説明

食品用品質改良剤及びこれを含む食品

【課題】安全性が高い酢酸及び/又は酢酸塩を含む食品用品質改良剤であって、酢酸及び/又は酢酸塩の酢酸臭を抑えた食品用品質改良剤、並びに前記食品用品質改良剤を含有した食品を提供すること。
【解決手段】酢酸及び/又はその塩と、グルコン酸及び/又はその塩を含有する食品用品質改良剤、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムを含有する食品用品質改良剤、或いは、前記食品用品質改良剤のpHが5〜9.2の範囲に調整されている食品用品質改良剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸及び/又はその塩と、グルコン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする食品用品質改良剤とこれを含む食品に関する。詳細には、安全性の高い酢酸及び/又は酢酸塩を含有するとともに、この酢酸及び/又は酢酸塩由来の酢酸臭を軽減する食品用品質改良剤及びこれを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品分野において、食品を保存するために種々の保存料が食品に混合されて使用されている。このような保存料のうち、特に天然に存在しない化学合成物質については、その安全性が見直されているものが多い。例えば、ソルビン酸からなる保存料は、細菌やカビなどを殺したり、増殖を抑えたりするために使用されている。しかしながら、このように殺菌効果が高く、細菌やカビなどの増殖を抑制する保存料は、人間の細胞にも悪影響を及ぼす可能性が高いと考えられ、その危険性が懸念されている。
【0003】
このような状況に鑑み、例えば、pH調整や調味料等として従来使用されてきた酢酸や酢酸ナトリウムを用いて、食品の保存性が高められている。
しかしながら、酢酸や酢酸塩を食品に添加すると、これら成分が本来もつ酸味や酢酸臭が、食品の味や臭いに影響を及ぼすという問題を有していた。つまり、酢酸や酢酸塩を食品添加剤とするためには、「酸味」と「酢酸臭」を抑える必要があった。
例えば、特許文献1には、グルコン酸塩からなるマスキング剤が開示されている。この発明によると、マスキング剤を食品に混合することにより、食品の「酸味」が軽減されることが記載されている。
【0004】
「味」は味覚により感じられ、「臭い」は嗅覚により感じられる。味覚は、舌に触れた物の化学的特性に応じで認識される感覚であり、嗅覚は、空気中の化学物質を、鼻腔の奥にある嗅細胞により神経細胞活動に変換し、嗅皮質でそれを認識する感覚である。即ち、「味」と「臭い」は異なる刺激にから得られる感覚であり、これらを抑制する方法もまた異なる。
【0005】
そして、特許文献1に記載の如く、「酸味」を軽減するための手段は創出されているものの、「酢酸臭」を抑制するための有効な手段は未だ見出されていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特公表00/048475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、安全性の高い食品用品質改良剤を提供することである。詳細には、本発明は、必須成分として、酢酸及び/又は酢酸塩を含む食品用品質改良剤であって、酢酸及び/又は酢酸塩の酢酸臭を抑えた食品用品質改良剤を提供することである。
本発明の他の課題は、前記食品用品質改良剤を含有した食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、酢酸及び/又はその塩と、グルコン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする食品用品質改良剤に関する。
請求項2に係る発明は、前記酢酸塩が、酢酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項3に係る発明は、前記グルコン酸塩が、グルコン酸ナトリウム及び/又はグルコン酸カリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項4に係る発明は、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項5に係る発明は、前記食品用品質改良剤のpHが5〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
【0009】
請求項6に係る発明は、前記食品用品質改良剤のpHが6〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項7に係る発明は、前記食品用品質改良剤のpHが、酢酸と酢酸塩の配合比、酢酸及び/又はその塩とグルコン酸の配合比、又は、酢酸及び/又はその塩とグルコン酸塩の配合比を変更することにより調整されることを特徴とする請求項5又は6に記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項8に係る発明は、前記酢酸及び/又はその塩と前記グルコン酸及び/又はその塩が、配合比1:1〜0.05の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項9に係る発明は、前記酢酸及び/又はその塩と前記グルコン酸及び/又はその塩が、配合比1:0.4〜0.1の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項10に係る発明は、アミノ酸、有機酸及び有機酸塩から選択される1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
【0010】
請求項11に係る発明は、前記アミノ酸が、グリシン、アラニン及びグルタミン酸ナトリウムから選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項12に係る発明は、前記有機酸及び有機酸塩が、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸及びこれらの塩から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項13に係る発明は、フマル酸及び/又はフマル酸塩を含有することを特徴とする請求項10乃至12いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項14に係る発明は、フマル酸一ナトリウムを含有する請求項10乃至13いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
