説明

顆粒及び錠剤の製造方法

【課題】 原料として天然素材(野菜或いはその他の植物等)を用いながら、製造された錠剤等中の有効成分の含有量のバラツキを大幅に少なくでき、且つ錠剤等中の有効成分の含有量を大幅に増量することもできる顆粒及び錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】 第10の処理D10から第13の処理D13で得られた抽出有効成分を用いて、第6の処理D6において、有効成分の含有量を一般原料における含有量よりも高い一定量にする調整をするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜(例えば、小松菜、人参、ブロッコリー)或いはその他の植物等(例えば、桑の葉、ウコン、アロエ)即ち天然素材だけを原料とし、バインダー(結着剤及び硬化剤)や増量剤(例えば、乳糖、結晶セルロース)を一切使用しない顆粒及び錠剤の製造方法に係り、特に、原料に含まれている有効成分(例えば、原料がウコンの場合はクルクミン及び精油)の顆粒・錠剤中における含有量を好ましいものに制御できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々は、既に、野菜或いはその他の植物等即ち天然素材だけを原料とし、バインダー(結着剤及び硬化剤)や増量剤(例えば、乳糖、結晶セルロース)を一切使用しない錠剤の製造方法を開発し、この製造方法について特許出願をしている(下記の特許文献1参照)。この製造方法の技術的ポイントは、野菜等の原料をその栄養素等即ち有効成分を損なわない状態で微粉末化し、この微粉末化に起因する微粉末間の凝集力・結合力を利用して、上記バインダー等を一切使用せずに素材だけであるにもかかわらず、耐崩壊・耐摩損に優れた錠剤を得られる点にある。
【0003】
【特許文献1】特開2001−186844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような製造方法での天然素材100パーセントの錠剤等は、上記バインダー等の化学物質が含まれていることに不安を持つ消費者に安心感を与えるといった点或いは、一定量の有効成分を摂取する必要があるときの錠剤等の服用量を少なくできるといった点等の極めて有用な利点を持っている。
しかし、上記のような製造方法では、原料として天然素材を用いるが、天然素材には産地或いは収穫時期により有効成分の含有量にバラツキあるために、製造した錠剤等においても有効成分の含有量にバラツキが発生する。
また、上記のような製造方法で製造した錠剤等よりも有効成分の含有量が大幅に増量されている錠剤等を製造できれば、一定量の有効成分を摂取する必要があるときの錠剤等の服用量を少なくでき、服用時の煩わしさが減るという利点がある。
本願発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、原料として天然素材を用いながら、製造された錠剤等中の有効成分の含有量のバラツキを大幅に少なくでき、且つ錠剤等中の有効成分の含有量を大幅に増量することもできる錠剤等の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明では、顆粒製造方法を以下のように構成した。
すなわち、野菜或いはその他の植物等の乾燥粉末を製造する粉末製造工程と、
当該粉末製造工程とは別に、当該粉末製造工程で用いた野菜或いはその他の植物等と同一の野菜或いはその他の植物等から当該野菜或いはその他の植物等に含まれている有効成分を抽出する抽出工程と、
上記粉末製造工程で製造した乾燥粉末に、上記抽出工程で抽出した有効成分を所定量だけ添加して練合等して顆粒化する顆粒化工程とを備えるようにした。
【0006】
請求項2の発明では、顆粒製造方法を以下のように構成した。
すなわち、野菜或いはその他の植物等の乾燥粉末を製造する粉末製造工程と、
当該粉末製造工程とは別に、当該粉末製造工程で用いた野菜或いはその他の植物等と同一の野菜或いはその他の植物等から当該野菜或いはその他の植物等に含まれている有効成分を抽出する抽出工程と、
