ12を前方から覆うようにして両レッグシールド24…に連なるフロントトップカバー25と、ヘッドパイプ12を後方側から覆うとともにメインフレーム13を上方から覆うようにしてフロントトップカバー25に連なるメインフレームトップカバー26と、前記両フロントサイドカバー23…の下部に連なるアンダーカバー27…と、上部に前記乗車用シート21が配設されるリヤサイドカバー28とで構成される。
【0022】
前記ピボットプレート14には、前記乗車用シート21の後部に座った同乗者の足を載せるピリオンステップ29が設けられるステップホルダ30が固着される。
【0023】
ところで前記前輪WFには、液圧の作用に応じて作動するディスクブレーキである前輪ブレーキBFが装着され、前記後輪WRには、レバー31を回動作動せしめることで作動するドラムブレーキである後輪ブレーキBRが装着され、前記ピボットプレート14の下部には、後輪ブレーキBRを作動せしめるとともに前輪ブレーキBFを連動して作動せしめるブレーキ操作子であるブレーキペダル32が回動可能に取付けられる。
【0024】
図2において、前記ステップホルダ30には、ブロック状のケーシング35Aが取付けられる。すなわちケーシング35Aが備える複数の取付け孔90…に挿通されるボルト91…でケーシング35Aはステップホルダ30に取付けられる。このケーシング35Aに、該ケーシング35Aの下方に配置される前記ブレーキペダル32の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダ36と、該マスタシリンダ36からの液圧出力に応じて作動するスレーブシリンダ37と、ブレーキペダル32の操作に対して前記前輪ブレーキBFの作動を遅らせるディレイバルブ38と、後輪ブレーキBR側に伝達される前記マスタシリンダ36の出力が所定値を超えたときに前記マスタシリンダ36および前記スレーブシリンダ37間を遮断するようにして前記マスタシリンダ36および前記スレーブシリンダ37間に介在する遮断弁39とが設けられる。
【0025】
図3を併せて参照して、前記マスタシリンダ36は、上端を閉じて上下方向に延びるとともに下端を開放して前記ケーシング35Aに設けられる第1シリンダ孔41に、第1シリンダ孔41の上端閉塞部との間に出力液圧室42を形成するマスタピストン43が摺動自在に嵌合されるとともに、第1シリンダ孔41の上端閉塞部およびマスタピストン43間に第1ばね44が介設されて成るものである。
【0026】
前記マスタピストン43の中間部外周には第1シリンダ孔41の内周との間に環状液室45を形成する環状凹部43aが設けられおり、該環状凹部43aを軸方向両側から挟む位置で前記マスタピストン43の外周には環状である一対のカップシール46,47が装着される。而して両カップシール46,47のうち前記環状液室45および出力液圧室42間に介在するカップシール47は環状液室45から出力液圧室42へのブレーキ液の流通を許容する。
【0027】
またケーシング35Aには、前記マスタピストン43が図3で示すように後退位置(下限位置)に戻った状態で出力液圧室42に通じるリリーフ孔48と、前記環状液室45に常時通じる補給孔49とが設けられており、リリーフ孔48および補給孔49に常時通じるようにして前記ケーシング35Aの外面に取付けられる接続管50には、図示しないリザーバに連なるホース51が接続される。
【0028】
また前記マスタピストン43には、上下に延びる入力ロッド52の一端部に設けられる球状頭部52aが首振り可能に連接されており、この入力ロッド52およびケーシング35A間には、二重に配置される第1および第2ブーツ53,54が設けられる。また前記ブレーキペダル32の後端部は支軸55を介して前記ステップホルダ30の下部に回動可能に支承されており、該ブレーキペダル32の後端部に一体に連なって後方に延びる連結腕部56の先端が連結ピン57を介して前記入力ロッド52の他端部に連結され、ブレーキペダル32を踏み込むことでマスタピストン43が出力液圧室42の容積を縮小する側に押し上げられ、それによって出力液圧室42から液圧が出力されることになる。
【0029】
スレーブシリンダ37は、マスタシリンダ36の作動軸線と直交する方向に作動することを可能としてケーシング35Aの上部に配設されており、一端に端壁58aを有するようにして第1シリンダ孔41の軸線と直交する軸線を有してケーシング35Aの上部に設けられる第2シリンダ孔58に、前記端壁58aとの間に入力液圧室59を形成するスレーブピストン60が摺動自在に嵌合されるとともに、第2シリンダ孔58の他端開口部に止め輪61を介して支持されるリング板状のリテーナ62およびスレーブピストン60間に第2ばね63が介設されて成るものである。
