説明

駆虫配合剤

【課題】哺乳動物における寄生虫侵襲の処置方法、および駆虫剤組成物を提供する。
【解決手段】哺乳動物における寄生虫侵襲の処置方法であって、該哺乳動物に(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび(b)アバメクチンの有効量を同時に、または連続して投与することからなる方法及び、(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび(b)アバメクチンを含有してなる駆虫剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−デスオキソパラヘルクアミドとアバメクチンの配合剤を使用する寄生虫侵襲、特に蠕虫侵襲の処置方法、および有効成分としてこれらの薬剤を含有してなる新規駆虫剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび動物集団における寄生虫感染症の制御は、今なお重要な世界的努力目標である。原因生物は、線虫、条虫および吸虫綱もしくは原生動物門内部寄生性の一員、または節足動物門外部寄生性の一員として分別される。前者は、胃、腸管、リンパ系、組織、肝臓、肺、心臓および脳の感染を含む。その例は、旋毛虫症、リンパ系フィラリア症、回旋糸状虫症、住血吸虫症、リーシュマニア症、トリパノソーマ病、ランプルべん毛虫症、胞子虫症およびマラリアなどである。
【0003】
後者の外部寄生虫は、シラミ、マダニ、コナダニ、サシバエ、ノミおよび蚊などである。これらはしばしばヒトまたは動物宿主へ伝播する内部寄生虫に、媒介生物および中間宿主として働く。
【0004】
特定の寄生蠕虫症は既知の薬剤により治療し得るが、耐性という進化の進展が次世代の駆虫剤の効力改善のために、さらなる研究を必要とする。
【0005】
内部および外部寄生虫の制御は、ヒトおよび動物の健康増進法の重要な側面としてこれまで認識されてきている。伝統的な処置法は経口投与または局所投与であったが、事実かかる処置法は今なお広く使用されている。しかし、より最近の研究の目標は、経口または非経口的に動物に投与可能であり、処置した動物の血液に取り込まれたときに、個々の寄生虫を殺すことにより、内部および外部寄生虫集団を制御する化合物に向けられている。
【0006】
多くの外部寄生虫駆除剤および内部寄生虫駆除剤が使用されているが、これらは様々な問題、例えば、活性スペクトルが限定されていること、処置を繰り返す必要のあること、また多くの場合に、寄生虫による耐性などの問題を抱えている。従って、新規の内部および外部寄生虫駆除処置法の開発が、広範囲の寄生虫の安全かつ有効な制御を確保するために必須である。
【0007】
公開された特許文献1は、スピロジオキセピノインドール、特にパラヘルクアミド(paraherquamide)またはマルクフォルチン(marcfortine)誘導体もしくは類似体、および大環状ラクトン、特にアベルメクチン(avermectin)またはミルベマイシン(milbemycin)誘導体もしくは類似体を含有してなる駆虫剤組成物について考察している。
【0008】
抵抗傾向の少ない薬剤、または広範囲の寄生虫に対して活性な薬剤の配合剤が、特に望まれる。
【0009】
【特許文献1】国際特許出願WO2001/076370号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、大環状ラクトンと他の分類の駆虫剤に典型的に抵抗性である寄生虫に対して、広範囲に使用し得る哺乳動物における寄生虫疾患を予防または処置する方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、新規駆虫剤組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、本発明の新規組成物を使用する医薬の製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の実施態様において、本発明は哺乳動物における寄生虫侵襲の処置方法であって、該哺乳動物に有効量の(a)2−デスオキソパラヘルクアミド(2-desoxoparaherquamide)および(b)アバメクチン(abamectin)を、同時にまたは連続的に投与する工程からなることを特徴とする方法を提供する。