上記粉末製造工程で製造した乾燥粉末に、上記抽出工程で抽出した有効成分を所定量だけ添加して練合等して顆粒化する顆粒化工程とを備えるようにして、
上記粉末製造工程では、
野菜或いはその他の植物等である生の原料を自然環境或いは50度C以下の通気環境で乾燥する乾燥処理を実行し、
上記乾燥処理で得られた乾燥した原料をチップ状に粗粉砕する粗粉砕処理を実行し、
上記粗粉砕処理で粗粉砕して得た原料チップに140〜160度Cの蒸気を利用した気流式殺菌を施す殺菌処理を実行し、
上記殺菌処理で気流式殺菌を施した原料チップを粉砕して原料粉末を得る粉砕処理を実行し、
更に、上記乾燥処理、粗粉砕処理、殺菌処理又は粉砕処理の前の段階若しくは上記粉砕処理の後の段階において、一定量の乾燥した上記原料に含まれている有効成分の含有量を計量(一定量の生の上記原料に含まれている上記有効成分の計量値よりの当該含有量の推定即ち間接的計量を含む)することにより当該乾燥原料に対する上記有効成分の比率を求める有効成分計量処理を実行し、
次いで、上記有効成分計量処理で求めた比率に基づき、上記粉砕処理で得られた原料粉末での上記比率をある一定値まで上げるために必要とする有効成分の添加量(以下、必要添加量という)を求める添加量算出処理を実行し、
また、上記抽出工程では、
上記乾燥処理で用いた生の原料と同一の生の原料或いはこれを乾燥したものより熱水抽出、濾過及び濃縮という一連の処理で上記有効成分或いはこの有効成分に水又はアルコール(アルコールに水を加えたものをも含む。以下においても同様)を加えたものを得て、
更に、上記顆粒化工程では、
上記抽出工程で得た上記有効成分或いはこの有効成分に水又はアルコールを加えたものを、有効成分の添加が上記添加量算出処理で求めた必要添加量になるまで、上記粉砕処理により得た原料粉末へ加える成分調整処理を兼ねた加水処理を施しつつ練合して造粒する造粒処理を実行し、
次いで、上記造粒処理で得られた粒状物を整粒した上で乾燥して、上記原料粉末に係る顆粒を得るように構成した。
【0007】
請求項3の発明では、顆粒製造方法を以下のように構成した。
すなわち、野菜或いはその他の植物等である生の原料を自然環境或いは50度C以下の通気環境で乾燥する乾燥処理を実行し、
上記乾燥処理で得られた乾燥した原料をチップ状に粗粉砕する粗粉砕処理を実行し、
上記粗粉砕処理で粗粉砕して得た原料チップに140〜160度Cの蒸気を利用した気流式殺菌を施す殺菌処理を実行し、
上記殺菌処理で気流式殺菌を施した原料チップを粉砕して原料粉末を得る粉砕処理を実行し、
上記乾燥処理で用いた生の原料と同一の生の原料或いはこれを乾燥したものより熱水抽出、濾過及び濃縮という一連の処理で得た当該原料に含まれている有効成分或いはこの有効成分に水又はアルコール(アルコールに水を加えたものをも含む。以下においても同様)を加えたものを、当該原料の産地や収穫時期等の違いによる上記有効成分の含有量のバラツキが無視できる程度に大量な一定添加量に到まで、上記粉砕処理により得た原料粉末へ加える成分調整処理を兼ねた加水処理を施しつつ練合して造粒する造粒処理を実行し、
次いで、上記造粒処理で得られた粒状物を整粒した上で乾燥して、上記原料粉末に係る顆粒を得るように構成した。
【0008】
請求項4の発明では、錠剤製造方法を以下のように構成した。
すなわち、上記請求項1、2又3の顆粒製造方法により得た顆粒を打錠機の打錠型に詰めて打錠して上記原料粉末に係る錠剤を得るように構成した。
【発明の効果】
【0009】
以上詳述したように、本願発明によると、原料として天然素材を用いながら、製造された顆粒・錠剤中の有効成分の含有量のバラツキを大幅に少なくでき、且つ錠剤等中の有効成分の含有量を大幅に増量することもできる錠剤等の製造方法を提供することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。先ず、ウコン(肝機能向上の効用あると言われているクルクミン及び精油を有効成分として含有している)の錠剤の製造方法に係る実施の形態について説明する。図1は、当該実施の形態における製造処理を示すものである。
