説明

顧客作成の織物および顧客向きの衣料品染色機

【課題】 顧客の選んだ衣服に顧客の好みの色および柄を店頭で手軽に染め付ける衣料品染色機を提供する。
【解決手段】 顧客が未染色製品のスタイル、形状、サイズ、柄および色を選ぶことによってカスタマイズ繊維製品を入手する。顧客の選択に基づき、繊維製品を単品ごとに染色加工にかけて、顧客の好みの色および柄のシャツ、ズボン、上衣などの製品を作る。この過程は、染色機を小売店店頭に配置して顧客が観察できる形にして行うことができる。繊維材料をカチオン綿のみまたは他の天然繊維もしくは合成繊維との混紡を含む撚り糸で構成して繊維反応性染料などのアニオン染料で染色し、染色の進む間に染料を枯渇させ、染色機からの排出液が残留染料、塩、塩基なしで環境に負担をかけないようにするのが好ましい。顧客への教育効果および鑑賞効果を高めるように染色加工を透明なタンクまたは小売店店頭の湯沸器の中で行い、自分の指定どおりに衣服が染色されていく様子を顧客が観察できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概括的には、シャツ、ズボン、上着などや家具用または車両用の装飾品、寝台用リネン類を含むアパレルなどのカスタマイズ生産品を顧客に提供し、その顧客が自分の選んだサイズ、スタイル、柄および色彩の生地を得られるようにし、またその生地をその顧客のために一つの注文ごとに作成できるようにした新たなビジネス方法に関する。また、この発明は、顧客が自分の購入する織物をその織物の染色加工中に観察できるようにした顧客向きの染色機械を提供する。
【背景技術】
【0002】
顧客による織物製品の選択は、現状では、販売店または製造業者の提供する色や柄の数によって制約を受ける。衣料品の場合は、顧客が販売店に出向いて興味あるシャツ、ズボン、スーツほかを試着する際に、自分の好みのスタイル(例えば裁断の仕方など)を特定できるかもしれないが、色や柄(例えば、輪郭をぼかしたものや縞模様など)まで好みに合った衣服を入手することはできないかもしれない。カタログから衣服を発注する場合も同様である。通常のカタログを用いる場合もオンラインカタログを用いる場合も、顧客には多様な衣服の選択の機会が提供されるものの、衣服の選択は限られた数の色および柄だけで行われる。上記以外の織物製品(例えば寝台用リネン、室内装飾品、カーテンなど)の販売方法にも現在のところ同様の欠点がある。
【0003】
【特許文献1】US 2003/0172465A1
【特許文献2】US 2255028A
【特許文献3】US 4756037A
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顧客が衣服ほかの繊維製品について所望の色と柄を得られるようにし、しかもそれら衣服ほかの繊維製品を迅速に提供できるようにする必要がある。また、顧客の注文した繊維製品を染色の過程で教育用または遊興用にその顧客に見せるメカニズムを提供できれば有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明によると、顧客が自分の指定したサイズ、スタイル(形状)、柄および色で衣服、寝台用リネン、室内装飾品などの繊維製品を入手できるようにしたビジネス方法が提供できる。顧客は未染色の繊維製品から所望のサイズおよびスタイルを選ぶ。未染色の繊維製品は、撚り糸の中のカチオン綿と天然綿との比率を変動させるなどにより所望の柄を生ずるように織りまたは編みで作ることができる。次に、その繊維製品を、環境に負担をかけない条件(塩分または塩基なし、またはごく低いレベルの塩分または塩基、低温)で、顧客指定の色の染料を用いて1色ずつ染色していき、染料または有害流出物の放出量を零またはごく低いレベルに抑えるようにする。好ましい実施例では、染料が天然綿よりもカチオン綿によく付着して、その結果、例えば、カチオン綿と天然綿との比を変動させた撚り糸で作った織物または衣服に縞模様、濃淡模様ほか顧客の好みの柄を生じさせる。
【0006】
