説明

食品包装用フィルム

【課題】耐熱性、カット性および粘着性に優れた食品包装用フィルムを提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂(a)からなる層(A)の両面に、メチル−1−ペンテン系重合体(b)からなる層(B)が積層されていることを特徴とする食品包装用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品包装用フィルム、特に家庭用フィルムとして好適に使用される食品包装用フィルムに関する。より詳細には、耐熱性、カット性および粘着性に優れる食品包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる家庭用ラップフィルムなどとして使用されるストレッチフィルムとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)に適当量の可塑剤を配合して製膜したもの、適当な密度のポリエチレン(PE)を透明性よく製膜したもの等が知られている。しかしながら、このような材質のラップフィルムは、高温では柔らかくなりすぎ、フィルムとしての形状を保持できなくなる。また、油性の強い食品を直接包んで電子レンジ等で比較的長時間加熱すると、フィルムが融けたり破れたりするなどの問題がある。
【0003】
一方、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)などの耐熱性のよいプラスチックを用いたラップフィルムも知られているが、これらのフィルムは粘着性が付与されにくいという問題がある。
【0004】
また、耐熱性に優れた4−メチル−1−ペンテン系重合体を用い、これに液状ポリブテン(イソブチレンを主成分とする重合体)を粘着性付与剤として添加した組成物のラップフィルムが提案されているが(例えば、特許文献1)、このような組成物のフィルムでは、経時的にブロッキング現象を発現し、箱からの取り出しが著しく困難になるという欠点を有する。
【0005】
また、メチル−1−ペンテン系重合体を主成分とし、これにエチレン・α−オレフィン共重合体を混合して得られる樹脂組成物から成る単層の包装フィルムが提案されている(例えば、特許文献2および3)。しかし、単層では多層構造に比べてカット性が劣り、また、メチル−1−ペンテン系重合体が多い配合では、フィルムの透明性が損なわれると共に、粘着性が低下するという欠点を有する。一方、メチル−1−ペンテン系重合体のみから成る単層フィルムは、カット性、透明性、耐熱性は良好であるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)などの耐熱性のよいプラスチックを用いたラップフィルムと同様に粘着性を付与しにくいという問題を有する。エチレン・α−オレフィン共重合体のみから成る単層フィルムでは、透明性、粘着性は良好であるが、カット性、耐熱性の点で劣る。カット性を向上させる為に、延伸技術等が知られているが、延伸できる温度範囲が狭く、温度が低いと延伸できずに裂け、温度が高いと溶融して伸びてしまい、安定して延伸成形するには他の樹脂を混合して延伸温度範囲を広げる等の高度な技術が必要となってくる。
【0006】
また、メチル−1−ペンテン系重合体を主成分とした層の片面または両面にプロピレン系樹脂またはエチレン・α−オレフィン系樹脂よりなる表面層を積層した包装フィルムや、メチル−1−ペンテン系重合体を主成分とした層と表面層との間に中間層をもうけた包装フィルムも提案されている(例えば、特許文献4〜7)。しかし、表面層であるプロピレン系樹脂またはエチレン・α−オレフィン系樹脂よりなる樹脂フィルム層が耐熱性に劣るので、このような包装フィルムでラップされた食品が高温にさらされた場合、樹脂フィルム層に含まれる低温溶出物が食品に移行するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−239291号公報
【特許文献2】特開平11−29670号公報
【特許文献3】特開平11−29671号公報
【特許文献4】特開平06−23927号公報
【特許文献5】特開2003−200539号公報
【特許文献6】特開平02−107438号公報
【特許文献7】特開2006−231622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐熱性に優れる包装フィルムであって、上記フィルムで包装された食品を高温にさらしてもフィルムからの溶出物が食品に移行するという問題がなく、かつ優れたカット性および粘着性を有する食品包装用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、オレフィン系樹脂からなる層の両面にメチル−1−ペンテン系重合体から成る層を積層すると、耐熱性、カット性および粘着性に優れたフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、オレフィン系樹脂(a)からなる層(A)の両面に、メチル−1−ペンテン系重合体(b)からなる層(B)が積層されていることを特徴とする食品包装用フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の食品包装用フィルムは、耐熱性、カット性および粘着性に優れ、上記フィルムで包装された食品を高温にさらしてもフィルムからの溶出物が食品に移行するという問題がないので、電子レンジ対応の食品包装用フィルムとして特に適する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例3のフィルムの、加熱試験を行う前の表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
【図2】実施例3のフィルムの、加熱試験を行った後の表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
【図3】比較例1のフィルムの、加熱試験を行う前の表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
【図4】比較例1のフィルムの、加熱試験を行った後の表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において層(A)として使用されるポリオレフィン系樹脂(a)としては、例えば、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン系重合体およびブテン−1系重合体が挙げられる。これらは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
