高分子光導波路の製造方法
【課題】 ミラー面を有する高分子光導波路を好適な製造効率で簡易に製造することができる高分子光導波路の製造方法を提供する。
【解決手段】 高分子光導波路は、表面にコアパターン12が凹設されたクラッド基部11と、コアパターン12の内部に形成されたコア13と、コア13を被覆するようにクラッド基部11の表面に設けられたクラッド蓋部14とを備えており、コアパターン12の内面にはミラー面15が設けられている。コアパターン12及びミラー面15は、スタンパを使用した加熱エンボス加工法によってクラッド基部11に凹設される。このスタンパは、階調領域を有するマスキング部材を用い、フォトレジスト材料を露光及び現像することによって形成されている。
【解決手段】 高分子光導波路は、表面にコアパターン12が凹設されたクラッド基部11と、コアパターン12の内部に形成されたコア13と、コア13を被覆するようにクラッド基部11の表面に設けられたクラッド蓋部14とを備えており、コアパターン12の内面にはミラー面15が設けられている。コアパターン12及びミラー面15は、スタンパを使用した加熱エンボス加工法によってクラッド基部11に凹設される。このスタンパは、階調領域を有するマスキング部材を用い、フォトレジスト材料を露光及び現像することによって形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報通信において、例えば光回折路、光分波路及び光合波路、光分岐路及び光合成路、光スイッチ、光回路等のような光信号を伝搬するための高分子光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子光導波路は、コアと、同コアを取り囲むようにその周面を被覆するクラッドとを備えている。コアは透明な合成樹脂より形成されるとともに、クラッドはコアを形成する合成樹脂よりも屈折率の低い透明な合成樹脂より形成されている。この高分子光導波路に入射された光信号は、コアとクラッドとの境界面で繰り返し反射されながらコア内を伝搬される。また、コア内のみで光信号を伝搬させるに留まらず、光信号を高分子光導波路の外部へ出射したり、或いは光信号を外部から高分子光導波路の内部へ入射したりすべく、例えば特許文献1〜特許文献3に記載されるような、ミラー面を有する高分子光導波路も提供されている。このミラー面は、高分子光導波路のコアによって構成される光路、つまりはコアの延びる方向に対して所定角度(例えば45゜)をなすように、コアとクラッドとの境界面を斜面状に形成することによって設けられたものである。そして、コア内を伝搬される光信号は、ミラー面でこれまでとは異なる方向へ反射されることにより、光路が変換されるようになっている。
【0003】
上記特許文献1〜特許文献3には、前記ミラー面を形成すべく、様々な高分子光導波路の製造方法が提案されている。例えば特許文献1では、V字型ダイヤモンドブレードを用いたダイシング加工によって高分子光導波路の製造している。即ち、特許文献1の製造方法は、まずコア及びクラッドからなる構造体を形成した後、同構造体をダイシング加工で切断し、その切断面がミラー面となるように切断された構造体を組み合わせて高分子光導波路としている。特許文献2では、コア及びクラッドを形成した後、反応性イオンエッチング(RIE)法により端面をエッチングしてミラー面を形成している。
【0004】
特許文献3では、成形型(スタンパ)を用いることにより、コア、クラッド及びミラー面を形成している。即ち、特許文献3の製造方法は、まずコアに対応する凹部又は凸部が設けられた成形型を成形した後、同成形型から凹部又は凸部の形状を型取りすることにより、コア及びクラッドを成形している。さらに、前記凹部又は凸部には、レーザー加工によってミラー面に応じた斜め面が設けられており、コア及びクラッドを成形する際にミラー面も成形されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−114365号公報
【特許文献2】特開2003−215371号公報
【特許文献3】特開2003−240996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1及び特許文献2の製造方法は、コア及びクラッドを製造した後に、ミラー面を形成するための加工を必要としており、製造効率が好適であるとは言い難いものであった。一方、特許文献3の製造方法は、成形型を用いたことにより、コア、クラッド及びミラー面の成形については、製造効率が好適である。しかし、特許文献3の製造方法においては、レーザー加工に係る装置が大がかりな上、非常に高価であり、製造コストの高騰を招きやすいことが挙げられる。特許文献1に係るダイシング加工においても、特許文献3の製造方法と同様の理由から製造コストの高騰を招きやすくなる。加えて、特許文献1〜3の製造方法には、ミラー面の形成に位置的な制限があるとともに、一つの光路上に傾斜方向の異なるミラー面(例えば光路に対して45゜と−45゜)を形成し難く、一の工程で形成可能なミラー面の傾斜方向にも制限があり、ミラー面に係る設計の自由度に劣るという問題もある。なお、各ミラー面を複数の工程で一つずつ加工するならば、一つの光路上に傾斜方向の異なるミラー面を形成することも可能ではあるが、しかしこの場合には製造効率の低下をも招くこととなる。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ミラー面を好適な製造効率で簡易に製造することができるとともに、ミラー面の形成に係る設計の自由度の向上を図ることができる高分子光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、表面にコアパターンが凹設された合成樹脂製のクラッド基部と、該コアパターンの内部に形成されたコアと、該コアを被覆すべく該クラッド基部の表面に設けられた合成樹脂製のクラッド蓋部とを備え、前記コアパターンの内面の一部を斜面状とすることで光路を変換するためのミラー面を設けた高分子光導波路の製造方法であって、前記コアパターンに応じた形状をなす転写パターンが設けられたスタンパを製造するスタンパ製造工程と、該スタンパを使用した加熱エンボス加工法で前記コアパターンを形成する転写工程と、前記コア及びクラッド蓋部を設ける導波路形成工程とを備え、前記スタンパ製造工程は、フォトレジスト材料製のフォトレジスト層をマスキング部材で被覆する被覆段階と、フォトレジスト層を露光及び現像して前記転写パターンを形成するパターン形成段階とを含み、該被覆段階では、前記マスキング部材として前記パターン形成段階の露光時に用いる光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域が設けられたものを使用し、該階調領域により遮光率を徐々に変化させる方向は前記転写パターン及びコアパターンにより形成される前記コアが延びる方向となるように設定し、該パターン形成段階では前記ミラー面に応じた形状とすべく前記マスキング部材の前記階調領域を利用して前記転写パターンに斜面部を形成することを要旨とする。
【0008】
上記発明によれば、転写工程ではスタンパを使用した加熱エンボス加工法を用いており、そのスタンパには転写パターン及び斜面部が形成されている。このため、クラッド基部の表面に加熱したスタンパを押圧し、転写パターン及び斜面部をクラッド基部の表面に転写するのみで、コアパターン及びミラー面が簡易且つ迅速に成形される。一方、スタンパの製造時においては、フォトレジスト材料と階調領域が設けられたマスキング部材とが使用される。このマスキング部材を使用して露光を行う場合、階調領域で光量が調整されることにより、フォトレジスト材料からなるフォトレジスト層は、階調領域と対応する箇所が斜面部となるように現像される。このため、大掛かりな装置や、長時間を要せずとも、光を照射するという極めて単純且つ簡易な作業で斜面部を形成することができる。また、ミラー面を形成することとなる斜面部は、フォトレジスト層の何れの位置にも形成することが可能であることから、ミラー面の形成に位置的な制限はない。さらに、遮光率を徐々に変化させる方向の設定を各斜面部毎に変更すれば、一つの光路上に傾斜方向の異なる複数のミラー面を設けることも可能となる。なお、遮光率を徐々に変化させる方向の設定の変更は、各階調領域毎に階調を変化させる方向を変更するという極めて単純且つ簡易な作業で対応することができる。従って、ミラー面の形成位置、傾斜方向等が制限されにくく、ミラー面の形成に係る設計の自由度の向上を図ることができるとともに、斜面部を有するスタンパ及びミラー面を有するコアパターンの双方ともに簡易に製造できることから、ミラー面を有する高分子光導波路を好適な製造効率で簡易に製造することができる。
【0009】
請求項2に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被覆段階で使用するフォトレジスト材料は、ネガ型のフォトレジスト材料であることを要旨とする。
【0010】
上記発明によれば、ネガ型のフォトレジスト材料は、ポジ型のフォトレジスト材料に比べ、フォトレジスト材料に係る製造コストの高騰を抑えつつ、フォトレジスト層の厚み増加を図ることが可能である。このため、高分子光導波路のコア径の拡大を図るべく、フォトレジスト層の厚みを増す場合にも、好適な製造効率を維持することができる。なお、ポジ型のフォトレジスト材料でフォトレジスト層の厚み増加を図る場合、フォトレジスト材料の露光不足、露光過多等といった不具合の発生を抑制するには、ポジ型のフォトレジスト材料として、その露光にX線を用い、X線が照射された箇所が可溶化するX線可溶化型のものを使用することが好ましい。しかし、X線可溶化型のフォトレジスト材料を露光するためには、X線の照射に係る装置を使用する必要があり、このような装置は大がかりな上、非常に高価であり、製造コストの高騰を招きやすい。一方、ネガ型のフォトレジスト材料でフォトレジスト層の厚み増加を図る場合には、フォトレジスト材料として、その露光に紫外線を利用する紫外線硬化型のものを使用することが可能である。紫外線の照射に係る装置は、X線の照射に係る装置に比べ、構成が簡易であり、製造コストの高騰を抑えることが可能である。
【0011】
請求項3に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記パターン形成段階の露光時に使用する光は、前記フォトレジスト層に対する吸光度が1以下となるものであることを要旨とする。
【0012】
上記発明によれば、露光時におけるフォトレジスト材料の露光不足、露光過多等といった不具合の発生を好適に抑制することが可能となる。このため、フォトレジスト層の厚みを増しやすく、高分子光導波路のコア径の拡大を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の発明において、前記スタンパ製造工程は、前記転写パターンを型取りして複製パターンを得る型取り段階と、該複製パターンを使用して前記転写パターンを複製する複製段階とを含むことを要旨とする。
【0014】
上記発明によれば、原版となる転写パターンを加熱エンボス加工に使用することなく保管することができるとともに、複製パターンから転写パターンを大量に複製することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ミラー面を有する高分子光導波路を簡易且つ好適な製造効率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
まず、高分子光導波路の構成について説明する。なお、高分子光導波路は、光ファイバーのコネクタ、スプリッタ等のように、光信号を伝搬する際の光回折路、光分波路及び光合波路、光分岐路及び光合成路、光スイッチ、光回路等として使用されるものである。
【0017】
図1(a),(b)に示すように、高分子光導波路は、クラッド基部11と、同クラッド基部11の表面に設けられた複数の凹部からなるコアパターン12と、同コアパターン12の内部に設けられたコア13と、クラッド蓋部14とを有している。クラッド基部11は、フィルム、板材等から矩形状に形成されている。コアパターン12は、スタンパを使用した加熱エンボス加工法によってクラッド基部11の表面に凹設されている。コア13は、コアパターン12の内部を埋めるように、コアパターン12に応じた形状に形成されている。クラッド蓋部14は、薄板状に形成され、コア13の露出部分を被覆するように、クラッド基部11の表面に取着されている。
【0018】
前記クラッド基部11、コア13及びクラッド蓋部14は、光信号として使用される光を透過すべく、全て透明な合成樹脂から形成されている。クラッド基部11及びクラッド蓋部14に使用する合成樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ビニル樹脂等の紫外線硬化樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。クラッド基部11においては、加熱エンボス加工法によるコアパターン12の形成を容易に行うという観点から、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。一方、コア13は、クラッド基部11及びクラッド蓋部14で使用する合成樹脂よりも屈折率の高い合成樹脂が使用される。コア13に使用する合成樹脂の具体例として、クラッド基部11及びクラッド蓋部14の材料として前に挙げた熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、フッ素樹脂等の他、ポリイミド等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0019】