顧客の教育的経験が高まるように、染色の過程は、少なくとも一部を透明にしたタンクの中で行うのが好ましい。タンクは例えば販売店に陳列して、そこで顧客および店内の他の顧客が例えばシャツその他の衣料品などの織物に染料溶液を噴霧したり、タンク中の染料溶液にそれら織物を浸したりするのを見ることができるようにする。これによって、顧客は織物(例えば衣料品)が一つの色から所望の色に徐々に変わるのを見ることができ、またその織物(例えば衣料品)に模様(模様付きの場合)ができるのを見ることができる。例えば、衣服掛けラックをスピンドルに結合して、そのスピンドルでラックの衣服をタンク内で上げ下げしたり、軸の周りで回転させたりすることができる。その衣服掛けラックを視覚に訴えるようにマネキン型(すなわち人間の上半身の形状)にすることもできる。そのマネキンは、貫通孔をあける、可撓性鋼線で構成するなどの手法で形成するのが好ましい。染色加工中には、衣料品に染料を作用させる様子、衣服に染料がムラなく完全に行きわたるようにタンク内で衣服を動かす様子を顧客が観察できるのが好ましい。染色加工の終了の後、その衣服を洗滌し、タンク中の染料を排出しタンクを洗滌して、次の衣料品の染色に備える。
【0007】
靴下、ハンカチ、乳児衣料などの小さい織物に対しては、「タンク」は、市販されている好ましくは透明ガラス製の電気湯沸器などの湯沸器で構成できる。その湯沸器の中で染料の水溶液を沸騰させる(所要時間約2分以下)。好ましくはカチオン綿製のこれら小さい織物(模様入りとすることができる)を上記染料水溶液と結合させて染色過程を短時間(例えば5分以内)で行う。顧客はガラス製湯沸器の中の染色過程を観察でき、染色加工をムラなく進めるためのガラス棒で上記織物および染料水溶液を攪拌することができる。複数の顧客の需要に短時間(例えば10分)で応じられるように多数の湯沸器を販売店に設けることができる。その販売店には、マネキン型の衣服掛けと複数の湯沸器との組合せを備えたタンク装置を併せて設けることもできる。また、靴下や乳児用衣料など湯沸器中の染料水溶液により染色している小さい織物は、カチオン綿撚り糸で刺繍を施して、染色過程のあと刺繍部が色を帯びるようにすることもできる。この仕組みによって、顧客は、例えばカスタマイズした乳児用衣料を短時間のうちに出産祝いとして作ることができる。
【発明の効果】
【0008】
顧客の選んだ衣料品に顧客の好みの色および柄を店頭などで手軽に染め付ける衣料品染色機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の一つの側面は、顧客の創案した衣料品、装飾品、寝台用リネン類、カーテン、タオルなどの繊維製品を製作するシステムおよび方法に関する。ここで顧客の創案したものとは、顧客が自分に興味のある繊維製品について好みの色と柄を選ぶことができ、その繊維製品を自分用に単品で染色してもらうことができ、それによって顧客が自分の選んだ独自性の高い繊維製品を入手できるようにすることを意味する。
【0010】
販売店で入手できる衣料品は色と柄が一般に限られている。顧客によっては、販売店に展示中のもの以外の色を好む場合もある。独自の色および柄を求める顧客はデザイナーを雇うであろうが、そうすると費用と時間がかかる。この発明では、それと対照的に、顧客が繊維製品の色と柄とを選ぶことができる。しかも、それらの繊維製品をその販売店で顧客の待ち時間中または買い物中に染色できれば有利である。しかし、インターネットほかの通信網または通信プラットフォームを用いて興味ある繊維製品を顧客が注文し、顧客指定に応じた色および柄にその繊維製品を加工することもこの発明の範囲内でできる。
【0011】
図1は顧客が興味ある未染色衣料品を選ぶこの発明の実施例を示す。この衣料品は何らかの「スタイル」に依っている。スタイルの種類は限りなくある。例えば、シャツの「スタイル」にはクルーネックシャツ、ポロシャツ、ボタンダウンシャツ、Vネックシャツ、タートルネックシャツなどがあり、これら多様な種類のシャツに諸デザイナー、例えば
Versace、Ralph Lauren、Calvin Klein、Sean John、Chanel、DK などのデザイナーが互いに異なる形状を与えており、この発明ではそれらすべてを「スタイル」として扱う。
【0012】
上記未染色の衣服は、その生地によっては、染色加工中に縮むことがあり、したがって、販売店では顧客が手にとって試着するための予縮加工ずみの衣服を備え、顧客が自分に合ったサイズを定めるとその顧客の選んだサイズと柄の衣服が得られるようにしている。オンライン注文の場合は、顧客は自分に合ったサイズを選ぶだけで、被選択衣服のメーカーが対象製品製造用の適切なサイズの未加工衣服を選択する。
【0013】