【0012】
別の実施態様において、本発明は(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび(b)アバメクチンを含有してなる駆虫剤組成物を提供する。該組成物は選択肢としてさらに医薬的に許容される担体を含有し得る。
【0013】
別の実施態様において、本発明は医薬として使用するための上記の組成物を提供する。
【0014】
別の実施態様において、本発明は哺乳動物における寄生虫疾患の処置または予防のための医薬を調製するために、上記の組成物の使用を提供する。
【0015】
別の実施態様において、本発明は、(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび選択肢として医薬的に許容される担体を含有してなる組成物;および(b)アバメクチンおよび選択肢として医薬的に許容される担体;を含有してなる、哺乳動物に連続して投与するためのキットを提供する。
【0016】
別の実施態様において、本発明は、毛様線虫の集団における大環状ラクトン耐性個体の頻度を低減する方法であって、かかる集団を有効量の(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび(b)アバメクチンにより処置する工程からなることを特徴とする方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は宿主哺乳動物に対する寄生虫の攻撃を予防および処置することを目的とし、寄生生物を制御する新しい手段を提供する。とりわけ、本発明は2−デスオキソパラヘルクアミドおよびアバメクチンを使用することを特徴とするかかる処置方法を提供する。
【0018】
哺乳動物はヒトであっても、または非ヒト哺乳動物であってもよい。非ヒト哺乳動物は、食用動物、農耕用動物およびコンパニオン動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、シカ、イヌおよびネコである。本処置方法は特にヒツジとヤギに、取分けヒツジに適用し得る。
【0019】
本処置方法は広範囲の寄生生物の処置に利用し得る。さらに留意すべきことは、既存の寄生虫感染症をもつ動物において、既存の寄生虫を除去することにより処置が達成されることである。
【0020】
代表的な寄生生物は以下のとおりである:
線形動物門:例えば、鉤虫(Ancylostoma)、住血線虫(Angiostrongylus)、アニサキス(Anisakis)、回虫(Ascaris)、糸状虫(Brugia)、ブノストムム鉤虫(Bunostomum)、クーペリア線虫(Cooperia)、シャベルチア線虫(Chabertia)、シアトストムム(Cyathostomum)、シリコシクラス(Cylicocyclus)、デクチオカウラス(Dictyocaulus(肺虫))、ジペタロネーマ糸状虫(Dipetalonema)、イヌ糸状虫(Dirofilaria(心糸状虫))、ドラクンクルス(Dracunculus)、エラエオホーラ(Elaeophora)、ガイゲリア(Gaigeria)、グロボセファルス・ウロスブラツス鉤虫(Globocephalus urosubulatus)、捻転胃中属(Haemonchus)、ブタ肺虫属(Metastrongylus(有毛肺虫))、ムエレリイウ(Muellerius(有毛肺虫))、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、ネマトディルス(Nematodirus)、腸結節虫属(Oesophagostomum)、オンコセルカ属(Onchocerca)、オステルタジア属(Ostertagia)、パラスカリス(Parascaris)、プロトストロンギルス(Protostrongylus(肺虫))、セタリア属(Setaria)、ステファノフィラリア(Stephanofilaria)、シンガムス属(Syngamus)、テラドールサジア(Teladorsagia)、イヌ小回虫(Toxascaris)、トキソカラ属(Toxocara)、旋毛虫属(Trichinella)、毛様線虫俗(Trichostrongylus)、鞭虫属(Trichuris)、狭頭鉤虫(Uncinaria stenocephala)、およびバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti);