低密度ポリエチレンは、線状低密度ポリエチレン(LL)、分岐状低密度ポリエチレン(LD)の単独またはこれらのブレンド物を包含する。線状低密度ポリエチレンとしては、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、好ましくは炭素数6〜8のα−オレフィンとの共重合体である。
【0015】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数が4〜8のα−オレフィンとを共重合したものである。α−オレフィンの含有量は5重量%以上、好ましくは8〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%である。α−オレフィンとしてはブテンやヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等が挙げられ、なかでも炭素数6〜8のα−オレフィン、特にヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1が好ましい。
【0016】
上記エチレン・α−オレフィン共重合体は、好ましくはメルトフローレート(ASTM D1238に準拠;測定温度:190℃;荷重:2.16kg)が0.1〜20g/10分であり、より好ましくは1〜10g/10分である。また、エチレン・α−オレフィン共重合体は、得られるフィルムの柔軟性や強度、透明性及び耐熱性の観点から、密度(ASTM D1505)が0.93g/cm未満であるのが好ましい。
【0017】
上記プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体またはプロピレン系ブロック共重合体であり、1種を単独で、または2種以上を併用して使用することができる。
【0018】
上記プロピレン系ランダム共重合体としては、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素数4〜20の少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、または、プロピレンとエチレンと炭素数4〜20の少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体が挙げられる。
【0019】
上記炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0020】
上記プロピレン系ランダム共重合体の具体例としては、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられ、好ましくはプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体である。
【0021】
上記プロピレン系ブロック共重合体は、結晶性プロピレン系重合体部と非結晶性プロピレン・α−オレフィン共重合体部とから構成されるブロック共重合体である。結晶性プロピレン系重合体部としては、プロピレンの単独重合体又はプロピレンと少量の他のα−オレフィンとのランダム共重合体などが例示できる。一方、非結晶性プロピレン・α−オレフィン共重合体としては、プロピレンと他のα−オレフィンとの非結晶性ランダム共重合体が挙げられる。
【0022】
上記他のα−オレフィンとしては、炭素原子数2又は4〜12のものが好ましく、具体例としては、エチレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは1種類を用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0023】
また、上記プロピレン系ブロック共重合体として、上記他のα−オレフィンに加えて1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエンを共重合した三元又は四元以上の共重合体も使用することができる。
【0024】
上記ブテン−1系重合体は、液状のブテン−1モノマーを触媒重合したホモポリマーおよび炭素数2〜3のα−オレフィンとのコポリマーを包含する。メルトフローレート(ASTM D1238に準拠;測定温度:190℃;荷重:2.16kg)は、0.1〜5g/10分の範囲が好ましい。また、密度(ASTM D1505)は、0.890〜0.920g/cmのものが好ましい。
【0025】
層(A)を構成する上記ポリオレフィン系樹脂(a)は、好ましくは、曲げ弾性率(JIS K7171:2008)が100〜950MPaであり、より好ましくは150MPa〜900MPa、さらに好ましくは200MPa〜800MPaである。曲げ弾性率が100MPa未満であると、得られるフィルムのカット性に劣る場合があり、950MPaを越えると、得られるフィルムの粘着性に劣る場合がある。なお、層(A)が2以上のポリオレフィン系樹脂の混合物で構成される場合には、上記曲げ弾性率は、上記混合物における値である。
【0026】
また、層(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a)の他に、本発明の目的を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化防止剤、中和剤、造核剤など各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0027】
層(A)の両面に積層される層(B)は、メチル−1−ペンテン系重合体(b)からなる。上記メチル−1−ペンテン系重合体(b)は、4−メチル−1−ペンテンまたは3−メチル−1−ペンテンの単独重合体の他に、4−メチル−1−ペンテンおよび/または3−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィンとの共重合体を包含する。上記α−オレフィンは1種単独でも、また2種以上を組合せて使用してもよい。上記共重合体におけるα−オレフィンの含有量は、C2〜C5のα−オレフィンを使用する場合には10重量%以下、C6〜C10のα−オレフィンを使用する場合には8重量%以下、C11〜C14のα−オレフィンを使用する場合には5重量%以下であるのが好ましい。これらを組合せて使用する場合には、α−オレフィンの合計が5重量%以下であるのが好ましい。これらの(共)重合体は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記(共)重合体を無水マレイン酸で変性したものもメチル−1−ペンテン系重合体(b)として使用でき、その場合、無水マレイン酸の含有量は10重量%以下であるのが好ましい。メチル−1−ペンテン系重合体(b)としては、4−メチル−1−ペンテンの(共)重合体が好ましい。