顧客が選んでこの発明の実施に用いる上記未加工の衣服ほかの製造には多様な生地を用いることができる。例えば、綿、カチオン綿、羊毛、絹、レーヨンなどを用いることができ、ポリマーブレンド、ポリエステル、ナイロン、アクリル、スパンデックスなどの合成繊維製の材料を用いることもできる。この発明の実施においては、カチオン綿をそれだけで、または他の繊維(例えば上述の繊維、またはそれら以外の繊維)と一緒に用いて上記繊維製品を製造する。例えば、その繊維製品に用いるカチオン綿の量は重量比1%−100%とする。混合効果を得るためにカチオン綿の重量比は20%−80%、40%−60%、または約50%とし、衣服の部位によってそのカチオン綿含有率を変えることもできる。カチオン綿は染色加工条件によって発色が変わるので、この発明の実施において適切な発色を用いることができる。例えば、アニオン系染料をこの発明の実施に用いる場合は、塩なしまたは塩基なしで、または低レベルのそれら剤を用い低温(200°F以下)にして染色するとカチオン綿は適切に発色する。カチオン綿を作るには、カチオン基の永久導入のためのカチオン化合物で綿繊維を処理する。
【0014】
綿は通常は直接染料または繊維反応染料を用いて染色する。これら二つの種類の染料はいずれもアニオン(陰イオン)系である。綿は染色媒体である水に負の電荷を生じさせる。染料は負電荷を備えるから、染料と綿の繊維とは互いに反発する。この電荷による反発に打ち勝って綿を染色するために、従来の染色加工では、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの塩を多量(繊維の重量と等量に至る)添加する。溶出液の塩の濃度が高いと環境問題の原因になる可能性がある。繊維反応染料は染色過程で塩を必要とする上に、繊維と染料との間の強固な共有結合の形成のために炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基を必要とする。上記の強固な共有結合は洗濯による色落ちへの耐性をもたらす。しかし、染色過程の期間中に繊維反応染料がかなり大きい割合(10%−40%)で加水分解し繊維との結合ができなくなる。未反応染料を除去するには、かなり長い洗滌時間を要する。多量の水と長い処理時間を要するうえに、溶出液に含まれる染料が環境汚染の原因になり得る。一方、直接染料では色落ち耐性が弱く、その耐性を強めるには後処理が必要である。
【0015】
従来技術の綿染色に伴う上述の問題を解消するための手段として、綿にカチオン(陽イオン)電荷を導入することによって綿を化学的に修飾する(「カチオン綿」を作る)手法が知られている。この目的で用いるものとして広く研究されてきたカチオン試薬の一つが3−クロロ2−ヒドロキシ塩化プロピルトリメチルアンモニウムである。カチオン綿の生成には多様な手法が周知であり、例として、米国特許第3,685,953号、米国特許第4,072,464号、Michael Rupin 著「Dyeing with Direct and Fiber
Reactive Dyes」“Textile Chemists and Colorist”Vol.8, No.9, p.54(1976年)に記載された手法が挙げられる。これら文献の記載内容をここに参照してこの明細書に組み入れる。また、これら文献に記載の手法はこの発明の実施の際に用いることができる。また、カチオン綿はティントリア ピアナ ユーエス社(ジョージア州カーターズビル所在)から市販されている。
【0016】
カチオン綿は直接染料、繊維反応染料、酸性染料などのアニオン染料とのなじみが良い。直接染料の例としては、Solphenyl、Everdirectなどがある。また、繊維反応染料の例にはCibacron、Sumifix、Evercoinなどがある。さらに、酸性染料の例としては、Everlan、Leadacidなどが挙げられる。カチオン綿とアニオン染料との間はごくなじみが良いので際だって優れた色落ち耐性が得られる。カチオン綿は塩または塩基の添加なしにアニオン染料で染色できる。カチオン綿製の織物および衣料品は、従来の伝統的な綿染色加工よりも短時間に低温(例えば200゜F以下)で染色できる。また、カチオン綿を用いた染色は、加工に伴う未固定の染料の発生量が従来手法の場合よりもずっと少ないほか排水には塩または塩基を放出しないので、環境への負担が小さい(例えば、Lance Frazer 著「Innovations − A Cleaner Way to Color Cotton」(“Environmental
Health Perspectives,”Vol.110, No.5 (May 2002)、および