【0030】
前記スレーブピストン60の外周には第2シリンダ孔58の内周に摺接する環状のカップシール64が装着される。またスレーブピストン60には、前後に延びる出力ロッド65の後端の球状頭部65aが首振り可能に連接されており、この出力ロッド65およびケーシング35A間には第3ブーツ66が設けられる。
【0031】
前記出力ロッド65の前端部には、スレーブシリンダ37の出力を機械的に後輪ブレーキBRに伝達する機械的伝動部材であるロッド67(図1および図2参照)の一端が連結されており、このロッド67は自動二輪車の前後方向に延びるようにして出力ロッド65から後方に延出され、該ロッド67の他端が後輪ブレーキBRのレバー31に連結される。
【0032】
したがって入力液圧室59への液圧作用によって、スレーブシリンダ37のスレーブピストン60が入力液圧室59の容積を拡大する側に移動して前記出力ロッド65が前進作動すると、ロッド67を介して前記レバー31が回動駆動されることにより後輪ブレーキBRがブレーキ作動する。
【0033】
ディレイバルブ38は、前記マスタシリンダ36から出力される液圧を前記前輪ブレーキBF側に伝達する液圧伝達経路68に設けられて前記ケーシング35Aに配設されるものであり、前記スレーブシリンダ37の第2シリンダ孔58と平行な軸線を有して前記ケーシング35Aの上部に設けられる第1収納孔70に、第1ピストン71、環状の第1シート部材72、第1端壁部材73および第1弁ばね74が、収納、配設されて成る。
【0034】
第1収納孔70は、第2シリンダ孔58の軸線と平行な軸線を有して一端を出力液圧室42に通じさせる小径孔部70aと、該小径孔部70aよりも大径に形成されて小径孔部70aの他端に一端を同軸に連ならせた大径孔部70bとから成り、第1端壁部材73は、前記小径孔部70aおよび前記大径孔部70b間に形成される段部70cとの間に第1中間液室75を形成するようにして第1収納孔70における大径孔部70bの他端部に液密に嵌合、固定される。また前記段部70cには、マスタシリンダ36の出力液圧室42に通じる環状の凹部76が設けられる。
【0035】
第1ピストン71は、第1収納孔70の小径孔部70aに摺動可能に嵌合される小径部71aと、該小径部71aに同軸に連なって第1端壁部材73に摺動自在に嵌合されるガイド軸部71bとを一体に有する。また第1シート部材72は、前記段部70cの凹部76を閉鎖可能に形成されており、第1シート部材72および第1端壁部材73間に、第1シート部材72を段部70c側に押しつける第1弁ばね74が縮設される。
【0036】
而して出力液圧室42の液圧が第1ピストン71の小径部71aに作用すると、第1ピストン71は小径部71aで第1シート部材72を段部70cから離反させて凹部76を第1中間液室75に通じさせるように作動することになり、第1弁ばね74のばね力に抗して第1シート部材72が段部70cから離反したときに出力液圧室42の液圧が第1中間液室75に作用することになり、ブレーキペダル32の操作に対して第1中間液室75からの液圧出力が遅れることになる。
【0037】
前記液圧伝達経路68は、第1中間液室75と、第1中間液室75および前輪ブレーキBF間を結ぶホース等の管路77を含んでマスタシリンダ36および前輪ブレーキBF間に設けられるものであり、前記管路77の途中には開閉弁78が設けられる。
【0038】
遮断弁39は、前記マスタシリンダ36の出力液圧室42および前記スレーブシリンダ37の入力液圧室59間に設けられて前記ケーシング35Aに配設されるものであり、前記マスタシリンダ36の第1シリンダ孔41と平行な軸線を有して前記ケーシング35Aに設けられる第2収納孔80に、第2ピストン81、環状の第2シート部材82、第2端壁部材83および第2弁ばね84が、収納、配設されて成る。
【0039】
第2収納孔80は、第1シリンダ孔41の軸線と平行な軸線を有して一端を入力液圧室59に通じさせる小径孔部80aと、該小径孔部80aよりも大径に形成されて小径孔部80aの他端に一端を同軸に連ならせた大径孔部80bとから成り、第2端壁部材83は、前記小径孔部80aおよび前記大径孔部80b間に形成される段部80cとの間に第2中間液室85を形成するようにして第2収納孔80における大径孔部80bの他端部に液密に嵌合、固定され、第2中間液室85および出力液圧室42を連通させる連通孔86がケーシング35Aに設けられる。