ここで、クラッド基部11、クラッド蓋部14及びコア13に使用する合成樹脂について、透明とは、高分子光導波路によって伝搬される光信号として使用される光の波長域で透明、つまりは光信号に使用する光を吸収しない色調であることを示す。従って、無色透明の合成樹脂に限らず、光信号に使用する光を吸収しなければ、有色透明の合成樹脂を使用してもよい。具体的に、光信号には400〜1600nmの波長域の光が使用され、主に650nm、850nm、1300nm及び1550nmの波長域の光が用途に応じて選択して使用される。このため、クラッド基部11、クラッド蓋部14及びコア13に使用する材料には、これらの波長域の光を吸収しない色調で透明な合成樹脂が使用される。
【0020】
高分子光導波路は、その端部からコア13に光信号が入射されると、同光信号をクラッド基部11又はクラッド蓋部14と、コア13との境界面で反射させる。この反射が繰り返されることにより、光信号は鋸歯状の軌跡を描きながらコア13内を進行し、高分子光導波路の内部を同コア13の延びる方向へ伝搬される。ここで、本実施形態の光路とは、高分子光導波路による光信号の伝搬方向を示すものとする。そして、前述のようにコア13内を伝搬される光信号の光路(図中で横向きの矢印方向)は、本実施形態ではコア13の延びる方向と一致する。
【0021】
当該高分子光導波路において、コア13の延びる方向で両端部(光路の両端)には、クラッド基部11とコア13との境界面にミラー面15がそれぞれ設けられている。各ミラー面15は、光路に対して所定角度(本実施形態では45゜)の斜面状をなしている。これらミラー面15は、コアパターン12の内面の一部である対向する一対の内側面を、クラッド蓋部14へ向かうにつれ互いに離間するテーパ状とすることによって形成されたものである。また、ミラー面15は、コアパターン12を加熱エンボス加工法で成形する際、同コアパターン12とともに前記スタンパを使用して成形される。
【0022】
当該高分子光導波路内を伝搬される光信号は、ミラー面15で反射方向を変えられることにより、その進行方向が変換される。即ち、高分子光導波路の外部から図中で下向きの矢印方向に入射される光信号は、一方のミラー面15により、コア13内を伝搬される光信号へと変換される。また、コア13内を伝搬される光信号は、他方のミラー面15により、高分子光導波路の外部へ図中で上向きの矢印方向に出射される光信号へと変換される。従って、ミラー面15を設けた当該高分子光導波路は、光信号をコア13内のみで伝搬することに限らず、クラッド蓋部14を介して外部から光信号を入射することも、クラッド蓋部14を介して外部へ光信号を出射することも可能である。
【0023】
コアパターン12において、ミラー面15を含む内面の粗さは、光信号に使用する光の波長域の好ましくは10分の1以下であり、より好ましくは20分の1以下である。具体的には、JIS B0601−1994に規定される算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.2μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下である。Raが0.2μmを超える場合、コア13内での進行時に前記境界面で光の乱反射が生じやすく、ノイズが発生する等して光信号を正確に伝搬することができなくなるおそれがある。なお、算術平均粗さ(Ra)が小さくなるに従い、光の乱反射は生じにくくなり、光信号を正確に伝搬することができるようになる。しかし、算術平均粗さ(Ra)を過剰に小さくすれば、製造の長時間化、煩雑化等を招き、製造コストが高騰することから、算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.01μm以上である。
【0024】
コア13の径は、好ましくは3〜2000μmである。なお、本実施形態のコア13の径は、前記光路に直交する面内におけるコア13の一辺の長さで示す。すなわち、光ファイバーから高分子光導波路に光信号を入射したり、高分子光導波路から光ファイバーに光信号を出射したりする場合、結合損失を低減すべく、高分子光導波路のコア径を光ファイバーのコア径に対して最適化する必要がある。また、当該高分子光導波路は、光ファイバーを接続することを前提としており、その光ファイバーのコアの径は、一般に3〜2000μmである。そこで、種々の光ファイバーに対し、それぞれのコアの径と同程度に合わせることができるよう、コア13の径を3〜2000μmとすることが好ましく、50〜2000μmとすることがより好ましい。
【0025】
次に、高分子光導波路を形成するためのスタンパについて説明する。図3(a),(b)及び図4(a)に示すように、スタンパは、原版であるマスタスタンパ21と、該マスタスタンパ21から複製型31を使用して複製された複製スタンパ41とから構成されている。
【0026】
まず、マスタスタンパ21について説明する。マスタスタンパ21は、マスキング部材としてのマスク基板22と、同マスク基板22の表面に設けられた転写パターン23とを有している。転写パターン23は、フォトレジスト材料を用い、前記コアパターン12に応じた形状、換言すればコアパターン12を逆転させた形状となるように形成されている。また、転写パターン23には、前記ミラー面15に応じた形状とすべく、斜面部24が形成されている。従って、転写パターン23及び斜面部24と、コアパターン12及びミラー面15とは所謂ネガ・ポジの関係にある。
【0027】
当該転写パターン23及び斜面部24は、それぞれの表面の荒れがコアパターン12の内面及びミラー面15に転写されるおそれがあることから、表面の粗さが前記光信号に使用する光の波長域の好ましくは10分の1以下、より好ましくは20分の1以下とされている。具体的には、当該表面の算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下とされている。Raが0.2μmを超える場合、前記コアパターン12の内面又はミラー面15のRaが0.2μmを超えてしまうおそれがある。なお、転写パターン23及び斜面部24の表面の算術平均粗さ(Ra)が小さくなるに従い、コアパターン12の内面及びミラー面15も平滑なものとなるが、Raを過剰に小さくすれば、製造の長時間化、煩雑化等を招き、製造コストが高騰する。このため、転写パターン23の表面及び斜面部24の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.01μm以上である。
【0028】
前記マスク基板22は、ベース板25と同ベース板25の表面に設けられたマスキングパターン26とから構成されている。ベース板25は、前記転写パターン23を形成すべくフォトレジスト材料の露光に使用する光を透過できるように、同露光に使用する光を吸収しない色調で透明な板材、例えばガラス板、合成樹脂板等から形成されている。このマスキングパターン26は、露光に使用する光を遮蔽する遮光パターン27と、露光に使用する光を透過させる透光パターン28と、遮光パターン27及び透光パターン28の間に設けられた階調パターン29とを備えている。
【0029】
階調パターン29は、露光に使用する光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域を構成している。また、この階調領域は、露光に使用する光に対する遮光率を徐々に変化させる方向が遮光パターン27から透光パターン28へ向かう方向、つまりは前記コア13が延びる方向であり、高分子光導波路においてコア13内を伝搬される光信号の光路と同一方向となるように設定されている。
【0030】
具体的に、本実施形態の遮光パターン27は、ベース板25の表面に薄膜を成膜することによって形成されている。この薄膜の色調は、露光に使用する光を吸収する又は反射する色調となっており、同薄膜が露光に使用する光を吸収又は反射することにより、露光に使用する光が遮蔽される。透光パターン28は、前記薄膜を設けることなく、ベース板25の表面を外部へ露出させることにより形成されており、露光に使用する光を透過させる。一方、階調パターン29は、前記薄膜の膜厚を徐々に変化させることによって形成されている。膜厚を徐々に変化させた薄膜の色調は、露光に使用する光を吸収する又は反射する色調であって、その濃淡が連続的に変化する色調となり、階調パターン29の色調は、遮光パターン27へ近づくにつれ濃くなり、透光パターン28へ近づくにつれ淡くなる。階調パターン29の遮光率は、遮光パターン27及び透光パターン28の遮光率に応じている。例えば、遮光パターン27の遮光率が100%、透光パターン28の遮光率が0%であれば、階調パターン29の遮光率は、遮光パターン27から透光パターン28へ向かう方向へ100〜0%の範囲で連続的に変化する。
【0031】
次いで、前記複製型31について説明する。複製型31は、前記マスタスタンパ21の表面部分、つまりは転写パターン23を型取りして製造されている。この複製型31は、シリコーンゴムから形成されている。複製型31の表面(図4(a)中で上面)には複製パターン32が設けられている。この複製パターン32は、転写パターン23に応じた形状、換言すれば転写パターン23を逆転させた形状とされており、複製パターン32と転写パターン23とは所謂ネガ・ポジの関係にある。従って、複製パターン32は、前記コアパターン12と同一の形状をなしている。
【0032】
次いで、前記複製スタンパ41について説明する。複製スタンパ41は、基材42と、その基材42の表面(図4(a)中で底面)に設けられた転写部43とを有している。この転写部43の表面(図4(a)中で底面)には、前記転写パターン23及び前記斜面部24が複写されている。転写部43は、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ビニル樹脂等の紫外線硬化樹脂から形成されている。また、基材42には、転写部43を硬化させるべく使用される紫外線を吸収しない材料、例えばガラス板等が使用されている。
【0033】
この実施形態では、スタンパのうち、複製スタンパ41を使用して加熱エンボス加工法が行われている。これは、紫外線硬化樹脂からなる転写部43は、フォトレジスト材料からなる前記転写パターン23に比べ、加熱、加圧に対する強度を向上させやすく、加熱エンボス加工法を行う際にスタンパとして使用可能な回数の増加を図ることができるためである。従って、高分子光導波路を少量のみ製造する等、使用可能な回数の増加を図ることを目的としなければ、前記マスタスタンパ21を使用して加熱エンボス加工法を行ってもよい。なお、転写部43を形成する紫外線硬化樹脂には、加熱エンボス加工法で使用されることから、クラッド基部11の材料である合成樹脂よりもガラス転移点(Tg)が高いものを使用することが好ましく、より好ましくはカチオン重合タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂が使用される。
【0034】
次に、高分子光導波路の製造工程について説明する。
高分子光導波路は、スタンパ製造工程と、転写工程と、導波路形成工程とを経て製造される。スタンパ製造工程では、スタンパとして前記マスタスタンパ21と前記複製スタンパ41とが製造される。転写工程では、複製スタンパ41を使用して加熱エンボス加工法を行うことにより、クラッド基部11の表面にコアパターン12が形成される。導波路形成工程では、コアパターン12が形成されたクラッド基部11の表面において、コアパターン12の内部にコア13を形成し、その後にクラッド蓋部14が形成される。
【0035】
前記スタンパ製造工程について説明する。このスタンパ製造工程は、大きく分けてマスタスタンパ21を製造するマスタ製造段階と、複製スタンパ41を製造する複製製造段階との2つの段階に分けられる。
【0036】
まず、マスタ製造段階について説明する。このマスタ製造段階は、被覆段階とパターン形成段階とを備える。図2(a)に示すように、被覆段階では、マスク基板22の表面にフォトレジスト層23aが積層されて形成される。なお、この図2(a)は、ネガ型のフォトレジスト材料を使用した場合を示す。このフォトレジスト層23aの形成は、マスク基板22の表面に液状のフォトレジスト材料をキャスト(注入)した後、同フォトレジスト材料を加熱乾燥して溶媒成分を除去し、固化することにより行われる。このようにして形成されたフォトレジスト層23aは、その表面(図2(a)中で底面)がマスキング部材であるマスク基板22により被覆されることとなる。このマスク基板22においては、フォトレジスト材料がネガ型のものであることから、マスキングパターン26の透光パターン28が所望する転写パターン23と同一形状のものが使用される。
【0037】
