説明

食物繊維製剤及び投与方法

【課題】食物繊維製剤及びその投与のための関連方法を提供する。
【解決手段】一実施形態では、部分加水分解グアーガム(PHGG)及びフルクトオリゴ糖(FOS)を含む食物繊維製剤を提供し、この食物繊維製剤が、PHGG及びFOS個々のプレバイオティク能より大きいプレバイオティク能を示している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、概略的には食物繊維、より詳細には部分加水分解グアーガム(PHGG)及びフルクトオリゴ糖(FOS)を含む製剤並びにその投与方法に関する。
【0002】
(背景技術)
食物繊維
食物繊維は、ヒトの酵素による消化に耐え、主として植物細胞壁に由来する炭水化物である。それらが腸内環境を変えることにより腸の全長に沿って生理的プロセスの調節をする能力はよく知られており、小腸及び大腸で異なる作用を示す。小腸における繊維の主な機能は、粘性を増強させることであるが、大腸においては、それが、短鎖脂肪酸(SCFA)産生のための基質として働く。繊維類の異なる物理的特性及びそれらに対応する作用が、共同で正常な腸の機能を促進する。
【0003】
繊維は、炭水化物及びリグニンで、ヒトの消化酵素では加水分解できないが、腸内細菌によって発酵されて水素、メタン、二酸化炭素、水、及びSCFAを産生する。一般的に、繊維は、それらの発酵性、溶解性、及び粘性に基づいて分類される。最も発酵性のある繊維は、可溶性で粘性であり、最も不溶性の繊維は、非粘性で完全に発酵性があるというわけではない。今のところ、栄養表示では溶解性に焦点を合わせて食物繊維のタイプを分類している。
【0004】
セルロース及びリグニンを含めた不溶性繊維は、完全に非水溶性であり、結腸内でわずかに発酵される。これらは、それらの保水能力によって主として膨張剤として働く。不溶性繊維は、便量を増加させ、内容物が腸の中を正常に前進するように促し、水分摂取が適切な場合に便秘を減弱化する。
【0005】
可溶性繊維は、水に溶解し、結腸にその90%が生息する腸内細菌により発酵され得る。発酵性は、繊維の溶解性及び粒子サイズの程度次第である。例えば、繊維は、溶解性が増加し、その粒子サイズが減少するにつれて、より急速に発酵される。満腹期を延長する胃内容排出の遅延、グルコース吸収速度の低下、及び上昇した血清コレステロールの低下を助けるステロール化合物の結合等、可溶性繊維は、消化の間に様々の有益作用を与える。可溶性繊維にはペクチン、ガム、幾種類かのヘミセルロース、サイリウム、グアーガム、フルクトオリゴ糖(FOS)、イヌリン、及びガラクトオリゴ糖(GOS)が含まれる。その他に、相当量の可溶性繊維が、果実、野菜、並びに大麦及び燕麦を含めた穀類に見出されている。
【0006】
繊維の更なる有益作用は、それらの発酵性及びSCFAの産生に関連している。酢酸、プロピオン酸、及び酪酸は、結腸内で産生するSCFAの83%を構成する。SCFAは、腸上皮細胞によってすぐに吸収され、エネルギーを提供し、ナトリウム輸送、水分吸収、及び腸の成長を刺激する。これらの機構を通して、SCFAは、処方薬、病原菌への曝露、及び病気によってもたらされる水様性の軟便を正常化するのを助ける。更には、酪酸は、結腸粘膜細胞のための好ましいエネルギー源として、結腸上皮細胞の正常な成長及び発達に影響を及ぼすという点で重要な役割を有している。したがって、酪酸は、抗癌活性を有し、粘膜構造の完全性に寄与している。これらの特性はそれぞれ、身体自体が悪性進行及び病原菌侵入から防御するのを助ける。
【0007】
回腸におけるSCFAの濃度は、生理的には低い。しかし、回腸のSCFAのレベルは、ある生理的及び臨床的状態では増加させることができる。数多くの研究で、回腸終端に存在するSCFAが、蠕動性収縮を刺激し、緊張性活動を増加させ、それが排出応答を誘発し得ることが実証されてきた。したがって、大量のSCFAを産生する繊維は、腸の自律運動を増加させることができるし、便秘を緩和する可能性がある。
【0008】
主として、炭水化物の可用性がより大きいことを理由として、SCFA濃度は、近位大腸で最も高い。糞便性細菌群を用いたin vitroな発酵実験では、個々の多糖が、異なった速度で分解されるということが実証されてきた。この知見は、腸内での細菌による異化プロセスに関係している。というのは、大方の場合、微生物が発酵性基質獲得のために競争する態様及び発酵反応に関与する制御機構を、基質濃度が規制するからである。
【0009】
研究では、食事内に存在する繊維の種類によって、発酵の間に産生されるSCFAの量ばかりでなく割合も左右されるということが示されてきた。酢酸産生は、糖分解性結腸細菌による発酵及びビフィズス菌のフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ分路による発酵から主として生じるらしい。プロピオン酸は、主としてバクテリオード(bacteriodes)の二酸化炭素固定から生じ、酪酸は、主にフゾバクテリウム及びユーバクテリウム(eubacterium)のアセチル−S−コエンザイムA縮合から生じる。
【0010】
一研究では、最高度の酢酸産生はグルコース発酵によるもので、次がFOS発酵であったと報告している。これは、恐らく解糖及びビフィズス菌分路それぞれの結果である。高度のプロピオン酸産生は、セルロース及びPHGGの発酵からなされ、高レベルの酪酸は、サイリウム外皮及びPHGGの発酵を通して得られた。部分加水分解グアーガム(PHGG)は、24時間の回分培養後で最大量のSCFAを産生した。
【0011】
細菌叢の成長
SCFAは、ビフィズス菌及び乳酸菌等の有益な細菌の成長を刺激し、有害な細菌株の成長を阻害することにより健全な腸内環境を促進する。有益な細菌は、正の免疫応答を刺激し、有害な細菌の成長を競争で排除することで腸の健康を促進する。放射線治療、抗生物質の使用、食事法の極端な変化、及び腸内での細菌叢の亜集団を乱すことが知られている他の事象の後で、SCFAが非常に重要であるというのは、これらの理由のためである。有益な細菌叢を培うことに関連して、可溶性繊維は、便秘を予防し又は緩和するのを助けることのできる温和な緩下剤効果を有している。
【0012】