【0021】
節足動物門:チョウ(Argulus)およびウオジラミ(Caligus)などの甲殻類(Crustacea);アメリカ産マダニ(Amblyomma americanum(一つ星ダニ))、メキシコ産地方マダニ(Amblyomma maculatum(湾岸ダニ))、ペルシャダニ(Argas persicus(家禽ダニ))、オウシマダニ(Boophilus microplus(ウシダニ))、ウシニキビダニ(Demodex bovie(cattle follicle mite))、イヌニキビダニ(Demodex canis(dog follicle mite))、アンダーソンカクマダニ(Dermacentor andersoni(ロッキー山紅班熱マダニ)、デルマセンター・バリアビリス(Dermacentor variabilis(アメリカイヌダニ))、ワクモ(Dermanyssus gallinae(ニワトリダニ))、イクソデス・リシヌス(Ixodes ricinus(普通ヒツジダニ))、トリヒゼンダニ属(Knemidokoptes gallinae(羽根むしりダニ))、トリアシヒゼンダニ(Knemidokoptes mutans(鱗状脚ダニ))、オトビウス・メギニーニ(Otobius megnini(ミミダニ))、ウマヒゼンダニ属(Psoroptes equi(疥癬ダニ))、ヒツジヒゼンダニ(Psoroptes ovis(疥癬ダニ))、クリイロコイマダニ(Rhipicephalus sanguineus(褐色イヌダニ))、およびヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei(疥癬ダニ)などのクモ形綱(Arachnida);やぶ蚊(Aedes(蚊))、ハマダラカ属(Anopheles(蚊))、イエカ属(Culex(蚊))、ハボシカ属(Culiseta(蚊))、ウシハジラミ(Bovicola bovis(cattle biting louse))、アメリカオビキンバエ(Callitroga hominivorax(クロバエ))、メクラアブ属(Chrysops spp (メクラアブ))、トコジラミ(Cimex lectularius(トコジラミ))、キュリオコイデス属(Culicoides spp(ユスリカ、チョウバエ、ヌカカ、またはヌカカ(no-see-ums)))、ヒツジハジラミ(Damalinia ovis)、デルマオビア属(Dermaobia spp.(ウシバエ))、アトアカウマバエ(Gasterophilus haemorrhoidalis(nose hot fly))、胃食道ウマバエ(Gasterophilus intestinalis(common horse hot fly))、顎ウマバエ(Gasterophilus nasalis(chin fly))、ツェツェバエ属(Glossina spp.(tsetse fly))、ノサシバエ(Haematobia irritans(バッファローバエ))、ウマジラミ(Haematopinus asini(horse sucking louse))、ウシジラミ(Haematopinus eurysternus(short nosed cattle louse))、ヒツジ体幹ジラミ(Haematopinus ovilius(体躯ジラミ))、ブタジラミ(Haematopinus suis(hog louse))、刺咬性イエバエ(Hydrotaea irritans(ヘッドフライ))、ウシヒフバエ(Hypoderma bovis(爆弾バエ))、ウシヒフバエ(Hypoderma lineatum(カガトウシバエ))、ヒツジ体幹寄生ホソジラミ(Linognathus ovillus(体躯ジラミ))、ヒツジ脚部寄生ホソジラミ(Linognathus pedalis(脚部シラミ))、ウシホソジラミ(Linognathus vituli(長鼻ウシジラミ)、キンバエ属(Lucilia spp.(蛆虫ハエ))、ヒツジシラミバエ(Melophagus ovinus(sheep ked))、ヒツジバエ(Oestrus ovis(nose hot fly))、黒キンバエ(Phormia regina(クロバエ科のハエ))、ウシ寄生吸血ジラミ(Solenopotes capillatus(小型ブルーウシジラミ))などの昆虫(Insecta)。
