説明

頭部用外用剤

【課題】毛髪のごわつきを抑えることができる鉄錯体又は鉄塩と5−アミノレブリン酸類が配合された頭部用外用剤の提供。
【解決手段】(A)5−アミノレブリン酸、その塩及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)鉄錯体及び鉄塩から選ばれる1種又は2種以上と、(C)単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の塩及びシリカから選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする頭部用外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛剤等の頭部用外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭髪の脱毛予防、発毛促進等を目的とした頭部用外用剤の研究開発が広く行われている。5−アミノレブリン酸、5−アミノレブリン酸塩及びこれらの誘導体(以下、ALA類ということもある)が優れた発毛促進効果を有し、育毛剤として有用であることが知られている(特許文献1)。また、ALA類配合の育毛剤においては、使用時遮光が必要である等の制限があったが、ALA類にクエン酸鉄等の鉄化合物を併用すれば、そのような制限がなく優れた育毛剤になることも報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−116446号公報
【特許文献2】特許第3810018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ALA類と鉄化合物とを含有する育毛剤を頭部に適用すると、優れた育毛効果は得られるものの、適用後に乾燥した毛髪の感触がべたついたり、ごわついたりすることが判明した。
従って、本発明の課題は、適用後の毛髪の感触が改善された、ALA類と鉄化合物とを含有する頭部用外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、ALA類と鉄化合物とを含有する外用剤の適用後の毛髪の感触を解決すべく種々検討したところ、これら2成分に加えて、単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の塩又はシリカを配合したところ、毛髪のごわつき、べたつきが抑制され、毛髪の感触をなめらかなものとする頭部用外用剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)5−アミノレブリン酸、その塩及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)鉄錯体及び鉄塩から選ばれる1種又は2種以上と、(C)単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の塩及びシリカから選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする頭部用外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の頭部用外用剤を用いれば、ALA類及び鉄化合物の作用により遮光など行うことなく優れた養毛育毛効果が得られることにも、適用後の毛髪にごわつき、べたつき等を抑えることができ、感触のなめらかさに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の頭部用外用剤は、(A)5−アミノレブリン酸、その塩及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)鉄錯体及び鉄塩から選ばれる1種又は2種以上と、(C)単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の塩及びシリカから選ばれる1種又は2種以上とを含有するものである。
【0009】
なお、以下においては、「5−アミノレブリン酸」を「ALA」と称することがあり、「5−アミノレブリン酸、5−アミノレブリン酸塩及びそれらの誘導体」を「ALA類」と総称することがある。
【0010】
成分(A)中のALA誘導体としては、例えば、5−アミノレブリン酸エステル、N−アシル−5−アミノレブリン酸、それらの塩が挙げられる。
【0011】
5−アミノレブリン酸エステルの例としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基等の置換基を有していても良い直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数1〜24のアルキルエステルが挙げられ、例えば、5−アミノレブリン酸メチルエステル、5−アミノレブリン酸エチルエステル、5−アミノレブリン酸イソプロピルエステル、5−アミノレブリン酸ヘキシルエステル、5−アミノレブリン酸シクロヘキシルエステル、5−アミノレブリン酸ヘプチルエステル、5−アミノレブリン酸オクチルエステル、5−アミノレブリン酸ノニルエステル、5−アミノレブリン酸ドデシルエステル、5−アミノレブリン酸ヘキサデシルエステル、5−アミノレブリン酸ベンジルエステル、5−アミノレブリン酸フェネチルエステル、5−アミノレブリン酸フェニルプロピルエステル、5−アミノレブリン酸ヒドロキシエチルエステル、5−アミノレブリン酸エトキシエチルエステル等が挙げられる。
【0012】
N−アシル−5−アミノレブリン酸の例としては、炭素数1〜24のアルカノイル基(アセチル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ノナノイル基等)、芳香族アシル基(ベンゾイル基等)でN−アシル化された5−アミノレブリン酸が挙げられる。
【0013】
ALA塩等のALA類の塩としては、例えば、リン酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0014】
本発明の頭部用外用剤中のALA類の含有量は、当該外用剤の使用目的に応じて適宜設定されるべきものであるが、育毛効果及び毛髪の感触の点から、ALA換算した量で0.03〜10質量%が好ましく、0.1〜3.5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。ここで「ALA換算した量」とは、「ALA類の含有量×(ALAの分子量/含有するALA類の分子量)」から算出される値であり、ALA類から選ばれた2種以上を含有する場合は1種毎の算出値を合算した値である。