ヒトの腸管は、約800種の細菌由来の細菌の亜集団が、互い同士、宿主の腸上皮細胞、及び宿主の免疫系の構成要素と相互作用する生態系と考えることができる。腸内環境が適合していると、特定の細菌の亜集団が、繁殖する。栄養の可用性、pH、生理的プロセス、及び競合する細菌の不在は皆、所与の時点で腸にコロニーを形成する細菌の混成に影響をもたらす。
【0013】
一般的にプロバイオティクスと呼ばれる有益な細菌は、腸内の有益な細菌の割合を増加させ、病状を予防又は治療するために長年使用されてきた。プロバイオティクスに帰せられる有益な作用には、抗生物質及び化学療法に関連する下痢の頻度の減少及び期間の短縮、正の免疫応答の刺激、並びに結腸内発癌補助酵素の減少が含まれる。プロバイオティクが腸内の有益な細菌の成長を促進するためには、生き残って胃を通過し、腸末端及び結腸内にコロニーを形成するその能力を保持しなくてはならない。通常用いられるプロバイオティクスには乳酸菌及びビフィズス菌の菌株が含まれる。プロバイオティクスの通常の食品源は、ヨーグルト、バターミルク、キムチ、ザワークラウト、及び他の培養され発酵した食品である。
【0014】
プレバイオティクスは、結腸内に存在する潜在的に有益な細菌の成長基質である。例えば、プレバイオティクスで養われる有益な細菌は、水分及び電解質の輸送を含めて、粘膜の成長及び機能を維持するのを助ける。したがって、プレバイオティクスは、健康を改善することが知られている1種又は限定された数種の細菌の成長及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有益な影響を及ぼす不消化食品成分と定義されてきた。しかし、この定義では、宿主の微生物叢に欠陥があり、プレバイオティクスを供給すれば有益であるという予想に少なくとも部分的に基づいて、プレバイオティクの使用が予測される。この定義は、プレバイオティクが、大腸内のみで微生物の成長を刺激するように作用するということも含意する。しかし、細菌は、回腸終端にも存在し、プレバイオティクスが、これらの微生物の成長を刺激することができ、宿主の健康も改善する。
【0015】
シンバイオティクスとは、宿主に有益な影響を及ぼすプレバイオティクス及びプロバイオティクスの混合物である。この組合せは、上部胃腸管を通過する間のプロバイオティクの生存率を改善し、結腸内のコロニー形成をより効果的に促進する。したがって、シンバイオティクスは、プレバイオティクと同じ正味の作用を有し得る、即ち結腸において有益な細菌を成長させ得る。大きな腹部外科手術又は肝移植後の経管栄養補給患者に投与されるシンバイオティクスが、非経口栄養又は無繊維性経管栄養補給と比較して術後感染発生率を減少させることが示されている。
【0016】
免疫調節及び抗炎症作用
腸内細菌叢、先天性免疫、及び粘膜免疫系の間の相関関係が、健康と炎症性腸疾患(IBD)を特徴付ける破壊的な慢性炎症の根底をなす病態生理とにおいて決定的な役割を演じていると考えられている。普通は、腸結腸細菌は、腸内で破壊的な炎症応答を誘発しないであろう。実際、細菌性発酵産物は、上皮及び結腸のホメオスタシスにおいて活発で有益な役割を演じていることが知られている。不消化食事性炭水化物の腸内細菌性発酵由来のSCFAは、結腸上皮のために必須のエネルギー基質を供給する。SCFAの欠乏は、慢性の腸炎である結腸炎の発症という結果をもたらす場合がある。
【0017】
一研究によれば、酪酸は、細菌性のリポ多糖体に応答して、ヒト腸微小血管内皮細胞において細胞内細胞接着分子−1(ICAM−1)、IL−6、COX−2、及びPGE2の遺伝子及びタンパク質の発現を変えると報告された。これは、酪酸の免疫調節的及び抗血管新生的な役割を示している。
【0018】
酪酸が、NF−KB活性化の阻害を通してタンパク質及び特定のmRNAの両方の産生を低減することにより、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)において血管細胞接着分子−1(VCAM−1)及びICAM−1のTNF−α刺激による発現を阻害したということも報告されている。加えて、酪酸は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−α(PPAR−α)を増強することが知られている。これらの結果は、酪酸が、結腸細胞内ばかりでなく内皮細胞内でも抗炎症特性を有し得ることを明示している。酪酸の抗炎症及び抗粥腫発生の特性を、NF−KB及びPPAR−αの活性化に及ぼす作用並びにVCAM−1及びICAM−1が関連した発現にある程度帰することができる。
【0019】
酪酸輸送
最近、哺乳動物におけるSCFAのために、免疫細胞の原形質膜上に主として発現する特定のGタンパク質結合受容体が、同定された。腸管関連免疫細胞は、上皮細胞層直下の固有層に存在している。これらの受容体を活性化するために要するSCFAの濃度は、約0.01mMと約1.0mMとの間である。結腸ではSCFAの内腔濃度はきわめて高いので、ナトリウム結合性モノカルボン酸輸送体(SMCT)を介したそれらの吸収に支援されて、結腸上皮細胞層の漿膜側で、SCFAが、こうした濃度に達するようである。したがって、これらの受容体は、腸炎及び抗腫瘍免疫に関係する様々な生理的及び病的状態に関連性がある。ヒストンデアセチラーゼの阻害剤である酪酸の活発な吸収をこの輸送体が仲介する能力が、結腸内でのその腫瘍抑制的な役割の基礎となり得る。
【0020】
SCFAはまた、腸管関連免疫細胞上の特定のGタンパク質結合受容体に対するリガンドとして働く。結腸内腔でのこれらの脂肪酸濃度はきわめて高いので、SMCTは、この内腔から免疫細胞が常在する固有層へのこれらの脂肪酸の経細胞移送を促進し得、したがって腸内細菌叢及び腸管免疫系の間の連関が提供される。
【0021】
幾つかの研究では、酪酸を用いた治療は、PPAR−γ等の様々な転写因子、並びにビタミンD受容体mRNA及びタンパク質レベルを上方制御するということが示されてきた。別の研究では、酪酸は、PPAR−γ発現に影響を与えるが、この受容体を直接活性化しないということが示された。PPAR−γは、脂肪細胞の分化、脂肪代謝、インスリン感受性、炎症、及び粥腫発生に関わる一連の多数の遺伝子の発現を制御する核内受容体である。したがって、酪酸を産生する微生物によって選択的に発酵された繊維は、糖尿病、循環器疾病、及び炎症性腸疾患の治療に有益な役割を有し得る。
