説明

顔料分散組成物

【課題】カラーフィルタとしたときに高いコントラスを発揮し、しかもカラーフィルタの成形工程における現像、ポストベーク、UV洗浄などといった処理を経ても表面の荒れを抑制ないし防止して良好な表示性能を実現し、かつ高い分散安定性を示す顔料分散組成物を提供する。
【解決手段】有機顔料微粒子と顔料吸着基を有する高分子化合物とを含有させた顔料分散組成物であって、前記有機顔料微粒子が、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる貧溶媒とを混合して析出させたビルドアップ顔料微粒子である顔料分散組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルドアップ顔料微粒子を含有する顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ用インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにそれらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー撮像素子、カラー液晶表示装置等の画像関連精密機器の高品質化および用途の拡大が急速に進でいる。それを反映して、カラーフィルタについてもコントラストをはじめとした表示性能の向上が強く求められるようになってきた。このような観点からカラーフィルタの色材についてみると、染料に代わって有機顔料が用いられるようになってきており、最近ではナノメートルサイズレベルで、しかも単分散で安定な顔料微粒子が求められている。さらに、インクジェット技術を利用した新規のカラーフィルタの製造方法が検討されている。これにより設計自由度の大幅な向上・コストの大幅な低減が期待され、それに適し十分な性能を発揮しうる顔料微粒子の分散組成物が求められている。
【0003】
ここで有機顔料粒子の製造方法についていうと、ビーズミル法やソルトミリング法などのブレークダウン法が一般的である。上記ミリング法では、有機顔料を十分に微細化し組成物中で分散させるために多大な時間とエネルギーとを要する。また用いることができる顔料種が限られる。そして顔料の微細化にともないその分散組成物が高粘度を示すことがあり、場合によっては貯蔵中にゲル化することもある。
これに対し最近、ビルドアップ法により分散安性の高い顔料分散組成物の製造方法が開発された。この方法は微細な顔料粒子を得るのに適しており、具体的に、顔料溶液と貧溶媒とを混合してナノ粒子を析出させ、所定の高分子化合物を添加する方法が開示されている(特許文献1、2参照)。この分散組成物を用いてカラーフィルタを作製し、これを高コントラスト化することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262378号公報
【特許文献2】特開2008−083089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に記載された分散組成物によれば確かにカラーフィルタとしたときにこれを高コントラスト化する効果がある。他方、カラーフィルタは通常これを成形する際に、現像、ポストベーク、UV洗浄などの加工処理を行うが、これにより着色皮膜表面に荒れ(表面凹凸)が生じることがあった。着色皮膜表面が荒れると、製造されるカラーフィルタの色度や寸法精度が低下したり、コントラストが著しく劣化したりするという問題がある。発明者らはこの点に着目し、特にビルドアップ法により調製した顔料微粒子(以下、単に「ビルドアップ顔料微粒子」ということがある。)を含有する分散組成物を用いて作製したカラーフィルタにおける上記特有の課題の解決を目的とした。
すなわち本発明は、ビルドアップ顔料微粒子を含有するカラーフィルタの作製に適した顔料分散組成物の提供を目的として、カラーフィルタとしたときに高いコントラスを発揮して、しかもカラーフィルタの成形工程における現像、ポストベーク、UV洗浄などといった処理を経ても表面の荒れを抑制ないし防止して良好な表示性能を実現し、かつ高い分散安定性を示す顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ用インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料、並びにそれらを用いたカラーフィルタ及び液晶表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は下記の手段により達成された。
(1)有機顔料微粒子と高分子化合物を含有する顔料分散組成物であって、
前記有機顔料微粒子が、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる貧溶媒とを混合して析出させた有機顔料微粒子であり、
前記高分子化合物が、下記A〜Dの群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする顔料分散組成物。
[A:側鎖に複素環を有する高分子化合物。]
[B:下記一般式(I)及び(II)の群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化1】

一般式(I)及び(II)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。L及びLは、各々独立に、単結合又は2価の有機連結基を表す。A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表す。m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表す。p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。]
[C:主鎖にアクリル酸を5〜30質量%共重合した高分子化合物。]
[D:下記一般式(31)及び一般式(32)からなる群より選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を有する高分子化合物。]
一般式(31)
−Q−Q−Z−
ここで Qは −(C=O)− または −SO− を、
は −NH− または −CHR− を、
Zは −(C=O)−R− または −SO−R− を示す。
また Rは 水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルキル基を、
は アルキレン基、シクロアルキレン基、またはアリーレン基を示す。
また、RとRとは互いに連結基を介して連結してもよい。
一般式(32)
−Rf−OH
ここで、Rfは 少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。
(2)前記D群の高分子化合物において、前記一般式(31)及び(32)からなる群より選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位が5〜100質量%含まれることを特徴とする(1)記載の顔料分散組成物。
(3)前記高分子化合物が質量平均分子量1000〜100000であることを特徴とする(1)または(2)に記載の顔料分散組成物。
(4)前記高分子化合物が、酸基を50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲で有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーとを含有するカラーフィルタ用インクジェットインク。
(7)仮支持体上に、少なくとも、(5)に記載の着色感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性樹脂転写材料。
(8)(5)に記載の着色感光性樹脂組成物、(6)に記載のカラーフィルタ用インクジェットインク、及び/又は(7)に記載の感光性樹脂転写材料を用いて作製したことを特徴とするカラーフィルタ。
(9)(8)に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
(10)有機顔料微粒子と高分子化合物を含有する顔料分散組成物の製造方法であって、
前記高分子化合物が下記A〜Dの群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記有機顔料微粒子が、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる貧溶媒とを混合して析出させた有機顔料微粒子であり、
かつ
(1)前記有機顔料微粒子を凝集体として析出後に濃縮ペースト化
(2)少なくとも前記高分子化合物と前記ペーストを用い、再分散
する工程を経ることを特徴とする顔料分散組成物の製造方法。
[A:側鎖に複素環を有する高分子化合物。]
[B:下記一般式(I)及び(II)の群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化1】

一般式(I)及び(II)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。L及びLは、各々独立に、単結合又は2価の有機連結基を表す。A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表す。m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表す。p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。]
[C:主鎖にアクリル酸を5〜30質量%共重合した高分子化合物。]
[D:下記一般式(31)及び一般式(32)からなる群より選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を有する高分子化合物。]
一般式(31)
−Q−Q−Z−
ここで Qは −(C=O)− または −SO− を、
は −NH− または −CHR− を、
Zは −(C=O)−R− または −SO−R− を示す。
また Rは 水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルキル基を、
は アルキレン基、シクロアルキレン基、またはアリーレン基を示す。
また、RとRとは互いに連結基を介して連結してもよい。
一般式(32)
−Rf−OH
ここで、Rfは 少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の顔料分散組成物はビルドアップ顔料微粒子を含有するカラーフィルタの作製に適し、カラーフィルタとしたときに高いコントラスを発揮し、しかもカラーフィルタの成形工程における現像、ポストベーク、UV洗浄などといった処理を経ても表面の荒れを抑制ないし防止して良好な表示性能を実現し、かつ高い分散安定性を示す顔料分散組成物、これを用いた着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ用インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料を提供することができる。
また、上記の良好な特性を有する顔料分散組成物、これを用いて作製した着色感光性樹脂組成物、カラーフィルタ用インクジェットインク、及び感光性樹脂転写材料を用いて、表面荒れのない、精密光学デバイス等の用途にも好適に対応しうる高性能のカラーフィルタを提供し、さらにこれを用いた色鮮やかな映像の表示を可能とする液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の顔料分散組成物に用いられる有機顔料の種類は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン化合物顔料、ペリノン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、キナクリドンキノン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、アントアントロン化合物顔料、ベンズイミダゾロン化合物顔料、ジスアゾ縮合化合物顔料、ジスアゾ化合物顔料、アゾ化合物顔料、インダントロン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、トリアリールカルボニウム化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、チオインジゴ化合物顔料、イソインドリン化合物顔料、イソインドリノン化合物顔料、ピラントロン化合物顔料、イソビオラントロン化合物顔料、それらの混合物などが挙げられる。
【0009】
なかでも、ペリレン化合物顔料、キナクリドン化合物顔料、アントラキノン化合物顔料、ジケトピロロピロール化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料であることが好ましく、ジケトピロロピロール化合物顔料、アミノアントラキノン化合物顔料、フタロシアニン化合物顔料、ジオキサジン化合物顔料、またはアゾ化合物顔料がより好ましい。
【0010】
本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いても良く、また、有機色素と組み合わせて用いても良い。
【0011】
本発明においては、下記A〜Dの特定の高分子化合物を用いることが好ましく、その質量平均分子量は(各高分子化合物におけるより好ましい範囲は必要により個々に述べるが)、1000〜500000であることが好ましく、2000〜300000であることがより好ましく、3000〜200000であることが特に好ましい。本発明において、分子量というとき特に断らない限り質量平均分子量を意味し、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0012】
[高分子化合物A]
本発明においては、側鎖に複素環を有する高分子化合物であることが好ましい。このような高分子化合物としては、下記一般式(1)で表される単量体、または、マレイミド、マレイミド誘導体からなる単量体に由来する重合単位を含む重合体であることが好ましく、下記一般式(1)で表される単量体に由来する重合単位を含む重合体であることが特に好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表す。Rは、単結合、又は2価の連結基を表す。Yは、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。Zは含窒素複素環構造を有する基を表す。
のアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
で表されるアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3がより好ましい。)メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
【0015】
で表される好ましいアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
としては、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0016】
一般式(1)中、Rは、単結合又は2価の連結基を表す。該2価の連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。
で表されるアルキレン基は、ヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子)を介して2以上連結したものであってもよい。
で表される好ましいアルキレン基として具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
で表される好ましいアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、等が挙げられる。
【0017】
で表される2価の連結基としては、上記のアルキレン基の末端において、−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、及び−NHCO−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介してZと連結するものであってもよい。
【0018】
一般式(1)中、Zは複素環構造を有する基を表す。複素環構造を有する基としては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン、ピラジン、テトラゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、環状アミド、環状ウレア、環状イミド等の複素環構造が挙げられる。これらの複素環構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、脂肪族エステル基、芳香族エステル基、アルコキシカルボニル基、等が挙げられる。
【0019】
Zは、炭素数が6以上である含窒素複素環構造を有する基であることがより好ましく、炭素数が6以上12以下である含窒素複素環構造を有する基であることが特に好ましい。炭素数が6以上である含窒素複素環構造として具体的には、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、及び環状イミド構造が好ましく、下記(2)、(3)又は(4)で表される構造であることが特に好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】
一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NR−、及び−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかである。ここでRは、水素原子又はアルキル基を表す。Rがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(2)におけるXとしては、単結合、メチレン基、−O−、又は−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
【0022】
一般式(4)中、Y及びZは、各々独立に、−N=、−NH−、−N(R)−、−S−、又は−O−を表す。Rはアルキル基を表し、Rがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(4)における、Y及びZとしては、−N=、−NH−、及び−N(R)−が特に好ましい。Y及びZの組み合わせとしては、Y及びZのいずれか一方が−N=であり他方が−NH−である組み合わせ、イミダゾリル基が挙げられる。
【0023】
一般式(2)、(3)、および(4)で、環A、環B、環C、及び環Dは、各々独立に、芳香環を表す。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられ、中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
【0024】
具体的には、一般式(2)における環A及び環Bとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。一般式(3)における環Cとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。一般式(4)における環Dとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
【0025】
一般式(2)、(3)および(4)で表される構造の中でも、分散性、分散液の経時安定性の点からは、ベンゼン環、ナフタレン環がより好ましく、一般式(2)又は(4)においては、ベンゼン環がさらに好ましく、一般式(3)においては、ナフタレン環がさらに好ましい。
【0026】
本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物において、下記一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体の好ましい具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
本実施態様に用いられる側鎖に複素環を有する高分子化合物は、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物において、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位の含有量は、特に制限はないが、本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物に含有される全構造単位を100質量%とした場合に、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位を5質量%以上含有することが好ましく、10〜50質量%含有することがより好ましい。一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体の中でも、一般式(1)で表される単量体が顔料への吸着性が高いことから好ましい。
【0031】
即ち、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、マレイミド誘導体に由来する共重合単位の含有量は5質量%以上であることが好ましい。また、顔料分散組成物を含有する光硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、一般式(1)で表される単量体に由来する共重合単位の含有量は50質量%以下であることが好ましい。
【0032】
本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物は、更に、酸基を有する単量体に由来する共重合単位を含むことが好ましい。高分子化合物がさらに酸基を有する単量体に由来する共重合単位を含むことで、顔料分散組成物を感光性組成物に適用した場合において、未露光部の現像除去性に優れる。
酸基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその無水物類;3価以上の不飽和多価カルボン酸またはその無水物類;こはく酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、こはく酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル類;ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノメタクリレート等の両末端カルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。本実施態様の高分子化合物は、酸基を有する単量体に由来する共重合単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0033】
本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物において、酸基を有する単量体に由来する共重合単位の含有量は、好ましくは50〜200mgKOH/gであり、特に好ましくは80〜200mgKOH/gである。より好ましい範囲は100〜180mgKOH/gである。即ち、現像液中での析出物の生成抑制という点では、酸基を有する単量体に由来する共重合単位の含有量は50mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が200mgKOH/g以上であると酸基間の凝集が強くなり、加工顔料間の凝集が生じ、分散性が劣化し、となって好ましくない。顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、酸基を有する単量体に由来する共重合単位の含有量は上記範囲が好ましい。
【0034】
本実施態様における側鎖に複素環を有する高分子化合物は、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能なビニルモノマーに由来する共重合単位を含んでいてもよい。
ここで使用可能なビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このようなビニルモノマーの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。なお、本明細書において「アクリル、メタクリル」のいずれか或いは双方を示す場合「(メタ)アクリル」と記載することがある。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0036】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及びイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0038】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0039】
本実施態様に係る側鎖に複素環を有する高分子化合物の好ましい分子量は、質量平均分子量(Mw)で1,000〜100,000の範囲、数平均分子量(Mn)で400〜50,000の範囲であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000の範囲、数平均分子量(Mn)で2,000〜30,000の範囲であることがより好ましい。特に、質量平均分子量(Mw)で8,000〜30,000の範囲、数平均分子量(Mn)で4,000〜12,000の範囲であることが最も好ましい。
【0040】
即ち、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるための観点からは、本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物の質量平均分子量(Mw)は1,000以上であることが好ましい。また、顔料分散組成物を含有する光硬化性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、本実施態様の側鎖に複素環を有する高分子化合物の質量平均分子量(Mw)は100,000以下であることが好ましい。
本実施態様の顔料分散組成物中、複素環を有する高分子化合物の含有量としては質量比で、顔料側鎖に複素環を有する高分子化合物=1:0.01〜1:2が好ましく、より好ましくは、1:0.05〜1:1であり、さらに好ましくは、1:0.1〜1:0.6である。
【0041】
該複素環を有する高分子化合物は、例えば、一般式(1)で表される単量体と、重合性オリゴマー(マクロモノマー)と、共重合成分として他のラジカル重合性化合物と用い、通常のラジカル重合法によって製造することができる。一般的には、懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。このような重合体を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。
【0042】
該ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、さらに連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタン)を使用することができる。
【0043】
[高分子化合物B]
本発明の顔料分散組成物は、下記一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含む高分子化合物(以下、「特定重合体」と称する場合がある。)を含有することが好ましい。
【0044】
【化7】