請求項15に係る発明は、前記食品用品質改良剤が水産練り製品用品質改良剤であることを特徴とする請求項1乃至14いずれかに記載の食品用品質改良剤に関する。
【0011】
請求項16に係る発明は、前記請求項1乃至15いずれかに記載の食品用品質改良剤を含有してなる食品に関する。
請求項17に係る発明は、前記食品のpHが5〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項16に記載の食品に関する。
請求項18に係る発明は、前記食品のpHが6〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項16又は17に記載の食品に関する。
請求項19に係る発明は、前記食品が水産練り製品であることを特徴とする請求項16乃至18いずれかに記載の食品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の食品用品質改良剤は、酢酸及び/又は酢酸塩を必須成分として含有する。従って、本発明は、安全性の高い食品用品質改良剤である。
本発明の食品用品質改良剤は、食品に添加した場合食品のうまみを向上させる、酸味を付与する、pHを調整する等の効果も有するから調味料、酸味料、pH調整剤として使用出来る。また、本製剤は日持ち向上効果も併せ持っているので、日持ち向上剤としても使用可能である。
【0013】
本発明の食品用品質改良剤は、酢酸及び/又は酢酸塩による酢酸臭が抑制されている。従って、本発明の食品用品質改良剤は、これが食品に添加されても、食品の本来の臭いに影響を及ぼさずに、食品の品質を改良することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の食品用品質改良剤は、必須成分として、酢酸及び/又はその塩と、グルコン酸及び/又はその塩を含有する。
本発明の「食品用品質改良剤」とは、食品のうまみを向上させる、酸味を付与する、pHを調整する、日持ちを向上させることを可能とする剤である。従って、本発明の食品用品質改良剤は、食品用の調味料、酸味料、pH調整剤あるいは日持ち向上剤として使用可能である。
【0015】
本発明の食品用品質改良剤の必須成分として含有される酢酸とは、氷酢酸、酢酸、醸造酢などの食酢である。このうち、酢酸が好ましく使用される。また、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムが挙げられるが、好ましくは酢酸ナトリウムが使用される。
【0016】
本発明の食品用品質改良剤には、他の必須成分として、グルコン酸及び/又はその塩が含有される。グルコン酸塩としては、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛が挙げられるが、好ましくはグルコン酸ナトリウムである。
【0017】
本発明の食品用品質改良剤は、好ましくは、酢酸ナトリウム、酢酸及びグルコン酸ナトリウムの組み合わせで含有され、さらに好ましくは酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムの組み合わせである。この組合せが含有されると、日持ち向上効果が高まるとともに、酢酸臭を非常によく抑えることができる。従って、この食品用品質改良剤は、これが食品に添加された場合、食品の臭いに影響を及ぼさずに食品の品質改良を行うことができる。
【0018】
本発明の食品用品質改良剤のpHは、酢酸及び/又はその塩と、グルコン酸及び/又はその塩を配合してなるpH1〜9.2の範囲のうち好ましくは5〜9.2の範囲に、更に好ましくはpHが6〜9.2の範囲に調整されている。pHが5〜9.2の食品用品質改良剤は、酢酸臭を非常によく抑制することができ、pH6〜9.2の範囲に調整されている食品用品質改良剤は酢酸臭を殆ど生じず、食品に添加されてもその食品の臭いに殆ど影響を及ぼさないという利点がある。
尚、pH5〜9.2の食品用品質改良剤の、グルコン酸及び/又はその塩を含有しないものに対する、遊離酢酸量の減少率は42〜95%であり、pH6〜9.2の場合、遊離酢酸量の減少率は78〜95%である。尚、この減少率は、次式{(比較例の遊離酢酸量−実施例の遊離酢酸量)/(比較例の遊離酢酸量)}×100(%)より求めた値である。
【0019】
或いは、食品用品質改良剤に酢酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウムが含有され、且つ該酢酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウムのpHが予め調整されていない場合において、本発明の食品用品質改良剤のpHは6.2〜9.2であり、これも好適に使用できる。これは、酢酸ナトリウム自体のpHが7.5〜9.2の範囲内であり、グルコン酸ナトリウム自体のpHが6.2〜7.8の範囲であるからである。このpH範囲を有する食品用品質改良剤も、酢酸臭を殆ど生じないという上記と同様の効果を奏する。
【0020】
本発明の食品用品質改良剤のpHの調整方法は特に限定されないが、酢酸ナトリウムをpH調整しないで使用する方法(酢酸ナトリウムのMSDS記載のpHは7.5〜9.2)、酢酸ナトリウムと酢酸の両方を配合して配合比率によりpHを調整する方法、或いは酢酸ナトリウムと酸味料を併用する方法が挙げられる。
【0021】
本発明の食品用品質改良剤において、前記酢酸及び/又はその塩と、前記グルコン酸及び/又はその塩が、重量配合比が1:1〜0.05の範囲で含有されていることが好ましい。さらに望ましくは、両者が、重量配合比1:0.4〜0.1の範囲で含有されている。
前記酢酸及び/又はその塩1重量部に対して、前記グルコン酸及び/又はその塩が1重量部を超えると、グルコン酸ナトリウムの塩味が食品の味に影響を与えるようになり、また、前記酢酸及び/又はその塩1重量部に対して、前記グルコン酸及び/又はその塩が0.05重量部未満の場合は、酸臭の低下効果が発現しない配合量であるため、いずれの場合も好ましくない。
【0022】