【0028】
メチル−1−ペンテン系重合体(b)は、好ましくはメルトフローレート(ASTM D1238に準拠;測定温度:260℃;荷重:5.00kg)が15〜50g/10分であり、より好ましくは20〜30g/10分である。
【0029】
層(B)は、上記メチル−1−ペンテン系重合体(b)で構成されるが、下記に述べる添加物を、メチル−1−ペンテン系重合体(b)による効果を損なわない範囲で、例えば、メチル−1−ペンテン系重合体(b)100重量部に対して1〜20重量部の量で含んでいても良い。好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部の量である。
【0030】
上記添加物は、液状ポリブテン、流動パラフィンおよびブテン−1系重合体を包含し、これらを1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。層(B)がこれらの添加物を含むと、透明性がより良好になる。
【0031】
上記液状ポリブテンは、常温で液状であり、100℃における動粘度が2〜5000cStのものである。成形性と品質に優れた耐熱ラップフィルムが得られる点で、上記動粘度が50〜1000cStのものが好ましい。
【0032】
流動パラフィンは例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素);イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)および、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
【0033】
また、パラフィンオイルには、少量の不飽和炭化水素およびこれらの誘導体が共存していてもよい。不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素;アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
【0034】
上記ブテン−1系重合体は、ブテン−1単量体を主成分として重合したものであり、例えば、ブテン−1単独重合体、ブテン−1と炭素数2〜8のα−オレフィン成分1種以上との共重合体を含む。上記ブテン−1系重合体は常温で固体であり、その質量平均分子量は、好ましくは100万〜300万である。
【0035】
また、層(B)は、得られるフィルムの自己粘着性、防曇性、帯電防止性、滑性、加工性を向上させるために、以下に示す油脂をメチル−1−ペンテン系重合体(b)100重量部に対して20重量部未満の量で含有していても良い。
【0036】
油脂の具体例は、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステル化合物、たとえば(ジ)グリセリンモノ(またはジもしくはトリ)オレート、(ジ)グリセリンモノ(またはジもしくはトリ)ステアレート、(ジ)グリセリンモノ(またはジ)パルミテート、(ジ)グリセリンモノ(またはジ)ラウレート、(ジ)グリセリンモノ(またはジもしくはトリ)オレートラウレート;ソルビタン脂肪酸エステル化合物、たとえばソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタン(トリ)ステアレート、ソルビタン(トリ)オレート;エチレンオキサイド付加物、たとえばポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリンモノオレート;および、プロピレングリコール脂肪酸エステル、たとえばプロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、プロピレングリコールモノベヘネートを包含する。これらは、メチル−1−ペンテン系重合体(b)100重量部に対して、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部の量で配合できる。
【0037】
油脂の他の具体例は、オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、ラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドを包含する。これらは、メチル−1−ペンテン系重合体(b)100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.5重量部、より好ましくは、0.05〜0.2重量部の量で配合できる。
【0038】
本発明の食品包装用フィルムは、上記した層(A)の両面に上記した層(B)が積層された多層フィルムである。層(A)と層(B)の各厚みは特に限定されないが、厚さ比(B/A/B)が(0.25/1/0.25)〜(2.5/1/2.5)であるのが好ましく、より好ましくは(0.5/1/0.5)〜(1/1/1)である。層(A)の厚さに対する層(B)の厚さが上記範囲未満であると、得られるフィルムの耐熱性に劣る場合があり、上記範囲を超えると、得られるフィルムの粘着性に劣る場合がある。
【0039】
得られる多層フィルムの全厚は5μm以上かつ30μm未満であるのが好ましく、特に好ましくは5〜15μmである。フィルムが厚すぎると、透明性が不十分になる場合がある。
【0040】
本発明の食品包装用フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、層(A)および(B)のための樹脂をそれぞれ、2台以上の押出機と1台の多層ダイを用いて溶融混練した後、T−ダイ、インフレーション等の公知の製膜方法を用いてフィルムに成形することができる。なお、フィルムの耐熱性および強度を上げるために、テンター法、チューブラ法等により延伸しても良い。
【実施例】
【0041】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。これらは本発明を何ら制約するものではない。
【0042】
実施例および比較例において行われたフィルムの試験は、以下の通りである。
(1)耐熱性
東京都家庭用品の品質表示法にしたがって、耐熱温度を測定した。
(2)粘着性
ガラス容器へのくっつき性を、10人のパネラーによるアンケートで評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:9人以上が、粘着性が良いと判断した
○:7〜8人が、粘着性が良いと判断した
△:4〜6人が、粘着性が良いと判断した
×:7人以上が、粘着性が悪いと判断した。
(3)カット性