【0022】
該処置方法は、線形動物を含む蠕虫寄生の制御に特に有用である。
2−デスオキソパラヘルクアミド(別名、2−デオキシパラヘルクアミドとしても知られる)は、米国特許第5,750,695号明細書に開示されており、その合成については当該特許の実施例37に記載されている。2−デスオキソパラヘルクアミドの構造式を式(I)に示す。
【0023】
【化1】

【0024】
アバメクチン(別名、アベルメクチンBとしても知られる)は、米国特許第4,310,519号明細書に開示されている。これはアベルメクチンB1a(式(IIa))およびアベルメクチンB1b(式(IIb))の混合物である;その場合の混合物の少なくとも80%はB1a成分である。
【0025】
【化2】

【0026】
この2種の成分は同時にまたは連続的に投与し得る。本明細書にて使用する場合、同時投与とは、宿主動物に対し、両方の成分を単一の動作で投与することを意味し、その場合、2種の成分は単一の投与形態、例えば、単一の経口溶液もしくは懸濁液、錠剤または流動溶液中に取り込ませることが必要である。
【0027】
連続投与は、各成分の投与を別個の動作とするが、2つの動作がつながっていることを意味する。例えば、1成分を含有してなる錠剤と、第二成分を含有してなる第二の錠剤を投与することは、たとえその2つの錠剤を宿主動物に同時に投与したとしても、連続投与であると考える。例えば、1成分を含有してなる液状製剤と、第二成分を含有してなる第二の液状製剤を投与することは、もしその製剤を宿主動物に同時に投与するなら、またはもし一方の製剤の投与後直ちに、または短時間内に他の製剤を宿主動物に投与するなら、それは連続投与であると考える。
便利という面では、同時投与が好適であり得る。
【0028】
2種の薬剤の正確な投与量と投与回数は、多くのファクター、例えば、(限定されるものではないが)特定患者(ヒトまたは動物)の処置すべき特定の症状の重篤度、年齢、体重、および全身の生理的条件、および患者が受けている可能性のある他の投薬などによって左右される。これらのファクターは当業者にとって周知であり、正確な投与量と投与回数は、患者の血液中の本発明組成物濃度および処置すべき特定症状に対する患者の応答を測定することにより、より正確に決定し得る。
【0029】
一般に、投与すべき2−デスオキソパラヘルクアミド(2−DOPH)の量は、動物の体重1kgあたり約0.05ないし20mgの範囲であり、かかる総投与量を一度にまたは1〜5日などの比較的短い期間で分割して投与する。体重1kgあたり約0.1ないし10.0mgを動物に単回で投与することにより、すぐれた寄生虫制御が得られる。より具体的には、投与量は単回で体重1kgあたり約0.25ないし2mgである。最も具体的には、投与量は単回で体重1kgあたり約2mgである。
【0030】
投与すべきアバメクチンの量は、動物の体重1kgあたり約0.001ないし10mgの範囲であり、かかる総投与量を一度にまたは1〜5日などの比較的短い期間で分割して投与する。体重1kgあたり約0.025ないし0.5mgを動物に単回で投与することにより、すぐれた寄生虫制御が得られる。より具体的には、投与量は単回で体重1kgあたり約0.025ないし0.2mgである;最も具体的には、投与量は単回で体重1kgあたり約0.2mgである。反復処置は再感染に対抗する必要のある場合に施され、それは寄生虫の種類および採用される管理技法に左右される。これらの物質を動物に投与する技法は、畜産業の当業者にとって周知である。
【0031】
該薬剤は適切な経路、例えば、経口、非経口または局所投与などにより投与し得る。2種の薬剤を連続的に投与する場合、それらは異なる経路で投与してもよい。該薬剤は一般にさらに適切な添加剤を含有してなる製剤に取り込ませる;その場合、該製剤は企図した投与経路に適合させる。2種の薬剤を同時に投与する場合、それらは単一の製剤中に取り込ませる。
【0032】
経口投与用の薬剤は、例示として、溶液、懸濁液、カプセル、大丸薬、錠剤または医療用食餌添加剤などの投与形状で投与し得る。固体投与形状(すなわち、非液状)は、機能的添加剤と混合した有効成分を含有してなる。これらの添加剤は、カプセル、錠剤、ボーラスまたは医療用食餌添加剤を製造する当業者に周知である。これらの固体投与形状は、製造すべき投与形状によって異なる方法により調製される。製剤製造の当業者はその手法に馴染んでいる。