本発明の食品用品質改良剤には、必須成分である酢酸及び/又はその塩と、前記グルコン酸及び/又はその塩以外に、アミノ酸、有機酸及び有機酸塩から選択される1種以上をさらに含有してもよい。
【0023】
前記アミノ酸としては、グリシン、アラニン及びグルタミン酸ナトリウムが挙げられ、これらを単独で、或いは2種以上を混合して含有してもよい。本発明の食品用品質改良剤にアミノ酸が含有されると食品のうまみの向上、日持ち向上の効果が高まる。
【0024】
前記有機酸及び有機酸塩としては、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、及びこれらのナトリウム塩、カルシウム塩及びカリウム塩が挙げられ、これらを単独で、或いは2種以上を混合して使用してもよい。好ましくは、フマル酸及び/又はフマル酸塩、更に望ましくは、フマル酸一ナトリウムが使用される。本発明の食品用品質改良剤に前記有機酸及び有機酸塩が含有されると調味、酸味の付与、pH調整、日持ちの向上の効果が高まる。
【0025】
本発明の食品用品質改良剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えばプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、キシロース、ブドウ糖、果糖等の単糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖等のオリゴ糖、デキストリン、水飴等のでん粉分解物、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース等のマルトオリゴ糖等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴等の糖アルコール類の他、香料、着色料、酸化防止剤、ビタミン類、抗菌剤等を配合することができる。
【0026】
本発明の食品用品質改良剤の形態としては、粉末状等の固体状、液体状のものが挙げられるが、取り扱い容易さの観点から、粉末状にされることが好ましい。
【0027】
本発明の食品は、本発明の食品用品質改良剤が含有されてなる。前記食品としては、特に限定されないが、蒲鉾、ちくわ、はんぺん、魚肉ハム、ソーセージなどの水産製品、ハム、ソーセージ、ウインナーソーセージ、ベーコン、ハンバーグ、ミンチボールなどの畜肉製品、穀類、野菜、果実類などを主原料とする食品のように比較的蛋白質含量が低い食品から、豆腐、豆乳、和・洋菓子類などの比較的蛋白質含量が高い食品にまで幅広い。
本発明の食品用品質改良剤が添加された食品は、含有される酢酸及び/又は酢酸塩由来の酢酸臭が軽減されているのに加えて、うまみが引き出され、日持ち向上効果が高められている。
【0028】
本発明の食品のpHは、好ましくは5〜9.2、更に好ましくは6〜9.2の範囲に調整されている。pHが5〜9.2に調整された食品は、本発明の食品用品質改良剤由来の酢酸臭を非常によく抑制することができ、pH6〜9.2の範囲に調整されている食品は、酢酸臭を殆ど生じず、それを食する者に対し酢酸臭を感じさせないという利点がある。
【0029】
本発明の食品用品質改良剤の含量は、食品中、酢酸及び/又は酢酸塩が、好ましくは0.3〜2.0重量%、より好ましくは0.5〜1.0重量%となるように含有される。0.3重量%未満の場合は、調味、酸味付与、pH調整、日持ち向上の効果が認められず、2.0重量%を超えて含有してもそれ以上の効果は得られないためいずれの場合も好ましくない。
【0030】
具体的には、酢酸及び/又は酢酸塩が0.4〜0.7重量%、好ましくは、0.45〜0.6重量%含有するように食品用品質改良剤が添加された蒲鉾は、10℃で30日間保存した後も、一般生菌数が検出されず、また無添加に比べ蒲鉾のうまみが増強されており、その調味効果、日持ち向上効果が確認された。
【0031】
本発明の食品用品質改良剤は、好ましくは水産製品に含有され、詳細には、蒲鉾等の水産練り製品に対して好適に使用される。これは、蒲鉾等の水産練り製品は、特にpHが中性で、臭いが少なく、酸臭が出やすい為、本発明の食品用品質改良剤の効果が顕著に表れやすい。
【0032】
本発明に係る水産練り製品は、好ましくは、本発明の食品用品質改良剤が添加された後加熱して製造される。前記加熱は、蒸し工程、茹で工程、揚げ工程であってもよい。この加熱工程により、水産練り製品の、食感、舌触り、或いは風味を向上することができる。しかしながら、この水産練り製品に、従来の添加剤(即ち、酢酸類のみからなる添加剤)を加えると、酢酸臭が発生し、この酢酸臭は、加熱工程によりさらに強烈なものとなる。
一方、本発明の食品用品質改良剤が水産練り製品に添加された場合は、添加後に施される加熱工程(90℃以上の加熱工程)で発生し得る酢酸臭の発生を効果的に抑制することができる。従って、本発明の食品用品質改良剤は、酢酸臭により、水産練り製品本来の臭いに影響を及ぼさないという利点を有する。
【0033】
本発明の食品用品質改良剤が、水産練り製品である蒲鉾に使用される場合、蒲鉾の製造方法は次の工程(1)〜(4)を含む。
(1)酢酸及び/又はその塩とグルコン酸及び/又はその塩を、重量配合比1:1〜0.05の範囲で混合し、且つ、pHが5〜9になるように調整する。
(2)各蒲鉾材料(冷凍すり身、食塩、砂糖、澱粉、グルタミン酸ナトリウム及び水等)を混合する。
(3)(2)で得られた混合物に本発明の食品用品質改良剤を添加する。
(4)(3)で得られた混合物を混合した後、成型し加熱する。
【0034】
例えば、本発明の食品品質改良剤として、pHが7.5〜9.2の範囲内である酢酸ナトリウム及びpHが6.2〜7.8の範囲内であるグルコン酸ナトリウムを使用する場合は、工程(1)を省略することができる。
また、工程(3)において、本発明の食品用品質改良剤は、工程(2)で得られた混合物中に酢酸及び/又は酢酸塩として0.3〜2.0重量%となるように添加される。
工程(4)において、好ましくは40℃以上で加熱される。詳細には、前記加熱は、40〜50℃で10〜60分坐らせた後、80〜98℃で10〜50分であってもよい。或いは、40〜50℃で坐らせず、低温で1晩坐らせて蒲鉾が製造できる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
[遊離酢酸量の低減効果試験]