前記パターン形成段階では、図2(a)中に矢印で示すように、まずマスク基板22を介してフォトレジスト層23aに露光に使用する光が図2(a)中で底面側から照射され、該フォトレジスト層23aが露光される。このとき、マスク基板22の階調パターン29においては、遮光パターン27側から透光パターン28側へ向かうに従い、露光に使用する光を透過させやすくなることから、同階調パターン29を透過した光の光強度が連続的に変化する。このように階調パターン29で光強度を連続的に変化させることにより、露光に使用する光による前記フォトレジスト材料の露光度も遮光パターン27と透光パターン28との間で連続的に変化することとなる。その結果、フォトレジスト層23aで階調パターン29と対応する箇所は、図2(a)中に点線で示すように、斜面状に露光されることとなる。その後、フォトレジスト層23aを現像し、同フォトレジスト層23aの一部を除去する。すると、図3(a)に示すように、マスク基板22の表面には転写パターン23が残るとともに、フォトレジスト層23aの斜面状に露光された箇所が斜面部24を形成することとなり、マスタスタンパ21が形成される。
【0038】
ここで、ポジ型のフォトレジスト材料を使用する場合について説明する。図2(b)に示すように、ポジ型のフォトレジスト材料からなるフォトレジスト層23aは、ベース板25の表面に積層され、同フォトレジスト層23aの表面は、マスキング部材としてのマスキングシート26aにより被覆される。このマスキングシート26aは、遮光パターン27と、透光パターン28と、階調パターン29とを有し、遮光パターン27は所望する転写パターン23と同一形状とされ、透光パターン28は転写パターン23と反転した形状とされる。そして、同マスキングシート26aの表面側からフォトレジスト層23aの露光を行った結果、図3(a)に示した転写パターン23と同形状の転写パターンが得られる。
【0039】
なお、コア13の径を拡大すべくフォトレジスト層23aの厚み増加を図る場合、製造コストの高騰を抑制できるという観点から、ネガ型のフォトレジスト材料を使用することが好ましい。これは、ネガ型のフォトレジスト材料であれば、フォトレジスト層23aの膜厚を厚くする場合でも紫外線硬化型のものを使用することができるためである。ポジ型のフォトレジスト材料でフォトレジスト層23aの厚み増加を図る場合、X線可溶化型のものを使用する必要性が高まり、前記パターン形成段階におけるフォトレジスト層23aの露光時に大掛かりで高価な装置を使用する可能性が高まる。
【0040】
コア13の径を拡大すべく、前記フォトレジスト層23aの厚み増加を図る場合(具体的にはフォトレジスト層23aの膜厚を100μm以上とする場合)について説明する。この場合、マスク基板22の表面内でフォトレジスト層23aの膜厚を均一にするため、前記被覆段階では次に記載するような方法を採用することが好ましい。すなわち、まず所望するフォトレジスト層23aの厚みと同じ高さのスペーサを用意し、同スペーサをマスク基板22の表面に設置する。次いで、マスク基板22の表面にフォトレジスト材料を前記スペーサよりも盛り上がるようにキャストし、フォトレジスト材料を固化する。この後、表面が平坦な押圧部材を用い、フォトレジスト材料を加熱しつつ、同フォトレジスト材料の表面を押圧部材で押圧する。すると、フォトレジスト材料は、その表面がスペーサよりも盛り上がった状態から平坦な状態とされることから、フォトレジスト層23aの膜厚が均一となる。
【0041】
また、被覆段階で押圧部材を使用する場合、前記フォトレジスト材料には、押圧時の温度でフォトレジスト層23aを変形できるものが使用される。なお、押圧時において、押圧部材、フォトレジスト層23a及びマスク基板22は、未露光状態にあるフォトレジスト材料のガラス転移点(Tg)以上の温度となるように加熱される。フォトレジスト層23aの厚みは、前記コア13の径と同じであり、3〜2000μmである。
【0042】
フォトレジスト層23aは、その厚みを、例えば100〜2000μmのように厚く形成した場合、表面部と底部(マスク基板22の表面)とで露光条件が異なることにより、転写パターン23が正確に形成されなくなる可能性が高くなる。従って、露光に使用する光には、フォトレジスト層23aに対する吸光度が、1以下となる光を使用することが好ましく、0.02〜1となる光を使用することがより好ましい。なお、吸光度が1以下となる光とは、フォトレジスト層23aを所望の厚み(所望とするコア13の径と同じ長さ)に形成した状態で、自記分光光度計(島津製作所製のUV−3100PC)を用いて同フォトレジスト層23aの吸光度を測定したとき、その吸光度が1以下となる光を示すものとする。露光に使用する光として吸光度が1を超える波長域の光を使用した場合、光の多くがフォトレジスト層23aの表面部で吸収され、同フォトレジスト層23aの底部まで光が達しない可能性が高くなる。この場合、フォトレジスト層23aの表面部と底部とで光強度の差が大きくなり、表面部と底部とで最適な露光条件が異なってしまう。
【0043】
例えば、露光に使用する光として底部に最適な露光条件となる波長域の光を使用すれば、表面部では露光過多となるため、転写パターンは表面部と底部とで幅の異なるものとなってしまう。具体例として、吸光度が1を超える波長域の光を使用し、ネガ型のフォトレジスト層23aで転写パターンを形成しようとした場合、転写パターンの表面部が底部に比べて幅広となる。これに対し、露光に使用する光として表面部に最適な露光条件となる波長域の光を使用すれば、底部では露光不足となり、前例のように転写パターンは表面部と底部とで幅の異なるものとなってしまう。さらには、ネガ型のフォトレジスト材料を使用した場合には現像時に転写パターンが基板から剥離してしまったり等の不具合を生じるおそれがある。
【0044】
なお、露光に使用する光の光源には、特定の波長域でのみ発光するものを用いてもよく、また、高圧水銀灯やキセノン灯などの多波長の光を発光するものを用いてもよい。但し、特定の波長域でのみ発光する光源を使用する場合には、吸光度が0.02未満となるような波長域の光のみ発光するものは避けることが好ましい。フォトレジスト層23aは、その吸光度が0.02未満の波長域の光のみで露光した場合、フォトレジスト層23aに吸収される光量が少なくなり、転写パターン23を形成できなくなるおそれがある。一方、多波長の光を発光する光源を使用する場合には、吸光度が0.02未満となるような波長域の光が含まれていてもよいが、吸光度が1を超えるような波長域の光は遮蔽することができるようにフィルター等を併用することが好ましい。
【0045】
次いで、前記複製製造段階について説明する。この複製製造段階は、型取り段階と複製段階とを備える。型取り段階では、前記マスタ製造段階で得られたマスタスタンパ21を用い、同マスタスタンパ21から転写パターン23を型取りする。この型取りは、図3(b)に示すように、マスタスタンパ21の表面に液状のシリコーンゴムを塗布し、同シリコーンゴムを硬化させ、複製型31を形成することにより行われる。そして、型取り段階で得られた複製型31には、前記転写パターン23を型取りして得られた複製パターン32が形成されることとなる。また、この複製パターン32は、前記斜面部24を型取りした複製斜面部33を有している。型取り段階の後、複製型31はマスタスタンパ21の表面から剥離され、前記複製段階で使用される。なお、シリコーンゴムには、縮合反応型のものと、付加反応型のものとがあり、何れを使用してもよいが、付加反応型のシリコーンゴムを使用することがより好ましい。これは、付加反応型のものは、その硬化時に副生成物が発生せず、また硬化時の体積収縮率も小さいため、転写パターン23をより精密な寸法精度で型取りすることができるためである。
【0046】
また、マスタスタンパ21から複製型31を離型する際、転写パターン23の傷つき、破損等を抑制し、離型性を向上させるため、シリコーンゴムを塗布する前に該マスタスタンパ21の表面に離型剤を予め塗布する等の離型向上処理を施してもよい。或いは、フォトレジスト層23aから押圧部材を取り除く、複製型31から複製スタンパ41を離型する等の際において、離型向上処理を施してもよい。さらには、マスタスタンパ21又は複製スタンパ41からクラッド基部11を離型する等の際において、離型向上処理を施してもよい。このような離型向上処理としては、フッ素樹脂、フッ素化合物、シリコーン樹脂、シリコーン化合物等の離型剤を塗布する湿式処理、フッ素含有ガス等を用いるCVD処理、無機化合物をスパッタリングしたり、金属を真空蒸着したり等する乾式処理等が挙げられる。
【0047】
前記複製段階では、前記型取り段階で得られた複製型31を用い、複製スタンパ41が形成される。すなわち、図4(a)に示すように、まず複製型31の表面に紫外線硬化樹脂が塗布され、同紫外線硬化樹脂に接触するように基材42が載置される。この後、図中に矢印で示すように、基材42を介して上方から紫外線が照射される。すると、紫外線硬化樹脂が硬化して前記転写部43が形成される。そして、複製型31から転写部43を剥離することにより、その表面に前記マスタスタンパ21と同様の転写パターン23及び斜面部24が複写された複製スタンパ41が得られる。
【0048】
続いて、前記転写工程について説明する。転写工程は、加熱エンボス加工法で行われる。すなわち、まず前記複製スタンパ41及び前記クラッド基部11が加熱され、クラッド基部11を形成する合成樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度とされる。次いで、図5(a)に示すように、加熱された複製スタンパ41がクラッド基部11の表面に押し付けられた後、複製スタンパ41及びクラッド基部11がガラス転移点(Tg)以下となるまで冷却され、同複製スタンパ41がクラッド基部11から剥離される。すると、図5(b)に示すように、クラッド基部11の表面に複製スタンパ41の転写パターン23が転写されて前記コアパターン12が形成されるとともに、斜面部24が転写されて前記ミラー面15が形成される。
【0049】
最後に、前記導波路形成工程について説明する。導波路形成工程では、まずコアパターン12の内部にコア13が形成される。コア13の形成は、コアパターン12内に前述の紫外線硬化樹脂を充填した後、紫外線を照射することによって行われる。この他に、溶剤に溶解する等して液状とした合成樹脂をコアパターン12内に充填し、減圧雰囲気下又はクラッド基部11の材料である合成樹脂のTg以下の温度雰囲気下で溶剤を揮発させ、合成樹脂を硬化させる等してコア13の形成を行ってもよい。その後、図1(a),(b)に示すように、クラッド基部11の表面にクラッド蓋部14が形成され、高分子光導波路が製造される。同クラッド蓋部14の形成は、フィルムを貼着する、クラッド基部11の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線の照射により硬化させる、スピンコート法等で液状とした合成樹脂を塗布し、硬化させる等の方法で行われる。
【0050】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の高分子光導波路は、光路を変換するためのミラー面15を有している。このミラー面15は、複製スタンパ41を用いた加熱エンボス加工法により、同複製スタンパ41の斜面部24がクラッド基部11の表面に転写されて形成されたものである。さらに、複製スタンパ41はマスタスタンパ21から転写パターン23及び斜面部24を複写して得られたものである。そして、マスタスタンパ21の転写パターン23及び斜面部24は、フォトレジスト材料と階調パターン29を有するマスク基板22を利用して形成されたものである。このため、転写パターン23及び斜面部24の形成は、フォトレジスト層23aの露光及び現像によって行われており、エッチング、レーザー加工等の煩雑な方法によらずとも、短時間で、かつ簡易に行うことが可能である。
【0051】
・ また、マスタスタンパ21の転写パターン23の形成には、ネガ型のフォトレジスト材料が使用されている。ネガ型のフォトレジスト材料は、ポジ型のフォトレジスト材料に比べ、フォトレジスト材料に係る製造コストの高騰を抑えつつ、フォトレジスト層の厚み増加を図ることが可能である。このため、高分子光導波路のコア径の拡大を図るべく、フォトレジスト層の厚みを増す場合にも、好適な製造効率を維持することができる。
【0052】
・ また、100μm以上の膜厚を有するフォトレジスト層23aの露光に使用する光には、該フォトレジスト層23aの吸光度が1以下となるような波長域のものを使用している。これにより、フォトレジスト層23aの表面部と底部とで最適な露光条件に差が生じることを抑制することができ、フォトレジスト層23aから形成される転写パターン23を好適な形状とすることが可能である。
【0053】
・ また、マスタスタンパ21から複製スタンパ41を複製し、該複製スタンパ41を加熱エンボス加工に用いることにより、原版であるマスタスタンパ21を長期間維持することが可能であり、製造効率の向上を図ることができる。
【0054】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図6(a)に示すように、フォトレジスト層23aをネガ型のフォトレジスト材料から形成し、ベース板25とマスキングパターン26とからなるマスク基板22を用いてフォトレジスト層23aの露光を行ってもよい。さらに、図6(b)に示すように、フォトレジスト層23aをポジ型のフォトレジスト材料から形成し、前記マスキングパターン26と同様の遮光パターン27、透光パターン28及び階調パターン29を有するマスキングシート26aと、ベース板25とを用いてフォトレジスト層23aの露光を行ってもよい。なお、これらの場合、マスタスタンパ21は、図3(a)に示したような凸型のものではなく、凹型のものとして形成され、斜面部24は、図6(a),(b)中の上方へ向かうにつれ互いに離間するテーパ状となる。
【0055】
