説明

食品用豆類、その製造方法及びこれを用いた食品

【課題】優れたACE阻害活性を有し、副作用・毒性などのおそれがなく、安全性が高く、かつ、豆類の形状をそのまま保持し、消化吸収性が高く、日常の食事として摂取可能であって、摂取者は食事以外のものを改めて摂取するという負担を負うことがなく、抗高血圧効果を得ることができる食品用豆類や食品を提供することにある。廃棄物を生じさせることなく、可食部を総て利用し資源の有効利用を図り、ゼロエミッションに即し、大量生産を可能とする食品用豆類の製造方法を提供することにある。
【解決手段】内部に導入されたペプチド結合加水分解酵素の作用により生成されたIle-Tyrを含むペプチドを含有し、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの総含有量が、ペプチド結合加水分解酵素導入前のペプチドの含有量の2倍以上であり、且つ、ペプチド結合加水分解酵素導入前の形状を保持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にペプチド結合加水分解酵素を導入し、本来の形状を保持したままペプチド結合を加水分解することによりペプチドを高濃度で含有し、優れた抗高血圧作用を有する食品用豆類や、その製造方法、これを用いた食品に関する。更に、ペプチド結合加水分解酵素作用による苦味成分の形成を抑制させ、日常の食事として抗高血圧成分を効率的に摂取可能な食品用豆類や、その製造方法、これを用いた食品に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧自体の自覚症状はあまり明確ではないが、日本人の死亡原因の上位に挙げられる心臓病や脳卒中の主要な危険因子は高血圧であると言われている。日本の高血圧患者は推定で4,000万人以上、高齢者では半数以上が高血圧であると言われており、今後高齢化社会を迎えるに当り、より一層の血圧コントロールの必要性が求められ、高血圧の予防効果を持つ食品素材やその抽出物に期待が寄せられている。
【0003】
血圧の調節において、重要な役割を果たしている酵素の一つはアンジオテンシンI変換酵素(ACE)である。血圧の調節系は、昇圧に関するレニン・アンジオテンシン系と降圧に関するカリクレイン・キニン系とが重要な役割を果たしている。レニン・アンジオテンシン系では、肝臓から分泌されるアンジオテンシノーゲンが、腎臓から分泌されるレニンによってアンジオテンシンIに変換され、更にアンジオテンシンIはACEによってアンジオテンシンIIに変換される。アンジオテンシンIIは血管を収縮して、血圧を上昇させる。降圧に関するカリクレイン・キニン系では、カリクレインがキニノーゲンに作用して生成されるブラジキニンが、血管を弛緩させて血圧を降下させるが、ブラジキニンはACEにより分解されるため、このブラジキニンの分解によっても結果的に血圧が上昇する。従って、ACEの酵素活性を阻害若しくは抑制する物質であるACE阻害物質は、有効な抗高血圧作用成分として着目されている。
【0004】
食品素材からのACE阻害物質の利用としては、特に食品素材中のタンパク質の酵素分解物であるペプチドについて、ACE阻害活性があることが知られている。含有するタンパク質の酵素分解物がACE阻害活性を有する食品素材として、イワシ(例えば、特許文献1および非特許文献1)、カツオ(特許文献2、非特許文献2、3)、牛乳カゼイン(特許文献3、非特許文献4)、トウモロコシ(特許文献4、非特許文献5)、大豆(特許文献5、非特許文献6)等が報告されている。
【0005】
ACE阻害ペプチドは、食品素材に含まれるタンパク質をタンパク質分解酵素で加水分解して調製することが可能で、ACE阻害ペプチドの製造に当たり、原料のタンパク質に効率的に酵素を反応させるため、食品素材を粉砕する、食品素材からタンパク質を抽出する等の前処理を行うか、若しくは液状の食品素材が利用されている。更に、タンパク質を分解後、目的のACE阻害ペプチドの抽出、濃縮などの処理工程を経て、最終的には、日々の摂取に必要な量を含んだ摂取しやすい形状のドリンクや錠菓等の形で提供されている。
【0006】
しかしこれらの製法においては、目的成分の抽出に用いる溶媒や目的成分以外の成分の廃棄処分が必要であり、処理コストが増加し、資源を無駄に消費することになる。更に、ACE阻害ペプチドはドリンク剤や錠菓として提供されているため、これらを毎日摂取するためには、食事とは別に摂取しなければならない。
【0007】
本発明者らは、既に、食材内部にペプチドを生成させる機能性食品(特許文献6)を開発しているが、抗高血圧作用を有する食品への言及はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−192607
【特許文献2】特開2001−112470
【特許文献3】WO95/28425
【特許文献4】特開平06−087886
【特許文献5】特開2002−053595
【特許文献6】特開2008−187908
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本栄養・食糧学会誌, 52, 271-277.(1999)