(遊離酢酸量の低減効果試験1)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH4.0とし、試験サンプル1とした。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
蒲鉾原料にサンプル1を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例1を得た。
蒲鉾原料にサンプル1を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.05%、0.25%、1%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例1、実施例2、実施例3を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、実施例1、実施例2、実施例3において、わずかながら酢酸臭が感じられた。
【0038】
(遊離酢酸量の低減効果試験2)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH5.0とし、試験サンプル2とした。このpHの調整以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。蒲鉾原料にサンプル2を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。
次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例2を得た。
蒲鉾原料にサンプル2を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.05%、0.25%、1%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例4、実施例5、実施例6を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いはほとんど感じられなかった。
【0041】
(遊離酢酸量の低減効果試験3)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH6.0とし、試験サンプル3とした。このpHの調整以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
蒲鉾原料にサンプル3を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例3を得た。
蒲鉾原料にサンプル3を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.05%、0.25%、1%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例7、実施例8、実施例9を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0044】
(遊離酢酸量の低減効果試験4)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH7.0とし、試験サンプル4とした。このpHの調整以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
蒲鉾原料にサンプル4を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例4を得た。
蒲鉾原料にサンプル4を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.05%、0.25%、1%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例10、実施例11、実施例12を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0047】
(遊離酢酸量の低減効果試験5)
酢酸ナトリウム(MSDSに記載のpHは7.5〜9.2)のpHを測定し、pH8.0であったのでpH調整を行わず試験サンプル5とした。このpHの調整以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
蒲鉾原料にサンプル5を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例5を得た。
蒲鉾原料にサンプル5を酢酸ナトリウムとして1%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.05%、0.25%、1%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例13、実施例14、実施例15を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表5に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0050】
(遊離酢酸量の低減効果試験6)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH4.0とし、試験サンプル1とした。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
以下の工程において、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムの含量以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、蒲鉾原料にサンプル1を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例6を得た。
蒲鉾原料にサンプル1を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.025%、0.125%、0.5%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例16、実施例17、実施例18を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表6に示す。
【0051】
【表6】