【0015】
成分(B)中の鉄錯体としては、例えば、ヘム鉄、デキストラン鉄、ジエチレントリアミン五酢酸鉄ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸鉄ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム、トリエチレンテトラアミン鉄、ジカルボキシメチルグルタミン酸鉄ナトリウム等が挙げられる。
【0016】
鉄塩としては、有機酸の鉄塩及び無機酸の鉄塩のいずれでもよい。例えば、クエン酸第一鉄、クエン酸鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、酢酸鉄、シュウ酸鉄、コハク酸第一鉄、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、乳酸鉄、グルコン酸第一鉄、ギ酸第一鉄、ギ酸第二鉄、シュウ酸カリウム第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸鉄アンモニウム、炭酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。
【0017】
本発明の頭部用外用剤中の鉄錯体及び鉄塩の含有量は、当該外用剤の使用目的に応じて適宜設定されるべきものであるが、育毛効果、安全性及び毛髪の感触の点から、鉄換算した量で0.002質量%以上が好ましく、0.002〜10質量%がより好ましく、0.01〜3質量%がさらに好ましく、0.1〜1.5質量%が特に好ましい。ここで、「鉄換算した量」とは、「鉄錯体又は鉄塩の含有量×(鉄の原子量/含有する鉄錯体又は鉄塩の分子量)」から算出される値であり、鉄錯体及び鉄塩から選ばれた2種以上を含有する場合は1種毎の算出値を合算した値である。
なお、鉄錯体及び鉄塩の含有量が多くなるほど毛髪のごわつきが生じやすいが、本発明の頭部用外用剤には成分(C)が含有するから、成分(B)の鉄換算した含有量が0.002質量%以上であっても、毛髪のごわつきが抑えられる。
【0018】
成分(C)は、単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の塩及びシリカから選ばれる1種又は2種以上であり、前記成分(A)及び(B)に当該成分(C)を併用することにより、毛髪のごわつきやべたつきが抑制される。当該毛髪のごわつきやべたつき抑制効果は、多糖類の誘導体であるアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムやヒドロキシエチルセルロースの添加や、合成高分子の添加では得られないことから、本発明で用いる成分(C)特有のものである。
【0019】
成分(C)のうち、単糖類としては、例えば、キシロース等のアルドペントース;グルコース、マンノース、ガラクトース等のアルドヘキソース;フルクトース等のケトヘキソース等が挙げられる。
【0020】
少糖類としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類;マルトトリオース、メレジトース、ラフィノース等の三糖類;アカルボース、スタキオース等の四糖類等が挙げられる。
【0021】
多糖類は、公知の多糖類から選択したものを用いることができるが、好適に用いられる多糖類は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の酸性多糖類である。この酸性多糖類は、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ナトリウム塩等の塩の形態であっても良い。
【0022】
シリカは、粉体状のものを用いる。当該粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば2〜30μmである。その平均粒子径は、レーザー回折/散乱法で測定された粒度分布から算出したメジアン径を意味する。
【0023】
これらの成分(C)のうち、少糖類、酸性多糖類、酸性多糖類の塩、及びシリカから選ばれる1種又は2種以上が毛髪の感触向上効果の点からより好ましい。さらに少糖類のうち好適なものの例としては、トレハロースである。また酸性多糖類及びその塩のうちで好適なものの例としては、ヒアルロン酸およびその塩である。
【0024】
本発明の頭部用外用剤中の成分(C)の含有量は、毛髪の感触向上効果の点から、0.001〜2質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。さらに具体的には、単糖類及び少糖類の場合、その含有量は、例えば0.01〜2質量%が好ましく、0.03〜1質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。多糖類及び多糖類の塩の場合、その含有量は、例えば0.001〜1質量%が好ましく、0.003〜0.5質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%がさらに好ましい。また、シリカの場合、その含有量は、例えば0.01〜1質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0025】
本発明の頭部用外用剤においては、育毛効果及び遮光の必要性をなくする点から、成分(A)と成分(B)との含有質量比(A:B)は、それぞれALA換算、鉄換算した値で1:0.05〜1:1.7が好ましく、1:0.1〜1:1.3がより好ましく、1:0.2〜1:0.9がさらに好ましい。
また、育毛効果と毛髪のごわつき抑制の点から、成分(B)と成分(C)との含有質量比(B:C)は、例えば1:0.002〜1:1.5である。
【0026】
本発明の頭部用外用剤には、例えば、公知の発毛剤、育毛剤、又は養毛剤に用いられる原料を配合することができる。その原料としては、水、低級アルコール、多価アルコール、保湿剤、界面活性剤、乳化安定剤、ゲル化剤、増粘剤、植物抽出エキス、血管拡張剤、抗炎症剤、抗酸化剤、防腐剤、清涼剤、香料等が挙げられる。
【0027】
本発明の頭部用外用剤のpHは、2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。pH2以上にすることで頭皮の安全性が高くなり、pH4以下にすることで鉄錯体又は鉄塩が配合された頭部用外用剤におけるALA類の経時分解の抑制に有利となる。