【0045】
上記一般式(I)及び(II)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表し、m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
【0046】
〜Rは、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、置換若しくは無置換のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
アルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは炭素数1〜3がより好ましい。)メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等が挙げられる。
好ましいアルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
、R、R、及びRとしては、水素原子が好ましく、R及びRとしては、水素原子又はメチル基が、顔料表面への吸着効率の点からも最も好ましい。
【0047】
及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。中でも、−C(=O)O−、−CONH−、フェニレン基が、顔料への吸着性の観点で好ましく、−C(=O)O−が最も好ましい。
【0048】
及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表す。2価の有機連結基としては、置換若しくは無置換のアルキレン基や、該アルキレン基とヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造とからなる2価の有機連結基が好ましい。ここで、アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。また、ヘテロ原子を含む部分構造におけるヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子があげられ、中でも、酸素原子、窒素原子が好ましい。
好ましいアルキレン基として、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
アルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
2価の有機連結基としては、上記のアルキレン基の末端に、−C(=O)−、−OC(=O)−、−NHC(=O)−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を有し、該ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造を介して、隣接した酸素原子と連結したものが、顔料への吸着性の点から好ましい。ここで、隣接した酸素原子とは、一般式(I)におけるL、及び一般式(II)におけるLに対し、側鎖末端側で結合する酸素原子を意味する。
【0049】
及びAは、各々独立に、1価の有機基を表す。1価の有機基としては、置換もしくは非置換のアルキル基、又は、置換もしくは非置換のアリール基が好ましい。
好ましいアルキル基の例としては、炭素原子数が1から20までの直鎖状、分岐状、および環状のアルキル基を挙げることができ、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ノルボルニル基を挙げることができる。
【0050】
置換アルキル基の置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団の基が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルオキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスホナト基と称す)、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナト基と称す)、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナト基と称す)、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスホナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスホナトオキシ基と称す)、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスホナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が挙げられる。
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、これらは更に置換基を有していてもよい。
置換基としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基が、分散安定性の点から好ましい。
【0051】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
【0052】
及びAとしては、分散安定性、現像性の点から、炭素原子数1から20までの直鎖状、炭素原子数3から20までの分岐状、ならびに炭素原子数5から20までの環状のアルキル基が好ましく、炭素原子数4から15までの直鎖状、炭素原子数4から15までの分岐状、ならびに炭素原子数6から10までの環状のアルキル基がより好ましく、炭素原子数6から10までの直鎖状、炭素原子数6から12までの分岐状のアルキル基が更に好ましい。
【0053】
m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表す。分散安定性、現像性の点から、4〜6が好ましく、5が最も好ましい。
【0054】
p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。pの異なるもの、qの異なるものが2種以上、混合されてもよい。p及びqは、分散安定性、現像性の点から、5〜60が好ましく、5〜40がより好ましく、5〜20が更に好ましい。
【0055】
本実施態様における特定重合体としては、分散安定性の点から、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0056】
また、一般式(I)で表される繰り返し単位としては、下記一般式(I)−2で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0057】
【化8】

【0058】
上記一般式(I)−2中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、Aは、1価の有機基を表し、mは、2〜8の整数を表し、pは、1〜100の整数を表す。
【0059】
一般式(I)、(II)、又は、(I)−2で表される繰り返し単位は、それぞれ、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体を、重合あるいは共重合することにより、高分子化合物の繰り返し単位として導入される。
【0060】
【化9】

【0061】
上記一般式(i)、(ii)、及び(i)−2中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、又は1価の有機基を表し、X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表し、L及びLは、各々独立に、単結合、又は2価の有機連結基を表し、Laは、炭素数2〜10のアルキレン基を表し、Lbは、−C(=O)−、又は−NHC(=O)−を表し、A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表し、m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表し、p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。
【0062】
以下に、一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体の好ましい具体例〔単量体(A−1)〜(A−23)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
本実施態様における特定重合体は、一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位から選択される少なくとも1種の繰り返し単位を含んでいればよく、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0068】
また、特定重合体において、一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位の含有量は、特に制限はないが、重合体に含有される全繰り返し単位を100質量%とした場合に、一般式(I)及び(II)のいずれかで表される繰り返し単位を5質量%以上含有することが好ましく、50質量%含有することがより好ましく、50質量%〜80質量%含有することが更に好ましい。
【0069】
本実施態様における特定重合体は、顔料への吸着を高める目的で、顔料に吸着し得る官能基を有する単量体と、前述の一般式(i)、(ii)、(i)−2で表される単量体と、を共重合した高分子化合物であることが好ましい。顔料に吸着し得る官能基を有する単量体としては、具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマー、イオン性基を有するモノマーなどを挙げることができる。中でも、顔料への吸着力の点で、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーが好ましい。
【0070】
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、下記一般式(11)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体からなる群より選択される1種であることが好ましい。中でも、下記一般式(11)で表される単量体であることが特に好ましい。
【0071】
【化14】

【0072】
上記一般式(11)中、Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。Rは、単結合、又は2価の連結基を表す。Yは、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。Zは、含窒素複素環基を有する基を表す。
【0073】
一般式(11)におけるRで表されるアルキル基としては、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。
で表されるアルキル基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基や、メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシロキシ基等のアルコキシ基が好ましい。該アルコキシ基としては、炭素数1〜5であるものが好ましく、炭素数1〜3のものが好ましい。
【0074】
一般式(11)におけるRで表される好ましいアルキル基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基が挙げられる。
中でも、Rとしては、水素原子又はメチル基が最も好ましい。
【0075】
一般式(11)におけるRで表される2価の連結基としては、アルキレン基、又はアルキレン基を含む2価の基が好ましい。該アルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜8のアルキレン基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基が特に好ましい。
また、このアルキレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基等が挙げられる。
で表される好ましいアルキレン基として、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。
【0076】
一般式(11)におけるRで表されるアルキレン基を含む2価の基としては、上記アルキレン基がヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子)を介して2以上連結したものであってもよい。
また、Rで表されるアルキレン基を含む2価の基としては、上記アルキレン基におけるZに結合する方の末端に、−O−、−S−、−C(=O)O−、−CONH−、−C(=O)S−、−NHCONH−、−NHC(=O)O−、−NHC(=O)S−、−OC(=O)−、−OCONH−、及び−NHCO−から選ばれるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む部分構造が結合したものであってもよい。
【0077】
一般式(11)におけるZで表される含窒素複素環基を構成する含窒素複素環構造として、具体的には、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、及び環状イミド構造を有するものが挙げられる。
これらの含窒素複素環構造は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、脂肪族エステル基、芳香族エステル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0078】
Zで表される含窒素複素環基は、中でも、炭素数が6以上である含窒素複素環構造を有する基であることがより好ましく、炭素数が6以上12以下である含窒素複素環構造を有する基であることが特に好ましい。
炭素数が6以上である含窒素複素環構造として、具体的には、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環、ベンズイミダゾール構造、ベンズトリアゾール構造、ベンズチアゾール構造、環状アミド構造、環状ウレア構造、及び環状イミド構造が好ましく、下記一般式(12)、(13)又は(14)で表される構造であることが特に好ましい。
【0079】
【化15】

【0080】
一般式(12)中、Xは、単結合、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基など)、−O−、−S−、−NR−、及び−C(=O)−からなる群より選ばれるいずれかである。ここでRは、水素原子又はアルキル基を表す。Rがアルキル基を表す場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(12)におけるXとしては、単結合、メチレン基、−O−、又は−C(=O)−が好ましく、−C(=O)−が特に好ましい。
【0081】
一般式(14)中、Y及びZは、各々独立に、−N=、−NH−、−N(R)−、−S−、又は−O−を表す。Rはアルキル基を表し、該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクタデシル基などが挙げられる。
上記した中でも、一般式(14)における、Y及びZとしては、−N=、−NH−、及び−N(R)−が特に好ましい。Y及びZの組み合わせとしては、Y及びZのいずれか一方が−N=であり他方が−NH−である組み合わせ(イミダゾリル基)が好ましいものとして挙げられる。
【0082】
一般式(12)、(13)、又は(14)中、環A、環B、環C、及び環Dは、各々独立に、芳香環を表す。該芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピロール環、イミダゾール環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環等が挙げられ、中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、フェノキサジン環、アクリジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、アクリドン環、アントラキノン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環が特に好ましい。
【0083】
具体的には、一般式(12)における環A及び環Bとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
一般式(13)における環Cとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
一般式(14)における環Cとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、等が挙げられる。
【0084】
一般式(12)、(13)又は(14)で表される構造の中でも、分散性、分散液の経時安定性の点からは、ベンゼン環、ナフタレン環がより好ましく、一般式(12)又は(14)においては、ベンゼン環が更に好ましく、一般式(13)においては、ナフタレン環が更に好ましい。
【0085】
また、本発明におけるマレイミド誘導体とは、N位がアルキル基やアリール基などの置換基により置換されているマレイミドを意味する。
【0086】
以下、一般式(11)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体の好ましい具体例(単量体M−1〜M−33)を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0087】
【化16】

【0088】
【化17】

【0089】
【化18】

【0090】
【化19】

【0091】
本実施態様における特定重合体は、一般式(11)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体からなる群より選択された1種の単量体に由来する繰り返し単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0092】
本実施態様における特定重合体中、一般式(11)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体からなる群より選択された1種の単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、重合体に含有される全繰り返し単位を100質量%とした場合に、5質量%以上含有することが好ましく、10質量%〜50質量%含有することがより好ましい。
即ち、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、或いは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、一般式(11)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体からなる群より選択された1種の単量体に由来する重合単位の含有量は5質量%以上であることが好ましい。また、顔料分散組成物を含有する着色感光性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、一般式(1)で表される単量体、マレイミド、及びマレイミド誘導体からなる群より選択された1種の単量体に由来する重合単位の含有量は50質量%以下であることが好ましい。
【0093】
酸性基を有するモノマーの例としては、カルボキシル基を有するビニルモノマーやスルホン酸基を有するビニルモノマーが挙げられる。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なおこれらの内では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0094】
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとして、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。
【0095】
本実施態様における特定重合体は、上述のような酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。このような繰り返し単位を含むことにより、本発明の顔料分散組成物を着色感光性組成物に適用した場合において、未露光部の現像除去性に優れる。
【0096】
本実施態様における特定重合体は、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位を、1種のみ含むものであってもよいし、2種以上を含んでもよい。
特定重合体において、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、好ましくは50mgKOH/g以上であり、特に好ましくは50mgKOH/g〜200mgKOH/gである。即ち、現像液中での析出物の生成抑制という点では、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は50mgKOH/g以上であることが好ましい。顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、2次凝集体の凝集力を効果的に弱めるためには、酸性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量は50mgKOH/g〜200mgKOH/gであることが好ましい。
【0097】
塩基性窒素原子を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられ、(メタ)アクリルアミド類として、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等、が挙げられる。
【0098】
また、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーを用いることも可能である。具体的には、例えば、以下の構造のモノマーを挙げることができる。
【0099】
【化20】

