説明

飽和脂肪族ケトンの製造方法

【課題】オレフィン系不飽和ケトンの水素化による飽和脂肪族ケトンの製造方法において、触媒の寿命、空時収量、触媒の操作性、および選択性が改善された方法を提供する。
【解決手段】無溶媒下で、ZrO,TiO,活性カーボン,SiO,およびAlから選択される担体上に付着した貴金属を含有する触媒の存在下で、連続固定床方式でオレフィン系不飽和ケトンを水素化する工程を含み、貴金属量が0.1〜5%(wt./wt.)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、飽和脂肪族ケトンの製造、特に、プソイドイオノン(6,10−ジメチル−ウンデカ−3,5,9−トリエン−2−オン)から、またはゲラニルアセトン(6,10−ジメチル−ウンデカ−5,9−ジエン−2−オン)からの6,10−ジメチル−ウンデカン−2−オン(ヘキサヒドロプソイドイオノン)の合成、および6,10,14−トリメチル−ペンタデカ−4,5−ジエン−2−オンからの6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの合成の方法、に関する。例えば、ヘキサヒドロプソイドイオノンおよび6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンといった飽和脂肪族ケトンは、例えば、ビタミンEおよびKの合成(ウルマン工業化学百科事典CD−ROM・第5版、4.11章「ビタミン」(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed on CD− rom, Vitamins, chapter 4.11))における主な構成単位であるイソフィトールの製造において、公知の中間体である。
【0002】
プソイドイオノンは、シトラール、またはデヒドロリナロールから、アルドール反応、キャロル(Carroll)反応またはソーシー・マーベット(Saucy−Marbet)反応によって合成することができる。こうしたC延長の詳細については、ウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,I.c.)を参照のこと。ヘキサヒドロプソイドイオノンは、C延長およびC延長の反応系列によってイソフィトールに転化することができ、その後水素化して、次いで、2,3,6−トリメチルヒドロキノンを用いた縮合反応によってビタミンEに転化することができる(ウルマン工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)、A27巻(1996年)p.484を参照)。6,10,14−トリメチルペンタデカン−2−オンの化合物は、エチニル化およびリンドラー型水素化、またはビニルグリニャール試薬を用いた反応によってイソフィトールに転化することができる(国際公開第2004/018400号パンフレットおよび国際公開第03/029175号パンフレットを参照)。
【0003】
公知の水素化手順、例えば、(例えば、国際公開第2004/007413号パンフレットに開示されているような)プソイドイオノンの水素化によるヘキサヒドロプソイドイオノンの製造の手順には、触媒の寿命が短い、空時収量が低い、触媒の分離が必要、触媒の取り扱いが困難、および選択性が低いなどの欠点がある。
【0004】
本発明は、新規で効率の良い飽和脂肪族ケトンの製造方法であって、無溶媒下で、TiO、活性C、ZrO、SiO、および/またはAlから選択される担体上に付着した貴金属を含有する触媒の存在下で、連続方式でオレフィン系不飽和ケトンを水素化する工程を含み、貴金属量が0.1〜約5%(wt./wt.)、好ましくは、約0.2〜0.7%(wt./wt.)である、飽和脂肪族ケトンの製造方法を提供する。本発明の方法に使用される貴金属としては、パラジウムが好適であるが、これまで水素化工程に使用されていた他の貴金属、例えば白金を用いてもよい。
【0005】