pHを4以下に設定する場合、有機酸又は無機酸が通常用いられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、ピルビン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。また、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。
【0028】
頭部用外用剤の剤型は、特に限定されず、例えば液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ゲル状、霧状が挙げられる。これらのうち液状、ローション状又は霧状の剤型にする場合、エタノール等の低級アルコール及び水を合計で85質量%以上含有するのが好ましい。
【0029】
本発明の頭部用外用剤は、頭部に使用する外用剤であれば特に用途が限定されるものではないが、ALA類には、新生毛の発育を促す発毛効果、毛髪の成長を促す育毛効果、及び抜け毛を防止する養毛効果があることが知られているので、本発明の頭部用外用剤は、発毛剤、育毛剤、及び養毛剤の用途に適用可能である。
【実施例】
【0030】
以下に実施例等を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱することがない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1〜3、比較例1〜5)
水に原料を配合して調製した溶液を実施例1〜3及び比較例1〜5の頭部用外用剤とした。その調製での配合原料と量の詳細は、下記表1の通りとした。
【0032】
毛束(長さ20cm程度、質量3g程度)に対して、実施例1〜3及び比較例1〜5のいずれかの頭部用外用剤を用いた処理を行った。この処理は、(1)毛束を市販のシャンプーで洗浄し、水切り、(2)実施例1〜3及び比較例1〜5のいずれかの頭髪用外用剤1mlを毛束に塗布、(3)毛束を温風乾燥、の手順とした。
【0033】
上記処理後の毛束の感触について、比較例1の頭部用外用剤を用いて処理した毛束を基準にして「ごわつき」、「滑り」、及び「べたつき」の官能評価を行った。
【0034】
「ごわつき」の評価基準は、次の通りとした。
○:基準よりもごわつきが無いと感じた。
−:基準と同程度と感じた。
×:基準よりもごわつきが有ると感じた。
【0035】
「滑り」の評価基準は、次の通りとした。
○:基準よりも滑りが良いと感じた。
−:基準と同程度と感じた。
×:基準よりも滑りが悪いと感じた。
【0036】
「べたつき」の評価基準は、次の通りとした。
○:基準よりもべたつきが無いと感じた。
−:基準と同程度と感じた。
×:基準よりもべたつきが有ると感じた。
【0037】
下記表1に、配合原料と共に官能評価の結果を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
上記表1において、成分(C)(ヒアルロン酸ナトリウム、トレハロース、シリカ)を配合した実施例1〜3の評価結果は、比較例1〜5よりも毛髪のごわつきが無い上に、滑りも良い感触であった。
また、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース等の多糖類の誘導体や、メタクリル酸系コポリマーの配合では、毛髪のごわつきを抑制できなかったことから、本発明の効果は、成分(C)特有のものである。
【0040】
(実施例4)
水に原料を配合して調製した溶液を、実施例4の頭部用外用剤とした。その調製での配合原料と量の詳細は、下記表2の通りとした。
【0041】
上記実施例1の頭部用外用剤を用いた毛束の処理と同様、実施例4の頭部用外用剤を用いた毛束の処理を行った。そして、実施例1及び実施例4の頭部用外用剤を用いて処理した毛束について、「ごわつき」、「滑り」、及び「べたつき」の官能評価を行った。当該評価では、優れる毛束を「1」と評価し、その他の毛束を「2」と評価した。
【0042】
【表2】

【0043】
(実施例5〜6)
水に原料を配合して調製した溶液を、実施例5〜6の頭部用外用剤とした。その調製での配合原料と量の詳細は、下記表3の通りとした。
【0044】
上記実施例1の頭部用外用剤を用いた毛束の処理と同様、実施例5〜6の頭部用外用剤を用いた毛束の処理を行った。そして、実施例2及び実施例5〜6の頭部用外用剤を用いて処理した毛束について、「ごわつき」、「滑り」、及び「べたつき」の官能評価を行った。当該評価では、一番優れる毛束を「1」と評価し、2番目に優れる毛束を「2」と評価した。
【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)5−アミノレブリン酸、その塩及びこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(B)鉄錯体及び鉄塩から選ばれる1種又は2種以上と、(C)単糖類、少糖類、多糖類、多糖類の塩及びシリカから選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする頭部用外用剤。
【請求項2】
成分(C)が、少糖類、酸性多糖類、酸性多糖類の塩、及びシリカから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の頭部用外用剤。
【請求項3】
成分(B)の鉄換算した含有量が、0.002質量%以上である請求項1又は2に記載の頭部用外用剤。
【請求項4】
成分(B)と成分(C)との含有質量比(B:C)が、1:0.002〜1:1.5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の頭部用外用剤。
【請求項5】
成分(A)と成分(B)との含有質量比(A:B)が、それぞれALA換算、鉄換算した値で、1:0.05〜1:1.7である請求項1〜4のいずれか1項記載の頭部用外用剤。
【請求項6】
成分(C)が、トレハロース、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、及びシリカから選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜5のいずれか1項記載の頭部用外用剤。
【請求項7】
育毛剤である請求項1〜6のいずれか1項記載の頭部用外用剤。

【公開番号】特開2013−32320(P2013−32320A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169862(P2011−169862)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】