【0040】
第2シート部材82は、前記段部80cから内方に内周縁部をはみ出させるようにして前記段部80cに当接される環状板部82aと、該環状板部82aの外周に連なって前記大径孔部80bの内面に弾発接触するリップ部82bと、前記段部80cとは反対側で前記環状板部82aから突設されるとともに周方向に間隔をあけて配置される複数の突部82cとを一体に有し、前記大径孔部80bの段部80c側の端部に嵌入される。
【0041】
第2ピストン81は、小径孔部80aに移動可能に挿入される小径ピストン部81aと、小径ピストン部81aより大径である大径ピストン部81bと、それらのピストン部81a,81bよりも小径にして両ピストン部81a,81bを同軸に連結する連結軸部81cとが一体に連設されて成る。
【0042】
小径ピストン部81aは、スレーブシリンダ37の入力液圧室59に通じる出力室87を小径孔部80aの内面との間に形成して小径孔部80aに軸方向移動可能に挿入されており、この小径ピストン部81aの第2シート部材82側の端部外周に、第2シート部材82の環状板部82aに小径孔部80a側から当接して第2中間液室85および出力室87間を遮断する環状の弁部88が突設される。
【0043】
また大径ピストン部81bは、第2端壁部材83に摺動可能に嵌合される。また大径ピストン部81bの連結軸部81c側の端部には半径方向外方に張り出す鍔部81dが設けられており、第2端壁部材83および前記鍔部81d間に第2ばね84が縮設される。
【0044】
このような遮断弁39にあっては、マスタシリンダ36の出力液圧は第2弁ばね84のばね力に対向する液圧力を第2ピストン81に与えており、マスタシリンダ36の出力液圧が低い状態では、第2ピストン81が第2弁ばね84のばね力によって弁部88を第2シート部材82から離反させる位置まで移動しており、第2中間液室85が、出力室87すなわちスレーブシリンダ37の入力液圧室59に連通している。しかるにマスタシリンダ36の出力液圧が増大すると、第2ピストン81は第2弁ばね84のばね力に抗して弁部88を第2シート部材82に当接させるように移動し、遮断弁39はマスタシリンダ36およびスレーブシリンダ37間を遮断することになる。
【0045】
次にこの実施例1の作用について説明すると、ブレーキペダル82の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダ36と、該マスタシリンダ36からの液圧出力に応じて作動するスレーブシリンダ37とが同一のブロック状のケーシング35A内に設けられ、スレーブシリンダ37の出力がロッド67を介して後輪ブレーキBRに伝達されるので、マスタシリンダ36およびスレーブシリンダ37の組付けが簡単であり、後輪ブレーキBR側の油圧配管がないのでエア抜き経路が短くなってエア抜き工数の低減が可能となる。
【0046】
またブレーキペダル32の操作に対して前輪ブレーキBFの作動を遅らせるディレイバルブ38が、マスタシリンダ36から出力される液圧を前輪ブレーキBF側に伝達する液圧伝達経路68の途中に介在して前記ケーシング35Aに設けられるので、マスタシリンダ36、スレーブシリンダ37およびディレイバルブ38をコンパクトに纏めることができる。
【0047】
またスレーブシリンダ37側に伝達される前記マスタシリンダ36の出力が所定値を超えたときに前記マスタシリンダ36および前記スレーブシリンダ37間を遮断する遮断弁39が、前記マスタシリンダ36および前記スレーブシリンダ37間に介在して前記ケーシング35Aに設けられるので、よりコンパクトになる。
【0048】
さらにケーシング35Aの下方にブレーキペダル32が配置され、前記ロッド67が自動二輪車の前後方向に延びるように配置され、前記スレーブシリンダが前記マスタシリンダの作動軸線と直交する軸線を有して前記ケーシングに設けられることを第4の特徴とする。
【実施例2】
【0049】
図4を参照して本発明の実施例2について説明するが、実施例1に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0050】