・ 図2(b)及び図6(b)でフォトレジスト層23aをネガ型のフォトレジスト材料から形成し、図2(a)及び図6(a)でフォトレジスト層23aをポジ型のフォトレジスト材料から形成してもよい。但し、この場合にはクラッド基部11の作製等が難しくなる。なお、ネガ型のフォトレジスト材料を使用する場合、クラッド基部11の作製等を好適なものとするには、図2(a)及び図6(a)に示した結果から、ベース板25とフォトレジスト層23aとでマスキングパターン26を挟み込むように、マスク基板22の表面にフォトレジスト層23aを設けることが好ましい。一方、ポジ型のフォトレジスト材料を使用する場合、クラッド基部11の作製等を好適なものとするには、図2(b)及び図6(b)に示した結果から、フォトレジスト層23aの表面をマスキングシート26aで被覆することが好ましい。
【0056】
・ 図7(b)に示すように、高分子光導波路において、コア13の延びる方向で中間部(光路の途中)に一対のミラー面15が三角形状に配置されるようにコアパターン12を形成してもよい。なお、この高分子光導波路は、コア13の内部の光路と外部の光路とを繋ぐ合分岐型のものである。また、マスタスタンパ21は、図7(a)に示すような形状とされる。すなわち、マスク基板22において、ベース板25の表面には2つのマスキングパターン26が設けられている。これらマスキングパターン26は、透光パターン28及び階調パターン29を有しており、それぞれの階調パターン29が隣接するように配置されている。
【0057】
・ 図8(b)に示すように、高分子光導波路において、コア13の延びる方向で中間部(光路の途中)にミラー面15を設けるとともに、ミラー面15の高さをコア13の径よりも低くし、コア13の内部の光路を一部開放することにより、コア13を伝搬される一部の光信号の光路を変換するように構成してもよい。この場合、マスタスタンパ21は、図8(a)に示すような形状とされる。すなわち、マスク基板22において、ベース板25の表面には2つのマスキングパターン26が設けられている。これらマスキングパターン26は、透光パターン28及び階調パターン29を有しており、それぞれの階調パターン29が隣接するように配置されている。また、階調パターン29は実施形態のものに比べて遮光率が低くなっている。
【0058】
・ 本実施形態ではコア13の延びる方向で両端部(光路の両端)にミラー面15を互いにテーパ状をなすように設けたが、ミラー面15は実施形態の形状に限らず所望に応じ形状となるように適宜設けてもよい。例えば、図9に示すマスタスタンパ21は、図3(a)、図7(a)及び図8(a)に示した斜面部24を有する転写パターン23を組み合わせて得られたものである。さらに、このマスタスタンパ21は、マスク基板22の厚み方向(図中で上下方向)に傾斜する斜面部24のみならず、マスク基板22の面方向(図中で前後又は左右方向)に傾斜する第2斜面部24aをも有している。このような斜面部24及び第2斜面部24aの双方を有する転写パターン23であっても、マスキングパターン26の遮光パターン、透光パターン及び階調パターンを適宜組み合わせることにより、簡易に作成することが可能である。このマスタスタンパ21、或いは当該マスタスタンパ21から得られた複製スタンパを用いた加熱エンボス加工法により、図10に示すような高分子光導波路が得られる。この高分子光導波路は、クラッド蓋部14の上面に図示しない検出器及び光源(レーザーデバイス(LD)又は発光ダイオード(LED))が設けられている。そして、この高分子光導波路においては、コア13内を伝搬される光信号が各ミラー面15により前記検出器へと出射されたり、或いは前記光源から入射された光信号が各ミラー面15によりコア13内を伝搬されたり等するように構成されている。また、第2斜面部24aにより形成された第2ミラー面15aにより、この高分子光導波路の内部においてコア13同士の間で光信号を出射及び入射することも可能である。加えて、この図10に示す高分子光導波路は、ミラー面15又は第2ミラー面15aの位置及び傾斜方向を各光路毎に個々に定めることが可能であり、各光路でそれぞれ光路の端部を定めることも、或いは各光路の何れの箇所から光信号を取り出すこともできる。一方、クラッド基部11の下面に検出器を設けた場合には、図11(a)に示したようなマスタスタンパ21を用い、図11(b)に示す互いに向かい合うようなミラー面15を設けることにより、クラッド基部11を介して高分子光導波路の外部へ光信号を出射或いは入射することが可能となる。以上のように、本発明における高分子光導波路の製造方法によれば、ミラー面の形成において、形成位置の制限及び傾斜方向の制限はなく、光路上において所望する任意の位置に任意の傾斜方向でミラー面を設けることが可能である。また、図9に示したように、マスキングパターンを適宜設定することにより、一の工程で多種多様な斜面部を有する転写パターンを形成することが可能であり、さらに当該転写パターンから多種多様なミラー面を一の工程で形成することも可能である。従って、本発明によれば、ミラー面の形成に係る製造効率を好適に保持しつつ、ミラー面の形成に係る設計の自由度の向上を図ることができる。
【0059】
・ ミラー面15は、45゜に限らず、30゜、60゜等とする等、0°を超え、90゜未満の角度であれば、何れの角度としてもよい。なお、ミラー面15の角度をθ、階調パターン29の長さをL、フォトレジスト層23aの厚みをTとした場合、角度θ、長さL、厚みTの間には、L=T÷tanθの関係式が成立する。
【0060】
・ ミラー面15に金属膜や誘電体多層膜等からなる反射層を形成する等して、同ミラー面15を鏡面としてもよい。
・ 階調パターン29は、薄膜を形成することに限らず、例えば濃淡が連続的に変化する灰色等の中間色で塗装したり、磨りガラスで形成したり、ドットパターンの印刷によって形成したり等してもよい。
【0061】
・ 前記複製スタンパ41は、実施形態で示したものに限らず、例えば図4(b)に示すように、複製型31の表面に電鋳法等の方法でニッケル(Ni)等の金属元素を堆積させる等の方法で製造してもよい。このように複製スタンパ41を金属製とした場合、樹脂製のものに比べ、強度及び耐久性を向上させることができる。
【0062】
・ 複製スタンパ41を転写部43のみで構成してもよい。或いは、基材42には、ガラス基板に限らず、前記ベース板25と同様の材料を使用してもよい。なお、例えば、基材42にシリコン基板等を使用した場合、転写部43の材料に熱硬化性樹脂を使用し、マスタスタンパ21を加熱することにより、当該熱硬化性樹脂を硬化させるように構成してもよい。
【0063】
・ 複製型31は、必ずしもシリコーンゴムによって形成されることに限らず、例えば前述の紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂、熱可塑性エラストマー等より形成してもよい。また、マスタスタンパ21を使用した加熱エンボス加工法により、合成樹脂製のフィルム、基板等から複製型31を製造してもよい。
【0064】
・ 前記クラッド蓋部14は、コア13で使用する合成樹脂よりも屈折率が低く、クラッド基部11と屈折率が同程度の合成樹脂であれば、何れの合成樹脂で形成してもよい。例えば、クラッド基部11を熱可塑性合成樹脂で形成するとともに、クラッド蓋部14を紫外線硬化性樹脂で形成してもよい。あるいは、クラッド蓋部14をポリイミド等の熱硬化性樹脂で形成してもよい。また、クラッド蓋部14は、液状の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等をスピンコート法等の方法でクラッド基部11の表面に塗布し、硬化させて形成してもよい。
【0065】
・ 前記クラッド基部11は、必ずしも加熱エンボス法によって形成されることに限らず、例えばマスタスタンパ21又は複製スタンパ41の表面に熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を塗布し、硬化させることによって形成してもよい。
【0066】
・ 高分子光導波路を、例えばシリコン基板、金属基板、金属酸化物基板、ガラス基板等といった基板材料の表面に設けてもよい。このように高分子光導波路を基板材料の表面に設ける場合、クラッド基部11は図示しない基板材料の表面に積層される。
【0067】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 光路を変換するミラー面が設けられたコアパターンを加熱エンボス加工法によって高分子光導波路に形成するために使用されるスタンパの製造方法であって、フォトレジスト材料からなるフォトレジスト層をマスキング部材で被覆する被覆段階と、該フォトレジスト層の露光及び現像により前記コアパターンに応じた形状をなす転写パターンを形成するパターン形成段階とを備え、前記被覆段階では、前記マスキング部材として、前記パターン形成段階の露光時に使用する光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域が設けられたものを使用し、当該階調領域によって該遮光率を徐々に変化させる方向は、前記転写パターン及び前記コアパターンにより形成されることとなる前記コアが延びる方向となるように設定し、前記パターン形成段階では、前記ミラー面に応じた形状とすべく、前記マスキング部材の前記階調領域を利用して前記転写パターンに斜面部を形成することを特徴とするスタンパの製造方法。
【0068】
・ 前記マスキング部材はベース板とマスキングパターンとからなり、前記被覆段階では、当該マスキングパターンを前記ベース板と前記フォトレジスト層とで挟み込むように前記マスキング部材の表面に前記フォトレジスト層を形成することを特徴とする請求項2から請求項4の何れか一項に記載の高分子光導波路の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)は実施形態の高分子光導波路を正面から見た状態を示す断面図、(b)は実施形態の高分子光導波路を側面から見た状態を示す断面図。
【図2】(a)及び(b)はフォトレジスト材料を露光させる状態を示す側断面図。
【図3】(a)はマスタスタンパを示す側断面図、(b)は複製型を製造する状態を示す側断面図。
【図4】(a)及び(b)は複製スタンパを製造する状態を示す側断面図。
【図5】(a)は複製スタンパを使用してクラッド基部を成形する状態を示す側断面図、(b)は成形されたクラッド基部を示す側断面図。
【図6】(a)及び(b)は、別方法でフォトレジスト材料を露光させる状態を示す側断面図。
【図7】(a)は別形態のマスタスタンパを示す側断面図、(b)は別形態の高分子光導波路を示す側断面図。
【図8】(a)は別形態のマスタスタンパを示す側断面図、(b)は別形態の高分子光導波路を示す側断面図。
【図9】別形態のマスタスタンパを示す斜視図。
【図10】別形態の高分子光導波路を示す斜視図。
【図11】(a)は別形態のマスタスタンパを示す側断面図、(b)は別形態の高分子光導波路を示す側断面図。
【符号の説明】
【0070】
11…クラッド基部、12…コアパターン、13…コア、14…クラッド蓋部、21…マスタスタンパ、22…基板、23…転写パターン、23a…フォトレジスト層、31…複製型、32…複製パターン、41…複製スタンパ、51…スペーサ、52…押圧部材、53…マスク部材、54…開口パターン、55…遮光パターン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報通信において、例えば光回折路、光分波路及び光合波路、光分岐路及び光合成路、光スイッチ、光回路等のような光信号を伝搬するための高分子光導波路の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子光導波路は、コアと、同コアを取り囲むようにその周面を被覆するクラッドとを備えている。コアは透明な合成樹脂より形成されるとともに、クラッドはコアを形成する合成樹脂よりも屈折率の低い透明な合成樹脂より形成されている。この高分子光導波路に入射された光信号は、コアとクラッドとの境界面で繰り返し反射されながらコア内を伝搬される。また、コア内のみで光信号を伝搬させるに留まらず、光信号を高分子光導波路の外部へ出射したり、或いは光信号を外部から高分子光導波路の内部へ入射したりすべく、例えば特許文献1〜特許文献3に記載されるような、ミラー面を有する高分子光導波路も提供されている。このミラー面は、高分子光導波路のコアによって構成される光路、つまりはコアの延びる方向に対して所定角度(例えば45゜)をなすように、コアとクラッドとの境界面を斜面状に形成することによって設けられたものである。そして、コア内を伝搬される光信号は、ミラー面でこれまでとは異なる方向へ反射されることにより、光路が変換されるようになっている。
【0003】
上記特許文献1〜特許文献3には、前記ミラー面を形成すべく、様々な高分子光導波路の製造方法が提案されている。例えば特許文献1では、V字型ダイヤモンドブレードを用いたダイシング加工によって高分子光導波路の製造している。即ち、特許文献1の製造方法は、まずコア及びクラッドからなる構造体を形成した後、同構造体をダイシング加工で切断し、その切断面がミラー面となるように切断された構造体を組み合わせて高分子光導波路としている。特許文献2では、コア及びクラッドを形成した後、反応性イオンエッチング(RIE)法により端面をエッチングしてミラー面を形成している。
【0004】