貴金属に対する担体としては、固定床水素化工程にこれまで使用されていた、任意のTiO、活性C、ZrO、SiO、またはAl担体でもよい。好適な担体としては、SiO、例えば、沈降シリカゲル、すなわち熱分解性シリカ(デグサ(degussa)製の商品名「アエロリスト(Aerolyst)(登録商標)」)と、TiO、例えば、沈降または発熱性TiO(デグサ(DEGUSSA)製の商品名「アエロリスト(Aerolyst)(登録商標)」など)と、細孔容積0.1〜1.5ml/g、好ましくは0.2〜1.2ml/g、および表面積10〜400m/g、好ましくは30〜200m/gのAlとが挙げられる。好ましくは、触媒、すなわち、貴金属を担持した担体は、無担持の担体物質内に全体比約1対1容量部で分散される。より好ましくは、反応器において、反応物の流れに沿って入り口から出口に向けて貴金属の濃度が上昇するように、触媒が無担持の担体物質内に分散されている。したがって、例えば、この反応器において、入り口部では、触媒1容量部と無担持の担体物質2容量部との混合物をその体積の3分の1まで充填し、中間部分では、触媒2容量部と無担持の担体物質1容量部との混合物を充填し、出口部では、触媒のみをその体積の3分の1まで充填してもよい。無担持の担体物質は、貴金属がその上に付着した担体と同じであってもよく、または、反応条件下で不活性な他の任意の担体物質、例えば、グラファイト、TiO、SiO、Al、ZrOなどの無機材料であってもよい。
【0006】
本発明による水素化は、高圧下、例えば、約50〜約200バール、特に約90〜約160バール、最も好ましくは約120〜155バールの圧力で、好適に実施される。反応温度は、約70℃〜約250℃、好ましくは約100℃〜約220℃、より好ましくは約120℃〜210℃であり、反応器の入り口部ではより高い温度になっている。この水素化は、化学量的に過剰な水素、例えば、理論上必要な水素の2〜10倍、好適には4〜6倍の水素を使用して、好適に実施される。さらに、水素化は、1〜20、好ましくは3〜15[触媒1kg当たりの毎時供給量kg](以下、WHSVとする)のマスフローで好適に実施される。触媒寿命は、活性および選択性を損なわずに3000時間超である。
【0007】
本発明による水素化工程は、プソイドイオノン、あるいはゲラニルアセトンまたはジヒドロゲラニルアセトンを水素化してヘキサヒドロプソイドイオノンを生成、および6,10,14−トリメチル−ペンタデカ−4,5−ジエン−2−オンを水素化して6,10,14−トリメチル−ペンタデカン−2−オンを生成することが特に重要である。本発明による不飽和脂肪族ケトンの水素化の別の例として、ジヒドロリナロールを水素化してテトラヒドロリナロールを生成するものがある。
【実施例】
【0008】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【0009】
実施例1
プソイドイオノンの水素化を243ml容の固定床反応器内で実施し、熱電対を備えた加熱/冷却ジャケットをこの反応器の中央および反応器壁に置いた。反応器の入り口および出口部に圧力制御バルブを設けた。反応器には、触媒(0.5%(wt./wt.)Pd/SiO)162ml(73g)および担体物質81mlを充填し、反応器の下3分の1(入り口部)を触媒1容量部および担体2容量部で充填し、反応器の中央3分の1を触媒2容量部および担体1容量部で充填し、反応器の上3分の1(出口部)を触媒のみで充填した。まず、反応器を窒素にてフラッシングした。反応器の入り口部の温度を80℃に調節し、スタティックミキサーを介して、基質、プソイドイオノンを毎時0.6kgで、および水素を毎時900NL(標準リットル)で、独立した貯蔵タンクから反応器の入り口部に供給した。アップフローモードで水素化を実施した。マスフローは触媒1kg当たりの毎時供給量8.3kgで、圧力は150バールに設定した。反応器内の最高温度勾配は210℃から170℃で、反応器出口の温度は80℃に調節した。反応生成物を、液体水素化生成物のヘキサヒドロプソイドイオノンから過剰水素を分離するセパレーター内へ圧力バルブを通して放出した。この反応を250時間進行させ、(ガスクロマトグラフィー(GC)による測定の際に)ヘキサヒドロプソイドイオノンの収率はその時間中94〜96%の間で変動した。
【0010】
実施例2
実施例1に記載した装置および手順を用いるが、0.5%(wt./wt.)Pd/Al触媒(デグサ(DEGUSSA)、E257 H/D)を使用して、プソイドイオノンを水素化してヘキサヒドロプソイドイオノンを生成した。本プロセスパラメータを以下に挙げる。
【0011】
【表1】