【0100】
イオン性基を有するモノマーとしては、イオン性基を有するビニルモノマー(アニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマー)が挙げられる。この例としては、アニオン性ビニルモノマーとして、前記酸性基を有するビニルモノマーのアルカリ金属塩や、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン)との塩などが挙げられ、カチオン性ビニルモノマーとしては、前記含窒素ビニルモノマーを、ハロゲン化アルキル(アルキル基:C1〜18、ハロゲン原子:塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子);塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸エステル(アルキル基:C1〜18);ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸アルキルエステル(アルキル基:C1〜18);硫酸ジアルキル(アルキル基:C1〜4)等で4級化させたもの、ジアルキルジアリルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0101】
顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーは、分散する顔料の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
本実施態様における特定重合体は、その効果を損なわない範囲において、更に、共重合可能なビニルモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0103】
ここで使用可能なビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリルなどが好ましい。このようなビニルモノマーの具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。なお、本明細書において「アクリル、メタクリル」のいずれか或いは双方を示す場合「(メタ)アクリル」と記載することがある。
【0104】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチルなどが挙げられる。
【0105】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及びイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0106】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
【0107】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0108】
本実施態様における特定共重合体の好ましい態様は、少なくとも一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体と、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーと、を共重合したもので、更に好ましくは、少なくとも前述の一般式(i)−2で表される単量体と、前述の一般式(11)で表される単量体と、酸基を有するモノマーと、を共重合したものである。
この態様により、顔料吸着に優れ、且つ、現像性に優れた顔料分散組成物を与えることができる。
【0109】
本実施態様に係る側鎖に複素環を有する高分子化合物の好ましい分子量は、質量平均分子量(Mw)で1,000〜100,000の範囲、数平均分子量(Mn)で400〜50,000の範囲であることが好ましい。質量平均分子量(Mw)で5,000〜50,000の範囲、数平均分子量(Mn)で2,000〜30,000の範囲であることがより好ましい。特に、質量平均分子量(Mw)で8,000〜30,000の範囲、数平均分子量(Mn)で4,000〜12,000の範囲であることが最も好ましい。
即ち、顔料の1次粒子の凝集体である2次凝集体を効果的にほぐし、あるいは、再凝集を効果的に弱めるための観点からは、特定重合体の質量平均分子量(Mw)は1000以上であることが好ましい。また、顔料分散組成物を含有する着色感光性組成物によりカラーフィルタを製造する際の現像性の観点からは、特定重合体の質量平均分子量(Mw)は30000以下であることが好ましい。
【0110】
本実施態様における特定重合体は、例えば、下記一般式(i)、(ii)、又は、(i)−2で表される単量体と、共重合成分として他のラジカル重合性化合物(前述のような各種モノマー)と、を用い、通常のラジカル重合法によって製造することができる。一般的には、懸濁重合法あるいは溶液重合法などを用いる。このような特定重合体を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合してもよい。なお、ラジカル重合の際、ラジカル重合開始剤を使用することができ、また、更に連鎖移動剤(例、2−メルカプトエタノールおよびドデシルメルカプタン)を使用することができる。
【0111】
本実施態様の顔料分散組成物中、特定重合体の含有量としては質量比で、顔料:特定重合体=1:0.1〜1:2が好ましく、より好ましくは、1:0.2〜1:1であり、更に好ましくは、1:0.4〜1:0.7である。
【0112】
また、本実施態様の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上述の特定共重合体の他に、他の高分子化合物を同時に使用してもよい。他の高分子化合物としては、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等が用いられる。天然樹脂としてはロジンが代表的であり、変性天然樹脂としては、ロジン誘導体、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体およびそれらのオリゴマーが挙げられる。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。天然樹脂で変性された合成樹脂としては、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物が挙げられる。
【0113】
[高分子化合物C]
本実施態様の高分子化合物は、アクリル酸を主鎖に有し、アクリル酸の含有量は5〜30質量%であることが好ましく、質量平均分子量1,000〜100,000の範囲のグラフト型高分子化合物であることが好ましい。
【0114】
特定グラフト重合体については、アクリル酸基を主鎖に含んでいればよい。またアクリル酸基を、さらに枝部に含んでもよい。特定グラフト重合体の合成方法は、新高分子実験学第2巻(共立出版、1995年)などにあるように、一般的な方法として(1)主鎖高分子から枝モノマーを重合させる方法、(2)主鎖高分子に枝高分子を結合させる方法(3)主鎖モノマーを枝高分子と共重合させる方法などが使用可能である。即ち、特定グラフト重合体は、アクリル酸と重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)と他の共重合可能なモノマーと共重合させて得られるものであることが好ましい。
【0115】
アクリル酸の導入量は、分散性の観点から、5〜30質量%が好ましい。30質量%よりも多くなると、共重合されるマクロモノマー量が相対的に少なくなるため立体反発鎖が寄与せず十分な分散安定性を得られない。一方、5質量%以下では、高分子化合物全体として十分な柔軟性が得られず、分散安定性、現像性が良化する効果が得られにくい。さらに、アクリル酸の導入量は、マクロモノマーの種類や分子量などにも依るが、10〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が最も好ましい。
【0116】
[高分子化合物D]
本実施態様の高分子化合物は、下記一般式(31)及び(32)から選択される繰り返し単位を有することが好ましく、該繰り返し単位が5〜100質量%含有されるものであることがより好ましく、質量平均分子量1,000〜100,000の高分子化合物であることが好ましい。
【0117】
一般式(31)
−Q−Q−Z−
ここで Qは −(C=O)− または −SO− を、
は −NH− または −CHR− を、
Zは −(C=O)−R− または −SO−R− を示す。
また Rは 水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルキル基を、
は アルキレン基、シクロアルキレン基、またはアリーレン基を示す。
また、RとRとは互いに連結基を介して連結してもよい。
一般式(32)
−Rf−OH
ここで、Rfは 少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。
【0118】
一般式(31)で表される部分構造(以下酸基あるいは酸基構造と称することがある)の具体例としては、下記構造が挙げられる。
【化22】

【0119】
一般式(32)で表される酸基としては、例えば、−C(CFOH、−C(C252OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF32OHが好ましい。
【0120】
この高分子化合物に含まれる一般式(31)および一般式(32)の酸基の量は、分散する顔料の種類に応じて適宜調整することができる。酸基を含む繰返し単位の量は、5〜100質量%が好ましく、10〜80質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。好ましい酸価としては、30〜300mgKOH/g、より好ましくは50〜200mgKOH/gである。酸価が30mgKOH/g未満では現像ができなかったり、現像残りが生じる。酸価が300mgKOH/gを超えると、分散性安定性が不良になったり、アルカリ現像での速度が早くなり過ぎて、適切な現像ラチチュードが得られない。
酸価は、高分子化合物1gを中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)の測定によるものである。モノマーが有する酸基の数、モノマーの分子量、モノマーの組成比などを調整し、高分子化合物が有する酸性基の数を制御することで、所望の酸価の高分子化合物を得ることができる。
【0121】
高分子化合物は、具体的には下記一般式(G−I)〜(G−III)で表される単量体を重合することによって、一般式(31)および(32)を導入することができ、好ましい。
【化23】

一般式(G−I)〜(G−III)で、Rは水素原子、またはメチル基を表す。Sは上記一般式(1−a)〜(1−f)で表される連結基を表す。Rは、置換基を有していても良いアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。Rfは、少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。Wは、単結合または、
【化24】

(Z、Zは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基を表し、Zは水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基を表す。)等の原子団から選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表す。
【0122】
一般式(G−I)〜(G−III)は、さらに下記一般式(G−IV)〜(G−VII)で表されることが好ましい。
【化25】

(Wはアルキレン、アルコキシ、エステルから選ばれた単独の連結基もしくは任意の組合せで構成された連結基を表す。Sは上記一般式(1−a)〜(1−f)で表される連結基を表す。R1は、置換基を有していても良いアルキル基、シクロアルキル基または
アリール基を表す。Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、シアノ基を表す。Rは水素原子、またはメチル基を表す。Rfは、少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。)
【0123】
以下に、一般式(G−III)〜(G−VII)の具体例を示す。Rは水素原子、またはメチル基を表す。
【化26】

【0124】
本実施態様の高分子化合物は、既述のようなモノマーを重合しても合成できるし、前駆体の高分子化合物と、酸基を有する低分子化合物を反応させて合成することもできる。
本実施態様の高分子化合物は、ブロック型高分子、グラフト型高分子、及び末端変性型高分子から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。

【0125】
本実施態様の高分子化合物は、分散工程において、顔料の表面に吸着し、再凝集を防止する様に作用するものと思われる。そのため、本実施態様の高分子化合物は直鎖のランダム共重合体でも良いが、より効果が大きいブロック型高分子、グラフト型高分子、末端変性型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
【0126】
(直鎖型ランダム共重合体)
直鎖型ランダム共重合体は、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマーを、他の共重合可能なモノマーとラジカル重合等の任意の重合法により得ることができる。他の共重合可能なモノマーとしては、ブロック型高分子の項で詳述するが、(i)有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、(ii)酸性基を有するモノマー、(iii)塩基性窒素原子を有するモノマー、(iv)ウレア基、ウレタン基、配
位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマー、(v)イオン性官能基を含有するモノマー、(vi)(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリル などのモノマーを1種以上任意に選択できる。(i)から(iii)のモノマー群から選ばれた1種以上を含むことが好ましい。
【0127】
直鎖型ランダム共重合体の好ましい質量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、3,000〜50,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であると、安定化効果をより効果的に得ることができ、また、質量平均分子量が100,000以下であると、より効果的に吸着して良好な分散性を発揮することができる。
【0128】
(ブロック型高分子)
ブロック型高分子としては、特に限定されないが、顔料吸着ブロック(a)と、酸基を有するブロック(b)と、顔料に吸着しないブロック(c)とからなるブロック型高分子が挙げられる。
顔料吸着ブロック(a)を構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーが挙げられる。具体的には、有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、酸性基を有するモノマー、塩基性窒素原子を有するモノマーなどを挙げることができる。
【0129】
有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマーとしては、例えば、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、アゾレーキ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、ジケトピロロピロール系、アントラピリジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、フラバンスロン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系の色素構造や、例えば、チオフェン、フラン、キサンテン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ジオキソラン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、ジオキサン、モルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピペラジン、トリアジン、トリチアン、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンゾチアゾール、コハクイミド、フタルイミド、ナフタルイミド、ヒダントイン、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、アクリドン、アントラキノン等の複素環構造を有するモノマーを挙げることができる。より具体的には、特に制限されないが、以下のような構造のモノマーを挙げることができる。
【0130】
【化27】

【0131】
酸性基を有するモノマーとしては、カルボキシル基を有するビニルモノマーや、スルホン酸基あるいはリン酸基を有するビニルモノマーを含んでも良い。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。なおこれらの内では、共重合性やコスト、溶解性などの観点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0132】
また、スルホン酸基を有するビニルモノマーとしては、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられ、リン酸基を有するビニルモノマーとして、リン酸モノ(2−アクリロイルオキシエチルエステル)、リン酸モノ(1−メチル−2−アクリロイルオキシエチルエステル)などが挙げられる。酸基は、上記した酸性基とは別に導入することができる。
【0133】
塩基性窒素原子を有するモノマーとして、複素環を有するモノマーとして、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾールなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノヘキシル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジイソプロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−n−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジ−i−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、(メタ)アクリル酸ピペリジノエチル、(メタ)アクリル酸1−ピロリジノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−メチル−2−ピロリジルアミノエチル及び(メタ)アクリル酸N,N−メチルフェニルアミノエチルなどが挙げられ、(メタ)アクリルアミド類として、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリルアミド及び6−(N,N−ジエチルアミノ)ヘキシル(メタ)アクリルアミド、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、スチレン類として、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチルアミノメチルスチレン等、が挙げられる。
【0134】
また、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマーを用いることも可能である。具体的には、例えば、以下の構造のモノマーを挙げることができる。
【0135】
【化28】

