説明

食品洗浄剤

【課題】 より長期間、防黴及び鮮度保持効果を持続可能な食品洗浄剤の提供。
【解決手段】 イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物と貝殻焼成カルシウム含有成分とを含むことを特徴とする食品洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流通、保存時の食品、特に野菜、果物及び穀物の防黴及び鮮度保持を目的とした洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カラシ油と称されるイソチアン酸エステル類が、食品(例えば青果物)の防黴に有効であることが知られており(日本特開昭58−6334号公報)、食品保存剤として既に製品化されている。ところで、前記食品保存剤は、ゼオライトへの吸着物又はフィルム状で使用されていたが、低湿度での前記有効成分の揮発性が低いことや揮発濃度の制御が困難であることに鑑み、サイクロデキストリン内に前記有効成分を内包するという技術が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第2851104号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、保存剤として用いられている上記イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物は、その防黴性及び鮮度保持効果ゆえ、食品の洗浄剤としても利用可能である。しかしながら、前記化合物を洗浄剤として使用すると、防黴性や鮮度保持効果を発揮するものの、比較的短い時間で黴の発生を起こしたり鮮度低下を招く場合があるので、食品洗浄後、比較的長い時間流通や保存をせざるを得ない際に問題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は鋭意研究の結果、上記イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物とある種の添加剤とを組み合わせることにより、食品洗浄後に長期間、防黴効果及び鮮度保持効果が顕著に向上することを見出し、本発明を完成させたものである。
【0005】
本発明(1)は、イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物と貝殻焼成カルシウム含有成分とを含むことを特徴とする食品洗浄剤である。
【0006】
本発明(2)は、イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物が主成分である、前記発明(1)の洗浄剤である。
【0007】
本発明(3)は、イソチアン酸エステル類が、天然ワサビ又はカラシ抽出物由来である、前記発明(1)又は(2)の洗浄剤である。
【0008】
本発明(4)は、食品が、野菜、果物、穀物又はキノコ類である、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの洗浄剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明における用語の意義を明らかにした上で、最良の形態につき説明することとする。尚、本発明の技術的範囲は、以下で説明する最良の形態に何ら限定されるものではない。
【0010】
「イソチアン酸エステル類」とは、イソチアン酸エステル及びその誘導体を指し、例えば、イソチオシアン酸メチル、イソチオシアン酸エチル、イソチオシアン酸n−プロピル、イソチオシアン酸イソプロピル、イソチオシアン酸n−ブチル、イソチオシアン酸イソブチル、イソチオシアン酸イソアミル、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸フェニル、イソチオシアン酸ベンジルを挙げることができる。尚、前記エステル類は、化学合成でも天然物由来でもよいが、生体安全性の観点から天然物由来が好適である。天然物由来としては、天然ワサビ又はカラシ抽出物由来の前記物質を用いることが好適である。ここで、「抽出」とは、水蒸気蒸留法などを指す。
【0011】
「サイクロデキストリン」とは、澱粉に酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ)を作用させて得られる環状オリゴ糖であり、例えば、α−サイクロデキストリン、β−サイクロデキストリン、γ−サイクロデキストリンを挙げることができ、β−サイクロデキストリンが好適である。
【0012】
「イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物」は、サイクロデキストリンのドーナツ構造の輪の内側(空洞内)にイソチアン酸エステル類を包み込んだものを指す。この包接化合物は、塩水港精糖株式会社からデキシーパールK−100という商品名で入手可能である。尚、包接される物質は、イソチアン酸エステル類以外にも、必要に応じて、他の物質、例えば、イソチオシアン酸エステル類には総じて匂いがあり、食品とこれらの匂いの相性が合わない場合に芳香を有する物質により上記匂いを変えたり消したりするために、芳香物質又は消臭物質、例えばケイ皮酸、バニリン、酢酸ゲラニル、ペッパーオイル、酢酸エチル等を含有していてもよい。