【0052】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。実施例16、実施例17、実施例18において、わずかながら酢酸臭が感じられた。
【0053】
(遊離酢酸量の低減効果試験7)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH5.0とし、試験サンプル2とした。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
以下の工程において、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムの含量以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、蒲鉾原料にサンプル2を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例7を得た。
蒲鉾原料にサンプル2を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.025%、0.125%、0.5%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例19、実施例20、実施例21を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表7に示す。
【0054】
【表7】

【0055】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。実施例では臭いはほとんど感じられなかった。
【0056】
(遊離酢酸量の低減効果試験8)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH6.0とし、試験サンプル3とした。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
以下の工程において、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムの含量以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、蒲鉾原料にサンプル3を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例8を得た。
蒲鉾原料にサンプル3を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.025%、0.125%、0.5%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例22、実施例23、実施例24を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表8に示す。
【0057】
【表8】

【0058】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0059】
(遊離酢酸量の低減効果試験9)
酢酸ナトリウムを酢酸でpH7.0とし、試験サンプル4とした。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
以下の工程において、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムの含量以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、蒲鉾原料にサンプル4を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例9を得た。
蒲鉾原料にサンプル4を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.025%、0.125%、0.5%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例25、実施例26、実施例27を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表9に示す。
【0060】
【表9】

【0061】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0062】
(遊離酢酸量の低減効果試験10)
酢酸ナトリウム(MSDSに記載のpHは7.5〜9.2)のpHを実測し、pH8.0であったのでpH調整を行わず試験サンプル5とした。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
以下の工程において、酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムの含量以外は、上記(遊離酢酸量の低減効果試験1)と同様の方法で試験した。即ち、蒲鉾原料にサンプル5を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例10を得た。
蒲鉾原料にサンプル5を酢酸ナトリウムとして0.5%となるように添加し、さらにグルコン酸ナトリウムを0.025%、0.125%、0.5%添加してフードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例28、実施例29、実施例30を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表10に示す。
【0063】
【表10】

【0064】
グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0065】
(遊離酢酸量の低減効果試験11)
表11に示す組成に基づいてサンプル6、サンプル7、サンプル8、サンプル9を作成した。表中、食品素材とは、還元澱粉分解物である。尚、これらサンプルのpHは全て8.2であった。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
蒲鉾原料にサンプル6を1%添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例11を得た。
蒲鉾原料にサンプル7、サンプル8、サンプル9を1%添加し、フードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例31、実施例32、実施例33を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表12に示す。
【0066】
【表11】