【0136】
更に、イオン性官能基を含有するモノマーを利用することができる。イオン性ビニルモノマー(アニオン性ビニルモノマー、カチオン性ビニルモノマー)の例としては、アニオン性ビニルモノマーとして、前記酸性基を有するビニルモノマーのアルカリ金属塩や、有機アミン(例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の3級アミン)との塩などが挙げられ、カチオン性ビニルモノマーとしては、前記含窒素ビニルモノマーを、ハロゲン化アルキル(アルキル基:C1〜18、ハロゲン原子:塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子);塩化ベンジル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸エステル(アルキル基:C1〜18);ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸アルキルエステル(アルキル基:C1〜18);硫酸ジアルキル(アルキル基:C1〜4)等で4級化させたもの、ジアルキルジアリルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0137】
顔料に吸着し得る官能基を有するモノマーは、分散する顔料の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
酸基を有するブロック(b)を構成する単量体としては、既述のものが挙げられる。好ましくは、上記一般式(G−I)〜(G−III)で表される単量体から構成される。
酸基を有するモノマーは、分散する顔料の種類に応じて、適宜選択することができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
顔料に吸着しないブロック(c)を構成する単量体としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0140】
(メタ)アクリル酸エステル類の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0141】
クロトン酸エステル類の例としては、クロトン酸ブチル、およびクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどが挙げられる。
マレイン酸ジエステル類の例としては、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、およびマレイン酸ジブチルなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル類の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル類の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0142】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0143】
スチレン類の例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0144】
ビニルエーテル類の例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルおよびフェニルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0145】
ビニルケトン類の例としては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
オレフィン類の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
マレイミド類の例としては、マレイミド、ブチルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリロニトリルの例としては、メタクリロニトリル、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0146】
ブロック型高分子を得る方法としては、従来公知の方法が利用して得ることができる。例えば、リビング重合、イニファータ法等が知られており、更に他の方法として、顔料吸着基を有する単量体又は顔料吸着基を有しない単量体をラジカル重合する際に、チオールカルボン酸又は2−アセチルチオエチルエーテル、10−アセチルチオデカンチオール等の分子内にチオエステルとチオール基とを含有する化合物を共存させて重合して得られた重合体を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリで処理して、片末端にチオール基を有する重合体とし、得られた片末端にチオール基を有する重合体の存在下でもう一方のブロックの単量体成分をラジカル重合する方法も知られている。これらの中でも、リビング重合が好適である。
【0147】
ブロック型高分子の質量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であると、安定化効果をより効果的に得ることができ、また、質量平均分子量が100,000以下であると、より効果的に吸着して良好な分散性を発揮することができる。
【0148】
(グラフト型高分子)
グラフト型高分子については、上記の酸基を主鎖あるいは枝部、または両方のいずれかに含んでいれば良い。グラフト型高分子の合成方法は、新高分子実験学第2巻(共立出版、1995年)などにあるように、一般的な方法として、主鎖高分子から枝モノマーを重合させる方法、主鎖高分子に枝高分子を結合させる方法、および主鎖モノマーを枝高分子と共重合させる方法などが使用可能である。
【0149】
即ち、本実施態様で使用できるグラフト型高分子は、主鎖あるいは枝部のいずれかに、または両方に、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマー1種以上を、他の共重合可能なモノマーと共重合させて得られるものである。
他の共重合可能なモノマーとしては、前述の(i)有機色素構造あるいは複素環構造を有するモノマー、(ii)酸性基を有するモノマー、(iii)塩基性窒素原子を有する
モノマー、(iv)ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基を有するモノマー、(v)イオン性官能基を含有するモノマー、(vi)(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、オレフィン類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリル などのモノマーを1種以上任意に選択できる。
【0150】
本実施態様のグラフト型高分子において好ましい形態として、下記形態が挙げられる。
・前述の(i)〜(iv)で表されるモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマー、重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子。
・前述の(i)〜(iv)で表されるモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含む重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子。
・前述の(i)〜(iv)で表されるモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含むモノマー、上記一般式(G−I)〜(G−III)に示した酸基を含む重合性オリゴマー(以下、マクロモノマーと称する)を共重合成分とするグラフト型高分子。
【0151】
上記グラフト型高分子の質量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは1,000〜100,000の範囲とすることが好ましく、5,000〜50,000の範囲がより好ましい。質量平均分子量が1,000以上であると、安定化効果をより効果的に得ることができ、また、質量平均分子量が100,000以下であると、より効果的に吸着して良好な分散性を発揮することができる。
特に枝部の質量平均分子量は、300〜30,000が好ましい。より好ましくは1,000〜20,000である。上記範囲に枝部の分子量があると、現像性が特に良好であり、現像ラチチュードが広い。
【0152】
(末端変性型高分子)
末端変性型高分子としては、主鎖に本実施態様の酸基を有する繰返し単位を含み、末端に顔料と親和性の高い官能基がある高分子である。即ち、主鎖は、前述の直鎖型ランダム共重合体をそのまま使用することができる。共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、ラジカル重合性モノマーとしては、前記「酸基を有する単量体(b)」および「顔料に吸着しないブロックを構成する単量体(c)」を用いることができる。本実施態様で使用可能な末端変性型高分子は、この直鎖型ランダム共重合体の末端に、下記に記載する変性を施して得られた高分子である。
【0153】
ポリマーの末端に官能基を有する高分子を合成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法およびこれらを組み合わせた方法などを挙げることができる。
1.官能基含有の重合開始剤を用いて重合(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など)で合成する方法
2.官能基含有の連鎖移動剤を用いてラジカル重合で合成する方法
ここで導入する官能基は、有機色素構造、複素環構造、酸性基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基およびイオン性官能基から選択される基などが挙げられる。
【0154】
ポリマー末端に官能基を導入できる連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メカルプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メカルプルイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、ベンゼンチオール、トルエンチオール、メルカプトアセトフェノン、ナフタレンチオール、ナフタレンメタンチオール等)またはこれらメルカプト化合物の酸化体であるジスルフィド化合物、およびハロゲン化合物(例えば、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸など)が挙げられる。
【0155】
また、ポリマー末端に官能基を導入できる重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2−シアノペンタノール)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等又はこれらの誘導体等が挙げられる。
【0156】
上記の末端変性型高分子の分子量としては、質量平均分子量1,000〜50,000であることが好ましい。上記数平均分子量が1,000以上であると、顔料分散剤としての立体反発効果をより効果的に得ることができ、50,000以下であると、より効果的に立体効果を抑制し、顔料への吸着の時間をより短縮できる。
【0157】
本発明における有機顔料微粒子は、有機顔料を良溶媒に溶解した溶液と、良溶媒に対して相溶性を有し有機顔料に対して貧溶媒となる溶媒とを混合して、有機顔料を微粒子として析出させたビルドアップ顔料微粒子である。ここで良溶媒と貧溶媒との組み合わせは有機顔料の溶解度に十分な差があることが好ましく、有機顔料に合わせて好ましいものを選択することが好ましいが、本発明における工程を可能にする組み合わせであればいかなる選択も可能である。
【0158】
良溶媒は用いる有機顔料を溶解することが可能で、前記貧溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に限定されない。有機顔料の良溶媒への溶解性は有機顔料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。有機顔料の良溶媒への溶解度に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。
【0159】
良溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、エステル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が好ましく、水性溶媒、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒がさらに好ましく、スルホキシド化合物溶媒またはアミド化合物溶媒が特に好ましい。
【0160】
スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
【0161】
また、良溶媒に有機顔料を溶解した溶液の濃度としては、溶解時の条件における有機顔料の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が好ましい。
有機顔料溶液の調製条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0162】
良溶媒の具体例として列挙したものと貧溶媒として列挙したものとで共通するものもあるが、良溶媒及び貧溶媒として同じものを組み合わせることはなく、採用する各有機顔料との関係で良溶媒に対する溶解度が貧溶媒に対する溶解度より十分高ければよく、例えばその溶解度差が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。良溶媒と貧溶媒に対する溶解度の差に特に上限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると50質量%以下であることが実際的である。
【0163】
有機顔料を良溶媒中に均一に溶解するとき、酸もしくはアルカリなどの溶解促進剤を添加して溶解してもよい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリの添加が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子等を分子内に多く有するときは酸の添加が好ましい。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合化合物顔料はアルカリ性で溶解される。フタロシアニン化合物顔料は酸性で溶解されるが、中には、アルカリ性で溶解されるものもあり、アルカリ性で溶解する機構は明らかでない。
【0164】
アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基が挙げられ、なかでも、トリアルキルアミン、金属アルコキシドが好ましく、金属アルコキシドがより好ましい。アルカリの添加量は特に限定されないが、無機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜30モル当量であることが好ましく、1.0〜25モル当量であることがより好ましく、1.0〜20モル当量であることが特に好ましい。有機塩基の場合、有機顔料に対して1.0〜100モル当量であることが好ましく、5.0〜100モル当量であことがより好ましく、20〜100モル当量であることが特に好ましい。
【0165】
酸としては、硫酸、塩酸、燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられ、なかでも無機酸であることが好ましく、硫酸であることがより好ましい。酸の添加量は特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、有機顔料に対して3〜500モル当量であることが好ましく、10〜500モル当量であることがより好ましく、30〜200モル当量であることが特に好ましい。
【0166】
アルカリまたは酸を有機溶媒と混合して、有機顔料の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機顔料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。この量の下限値に特に制限はないが、通常0.01質量%以上である。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0167】
有機顔料溶液の粘度は0.5〜80.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0168】
貧溶媒は特に限定されないが、有機顔料の溶解度が0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。有機顔料の貧溶媒への溶解度にとくに下限はないが、通常用いられる有機顔料を考慮すると0.000001質量%以上が実際的である。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。良溶媒の貧溶媒に対する溶解量に特に上限はないが、任意の割合で混じり合うことが実際的である。
【0169】
貧溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましく、水性溶媒、アルコール化合物溶媒またはエステル化合物溶媒がより好ましい。
【0170】
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPFとの塩などが挙げられる。
【0171】
前記第1の良溶媒と第2の良溶媒とは同じものであっても異なるものであってもよいが、同種のもの又は同じものを組み合わせて用いることが好ましい。前記第1の貧溶媒と第2の貧溶媒とは同じものであっても異なるものであってもよいが、同種のもの又は同じものを組み合わせて用いることが好ましい。
【0172】
顔料微粒子を析出生成させる際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
【0173】
有機顔料溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、有機顔料溶液を貧溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。さらに供給管を介してポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0174】
有機顔料溶液と貧溶媒との混合に当り、レイノルズ数を調節することにより、析出生成させる顔料微粒子の粒子径を制御することができる。ここでレイノルズ数は流体の流れの状態を表す無次元数であり次式で表される。
Re=ρUL/μ ・・・ 数式(1)
数式(1)中、Reはレイノルズ数を表し、ρは有機顔料溶液の密度[kg/m]を表し、Uは有機顔料溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度[m/s]を表し、Lは有機顔料溶液と貧溶媒とが出会う部分の流路もしくは供給口の等価直径[m]を表し、μは有機顔料溶液の粘性係数[Pa・s]を表す。
【0175】
等価直径Lとは、任意断面形状の配管の開口径や流路に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径をいう。等価直径Lは、配管の断面積をA、配管のぬれぶち長さ(周長)または流路の外周をpとすると下記数式(2)で表される。
L=4A/p ・・・ 数式(2)
配管を通じて有機顔料溶液を貧溶媒中に注入して粒子を形成することが好ましく、配管に円管を用いた場合には等価直径は円管の直径と一致する。例えば、液体供給口の開口径を変化させて等価直径を調節することができる。等価直径Lの値は特に限定されないが、例えば、上述した供給口の好ましい内径と同義である。
【0176】
有機顔料溶液と貧溶媒とが出会う時の相対速度Uは、両者が出会う部分の面に対して垂直方向の相対速度で定義される。すなわち、例えば静止している貧溶媒中に有機顔料溶液を注入して混合する場合は、供給口から注入する速度が相対速度Uに等しくなる。相対速度Uの値は特に限定されないが、例えば、0.5〜100m/sとすることが好ましく、1.0〜50m/sとすることがより好ましい。
【0177】
有機顔料溶液の密度ρは、選択される材料の種類により定められる値であるが、本発明の製造方法に好ましく用いられる材料の範囲では、例えば、0.8〜2.0kg/mであることが実際的である。また、有機顔料溶液の粘性係数μについても用いられる材料や環境温度等により定められる値であるが、その好ましい範囲は、上述した有機顔料溶液の好ましい粘度と同義である。
【0178】
レイノルズ数(Re)の値は、小さいほど層流を形成しやすく、大きいほど乱流を形成しやすい。例えば、レイノルズ数を60以上で調節して顔料微粒子の粒子径を制御して得ることができ、100以上とすることが好ましく、150以上とすることがより好ましい。レイノズル数に特に上限はないが、例えば、100000以下の範囲で調節して制御することで良好な顔料微粒子を制御して得ることができ好ましい。あるいは、得られる微粒子の平均粒径が60nm以下となるようにレイノルズ数を高めた条件としてもよい。このとき、上記の範囲内においては、通常レイノルズ数を高めることで、より粒径の小さな顔料微粒子を制御して得ることができる。
【0179】
有機顔料溶液と貧溶媒との混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。
顔料微粒子を析出させた場合液中の粒子濃度は特に制限されないが、溶媒1000mlに対して顔料微粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
また、顔料微粒子を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0180】
顔料微粒子の粒径に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、質量平均、体積平均等)などがあり、本発明においては、特に断りのない限り、平均粒径とは数平均径をいう。顔料微粒子(一次粒子)の平均粒径はナノメートルサイズであり、平均粒径が1nm〜0.5μmであることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、2〜100nmであることがさらに好ましく、5〜80nmであることが特に好ましい。なお本発明の製造方法で形成される粒子は結晶質粒子でも非晶質粒子でもよく、またはこれらの混合物でもよい。
【0181】
また、粒子の単分散性を表す指標として、本発明においては、特に断りのない限り、体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)の比(Mv/Mn)を用いる。顔料微粒子(一次粒子)の単分散性、つまりMv/Mnは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
顔料微粒子の粒径の測定方法としては、顕微鏡法、質量法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、動的光散乱法が挙げられ、顕微鏡法、動的光散乱法が特に好ましい。顕微鏡法に用いられる顕微鏡としては、例えば、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などが挙げられる。動的光散乱法による粒子測定装置として、例えば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−7000シリーズ(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0182】
顔料微粒子を析出させ分散液を調製するに当り、顔料溶液及び第1の貧溶媒の少なくとも一方に、少なくとも第1の貧溶媒が良溶媒(第2溶媒に対する溶解度が4.0質量%以上)となるような化合物(以下、粒径調整剤と称することがある)を含有させてもよい。
【0183】
高分子粒径調整剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体、ジアリルアミン塩酸塩/マレイン酸共重合体、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、縮合ナフタレンスルホン酸塩、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩/ジアリルアミン塩酸塩共重合体、ジアリルアミン系モノマー/SO共重合体などが好ましい。これら粒径調整剤は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
質量平均分子量が1,000〜500,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることが特に好ましい。
【0184】
アニオン粒径調整剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0185】
カチオン性の粒径調整剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンのカチオン性物質の塩が挙げられる。これらカチオン性粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0186】
両イオン性の粒径調整剤は、前記アニオン性の粒径調整剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性の粒径調整剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する粒径調整剤である。
【0187】
ノニオン性の粒径調整剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性の粒径調整剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0188】
前記高分子化合物として含窒素高分子化合物を用いる場合、粒径調整剤としては、酸性基を有する高分子化合物からなる粒径調整剤、塩基性窒素原子を有する化合物からなる粒径調整剤を併用しないことが好ましい。また、前記高分子化合物として酸性基を有する高分子化合物を用いる場合、粒径調整剤としては、含窒素高分子化合物からなる粒径調整剤を併用しないことが好ましい。
【0189】
粒径調整剤の含有量は、顔料微粒子の粒径制御をより一層向上させるために、顔料に対して0.1〜1000質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量%の範囲であり、さらに好ましくは5〜200質量%の範囲である。また粒径調整剤は、単独で用いても、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0190】
本発明においては、顔料微粒子を析出させた後、その析出粒子を含有する分散液の溶媒分を減少させるか、または除去することが好ましい(以下、この操作を単に濃縮ということもある。)。それによって、カラーフィルタ塗布液やインクジェット用インクに適したナノ粒子濃縮液や顔料微粒子粉末とすることができる。
【0191】
本発明において溶媒の濃縮には、通常の装置を単体であるいは組み合わせて用いることが可能である。例えば、熱風を用いる乾燥機としては棚型乾燥機、バンド乾燥機、撹拌乾燥機、流動層乾燥機、噴霧乾燥機、気流乾燥機など、熱伝導を利用する乾燥機としてはドラム乾燥機、多重管乾燥機、円筒乾燥機などが好適に用いられる。また、溶媒組成によっては凍結乾燥機や赤外線乾燥機も使用することが可能である。
これらの手段の中では、分散液から直接乾燥した顔料微粒子粉末を得るのに適しているという観点から、噴霧乾燥機(例えば大川原化工機(株)製COC−12[商品名])、流動層乾燥機(例えば(株)奈良機械製作所製MSD−100[商品名])が特に好ましく用いられる。また、残存溶媒量の少ない顔料微粒子粉末とするために複数の乾燥手段を組み合わせて使用してもよく、例えば円筒乾燥機で予備濃縮した顔料分散組成物をドラム乾燥機にて完全に乾燥させて顔料微粒子粉末を得る、といったプロセスを使用することができる。
乾燥条件については、溶媒を蒸発させることが可能であり、かつ顔料や分散剤などの材料が変性しない範囲であれば特に制約されない。その他分散剤などがこれよりも低い温度で変性する場合にはさらに低い温度にする必要があることはもちろんである。ただし使用する溶媒種によっては、許される温度範囲では乾燥速度が遅くなることも考えられるため、その際は乾燥速度を増加させる目的で、乾燥機の種類によって減圧、撹拌混合、多段化などの手段を組み合わせることができる。
【0192】
溶媒分を減少させるもしくは除去する量は特に限定されないが、溶媒分を減少させる態様においては全溶媒分の50質量%以上を取り除くことが好ましく、75質量%以上を取り除くことがより好ましい。溶媒分を除去して顔料微粒子粉末とする態様においては全溶媒分の80質量%以上を取り除くことが好ましく、90質量%以上を取り除くことがより好ましい。
溶媒分を減少させるもしくは除去することにより溶媒分を減じたとき、残された分散組成物中の含水率は特に限定されないが、0.01〜3質量%とすることが好ましく、0.01〜1質量%とすることがより好ましい。このとき例えば上記の乾燥法等により溶媒分を除去して顔料微粒子粉末とすることが好ましく、このとき固形分の含率を50〜100質量%とすることが好ましく、70〜100質量%とすることがより好ましい。
濃縮工程は複数回行ってもよい。
【0193】
本発明の好ましい実施態様として用いられる高分子化合物Aは、最後の濃縮工程を行うより以前に添加することが好ましい。このようにすることで顔料微粒子の表面が高分子化合物Aで被覆され、濃縮時の顔料微粒子の凝集体の生成を効果的に抑制、あるいは、凝集力を効果的に弱めることができ、1次粒子に近い状態の分散体を得ることができ、コントラストの高いカラーフィルタを得ることができる。
【0194】