同図に示すように、先ず、第1の処理D1では、生原料であるウコンを自然環境或いは50℃以下の通気環境(即ち有効成分を損なわない環境)で乾燥しする。次いで、第2の処理D2では、上記第1の処理D1で得られた乾燥したウコンを粗粉砕機で約5ミリメートル以下のチップに粗粉砕する。
【0011】
第3の処理D3では、一定量の乾燥した今回利用するウコンに含まれている有効成分の含有量を抽出計量することにより、当該一定量の乾燥原料における上記有効成分の含有量の比率を求めると共に、求めた比率に基づき、第2の処理D2で得たウコンの粗粉砕物における当該比率をある一定値(目的値)にまで上げるために必要とする有効成分の添加量(以下、必要添加量という)を求める添加量算出処理を実行する。なお、この処理はこの段階で行はず、特に実行に支障がない段階、例えば、上記第2の処理D2の前、後述の第5の処理D5の前の段階等で行っても良い。
第4の処理D4では、上記第2の処理D2で粗粉砕して得た原料チップに140〜160℃の蒸気に約3秒間晒す気流式殺菌を施すが、この場合、上記有効成分は損なわない。そして、第5の処理D5では、上記第4の処理D4で気流式殺菌を施した原料チップを微粉砕して、中心粒度が15ミクロンメートルで40ミクロンメートル以下の粒度のものが90パーセントを占める原料微粉末を得る。なお、この微粉砕には、特開平9−24285公報等に記載されている装置を用いる。
【0012】
第6の処理D6では、上記第5の処理D5で得られた原料微粉末に、後述の第13の処理D13で得たウコンの有効成分或いはこの有効成分と水又はアルコールを加えて得たものを、当該有効成分を予め決められている一定値(上記目的値)にまで増量する成分調整処理を兼ねた加水処理を施して、練合及び造粒する。
第7の処理D7では、上記第6の処理D6で得られた粒状物を整粒し、次ぎの第8の処理D8では、この粒状物を乾燥して顆粒を得て、最後の第9の処理D9では、上記第8の処理D8で得られた顆粒を打錠機の打錠型に詰めて打錠して、上記原料微粉末に係る錠剤を製造する。これで上記有効成分が一定量にまで増量された状態になっているウコンの錠剤が得られる。
【0013】
なお、同図の第10の処理D10から第13の処理D13は、ウコンの上記増量用有効成分を得る工程を示すものである。即ち、第11の処理D11では、上記第1の処理D1で用いたウコンと同一のウコンから或いはこのウコンを乾燥(第10の処理D10)したものから、当該ウコンに含まれている有効成分を熱水抽出する。次いで、この熱水抽出した抽出物を濾過(第12の処理D12)及び濃縮(第13の処理D13)することにより、上記増量用の有効成分を得る。
【0014】
なお、本願発明の範囲は、上記実施の形態に限定されず、種々変形応用が可能である。例えば、上記第3の処理D3即ち今回利用する原料(ウコン)に実際に含まれている有効成分の定量処理を行わず、当該原料の産地や収穫時期等の違いによる上記有効成分の含有量のバラツキが無視できる程度に大量な一定量の有効成分を添加するようにしても良い。この等にして製造した錠剤では、有効成分のバラツキは、無視できる程に小さく、略一定の大量有効成分を含むことになる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本願発明は、野菜或いはその他の植物等即ち天然素材を原料とし、その原料に含まれている有効成分を摂取するための顆粒・錠剤を製造する産業分野において利用できる可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の第1の実施の形態の製造処理を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜或いはその他の植物等の乾燥粉末を製造する粉末製造工程と、
当該粉末製造工程とは別に、当該粉末製造工程で用いた野菜或いはその他の植物等と同一の野菜或いはその他の植物等から当該野菜或いはその他の植物等に含まれている有効成分を抽出する抽出工程と、
上記粉末製造工程で製造した乾燥粉末に、上記抽出工程で抽出した有効成分を所定量だけ添加して練合等して顆粒化する顆粒化工程とを備えることを特徴とする顆粒製造方法。
【請求項2】
野菜或いはその他の植物等の乾燥粉末を製造する粉末製造工程と、