Peter Hauser 著「Reducing Pollution and
Energy Requirements in Cotton Dyeing」(“Textile Chemists
and Colorist & American Dyestuff Reporter,”Vol.32,
No.6 (June 2002)参照)。これら文献をここに参照してそれらの内容をこの明細書に組み入れる。
【0017】
天然綿は染色のために塩および(または)塩基を必要とするので、撚り糸を作るためにカチオン綿繊維を天然綿繊維と混ぜ合わせると、塩および(または)塩基なしの染色加工条件で撚り糸にヒース(寄せ集め)効果が現れ得る。撚り糸を構成するカチオン綿の割合をいろいろに変えることにより(例えば天然綿に対するカチオン綿の重量パーセント比を1/99乃至99/1とする)、明暗の階調の互いに異なる縞模様の織物を作ることができる。カチオン綿・天然綿製の撚り糸を織り加工および編み加工に用いることにより、多様な色柄を作ることができる。天然綿は塩または塩/塩基の添加なしには染色できないもののカチオン綿は塩および塩基の添加なしに容易に染色できるので、この発明の実施においては、天然綿とカチオン綿との組合せ利用により塩および塩基の添加なしに衣服を染色しヒース様、縞、ブルージーンズ様などの特別の模様を生ずることができる。
【0018】
小売業の販売店における実施例では、衣料品を未染色のまま陳列するが、この未染色衣料品の各々には染色加工により現れる柄、すなわち織り柄、編み柄、または撚り糸のカチオン綿対天然綿含有比の柄(加工中の繊維製品全体にわたって変動し得る)が施してある。
【0019】
図1に示すとおり、顧客は色ライブラリーから任意の色を選び、特定の柄の衣服を選ぶ。顧客がその販売店に自分の好みの色を持参して、その色を営業用の色合わせシステムにより合わせることもできる。その衣服を店頭の衣服染色機に入れる。次に、水対衣服の比が5:1乃至20:1になるように水をその機械に入れる。なお、この比は諸要因に応じて大幅に変わり得ることを理解されたい。次に、予め溶解させたアニオン染料を少しずつ機械に入れる。この工程では任意の種類のアニオン染料を用いることができるが、繊維反応染料を用いるのが好ましい。染色機を目標温度(70°F〜212°F)に加熱し、1乃至60分間駆動する。衣服の染色加工中に、顧客は染色機の窓を通じて加工中の衣服を観察でき、透明ホースその他の接続部を通じて染料および液体の流れを見ることができる。染色加工の終わりには、染料全部が衣服に吸収され尽くしたことに伴う澄んだ染色浴を見ることができ、それによって顧客はこの加工工程が環境に負担をかけていないことを確認する。この機械を冷却したうえ排水する。次に、衣服を温水で水洗いして取り出す。染色ずみの衣服を営業用の乾燥機で乾燥させる。顧客はその販売店で待ちながら上記衣服を自分の好みの色および柄で得ることができる。また、カチオン綿染色は染料をほぼ完全に吸収し尽くすので、環境の面から見て有利である。さらに、この発明は衣服で実施できるが、室内装飾品、寝具用リネン類、タオルなどほかの繊維製品にも実施できる。また、この発明はオンライン注文の環境でも実施できる。この発明は、顧客が自分の欲しい特定の柄および色の独自の注文生産品の衣服を入手できるという利点をもたらす。顧客は衣服のサイズおよびスタイルの選択によって柄を変えさせることができ、また、色の選択に加えて、顧客は衣服または繊維製品全体にわたり、または諸部位におけるカチオン綿対天然綿比を選択することができる(例えば、シャツの袖は一様な色合いにするために100%カチオン綿とし、胸・背部はブルージーンズ様の仕上げ、すなわち撚り糸の一部だけを染色してそれ以外の部分は染色なしとする仕上げにするように、50%カチオン綿・50%天然綿とするなど)。自分の好みの色および柄の衣服を作った後、顧客はオプションとしてその製品に図案化頭文字ほかのシンボルを刺繍またはプリントしてもらうこともできる。カチオン綿撚り糸による刺繍形状または図案化頭文字形状を染色工程の前に衣服に施して、その工程を通じて刺繍部分が染色されるようにすることもできる。
【0020】