【0022】
プレバイオティク能
プレバイオティクスに分類される食物繊維は、細菌の亜集団の成長を調節することができ、外来の有益な細菌又はプロバイオティクスと組み合わせた場合に、シンバイオティクスと定義され、消化器の健康を更に支えることができる。可溶性繊維は、有益な細菌の成長を刺激するそれらの能力、それらの発酵時間の長さ、及びそれらが産生するSCFAの量次第で、高度の、中度の、又は低度のプレバイオティク能を有することができる。不溶性繊維は、結腸内の細菌がわずかにそれらを発酵させるだけなので、ほとんど又は全くプレバイオティクの作用が無い。
【0023】
繊維のプレバイオティク作用を測定するためのin vitroな定量法が知られている。ヒトの腸内の主要な細菌種、特にビフィズス菌及び乳酸菌の成長への繊維の測定可能な作用は、プレバイオティク作用尺度(MPE)である。MPEは、3つの構成要素を有する。
1.繊維が発酵される速度;
2.細菌集団における変化;及び
3.SCFAの産生。
【0024】
繊維発酵の速度は、繊維濃度の経時的変化で決まる。したがって、繊維濃度の減少が速いほど、細菌による発酵速度が速い。細菌集団の変化は、ビフィズス菌、乳酸菌、ユーバクテリウム(eubacteria)の成長速度の増加を正の作用、バクテリオード、クロストリジウム、大腸菌、及び硫酸塩還元菌の増加を負の作用と見なす「プレバイオティク指数」によって測定される。異なった繊維は、違う細菌の成長を支え、したがってSCFAのパターン及び/又は量の変化を生じる。しかし、プレバイオティク作用は、通常、主な乳酸産生者である乳酸産生細菌、ビフィズス菌、及び乳酸菌に関連がある。したがって、全SCFA産生に対する乳酸産生率は、試験対象の繊維の質的及び量的評価を提供する。MPEは、繊維のプレバイオティク能について定量分析を提供し、特定繊維の有益性の更なる裏付けを提供する。したがって、MPEは、最適な消化器の健康を促進し、腸疾病を予防又は治療する繊維の種類及び具体的な量を特定するのに有用な手段である。
【0025】
有益な細菌と病原性の細菌との間の均衡は、この均衡が免疫機能並びに栄養の消化及び吸収に直接影響するので、腸の正常な生理機能を維持するためにきわめて重要である。精選された繊維は、消化器の健康に、腸の細菌の亜集団に影響を与えるそれらの能力に由来する付随的有益性をもたらす。この様にして、食物繊維は、間接的に次の事柄に寄与する。
粘膜関門機能を改善し、腸から血流への病原性細菌の移行の予防;
有益な亜集団の促進及び病原性細菌の亜集団の縮小;
大腸内の上皮細胞ための主要なエネルギー源であるSCFAの産生;及び
腸の免疫細胞と病原性細菌との間の相互作用を介しての宿主の免疫の改善。
【0026】
食物繊維の独特の化学的、生物学的、及び物理的特性は、その摂食に伴う健康有益性の原因である。高繊維食が、消化器系及び身体の他の系を冒す様々な慢性症状の予防及び治療を助けられるので、一般人の良好な健康状態のためには、繊維の潤沢な摂取が推奨される。例えば、食物繊維は、血圧上昇及びコレステロールレベルを正常化する作用を有し、循環器疾病の危険性を減少させることにも関与する。更に、食物繊維は、術後、重篤、及び慢性病患者ばかりでなく、小児及び老齢者の世話では特に重要である。
【0027】
例えば、術後及び重篤な患者ばかりでなく急性期の間に経腸栄養法を必要とする人々の場合は、可溶性繊維が、経腸栄養補給に伴う頻繁な下痢を予防するのを助ける。腸の機能が損なわれた患者のためにはリットル当たり6〜10gの繊維の投与が、適切である。臨床試験では、術後患者及び腸機能が正常な患者は、栄養補給剤としてリットル当たり10〜15gが適量であるより高度な繊維摂取が有効であることが示されてきた。腹部大手術又は肝移植後で、術後感染の発生率は、経腸処方を繊維及び付随するプロバイオティクのブレンドとともに補給された患者では有意に低下している一方で、従来からの無繊維性の処方を受けた患者では思ったほどの転帰ではなかったことが示されてきた。
【0028】
慢性病又は疾病のある患者及び長期間の経腸栄養法を要する人々に対して不溶性及び可溶性繊維の両方の摂取は適切である。しばしば運動不足、高齢、又は水分及び/又は繊維の不十分な摂取のせいで、これらの患者では便秘がありがちな問題である。便秘は、経管栄養補給患者では特に共通している。忍容性が認められる場合は、一般人向けの推奨摂取量の繊維のブレンドを含めることは、便秘を予防し並びに下剤及び浣腸剤に頼る必要性を抑止する助けになることができる。可溶性繊維のプレバイオティク作用は、単独又はプロバイオティクとの組み合わせで、慢性病患者における抗生物質関連の又は感染性の下痢をも同様に緩和又は予防する助けになり得る。
【0029】
摂食勧告
繊維の乏しい食事は、疾病の危険性の増加に関連している。対照的に高繊維の食事は、消化器の健康を正常化又は改善できる。可溶性及び不溶性の両方の繊維を含む繊維の豊富な食事が、奨励されている。繊維の推奨1日摂取量は、健康な成人で20〜35gである。2歳以上の小児の望ましい推奨1日摂取量は、小児の年齢に5gを加えて算出される。平均繊維摂取量は、1日当たりの標準的摂取量が平均14〜15gしかなく、米国では推奨レベルを下回ったままである。良い食物繊維源には、果実及び野菜、未精白の及び高繊維質の穀物産物並びに豆類が含まれる。これらの食品の常習的で高度な摂取は、通常は、一般的でない。その上、欧米の食事で人気のある食品の多くは、食物繊維をほとんど含有しない。繊維の豊富な食事を摂食する個人でさえ、便秘を予防するのに不適切な繊維摂取をしている場合がある。したがって、これらの状況下では補給が重要である。
【0030】
繊維の豊富な食事は、肥満、メタボリック症候群、心臓病、卒中、糖尿病、結腸癌、及び消化器系障害を含めた疾病の防止及び治療に関連している。健康を促進し及び/又は疾病を治療するための繊維と腸内環境との相互作用の方法についての理解は、関連が特定される初期段階から機序を仮定する更に先の段階まで多岐にわたる。
【0031】
肥満