顔料微粒子は例えばビヒクル中で分散させた状態で用いることができる。前記ビヒクルとは、塗料でいえば、液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める部分(バインダー)と、これを溶解希釈する成分(有機溶媒)とを含む。なお本発明においては、顔料微粒子形成時に用いるバインダーと再分散化に用いるバインダーとが同じであっても異なっていてもよい。
【0195】
本発明の顔料分散組成物の顔料微粒子濃度は目的に応じて適宜定められるが、好ましくは分散組成物全量に対して顔料微粒子が2〜30質量%であることが好ましく、4〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。
上記のようなビヒクル中に分散させる場合に、バインダーおよび溶解希釈成分の量は有機顔料の種類などにより適宜定められるが、分散組成物全量に対して、バインダーは1〜30質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが特に好ましい。溶解希釈成分は5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。
【0196】
溶媒分を減じた濃縮顔料微粒子液においては、先にも述べたとおり、ナノ粒子が凝集することがある。このような凝集顔料微粒子を再分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、ナノ粒子の熱凝集が起こるため(非特許文献1参照)、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御、などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて濃縮した顔料微粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の分散機が挙げられる。また、高圧分散法や、微小粒子ビーズの使用による分散方法も好適なものとして挙げられる。
【0197】
着色感光性樹脂組成物は、前記有機顔料微粒子の分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含む。以下、着色感光性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0198】
ナノメートルサイズの有機顔料微粒子及びその分散液を作製する方法については既に詳細に述べた。顔料微粒子の含有量は、着色感光性樹脂組成物中の全固形分(本発明において、全固形分とは、有機溶媒を除く組成物合計をいう。)に対し、3〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜60質量%がさらに好ましい。この量が多すぎると分散液の粘度が上昇し製造適性上問題になることがある。少なすぎると着色力が十分でない。また、調色のために通常の顔料と組み合わせて用いてもよい。顔料は上記で記述したものを用いることができる。
【0199】
モノマーもしくはオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合する多官能モノマーであることが好ましい。そのようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。
モノマーもしくはオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する含有量は5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。この量が多すぎると現像性の制御が困難になり製造適性上問題となる。少なすぎると露光時の硬化力が不足する。
【0200】
バインダーとしては、酸性基を有するバインダーが好ましく、インクジェットインクないし着色感光性樹脂組成物の調製時に添加することもできるが、前記顔料微粒子分散組成物を製造する際、または顔料微粒子形成時に添加することも好ましい。有機顔料溶液および有機顔料溶液を添加して顔料微粒子を生成させるための貧溶媒の両方もしくは一方にバインダーを添加することもできる。またはバインダー溶液を別系統で顔料微粒子形成時に添加することも好ましい。バインダーとしては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するアルカリ可溶性のポリマーが好ましい。バインダーは、単独で用いてもよく、或いは通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で使用してもよく、顔料微粒子100質量部に対する添加量は10〜200質量部が一般的であり、25〜100質量部が好ましい。
【0201】
光重合開始剤又は光重合開始剤系(本発明において、光重合開始剤系とは複数の化合物の組み合わせで光重合開始の機能を発現する混合物をいう。)としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」や、オキシム系として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、O−ベンゾイル−4’−(ベンズメルカプト)ベンゾイル−ヘキシル−ケトキシム、2,4,6−トリメチルフェニルカルボニル−ジフェニルフォスフォニルオキサイド、ヘキサフルオロフォスフォロ−トリアルキルフェニルホスホニウム塩等も好適なものとしてあげることができる。
光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を用いることが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが少なくできる。
着色感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤又は光重合開始剤系の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。この量が多すぎると感度が高くなりすぎ制御が困難になる。少なすぎると露光感度が低くなりすぎる。露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましい。照射量は5〜1500mJ/cmが好ましく、10〜1000mJ/cmがより好ましく、10〜500mJ/cmが特に好ましい。
【0202】
着色感光性樹脂組成物においては、上記成分の他に、更に樹脂組成物調製用有機溶媒(第4溶媒)を用いてもよい。第4溶媒の例としては、特に限定されないが、エステル類、エーテル類、ケトン類が挙げられる。これら溶剤のうち、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が溶剤として好ましく用いられる。これらの溶剤は、単独で用いてもあるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。またこの第4溶媒として前記の高沸点有機溶剤を用いることができ、例えば沸点が180℃〜250℃である溶剤を必要によって使用することができる。第4溶媒の含有量は、樹脂組成物全量に対して10〜95質量%が好ましい。
【0203】
また着色感光性樹脂組成物中には、界面活性剤、熱重合防止剤、着色剤(染料、顔料)、紫外線吸収剤、接着助剤、その他の添加剤等を含有させることができる。
【0204】
本発明のインクジェットインクとしてはカラーフィルタ用以外にも、画像形成用等、通常のインクジェットインクとしてもよいが、なかでもカラーフィルタ用インクジェットインクとすることが好ましい。インクジェットインクとして、本発明における実施態様としては特に限定されないが例えば特開2002−201387号に記載される方法などを好ましく用いることが出来る。
本発明のインクジェットインクは前記有機顔料微粒子(a)を用いたものであればよく、さらに、バインダー(b)と、モノマーもしくはオリゴマー(c)とを含有することが好ましい。ここで、バインダー(b)モノマーもしくはオリゴマー(c)としては、先に着色感光性樹脂組成物において説明したものを用いることができる。本発明のインクジェットインクにおいては、さらに光重合開始剤ないしは光重合開始剤系(d)、その他の添加剤を含有させてもよい。それぞれの成分((a)〜(d)、その他の添加剤)の含有量は先に着色感光性組成物において説明したものと同様にしてもよい。ただし、本発明のインクジェットインクをカラーフィルタ作製用インクとするときには、感光性インクとはしない態様が好ましく、光重合開始剤ないしは光重合開始剤系を用いないことが好ましい。
【0205】
インクジェットインクについては、粘度の変動幅が±5%以内になるようインク温度を制御することが好ましい。射出時の粘度は5〜25mPa・sであることが好ましく、8〜22mPa・sであることがより好ましく、10〜20mPa・sであることが特に好ましい(本発明において粘度は、特に断らない限り25℃のときの値である。)。前記射出温度の設定以外に、インクに含有させる成分の種類と添加量を調節することで、粘度の調整をすることができる。前記粘度は、例えば、円錐平板型回転粘度計やE型粘度計などの通常の装置により測定することができる。
また、射出時のインクの表面張力は15〜40mN/mであることが、画素の平坦性向上の観点から好ましい(本発明において表面張力は、特に断らない限り23℃のときの値である。)。より好ましくは、20〜35mN/m、最も好ましくは、25〜30mN/mである。表面張力は、界面活性剤の添加や、溶剤の種類により調整することができる。前記表面張力は、例えば、表面張力測定装置(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z)や、全自動平衡式エレクトロ表面張力計ESB−V(協和科学社製)などの測定器を用いて白金プレート方法により測定することができる。
【0206】
カラーフィルタ用インクジェットインクの吹き付けとしては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
また、各画素形成のために用いるインクジェット法に関しては、インクを熱硬化させる方法、光硬化させる方法、あらかじめ基板上に透明な受像層を形成しておいてから打滴する方法など、通常の方法を用いることができる。
【0207】
本発明においては、カラーフィルタ用インクジェットインクを用いて画素を形成する前に、予め隔壁を作製し、該隔壁に囲まれた部分にインクを付与することが好ましい。この隔壁はどのようなものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁(以下、単に「隔壁」とも言う。)であることが好ましい。該隔壁は通常のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材、方法により作製することができる。
【0208】
上記の着色感光性樹脂組成物は通常の塗布方法により塗布することができ、それを乾燥することによって塗布膜を形成することができる。塗布方法については例えば、スリット状ノズルによる塗布、スピン塗布などが挙げられる。
【0209】
本発明の感光性転写材料は、上記の着色感光性樹脂組成物を含有する感光性樹脂層を有してなり、具体的な構成は特に限定されないが、例えば一体型となったフイルムを用いて形成したものであることが好ましい。一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。
【0210】
感光性転写材料において、仮支持体としては、可撓性を有し、加圧、若しくは加圧及び加熱下においても著しい変形、収縮若しくは伸びを生じないものであることが必要である。そのような仮支持体の例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等を挙げることができ、中でも2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0211】
熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル及びそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0212】
感光性転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、及び塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜を用いることが好ましく、この場合、露光時感度がアップし、露光機の時間負荷が減り、生産性が向上する。
該酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、通常のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0213】
感光性樹脂層の上には貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い保護フイルムを設けることが好ましい。保護フイルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、感光性樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フイルム材料としては例えばシリコーン紙、ポリオレフィン若しくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0214】
感光性転写材料は、仮支持体上に熱可塑性樹脂層の添加剤を溶解した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥することにより熱可塑性樹脂層を設け、その後熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤からなる中間層材料の溶液を塗布、乾燥し、その後感光性樹脂層を、中間層を溶解しない溶剤で塗布、乾燥して設けることにより作製することができる。
また、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層及び中間層を設けたシート、及び保護フイルム上に感光性樹脂層を設けたシートを用意し、中間層と感光性樹脂層が接するように相互に貼り合わせることによっても、更には、前記の仮支持体上に熱可塑性樹脂層を設けたシート、及び保護フイルム上に感光性樹脂層及び中間層を設けたシートを用意し、熱可塑性樹脂層と中間層が接するように相互に貼り合わせることによっても、作製することができる。
【0215】
感光性転写材料において、感光性樹脂層の膜厚としては、1.0〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmが特に好ましい。また、特に限定されるわけではないが、その他の各層の好ましい膜厚としては、仮支持体は15〜100μm、熱可塑性樹脂層は2〜30μm、中間層は0.5〜3.0μm、保護フイルムは4〜40μmが、一般的に好ましい。
【0216】
本発明のカラーフィルタは、コントラストに優れる。本発明においてコントラストとは、2枚の偏光板の間において、偏光軸が平行のときと、垂直のときとの透過光量の比を表す(「1990年第7回色彩光学コンファレンス、512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ、植木、小関、福永、山中」等参照。)。
カラーフィルタのコントラストが高いということは液晶と組み合わせたときの明暗のディスクリミネーションが大きくできるということを意味しており、液晶ディスプレイがCRTに置き換わるためには非常に重要な性能である。
【0217】
本発明のカラーフィルタは、テレビ用として用いる場合は、F10光源による、レッド(R)、グリーン(G)、及びブルー(B)のそれぞれ全ての単色の色度が、下表に記載の値(以下、本発明において「目標色度」という。)との差(ΔE)で5以内の範囲であることが好ましく、更に3以内であることがより好ましく、2以内であることが特に好ましい。
【0218】
x y Y
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
R 0.656 0.336 21.4
G 0.293 0.634 52.1
B 0.146 0.088 6.90
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0219】
本発明において色度は、顕微分光光度計(オリンパス光学社製;OSP100又は200)により測定し、F10光源視野2度の結果として計算して、xyz表色系のxyY値で表す。また、目標色度との差は、La表色系の色差で表す。
【0220】
本発明のカラーフィルタを備えた液晶表示装置はコントラストが高く、黒のしまり等の描写力に優れ、とくにVA方式であることが好ましい。ノートパソコン用ディスプレイやテレビモニター等の大画面の液晶表示装置等としても好適に用いることができる。また、本発明のカラーフィルタはCCDデバイスに用いることができ、優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0221】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0222】
<合成例1>
(高分子化合物AのP−1の合成)
前記M−6 27.0g、MMA 126.0g、MAA 27.0g、および1−メトキシ−2−プロパノール 420.0gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して90℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製V−65)を1.80g加え、90℃にて2時間加熱攪拌を行った。2時間後、さらにV−65を1.80g加え、3時加熱攪拌の後、高分子化合物P−1の30質量%溶液を得た。
ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、得られた高分子化合物の質量平均分子量を測定した結果、2.1万であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、99mgKOH/gであった。
【0223】
<合成例2>
(高分子化合物BのP−2,P−3の合成)
500mL三口フラスコに、ε−カプロラクトン160.0g、2−エチル−1−ヘキサノール18.3gを導入し、窒素を吹き込みながら、攪拌溶解した。モノブチル錫オキシド0.1gを加え、100℃に加熱した。8時間後、ガスクロマトグラフィーにて、原料が消失したのを確認後、80℃まで冷却した。2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール0.1gを添加した後、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート22.2gを添加した。5時間後、H NMRにて原料が消失したのを確認後、室温まで冷却し、固体状の単量体(A−5)を200g得た。単量体(A−5)であることは、H NMR、IR、質量分析により確認した。
得られた単量体(A−5)は、前述の一般式(i)、(ii)、又は(i)−2で表される単量体の好ましい具体例として挙げられたものである。
【0224】
単量体(A−5)37.5g、単量体M−115.0g、メタクリル酸7.5g、ドデシルメルカプタン1.3、及び1−メトキシ−2−プロパノール116.7gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温した。これに、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)製の「V−65」)を0.3g加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行った。2時間後、更にV−65を0.3g加え、3時加熱攪拌の後、高分子化合物P−2の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物P−2の質量平均分子量をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、1.8万であった。また、高分子化合物P−3は、高分子化合物P−2の合成において使用された単量体及びその仕込み量を、下記表に記載の単量体及び仕込み量に代えた以外は、同様にして合成した下記表には、高分子化合物P−2及びP−3を合成する際に用いられる単量体とその仕込み量、合成された重合体の質量平均分子量、及び酸価について示す。
【0225】
<合成例3>
(高分子化合物CのP−4,P−5,P−6の合成)
(高分子化合物P−4)
M−11(前述の高分子化合物Bの説明の例示化合物M−11) 14.0g、末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(AA−6:東亜合成社製)105.0g、アクリル酸 21.0g、n−ドデシルメルカプタン5.6gおよびメトキシプロピレングリコール327gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(和光純薬(株)製、V−601)を1.1g加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行った。その後、さらにV−601を1.1g加えて2時間過熱攪拌した後、90℃に昇温して2時加熱攪拌した後、高分子化合物P−4の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物の質量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、1.9万であった。
また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、117mgKOH/g、1H-NMRから求めた繰り返し単位組成比(質量比)は、20/65/15であっ
た。
【0226】
(高分子化合物P−5)
上記高分子化合物P−4の合成に用いたA−5と同様の方法により高分子化合物A−16を合成した。
M−11 14.0g、上記で合成したA−16 105.0g、アクリル酸 21.0g、n−ドデシルメルカプタン3.1gおよびメトキシプロピレングリコール327gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(和光純薬(株)製、V−601)を1.2g加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行った。その後、さらにV−601を1.2g加えて2時間過熱攪拌した後、90℃に昇温して2時加熱攪拌した後、高分子化合物P−5の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物の質量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、2.3万であった。
また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、117mgKOH/g、H−NMRから求めた繰り返し単位組成比(質量比)は、20/65/15であった。
【0227】
(高分子化合物P−6)
ベンジルメタクリレート 28.0g、上記で合成したA−16 91.0g、アクリル酸 21.0g、n−ドデシルメルカプタン4.2gおよびメトキシプロピレングリコール327gを、窒素置換した三口フラスコに導入し、攪拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて攪拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して75℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(和光純薬(株)製、V−601)を1.0g加え、75℃にて2時間加熱攪拌を行った。その後、さらにV−601を1.0g加えて2時間過熱攪拌した後、90℃に昇温して2時加熱攪拌した後、高分子化合物P−6の30%溶液を得た。
得られた高分子化合物の質量平均分子量を、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、2.1万であった。
また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、117mgKOH/g、H-NMRから求めた繰り返し単位組成比(質量比)は、20/65/15であった。
【0228】
<合成例4>
(高分子化合物CのP−7,P−8の合成)
1Lの三口フラスコにメタクリルアミド69g、トリエチルアミン136g、テトラヒドロフラン130mLを混合し氷冷した。この溶液に、カンファ−スルホニルクロリド161gをテトラヒドロフラン200mLに溶かした溶液を1.5時間かけて滴下し、1時間撹拌した。反応終了後、2mol/Lの希塩酸で中和し、酢酸エチルにて2回抽出した。油層を2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で抽出した。水層を氷冷後、塩酸を滴下して晶析、析出した白色結晶を濾取し、水洗浄して、目的物である化合物G−1 103gを得た。
【0229】
H−NMR(400MHz、CDCl)を測定し、化合物を同定した。
δ 0.91(S,3H),1.08(S,3H),1.47(td,1H),2.03(M,4H),2.00(S,3H),2.36(M,2H),3.38(D,1H),3.93(D,1H),5.65(D,1H),5.92(D,1H),8.65(bs,1H)
【0230】
BzMA 28.0g、末端にメタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート(AA−6:東亜合成(株)製)91.0g、G−1 21.0g、n−ドデシルメルカプタン2.9gおよびメトキシプロピレングリコール327gを、窒素置換した三口フラスコに導入し,撹拌機(新東科学(株):スリーワンモータ)にて撹拌し、窒素をフラスコ内に流しながら加熱して78℃まで昇温する。これに2,2−アゾビス(2−メチルプロピオン酸ジメチル)(和光純薬(株)製V−601)を0.8g加え、78℃にて2時間加熱撹攪拌を行った。2時間後、さらにV−601を0.8部加え、3時加熱撹拌の後、高分子化合物CのP−7の30%溶液を得た。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、98mgKOH/gであった。
同様にして、高分子化合物CのP−8を合成した。
【0231】
[表P] ()内は質量%
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
No. 構成単位の組成 質量平均分子量 酸価(mgKOH/g)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
P−1 M-6(15) MMA(70) MAA(20) 21,000 98
P−2 A-5(75) M-11(10) MAA(15) 18,000 99
P−3 A-5(75) BzMA(10) MAA(15) 18,000 97
P−4 M-11(75) AA-6(10) AA(15) 19,000 117
P−5 A-16(75) M-11(10) AA(15) 23,000 117
P−6 A-16(65) BzMA(20) AA(15) 21,000 117
P−7 BzMA(20) AA-6(65) G-1(15) 20,000 98
P−8 a-1(20) AA-6(65) G-13(15) 23,000 85
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
AA :アクリル酸
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
M−11:前述の一般式(11)で表される繰り返し単位である
BzMA:メタクリル酸ベンジル
AA−6:片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー
(Mn=6000、東亜合成化学工業(株)製)
【0232】
(実施例1・比較例1)
<有機顔料分散組成物の調製>
(比較例1)
ジメチルスルホキシド1000mlに、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液33.3ml、顔料C.I.ピグメントレッド254:商品名イルガフォア レッド BT−CF チバ・スペシャルティケミカルズ(株)社製)50g、ポリビニルピロリドン100.0gを添加した顔料溶液Aを調製した。これとは別に貧溶媒として、1mol/l塩酸16mlを含有した水1000mlを用意した。
ここで、18℃に温度コントロールし、藤沢薬品工業社製GK−0222−10型ラモンドスターラーにより500rpmで攪拌した貧溶媒の水1000mlに、顔料溶液Aを日本精密化学社製NP−KX−500型大容量無脈流ポンプを用いて流速100ml/minで100ml注入することにより、有機顔料粒子を形成し、顔料分散液Aを調製した。この顔料分散液を、日機装社製ナノトラックUPA−EX150を用いて、粒径、単分散度を測定した。結果を下表1に示す。
上記方法で調製した、顔料微粒子分散液を日立工機(株)社製 高速遠心冷却機 HIMAC SCR20Bで、3500rpm(2000G)、1時間の条件で遠心分離し、上澄みを捨てて沈降した顔料微粒子濃縮ペーストを回収した。ペーストの顔料含率をアジレント(Agilent)社製8453型分光光度計を用いて測定したところ、12.5質量%であった。
上記顔料微粒子調製ペースト16.0gに乳酸エチル50.0ccを加え、ディソルバーで1500rpm・60分攪拌した後住友電工ファインポリマ社製FP−010型フィルタを用いて、ろ過することにより、ペースト状の濃縮顔料液C1(ナノ顔料濃度33質量%)を得た。
[顔料分散組成物の調製]
前記ペーストを用い、下記組成の顔料分散組成物C1を調製した。
前記ペースト状の濃縮顔料液A 19.5g
顔料分散剤A 0.6g
下記高分子化合物(C−18) 3.2g
1−メトキシ−2−プロピルアセテート 45.3g
顔料分散剤Aについては特開2000−239554号公報に従い合成した。
上記組成の顔料分散組成物をモーターミルM−50(アイガー・ジャパン社製)で、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで1時間分散した。
【0233】
【化31】