小売業販売店の特に靴下、ハンカチ、乳児衣料、アクセサリ類(タオル、毛布、よだれ掛けなど)を染色する販売店における一つの実施例には、例えば市販の電気湯沸器など複数の湯沸器を用いる。これらの湯沸器を染料水溶液で満たして短時間のうちに(2分程度で)沸騰させる。上述の小さい衣料品を上記湯沸器に投入し、ガラス攪拌棒などで攪拌する。これら小さい衣料品は2分−10分以内に効果的に染色することができ、そのあとすすぎ洗いして乾燥させることができる。湯沸器をガラス製のものにして染色の進行中に顧客がその衣料品を見られるようにするのが好ましい。いくつかの湯沸器を備えることによって、幾人かの顧客の衣料品を同時並行染色によりカスタマイズすることができる。また、湯沸器で染色する小さい衣料品については、顧客が染料溶液を攪拌して染色工程に介入できるようにすることも可能である(攪拌によって染色が一様になる)。繊維材料はカチオン綿で構成することができ、また、刺繍部分に染色を施すように天然綿撚り糸で刺繍を施すこともできる。上述の通り、衣料品のスタイルは顧客の選んだ任意のスタイルとすることができる。
【0021】
この発明のもう一つの側面は、顧客向きの衣料染色機、すなわち顧客がカスタム染色繊維製品を注文した小売店の店頭で例えば顧客の教育上または娯楽上の経験を高め得る衣料染色機を提供することにある。例示のために挙げれば、この側面はシャツを染色することに関連して説明できるが、上記顧客向きの衣料染色機は任意の種類の衣料品または繊維製品に対応できる。この発明のこの側面の主眼点は、顧客および上記店頭にいるそれ以外の人々が進行中の染色加工を見られるようにすることである。この衣料染色機はカスタム染色衣料を一つずつ作り出すことを可能にする。
【0022】
図2は顧客向きの衣料染色機の一つの例を示す。より詳細に述べると、衣服10をタンク12の中に配置し、タンク12内部の一つ以上のノズル14で染料水溶液を衣料10に噴霧にして作用させる。好ましい実施例ではタンク12は円筒状のプレキシガラス側壁を有し、その側壁を通じてタンク内で進行中の染色過程を視察できるようになっている。タンク12は上記以外の構成を備えることもできるが、タンク側壁の少なくとも一部を透明にした構成が望ましい。図2ではノズル14をタンク12内部に固定的に取り付けてあるが、一つ以上のそれらノズルをタンク12内部で可動に(例えば衣服10の周囲で回転できるように)することもできる。上記好ましい実施例では、ノズル14をタンク12の中で衣服12に対して互いに高さの異なる位置に設け、衣服10のカバレッジをより良くするようにしている。ハンガー型16で例示した衣服掛けラックをスピンドル18に結合するのが好ましい。可撓性線材製のマネキンまたは開口付きのマネキンをハンガー型16の代わりに用いればさらに好ましい。可撓性線材の利用により多様なサイズの衣服に対応できる。ハンガー型16の衣服掛けラックは、タンク内に互いに異なる種類の衣服(例えばシャツとジーンズ)を収容することを可能にする点で有利である。スピンドル18は、タンク12内で衣服10を上下両方向に動かすことができ、またタンク12内でそのタンクの軸のまわりで衣服10を回転させることができる。衣服10の回転および上下方向の動きによって染料のカバレッジの一様性を確保できるようにする。スピンドル18およびTシャツ10に付けた矢印は、例えばスピンドル内部および開口付きマネキン型衣服掛けラック内部で染料溶液が流れ得ることを示している。好ましい実施例では、染料は例えばマネキン内部からTシャツの繊維を通り抜けて循環し、微細噴霧により染色をより一様にする作用を助けるようにノズル14を用いてある。タンク12の底の染料をスピンドル18経由で再循環させ、マネキン型衣服掛けラック16またはノズル14経由で染色工程完結まで循環させるのに排出口20を用いることができる。衣服10の染色を完結させたあと、ノズル14が水を衣服10に噴射して余分の染料を除去するようにすすぎ洗いすることができる。また、タンク12を水で満たしてその衣服をすすぎ洗いすることもできる。代わりに、衣服10およびタンク12洗滌のためのホース組立体(図示してない)ほかの手段を用いることもできる。また、ノズル14またはホース組立体から噴出した水でタンク12の内部を洗滌して次の衣服の染色に備えることもできる。洗滌用の水は排出口20(またはもう一つの排出ポート(図示してない))を通じて除去できる。
【0023】