【非特許文献2】Bioscience Biotechnology and Biochemistry, 56, 1541-1545.(1992)
【非特許文献3】Bioscience Biotechnology and Biochemistry, 57, 695-697.(1993)
【非特許文献4】Agricultural and Biological Chemistry, 51, 1581-1586.(1987)
【非特許文献5】Agricultural and Biological Chemistry, 55, 1313-1318.(1991)
【非特許文献6】大豆たん白質研究, 6, 73-77.(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、優れたACE阻害活性を有し、副作用・毒性などのおそれがなく、安全性が高く、かつ、豆類の形状をそのまま保持するにも拘らず、消化吸収性が高く、日常の食事として摂取可能であって、摂取者は食事以外のものを改めて摂取するという負担を負うことがなく、抗高血圧効果を得ることができる食品用豆類や食品を提供することにある。また、廃棄物を生じさせることなく、可食部を総て利用し資源の有効利用を図ることができ、近年のゼロエミッションに即し、簡便で安価な食品用豆類を得ることができ、しかも、大量生産を可能とする食品用豆類の製造方法を提供することにある。更に、タンパク質を酵素分解すると苦味成分も生じるが、苦味成分の発生を抑制し、本来の形状のみでなく味も損ねず、違和感なく摂取することができる商品価値の高い食品用豆類や食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく、豆類の本来の形状を維持して、ペプチド結合加水分解酵素を豆類の内部へ導入し、酵素反応を促進させ得る方法について、研究を重ねた。その結果、酵素を内部へ導入する前に、豆類の種皮に微細な傷を付けることにより、ペプチド結合加水分解酵素が豆類の種皮を容易に通過することの知見を得た。そして、豆類の内部でペプチド結合加水分解酵素の作用により生成されたIle−Tyrを含む2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの含有量が、ペプチド結合加水分解酵素の導入前の2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの含有量の2倍以上になるようにペプチド結合加水分解酵素反応を促進させることにより、優れたACE阻害活性作用を有する食品用豆類が得られることを見出した。更に、食塩やグルタミン酸ナトリウムなどのナトリウム塩またはホスファチジン酸またはリゾホスファチジン酸またはエキソペプチダーゼを、ペプチド結合加水分解酵素と共に、豆類の内部へ導入することにより、ペプチド結合加水分解酵素反応による苦味成分の発生を抑制することができ、形状のみでなく、味についても豆類本来の味が損なわれない食品用豆類が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、内部に導入されたペプチド結合加水分解酵素の作用により生成されたIle−Tyrを含むペプチドを含有し、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの総含有量が、ペプチド結合加水分解酵素導入前のペプチドの含有量の2倍以上であり、且つ、ペプチド結合加水分解酵素導入前の形状を保持していることを特徴とする食品用豆類に関する。
【0013】
また、本発明は、上記食品用豆類の製造方法であって、豆類の種皮を損傷する種皮損傷工程、種皮を損傷した豆類にペプチド結合加水分解酵素を接触させる酵素接触工程、減圧または加圧処理によりペプチド結合加水分解酵素を内部に導入する酵素導入工程、内部に導入したペプチド結合加水分解酵素により、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの含有量が2倍以上になるようにペプチド結合を分解する酵素反応工程、ペプチド結合加水分解酵素を加熱により失活させる酵素失活工程を含むことを特徴とする食用豆類の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、上記食品用豆類を乾燥又は冷凍して得られることを特徴とする食品に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の食品用豆類やこれを用いて得られる食品は、優れたACE阻害活性を有し、副作用・毒性などのおそれがなく、安全性が高く、かつ、豆類の形状をそのまま保持するにも拘らず、消化吸収性が高く、日常の食事として摂取可能であって、摂取者は食事以外のものを改めて摂取するという負担を負うことがなく、抗高血圧効果を得ることができる。また、本発明の食品用豆類の製造方法は、廃棄物を生じさせることなく、近年のゼロエミッションに即し、可食部を総て利用し資源の有効利用を図り、簡便で安価な食品用豆類を得ることができ、且つ大量生産を可能とする。更に、本発明の食品用豆類や食品は、タンパク質を酵素分解すると生じる苦味成分の発生を抑制し、本来の形状のみでなく味も損ねず、摂取者が違和感なく摂取することができ、商品価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の食品用豆類の一例において、Ile−Tyrを単離した際のクロマトグラム及びMSクロマトグラムを示す図である。