特許文献3では、成形型(スタンパ)を用いることにより、コア、クラッド及びミラー面を形成している。即ち、特許文献3の製造方法は、まずコアに対応する凹部又は凸部が設けられた成形型を成形した後、同成形型から凹部又は凸部の形状を型取りすることにより、コア及びクラッドを成形している。さらに、前記凹部又は凸部には、レーザー加工によってミラー面に応じた斜め面が設けられており、コア及びクラッドを成形する際にミラー面も成形されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−114365号公報
【特許文献2】特開2003−215371号公報
【特許文献3】特開2003−240996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1及び特許文献2の製造方法は、コア及びクラッドを製造した後に、ミラー面を形成するための加工を必要としており、製造効率が好適であるとは言い難いものであった。一方、特許文献3の製造方法は、成形型を用いたことにより、コア、クラッド及びミラー面の成形については、製造効率が好適である。しかし、特許文献3の製造方法においては、レーザー加工に係る装置が大がかりな上、非常に高価であり、製造コストの高騰を招きやすいことが挙げられる。特許文献1に係るダイシング加工においても、特許文献3の製造方法と同様の理由から製造コストの高騰を招きやすくなる。加えて、特許文献1〜3の製造方法には、ミラー面の形成に位置的な制限があるとともに、一つの光路上に傾斜方向の異なるミラー面(例えば光路に対して45゜と−45゜)を形成し難く、一の工程で形成可能なミラー面の傾斜方向にも制限があり、ミラー面に係る設計の自由度に劣るという問題もある。なお、各ミラー面を複数の工程で一つずつ加工するならば、一つの光路上に傾斜方向の異なるミラー面を形成することも可能ではあるが、しかしこの場合には製造効率の低下をも招くこととなる。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ミラー面を好適な製造効率で簡易に製造することができるとともに、ミラー面の形成に係る設計の自由度の向上を図ることができる高分子光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、表面にコアパターンが凹設された合成樹脂製のクラッド基部と、該コアパターンの内部に形成されたコアと、該コアを被覆すべく該クラッド基部の表面に設けられた合成樹脂製のクラッド蓋部とを備え、前記コアパターンの内面の一部を斜面状とすることで光路を変換するためのミラー面を設けた高分子光導波路の製造方法であって、前記コアパターンに応じた形状をなす転写パターンが設けられたスタンパを製造するスタンパ製造工程と、該スタンパを使用した加熱エンボス加工法で前記コアパターンを形成する転写工程と、前記コア及びクラッド蓋部を設ける導波路形成工程とを備え、前記スタンパ製造工程は、フォトレジスト材料製のフォトレジスト層をマスキング部材で被覆する被覆段階と、フォトレジスト層を露光及び現像して前記転写パターンを形成するパターン形成段階とを含み、該被覆段階では、前記マスキング部材として前記パターン形成段階の露光時に用いる光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域が設けられたものを使用し、該階調領域により遮光率を徐々に変化させる方向は前記転写パターン及びコアパターンにより形成される前記コアが延びる方向となるように設定し、該パターン形成段階では前記ミラー面に応じた形状とすべく前記マスキング部材の前記階調領域を利用して前記転写パターンに斜面部を形成することを要旨とする。
【0008】
上記発明によれば、転写工程ではスタンパを使用した加熱エンボス加工法を用いており、そのスタンパには転写パターン及び斜面部が形成されている。このため、クラッド基部の表面に加熱したスタンパを押圧し、転写パターン及び斜面部をクラッド基部の表面に転写するのみで、コアパターン及びミラー面が簡易且つ迅速に成形される。一方、スタンパの製造時においては、フォトレジスト材料と階調領域が設けられたマスキング部材とが使用される。このマスキング部材を使用して露光を行う場合、階調領域で光量が調整されることにより、フォトレジスト材料からなるフォトレジスト層は、階調領域と対応する箇所が斜面部となるように現像される。このため、大掛かりな装置や、長時間を要せずとも、光を照射するという極めて単純且つ簡易な作業で斜面部を形成することができる。また、ミラー面を形成することとなる斜面部は、フォトレジスト層の何れの位置にも形成することが可能であることから、ミラー面の形成に位置的な制限はない。さらに、遮光率を徐々に変化させる方向の設定を各斜面部毎に変更すれば、一つの光路上に傾斜方向の異なる複数のミラー面を設けることも可能となる。なお、遮光率を徐々に変化させる方向の設定の変更は、各階調領域毎に階調を変化させる方向を変更するという極めて単純且つ簡易な作業で対応することができる。従って、ミラー面の形成位置、傾斜方向等が制限されにくく、ミラー面の形成に係る設計の自由度の向上を図ることができるとともに、斜面部を有するスタンパ及びミラー面を有するコアパターンの双方ともに簡易に製造できることから、ミラー面を有する高分子光導波路を好適な製造効率で簡易に製造することができる。
【0009】
請求項2に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被覆段階で使用するフォトレジスト材料は、ネガ型のフォトレジスト材料であることを要旨とする。
【0010】
上記発明によれば、ネガ型のフォトレジスト材料は、ポジ型のフォトレジスト材料に比べ、フォトレジスト材料に係る製造コストの高騰を抑えつつ、フォトレジスト層の厚み増加を図ることが可能である。このため、高分子光導波路のコア径の拡大を図るべく、フォトレジスト層の厚みを増す場合にも、好適な製造効率を維持することができる。なお、ポジ型のフォトレジスト材料でフォトレジスト層の厚み増加を図る場合、フォトレジスト材料の露光不足、露光過多等といった不具合の発生を抑制するには、ポジ型のフォトレジスト材料として、その露光にX線を用い、X線が照射された箇所が可溶化するX線可溶化型のものを使用することが好ましい。しかし、X線可溶化型のフォトレジスト材料を露光するためには、X線の照射に係る装置を使用する必要があり、このような装置は大がかりな上、非常に高価であり、製造コストの高騰を招きやすい。一方、ネガ型のフォトレジスト材料でフォトレジスト層の厚み増加を図る場合には、フォトレジスト材料として、その露光に紫外線を利用する紫外線硬化型のものを使用することが可能である。紫外線の照射に係る装置は、X線の照射に係る装置に比べ、構成が簡易であり、製造コストの高騰を抑えることが可能である。
【0011】
請求項3に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記パターン形成段階の露光時に使用する光は、前記フォトレジスト層に対する吸光度が1以下となるものであることを要旨とする。
【0012】
上記発明によれば、露光時におけるフォトレジスト材料の露光不足、露光過多等といった不具合の発生を好適に抑制することが可能となる。このため、フォトレジスト層の厚みを増しやすく、高分子光導波路のコア径の拡大を図ることができる。
【0013】
請求項4に記載の高分子光導波路の製造方法の発明は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の発明において、前記スタンパ製造工程は、前記転写パターンを型取りして複製パターンを得る型取り段階と、該複製パターンを使用して前記転写パターンを複製する複製段階とを含むことを要旨とする。
【0014】
上記発明によれば、原版となる転写パターンを加熱エンボス加工に使用することなく保管することができるとともに、複製パターンから転写パターンを大量に複製することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ミラー面を有する高分子光導波路を簡易且つ好適な製造効率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
まず、高分子光導波路の構成について説明する。なお、高分子光導波路は、光ファイバーのコネクタ、スプリッタ等のように、光信号を伝搬する際の光回折路、光分波路及び光合波路、光分岐路及び光合成路、光スイッチ、光回路等として使用されるものである。
【0017】
図1(a),(b)に示すように、高分子光導波路は、クラッド基部11と、同クラッド基部11の表面に設けられた複数の凹部からなるコアパターン12と、同コアパターン12の内部に設けられたコア13と、クラッド蓋部14とを有している。クラッド基部11は、フィルム、板材等から矩形状に形成されている。コアパターン12は、スタンパを使用した加熱エンボス加工法によってクラッド基部11の表面に凹設されている。コア13は、コアパターン12の内部を埋めるように、コアパターン12に応じた形状に形成されている。クラッド蓋部14は、薄板状に形成され、コア13の露出部分を被覆するように、クラッド基部11の表面に取着されている。
【0018】
前記クラッド基部11、コア13及びクラッド蓋部14は、光信号として使用される光を透過すべく、全て透明な合成樹脂から形成されている。クラッド基部11及びクラッド蓋部14に使用する合成樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスチレン(PS)等の熱可塑性樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ビニル樹脂等の紫外線硬化樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。クラッド基部11においては、加熱エンボス加工法によるコアパターン12の形成を容易に行うという観点から、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。一方、コア13は、クラッド基部11及びクラッド蓋部14で使用する合成樹脂よりも屈折率の高い合成樹脂が使用される。コア13に使用する合成樹脂の具体例として、クラッド基部11及びクラッド蓋部14の材料として前に挙げた熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、フッ素樹脂等の他、ポリイミド等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0019】
ここで、クラッド基部11、クラッド蓋部14及びコア13に使用する合成樹脂について、透明とは、高分子光導波路によって伝搬される光信号として使用される光の波長域で透明、つまりは光信号に使用する光を吸収しない色調であることを示す。従って、無色透明の合成樹脂に限らず、光信号に使用する光を吸収しなければ、有色透明の合成樹脂を使用してもよい。具体的に、光信号には400〜1600nmの波長域の光が使用され、主に650nm、850nm、1300nm及び1550nmの波長域の光が用途に応じて選択して使用される。このため、クラッド基部11、クラッド蓋部14及びコア13に使用する材料には、これらの波長域の光を吸収しない色調で透明な合成樹脂が使用される。
【0020】
高分子光導波路は、その端部からコア13に光信号が入射されると、同光信号をクラッド基部11又はクラッド蓋部14と、コア13との境界面で反射させる。この反射が繰り返されることにより、光信号は鋸歯状の軌跡を描きながらコア13内を進行し、高分子光導波路の内部を同コア13の延びる方向へ伝搬される。ここで、本実施形態の光路とは、高分子光導波路による光信号の伝搬方向を示すものとする。そして、前述のようにコア13内を伝搬される光信号の光路(図中で横向きの矢印方向)は、本実施形態ではコア13の延びる方向と一致する。
【0021】
当該高分子光導波路において、コア13の延びる方向で両端部(光路の両端)には、クラッド基部11とコア13との境界面にミラー面15がそれぞれ設けられている。各ミラー面15は、光路に対して所定角度(本実施形態では45゜)の斜面状をなしている。これらミラー面15は、コアパターン12の内面の一部である対向する一対の内側面を、クラッド蓋部14へ向かうにつれ互いに離間するテーパ状とすることによって形成されたものである。また、ミラー面15は、コアパターン12を加熱エンボス加工法で成形する際、同コアパターン12とともに前記スタンパを使用して成形される。
【0022】
当該高分子光導波路内を伝搬される光信号は、ミラー面15で反射方向を変えられることにより、その進行方向が変換される。即ち、高分子光導波路の外部から図中で下向きの矢印方向に入射される光信号は、一方のミラー面15により、コア13内を伝搬される光信号へと変換される。また、コア13内を伝搬される光信号は、他方のミラー面15により、高分子光導波路の外部へ図中で上向きの矢印方向に出射される光信号へと変換される。従って、ミラー面15を設けた当該高分子光導波路は、光信号をコア13内のみで伝搬することに限らず、クラッド蓋部14を介して外部から光信号を入射することも、クラッド蓋部14を介して外部へ光信号を出射することも可能である。
【0023】