図3は顧客向き衣服染色機のもう一つの例を示す。図2に示した例と同様に、図3の例も透明な円筒状プレキシガラス製タンク12の中に配置した衣服110を有する。観察に好都合になるように、衣服110をマネキン型の衣服掛けラック116に掛け、このラック116で染色加工中の衣服の立体形状特徴を確保している(ラック116も図2に示した他の型のラックも用い得ること、またラック116を図2の構成に用い得ることは理解されよう)。スピンドル118は衣服掛けラック116に結合してあり、衣服110を図に両端矢印で示すとおりタンク112内部で上下に動かしたり軸のまわりで回転させたりするのに用いる。タンク112は染料水溶液120で満たされており、この染料水溶液120を顧客指定による衣服110の染色に用いる。この染料水溶液120は一つ以上のポート122経由で補充および抜き取りが可能である。溶液120は、タンク112内部に設けた一つ以上のインペラ124によってタンク内で循環させ得る。衣服110をスピンドル118によりタンク112内の溶液120の液面以上に繰り返し引き揚げることによって、顧客は染色加工の進み具合を観察できる。また、衣服110を回転させることにより、染色加工を促し、染色加工についての顧客の認識を高めることができる。染色のあと衣服110を洗滌して余分の染料を除去するとともにタンク112内部を洗滌することができる。洗滌は噴霧ノズルの利用、タンク112への水の導入その他の手段によって行うことができる。
【0024】
次に述べる例はこの発明の多数の応用例を説明するものであるが、ここに詳述するやり方以外のやり方でこの発明が実施できることは明らかであろう。
【0025】
[例1]
カチオン綿含有レベルの互いに異なる綿撚り糸で形成した縞模様の未染色ニットシャツを顧客が選択する。また、顧客は赤色を選ぶ。このシャツを衣服染色機に入れる。予め溶解ずみの赤の繊維反応性染料(衣料品の1重量%)を液体対衣料品比15:1で染色機に入れる。染料浴を180°Fに加熱して10分間維持した。次に染料浴を冷却し、排出し、温水ですすぎ洗いしたのち抽出した。染色ずみの衣服を営業用の乾燥機で乾燥させた。染色を施したシャツは最終的には濃淡にぼかしのある赤い縞模様のものになった。
【0026】
[例2]
カチオン綿撚り糸を縦糸に天然綿撚り糸を横糸にして織った未染色ズボンを顧客が選択する。顧客は青色を選ぶ。このズボンを衣服染色機に入れる。予め溶解ずみの青の繊維反応性染料(衣料品の2重量%)を液体対衣料品比15:1で染色機に入れる。染料浴を180°Fに加熱して15分間維持した。次に染料浴を冷却し、排出し、温水ですすぎ洗いしたのち抽出した。染色ずみの衣服を営業用の乾燥機で乾燥させた。乾燥したブルージーンズの外観のズボンが最終的に得られた。
【0027】
[例3]
カチオン綿100%含有の綿撚り糸で作った未染色ニットシャツを顧客が選択する。顧客は青色を選ぶ。このシャツを衣服染色機に入れる。予め溶解ずみの青色の繊維反応性染料(衣料品の1重量%)を液体対衣料品比15:1で染色機に入れる。染料浴を180°Fに加熱して10分間維持した。次に染料浴を冷却し、排出し、温水ですすぎ洗いしたのち抽出した。染色ずみの衣料を営業用の乾燥機で乾燥させた。乾燥のあと全体が青一色のシャツが最終的に得られた。
【0028】
[例4]
カチオン綿50%および天然綿50%の混紡による綿撚り糸で作った未染色のニットシャツを顧客が選ぶ。顧客は緑色を選ぶ。このシャツを衣服染色機に入れる。予め溶解ずみの緑色の繊維反応性染料(衣料の1重量%)を液体対衣料品比15:1で染色機に入れる。染料浴を180°Fに加熱して10分間維持した。次に染料浴を冷却し、排出し、温水ですすぎ洗いして抽出した。染色ずみの衣料を営業用の乾燥機で乾燥させた。乾燥のあと、青ヒース模様のシャツが最終的に得られた。
【0029】
[例5]
カチオン綿含有レベルの互いに異なる綿撚り糸で織った未染色のカーテン布を顧客が選択する。顧客は青色を選ぶ。そのカーテン布を衣服染色機に入れる。予め溶解ずみの青色の繊維反応性染料(カーテン布の1重量%)を液体対衣料品比15:1で染色機に入れる。染料浴を180°Fに加熱して10分間維持した。次にこの染料浴を冷却し、排出して、温水ですすぎ洗いし、抽出した。このカーテン布を営業用の乾燥機で乾燥させた。最終的に得られたカーテン布は濃淡にぼかしのある青色縞模様のカーテン布であった。
【0030】
[例6]
カチオン綿含有レベルの互いに異なる綿撚り糸で縞模様を作った未染色の靴下を顧客が選択する。顧客は青色を選ぶ。その靴下を、予め溶解ずみの青色繊維反応性染料(衣料の1重量%)を液体対衣料品比15:1で含む湯沸器に入れる。この湯沸器を沸騰点まで加熱し、湯沸器中の靴下を攪拌しながら染色を進める。次にこの靴下を温水ですすぎ洗いし、抽出して、乾燥機に入れ乾燥させる。その結果、濃淡にぼかしのある青色縞模様の靴下が得られた。
【0031】
