説明

高収縮繊維

【課題】沸騰水収縮率が高く、織物として用いた際に高密度を得ることの出来る高収縮繊維を提供すること。
【解決手段】ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーからなる繊維であって、それぞれの重量比率が35:65〜70:30、破断強度が4.00cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮繊維。好ましい態様として、上記高収縮繊維のナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーの重量比率が45:55〜55:45であるものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮性能が高く、織物として用いた際に高密度を得ることの出来る高収縮繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度の織物の開発において、熱処理によって高い収縮性能を示す繊維が求められている。そして、このような高収縮性繊維を製織した織物に熱処理を施すと、高収縮性の繊維が収縮することによって、経糸と緯糸の間の目が詰まり、適度なハリ、コシと反発感などを有する高密度織物を得ることができる。
【0003】
このような高収縮性の繊維として、高収縮性のポリエステルフィラメントが用いられているが、収縮させた後の風合いが硬く、衣料用途としての快適性に問題があった。
【0004】
特開平3−64516号公報には、沸騰水収縮率が15%以上である高収縮性のナイロン繊維が開示されている。しかしながら、この繊維は他の繊維と混繊して異収縮混繊糸とするためのものであり、この繊維を製織した織物に熱処理を施しても、収縮応力が小さいため十分に収縮されず、高密度の織物を得ることはできなかった。
【0005】
特開平8−209444号公報には、沸騰水収縮率が30%以上である高収縮性のナイロン繊維が開示されている。しかしながら、この繊維を製造するために用いられるポリマーは共重合によって製造されるため、共重合ポリマーを製造するのに手間がかかり、またコストも高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−64516号公報
【特許文献2】特開平8−209444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するためになされたもので、沸騰水収縮率が高く、織物として用いた際に高密度を得ることの出来る高収縮繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明はナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーからなる繊維であって、それぞれの重量比率が35:65〜70:30、破断強度が4.00cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮繊維を第1の要旨とする。ここで言うナイロンMXD6とは、メタキシレンジアミンとアジピン酸との重合反応から得られる結晶性のポリアミドである。
【0009】
また、本発明の好ましい態様として、上記高収縮繊維のナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーの重量比率が45:55〜55:45であるものが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高収縮繊維は、ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーが、それぞれ重量比率35:65〜70:30で混合されていることによって高い収縮性能を示す。ま
た、適度な強度を保持している為、製織性が良好であり、織物としての高い引裂強力を有する。更にはポリエステル高密度織物にはない良好な風合いを有する。
【0011】
また、共重合ではなく、ポリマーの混合物を用いるため、共重合工程が不要となり共重合にかかる手間やコストを抑えることが出来る。
【0012】
本発明の高収縮繊維の中でも、ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーの重量比率がそれぞれ45:55〜55:45であるものは沸騰水収縮率が特に高く、本発明繊維を製織して収縮加工を施した際には、より高密度の織物を得ることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられるポリマー混合物は、ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーをそれぞれ35:65〜70:30の重量比率で混合したものであることが必要である。これを原料として高収縮繊維を得ることが出来る。ナイロンMXD6ポリマーが35重量%未満、或いは70重量%を超える比率である場合、沸騰水収縮率の高い繊維を得ることが出来ない。
【0014】
本発明に用いられるポリマー混合物は、ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーの重量比率が45:55〜55:45であることが特に好ましい。重量比率が45:55〜55:45であれば、沸騰水収縮率(%)が特に大きいため、より高密度の織物を得ることが出来る。