【図2】本発明の食品用豆類の一例において、Ile−Tyrを同定した際のMSスペクトルを示す図である。
【図3】本発明の食品用豆類の一例において、Ile−Tyrを同定した際のクロマトグラム及びMSクロマトグラムを示す図である。
【図4】本発明の食品用豆類の一例を長期投与したラットの血圧変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の食品用豆類に適用する豆類としては、豆科植物の種子で食用に適するものであれば、大豆、小豆、インゲン、ライマメ、エンドウ、ベニバナインゲン、ソラマメ、ササゲ、ヒヨコマメ、緑豆、レンズマメ、ラッカセイ等いずれであってもよい。これらのうち、大豆は、良質なタンパク質の含量が多く、食経験が豊富で、分解後の組成物の呈味が良好であって、栽培量が多く安価であるという点から、好ましい。大豆の種類としては、黄大豆、赤大豆、黒大豆などが挙げられるが、特に黄大豆が好ましい。
【0018】
これらの大豆は吸水させて用いることができる。吸水量としては、例えば、大豆の質量に対して、0〜130質量%であることが好ましい。
【0019】
上記ペプチド結合加水分解酵素は、タンパク質やペプチドのペプチド結合を加水分解する酵素であれば特に制限なく用いることができ、タンパク質、ペプチドの末端から1〜2のアミノ酸を切り取るエキソペプチダーゼ、中央部分を切断するエンドペプチダーゼいずれであってもよく、また、精製されていてもされていなくてもよい。ペプチド結合加水分解酵素としては、例えば、狭義のペプチダーゼ、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ等の動物消化器系由来のタンパク質分解酵素(消化酵素)、コウジカビ(Aspergillus)属由来のタンパク質分解酵素、バチルス(Bacillus)属由来のタンパク質分解酵素、クモノスカビ(Rhizopus)属由来のタンパク質分解酵素、アオカビ(Penicillium)属由来のタンパク質分解酵素、ケカビ(Mucor)属由来のタンパク質分解酵素等の微生物由来のタンパク質分解酵素、パパイン、ブロメライン、フィシン等の植物由来のタンパク質分解酵素等が挙げられる。ペプチド結合加水分解酵素としては微生物由来のタンパク質分解酵素、植物由来のタンパク質分解酵素が好ましく、バチルス属由来のタンパク質分解酵素がより好ましい。
【0020】
上記ペプチド結合加水分解酵素の豆類内部に導入される量は、豆類100gに対して、0.001〜2.0gを挙げることができ、好ましくは、0.01〜0.5gである。また、酵素液に調味料、食塩、有機酸、ビタミン、ミネラル等の栄養成分を含有させることもできる。
【0021】
また、ペプチド結合加水分解酵素の基質への接触効率を上昇させるために、ペプチド結合加水分解酵素以外の酵素を、ペプチド結合加水分解酵素の機能を阻害しない範囲で併用してもよい。例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等の植物組織崩壊酵素、リパーゼ等の脂質分解酵素、アミラーゼ等のデンプン分解酵素が挙げられる。これらの酵素は精製されていてもいなくてもよい。
【0022】
また、β−グルコシダーゼを用い、豆類に含まれる配糖体を分解してアグリコンを生成し、イソフラボン等の含有量を増加させ、抗酸化作用等を発現させることもできる。β−グルコシダーゼとして、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、サイクロデキストリン生成酵素等を挙げることができる。豆類内部へ導入するβ−グルコシダーゼの量としては、豆類100gに対して、0.01〜0.5gであることが好ましい。
【0023】
上記ペプチド結合加水分解酵素の作用により生成されたペプチドは、ジペプチドのIle−Tyrを含み、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドであり、ACE阻害機能を有し、抗高血圧効果を有する(以下、抗高血圧ペプチドともいう。)。これらの抗高血圧ペプチドとしては、具体的には、Ile−Tyr、Pro−Trp、Tyr−Thr、Leu−Ala−Pro、Leu−Glu−Phe、Leu−Lys−Tyr、Tyr−Pro−Ser、Val−Ala−Trp、Val−Lys−Pro、Asp−Thr−Lys−Phe、Gln−Val−Val−Phe、Ile−Thr−Pro−Leu、Leu−Glu−Phe−Leu、Pro−Ala−Gly−Tyr、Pro−Arg−Val−Phe、Val−Val−Phe−Asp、Gly−Asp−Ala−Pro−Asn、Gly−Glu−Leu−Phe−Glu、Ile−Val−Phe−Asp−Ala、Pro−Ala−Gly−Tyr−Leu、Pro−Arg−Val−Phe−Leu、Val−Gln−Val−Val−Phe、Val−Thr−Val−Pro−Gln等を挙げることができる。これらのうち特に、イソロイシンとチロシンとからなるジペプチドIle−TyrはACE阻害活性が極めて高く、抗高血圧効果が得られることから好ましい。