当該粉末製造工程とは別に、当該粉末製造工程で用いた野菜或いはその他の植物等と同一の野菜或いはその他の植物等から当該野菜或いはその他の植物等に含まれている有効成分を抽出する抽出工程と、
上記粉末製造工程で製造した乾燥粉末に、上記抽出工程で抽出した有効成分を所定量だけ添加して練合等して顆粒化する顆粒化工程とを備えることを特徴とする顆粒製造方法であって、
上記粉末製造工程では、
野菜或いはその他の植物等である生の原料を自然環境或いは50度C以下の通気環境で乾燥する乾燥処理を実行し、
上記乾燥処理で得られた乾燥した原料をチップ状に粗粉砕する粗粉砕処理を実行し、
上記粗粉砕処理で粗粉砕して得た原料チップに140〜160度Cの蒸気を利用した気流式殺菌を施す殺菌処理を実行し、
上記殺菌処理で気流式殺菌を施した原料チップを粉砕して原料粉末を得る粉砕処理を実行し、
更に、上記乾燥処理、粗粉砕処理、殺菌処理又は粉砕処理の前の段階若しくは上記粉砕処理の後の段階において、一定量の乾燥した上記原料に含まれている有効成分の含有量を計量(一定量の生の上記原料に含まれている上記有効成分の計量値よりの当該含有量の推定即ち間接的計量を含む)することにより当該乾燥原料に対する上記有効成分の比率を求める有効成分計量処理を実行し、
次いで、上記有効成分計量処理で求めた比率に基づき、上記粉砕処理で得られた原料粉末での上記比率をある一定値まで上げるために必要とする有効成分の添加量(以下、必要添加量という)を求める添加量算出処理を実行し、
また、上記抽出工程では、
上記乾燥処理で用いた生の原料と同一の生の原料或いはこれを乾燥したものより熱水抽出、濾過及び濃縮という一連の処理で上記有効成分或いはこの有効成分に水又はアルコール(アルコールに水を加えたものをも含む。以下においても同様)を加えたものを得て、
更に、上記顆粒化工程では、
上記抽出工程で得た上記有効成分或いはこの有効成分に水又はアルコールを加えたものを、有効成分の添加が上記添加量算出処理で求めた必要添加量になるまで、上記粉砕処理により得た原料粉末へ加える成分調整処理を兼ねた加水処理を施しつつ練合して造粒する造粒処理を実行し、
次いで、上記造粒処理で得られた粒状物を整粒した上で乾燥して、上記原料粉末に係る顆粒を得るようにした顆粒製造方法。
【請求項3】
野菜或いはその他の植物等である生の原料を自然環境或いは50度C以下の通気環境で乾燥する乾燥処理を実行し、
上記乾燥処理で得られた乾燥した原料をチップ状に粗粉砕する粗粉砕処理を実行し、
上記粗粉砕処理で粗粉砕して得た原料チップに140〜160度Cの蒸気を利用した気流式殺菌を施す殺菌処理を実行し、
上記殺菌処理で気流式殺菌を施した原料チップを粉砕して原料粉末を得る粉砕処理を実行し、
上記乾燥処理で用いた生の原料と同一の生の原料或いはこれを乾燥したものより熱水抽出、濾過及び濃縮という一連の処理で得た当該原料に含まれている有効成分或いはこの有効成分に水又はアルコール(アルコールに水を加えたものをも含む。以下においても同様)を加えたものを、当該原料の産地や収穫時期等の違いによる上記有効成分の含有量のバラツキが無視できる程度に大量な一定添加量に到まで、上記粉砕処理により得た原料粉末へ加える成分調整処理を兼ねた加水処理を施しつつ練合して造粒する造粒処理を実行し、
次いで、上記造粒処理で得られた粒状物を整粒した上で乾燥して、上記原料粉末に係る顆粒を得ることを特徴とする顆粒製造方法。
【請求項4】
上記請求項1、2又3の顆粒製造方法により得た顆粒を打錠機の打錠型に詰めて打錠して上記原料粉末に係る錠剤を得ることを特徴とする錠剤製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−333772(P2006−333772A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162004(P2005−162004)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(595063156)株式会社山和エンヂニアリング (3)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】