【0033】
カプセル剤は一般に有効成分を、充填剤/増量剤粉末(例えば、ラクトース、微結晶セルロース)および潜在的な他の添加剤、例えば、粉末の流動を目的とする流動化剤/滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸)および/またはカプセルの崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプン、デンプン)などと混合することにより調製する。有効成分を含有するこの流動性粉末は、次いで、硬殻カプセルに充填する。別のタイプのカプセルは軟ゼラチンカプセル(すなわち、ソフトゲル)という。これらは有効成分と液状担体、例えば、油(例えば、コーンオイル、ゴマ油、分画ヤシ油)と混合し、次いで、軟カプセルに充填することにより調製する。
【0034】
錠剤は使用し得る第二のタイプの固体投与形状である。錠剤は添加剤として希釈剤/充填剤(ラクトース、リン酸二カルシウム、微結晶セルロース)、崩壊剤(デンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、結合剤(ポリビニルピロリドン、メチルセルロース)および滑沢剤/流動化剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム)を使用する。錠剤を製造する3つの主要な方法、すなわち、直接圧縮法、乾燥顆粒化法および湿潤顆粒化法が利用される。直接圧縮法では、すべての添加剤および有効成分を一緒に混合し、均一な混合物を製造する。次いで、この混合粉末を一定量の粉末の圧縮により錠剤を製造する製錠機に供給して、個々の単位錠剤とする。乾燥顆粒化は添加剤を有効成分と混合し、次いでこの均一な混合物をローラーコンパクターに移すことからなる。ローラーコンパクターは大きな圧縮体またはリボンを製造し、それを製粉機で小さなサイズとする。これらの小さな顆粒は流動性に富み、製錠機に入れて錠剤とすることのできるものである。湿潤顆粒化法は活性因子と添加剤を混合し、そこにスプレーまたは混合により液体(水、アルコール)を加えることからなる。この液体はしばしばまた結合剤を含有する。この固体と液体の混合物はスクリーンで押し出し、顆粒として、伝統的な顆粒化工程により乾燥する。または流動床乾燥機を使用する場合、顆粒化は流動床乾燥機中で乾燥する。これらの顆粒は、要すれば、製粉機でさらに小さなサイズとし、次いで、滑沢剤と混合し、製錠機に入れて錠剤とする。
【0035】
ボーラスは別の有力な投与形態である。本特許でのボーラスは、大型動物への投与を企図して、上記の方法または略同様の方式で製造した大型の錠剤を意味する。または動物に経口投与する大きな固体投与形状でもよく、通常の錠剤とは異なり得る。
【0036】
固体の食餌添加剤は別の有力な投与形態である。これらの産物は活性剤と適切な食餌用担体(籾殻、ダイズ鞘、リン酸二カルシウム)とを混合して製造し、時に予混合体と呼称される医療用タイプA物品とする。多くの場合、粉化を最小とするために鉱油も含める。これらの医療用タイプA物品または食餌用添加物は、動物が消費する食餌にそれを加えることでさらに希釈する。これらの食餌添加物の別の変形は、活性剤を消費する動物がなめることのできる薬物含有食餌ブロックとして形成する。
【0037】
より好ましくは、経口投与用液状製剤が考慮される。従って、薬剤は適切な水性または非水性液体媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンとして製剤化し得る。非水性媒体は、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、グリセロール・フォーマル、トリアセチン、プロピレングリコール、n−メチルピロリドンおよび種々の油(例えば、落花生油、鉱油、オリーブ油、分画ヤシ油、ヒマワリ油、ダイズ油、コーンオイル)などである。ときたま選択される油は中鎖トリグリセリドと呼称され、商品名はミグリオール(Miglyol;登録商標)810/820またはカプテックス(Captex;登録商標)355である。別の選択液体はプロピレングリコールのエステル、例えば、ジカプリル酸プロピレングリコール(ミグリオール(Miglycol;登録商標)840)である。