コアパターン12において、ミラー面15を含む内面の粗さは、光信号に使用する光の波長域の好ましくは10分の1以下であり、より好ましくは20分の1以下である。具体的には、JIS B0601−1994に規定される算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.2μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下である。Raが0.2μmを超える場合、コア13内での進行時に前記境界面で光の乱反射が生じやすく、ノイズが発生する等して光信号を正確に伝搬することができなくなるおそれがある。なお、算術平均粗さ(Ra)が小さくなるに従い、光の乱反射は生じにくくなり、光信号を正確に伝搬することができるようになる。しかし、算術平均粗さ(Ra)を過剰に小さくすれば、製造の長時間化、煩雑化等を招き、製造コストが高騰することから、算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.01μm以上である。
【0024】
コア13の径は、好ましくは3〜2000μmである。なお、本実施形態のコア13の径は、前記光路に直交する面内におけるコア13の一辺の長さで示す。すなわち、光ファイバーから高分子光導波路に光信号を入射したり、高分子光導波路から光ファイバーに光信号を出射したりする場合、結合損失を低減すべく、高分子光導波路のコア径を光ファイバーのコア径に対して最適化する必要がある。また、当該高分子光導波路は、光ファイバーを接続することを前提としており、その光ファイバーのコアの径は、一般に3〜2000μmである。そこで、種々の光ファイバーに対し、それぞれのコアの径と同程度に合わせることができるよう、コア13の径を3〜2000μmとすることが好ましく、50〜2000μmとすることがより好ましい。
【0025】
次に、高分子光導波路を形成するためのスタンパについて説明する。図3(a),(b)及び図4(a)に示すように、スタンパは、原版であるマスタスタンパ21と、該マスタスタンパ21から複製型31を使用して複製された複製スタンパ41とから構成されている。
【0026】
まず、マスタスタンパ21について説明する。マスタスタンパ21は、マスキング部材としてのマスク基板22と、同マスク基板22の表面に設けられた転写パターン23とを有している。転写パターン23は、フォトレジスト材料を用い、前記コアパターン12に応じた形状、換言すればコアパターン12を逆転させた形状となるように形成されている。また、転写パターン23には、前記ミラー面15に応じた形状とすべく、斜面部24が形成されている。従って、転写パターン23及び斜面部24と、コアパターン12及びミラー面15とは所謂ネガ・ポジの関係にある。
【0027】
当該転写パターン23及び斜面部24は、それぞれの表面の荒れがコアパターン12の内面及びミラー面15に転写されるおそれがあることから、表面の粗さが前記光信号に使用する光の波長域の好ましくは10分の1以下、より好ましくは20分の1以下とされている。具体的には、当該表面の算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.1μm以下とされている。Raが0.2μmを超える場合、前記コアパターン12の内面又はミラー面15のRaが0.2μmを超えてしまうおそれがある。なお、転写パターン23及び斜面部24の表面の算術平均粗さ(Ra)が小さくなるに従い、コアパターン12の内面及びミラー面15も平滑なものとなるが、Raを過剰に小さくすれば、製造の長時間化、煩雑化等を招き、製造コストが高騰する。このため、転写パターン23の表面及び斜面部24の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.01μm以上である。
【0028】
前記マスク基板22は、ベース板25と同ベース板25の表面に設けられたマスキングパターン26とから構成されている。ベース板25は、前記転写パターン23を形成すべくフォトレジスト材料の露光に使用する光を透過できるように、同露光に使用する光を吸収しない色調で透明な板材、例えばガラス板、合成樹脂板等から形成されている。このマスキングパターン26は、露光に使用する光を遮蔽する遮光パターン27と、露光に使用する光を透過させる透光パターン28と、遮光パターン27及び透光パターン28の間に設けられた階調パターン29とを備えている。
【0029】
階調パターン29は、露光に使用する光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域を構成している。また、この階調領域は、露光に使用する光に対する遮光率を徐々に変化させる方向が遮光パターン27から透光パターン28へ向かう方向、つまりは前記コア13が延びる方向であり、高分子光導波路においてコア13内を伝搬される光信号の光路と同一方向となるように設定されている。
【0030】
具体的に、本実施形態の遮光パターン27は、ベース板25の表面に薄膜を成膜することによって形成されている。この薄膜の色調は、露光に使用する光を吸収する又は反射する色調となっており、同薄膜が露光に使用する光を吸収又は反射することにより、露光に使用する光が遮蔽される。透光パターン28は、前記薄膜を設けることなく、ベース板25の表面を外部へ露出させることにより形成されており、露光に使用する光を透過させる。一方、階調パターン29は、前記薄膜の膜厚を徐々に変化させることによって形成されている。膜厚を徐々に変化させた薄膜の色調は、露光に使用する光を吸収する又は反射する色調であって、その濃淡が連続的に変化する色調となり、階調パターン29の色調は、遮光パターン27へ近づくにつれ濃くなり、透光パターン28へ近づくにつれ淡くなる。階調パターン29の遮光率は、遮光パターン27及び透光パターン28の遮光率に応じている。例えば、遮光パターン27の遮光率が100%、透光パターン28の遮光率が0%であれば、階調パターン29の遮光率は、遮光パターン27から透光パターン28へ向かう方向へ100〜0%の範囲で連続的に変化する。
【0031】
次いで、前記複製型31について説明する。複製型31は、前記マスタスタンパ21の表面部分、つまりは転写パターン23を型取りして製造されている。この複製型31は、シリコーンゴムから形成されている。複製型31の表面(図4(a)中で上面)には複製パターン32が設けられている。この複製パターン32は、転写パターン23に応じた形状、換言すれば転写パターン23を逆転させた形状とされており、複製パターン32と転写パターン23とは所謂ネガ・ポジの関係にある。従って、複製パターン32は、前記コアパターン12と同一の形状をなしている。
【0032】
次いで、前記複製スタンパ41について説明する。複製スタンパ41は、基材42と、その基材42の表面(図4(a)中で底面)に設けられた転写部43とを有している。この転写部43の表面(図4(a)中で底面)には、前記転写パターン23及び前記斜面部24が複写されている。転写部43は、紫外線硬化型エポキシ樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂、紫外線硬化型ビニル樹脂等の紫外線硬化樹脂から形成されている。また、基材42には、転写部43を硬化させるべく使用される紫外線を吸収しない材料、例えばガラス板等が使用されている。
【0033】
この実施形態では、スタンパのうち、複製スタンパ41を使用して加熱エンボス加工法が行われている。これは、紫外線硬化樹脂からなる転写部43は、フォトレジスト材料からなる前記転写パターン23に比べ、加熱、加圧に対する強度を向上させやすく、加熱エンボス加工法を行う際にスタンパとして使用可能な回数の増加を図ることができるためである。従って、高分子光導波路を少量のみ製造する等、使用可能な回数の増加を図ることを目的としなければ、前記マスタスタンパ21を使用して加熱エンボス加工法を行ってもよい。なお、転写部43を形成する紫外線硬化樹脂には、加熱エンボス加工法で使用されることから、クラッド基部11の材料である合成樹脂よりもガラス転移点(Tg)が高いものを使用することが好ましく、より好ましくはカチオン重合タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂が使用される。
【0034】
次に、高分子光導波路の製造工程について説明する。
高分子光導波路は、スタンパ製造工程と、転写工程と、導波路形成工程とを経て製造される。スタンパ製造工程では、スタンパとして前記マスタスタンパ21と前記複製スタンパ41とが製造される。転写工程では、複製スタンパ41を使用して加熱エンボス加工法を行うことにより、クラッド基部11の表面にコアパターン12が形成される。導波路形成工程では、コアパターン12が形成されたクラッド基部11の表面において、コアパターン12の内部にコア13を形成し、その後にクラッド蓋部14が形成される。
【0035】
前記スタンパ製造工程について説明する。このスタンパ製造工程は、大きく分けてマスタスタンパ21を製造するマスタ製造段階と、複製スタンパ41を製造する複製製造段階との2つの段階に分けられる。
【0036】
まず、マスタ製造段階について説明する。このマスタ製造段階は、被覆段階とパターン形成段階とを備える。図2(a)に示すように、被覆段階では、マスク基板22の表面にフォトレジスト層23aが積層されて形成される。なお、この図2(a)は、ネガ型のフォトレジスト材料を使用した場合を示す。このフォトレジスト層23aの形成は、マスク基板22の表面に液状のフォトレジスト材料をキャスト(注入)した後、同フォトレジスト材料を加熱乾燥して溶媒成分を除去し、固化することにより行われる。このようにして形成されたフォトレジスト層23aは、その表面(図2(a)中で底面)がマスキング部材であるマスク基板22により被覆されることとなる。このマスク基板22においては、フォトレジスト材料がネガ型のものであることから、マスキングパターン26の透光パターン28が所望する転写パターン23と同一形状のものが使用される。
【0037】
前記パターン形成段階では、図2(a)中に矢印で示すように、まずマスク基板22を介してフォトレジスト層23aに露光に使用する光が図2(a)中で底面側から照射され、該フォトレジスト層23aが露光される。このとき、マスク基板22の階調パターン29においては、遮光パターン27側から透光パターン28側へ向かうに従い、露光に使用する光を透過させやすくなることから、同階調パターン29を透過した光の光強度が連続的に変化する。このように階調パターン29で光強度を連続的に変化させることにより、露光に使用する光による前記フォトレジスト材料の露光度も遮光パターン27と透光パターン28との間で連続的に変化することとなる。その結果、フォトレジスト層23aで階調パターン29と対応する箇所は、図2(a)中に点線で示すように、斜面状に露光されることとなる。その後、フォトレジスト層23aを現像し、同フォトレジスト層23aの一部を除去する。すると、図3(a)に示すように、マスク基板22の表面には転写パターン23が残るとともに、フォトレジスト層23aの斜面状に露光された箇所が斜面部24を形成することとなり、マスタスタンパ21が形成される。
【0038】
ここで、ポジ型のフォトレジスト材料を使用する場合について説明する。図2(b)に示すように、ポジ型のフォトレジスト材料からなるフォトレジスト層23aは、ベース板25の表面に積層され、同フォトレジスト層23aの表面は、マスキング部材としてのマスキングシート26aにより被覆される。このマスキングシート26aは、遮光パターン27と、透光パターン28と、階調パターン29とを有し、遮光パターン27は所望する転写パターン23と同一形状とされ、透光パターン28は転写パターン23と反転した形状とされる。そして、同マスキングシート26aの表面側からフォトレジスト層23aの露光を行った結果、図3(a)に示した転写パターン23と同形状の転写パターンが得られる。
【0039】
なお、コア13の径を拡大すべくフォトレジスト層23aの厚み増加を図る場合、製造コストの高騰を抑制できるという観点から、ネガ型のフォトレジスト材料を使用することが好ましい。これは、ネガ型のフォトレジスト材料であれば、フォトレジスト層23aの膜厚を厚くする場合でも紫外線硬化型のものを使用することができるためである。ポジ型のフォトレジスト材料でフォトレジスト層23aの厚み増加を図る場合、X線可溶化型のものを使用する必要性が高まり、前記パターン形成段階におけるフォトレジスト層23aの露光時に大掛かりで高価な装置を使用する可能性が高まる。
【0040】
コア13の径を拡大すべく、前記フォトレジスト層23aの厚み増加を図る場合(具体的にはフォトレジスト層23aの膜厚を100μm以上とする場合)について説明する。この場合、マスク基板22の表面内でフォトレジスト層23aの膜厚を均一にするため、前記被覆段階では次に記載するような方法を採用することが好ましい。すなわち、まず所望するフォトレジスト層23aの厚みと同じ高さのスペーサを用意し、同スペーサをマスク基板22の表面に設置する。次いで、マスク基板22の表面にフォトレジスト材料を前記スペーサよりも盛り上がるようにキャストし、フォトレジスト材料を固化する。この後、表面が平坦な押圧部材を用い、フォトレジスト材料を加熱しつつ、同フォトレジスト材料の表面を押圧部材で押圧する。すると、フォトレジスト材料は、その表面がスペーサよりも盛り上がった状態から平坦な状態とされることから、フォトレジスト層23aの膜厚が均一となる。
【0041】