【0015】
ナイロン6ポリマーは、溶融紡糸の安定操業性の観点から、相対粘度が2.2以上であることが好ましい。より好ましくは相対粘度が2.4以上、特に好ましくは相対粘度が2.7以上である。また、相対粘度の上限は特に限定されないが、溶融紡糸の安定操業性の観点から、3.5までで十分である。
【0016】
ナイロンMXD6ポリマーは、溶融紡糸の安定操業性の観点から、相対粘度が2.1以上であることが好ましい。より好ましくは相対粘度が2.3以上、特に好ましくは相対粘度が2.5以上である。また、相対粘度の上限は特に限定されないが、溶融紡糸の安定操業性の観点から、3.3までで十分である。
【0017】
ナイロン6ポリマー、ナイロンMXD6ポリマーの水分率(ppm)は特に限定されず、適宜決定することが出来る。紡糸操業性の観点から、どちらも紡糸時の水分率が500ppm以下のものを用いるのが好ましい。より好ましくは300ppm以下、特に好ましくは200ppm以下である。
【0018】
ポリマーには、紡糸操業性を良好にするために無機粒子を含有することが好ましい。そのための無機粒子は数多く存在し、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、アルミナなどが挙げられる。紡糸操業性に支障がなければ、添加する無機粒子は特に限定されないが、分散性やコストパフォーマンスの観点より酸化チタンが好ましく用いられる。無機粒子を糸重量に対し0.1重量%〜3.0重量%添加することが好ましく、0.3重量%〜1.0重量%が特に好ましい。
【0019】
上記無機粒子を用いる場合、粉末あるいは粒子の平均粒子径は、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜2μmが特に好ましい。この範囲であると、粒子の凝集が起こりにくくなるため、糸ムラが生じにくくなり、安定した強度を得ることができる。
【0020】
ナイロン6ポリマーとナイロンMXD6ポリマーの混合方法は特に限定されない。例え
ば、容器でナイロン6ポリマーとナイロンMXD6ポリマーのチップをかき混ぜたり、或いは混練したりすればよい。
【0021】
本発明繊維を得るための紡糸方法、延撚方法は特に限定されない。コンベンショナル方式での紡糸後に延撚や、紡糸直接延伸法などを適宜決定することが出来る。また延伸方法も特に限定されず、一段延伸や多段延伸など適宜決定することが出来る。
【0022】
紡糸条件は、ポリマーの相対粘度や操業性の観点から適宜決定することが出来る。一例として、次のような例を紹介する。相対粘度が3.0のナイロン6ポリマーと、相対粘度2.7のナイロンMXD6ポリマーを混合して、ポリマー混合物を製造する。そして該ポリマー混合物をコンベンショナル法にて溶融紡糸して未延伸糸を得る。この場合、押出し温度(℃)は280℃〜295℃が好ましく、283℃〜292℃が特に好ましい。また、紡糸巻取り速度(m/min)は500m/min〜2000m/minが好ましく、800m/min〜1700m/minが特に好ましい。
【0023】
コンベンショナル法によって紡糸をした後の延撚条件は特に限定されない。一段延伸、多段延伸や、ローラーヒーター/ローラーヒーターの延伸、ローラーヒーター/プレートヒーターの延伸など、適宜決定することが出来る。
【0024】
一例として、上記のコンベンショナル法での溶融紡糸によって得た未延伸糸を延撚する場合、ローラーヒーターとプレートヒーターを用いるなら、ローラーヒーターは60℃〜90℃が好ましく、70℃〜85℃が特に好ましい。そしてプレートヒーターは130℃〜170℃が好ましく、145℃〜160℃が特に好ましい。
【0025】
延伸倍率は紡糸速度(m/min)に合わせて設定するのが好ましい。紡糸速度と延伸倍率をバランス良く決定することによって、得られる繊維の強度、伸度を調整することが出来、製織性に優れた繊維を得ることが出来る。例えば、紡糸速度を1500m/minとしたとき、延伸倍率は2.0倍〜2.4倍にすることが好ましく、2.1倍〜2.3倍とすることが特に好ましい。
【0026】
延伸速度(m/min)は操業性の観点から500m/min〜1000m/minが好ましく、600m/min〜900m/minが特に好ましい。また、スピンドル回転数(rpm)は、延伸速度に対応した値にすることが好ましい。延伸速度に見合うスピンドル回転数を適宜決定することによって、適当な撚り数となり、良好な操業性、良好な収縮性能を得ることが出来る。スピンドル回転数(rpm)は延伸速度(m/min)の8倍〜12倍の回転数(rpm)とすることが好ましい。
【0027】
本発明繊維の繊度(dtex)は特に限定されず、紡糸可能な範囲で適宜決定することが出来る。高密度織物の製造には、経糸および緯糸の総繊度が30dtex〜300dtexであることが好ましい。より好ましくは40dtex〜200dtex、特に好ましくは50dtex〜150dtexである。ただし、繊度が小さすぎる場合は糸としての収縮性能が小さいものとなるため、十分に収縮し得る繊度とすることが好ましい。
【0028】
本発明繊維の単糸繊度(dtex)、フィラメント数は特に限定されず、紡糸可能な範囲で適宜決定することが出来る。マルチフィラメント、モノフィラメントのどちらでも適宜決定することが出来るが、高収縮織物として使用する際は、高い緻密性が得られることからマルチフィラメントであることが好ましい。マルチフィラメントでの単糸繊度は、1dtex〜6dtexであることが好ましく、2dtex〜4dtexであることが特に好ましい。