これらの非水性媒体は、微生物保存剤(例えば、アルコール)および化学的安定化剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン、ビタミンE)を含有し得る。水性媒体は、ある種の薬剤、例えば、芳香増強剤(果実芳香剤、スクロース、グルコース)、微生物保存剤(ベンジルアルコール、安息香酸、塩化ベンザルコニウム、バッファー(クエン酸塩、リン酸塩)またはpH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム)などを含む水である。これらの液体投与形状は、活性剤を担体液状媒体に混合分散または溶解することにより調製し、懸濁液または溶液とする。混和可能な液体は、併用して共溶媒とし、担体用媒体として作用させ得る。一部の事例において、非混和性液体は、要すれば適切な乳化剤(例えば、レシチン)と組合わせて、マイクロエマルジョンまたはエマルジョンとすることができる。
【0038】
非経口投与の例は、筋肉内、腹腔内、静脈内または皮下注射であり、有効成分を液体担体媒体またはインプラントに溶解または分散して体躯に注射することである。液体を用いる非経口投与の場合、活性物質は水性または非水性のいずれかである許容される媒体と適宜混合する。インプラントによる非経口投与の場合、活性物質は非経口的に投与される固体または液体のインプラントに製剤化する。非経口水性投与形状は、要すれば、バッファー(例えば、クエン酸塩、リン酸塩)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム)、微生物保存剤(例えば、ベンジルアルコール、安息香酸、塩化ベンザルコニウム)および化学的安定性保存剤(例えば、没食子酸プロピル、アスコルビン酸などの抗酸化剤)などと水から構成される。非経口非水性投与形状は、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、グリセロール・フォーマル、トリアセチン、n−メチルピロリドン、2−ピロリドンおよび種々の油類(例えば、落花生油、鉱油、オリーブ油、分画ヤシ油、ヒマワリ油、ダイズ油、コーンオイル)などを使用し得る。これらの非水性非経口投与形状は、微生物保存剤および化学安定化剤をも含み得る。共溶媒(すなわち、2種以上の溶媒)も使用し得る。さらに、非混和性溶媒を組合わせたエマルジョンは、非経口投与用の別の投与形状であり得る。非経口投与形状は、活性剤とそれぞれの液体および他の添加剤とを混合することにより製造する。この混合は0.22ミクロンのフィルターを最終的に濾過する無菌条件下で実施して無菌産物とするか、または最終産物を最終無菌化(例えば、加熱、ガンマ線照射)に付して、注射用無菌産物を創製する。
【0039】
局所投与のためには、薬剤を、例えば、流動またはスポット投与形状として製剤化し得る。上記と同じ水性および非水性媒体が利用できる。粘度上昇添加剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ワックス)を利用して動物上での保留時間を増大させることもでき、または全身吸収を達成する目的で、侵入増強剤(例えば、アルコール)を含有させることもできる。局所投与形状は当業者周知の方法により製造する。簡単な方法で、活性剤を添加剤と共に溶媒と混合して溶液または懸濁液とし、次いでこれを動物に注ぐか、またはスポットすることができる。
【0040】
動物用の寄生虫駆除投与形状は、時にドレンチ製品と呼称される。「ドレンチ」投与形状は局所的に、または経口的に投与し得る。「ドレンチ(drench)」という用語は、その液状投与形状を動物の口/喉にすべて一度に投与するか、または動物の皮膚/毛皮に注ぐ(例えば、びしょ濡れにする)ために、そのように使用される。本特許はドレンチ製剤も包含するものとする。
【0041】
上記のような投与製剤(例えば、懸濁液、溶液、カプセル、錠剤、エマルジョン、ボーラスおよび固体食餌添加剤)は、その総重量および抗寄生虫剤の含量に関して、処置すべき宿主動物のタイプ、感染の重篤度とタイプ、および宿主の体重などのファクターに依存して、大きく変わり得る。
【0042】
薬剤は1種以上のさらなる活性剤と組合わせて使用することができる;これらの薬剤は投与用製剤の一部として含有させることができる。
【0043】