【0234】
【化32】

【0235】
(実施例1)
上記顔料溶液Aをポリビニルピロリドンを用いずに調製した顔料微粒子調製ペースト16gに表1に示した高分子化合物P−1(前記合成例参照)を0.3g添加後に乳酸エチル50.0ccを加えた以外は比較例1と同様にして、顔料分散組成物1を得た。上記顔料溶液Aをポリビニルピロリドンを用いずに調製し、前記高分子化合物C−18に替えて、表1に示した高分子化合物(前記合成例参照)を使用した以外は比較例1と同様にして、顔料分散組成物2〜8を得た。上記顔料溶液Aをポリビニルピロリドンを用いずに調製した顔料微粒子調製ペースト16gに表1に示した高分子化合物P−1(前記合成例参照)を0.3g添加後に乳酸エチル50.0ccを加えた事、また、前記高分子化合物C−18に替えて、表1に示した高分子化合物P−5を使用した以外は比較例1と同様にして、顔料分散組成物8を得た。
【0236】
[表1]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散組成物No. 高分子化合物 平均粒径 単分散度
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
C1(比較例1) C−18 33nm 1.29
1(実施例1−1) P−1 34nm 1.15
2(実施例1−2) P−2 34nm 1.15
3(実施例1−3) P−3 34nm 1.15
4(実施例1−4) P−4 34nm 1.15
5(実施例1−5) P−5 34nm 1.15
6(実施例1−6) P−6 34nm 1.15
7(実施例1−7) P−7 34nm 1.15
8(実施例1−8) P−8 34nm 1.15
9(実施例1−9) P−1+P−5 34nm 1.15
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0237】
(実施例2・比較例2)
<カラーフィルタ1−C1の作製(スリット状ノズルを用いた塗布による作製)>
【0238】
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。該基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
該基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、下記表1−1に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置;東京応化工業(株)社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃で3分間プリベークして膜厚2.4μmの感光性樹脂層K1を得た。
【0239】
[表1−1] 感光性樹脂層K1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散組成物1(カーボンブラック) 25質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 8.0質量部
メチルエチルケトン 53質量部
バインダー2 9.1質量部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002質量部
DPHA液 4.2質量部
重合開始剤A 0.16質量部
界面活性剤1 0.044質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0240】
超高圧水銀灯を有すプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該感光性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量300mJ/cmでパターン露光した。
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、該感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製を100倍希釈した液)にて23℃で80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、ブラック(K)の画像Kを得た。引き続き、220℃で30分間熱処理した。
【0241】
着色感光性樹脂組成物K1は、まずK顔料分散組成物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、次いで、メチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、重合開始剤A(2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン)、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得た。
【0242】
<K顔料分散組成物1>
・カーボンブラック(商品名:Nipex 35、デグサ ジャパン(株)社製)
13.1質量部
・分散剤(下記化合物J) 0.65質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53質量部
【0243】
【化33】