【0024】
本発明の食品用豆類は、ジペプチドのIle−Tyrを含み、酵素作用により生成された抗高血圧ペプチドが、豆類本来に含有される抗高血圧ペプチドと同量以上、即ち、豆類本来に含有される抗高血圧ペプチドと、酵素作用により生成された抗高血圧ペプチドの合計の含有量が、豆類本来に含有される抗高血圧ペプチドの2倍以上である。抗高血圧ペプチドの総含有量は、具体的には、豆類100g中の抗高血圧ペプチド含有量として、0.001〜100mgを挙げることができ、優れた抗高血圧効果が得られることから、0.1〜100mgが好ましい。
【0025】
豆類中の抗高血圧ペプチドの含有量は、高速クロマトグラフィーによる測定値を採用することができる。
【0026】
また、上記ペプチド結合加水分解酵素の作用により得られるペプチドには、これらの抗高血圧ペプチドの他、副次的に形成される抗コレステロール作用、抗酸化、抗ストレス作用などを有するペプチドが含まれ、本発明の食品用豆類においては、抗コレステロール作用、抗酸化、抗ストレス作用も得られる。
【0027】
本発明の食品用豆類は、食塩、アミノ酸のナトリウム塩、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、及びエキソペプチダーゼから選ばれる何れか1種又は2種以上を含有することが好ましい。これらの物質は、上記ペプチド結合加水分解酵素作用による苦味成分の生成を抑制することができる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらは、ペプチド結合加水分解酵素を豆類内部に導入する際に同時に豆類内部に導入することが好ましい。これらの物質は、豆類内部に導入されるペプチド結合加水分解酵素に対して、0.05質量%以上導入することが好ましく、100質量%以下であることが好ましい。
【0028】
上記食品用豆類の製造方法としては、豆類の種皮を損傷する種皮損傷工程、種皮を損傷した豆類にペプチド結合加水分解酵素を接触させる酵素接触工程、減圧または加圧処理によりペプチド結合加水分解酵素を内部に導入する酵素導入工程、内部に導入したペプチド結合加水分解酵素により、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの含有量が2倍になるまでペプチド結合を分解する酵素反応工程、酵素を加熱により失活させる酵素失活工程を含む方法を挙げることができる。
【0029】
豆類の種皮を損傷する種皮損傷工程は、豆類の形状を損なわない程度に、豆類の種皮に微細な傷を形成し、豆類の内部へのペプチド結合加水分解酵素の導入を容易にするために行う工程である。豆類の種皮に微細な傷を形成する方法としては、例えば、100℃以上で加熱する方法が好ましく、より好ましくは、120℃以上である。このような加熱により、豆類の種皮を均一に損傷させることができ、酵素を内部へ均一に導入することができる。加熱時間は、豆の種類、温度との関連で適宜選択することができ、例えば、大豆であれば、100℃以上で1〜60分、120℃以上で20分等とすることができる。種皮の厚さや、柔軟性等により、加熱温度、時間は調整することが好ましい。このような加熱は、豆類に内在する酵素の失活を図り、後工程の酵素反応の制御を容易にすることができ、変色を防止することができる。豆類が乾燥状態のものの場合や、含水量が少ないものの場合は、水蒸気又は水中での加熱が好ましい。
【0030】
種皮損傷工程においては、上記加熱処理後、又は上記加熱処理に変えて100Pa以下の減圧下で10分〜3時間の表面乾燥処理を行なうことが好ましい。表面乾燥処理により、豆類の形状を維持し、内部の空気とペプチド結合加水分解酵素との置換を効果的に行うことができる傷を、種皮に形成することができる。表面乾燥処理は、−1〜−40℃の温度下で行なうことが好ましい。
【0031】
種皮損傷工程には、その他、豆類を攪拌して相互に衝突させる等、機械的な作用により種皮を損傷させる方法等を採用することもできる。
【0032】
種皮損傷工程は、上記100℃以上1分以上の加熱処理の前工程、又は後工程として、豆類を凍結し、解凍する凍結・解凍工程を行うことが好ましい。上記過熱処理工程と共に、豆類の凍結・解凍工程を行なうことにより、豆類の種皮に傷を効果的に形成することができる。
【0033】
以上に記載した種皮損傷工程は、その後の工程を経て得られる、内部にペプチドを生成させた豆類の形状、見た目を大きく損なわない程度の処理工程であることが好ましい。
【0034】
豆類の凍結工程は、内部に含有する水分を凍結させ得る方法であれば、いずれであってもよい。凍結温度としては、−1〜−40℃を挙げることができる。更に、凍結した豆類に対し、乾燥を行うことが、種皮の硬い豆類には、内部への酵素の導入を容易にすることから、好ましい。凍結した豆類の乾燥方法としては、豆類の水蒸気加熱等を挙げることができる。これらの処理は凍結乾燥装置を用いて行うことができ、具体的には10分〜3時間の表面乾燥を挙げることができる。
【0035】