【0013】
「貝殻焼成カルシウム含有成分」とは、貝殻を所定条件下で焼成した、カルシウムを含有する成分を意味する。貝殻は特に限定されず、例えば、カキ殻を挙げることができる。焼成条件は、800〜1600℃で焼成することが好適であり、1000〜1600℃で焼成することがより好適である。また、当該成分は、水に溶解した際に、pHが10〜13となることが好適であり、より好適には12〜13である。尚、熱処理時間は、例えば、2〜13時間程度である。また、使用する当該成分は、平均粒径が3〜150μmとすることが好適であり、前記サイクロデキストリン包接化合物の好適な粒度分布と同程度の10〜100μmであることが最も好適である。尚、当該成分は、例えば、特開2001−226210に記載された方法に従い製造可能である。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物において、イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物と貝殻焼成カルシウム含有成分との量比は特に限定されないが、イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物が主成分であることが好適である。ここで、「主成分」とは、全乾燥重量に基づき、イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物を50重量%以上含むことをいう。また、貝殻焼成カルシウム含有成分の含有量は、全乾燥重量に基づき、50重量%以下、好適には20重量%以下、より好適には10重量%以下である。尚、下限は特に限定されないが、好適には5重量%以上である。尚、貝殻焼成カルシウム含有成分が主成分であってもよい。
【0015】
「食品洗浄剤」における「食品」は、特に限定されず、例えば、野菜(例えば、レタス、キャベツ、ブロッコリー)、果物(例えば、レモン、ミカン、サクランボ)、穀物(例えば、大豆、小豆、米、小麦、大麦、トウモロコシ)、キノコ類(例えば、シイタケ)を挙げることができる。また、食品は、人間の食品だけでなく、動物(例えば馬)の食品(例えば牧草)も含まれる。また、本洗浄剤は、粉体状の製剤であることが好適であるが、水添加後の液状のものも、本発明の「食品洗浄剤」の概念に包含される。また、「洗浄」とは、浸漬や濯ぎの他、スプレー等の吹き付けも包含する概念である。したがって、例えば、牧草に本洗浄剤を吹き付けるような態様も本件特許に含まれる。
【0016】
次に、本発明に係る洗浄剤の使用方法につき説明する。まず、乾燥形態の洗浄剤の場合には、水に洗浄剤を添加混合し、均一系とする。水に添加した時点で、一有効成分であるイソチアン酸エステル類が揮発するメカニズムになっている。尚、水添加後30分以内に使用することが好適である。添加量は、水1リットルに対し、本発明に係る洗浄剤を0.05〜3g添加することが好適である。そして、例えば、吹付け、浸漬、塗布等の手法により、液体形態の洗浄剤を洗浄対象物に適用する。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。尚、本発明の技術的範囲は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0018】
製造例
イソチアン酸アリルを包接したサイクロデキストリン(塩水港精糖株式会社製、デキシーパールK−100)とカキ殻焼成粉砕物(東和産業社製、焼成温度1300℃、平均粒径30〜40μm)とを重量比で10:1で混合することにより、本実施例に係る食品用洗浄剤を得た。
【0019】
試験例
本実施例に係る食品用洗浄剤0.5gを水1リットルに添加し十分に攪拌することにより、液状洗浄剤とした。この液状洗浄剤に野菜(レタス)及び果物(レモン)を5分間浸漬した後、乾燥後に箱詰めし、10℃で所定期間保存した。保存後に鮮度状況(レタス)及び黴の発生状況(レモン)とを目視した。併せて、比較のため、同一量のサイクロデキストリン包接化合物のみを含有する液状洗浄剤(比較例)と、コントロールとして水を用いて同様の処理を行った。その結果を表1(鮮度保持試験)及び表2(防黴試験)に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物と貝殻焼成カルシウム含有成分とを含むことを特徴とする食品洗浄剤。
【請求項2】
イソチアン酸エステル類のサイクロデキストリン包接化合物が主成分である、請求項1記載の洗浄剤。
【請求項3】
イソチアン酸エステル類が、天然ワサビ又はカラシ抽出物由来である、請求項1又は2記載の洗浄剤。
【請求項4】
食品が、野菜、果物、穀物又はキノコ類である、請求項1〜3のいずれか一項記載の洗浄剤。

【公開番号】特開2006−52340(P2006−52340A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235605(P2004−235605)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501272731)株式会社ティー・ティー・シー (7)
【出願人】(504308936)合發貿易股▲フェン▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】