【0067】
【表12】

【0068】
表12の結果より、グリシンやグルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸を配合した場合でも、グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0069】
(遊離酢酸量の低減効果試験12)
表13に示す組成に基づいてサンプル10、サンプル11、サンプル12、サンプル13を作成した。表中、食品素材とは、還元澱粉分解物である。尚、これらサンプルのpHは全て8.2であった。
冷凍すり身300gを解凍後、細断し、フードプロセッサーにて1分間混合した。次に食塩7.5gを加え1分間混合し、ペースト状とした。このペーストに砂糖9g、澱粉30g、グルタミン酸ナトリウム3g、水90gを加え30秒混合し蒲鉾原料を得た。
蒲鉾原料にサンプル10を1%添加し、フードプロセッサーにて30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の比較例12を得た。
蒲鉾原料にサンプル11、サンプル12、サンプル13を1%添加し、フードプロセッサーで30秒混合した。次に混合した蒲鉾原料を成型し、45℃で30分加熱後、90℃で35分加熱し、蒲鉾の実施例34、実施例35、実施例36を得た。
遊離酢酸量は、株式会社ガステック製の検知管式気体測定器と酢酸の検知管を用い、蒸し上げ直後の蒲鉾について測定した。遊離酢酸量の測定結果を表14に示す。
【0070】
【表13】

【0071】
【表14】

【0072】
表14の結果より、グリシンやグルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸を配合した場合でも、グルコン酸ナトリウムの添加により遊離酢酸量の低減が見られた。また、いずれの実施例においても臭いは感じられなかった。
【0073】
(臭いの低減効果試験1)
遊離酢酸量の低減試験で作成した比較例3及び実施例7、実施例8、実施例9についてパネラー(当業者)15名により、下記の(酢酸臭の評価)により臭いを比較した。15人による評価点の平均値を表15に示す。
【0074】
(酢酸臭の評価)
酢酸臭が全くしない・・・5点
酢酸臭がほとんどしない・・・4点
酢酸臭が少しする・・・3点
酢酸臭であることが認識できる程度に酢酸臭がする・・・2点
酢酸臭が非常にする・・・1点
【0075】
【表15】

【0076】
表15が示す如く、比較例3では酢酸臭が確認された。一方、実施例7、実施例8、実施例9では酢酸臭がほとんど感じられなかった。
【0077】
(臭いの低減効果試験2)
遊離酢酸量の低減試験で作成した比較例4及び実施例10、実施例11、実施例12について、パネラー(当業者)15名により、上記の(酢酸臭の評価)により臭いを比較した。15人による評価点の平均値を表16に示す。
【0078】
【表16】

【0079】
表16が示す如く、比較例4では酢酸臭が確認された。一方、実施例10、実施例11、実施例12では酢酸臭がほとんど感じられなかった。
【0080】
(臭いの低減効果試験3)
遊離酢酸量の低減試験で作成した比較例8及び実施例22、実施例23、実施例24について、パネラー(当業者)15名により、上記の(酢酸臭の評価)により臭いを比較した。15人による評価点の平均値を表17に示す。
【0081】
【表17】

【0082】
表17が示す如く、比較例8では酢酸臭が確認された。一方、実施例22、実施例23、実施例24では酢酸臭がほとんど感じられなかった。
【0083】
(臭いの低減効果試験4)
遊離酢酸量の低減試験で作成した比較例9及び実施例25、実施例26、実施例27について、パネラー(当業者)15名により、上記の(酢酸臭の評価)により臭いを比較した。15人による評価点の平均値を表18に示す。
【0084】
【表18】

【0085】
表18が示す如く、比較例9では酢酸臭が確認された。一方、実施例25、実施例26、実施例27では酢酸臭がほとんど感じられなかった。
【0086】
(臭いの低減効果試験5)
遊離酢酸量の低減試験で作成した比較例11及び実施例31、実施例32、実施例33について、パネラー(当業者)15名により、上記の(酢酸臭の評価)により臭いを比較した。15人による評価点の平均値を表19に示す。
【0087】
【表19】