凍結した豆類の解凍方法は、0℃以上の温度下に放置すればよく、例えば、0〜50℃を挙げることができ、冷蔵庫内で、4〜10℃での低温による緩慢解凍が好ましい。解凍は、凍結状態の豆類は品質を保持して保存可能なことから、使用直前に行うことが好ましい。また流水中や電子レンジを用いて解凍することもできる。
【0036】
種皮を損傷した豆類にペプチド結合加水分解酵素を接触させる酵素接触工程は、内部へ導入するペプチド結合加水分解酵素を、先ず豆類の表面に接触させる工程であり、液体又は粉末のペプチド結合加水分解酵素を、水、調味液、緩衝液、アルコール、増粘多糖類等の液体に溶解あるいは分散させて調製した酵素液、若しくは液体酵素を直接用いて、それらに浸漬し、浸漬した状態で後工程の酵素導入工程に用いる方法、又は酵素液に浸漬して取り出す漬けあげでもよく、また酵素液を塗布、噴霧する方法であってもよい。粉末酵素の場合は、豆類に粉末酵素をそのままふりかける、又は噴霧する方法も使用できる。
【0037】
使用する酵素量は適宜選択することができ、液体酵素を直接使用する場合、豆類100gに対して、例えば、0.001〜1.0gの範囲を挙げることができる。酵素液は、例えば、溶媒液に対して0.01〜3.0質量%の範囲で酵素を溶解あるいは分散させて調製することができる。酵素液のpHは4〜10であることが好ましい。このpHの調整には、有機酸類とその塩類やリン酸塩等のpH調整剤などを用いることができ、またpH調整された調味液等を使うこともできる。
【0038】
酵素接触工程において、苦味成分の苦味ペプチドの生成を抑えるため、食塩、アミノ酸のナトリウム塩、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、及びエキソペプチダーゼから選ばれる何れか1種又は2種以上を含む苦味成分抑制剤を豆類に接触させることが好ましい。これらの苦味成分抑制剤は、酵素液に含有させる、又は、酵素と共に振りかけることができる。苦味成分抑制剤の使用量は、ペプチド結合加水分解酵素に対し、0.05質量%以上であることが好ましく、100質量%以下であることが好ましい。
【0039】
酵素導入工程は、上記酵素接触工程において、酵素を接触させた豆類を減圧又は加圧処理により、ペプチド結合加水分解酵素を豆類内部に導入する。減圧処理は、耐圧性密封容器と真空ポンプを有する装置を使用することができ、酵素液に浸漬した豆類又は表面に酵素を付着させた豆類を耐圧性密閉容器に入れ、減圧下に放置する。減圧は、0.01MPa以下、又は豆類に含まれる水分が沸騰する圧力下で行うことが好ましい。このような減圧下では豆類が、常圧下における体積に対し、1.01〜1.10倍程度膨張し、豆類の内部に存在する空気とその表面に存在するペプチド結合加水分解酵素とが種皮に形成された損傷部を通って容易に置換され、豆類内部へ均一に酵素を導入することができる。減圧下に放置する時間は、豆類の品質低下を回避するように、豆類の種類、大きさ等、状況に応じて選択することが好ましく、例えば、30秒〜30分程度とすることができる。減圧保持状態の解除は、常圧に戻すことで行うことができる。減圧処理は、常温で行うこともでき、品質を損なわないように10℃前後の低温で行うこともできる。
【0040】
酵素導入工程における加圧処理は、耐圧性密封容器とガス供給装置等を有する装置を使用し、酵素液に浸漬した豆類又は表面に酵素を付着させた豆類を耐圧性密閉容器に入れ、これに所望の圧力下になるまでガスを供給し所定の時間放置する等の方法により行うことができる。加圧は、50〜400MPaで行うことが好ましい。このような加圧下では豆類が、常圧下における体積に対し、0.90〜0.99倍程度収縮し、豆類の内部に存在する空気とその表面に存在するペプチド結合加水分解酵素とが種皮に形成された損傷部を通って置換され、豆類内部へ均一に酵素を導入することができる。加圧下に放置する時間は、豆類の種類、大きさ等、状況に応じて選択することが好ましい。加圧処理は、常温で行うこともでき、品質を損なわないように10℃前後の低温で行うこともできる。また、耐圧性密封容器として柔軟なプラスチックフィルムのレトルト用包装袋を用いることもでき、包装袋を吸引により減圧し、ヒートシールし、フィルムを豆類に密着させ加圧状態を形成することも可能である。
【0041】
酵素導入工程により内部に導入したペプチド結合加水分解酵素によりペプチド結合を分解する酵素反応工程は、酵素液に浸漬して減圧又は加圧処理を行った場合は、浸漬状態で行うこともできるが、酵素液から取り出して行うことが、表面と内部の酵素反応を均一に進行させ、酵素導入工程前の豆類の形状を保持できることから、好ましい。酵素反応は、ペプチド結合加水分解酵素の至適温度が30℃を超える場合であっても、長時間、例えば、4時間を超えて酵素反応を行なう場合、豆類の劣化を抑制するために30℃以下が好ましく、10℃以下の低温で行うことがより好ましい。また、酵素反応は、酵素導入工程前に豆類に含有される抗高血圧ペプチドの含有量に対し、抗高血圧ペプチドの含有量が2倍以上になるまで行なう。酵素反応は、豆類の種類、大きさ、苦味成分の生成の抑制等から、処理時間を選択することが好ましく、大豆の場合、例えば、1時間から24時間程度を挙げることができる。
【0042】