食物繊維の潤沢な摂取が、体重増加を予防し、体重減を促進するのを助けることができることを、エビデンスは、示唆している。示唆される作用形態は、高繊維の食事の後の食後満腹感を延長し、グルコース制御の改善をもたらす胃内容排出の遅延を含む。疫学的研究は、より高繊維の食事をしている成人は、より細身の傾向があり、繊維摂取量の低い成人に比べてより肥満になりにくいことを確認した。臨床試験では、1日当たり繊維14gを追加すると、エネルギー摂取が10%減少し、4ヶ月の間に平均1.9kgの体重減という結果になった。
【0032】
心臓病及び卒中
粘性繊維摂取の増加は、全コレステロール及び低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールを減少させ、「オートブラン等の食品由来の可溶性繊維は、飽和脂肪及びコレステロールが低い食事の一部として、心臓病の危険性を減らすことができる」という米国食品医薬品局の認めた健康強調表示につながることを、数多くの臨床試験が、報告している。加えて、米国及びヨーロッパにおける繊維摂取についての10のプロスペクティブコホート研究の統合分析では、1日当たり各10gの繊維の増加が、冠動脈イベントの危険性の14%の減少及び冠動脈疾病による死の24%の減少に関連していることを見出した。繊維の豊富な食事はまた、血圧上昇のレベルを引き下げるのを助けることができる。2つの介入試験で、オートシリアル及びオートブランから摂取する繊維を増加させると、高血圧症に中程度だが有意の改善があるという結果が見出された。食事及び栄養として補給される粘性繊維の摂取が、LDLコレステロールを低下させるのに有効である一方で、大規模な疫学的研究は、全穀粒、豆類、果実、及び野菜由来の繊維が豊富な食事が、同様に冠動脈心疾患の危険性を低減することができるという強力なエビデンスを提供している。
【0033】
糖尿病
幾つかのプロスペクティブコホート研究から、繊維の豊富な食事は、2型糖尿病発症の危険性の有意な低減に関連しているということが見出された。食物からであろうと栄養補給剤からであろうと、繊維の摂食は、血糖及びインスリン応答、並びに脂質プロファイルに有益な作用があることを示してきた。23の臨床試験の結果から、高繊維食は、食後のグルコースレベルを13から21%の間まで、LDLコレステロールレベルを8から16%の間まで、及びトリグリセリドのレベルを8から13%の間まで低下させることが見出された。これに基づいて、米国糖尿病協会は、最近の1日当たり少なくとも25〜50gの繊維摂食所要量に反映させたように、食物繊維が糖尿病の人々に提供する有益性を認めている。
【0034】
メタボリック症候群
メタボリック症候群は、成人における新興の病的状態である。医学的に3つ以上の次の生物学的危険因子の一団と定義される:腹部肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症(高トリグリセリド及び低い高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール)、及び血圧上昇。メタボリック症候群の存在下では、循環器疾病及び糖尿病の危険性は、劇的に上昇する。最近の疫学的研究は、1期8年で、すべての循環器イベントの20%と糖尿病の新規症例の50%超が、メタボリック症候群を伴う個人に発症していることを確認した。米国の20%超の人口がメタボリック症候群であるが、危険性は、食物繊維の摂取を含めた幾つかの変更可能な生活習慣要因に関連している。例えば、40から60歳の年齢の1500人超の女性の群で、2000キロカロリー摂食毎に平均14.6gの繊維という1日摂取所要量の約半分を満たす最低の食物繊維摂取量を摂取する群ではメタボリック症候群の危険性が、有意により大きかった。全体として、脂肪、キロカロリー、及び甘味飲料のより高度な摂取並びに野菜及び食物繊維の最低の摂取を含む常習的な食習慣が特定された。危機的状況の個人の特定、臨床管理、及び高繊維食を用いた栄養介入を含めた標的行動の変革は、メタボリック症候群及びその共存症の予防のためには必須である。
【0035】
結腸癌
1990年より前に行われた臨床試験の大多数では、結腸直腸癌の発生率が、より高度の繊維摂取をしている人々で減少することが見出された。食物繊維、特に可溶性及び発酵性の繊維源が、癌を開始する可能性のある毒素の形成を予防し、それらの排出を促すように作用することを、エビデンスが示唆している。そのほか、繊維の発酵によって産生したSCFAは、結腸上皮の成長を促進し、正の免疫応答経路を介して腫瘍を退行させ、抗癌性の表現型に向けて遺伝子発現を変調する。しかし、より最近の試験では、繊維摂取と結腸直腸癌の危険性との間に有意な関連は見出されていない。現行の分類システムが、抗癌作用に関連する繊維の具体的種類及び量の変動を適切に特定していないことが、これらの食い違いの理由である可能性がある。他の可能性は、食事のある種の構成要素が、繊維と相互作用して、癌の発生に対するその作用に影響し得ることである。
【0036】
消化器系障害
繊維は、腸全般の健康に決定的な役割を演じている。繊維は、消化器系に総体的な正常化作用を有する。所要量を満たすように繊維の摂取を増加させると、軟化させ、嵩を増やし、内容物の腸管通過を速めることによって便秘を予防又は緩和する。繊維はまた、小児及び老齢の人々並びに重篤及び慢性病患者にとって特別に重要な下痢を予防又は治療する。そのほかに、上記のように炎症に関連する様々な消化器障害の予防及び管理において、繊維は、重要な役割を演じている。高度の繊維摂取は、結腸内の小さな嚢上胞の形成で特徴付けられる状態である憩室症の危険性減少に関連している。一研究では、高い繊維摂取をしている男性は、憩室炎を発症する危険性が42%低下することを発見した。過敏性腸症候群(IBS)の患者について最近の報告では、可溶性繊維補給によりIBSの症状に有意の改善があることを実証した。しかし、不溶性繊維補給では改善が見られなかった。更に、シンバイオティク治療によって、潰瘍性結腸炎の患者に寛解が誘発された。要約すると、可溶性繊維は、消化器の健康維持を支援しようとする健康な個人のためばかりでなく、病気又は疾病が原因で消化器の機能又は健康が損なわれた個人にも有益であり得る。
【0037】
コレラ
コレラでは、コレラ毒素に応答して分泌プロセスの刺激並びに小腸及び大腸からの水と電解質の吸収量の減少が関与して、小腸の機能が冒される。おびただしい水様性の下痢では、即座に水分補給療法を行う必要があり、さもないと死に至る場合もある。
【0038】