好ましい実施例についてこの発明を説明してきたが、この発明が添付の特許請求の範囲記載の真意および範囲を逸脱することなく大幅な改変の下に実施できることは当業者に認識されよう。
【産業上の利用可能性】
【0032】
衣料品の生地、サイズ、色、柄などの選択の幅を拡大するとともに、顧客が自分の選んだ衣料品の染色加工をカスタマイズすることを可能にして、販売促進に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】個々の顧客に対してカスタマイズされた色および柄の衣料品を提供できるようにその衣料品の購入および店内での選択染色ができる小売店内のシステムの構成部分および方法の過程の概略図。
【図2】衣料の染色に用いる噴霧ノズル付きの透明の染料容器の例を示す図。
【図3】タンクを満たした染料溶液に衣料を浸す透明の染料容器のもう一つの例を示す図。
【符号の説明】
【0034】
[図1]
Displayed undyed
garment with different patterns
互いに異なる柄の未染色衣服を陳列
Customer picks
color from color library book or using computer color-matching system
色収集本またはコンピュータ利用の色マッチングシステムにより顧客が色を選ぶ
load 投入
dyeing 染色
dry
乾燥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣料品染色機であって、
基部と一つ以上の側壁とを備えるタンクであって、中に収容した衣料品を外から観察できるように前記一つ以上の側壁の少なくとも一部が透明であるタンクと、
前記タンクの内部に配置した衣料品保持ラックと、
前記衣料品保持ラックに掛けた一つ以上の衣料品を染色するように染料水溶液を前記タンクの中に供給する手段と
を含む衣料品染色機。
【請求項2】
前記タンクの前記一つ以上の側壁がプレキシガラス円筒である請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項3】
前記衣料品保持ラックがそのラックに掛けた一つ以上の衣料品の染色の期間中に前記タンクの中で可動である請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項4】
前記衣料品保持ラックに結合したスピンドルであって、
前記衣料品保持ラックを前記タンクの中で上下に動かすこと、
前記衣料品保持ラックを前記タンクの中の軸のまわりで回転させること、および
前記衣料品保持ラックに掛けた衣料品にそのラックの貫通孔などの開口を通じて染料を供給すること
の一つ以上を行うスピンドルをさらに含む請求項3記載の衣料品染色機。
【請求項5】
前記スピンドルが前記衣料品保持ラックを前記タンクの中で上下に動かす請求項4記載の衣料品染色機。
【請求項6】
前記スピンドルが前記衣料品保持ラックを前記タンクの中の前記軸のまわりで回転させる請求項4記載の衣料品染色機。
【請求項7】
前記衣料品保持ラックが、全面的または部分的に貫通孔を施したマネキン、または可撓性線材製の全身マネキンもしくは部分マネキンの形を備える請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項8】
前記染料を供給する手段が、前記衣料品保持ラックの内部からそのラックに掛けた衣料品に染料を伝達するように前記衣料品保持ラックに付随した伝達機構を含む請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項9】
前記染料を供給する手段が、前記タンクの内部に配置した一つ以上の噴霧ノズルを含む請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項10】
前記一つ以上の噴霧ノズルのうちの少なくとも一つが前記タンクの内部で固定されており、前記衣料品保持ラックが上下両方向に動き、または前記タンクの中の軸のまわりで回転する請求項9記載の衣料品染色機。
【請求項11】
前記一つ以上の噴霧ノズルの少なくとも一つが前記タンクの中で前記衣料品保持ラックに対して相対的に可動である請求項9記載の衣料品染色機。
【請求項12】
前記タンクの中の染料を前記一つ以上の噴霧ノズル経由で再循環させる手段をさらに含む請求項9記載の衣料品染色機。
【請求項13】