【0029】
本発明繊維の断面形状は特に限定されない。紡糸操業性の観点から、丸断面が好ましい。
【0030】
本発明繊維は、破断強度(cN/dtex)が4.00cN/dtex以上であることが必要である。好ましくは4.30cN/dtex以上、特に好ましくは4.60cN/dtex以上である。繊維強度が高いことによって、糸切れを起こすことなく高密度で製織することが可能となる。破断強度が4.00cN/dtex未満の場合、高密度で製織をしようとすると糸切れするため、良好な製織性を得ることが出来ない。
【0031】
本発明繊維は、破断伸度(%)が25%〜55%であることが好ましい。より好ましくは25%〜45%、特に好ましくは30%〜40%である。上記の破断伸度であれば、製織操業性が良好となる。
【0032】
本発明繊維は、熱収縮応力(cN/dtex)が0.15cN/dtex以上であることが好ましい。より好ましくは0.20cN/dtex以上、特に好ましくは0.25cN/dtex以上である。熱収縮応力が上記範囲にあれば、収縮加工を施した際に高い収縮応力で収縮することによって、より高密度の織物を得ることが出来る。
【0033】
以下に本発明繊維を用いて高密度織物を得る方法のひとつを紹介する。
本発明繊維を製織する際の製織方法、織組織は特に限定されず、製織性や意匠性等の観点から適宜決定することが出来る。
【0034】
織物の収縮加工方法は特に限定されず、適宜決定することが出来る。製織後の生機に一定張力を加えながら、熱水に浸すことが好ましい。その際、熱水温度は90℃〜100℃、浸水時間は5分間〜30分間、経方向と緯方向それぞれに0.05cN/dtex〜0.20cN/dtexの引張張力をかけながら収縮加工を施すことが好ましい。
【0035】
収縮加工後の高密度織物について、その引裂強力(N)は、経糸切断方向の引裂強力が20N以上、かつ緯糸切断方向の引裂強力が15N以上であることが好ましく、経糸切断方向の引裂強力が25N以上、かつ緯糸切断方向の引裂強力が20N以上が特に好ましい。引裂強力が大きければ、収縮加工後でも耐久性の高い高密度織物を得ることが出来る。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。
【0037】
A.相対粘度の測定
相対粘度の測定は、柴山科学機械製作所製の自動粘度測定装置(SS−600−L1型)を用いて測定する。溶媒に95.8%濃硫酸を用いて、ポリマーを1g/dlの濃度で溶解させて、恒温槽25℃にて測定する。
【0038】
B.破断強度、破断伸度の測定
JIS−L−1013に準じ、島津製作所製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張速度20cm/minの条件で測定する。荷重−伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とする。
【0039】

C.沸騰水収縮率の算出
沸騰水収縮率の算出方法は以下の通りである。まず繊維を折り返し、折り返した位置に0.2gの荷重を吊るす。室温で10分間放置してその繊維長を測定した後、沸騰水に2
0分間浸ける。沸騰水から取り出したものを室温で10分間放置した後、収縮後の繊維長を測定する。沸騰水収縮率Δwは以下の式で求められる。
Δw=[(L0−L1)/L0]×100(%)
L0:0.2gの荷重をかけた状態での収縮前の繊維長
L1:0.2gの荷重をかけた状態での収縮後の繊維長
【0040】
D.熱収縮応力の測定
熱収縮応力は、カネボウエンジニアリング製のKE−II型収縮応力測定装置を用いて測定する。長さ5cmのループ状として糸端を結んだ試料に、繊度×2/30(cN)の初期荷重をかけて、室温から120℃/minの昇温速度で加熱した際の熱収縮力を測定する。測定した熱収縮力の最高点を熱収縮力のピーク(cN)とし、そのときの温度を熱収縮力ピーク温度(℃)とする。そして上記熱収縮力の最高値を、繊維繊度の2倍で除した値を熱収縮応力(cN/dtex)とする。
【0041】
E.製織性評価
スルーザー社製織機を用いて、回転数300rpmで平織組織の織物を製織し、毛羽や糸切れ発生のため正常な製織を維持できずに停機せざるを得なくなった時点での製織長を測定する。製織長が長い方が製織性良好と言える。製織長が500m以上のものを製織性良好、500m未満のものを製織性不良とする。
【0042】
F.カバーファクター
カバーファクターとは、以下の式
{糸の総繊度(dtex)}1/2 ×{織物密度(本/2.54cm)}
で表され、経糸、緯糸別に求められたカバーファクターの総和で表される。カバーファクターが大きいことは織物面積に占める糸の面積が大きいことを意味し、織物の緻密性が高いと言える。
【0043】
G.収縮性能評価(カバーファクター変化量)
織物の収縮性能をカバーファクター変化量で評価する。カバーファクター変化量は以下の式
CF1−CF0
CF0:収縮加工前のカバーファクター
CF1:経方向と緯方向それぞれに0.10cN/dtexの一定張力を加えながら収縮加工を施した後のカバーファクター
で表される。カバーファクター変化量が大きいと、織物が収縮加工によって大きく縮んだことを意味し、収縮性能が高いと言える。カバーファクター変化量が400以上のものを収縮性能良好、400未満のものを収縮性能不良とする。