【0088】
表19が示す如く、アミノ酸を配合した場合でも比較例11では酢酸の臭いが残っていたが、実施例31、実施例32、実施例33では酢酸の臭いが低減され、臭いは、ほとんど感じられなかった。
【0089】
(臭いの低減効果試験6)
遊離酢酸量の低減試験で作成した比較例12及び実施例34、実施例35、実施例36について、パネラー(当業者)15名により、上記の(酢酸臭の評価)により臭いを比較した。15人による評価点の平均値を表20に示す。
【0090】
【表20】

【0091】
表20が示す如く、アミノ酸を配合した場合でも比較例12では酢酸の臭いが残っていたが、グルコン酸ナトリウムを添加した、実施例34、実施例35、実施例36では酢酸の臭いが低減されて、酢酸臭は、ほとんど感じられなかった。
【0092】
以上の結果より、酢酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウムの組合せ、或いは、酢酸ナトリウム、酢酸及びグルコン酸ナトリウムの組合せであって、且つ、特定のpHの範囲に調整された食品用品質改良剤は、優れた酢酸臭抑制効果を有することが分かった。
詳細には、pHが6〜9の範囲内である食品用品質改良剤は、酢酸臭が非常によく抑制されており、このpHの範囲内において、グルコン酸ナトリウムを含まないものに対し、遊離酢酸量の減少率が最大95%となった。
【0093】
従って、酢酸ナトリウム、酢酸、及びグルコン酸ナトリウムを含有するとともにpH6〜9の範囲内である食品用品質改良剤は、酢酸臭が非常によく軽減されているから、これが食品に添加された場合、食品の臭いに殆ど影響を及ぼさないという優れた効果を奏する食品用品質改良剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸及び/又はその塩と、グルコン酸及び/又はその塩を含有することを特徴とする食品用品質改良剤。
【請求項2】
前記酢酸塩が、酢酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の食品用品質改良剤。
【請求項3】
前記グルコン酸塩が、グルコン酸ナトリウム及び/又はグルコン酸カリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の食品用品質改良剤。
【請求項4】
酢酸ナトリウムとグルコン酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項5】
前記食品用品質改良剤のpHが5〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項6】
前記食品用品質改良剤のpHが6〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項7】
前記食品用品質改良剤のpHが、酢酸と酢酸塩の配合比、酢酸及び/又はその塩とグルコン酸の配合比、又は、酢酸及び/又はその塩とグルコン酸塩の配合比を変更することにより調整されることを特徴とする請求項5又は6に記載の食品用品質改良剤。
【請求項8】
前記酢酸及び/又はその塩と前記グルコン酸及び/又はその塩が、配合比1:1〜0.05の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項9】
前記酢酸及び/又はその塩と前記グルコン酸及び/又はその塩が、配合比1:0.4〜0.1の範囲で含有されていることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項10】
アミノ酸、有機酸及び有機酸塩から選択される1種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至9いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項11】
前記アミノ酸が、グリシン、アラニン及びグルタミン酸ナトリウムから選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の食品用品質改良剤。
【請求項12】
前記有機酸及び有機酸塩が、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸及びこれらの塩から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10又は11に記載の食品用品質改良剤。
【請求項13】
フマル酸及び/又はフマル酸塩を含有することを特徴とする請求項10乃至12いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項14】
フマル酸一ナトリウムを含有する請求項10乃至13いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項15】
前記食品用品質改良剤が水産練り製品用品質改良剤であることを特徴とする請求項1乃至14いずれかに記載の食品用品質改良剤。
【請求項16】
前記請求項1乃至15いずれかに記載の食品用品質改良剤を含有してなる食品。
【請求項17】
前記食品のpHが5〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項16に記載の食品。
【請求項18】
前記食品のpHが6〜9.2の範囲に調整されていることを特徴とする請求項16又は17に記載の食品。
【請求項19】
前記食品が水産練り製品であることを特徴とする請求項16乃至18いずれかに記載の食品。

【公開番号】特開2009−82067(P2009−82067A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255938(P2007−255938)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000238164)扶桑化学工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】