フィルムを小巻にしたものを、金属製鋸刃を有する化粧箱に入れ、フィルムのカット性を、10人のパネラーによるアンケートで評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:9人以上が、カット性が良いと判断した
○:7〜8人が、カット性が良いと判断した
△:4〜6人が、カット性が良いと判断した
×:7人以上が、カット性が悪いと判断した。
(4)透明性
JIS K7105に準拠し、ヘーズ値を測定した。
(5)高温溶出試験
表面積100cmの円形状の試験片(直径11.3cm)を切り出し、その片面全体を温度175℃のオリーブ油200mlに2時間接触させた後、オリーブ油に抽出された試験片からの溶出物の量を求めた。抽出量は、(オリーブ油で抽出前の試験片の質量)−(オリーブ油で抽出後の試験片の質量)+(試験片に浸み込んだオリーブ油の質量)により求めた。抽出量をオリーブ油1mlあたりの濃度に換算した数値を溶出量とした。単位はμg/mlである。なお、試験片に浸み込んだオリーブ油の質量は、抽出後の試験片からn−ヘプタンでオリーブ油を抽出し、定量した。
(6)曲げ弾性率
JIS K7171:2008に準拠して、試験速度2mm/分、圧子R3で測定をした。試験片のサイズは長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmである。なお、試験片は、JIS K6921−2、JIS K6922−2、JIS K6925−2に準拠して、射出成形または圧縮成形にて成形した。
【0043】
実施例1
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として日本ポリプロ(株)製のNAC4(プロピレン系ブロック共重合体;MFR(測定温度:230℃、荷重:2.16kg):6.0g/10分;密度:0.9g/cm;曲げ弾性率:760MPa)を使用し、その両面に積層される層(B)を構成するメチル−1−ペンテン系重合体(b)として、三井化学(株)製のMX−004(ポリ(4−メチル−1−ペンテン);MFR(測定温度:260℃、荷重:5.00kg):23g/10分;密度:0.833g/cm)を各々、押出機(池貝鉄工(株)製、スクリュー径:40mm、L/D:28)に供給した。三層フィルム(B/A/B)の各層の厚み(μm)が2/8/2(厚み比:0.25/1/0.25)となるように共押出多層Tダイにて積層して、全厚12μmのフィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
各層の厚み(μm)を3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)とした以外は、実施例1と同様にして、全厚12μmの三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
各層の厚み(μm)を4/4/4(厚み比:1/1/1)とした以外は、実施例1と同様にして、全厚12μmの三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
各層の厚み(μm)を5/2/5(厚み比:2.5/1/2.5)とした以外は、実施例1と同様にして、全厚12μmの三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0047】
実施例5
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、TOTAL PETROCHEMICAL社製の1471(シンジオタクチック・エチレン・プロピレン;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):4.0g/10分;密度:0.88g/cm;曲げ弾性率:340MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0048】
実施例6
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、日本ポリプロ(株)製のWFX4T(メタロセン触媒プロピレン系共重合体;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):7.0g/10分;密度:0.90g/cm;曲げ弾性率:700MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0049】
実施例7
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、日本ポリプロ(株)製のFW4BT(プロピレン系ランダム共重合体;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):6.5g/10分;密度:0.90g/cm;曲げ弾性率:850MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0050】
実施例8
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、三井化学(株)製のBL3110(エチレン・プテン−1共重合体;MFR(測定温度:190℃、荷重:2.16kg):1.0g/10分;密度:0.91g/cm;曲げ弾性率:250MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
層(A)としてメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)を使用し、層(B)として、オレフィン系樹脂である日本ポリエチレン(株)製のKF260(エチレン・ヘキセン−1共重合体;MFR(測定温度190℃、荷重:2.16kg):2.0g/10分;密度:0.903g/cm;曲げ弾性率:82MPa)を使用した以外は、実施例3と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が4/4/4(厚み比:1/1/1)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
実施例1において層(B)として使用したメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)のみを用い、単層押出し機にて厚さ12μmの単層フィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
比較例1において層(B)として使用したオレフィン系樹脂(日本ポリエチレン(株)製、KF260)のみを用い、単層押出し機にて厚さ12μmの単層フィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0054】