また、被覆段階で押圧部材を使用する場合、前記フォトレジスト材料には、押圧時の温度でフォトレジスト層23aを変形できるものが使用される。なお、押圧時において、押圧部材、フォトレジスト層23a及びマスク基板22は、未露光状態にあるフォトレジスト材料のガラス転移点(Tg)以上の温度となるように加熱される。フォトレジスト層23aの厚みは、前記コア13の径と同じであり、3〜2000μmである。
【0042】
フォトレジスト層23aは、その厚みを、例えば100〜2000μmのように厚く形成した場合、表面部と底部(マスク基板22の表面)とで露光条件が異なることにより、転写パターン23が正確に形成されなくなる可能性が高くなる。従って、露光に使用する光には、フォトレジスト層23aに対する吸光度が、1以下となる光を使用することが好ましく、0.02〜1となる光を使用することがより好ましい。なお、吸光度が1以下となる光とは、フォトレジスト層23aを所望の厚み(所望とするコア13の径と同じ長さ)に形成した状態で、自記分光光度計(島津製作所製のUV−3100PC)を用いて同フォトレジスト層23aの吸光度を測定したとき、その吸光度が1以下となる光を示すものとする。露光に使用する光として吸光度が1を超える波長域の光を使用した場合、光の多くがフォトレジスト層23aの表面部で吸収され、同フォトレジスト層23aの底部まで光が達しない可能性が高くなる。この場合、フォトレジスト層23aの表面部と底部とで光強度の差が大きくなり、表面部と底部とで最適な露光条件が異なってしまう。
【0043】
例えば、露光に使用する光として底部に最適な露光条件となる波長域の光を使用すれば、表面部では露光過多となるため、転写パターンは表面部と底部とで幅の異なるものとなってしまう。具体例として、吸光度が1を超える波長域の光を使用し、ネガ型のフォトレジスト層23aで転写パターンを形成しようとした場合、転写パターンの表面部が底部に比べて幅広となる。これに対し、露光に使用する光として表面部に最適な露光条件となる波長域の光を使用すれば、底部では露光不足となり、前例のように転写パターンは表面部と底部とで幅の異なるものとなってしまう。さらには、ネガ型のフォトレジスト材料を使用した場合には現像時に転写パターンが基板から剥離してしまったり等の不具合を生じるおそれがある。
【0044】
なお、露光に使用する光の光源には、特定の波長域でのみ発光するものを用いてもよく、また、高圧水銀灯やキセノン灯などの多波長の光を発光するものを用いてもよい。但し、特定の波長域でのみ発光する光源を使用する場合には、吸光度が0.02未満となるような波長域の光のみ発光するものは避けることが好ましい。フォトレジスト層23aは、その吸光度が0.02未満の波長域の光のみで露光した場合、フォトレジスト層23aに吸収される光量が少なくなり、転写パターン23を形成できなくなるおそれがある。一方、多波長の光を発光する光源を使用する場合には、吸光度が0.02未満となるような波長域の光が含まれていてもよいが、吸光度が1を超えるような波長域の光は遮蔽することができるようにフィルター等を併用することが好ましい。
【0045】
次いで、前記複製製造段階について説明する。この複製製造段階は、型取り段階と複製段階とを備える。型取り段階では、前記マスタ製造段階で得られたマスタスタンパ21を用い、同マスタスタンパ21から転写パターン23を型取りする。この型取りは、図3(b)に示すように、マスタスタンパ21の表面に液状のシリコーンゴムを塗布し、同シリコーンゴムを硬化させ、複製型31を形成することにより行われる。そして、型取り段階で得られた複製型31には、前記転写パターン23を型取りして得られた複製パターン32が形成されることとなる。また、この複製パターン32は、前記斜面部24を型取りした複製斜面部33を有している。型取り段階の後、複製型31はマスタスタンパ21の表面から剥離され、前記複製段階で使用される。なお、シリコーンゴムには、縮合反応型のものと、付加反応型のものとがあり、何れを使用してもよいが、付加反応型のシリコーンゴムを使用することがより好ましい。これは、付加反応型のものは、その硬化時に副生成物が発生せず、また硬化時の体積収縮率も小さいため、転写パターン23をより精密な寸法精度で型取りすることができるためである。
【0046】
また、マスタスタンパ21から複製型31を離型する際、転写パターン23の傷つき、破損等を抑制し、離型性を向上させるため、シリコーンゴムを塗布する前に該マスタスタンパ21の表面に離型剤を予め塗布する等の離型向上処理を施してもよい。或いは、フォトレジスト層23aから押圧部材を取り除く、複製型31から複製スタンパ41を離型する等の際において、離型向上処理を施してもよい。さらには、マスタスタンパ21又は複製スタンパ41からクラッド基部11を離型する等の際において、離型向上処理を施してもよい。このような離型向上処理としては、フッ素樹脂、フッ素化合物、シリコーン樹脂、シリコーン化合物等の離型剤を塗布する湿式処理、フッ素含有ガス等を用いるCVD処理、無機化合物をスパッタリングしたり、金属を真空蒸着したり等する乾式処理等が挙げられる。
【0047】
前記複製段階では、前記型取り段階で得られた複製型31を用い、複製スタンパ41が形成される。すなわち、図4(a)に示すように、まず複製型31の表面に紫外線硬化樹脂が塗布され、同紫外線硬化樹脂に接触するように基材42が載置される。この後、図中に矢印で示すように、基材42を介して上方から紫外線が照射される。すると、紫外線硬化樹脂が硬化して前記転写部43が形成される。そして、複製型31から転写部43を剥離することにより、その表面に前記マスタスタンパ21と同様の転写パターン23及び斜面部24が複写された複製スタンパ41が得られる。
【0048】
続いて、前記転写工程について説明する。転写工程は、加熱エンボス加工法で行われる。すなわち、まず前記複製スタンパ41及び前記クラッド基部11が加熱され、クラッド基部11を形成する合成樹脂のガラス転移点(Tg)以上の温度とされる。次いで、図5(a)に示すように、加熱された複製スタンパ41がクラッド基部11の表面に押し付けられた後、複製スタンパ41及びクラッド基部11がガラス転移点(Tg)以下となるまで冷却され、同複製スタンパ41がクラッド基部11から剥離される。すると、図5(b)に示すように、クラッド基部11の表面に複製スタンパ41の転写パターン23が転写されて前記コアパターン12が形成されるとともに、斜面部24が転写されて前記ミラー面15が形成される。
【0049】
最後に、前記導波路形成工程について説明する。導波路形成工程では、まずコアパターン12の内部にコア13が形成される。コア13の形成は、コアパターン12内に前述の紫外線硬化樹脂を充填した後、紫外線を照射することによって行われる。この他に、溶剤に溶解する等して液状とした合成樹脂をコアパターン12内に充填し、減圧雰囲気下又はクラッド基部11の材料である合成樹脂のTg以下の温度雰囲気下で溶剤を揮発させ、合成樹脂を硬化させる等してコア13の形成を行ってもよい。その後、図1(a),(b)に示すように、クラッド基部11の表面にクラッド蓋部14が形成され、高分子光導波路が製造される。同クラッド蓋部14の形成は、フィルムを貼着する、クラッド基部11の表面に紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線の照射により硬化させる、スピンコート法等で液状とした合成樹脂を塗布し、硬化させる等の方法で行われる。
【0050】
前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の高分子光導波路は、光路を変換するためのミラー面15を有している。このミラー面15は、複製スタンパ41を用いた加熱エンボス加工法により、同複製スタンパ41の斜面部24がクラッド基部11の表面に転写されて形成されたものである。さらに、複製スタンパ41はマスタスタンパ21から転写パターン23及び斜面部24を複写して得られたものである。そして、マスタスタンパ21の転写パターン23及び斜面部24は、フォトレジスト材料と階調パターン29を有するマスク基板22を利用して形成されたものである。このため、転写パターン23及び斜面部24の形成は、フォトレジスト層23aの露光及び現像によって行われており、エッチング、レーザー加工等の煩雑な方法によらずとも、短時間で、かつ簡易に行うことが可能である。
【0051】
・ また、マスタスタンパ21の転写パターン23の形成には、ネガ型のフォトレジスト材料が使用されている。ネガ型のフォトレジスト材料は、ポジ型のフォトレジスト材料に比べ、フォトレジスト材料に係る製造コストの高騰を抑えつつ、フォトレジスト層の厚み増加を図ることが可能である。このため、高分子光導波路のコア径の拡大を図るべく、フォトレジスト層の厚みを増す場合にも、好適な製造効率を維持することができる。
【0052】
・ また、100μm以上の膜厚を有するフォトレジスト層23aの露光に使用する光には、該フォトレジスト層23aの吸光度が1以下となるような波長域のものを使用している。これにより、フォトレジスト層23aの表面部と底部とで最適な露光条件に差が生じることを抑制することができ、フォトレジスト層23aから形成される転写パターン23を好適な形状とすることが可能である。
【0053】
・ また、マスタスタンパ21から複製スタンパ41を複製し、該複製スタンパ41を加熱エンボス加工に用いることにより、原版であるマスタスタンパ21を長期間維持することが可能であり、製造効率の向上を図ることができる。
【0054】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図6(a)に示すように、フォトレジスト層23aをネガ型のフォトレジスト材料から形成し、ベース板25とマスキングパターン26とからなるマスク基板22を用いてフォトレジスト層23aの露光を行ってもよい。さらに、図6(b)に示すように、フォトレジスト層23aをポジ型のフォトレジスト材料から形成し、前記マスキングパターン26と同様の遮光パターン27、透光パターン28及び階調パターン29を有するマスキングシート26aと、ベース板25とを用いてフォトレジスト層23aの露光を行ってもよい。なお、これらの場合、マスタスタンパ21は、図3(a)に示したような凸型のものではなく、凹型のものとして形成され、斜面部24は、図6(a),(b)中の上方へ向かうにつれ互いに離間するテーパ状となる。
【0055】
・ 図2(b)及び図6(b)でフォトレジスト層23aをネガ型のフォトレジスト材料から形成し、図2(a)及び図6(a)でフォトレジスト層23aをポジ型のフォトレジスト材料から形成してもよい。但し、この場合にはクラッド基部11の作製等が難しくなる。なお、ネガ型のフォトレジスト材料を使用する場合、クラッド基部11の作製等を好適なものとするには、図2(a)及び図6(a)に示した結果から、ベース板25とフォトレジスト層23aとでマスキングパターン26を挟み込むように、マスク基板22の表面にフォトレジスト層23aを設けることが好ましい。一方、ポジ型のフォトレジスト材料を使用する場合、クラッド基部11の作製等を好適なものとするには、図2(b)及び図6(b)に示した結果から、フォトレジスト層23aの表面をマスキングシート26aで被覆することが好ましい。
【0056】
・ 図7(b)に示すように、高分子光導波路において、コア13の延びる方向で中間部(光路の途中)に一対のミラー面15が三角形状に配置されるようにコアパターン12を形成してもよい。なお、この高分子光導波路は、コア13の内部の光路と外部の光路とを繋ぐ合分岐型のものである。また、マスタスタンパ21は、図7(a)に示すような形状とされる。すなわち、マスク基板22において、ベース板25の表面には2つのマスキングパターン26が設けられている。これらマスキングパターン26は、透光パターン28及び階調パターン29を有しており、それぞれの階調パターン29が隣接するように配置されている。
【0057】
・ 図8(b)に示すように、高分子光導波路において、コア13の延びる方向で中間部(光路の途中)にミラー面15を設けるとともに、ミラー面15の高さをコア13の径よりも低くし、コア13の内部の光路を一部開放することにより、コア13を伝搬される一部の光信号の光路を変換するように構成してもよい。この場合、マスタスタンパ21は、図8(a)に示すような形状とされる。すなわち、マスク基板22において、ベース板25の表面には2つのマスキングパターン26が設けられている。これらマスキングパターン26は、透光パターン28及び階調パターン29を有しており、それぞれの階調パターン29が隣接するように配置されている。また、階調パターン29は実施形態のものに比べて遮光率が低くなっている。
【0058】