ヒトの結腸は、水及び電解質を吸収する能力を有し、SCFAの存在下では吸収が増加する。SCFAは、結腸におけるc−AMP介在の塩化物分泌も阻害する。部分加水分解グアーガム(PHGG)(Benefiber)は、水溶性繊維で、もし経口補水液(WHO推奨のORS含有物は、他の明白な繊維分を含まない)(ORS)に加えると、結腸内で発酵を受けてSCFAを遊離させる。SCFAは、結腸内の水及びナトリウムの吸収を刺激し、それによってコレラ患者の治療において排便量及び下痢の期間を減少させることで下痢の重症度を低減させる。
【0039】
非盲検ランダム化対照比較試験(open randomized controlled trial)において130人の成人男性コレラ患者を試験した;65名は、a)ORS+Benefiber25gを受け;b)65名は、ORSのみ受けた(対照)。全患者がドキシサイクリン300mgを1回受けた。
【0040】
結果:ベースラインの臨床的特徴は、群間で同程度であった。便重量(g)に関しては、初めの24時間では平均値±SD(Benefiber25グラム、10206±5770対対照群、10231±3750)、次の24時間では(Benefiber25g、2418±3472対対照群2172±3931 p=0.708)で、有意の差異は見られなかった。入院後の下痢の期間(h)も、両群で同様(Benefiber25g、31.4±11.1対対照群、32±12.5)であった。しかし、サブグループ分析(初めの24時間の便重量>10kgの非常に高い瀉下量患者を排除)では、便重量が、初めの24時間にBenefiber投与群で有意に減少した(Benefiber25g、5940±2920対対照7913±1515、p=0.001)。WHO推奨のORSに添加されたBenefiberは、重症度の低い瀉下患者で便重量を減ずるのに有益である。
【0041】
コレラII
部分加水分解グアーガムは、水溶性繊維であり、もし、ペクチン、ガム、ある種のヘミセルロース、サイリウム、他のグアーガム、フルクトオリゴ糖(FOS)、イヌリン、及びガラクトオリゴ糖(GOS)、好ましくはFOS又はイヌリン、より好ましくはイヌリン等の、少なくとも1種以上の水溶性繊維、好ましくは2種以下の添加繊維源、より好ましくは1種の添加繊維源を含有し又は補給した経口補水液に加えられると、繊維が結腸内で発酵を受けてSCFAを遊離し、コレラ患者の治療では排便量及び下痢の期間をBenefiberだけの場合よりもはるかに減少させることで、下痢の重症度を低減するはずである。
【0042】
部分加水分解グアーガム及びフルクトオリゴ糖
2種類の繊維、部分加水分解グアーガム(PHGG)(それ自体はBenefiberの名でNovartisによって販売されている)及びフルクトオリゴ糖(FOS)は、広範囲に研究されてきた。それぞれに消化器の健康を促進することが示されてきた。
【0043】
PHGGは、グアーガムから抽出された独特な可溶性の機能的繊維である。グアーガムの元来の高い粘性は、加水分解後はほとんど除去されて、液性食品及び栄養処方への添加に理想的になっている。
【0044】
PHGGの有益な作用の多くは、結腸内でほとんど完全に発酵され、他の可溶性繊維に比べて有意により多量の酪酸を産生するという事実に原因があるらしい。酪酸は、結腸細胞のための好ましいエネルギー源として知られ、腸における細胞増殖、分化、及びアポトーシスの制御で役割を担っている。近位結腸で急速に発酵される他の可溶性繊維のように、PHGGは、便重量を有意に増加させない。しかし、数多くの研究は、PHGGが、特に経腸栄養法を受けている患者及び他の腸不耐性に敏感な人々において、下痢及び便秘の両方の予防又は緩和ばかりでなく腸機能の正常化に有益であるということを示してきた。
【0045】
一研究では、48時間未満内に急性の水様性下痢を患う4〜18月齢の子供が、PHGGを補給した経口補水液の摂食の後で、便排出量及び下痢期間の減少を経験した。別の研究では、チキン基材の調整食にPHGGを加えると、14日間より長く持続する水様性下痢の既往の5〜24月齢の子供の下痢からの回復を増強した。
【0046】
従来の無繊維処方に比べると、老齢の経管栄養補給患者で、PHGG補給が、下痢の発生率を減少させることも示されている。ある研究では、PHGG補給(1日当たり20g)を受けた患者は、だれも不耐性にならなかったが、無繊維処方を受けた患者のうち4人は、経管栄養補給の中止を余儀なくする持続性の下痢になった。別の研究では、標準的経腸処方への漸増的なPHGG補給(1日当たり7gから始めて、4週目までに1日当たり28gへ増加する)では、老齢患者で排便頻度が有意に減少し、SCFAの産生が増加し、腸内細菌の均衡が正常化した。PHGG補給(1リットル当たり22g)で、他の経腸栄養補給患者群でも下痢が低減した。そのほか、完全に蘇生し人工呼吸器を装着した敗血症患者及び持続性の下痢を伴う集中治療室の患者で、下痢の発症が減少した。
【0047】
PHGGは、便秘も効果的に正常化する。ある研究では、浣腸で管理された便秘を伴う長期医療のレジデントが、日常的なPHGG補給(18g)を受けたところ、より高い初期浣腸使用量だったレジデントでは特に浣腸必要量の有意な減少を見た。別の研究では、PHGG補給(1日当たり15g)で、慢性的な下剤の使用を伴う長期医療のレジデントにおいて、便秘及び下剤管理が減少した。PHGG補給は、便秘症の女性で便通の間隔を短縮し(1日当たり11gのPHGG補給)、IBSを伴う成人で便通を効果的に正常化し、小麦ブランを与えられた被験者に比べて腹痛及び不規則な便通の症状を改善する(1日当たり5gのPHGG補給)ことも示してきた。
【0048】
PHGGは、有益な細菌株であるビフィズス菌及び乳酸菌の菌株の濃度を増大させるので、プレバイオティクと考えられている。ある研究は、2週間PHGG(1日当たり21g)を含有する食事を摂食した健康な被験者で、ビフィズス菌が、17%増加したことを示した。乳酸菌の成長増大も検出された。ほかにも、1日8gのPHGGを毎日補給摂取した後に、乳酸菌の有意な増加を検出したという矛盾のない知見が報告された。
【0049】