酵素失活工程は、酵素反応を停止させ、酵素導入前の豆類の形状を保持させるために、過度の酵素反応を抑制する工程である。酵素失活は、65℃以上の加熱によることが好ましく、より好ましくは100℃で1分以上又はこれと同等の加熱を挙げることができる。レトルト用包装袋を用いた場合は、120℃で5〜60分の加熱を行うことによりそのまま商品として常温流通を行うことができる。
【0043】
上記方法により得られた食品用豆類は、製造前の豆類の形状が保持され、苦味が少なく、通常の豆類と同様の方法で調理することができる。
【0044】
また、本発明の食品は、上記食品用豆類を乾燥又は冷凍して得られ、食品加工素材として用いて、惣菜、レトルト食品、冷凍食品、真空調理食品、缶詰食品等、種々の加工食品に応用することができ、抗高血圧ペプチドを食事として摂取することができる食品を提供することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の食品用豆類について実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例では、より多くのACE阻害活性ペプチドを生成させるために、種皮損傷工程において、100℃での加熱工程と凍結工程及び乾燥工程を組み合わせているが、100℃で1分以上の加熱のみの種皮損傷工程を実施してもACE阻害活性を有するペプチドが生成することを確認しており、当該大豆の1日当たりの摂食量を増やすことで抗高血圧作用を発現させる量のACE阻害活性ペプチドを摂取することは可能である。
[実施例1]
乾燥大豆を16時間以上水に浸漬し、大豆質量が約2.2倍となり安定するまで吸水させた。吸水した大豆を1分間に4℃の昇温速度で水蒸気または湯中加熱し、100℃に達してから1時間加熱した。加熱終了後直ちに冷水を加えて冷却し、−30℃の冷凍庫で凍結後、3時間凍結乾燥し再び凍結保存した。リン酸緩衝液(pH7.0)を用いて2.0質量%に調製したタンパク質分解酵素溶液(プロテアーゼN「アマノ」G、天野エンザイム社製)に、凍結した大豆を浸漬して50℃で10分間解凍した。酵素液に浸漬したまま、0.01MPaになるまで減圧し、そのまま減圧状態を5分間保持した。減圧操作を行った大豆を酵素液から取り出し、50℃で4時間酵素反応を行ってから10分間蒸煮し、酵素を失活させ、食品用大豆を得た。得られた食品用大豆を−30℃で凍結した後、真空度10Pa以下、30℃加温で48時間乾燥した。乾燥後の質量は乾燥前の質量に対し、35%であった。乾燥大豆を電動ミルを用いて粉砕し大豆粉とし、真空パックして−30℃の冷凍庫で保管した。
【0046】
[ACE阻害活性]
作製した大豆粉に20倍量の精製水を加えて1時間撹拌抽出し、ACE阻害活性測定用の試料液とした。50mMリン酸カリウム緩衝液−300mM NaCl(pH8.5)200μl、50mM基質溶液(Hippuril−Histidyl−Leucine、ナカライテスク社製)25μl、試料溶液5μl、37.5mU/mlアンジオテンシン変換酵素液(ACE、シグマ社製)20μlを混合し、37℃で1時間反応させた後、1N塩酸250μlを添加混合して酵素反応を止めた。この液に酢酸エチル1.5mlを加えてよく撹拌後静置し、酢酸エチル1mlを抽出し蒸発乾固させてから精製水を加え、233nmにおける吸光度(As)を測定した。試料溶液に替えて蒸留水を基質溶液及び酵素液に添加した吸光度(Ac)、試料溶液及び酵素液を蒸留水30μmに替えて基質溶液に添加した吸光度(Ab)、酵素液に替えて蒸留水20μlを試料溶液及び基質溶液に添加した吸光度(Asb)をそれぞれ測定し、ACE阻害率(%)を求めた。
ACE阻害率(%)=((Ac−Ab)−(As−Asb))/(Ac−Ab)×100
[成分分析1]
作製した大豆粉に、10倍量の精製水を加えて1時間撹拌してタンパク質分解物を水抽出し、6000rpm、4℃、15分の遠心分離を行い、上清を得た。上清にヘキサンを加えて激しく撹拌し、6000rpm、4℃、15分の遠心分離操作後水層を抽出し再びヘキサンを加える操作を数度繰り返して油脂を除去した。水層を抽出し、減圧乾燥によりタンパク質分解物を得た。タンパク質分解物5mg/1mlとなるように精製水に溶解し、0.45μmセルロースアセテートフィルター処理により試料溶液とした。試料溶液100μlを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分画した。カラムとしてはCOSMOSIL 5C18−MS−II(250mm×4.6mm I.D.、ナカライテスク製)を使用し、移動相としては(A液):アセトニトリル/水=10/90(v/v)、(B液):アセトニトリル/水=70/30(v/v)を用い、A液中のB液濃度を0〜1分まで0%、1〜45分まで0〜50%、45〜50分まで50〜100%、50〜55分まで100%、55〜60分まで100〜0%、の濃度勾配をかけながら、流速0.5ml/min、検出波長220nmで行った。ピーク毎に分取を行いACE阻害活性を測定した。溶出時間15.0分の画分に強い活性が見られた。
【0047】