【0044】
H.織物の収縮加工後引裂強力の測定・評価
JIS−L−1096記載の、A−1法(シングルタング法)に準じ、オリエンテック製引裂強力試験機を用い、5cm×25cmの試料辺の短辺中央に、辺と直角に長さ10cmの切れ目を入れ、引張り速度10cm/minで、収縮加工後の経糸切断方向の引裂強力(N)、緯糸切断方向の引裂強力(N)を測定する。
経糸切断方向の引裂強力が20N以上、かつ緯糸切断方向の引裂強力が15N以上であれば引裂強力良好、経糸切断方向の引裂強力が20N未満、または緯糸切断方向の引裂強力が15N未満であれば引裂強力不良と判断する。
【0045】
〔実施例1〕
それぞれ酸化チタンを0.4重量%ずつ含有する、相対粘度3.0のナイロン6ポリマーのチップと、相対粘度2.7のナイロンMXD6ポリマーのチップを真空乾燥させた。
乾燥後の水分率はナイロン6ポリマーが130ppm、ナイロンMXD6ポリマーが80ppmとなった。
【0046】
そして、それぞれのポリマーを50:50の重量比率となるようにして一つの袋に入れてかき混ぜ均一に混合した。これを、コンベンショナル法にて、24ホールの紡糸口金を用いて、紡糸温度290℃、紡糸速度1500m/minで溶融紡糸して未延伸糸を得た。
【0047】
その後、上記の未延伸糸を延伸速度800m/min、スピンドル回転数8000rpm、ローラーヒーター温度85℃、プレートヒーター温度150℃、延伸倍率2.2倍で延撚を行い、延伸糸を得た。この延伸糸の糸質を測定したところ、繊度82.9dtex、強度4.45cN/dtex、伸度35.3%、沸騰水収縮率52.7%であった。
【0048】
そして、上記の延伸糸を緯糸に、経糸には繊度83.4dtex、24フィラメントのホモポリエチレンテレフタレート繊維を用いて、回転数300rpmで製織し、平織組織の生機を作製した。なお、生機の経糸密度は106本/2.54cm、緯糸94本/2.54cm、製織長は896mであった。
【0049】
この生機に、経方向と緯方向それぞれに0.10cN/dtexの一定張力を加えながら、97℃の熱水に20分間浸して収縮加工を施して織物製品を得た。収縮加工後の織物密度を測定したところ、経糸密度は134本/2.54cm、緯糸密度は101本/2.54cmであった。収縮加工後の引裂強力を測定したところ、経糸切断方向の引裂強力(N)が23.2N、緯糸切断方向の引裂強力(N)が17.2Nであった。また、柔らかさがある一方、適度なハリとコシがあり、良好な風合いを有していた。
【0050】
<ナイロン6とナイロンMXD6の混合比の違いによる沸騰水収縮性能評価>
〔実施例2、3、比較例1〜4〕
ナイロン6ポリマーとナイロンMXD6ポリマーの混合比率を変化させる以外は、実施例1記載の方法に従って溶融紡糸、延撚を行って得た繊維について各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


【0052】
比較例1、2は、ナイロンMXD6ポリマーの混合比率が小さすぎるために、沸騰水収縮率が不良であった。それに伴い収縮性能も低く、高密度織物は得られなかった。また、比較例3、4は、ナイロンMXD6ポリマーの混合比率が大きすぎるために、収縮性能が不良であり、高密度織物は得られなかった。一方、本発明に準ずる実施例1〜3は沸騰水収縮率が良好であり、収縮性能が高く、高密度織物を得ることができた。また、柔らかさがある一方、適度なハリとコシがあり、良好な風合いを有していた。
【0053】
<繊維強度の違いによる製織性能評価>
〔実施例4、5、比較例5、6〕
相対粘度を変えて繊維強度を変化させる以外は、実施例1記載の方法で繊維を製造し、製織性能評価、収縮加工後の引裂強力評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
比較例5、6は繊維強度が低いために製織性が不良であった。一方、本発明に準ずる実施例4、5は、十分な強度を持つため良好な製織性を得ることが出来た。そして収縮加工後の引裂強力も良好なものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明の高収縮繊維は、高い沸騰水収縮率、高い収縮性能などの特徴を有しており、高収縮織物に用いるのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーからなる繊維であって、それぞれの重量比率が35:65〜70:30、破断強度(cN/dtex)が4.00cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮繊維。
【請求項2】
ナイロンMXD6ポリマーとナイロン6ポリマーの重量比率が、45:55〜55:45である請求項1記載の高収縮繊維。

【公開番号】特開2011−26762(P2011−26762A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250255(P2010−250255)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2005−294306(P2005−294306)の分割
【原出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】