【0012】
この反応を3000時間進行させ、(GCによる測定の際に)ヘキサヒドロプソイドイオノンの収率はその時間中94.6〜96%の間で変動した。
【0013】
実施例3
実施例1に記載した装置および手順を用いるが、0.5%(wt./wt.)Pd/Al触媒(デグサ(DEGUSSA)、E257 H/D)を使用して、6,10−ジメチル−ウンデカ−4,5,9−トリエン−2−オン(DUTO)を水素化してヘキサヒドロプソイドイオノンを生成した。本プロセスパラメータを以下に挙げる。
【0014】
【表2】



【0015】
この反応を600時間進行させ、(GCによる測定の際に)ヘキサヒドロプソイドイオノンの収率はその時間中92〜94%の間で変動した。
【0016】
実施例4
実施例1に記載した手順および装置は同様であるが、0.5%(wt./wt.)Pd/Al触媒(デグサ(DEGUSSA)、E257 H/D)を使用して、6,10,14−トリメチル−ペンタデカ−4,5−ジエン−2−オンを水素化して6,10,14−トリメチル−ペンタデカン−2−オン(ファイトン)(phytone)を生成した。本プロセスパラメータを以下に挙げる。
【0017】
【表3】



【0018】
この反応を350時間進行させ、(GCによる測定のように)ファイトンの収率はその時間中92〜94%の間で変動した。
【0019】
実施例5
実施例1に記載した手順および装置は同様であるが、0.5%(wt./wt.)Pd/Al触媒(デグサ(DEGUSSA)、E257 H/D)を使用して、ゲラニルアセトンを水素化してヘキサヒドロプソイドイオノンを生成した。本プロセスパラメータを以下に挙げる。
【0020】
【表4】



【0021】
この反応を21日間進行させ、(GCによる測定の際に)ヘキサヒドロプソイドイオノンの収率はその期間中85〜97%の間で変動した。ゲラニルアセトンの転化は100%であった。部分的に水素化した中間体は形成されなかった。
【0022】
実施例6
50および100バールの圧力を使用して実施例5の工程を繰り返した。圧力を低下させることで、転化および収率に影響はなかった。
【0023】
実施例7
を450NL/時、すなわち水素供給量の半分を使用して実施例6の工程を繰り返した。転化および収率に対して何ら影響は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和脂肪族ケトンの製造方法であって、無溶媒下で、ZrO、TiO、活性カーボン、SiO、およびAlから選択される担体上に付着した貴金属を含有する触媒の存在下で、連続固定床方式でオレフィン系不飽和ケトンを水素化する工程を含み、貴金属量が0.1〜5%(wt./wt.)である、飽和脂肪族ケトンの製造方法。
【請求項2】
前記貴金属がパラジウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記担体上に付着した前記貴金属の量が0.2〜0.7%(wt./wt.)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が不活性な担体物質内に分散される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
不活性担体物質に対する触媒の比が約1対1容量部である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オレフィン系不飽和ケトンがアレン系不飽和ケトンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アレン系不飽和ケトンが、6,10−ジメチル−ウンデカ−4,5,9−トリエン−2−オンまたは6,10,14−トリメチル−ペンタデカ−4,5−ジエン−2−オンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オレフィン系不飽和ケトンがプソイドイオノンまたはゲラニルアセトンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化が、約50〜約200バールおよび約70℃〜約250℃で実施される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
流量が1〜20である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
マスフローが、触媒1kg当たりの毎時供給量3〜15kgである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応器において、反応物の流れに沿って入り口から出口に向けて貴金属の濃度が上昇するように、前記触媒が無担持の担体物質内に分散されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
特に実施例を参照した、実質的に請求項1〜12のいずれか一項に記載のような飽和脂肪族ケトンの製造方法。

【公開番号】特開2012−153693(P2012−153693A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40552(P2012−40552)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2007−531635(P2007−531635)の分割
【原出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】