フルクトオリゴ糖(FOS)は、短鎖フルクトース重合体で、長鎖フルクトース重合体であるイヌリンとしばしば比較される。チコリー、アーティチョーク、アスパラガス、及びタマネギを含む幾つかの植物は、天然のFOS源である。例えば、スクロースからの合成、イヌリンの加水分解、チコリーの根からの抽出、キクイモからの抽出、及びアガーベからの抽出を含む、FOSを製造する又は得る多くの方法が知られている。プレバイオティク活性を有する高度に発酵性の繊維であるFOSは、ビフィズス菌及び乳酸菌の成長を刺激する。研究では、PHGGと同様に、FOSは、便秘及び下痢を予防又は緩和できることが示されている。
【0050】
ビフィズス菌の成長を助長することにより、FOSは、正の免疫応答を増強し、下痢を引き起こすかもしれない病原菌の成長を抑制して腸の健康を促進する。ある研究では、健康な成人の食事に1日当たり4gのFOSを加えると、ほんの1ヶ月未満にビフィズス菌が増加したことを報告した。ほかの研究では、14日以内の食事による1日当たり4gのFOS補給で、ビフィズス菌及び乳酸菌の両方の有意の増加を検出した。更に、FOSを1日当たり15g投与すると、摂取15日以内にビフィズス菌が増加するばかりでなく、病原菌、特にバクテロイド、クロストリジウム、及びフゾバクテリウムのレベルも減少することが示された。
【0051】
微生物の正の均衡を促進することにより、FOSは、腸の規則性を増強する。抗生物質療法を受けている小児の多施設臨床試験では、FOSと乳酸菌とのシンバイオティクな組合せが、下痢の発生率を減少させた。FOS+乳酸菌補給群では、小児の71%に耐性の問題が起こらなかったが、プラセボ群では小児の38%に下痢が起こった。下痢発症の期間は、FOS+乳酸菌補給群で有意に減少した。その群では、下痢が、平均して0.7日続いたのに対し、プラセボ群では平均1.6日であった。別の研究では、FOSを28日間便秘患者に投与したところ、73%の患者で不規則な便通が軽減されたことが示された。同様に、透析患者についての研究では、FOS添加の腎臓用処方で、FOSなしの同様の処方と比べて便秘が少なくなった。
【0052】
上記の研究が、宿主の健康を維持及び改善するのに果たす食物繊維の役割を明示する一方で、提供されていないか又は既知の製剤及び方法で提供されていたそれよりも大きな健康有益性を提供する食物繊維製剤及びそれらの投与方法が必要である。特に、食物繊維のプレバイオティク能をより十分に実現する食物繊維製剤が必要である。
【0053】
(発明の概要)
本発明は、食物繊維製剤及び関連する投与方法を提供する。一実施形態では、本発明は、部分加水分解グアーガム(PHGG);及びフルクトオリゴ糖(FOS)、を含む食物繊維製剤であって、この食物繊維製剤が、PHGG及びFOS個々のプレバイオティク能より大きいプレバイオティク能を示す食物繊維製剤を提供する。
【0054】
本発明の第1の態様は、第1の可溶性繊維、及び第2の可溶性繊維を含み、この食物繊維製剤が、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維個々のプレバイオティク能より大きいプレバイオティク能を示す食物繊維製剤を提供する。
【0055】
本発明の第2の態様は、個人を食物繊維製剤で治療する方法であって、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維を含み、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維個々のプレバイオティク能より大きいプレバイオティク能を示す、食物繊維製剤の有効量を個人に投与することを含む方法を提供する。
【0056】
本発明の実例とする態様は、当業者によって発見され得る本明細書に記載された問題及び未説明の他の問題を解決しようと意図している。
【0057】
(詳細な説明)
上記のように、本発明は、食物繊維製剤及び関連する投与方法を提供する。本発明のこの製剤を、例えば、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、下痢、便秘、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、心臓病、及び卒中を含む多くの疾病又は病状のいずれかを患う個人を治療するために投与することができる。同様に、本発明の製剤を、宿主の腸内環境において有益な細菌の成長を促進するために投与することができ、それによって宿主がこのような疾病又は病状を患う可能性を予防し又は減少させる。
【0058】
本明細書で用いられているように、「治療」及び「治療する」という用語は、予防のため又は予防的治療と治癒的又は疾患修飾性治療との両方を指し、病気或いは疾病又は病状を患っていると診断された患者ばかりでなく、疾病に罹る危険性があるか又は疾病に罹ってしまった疑いのある患者の治療を含む。したがって、「有効量」は、個人の疾病又は病状を治療する量である。
【0059】
意外にも、フルクトオリゴ糖(FOS)及び部分加水分解グアーガム(PHGG)の組合せは、腸の健康上、どちらかを単独で投与した場合よりも大きなプレバイオティクの作用を有することが見出された。一部には、それぞれの繊維が、明確に異なる発酵速度及び腸内での固有の活動領域を有するという事実により、PHGG/FOSのブレンドは、腸管内での発酵時間が延長され、どちらかの繊維単独の場合に示すより多くの種類の短鎖脂肪酸(SCFA)、具体的には酢酸、プロピオン酸、及び酪酸を産生する。発酵時間、SCFA産生、並びにPHGG、FOS及び本発明によるPHGG/FOSブレンドのプレバイオティク能の比較を表1に示した。
【0060】
【表1】

【0061】
全体的には、これらの結果からPHGG/FOSブレンドでは、PHGG単独と比較して24%上回る有益性、及び、FOS単独と比較して46%上回る有益性を示している。特に、ブレンドのプレバイオティク能は、PHGG又はFOS単独のプレバイオティク能より有意に高いことに留意する。
【0062】
表2では、それぞれのプレバイオティク作用尺度(MPE)値の計算によって明らかなように、個々の繊維及び繊維ブレンドと比較した本発明のPHGG/FOSブレンドのより広範な有益性が示されている。各値は、ヒト糞便細菌の存在下で0.25%、0.5%、及び1.0%(w/v)の基質を使用し、攪拌され、pHを制御された回分培養発酵に基づいている。
【0063】
【表2】

【0064】