・ 本実施形態ではコア13の延びる方向で両端部(光路の両端)にミラー面15を互いにテーパ状をなすように設けたが、ミラー面15は実施形態の形状に限らず所望に応じ形状となるように適宜設けてもよい。例えば、図9に示すマスタスタンパ21は、図3(a)、図7(a)及び図8(a)に示した斜面部24を有する転写パターン23を組み合わせて得られたものである。さらに、このマスタスタンパ21は、マスク基板22の厚み方向(図中で上下方向)に傾斜する斜面部24のみならず、マスク基板22の面方向(図中で前後又は左右方向)に傾斜する第2斜面部24aをも有している。このような斜面部24及び第2斜面部24aの双方を有する転写パターン23であっても、マスキングパターン26の遮光パターン、透光パターン及び階調パターンを適宜組み合わせることにより、簡易に作成することが可能である。このマスタスタンパ21、或いは当該マスタスタンパ21から得られた複製スタンパを用いた加熱エンボス加工法により、図10に示すような高分子光導波路が得られる。この高分子光導波路は、クラッド蓋部14の上面に図示しない検出器及び光源(レーザーデバイス(LD)又は発光ダイオード(LED))が設けられている。そして、この高分子光導波路においては、コア13内を伝搬される光信号が各ミラー面15により前記検出器へと出射されたり、或いは前記光源から入射された光信号が各ミラー面15によりコア13内を伝搬されたり等するように構成されている。また、第2斜面部24aにより形成された第2ミラー面15aにより、この高分子光導波路の内部においてコア13同士の間で光信号を出射及び入射することも可能である。加えて、この図10に示す高分子光導波路は、ミラー面15又は第2ミラー面15aの位置及び傾斜方向を各光路毎に個々に定めることが可能であり、各光路でそれぞれ光路の端部を定めることも、或いは各光路の何れの箇所から光信号を取り出すこともできる。一方、クラッド基部11の下面に検出器を設けた場合には、図11(a)に示したようなマスタスタンパ21を用い、図11(b)に示す互いに向かい合うようなミラー面15を設けることにより、クラッド基部11を介して高分子光導波路の外部へ光信号を出射或いは入射することが可能となる。以上のように、本発明における高分子光導波路の製造方法によれば、ミラー面の形成において、形成位置の制限及び傾斜方向の制限はなく、光路上において所望する任意の位置に任意の傾斜方向でミラー面を設けることが可能である。また、図9に示したように、マスキングパターンを適宜設定することにより、一の工程で多種多様な斜面部を有する転写パターンを形成することが可能であり、さらに当該転写パターンから多種多様なミラー面を一の工程で形成することも可能である。従って、本発明によれば、ミラー面の形成に係る製造効率を好適に保持しつつ、ミラー面の形成に係る設計の自由度の向上を図ることができる。
【0059】
・ ミラー面15は、45゜に限らず、30゜、60゜等とする等、0°を超え、90゜未満の角度であれば、何れの角度としてもよい。なお、ミラー面15の角度をθ、階調パターン29の長さをL、フォトレジスト層23aの厚みをTとした場合、角度θ、長さL、厚みTの間には、L=T÷tanθの関係式が成立する。
【0060】
・ ミラー面15に金属膜や誘電体多層膜等からなる反射層を形成する等して、同ミラー面15を鏡面としてもよい。
・ 階調パターン29は、薄膜を形成することに限らず、例えば濃淡が連続的に変化する灰色等の中間色で塗装したり、磨りガラスで形成したり、ドットパターンの印刷によって形成したり等してもよい。
【0061】
・ 前記複製スタンパ41は、実施形態で示したものに限らず、例えば図4(b)に示すように、複製型31の表面に電鋳法等の方法でニッケル(Ni)等の金属元素を堆積させる等の方法で製造してもよい。このように複製スタンパ41を金属製とした場合、樹脂製のものに比べ、強度及び耐久性を向上させることができる。
【0062】
・ 複製スタンパ41を転写部43のみで構成してもよい。或いは、基材42には、ガラス基板に限らず、前記ベース板25と同様の材料を使用してもよい。なお、例えば、基材42にシリコン基板等を使用した場合、転写部43の材料に熱硬化性樹脂を使用し、マスタスタンパ21を加熱することにより、当該熱硬化性樹脂を硬化させるように構成してもよい。
【0063】
・ 複製型31は、必ずしもシリコーンゴムによって形成されることに限らず、例えば前述の紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フッ素樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂、熱可塑性エラストマー等より形成してもよい。また、マスタスタンパ21を使用した加熱エンボス加工法により、合成樹脂製のフィルム、基板等から複製型31を製造してもよい。
【0064】
・ 前記クラッド蓋部14は、コア13で使用する合成樹脂よりも屈折率が低く、クラッド基部11と屈折率が同程度の合成樹脂であれば、何れの合成樹脂で形成してもよい。例えば、クラッド基部11を熱可塑性合成樹脂で形成するとともに、クラッド蓋部14を紫外線硬化性樹脂で形成してもよい。あるいは、クラッド蓋部14をポリイミド等の熱硬化性樹脂で形成してもよい。また、クラッド蓋部14は、液状の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂等をスピンコート法等の方法でクラッド基部11の表面に塗布し、硬化させて形成してもよい。
【0065】
・ 前記クラッド基部11は、必ずしも加熱エンボス法によって形成されることに限らず、例えばマスタスタンパ21又は複製スタンパ41の表面に熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂を塗布し、硬化させることによって形成してもよい。
【0066】
・ 高分子光導波路を、例えばシリコン基板、金属基板、金属酸化物基板、ガラス基板等といった基板材料の表面に設けてもよい。このように高分子光導波路を基板材料の表面に設ける場合、クラッド基部11は図示しない基板材料の表面に積層される。
【0067】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 光路を変換するミラー面が設けられたコアパターンを加熱エンボス加工法によって高分子光導波路に形成するために使用されるスタンパの製造方法であって、フォトレジスト材料からなるフォトレジスト層をマスキング部材で被覆する被覆段階と、該フォトレジスト層の露光及び現像により前記コアパターンに応じた形状をなす転写パターンを形成するパターン形成段階とを備え、前記被覆段階では、前記マスキング部材として、前記パターン形成段階の露光時に使用する光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域が設けられたものを使用し、当該階調領域によって該遮光率を徐々に変化させる方向は、前記転写パターン及び前記コアパターンにより形成されることとなる前記コアが延びる方向となるように設定し、前記パターン形成段階では、前記ミラー面に応じた形状とすべく、前記マスキング部材の前記階調領域を利用して前記転写パターンに斜面部を形成することを特徴とするスタンパの製造方法。
【0068】
・ 前記マスキング部材はベース板とマスキングパターンとからなり、前記被覆段階では、当該マスキングパターンを前記ベース板と前記フォトレジスト層とで挟み込むように前記マスキング部材の表面に前記フォトレジスト層を形成することを特徴とする請求項2から請求項4の何れか一項に記載の高分子光導波路の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)は実施形態の高分子光導波路を正面から見た状態を示す断面図、(b)は実施形態の高分子光導波路を側面から見た状態を示す断面図。
【図2】(a)及び(b)はフォトレジスト材料を露光させる状態を示す側断面図。
【図3】(a)はマスタスタンパを示す側断面図、(b)は複製型を製造する状態を示す側断面図。
【図4】(a)及び(b)は複製スタンパを製造する状態を示す側断面図。
【図5】(a)は複製スタンパを使用してクラッド基部を成形する状態を示す側断面図、(b)は成形されたクラッド基部を示す側断面図。
【図6】(a)及び(b)は、別方法でフォトレジスト材料を露光させる状態を示す側断面図。
【図7】(a)は別形態のマスタスタンパを示す側断面図、(b)は別形態の高分子光導波路を示す側断面図。
【図8】(a)は別形態のマスタスタンパを示す側断面図、(b)は別形態の高分子光導波路を示す側断面図。
【図9】別形態のマスタスタンパを示す斜視図。
【図10】別形態の高分子光導波路を示す斜視図。
【図11】(a)は別形態のマスタスタンパを示す側断面図、(b)は別形態の高分子光導波路を示す側断面図。
【符号の説明】
【0070】
11…クラッド基部、12…コアパターン、13…コア、14…クラッド蓋部、21…マスタスタンパ、22…基板、23…転写パターン、23a…フォトレジスト層、31…複製型、32…複製パターン、41…複製スタンパ、51…スペーサ、52…押圧部材、53…マスク部材、54…開口パターン、55…遮光パターン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にコアパターンが凹設された合成樹脂製のクラッド基部と、該コアパターンの内部に形成されたコアと、該コアを被覆すべく該クラッド基部の表面に設けられた合成樹脂製のクラッド蓋部とを備え、前記コアパターンの内面の一部を斜面状とすることで光路を変換するためのミラー面を設けた高分子光導波路の製造方法であって、
前記コアパターンに応じた形状をなす転写パターンが設けられたスタンパを製造するスタンパ製造工程と、該スタンパを使用した加熱エンボス加工法で前記コアパターンを形成する転写工程と、前記コア及びクラッド蓋部を設ける導波路形成工程とを備え、
前記スタンパ製造工程は、フォトレジスト材料製のフォトレジスト層をマスキング部材で被覆する被覆段階と、フォトレジスト層を露光及び現像して前記転写パターンを形成するパターン形成段階とを含み、
該被覆段階では、前記マスキング部材として前記パターン形成段階の露光時に用いる光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域が設けられたものを使用し、該階調領域により遮光率を徐々に変化させる方向は前記転写パターン及びコアパターンにより形成される前記コアが延びる方向となるように設定し、
該パターン形成段階では前記ミラー面に応じた形状とすべく前記マスキング部材の前記階調領域を利用して前記転写パターンに斜面部を形成する
ことを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記被覆段階で使用するフォトレジスト材料は、ネガ型のフォトレジスト材料であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成段階の露光時に使用する光は、前記フォトレジスト層に対する吸光度が1以下となるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記スタンパ製造工程は、前記転写パターンを型取りして複製パターンを得る型取り段階と、該複製パターンを使用して前記転写パターンを複製する複製段階とを含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項1】
表面にコアパターンが凹設された合成樹脂製のクラッド基部と、該コアパターンの内部に形成されたコアと、該コアを被覆すべく該クラッド基部の表面に設けられた合成樹脂製のクラッド蓋部とを備え、前記コアパターンの内面の一部を斜面状とすることで光路を変換するためのミラー面を設けた高分子光導波路の製造方法であって、
前記コアパターンに応じた形状をなす転写パターンが設けられたスタンパを製造するスタンパ製造工程と、該スタンパを使用した加熱エンボス加工法で前記コアパターンを形成する転写工程と、前記コア及びクラッド蓋部を設ける導波路形成工程とを備え、
前記スタンパ製造工程は、フォトレジスト材料製のフォトレジスト層をマスキング部材で被覆する被覆段階と、フォトレジスト層を露光及び現像して前記転写パターンを形成するパターン形成段階とを含み、
該被覆段階では、前記マスキング部材として前記パターン形成段階の露光時に用いる光に対する遮光率を所定方向で徐々に変化させる階調領域が設けられたものを使用し、該階調領域により遮光率を徐々に変化させる方向は前記転写パターン及びコアパターンにより形成される前記コアが延びる方向となるように設定し、
該パターン形成段階では前記ミラー面に応じた形状とすべく前記マスキング部材の前記階調領域を利用して前記転写パターンに斜面部を形成する
ことを特徴とする高分子光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記被覆段階で使用するフォトレジスト材料は、ネガ型のフォトレジスト材料であることを特徴とする請求項1に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成段階の露光時に使用する光は、前記フォトレジスト層に対する吸光度が1以下となるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高分子光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記スタンパ製造工程は、前記転写パターンを型取りして複製パターンを得る型取り段階と、該複製パターンを使用して前記転写パターンを複製する複製段階とを含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の高分子光導波路の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−98798(P2006−98798A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285441(P2004−285441)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】
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