さらに適切な活性剤は、ベンズイミダゾール類(例えば、アルベンダゾール、カンベンダゾール、フェンベンダゾール、フルベンダゾール、メベンダゾール、オクスフェンダゾール、オキシベンダゾールおよびパーベンダゾールなど)、イミダゾチアゾール類(例えば、テトラミソール、レバミソールなど)、およびテトラヒドロピリミジン類(例えば、パモ酸ピランテル、オキサンテルまたはモランテルなど)、ニトロスキャナート、抗寄生虫オキサゾリン類(米国特許US5478855、US4639771およびドイツ特許DE19520936に開示されたものなど)、国際特許WO−9615121に開示されているジオキソモルホリン抗寄生虫剤の一般分類の誘導体および類似体、環状デプシペプチド(WO−9611945、WO−9319053、WO−9325543、欧州特許EP−626375、EP−382173、WO−9419334、EP−382173、およびEP−503538に開示されたもの、および特に、エモデプシドなど)、フィプロニル;ピレスロイド類;有機リン酸塩;昆虫成長調節剤(ルフェヌロンなど);エクダイソンアゴニスト(例えば、テブフェノジドなど);スピノシン類(スピノサドなど);アミドアセトニトリル類(WO−2005044784に開示されたものなど);ネオニコチノイド類(イミダクロプリドなど);有機リン酸エステル(トリクロルホン、ナプタロホス、ピラクロホスなど);サリチルアニリド類(クロサンテル、ニクロサミドなど);ベンゼンスルホンアミド(クロルスロンなど);およびピラジナイソキノリン(プラジカンテルなど)である。
【0044】
連続投与のためには、活性剤を含有してなる組成物を、簡便なキットの形状で提供し得る。かかるキットは2種以上の別個の医薬組成物(少なくともその1つは2−デスオキソパラヘルクアミドを含有し、一方はアバメクチンを含有する)、および当該組成物を別個に保持する手段、例えば、容器、分割ボトル、または分割ホイル包装、を有し得る。
【0045】
本発明のキットは、異なる投与形態、例えば、経口および非経口の形態で投与するために、または別個の組成物を異なる投与間隔で投与するために、または互いに対して別個の組成物を滴定するために特に適している。
【0046】
なんらかの特定の科学理論に囚われることは望まないが、信じられることは、2−デスオキソパラヘルクアミドとアバメクチンの配合剤が、毛様線虫集団における耐性タンパク質をエンコードする対立遺伝子の頻度を低下させ、結果として、毛様線虫制御のためのタンパク質を維持し、復位させ、利用することとなる。
【実施例1】
【0047】
該配合剤の有効性は、以下の治験において証明される。
54頭のヒツジ(子羊も含むメリノ)を9群の一つに無作為に割り振った。治験の41日前に、ヒツジをナフタラホスとレバミソールで処置し、すでに存在する寄生虫負荷を除去した。治験の27日前に糞便サンプルを採取し、分析して寄生虫の消失を確認した。24日前に、第一胃内注入により以下の寄生虫で感染させた:
【0048】
− 約3000個の第三期(L3)カービイ(Kirby)感受性株ネンテンイチュウ(Haemonchus
contortus)
− 約6000個の第三期(L3)マックマスター(MacMaster)感受性株テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)
− 約6000個の第三期(L3)マックマスター(MacMaster)感受性株ヘビジョウ毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)
【0049】
糞便サンプルを治験の1日前に採取し、卵数を測定した。
治験の0日に、ヒツジを以下のスケジュールに従って処置した。
【0050】
【表1】

【0051】
製剤F1は、2−DOPH(10mg/mL)、ABA(1.0mg/mL)、グリセロール・フォーマル(50mg/mL)、ブチルヒドロキシトルエン(0.5mg/mL)、およびトリアセチン(1096.8mg/mL)を含有してなる。
【0052】
製剤F2は、2−DOPH(10mg/mL)、ABA(1.0mg/mL)、グリセロール・フォーマル(50mg/mL)、ブチルヒドロキシトルエン(0.5mg/mL)、トリアセチン(400mg/mL)およびジカプリル酸プロピレングリコール(550.8mg/mL)を含有してなる。
【0053】
各群から2頭の動物を治験の各13、14および15日目に犠牲とした。胃腸器官および糞便サンプルを、残りの寄生虫侵襲の証明のために分析した。