比較例4
実施例1において層(B)として使用したメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)および層(A)として使用したオレフィン系樹脂(日本ポリプロ(株)製、NAC4)を70:30の重量比で混合し、得られた樹脂組成物を用いて、単層押出し機にて厚さ12μmの単層フィルムを作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0055】
参考例1
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として、日本ポリエチレン(株)製のKF260を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0056】
参考例2
層(A)を構成するオレフィン系樹脂(a)として(株)プライムポリマー製の232J(高密度ポリエチレン;MFR(測定温度190℃、荷重:2.16kg):5.0g/10分;密度:0.958g/cm;曲げ弾性率:1100MPa)を使用した以外は、実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。このフィルムの試験結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、本発明のフィルムは、耐熱性、粘着性およびカット性に優れ、高温での溶出量も少ない。また、実施例3のフィルムについては、その表面にマヨネーズ0.5gを載せ、出力700Wの電子レンジにて60秒加熱するという加熱試験を行い、加熱試験の前後でのフィルム表面の変化を調べた。図1は、加熱試験前のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)であり、図2は加熱試験後のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。図1および図2から、本発明のフィルムは高温にさらされても融けないことが分かる。したがって、本発明のフィルムは、包装された食品にフィルムからの溶出物が移行することや、表面のフィルムが融けて食品と混ざるという心配がない。
【0059】
一方、表1に示されるように、層(A)としてメチル−1−ペンテン系重合体(b)を使用し、層(B)としてオレフィン系樹脂(a)を使用した比較例1のフィルムは、高温での溶出量が多かった。また、このフィルムについても、実施例3の場合と同様の加熱試験を行った。図3は、加熱試験前のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)であり、図4は加熱試験後のフィルム表面の電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。図3および図4から、加熱試験後のフィルムは融けているのが分かる。
【0060】
また、表1から明らかなように、メチル−1−ペンテン系重合体のみを使用した比較例2のフィルムは粘着性に劣り、オレフィン系樹脂のみを使用した比較例3のフィルムは耐熱性およびカット性に劣るとともに、高温での溶出量が多かった。比較例4のフィルムは、メチル−1−ペンテン系重合体とオレフィン系樹脂との混合物からなる単層フィルムであり、粘着性に劣ると共に、高温での溶出量が多かった。層(A)として曲げ弾性率が100MPa未満であるオレフィン系樹脂を使用した参考例1のフィルムはカット性に劣り、曲げ弾性率が950MPaより大きいオレフィン系樹脂を使用した参考例2のフィルムは粘着性に劣る。
【0061】
実施例9
実施例2において層(B)として使用したメチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)に代えて、上記メチル−1−ペンテン系重合体(三井化学(株)製、MX−004)と流動パラフィン((株)松村石油研究所製のP−350P;動粘度(測定温度37.8℃):75.9cSt;密度:0.868g/cm)とを97:3(重量比)で混合して得られた樹脂組成物を使用した以外は実施例2と同様にして、全厚が12μmで、各層の厚み(μm)が3/6/3(厚み比:0.5/1/0.5)である三層フィルム(B/A/B)を作成した。得られたフィルムの透明性はヘーズ値で0.9%であり、実施例2のフィルム(ヘーズ値:6.2%)よりも優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂(a)からなる層(A)の両面に、メチル−1−ペンテン系重合体(b)からなる層(B)が積層されていることを特徴とする食品包装用フィルム。
【請求項2】
層(B)が、液状ポリブテン、流動パラフィンおよびブテン−1系重合体から成る群から選択される1種以上を、メチル−1−ペンテン系重合体(b)100重量部に対して1〜20重量部の量でさらに含むことを特徴とする請求項1記載の食品包装用フィルム。
【請求項3】
オレフィン系樹脂(a)が、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン系重合体およびブテン−1系重合体から成る群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の食品包装用フィルム。
【請求項4】
オレフィン系樹脂(a)が、100〜950MPaの曲げ弾性率(JIS K7171:2008)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の食品包装用フィルム。
【請求項5】
フィルムの各層の厚さの比(層(B)/層(A)/層(B))が(0.25/1/0.25)〜(2.5/1/2.5)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の食品包装用フィルム。
【請求項6】
5μm以上かつ30μm未満の厚みを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の食品包装用フィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−56707(P2013−56707A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242182(P2012−242182)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2008−195352(P2008−195352)の分割
【原出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】