【0244】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 76質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24質量部
<界面活性剤1>
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製):組成は下記
・C13CHCHOCOCH=CH 40質量部と
H(OCH(CH)CHOCOCH=CH 55質量部と
H(OCHCHOCOCH=CH 5質量部との共重合体(分子量3万)
30質量部
・メチルエチルケトン 70質量部
【0245】
〔レッド(R)画素の形成〕
前記画像Kを形成した基板に、下記表1−2に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物R1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Rを形成した。該感光性樹脂層R1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K1と同様にした。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.90
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.10
【0246】
[表1−2] 着色感光性樹脂組成物R1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散組成物C1 40質量部
R顔料分散組成物2(CIPR177) 4.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.6質量部
メチルエチルケトン 37質量部
バインダー1 0.7質量部
DPHA液 3.8質量部
重合開始剤B 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0247】
<R顔料分散組成物2>
・C.I.P.R.177(商品名:Cromophtal Red A2B、
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製) 18質量部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3万) 12質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 70質量部
<バインダー1>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量4万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
<重合開始剤B>
2−トリクロロメチル−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾール
【0248】
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記画像Kと画素Rを形成した基板に、下記表1−3に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物G1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Gを形成した。該感光性樹脂層G1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K1と同様にした。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
【0249】
[表1−3] 着色感光性樹脂組成物G1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散組成物1(CIPG36) 28質量部
Y顔料分散組成物1(CIPY150) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 29質量部
メチルエチルケトン 26質量部
シクロヘキサノン 1.3質量部
バインダー2 2.5質量部
DPHA液 3.5質量部
重合開始剤B 0.12質量部
重合開始剤A 0.05質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.07質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0250】
<G顔料分散組成物1>
富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)社製「商品名:GT−2」
【0251】
<Y顔料分散組成物1>
御国色素(株)社製「商品名:CFイエロ−EX3393」
【0252】
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記画像K、画素R及び画素Gを形成した基板に、下記表1−4に記載の組成よりなる着色感光性樹脂組成物B1を用い、前記ブラック(K)画像の形成と同様の工程で、熱処理済み画素Bを形成し、目的のカラーフィルタA1を得た。該感光性樹脂層B1の膜厚及び顔料の塗布量を以下に示す。なお、着色感光性樹脂組成物の調製手順は、上記着色感光性樹脂組成物K1と同様にした。
感光性樹脂膜厚(μm) 1.60
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
【0253】
[表1−4] 着色感光性樹脂組成物B1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散組成物1(CIPB15:6) 8.6質量部
B顔料分散組成物2(CIPB15:6+CIPV23) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 28質量部
メチルエチルケトン 26質量部
バインダー3 17質量部
DPHA液 4.0質量部
重合開始剤B 0.17質量部
フェノチアジン 0.02質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0254】
<B顔料分散組成物1>
御国色素(株)社製「商品名:CFブル−EX3357」
<B顔料分散組成物2>
御国色素(株)社製「商品名:CFブル−EX3383」
<バインダー3>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート
=36/22/42モル比のランダム共重合物、分子量3.8万) 27質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73質量部
【0255】
分散組成物C1を分散組成物1〜9に変更した以外は同様にして、カラーフィルタ1−1〜9を作製した。
【0256】
[カラーフィルタのコントラストの測定]
作製したカラーフィルタを、バックライトユニットとして3波長冷陰極管光源(FWL18EX−N、商品名、東芝ライテック(株)社製)に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板(HLC2−2518、商品名、(株)サンリツ社製)の間に置き、偏光軸が平行のときと垂直のときとの透過光量を測定し、その比をコントラストとした(植木、小関、福永、山中著,「512色表示10.4”サイズTFT−LCD用カラーフィルタ」,第7回色彩光学コンファレンス(1990年)等参照。)。
各カラーフィルタのコントラストの測定結果を下表2に示す。
【0257】
[経時の分散安定性の評価]
作製した着色感光性樹脂組成物R1の作製直後の25℃での粘度(初期粘度)を測定した。また、40℃の環境下で2ヶ月間保存した着色感光性樹脂組成物の25℃での粘度(経時粘度)を測定した。初期粘度と経時粘度を比較した結果を表2に示す。このとき粘度は振動式粘度計VM−100A−L[商品名]を用いて測定した。
5 粘度の上昇が 1未満であった
4 粘度の上昇が 1以上 3未満であった
3 粘度の上昇が 3以上 5未満であった
2 粘度の上昇が 5以上 10未満であった
1 粘度の上昇が 10以上であった
【0258】
[表面粗さ]
上記のとおり作製した各カラーフィルタについて、レッド画素表面の表面荒れの程度を、原子間力顕微鏡(NanoScope IIIa[商品名]、ナノワールド社製)を用いて測定した。
【0259】
[表2]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散組成物 コントラスト 分散安定性 表面粗さ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
C1 8000 1 21 nm
1 9900 3 8 nm
2 11000 3 9 nm
3 12000 4 5 nm
4 15000 3 6 nm
5 14000 5 7 nm
6 14000 4 6 nm
7 12000 4 5 nm
8 13000 5 7 nm
9 16000 5 6 nm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表2に明らかなように、実施例2の本発明の顔料分散組成物を用いて調製された着色感光性樹脂組成物は、保存後の粘度上昇が見られず、分散安定性に優れることがわかる。また、この着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタは、コントラストに優れ、表面粗さが小さい着色皮膜を形成し得ることが分かる。
【0260】
(実施例3・比較例3)
<カラーフィルタ2−C1の作製(感光性樹脂転写材料のラミネートよる作製)>
〔感光性樹脂転写材料の作製〕
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方H1からなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させた。次に、下記処方P1から成る中間層用塗布液を塗布、乾燥させた。更に、前記着色感光性樹脂組成物K1を塗布、乾燥させ、該仮支持体の上に乾燥膜厚が14.6μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの中間層と、乾燥膜厚が2.4μmの感光性樹脂層を設け、保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフィルム)を圧着した。
こうして仮支持体と熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断膜)とブラック(K)の感光性樹脂層とが一体となった感光性樹脂転写材料K1を作製した。
【0261】
<熱可塑性樹脂層用塗布液:処方H1>
・メタノール 11.1質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.36質量部
・メチルエチルケトン 52.4質量部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジル
メタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、
分子量:9万、Tg:約70℃) 5.83質量部
・スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)
=63/37、分子量:1万、Tg:約100℃) 13.6質量部
・ビスフェノールAにペンタエチレングリコールモノメタクリレートを
2当量脱水縮合した化合物(新中村化学工業(株)社製、
商品名:2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)
フェニル]プロパン) 9.1質量部
・界面活性剤1 0.54質量部
【0262】
<中間層用塗布液:処方P1>
・PVA205(ポリビニルアルコール、(株)クラレ社製、
鹸化度=88%、重合度550) 32.2質量部
・ポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン(株)社製、
K−30) 14.9質量部
・蒸留水 524質量部
・メタノール 429質量部
【0263】
次に、前記感光性樹脂転写材料K1の作製において用いた前記着色感光性樹脂組成物K1を、下記表2−1〜2−3に記載の組成よりなる下記着色感光性樹脂組成物R2、G2及びB2に変更し、それ以外は上記と同様の方法により、感光性樹脂転写材料R2、G2及びB2を作製した。尚、着色感光性樹脂組成物R2、G2及びB2の調製方法は、それぞれ前記着色感光性樹脂組成物R1、G1及びB1の調製方法に準ずる。
【0264】
[表2−1] R2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散組成物C1 40質量部
R顔料分散組成物2(CIPR177) 4.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.1質量部
メチルエチルケトン 57質量部
バインダー1 0.8質量部
DPHA液 4.4質量部
重合開始剤B 0.14質量部
重合開始剤A 0.06質量部
フェノチアジン 0.01質量部
添加剤1 0.52質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0265】
[表2−2] G2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散組成物1(CIPG36) 28質量部
Y顔料分散組成物1(CIPY150) 13質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 39質量部
メチルエチルケトン 16質量部
シクロヘキサノン 1.3質量部
バインダー2 3.0質量部
DPHA液 4.3質量部
重合開始剤B 0.15質量部
重合開始剤A 0.06質量部
フェノチアジン 0.01質量部
界面活性剤1 0.07質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0266】
[表2−3] B2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散組成物1(CIPB15:6) 8.6質量部
B顔料分散組成物2(CIPB15:6+CIPV23) 15質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 28質量部
メチルエチルケトン 26質量部
バインダー3 18.5質量部
DPHA液 4.3質量部
重合開始剤B 0.17質量部
フェノチアジン 0.02質量部
界面活性剤1 0.06質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0267】
尚、表2−1に記載の組成物の内、添加剤1は、燐酸エステル系特殊活性剤(楠本化成(株)社製、商品名:HIPLAAD ED152)を用いた。
【0268】
〔ブラック(K)画像の形成〕
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱して次のラミネーターに送った。
前記感光性樹脂転写材料K1の保護フイルムを剥離後、ラミネーター((株)日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃に加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を熱可塑性樹脂層との界面で剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cmでパターン露光した。
【0269】
次に、トリエタノールアミン系現像液(2.5%のトリエタノールアミン含有、商品名:T−PD2、富士写真フイルム社製を純水で12倍希釈した液(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合した。))にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットル濃度の炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し感光性樹脂層を現像しパターニング画像を得た。
引き続き、洗浄剤(商品名「T−SD1(富士写真フイルム社製)」を純水で10倍に希釈した液を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、ブラック(K)の画像を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cmの光でポスト露光後、220℃、15分熱処理した。
この画像Kを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0270】
〔レッド(R)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料R2を用い、前記感光性樹脂転写材料K1と同様の工程で、熱処理済みのレッド(R)の画素Rを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は35℃35秒とした。感光性樹脂層RA2の膜厚及び顔料(C.I.P.R.254及びC.I.P.R.177)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.00
C.I.P.R.254塗布量(g/m) 0.90
C.I.P.R.177塗布量(g/m) 0.10
この画像K、及び画素Rを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0271】
〔グリーン(G)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料G2を用い、前記感光性樹脂転写材料R2と同様の工程で、熱処理済みのグリーン(G)の画素Gを得た。但し露光量は40mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は34℃45秒とした。感光性樹脂層G101の膜厚及び顔料(C.I.P.G.36及びC.I.P.Y.150)の塗布量を表以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 1.92
C.I.P.G.36塗布量(g/m) 1.34
C.I.P.Y.150塗布量(g/m) 0.58
この画像K、画素R、および画素Gを形成した基板を再び、前記のようにブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液は使用せずに、基板予備加熱装置に送った。
【0272】
〔ブルー(B)画素の形成〕
前記感光性樹脂転写材料B2を用い、前記感光性樹脂転写材料R2と同様の工程で、熱処理済みのブルー(B)の画素Bを得た。但し露光量は30mJ/cm、炭酸ナトリウム系現像液による現像は36℃40秒とした。感光性樹脂層B2の膜厚及び顔料(C.I.P.B.15:6及びC.I.P.V.23)の塗布量を以下に示す。
感光性樹脂膜厚(μm) 2.00
顔料塗布量(g/m) 0.75
C.I.P.B.15:6塗布量(g/m) 0.705
C.I.P.V.23塗布量(g/m) 0.045
この画素R、画素G、画素B、および画像Kを形成した基板を240℃で50分ベークして、カラーフィルタを得た。
【0273】
分散組成物C1を分散組成物1〜9に変更した以外は同様にして、カラーフィルタ2−1〜9を作製した。
【0274】
得られたカラーフィルタのコントラストと表面粗さ、着色感光性樹脂組成物R2の経時安定性の評価を実施例2・比較例2と同様にして行った。結果を表3に示す。
【0275】
[表3]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散組成物 コントラスト 分散安定性 表面粗さ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
C1 6000 1 28 nm
1 9000 3 6 nm
2 9500 4 8 nm
3 8500 4 8 nm
4 9800 4 8 nm
5 11000 3 9 nm
6 9800 5 5 nm
7 8900 4 6 nm
8 10000 5 6 nm
9 12000 5 5 nm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表3に明らかなように、実施例3の本発明の顔料分散組成物を用いて調製された着色感光性樹脂組成物は、保存後の粘度上昇が見られず、分散安定性に優れることがわかる。また、この着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタは、コントラストに優れ、表面粗さが小さい着色皮膜を形成し得ることが分かる。
【0276】
(実施例4・比較例4)
<カラーフィルタ3−C1の作製(インクジェットによる作製)>
上記感光性樹脂転写材料K1の作製手順について、着色感光性樹脂組成物K1を下記表3−1に記載の着色感光性樹脂組成物K2に代えた以外、同様にして感光性樹脂転写材料K2を作製した。
【0277】
[表3−1]着色感光性樹脂組成物K2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
K顔料分散組成物1(カーボンブラック) 30質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 7.3質量部
メチルエチルケトン 34質量部
シクロヘキサノン 8.6質量部
バインダー2 14質量部
DPHA液 5.8質量部
重合開始剤A 0.22質量部
フェノチアジン 0.006質量部
前記界面活性剤1 0.058質量部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0278】
遮光性を有する樹脂組成物K2は、まずK顔料分散組成物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpm10分間攪拌し、次いで、表3−1記載の量のメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、バインダー2、フェノチアジン、DPHA液、重合開始剤A、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpm30分間攪拌することによって得られた。
【0279】
〔遮光性を有する隔壁の形成〕
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)社製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
【0280】
前記感光性樹脂転写材料K2の保護フイルムを剥離後、ラミネーター(株式会社日立インダストリイズ社製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分でラミネートした。
仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティ型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と該熱可塑性樹脂層の間の距離を200μmに設定し、露光量100mJ/cmでパターン露光した。マスク形状は格子状で、画素と遮光性を有する隔壁との境界線に該当する部分における、遮光性を有する隔壁側に凸な角の曲率半径は0.6μmとした。
【0281】
次に、トリエタノールアミン系現像液(30%のトリエタノールアミン含有、商品名:T−PD2、富士写真フイルム株式会社製を純水で12倍(T−PD2を1部と純水11部の割合で混合)に希釈した液)にて30℃50秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像し熱可塑性樹脂層と中間層(酸素遮断層)を除去した。
引き続き炭酸ナトリウム系現像液(0.38モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、0.47モル/リットルの炭酸ナトリウム、5%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン性界面活性剤、消泡剤、安定剤含有、商品名:T−CD1、富士写真フイルム株式会社製を純水で5倍に希釈した液)を用い、29℃30秒、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像し遮光性を有する樹脂層を現像しパターニング離画壁(遮光性を有する隔壁パターン)を得た。
【0282】
引き続き洗浄剤(商品名「T−SD3(富士写真フイルム株式会社製)」を純水で10倍に希釈した液)を用い、33℃20秒、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有す回転ブラシにより残渣除去を行い、遮光性を有する隔壁を得た。その後更に、該基板に対して該樹脂層の側から超高圧水銀灯で500mJ/cmの光でポスト露光後、240℃、50分熱処理した。
【0283】
〔プラズマ撥水化処理〕
その後、下記方法によりプラズマ撥水化処理を行った。
遮光性を有する隔壁を形成した前記基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にてプラズマ撥水化処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー :50W
処理時間 :30sec
【0284】
〔カラーフィルタ用インクジェットインクの調製〕
以下の処方でカラーフィルタ用インクジェットインクを調製した。
[表3−R]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
組成成分 含有量(質量部) インク R3
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分散組成物C1 63
R顔料分散組成物2(CIPR177) 7
高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース20000(商品名))1.0
下記ポリマー1 2.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 6.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(日本化薬性、KAYARAD D330) 4.0
フェノチアジン 0.005
1,3−ブチレングリコールジアセテート 25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0285】
[表3−G]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
組成成分 含有量(質量部) インクG3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
G顔料分散組成物1(P.G.36) 35
Y顔料分散組成物1(P.Y.150) 32
高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース20000) 1.0
下記ポリマー1 2.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 6.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(日本化薬性、KAYARAD D330) 4.0
フェノチアジン 0.005
1,3−ブチレングリコールジアセテート 25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0286】
[表3−B]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
組成成分 含有量(質量部) インクB3
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
B顔料分散組成物1 (P.B.15:6+P.V.23) 8
B顔料分散組成物2 (P.B.15:6) 71
高分子分散剤(AVECIA社製ソルスパース20000(商品名))1.0
下記ポリマー1 2.0
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬(株)社製、商品名:KAYARAD DPHA) 6.0
アルキノイル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート
(日本化薬性、KAYARAD D330) 4.0
フェノチアジン 0.005
1,3−ブチレングリコールジアセテート 25
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ポリマー1 ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、分子量3.7万
【0287】
上記表3−R、3−G、3−Bの各成分の混合については、先ず、顔料及び高分子分散剤を溶剤の一部に投入、混合し、3本ロールとビーズミルを用いて攪拌して顔料分散液を得た。一方、他の配合成分を溶剤の残部に投入、攪拌して溶解分散し、モノマー溶液を得た。そして、顔料分散液または顔料分散組成物を少量ずつモノマー溶液中に添加しながらディソルバーで十分に攪拌し、カラーフィルタ用インクジェットインクを調製した。
【0288】
〔画素形成〕
まず、上記記載のインクR3、インクG3、インクB3を用いて下記のようにしてカラーフィルタを作製した。
インクジェットヘッドはDimatix社製SE−128を、吐出制御装置はDimatix社製 ApolloIIを用いた。インクジェットヘッドを自動2次元移動ステージ(駿河精機製KS211−200)上に搭載し、前記で作製した隔壁の間隙に所定インク量が吐出されるように、ステージを移動させながら吐出制御装置によるヘッドからの吐出を同期させた。
ここで上記記載のインクR3、インクG3、インクB3の3色のインクは各々別のヘッドに充填されており、各ヘッドはXYステージ上に固定され、各々のインクが所定の位置に着弾するように、吐出制御装置により3つのヘッドを独立に制御した。
打滴は、所望の濃度になるまでインク組成物の吐出を行い、ホットプレートで100℃2分間加熱乾燥させた後、230℃オーブン中で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させカラーフィルタを作製した。
【0289】
分散組成物C1を分散組成物1〜9に変更した以外は同様にして、カラーフィルタ3−1〜9を作製した。
【0290】
得られたカラーフィルタのコントラストと表面粗さ、インクR3の経時安定性の評価を実施例1・比較例1と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0291】
[表3]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
分散組成物 コントラスト 分散安定性 表面粗さ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
C1 9500 1 28 nm
1 13000 4 6 nm
2 17000 4 7 nm
3 16000 4 6 nm
4 16000 3 6 nm
5 17000 4 9 nm
6 15000 3 9 nm
7 14000 3 9 nm
8 15000 3 6 nm
9 18000 5 5 nm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表3に明らかなように、実施例3の本発明の顔料分散組成物を用いて調製されたインクは、保存後の粘度上昇が見られず、分散安定性に優れることがわかる。また、この着色感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタは、コントラストに優れ、表面粗さが小さい着色皮膜を形成し得ることが分かる。
【0292】
(実施例5・比較例5)
[液晶表示素子の作製]
以下の方法に従い、液晶表示素子を作製した。
(1)ガラス基板の片面に、パターニングされた1cmのITO膜を形成したのち、該ITO膜上に、スピンナーを用いて、市販のアクティブマトリックス用液晶配向剤を塗布したのち、180℃で1時間乾燥して、膜厚600Åの塗膜を形成した。
(2)前記の実施例・比較例で作製したカラーフィルタ1〜3のそれぞれ上に、パターニングされた1cmのITO膜を形成したのち、該ITO膜上に、(1)と同様にして、液晶配向剤の塗膜を形成した。
(3)ガラス基板の片面にITO膜(連続膜)を形成したのち、該ITO膜上に、(1)と同様にして、液晶配向剤の塗膜を形成した。
(4)次いで、(1)〜(3)で得た各基板上の塗膜の表面に、レーヨン製の布を巻き付けたロールを備えたラビングマシーンを用いてラビング処理を行なって、液晶配向膜を形成した。その際のラビング条件は、ロール回転数400rpm、ステージの移動速度3cm/秒、毛足の押し込み長さ0.4mmであった。
(5)このようにして液晶配向膜が形成された基板のうち、(1)又は(2)の処理を経たそれぞれの基板を(3)の処理を経た基板と組み合わせて2枚一組とし、各組毎に、2枚の基板の外縁部に、直径5.5μmのシリカゲル柱状スペーサーを含有するエポキシ樹脂系接着剤をスクリーン印刷により塗布したのち、各液晶配向膜のラビング方向が90度に交差するように、2枚の基板を間隙を開けて対向配置し、各基板の外縁部同士が当接するように圧着して、接着剤を硬化させた。
(6)次いで各組毎に、2枚の基板の内表面と接着剤の硬化層とにより区画されたセルギャップ内に、フルオロビフェニルの誘導体からなるネマティック型液晶「ZLI−5081」(商品名、メルクジャパン(株)社製)を注入充填したのち、注入孔を封止して液晶セルを作製した。その後、液晶セルの外表面に偏光板を、その偏光方向が各基板上の液晶配向膜のラビング方向と一致するように貼り合わせて、液晶表示素子を作製した。
【0293】
作製した液晶表示装置について表示特性(色むら、黒のしまり)を目視により評価した。その結果、本発明例のカラーフィルタを用いて作製した液晶表示素子では、いずれも、比較例のカラーフィルタを用いて作製した液晶表示素子と比較して、良好な表示特性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料微粒子と高分子化合物を含有する顔料分散組成物であって、
前記有機顔料微粒子が、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる貧溶媒とを混合して析出させた有機顔料微粒子であり、
前記高分子化合物が、下記A〜Dの群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする顔料分散組成物。
[A:側鎖に複素環を有する高分子化合物。]
[B:下記一般式(I)及び(II)の群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化1】