この画分を分画操作を繰り返して、得られた画分を減圧濃縮し、40サイクル画分/1mlとなるように精製水に溶解して試料調整した。条件を変えて再びHPLCにより分画を行った。カラムとしてはCOSMOSIL 5C18−AR−II(250mm×4.6mm I.D.、ナカライテスク製)を使用し、移動相としては(A液):アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=5/95/0.1(v/v)、(B液):アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=35/65/0.1(v/v)を用い、A液中のB液濃度を0〜45分まで0〜100%、45〜50分まで100%、50〜55分まで100〜0%の濃度勾配をかけながら、流速0.5ml/min、検出波長220nmで行った。ピーク毎に分取を行いACE阻害活性測定を行ったところ、溶出時間46.1分の画分に強い活性が見られた。クロマトグラムを図1(a)に示す。
【0048】
この画分を再び分画操作を繰り返し、得られた画分を減圧濃縮し、10サイクル画分/100μlとなるように精製水に溶解して試料調製した。この試料溶液について高速液体クロマトグラフ/タンデム四重極質量分析計(LC/MS/MS、Quattro micro API(Waters製))により分析を行った。カラムとしてはCOSMOSIL 5C18−AR−300(250mm×4.6mm I.D.、ナカライテスク製)を使用し、移動相としては(A液):アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=5/95/0.1(v/v)、(B液):アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=35/65/0.1(v/v)を用い、A液中のB液濃度を0〜30分まで0〜30%、30〜40分まで30〜100%、40〜60分まで100%、60〜61分まで100〜0%の濃度勾配をかけながら、流速0.5ml/min、検出波長220nm、MSはIon Mode:Electrospray+、Scan Type:MS Scan、MS Range:100−1000に設定して行った。クロマトグラムを図1(b)に示す。
【0049】
28分近辺に見られたピークについてDaughter Ion Scan解析を行った。解析結果を図2(c)に示す。図2(a)に示すLeu−Tyrのパターン、図2(b)に示すIle−Tyrのパターンから、図2(c)のパターンを有する試料は、Ile−Tyr又はLeu−Tyrであると推察された。LC/MS/MS分析と同様の条件でIle−Tyr及びLeu−Tyrについて分析したところ、溶出時間およびMS/MSパターンからこの成分はIle−Tyrであった。分析結果を図3に示す。(a)は、Ile−TyrとLeu−Tyrの混合物のクロマトグラム、(b)は、Ile−TyrとLeu−Tyrの混合物のMSクロマトグラム、(c)は、試料溶液のクロマトグラム、(d)は、試料溶液のMSクロマトグラムを示す。
【0050】
[成分分析2]
作製した大豆粉に、10倍量の精製水を加えて1時間撹拌してタンパク質分解物を水抽出し、6000rpm、4℃、15分の遠心分離を行い、上清を得た。油脂を除去し、0.45μmセルロースアセテートフィルター処理した試料溶液をLC/MS/MSで分析し、大豆粉砕物中のIle−Tyr量の測定を行った。カラムとしてはCOSMOSIL 5C18−AR−300(250mm×4.6mm I.D.、ナカライテスク製)を使用し、移動相としては(A液):アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=5/95/0.1(v/v)、(B液):アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸=35/65/0.1(v/v)を用い、A液中のB液濃度を0〜30分まで0〜30%、30〜40分まで30〜100%、40〜60分まで100%、60〜61分まで100〜0%の濃度勾配をかけながら、流速0.5ml/min、検出波長220nm、MSはIon Mode:Electrospray+、Scan Type:MRM、Parent Ion:m/z=295.2、Daughter Ion:m/z=182.2に設定して定量を行った。検量線作成は0.010〜0.100mg/mlのIle−Tyr標準液を用いた。
【0051】
試料溶液中のIle−Tyr量は0.031mg/mlであった。よって、大豆粉中及び酵素反応後の蒸煮大豆中のIle−Tyr量はそれぞれ、0.31mg/大豆粉1g、0.11mg/大豆1gであった。
【0052】
[動物試験]
7週齢の雄性高血圧自然発症ラット(SHR/Izm、清水実験材料)を1週間の予備飼育の後、1週間血圧を測定し、12匹を4匹づつ以下の3群に分け、9週齢から45日間に以下に示す飼料を投与した。試験期間中、飼料は自由摂取としたが、摂餌量は各群間でほぼ同じであった。
第1群(比較例1):大豆粉を含まない飼料摂取群
第2群大豆粉混合飼料(比較例2):酵素反応を行っていない大豆粉の1日あたりの摂取量が5g/kg体重となるように添加した飼料摂取群
第3群酵素処理大豆粉混合飼料:作製した大豆粉の1日あたりの摂取量が5g/kg体重となるように添加した飼料摂取群