【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【実施例2】
【0056】
ヒツジにおける胃腸内寄生虫耐性株の処置
ヒツジをテラドルサジア(オステルタジア)サークムシンクタ(Teladorsagia (Ostertagia) circumcincta)およびヘビジョウ毛様線虫(Trichostrongylus colubriformis)のL3幼生で人工感染させ、処置投与後に、処置群での総寄生虫計数を対照群と比較して有効性を測定した。上記寄生虫の耐性プロフィールを確認するために含めた市販入手可能な参照製品により、動物を下記概略どおりに処置した。
【0057】
【表4】

【0058】
研究動物はすべて処置後15日目に剖検した。皺胃と小腸を寄生虫回収および総寄生虫計数見積もりのために採取した。
ヒツジにおける、群相加平均総寄生虫計数、p−値、および3種の胃腸内線虫の耐性株に対する2−DOPH/アバメクチン、アルベンダゾール、レバミゾールおよびイベルメクチンの処置有効性(処置後15日目)
【0059】
【表5】

【0060】
本研究では、テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)に対するイベルメクチン(このものはアバメクチンと同じ化合物群である)の有効性は0%を示し、テラドルサジア・サークムシンクタ(Teladorsagia circumcincta)に対する2−DOPH/アバメクチンの組合わせの有効性は100%を示す;従って、この知見は意外であり、予知し得ないものである。
【実施例3】
【0061】
ヒツジにおける胃腸内寄生虫耐性株の処置
ネンテンイチュウ(Haemonchus contortus)、テラドルサジア(Teladorsagia)属および毛様線虫(Trichostrongylus)属の混合培養物中の感染性L3幼生でヒツジを人工感染させ、処置投与後に、処置群での総寄生虫計数を対照群と比較して、有効性を測定した。上記寄生虫の耐性プロフィールを確認するために含めた市販入手可能な参照製品により、動物を下記概略どおりに処置した。
【0062】
【表6】

【0063】
研究動物はすべて処置後15日目に剖検した。皺胃と小腸を寄生虫回収および総寄生虫計数見積もりのために採取した。
【0064】
【表7】

【0065】
上記の実施例は、さらなる研究が、大環状ラクトン類化合物に対する耐性に直面して、2−DOPH/アバメクチンの組合わせの高い有効性を証明していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における寄生虫侵襲を処置する医薬の調製のための2−デスオキソパラヘルクアミドおよびアバメクチンの使用。
【請求項2】
該寄生虫が蠕虫である請求項1記載の使用。
【請求項3】
該哺乳動物が非ヒト哺乳動物である請求項1記載の使用。
【請求項4】
該非ヒト哺乳動物がヒツジである請求項3記載の使用。
【請求項5】
(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび(b)アバメクチンを含有してなる駆虫剤組成物。
【請求項6】
さらに医薬的に許容される担体を含有してなる請求項5記載の組成物。
【請求項7】
医薬として使用するための請求項5記載の組成物。
【請求項8】
(a)2−デスオキソパラヘルクアミドおよび選択肢として医薬的に許容される担体を含有してなる組成物;および(b)アバメクチンおよび選択肢として医薬的に許容される担体;を含有してなる、哺乳動物に連続して投与するためのキット。
【請求項9】
毛様線虫の集団における駆虫剤耐性遺伝子の頻度を低減させる医薬を調製するための2−デスオキソパラヘルクアミドおよびアバメクチンの使用。
【請求項10】
哺乳動物における寄生虫侵襲を処置する医薬の製造のための2−デスオキソパラヘルクアミドおよびアバメクチンの同時使用。

【公開番号】特開2009−51820(P2009−51820A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−169818(P2008−169818)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】