前記染料を供給する手段が前記タンクを染料で満たす配管を含む請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項14】
前記タンクの中で前記染料を循環させる手段をさらに含む請求項13記載の衣料品染色機。
【請求項15】
前記一つ以上の衣料品を染色したあとこれら衣料品および前記タンクを洗滌する手段をさらに含む請求項1記載の衣料品染色機。
【請求項16】
衣料品染色機であって、
基板および透明円筒状プレキシガラス側壁を有するタンクと、
前記タンクの中に延びるスピンドルと、
前記スピンドルに結合した衣料品保持ラックであって、前記スピンドルによって前記軸のまわりで回転するか前記タンクの中で上下に動く衣料品ラックと、
前記タンクの中に配置され前記染料を前記衣料品保持ラック上の一つ以上の衣料品に作用させる一つ以上の噴霧ノズルと
を含む衣料品染色機。
【請求項17】
衣料品染色機であって、
基板および透明円筒状プレキシガラス側壁を有するタンクと、
前記タンクの中に延びるスピンドルと、
前記スピンドルに結合した衣料品保持ラックであって、前記スピンドルによって前記軸のまわりを回転するか前記タンクの中で上下に動く衣料品ラックと、
前記タンクの少なくとも一部を、前記衣料品保持ラックに掛けた一つ以上の衣料品に染料を作用させるように染料水溶液で満たす手段と
を含む衣料品染色機。
【請求項18】
カスタマイズした染色繊維材料を作るビジネス方法であって、
(a)単一の繊維材料についてサイズ、柄および色を選ぶ過程と、
(b)前記選ぶ過程で選ばれた前記サイズおよび柄を生ずる単一の繊維材料を染色機に入れる過程であって、
前記染色機に入れられた前記単一の繊維材料がその材料の染色中における縮みを考慮したサイズを備えるとともに、
織り柄または編み柄の少なくとも一つの関数である柄と、前記単一の繊維材料の中で0%乃至100%で変動するカチオン綿撚り糸含有率とを有する
過程と、
(c)前記選ぶ過程において選んだ前記色を生ずる染料で前記単一の繊維材料を染色する過程と、
(d)追加の繊維材料について前記過程(a)乃至(c)を繰り返す過程と
を含むビジネス方法。
【請求項19】
前記単一の繊維材料が衣料品である請求項18記載のビジネス方法。
【請求項20】
前記衣料品のスタイルを選択する過程をさらに含む請求項19記載のビジネス方法。
【請求項21】
前記単一の繊維材料を室内装飾品、リネン類、カーテン類およびタオル類から選んだ請求項18記載のビジネス方法。
【請求項22】
前記選ぶ過程をネットワーク経由でコンピュータにより行う請求項18記載のビジネス方法。
【請求項23】
前記選ぶ過程が、前記色の特定のためのカラーマッチングの過程を含む請求項18記載のビジネス方法。
【請求項24】
前記単一の繊維材料をカチオン綿および天然綿で構成した請求項18記載のビジネス方法。
【請求項25】
前記染色過程を、温度212°F以下の加熱温度で行う請求項18記載のビジネス方法。
【請求項26】
前記染色過程をアニオン系染料の利用により行う請求項18記載のビジネス方法。
【請求項27】
前記アニオン染料系が繊維反応性染料、直接染料および酸性染料の一つである請求項26記載のビジネス方法。
【請求項28】
前記染色を塩なしまたは塩素なしで行う請求項28記載のビジネス方法。
【請求項29】
前記染色過程を、その染色過程の期間中に枯渇する量の染料で行う請求項18記載のビジネス方法。
【請求項30】
前記単一の繊維材料および前記染色機に結合した管路の中の染料の少なくとも一方を前記染色過程の期間中に顧客が観察できるようにする過程をさらに含む請求項18記載のビジネス方法。
【請求項31】
前記染色機がガラス製の湯沸器で構成されている請求項18記載のビジネス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−522284(P2010−522284A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554628(P2009−554628)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/055595
【国際公開番号】WO2008/115685
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509262770)ティントリア ピアナ ユーエス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】