一般式(I)及び(II)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。L及びLは、各々独立に、単結合又は2価の有機連結基を表す。A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表す。m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表す。p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。]
[C:主鎖にアクリル酸を5〜30質量%共重合した高分子化合物。]
[D:下記一般式(31)及び一般式(32)からなる群より選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を有する高分子化合物。]
一般式(31)
−Q−Q−Z−
ここで Qは −(C=O)− または −SO− を、
は −NH− または −CHR− を、
Zは −(C=O)−R− または −SO−R− を示す。
また Rは 水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルキル基を、
は アルキレン基、シクロアルキレン基、またはアリーレン基を示す。
また、RとRとは互いに連結基を介して連結してもよい。
一般式(32)
−Rf−OH
ここで、Rfは 少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。
【請求項2】
前記D群の高分子化合物において、前記一般式(31)及び(32)からなる群より選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位が5〜100質量%含まれることを特徴とする請求項1記載の顔料分散組成物。
【請求項3】
前記高分子化合物が質量平均分子量1000〜100000であることを特徴とする請求項1または2に記載の顔料分散組成物。
【請求項4】
前記高分子化合物が、酸基を50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下の範囲で有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の顔料分散組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤もしくは光重合開始剤系とを含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された顔料分散組成物と、バインダーと、モノマーもしくはオリゴマーとを含有するカラーフィルタ用インクジェットインク。
【請求項7】
仮支持体上に、少なくとも、請求項5に記載の着色感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を設けたことを特徴とする感光性樹脂転写材料。
【請求項8】
請求項5に記載の着色感光性樹脂組成物、請求項6に記載のカラーフィルタ用インクジェットインク、及び/又は請求項7に記載の感光性樹脂転写材料を用いて作製したことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
有機顔料微粒子と高分子化合物を含有する顔料分散組成物の製造方法であって、
前記高分子化合物が下記A〜Dの群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記有機顔料微粒子が、良溶媒に有機顔料を溶解した有機顔料溶液と、前記良溶媒と相溶性でありかつ前記有機顔料に対しては貧溶媒となる貧溶媒とを混合して析出させた有機顔料微粒子であり、
かつ
(1)前記有機顔料微粒子を凝集体として析出後に濃縮ペースト化
(2)少なくとも前記高分子化合物と前記ペーストを用い、再分散
する工程を経ることを特徴とする顔料分散組成物の製造方法。
[A:側鎖に複素環を有する高分子化合物。]
[B:下記一般式(I)及び(II)の群から選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を含む高分子化合物。
【化1】

一般式(I)及び(II)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X及びXは、各々独立に、−CO−、−C(=O)O−、−CONH−、−OC(=O)−、又はフェニレン基を表す。L及びLは、各々独立に、単結合又は2価の有機連結基を表す。A及びAは、各々独立に、1価の有機基を表す。m及びnは、各々独立に、2〜8の整数を表す。p及びqは、各々独立に、1〜100の整数を表す。]
[C:主鎖にアクリル酸を5〜30質量%共重合した高分子化合物。]
[D:下記一般式(31)及び一般式(32)からなる群より選ばれる少なくとも一種の繰り返し単位を有する高分子化合物。]
一般式(31)
−Q−Q−Z−
ここで Qは −(C=O)− または −SO− を、
は −NH− または −CHR− を、
Zは −(C=O)−R− または −SO−R− を示す。
また Rは 水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、またはアルキル基を、
は アルキレン基、シクロアルキレン基、またはアリーレン基を示す。
また、RとRとは互いに連結基を介して連結してもよい。
一般式(32)
−Rf−OH
ここで、Rfは 少なくとも1つのフッ素原子が置換したアルキレン基を示す。

【公開番号】特開2010−209160(P2010−209160A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54280(P2009−54280)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロジープログラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造プロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】