表2は、基質1%でFOSが、FOS:PHGGブレンドより大きなMPEを有していることを示すが、FOS単独のin vivoでの作用は、主に、その有益な作用が身体によって十分に活用できないと思われる小腸末端及び近位結腸で起こることに留意する。それと対照的に、FOS:PHGGブレンドのin vivoでの作用は、主に、結腸のより末端の部分で起こる。
【0065】
FOS及びPHGGのプレバイオティク能をin vitroで評価したとき、2種の繊維のブレンドは、どちらかの繊維単独の場合より大きいか又は等しい程度に、有益な細菌株であるビフィズス菌及び乳酸菌の成長を増強した。交差研究デザインを使用してプレバイオティク能を評価すると、1日当たり6.6gのFOS及び3.4gのPHGGの21日間の投与で、初期レベル又は21日のプラセボ期間を全うした人々に比べてビフィズス菌が有意に増加した。ビフィズス菌のレベルは、FOS及びPHGGブレンドの補給をやめた7日後には、治療前のレベルに戻っていた。有益な細菌の初期レベルが最低だった志願者が、最大の総増加を達成した。
【0066】
本発明によるFOS及びPHGGブレンドは、FOSのプレバイオティク活性をPHGGの高い酪酸産生能と組み合わせている。表3は、他の繊維と比較したこのブレンドの独特な属性を集約している。FOS及びPHGGの組合せは、SCFA、特に酪酸のレベルを増強し、強力なプレバイオティクの有益性を提供し、腸内の健康及び有益な細菌の成長を促進し、腸のより長い領域にわたって発酵活性を増加させる。したがって、FOS及びPHGGのブレンドは、各繊維の個々の作用を最大化し又は超越し、腸の健康及び機能のための最適な有益性を提供する。
【0067】
【表3】

【0068】
本発明のFOS/PHGGブレンドは、特に炎症性腸疾患(IBD)を患う個人に有益である。IBDは、腸、主として結腸の腸粘膜に損傷を与える。FOS/PHGGブレンドを投与すると、結腸内での可溶性繊維の発酵が増加し、結果としてSCFAの産生が増加する。酪酸は、PHGGの発酵で主として産生するSCFAであり、IBDによって損傷を受けた機能を回復し維持するために更なるエネルギーを必要とする結腸細胞にとって、酪酸が、好ましいエネルギー源であることは、十分に立証されている。可溶性繊維を組み合わせることによって、繊維が結腸内のより大きな表面積と接触し、発酵時間を延長する機会が増し、潰瘍性結腸炎で損傷された組織を主目標として結腸末端部に、より多量の酪酸が到達できる。可溶性で異なった細菌によって選択的に発酵される繊維であるFOS及びPHGGを組み合わせることにより、酪酸産生及びプレバイオティク作用の両方が、増加する。
【0069】
本発明のFOS/PHGGブレンドは、過敏性腸症候群(IBS)を有する個人にも同様に有益である。PHGGは、腸の自律運動を支援し、この疾病の特徴である便秘及び下痢の両方を緩和する。FOSは、プレバイオティク作用を与え、腸内細菌の健全な均衡を回復する。IBSを有する多くの個人は、この疾病に関連するいくつもの障害に導き得る大腸菌群の罹患率がより高いので、このことは、大いに有益である。
【0070】
その上、可溶性繊維ブレンドを栄養処方に含めることは、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)の産生及び分泌を増加させることができる。GLP−2は、腸に特有のホルモンで、腸細胞の増殖及び分化を増加し、腸細胞のアポトーシスも減少させる。更に、GLP−2は、腸細胞中の特定のタンパク質の局在性及び存在量を増加し、腸内での栄養輸送を増加する。可溶性繊維、及び特にPHGGは、選択的に発酵を受け、L細胞(GLP−2を産生する細胞)に作用してGLP−2の産生及び分泌を増加すると考えられているSCFAである酪酸を産生する。GLP−2は、腸の炎症の低減において重要なホルモンである。したがって、PHGG等の繊維は、GLP−2の選択的な産生及び/又は分泌の潜在力を有し、腸管への抗炎症作用がある。
【0071】
したがって、本発明によるFOS及びPHGGのブレンドは、上記のように、IBD及びIBSに関連する症状を緩和するのに有効であり、これら及び他の疾病及び疾患を治療し及び/又は予防する可能性もある。
【0072】
本発明の様々な態様についての前述の説明は、例示と説明のために示した。完全に示す意図も、本発明を開示した厳密な形態に限定しようとする意図もなく、明らかに多くの変更形態及び変形形態が可能である。当業者には明白と思われるこのような変更形態及び変形形態を、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲に含めるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の可溶性繊維と、
第2の可溶性繊維と、
を含み、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維の個々のプレバイオティク能より大きいプレバイオティク能を示す、
食物繊維製剤。
【請求項2】
第1の可溶性繊維が、部分加水分解グアーガム(PHGG)を含み、第2の可溶性繊維が、フルクトオリゴ糖(FOS)を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項3】
前記FOSが、以下の少なくとも1つ:スクロースからの合成、イヌリンの加水分解、チコリーの根からの抽出、キクイモからの抽出、及びアガーベからの抽出から製造される、請求項2に記載の食物繊維製剤。
【請求項4】
前記PHGG及びFOSが、約2対1の比率で含まれる、請求項2に記載の食物繊維製剤。
【請求項5】
前記プレバイオティク能が、ビフィズス菌、乳酸菌、及びユーバクテリウムからなる群から選択された少なくとも1種の細菌種の腸内集団を増加させる能力を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項6】
前記プレバイオティク能が、バクテリオード、クロストリジウム、大腸菌、及び硫酸塩還元細菌からなる群から選択された少なくとも1種の細菌種の腸内集団を減少させる能力を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項7】