試験開始時から2回/週の頻度で、非観血式血圧計Softron BP−98Aを用い収縮期血圧の測定を行った。結果を図4に示す。Dunnetの多重比較検定により統計処理を行った。
【0053】
結果から、Ile−Tyrを含む大豆粉は、血圧上昇を有意に抑制する作用を有することが明らかである。
【0054】
本発明の食品用豆類はACE阻害活性を有し、ペプチドは、少量の摂取でACEを有効に阻害し、かつ副作用の心配がなく、高血圧者が日常生活の中で容易に経口摂取できる。また、該ペプチドを含み、風味に優れ、安全性が高く、食品としての摂取が容易な組成物の製造法を提起したことにより、高血圧者の生活の質の向上に大きく貢献することが可能となる。
【0055】
[実施例2]
タンパク質分解酵素溶液に用いたタンパク質分解酵素として、プロテアーゼN「アマノ」Gに替えて、表1に示すタンパク質分解酵素と緩衝液を用い、酵素反応温度を変更した他は、実施例1と同様に食用品大豆を調製し、ACE阻害活性を求めた。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導入されたペプチド結合加水分解酵素の作用により生成されたIle−Tyrを含むペプチドを含有し、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの総含有量が、ペプチド結合加水分解酵素導入前のペプチドの含有量の2倍以上であり、且つ、ペプチド結合加水分解酵素導入前の形状を保持していることを特徴とする食品用豆類。
【請求項2】
2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの総含有量が、食品用豆類100g中に0.001mg〜100mgであることを特徴とする請求項1記載の食品用豆類。
【請求項3】
食塩、アミノ酸のナトリウム塩、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、及びエキソペプチダーゼから選ばれる何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の食品用豆類。
【請求項4】
食品用豆類が大豆又は吸水させた大豆であることを特徴とする請求項1から3記載の食品用豆類。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の食品用豆類の製造方法であって、豆類の種皮を損傷する種皮損傷工程、種皮を損傷した豆類にペプチド結合加水分解酵素を接触させる酵素接触工程、減圧または加圧処理によりペプチド結合加水分解酵素を内部に導入する酵素導入工程、内部に導入したペプチド結合加水分解酵素により、2〜20のアミノ酸で構成されたペプチドの含有量が2倍以上になるようにペプチド結合を分解する酵素反応工程、ペプチド結合加水分解酵素を加熱により失活させる酵素失活工程を含むことを特徴とする食用豆類の製造方法。
【請求項6】
種皮損傷工程が、100℃以上1分以上の加熱処理をする工程を含むことを特徴とする請求項5記載の食品用豆類の製造方法。
【請求項7】
種皮損傷工程が、100Pa以下の減圧下で10分〜3時間の表面乾燥処理を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の食品用豆類の製造方法。
【請求項8】
種皮損傷工程が、豆類を凍結及び解凍する凍結・解凍工程を有することを特徴とする請求項5から7のいずれか記載の食品用豆類の製造方法。
【請求項9】
酵素導入工程が、0.01MPa以下又は50MPa以上で行なわれることを特徴とする請求項5から8のいずれか記載の食品用豆類の製造方法。
【請求項10】
酵素接触工程において、ペプチド結合加水分解酵素と共に、食塩、アミノ酸のナトリウム塩、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、及びエキソペプチダーゼから選ばれる何れか1種又は2種以上と接触させ、酵素導入工程において、ペプチド結合加水分解酵素と共に、食塩、アミノ酸のナトリウム塩、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、及びエキソペプチダーゼから選ばれる何れか1種又は2種以上を内部に導入することを特徴とする請求項5から9のいずれか記載の食品用豆類の製造方法。
【請求項11】
請求項1から4の何れか記載の食品用豆類を乾燥又は冷凍して得られることを特徴とする食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−170438(P2012−170438A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38215(P2011−38215)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本食品科学工学会 社団法人日本食品科学工学会 第57回大会講演集 139頁 2010年9月1日
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】