ブロック状のケーシング35Bが、該ケーシング35Bが備える複数の取付け孔93…に挿通されるボルト94…で前記ステップホルダ30(実施例1参照)に取付けられており、このケーシング35Bに、マスタシリンダ36、ディレイバルブ38および遮断弁39の作動軸線を上下方向に相互に平行として設けられ、スレーブシリンダ37がマスタシリンダ36、ディレイバルブ38および遮断弁39の作動軸線と直交する方向に作動軸線を配置してケーシング35Bに設けられる。
【0051】
この実施例2によっても上記実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の液体に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0053】
たとえば上記実施の形態ではブレーキ操作子としてブレーキペダル32を取り上げて説明したが、操向ハンドル16に回動操作可能に取付けられるブレーキレバーをブレーキ操作子として用いるようにしてもよく、その場合、後輪ブレーキBR側にスレーブシリンダの出力を機械的に伝達する機械的伝動部材としてワイヤを用いることもできる。
【符号の説明】
【0054】
32・・・ブレーキ操作子であるブレーキペダル
35A,35B・・・ケーシング
36・・・マスタシリンダ
37・・・スレーブシリンダ
38・・・ディレイバルブ
39・・・遮断弁
67・・・機械的伝動部材であるロッド
68・・・液圧伝達経路
BF・・・前輪ブレーキ
BR・・・後輪ブレーキ
WF・・・前輪
WR・・・後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪(WR)に装着される後輪ブレーキ(BR)と、前輪(WF)に装着される前輪ブレーキ(BF)と、乗員の操作によって前記後輪ブレーキ(BR)および前記前輪ブレーキ(BF)を作動せしめることが可能なブレーキ操作子(32)と、該ブレーキ操作子(32)の操作に応じて液圧を出力するマスタシリンダ(36)とを備える鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置において、前記マスタシリンダ(36)からの液圧出力に応じて作動するスレーブシリンダ(37)と、該スレーブシリンダ(37)の出力を機械的に前記後輪ブレーキ(BR)に伝達する機械的伝動部材(67)と、前記マスタシリンダ(36)から出力される液圧を前記前輪ブレーキ(BF)側に伝達する液圧伝達経路(68)とを備え、前記マスタシリンダ(36)および前記スレーブシリンダ(37)が、同一のブロック状のケーシング(35A,35B)内に設けられることを特徴とする鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ操作子(32)の操作に対して前記前輪ブレーキ(BF)の作動を遅らせるディレイバルブ(38)が、前記液圧伝達経路(68)の途中に介在して前記ケーシング(35A,35B)に設けられることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置。
【請求項3】
前記スレーブシリンダ(37)側に伝達される前記マスタシリンダ(36)の出力が所定値を超えたときに前記マスタシリンダ(36)および前記スレーブシリンダ(37)間を遮断する遮断弁(39)が前記ケーシング(35A,35B)に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置。
【請求項4】
前記ケーシング(35A,35B)の下方に前記ブレーキ操作子(32)が配置され、前記機械的伝動部材(67)が車両長手方向に延びるように配置され、前記スレーブシリンダ(37)が前記マスタシリンダ(36)の作動軸線と直交する軸線を有して前記ケーシング(35A,35B)に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置。
【請求項5】
前記ブレーキ操作子がブレーキペダル(32)であり、前記機械的伝動部材がロッド(67)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鞍乗り型車両の連動ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−235031(P2010−235031A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87126(P2009−87126)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】