前記プレバイオティク能が、腸内発酵時間を増加させる能力を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項8】
前記プレバイオティク能が、短鎖脂肪酸(SCFA)の産生を増加する能力を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項9】
前記SCFAが、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸の少なくとも1種を含む、請求項9に記載の食物繊維製剤。
【請求項10】
更にプロバイオティクを含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項11】
前記プロバイオティクが、ビフィズス菌、乳酸菌、及びユーバクテリウムからなる群から選択される、請求項10に記載の食物繊維製剤。
【請求項12】
前記プレバイオティク能が、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維の少なくとも1種の一部分を未発酵で結腸中央部まで通過させる能力を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項13】
前記プレバイオティク能が、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維の少なくとも1種の一部分を未発酵で遠位結腸まで通過させる能力を含む、請求項12に記載の食物繊維製剤。
【請求項14】
前記プレバイオティク能が、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維の少なくとも1種が、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維を別々に摂取する場合より大きな結腸表面積に接触する能力を含む、請求項1に記載の食物繊維製剤。
【請求項15】
食物繊維製剤で個人を治療する方法であって、
第1の可溶性繊維と、
第2の可溶性繊維と、
を含み、第1の可溶性繊維及び第2の可溶性繊維の個々のプレバイオティク能より大きいプレバイオティク能を示す、
食物繊維製剤の有効量を前記個人に投与すること、
を含む方法。
【請求項16】
前記有効量が、前記個人における疾病及び病状の少なくとも1つを治療するのに十分な量である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記個人が、コレラ、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、下痢、便秘、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、心臓病、及び卒中の少なくとも1つを患っている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記個人が、外科手術からの回復途上にある、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記個人が、抗生物質で治療を受けている最中である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記個人が、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、下痢、便秘、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、心臓病、及び卒中の少なくとも1つの危険性がある、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
食物繊維製剤を使用してコレラに罹っている個人を治療する方法であって、
少なくとも1種の可溶性食物繊維製剤の有効量を前記個人に投与すること、
を含む方法。
【請求項22】
前記可溶性繊維が、ペクチン、ガム、幾種類かのヘミセルロース、サイリウム、グアーガム、フルクトオリゴ糖(FOS)、イヌリン、及びガラクトオリゴ糖(GOS)からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記可溶性繊維が、グアーガム、フルクトオリゴ糖(FOS)、及びイヌリンからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
グアーガムが部分加水分解グアーガムである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種の可溶性繊維が、2種の可溶性繊維である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
可溶性繊維が、グアーガム、フルクトオリゴ糖(FOS)、及びイヌリンからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
グアーガムが、部分加水分解グアーガムである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
可溶性繊維が、グアーガム及びイヌリンである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
可溶性繊維が、グアーガム及びフルクトオリゴ糖(FOS)である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記有効量が、前記個人における疾病及び病状の少なくとも1つを治療するのに十分な量である、請求項21及び25に記載の方法。
【請求項31】
前記個人が、抗生物質で治療されている、請求項21又は25に記載の方法。

【公開番号】特開2012−111771(P2012−111771A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−15438(P2012−15438)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2008−534794(P2008−534794)の分割
【原出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】