説明

高固形体含量のシリコーン樹脂のコーティング溶液の製造方法

【課題】シリコーン樹脂のコーティング組成物において固形体を濃縮する改良された方法を提供する。
【解決手段】(a)樹脂固形体の初期濃度を有するシリコーン樹脂溶液を水抽出液により抽出して、水層である上層とシリコーン樹脂固形体を含む下層を提供し、前記下層の固形体の濃度が抽出する前のシリコーン樹脂溶液の初期濃度より高いこと、及び(b)上記上層から上記下層を分離し、抽出する前の上記シリコーン樹脂の初期溶液は以下の比であり、前記水抽出液は水及び随意に少なくとも一種の水溶性溶剤を含み、上記水抽出液は0〜20重量パーセントの水溶性溶剤を含む、シリコーン樹脂のコーティング組成物における固形体の濃度を増加する方法。三重に結合した三官能性シランT3:二重に結合した三官能性シランT2=0.52から1.70
【効果】所定された基材に適用する場合、最終塗膜の厚さを増加するのに必要な高い固形体レベルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高固形体含量のシリコーン樹脂のコーティング溶液を調製する方法に関し、特に、シリコーン樹脂溶液を濃縮して、シリコーン樹脂の性能を改良するように、高いレベルの固形体含量を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコーン樹脂のコーティング組成物は、木材、金属及び合成ポリマーの表面を保護するために利用されている。これらの透明なコーティングは、ガラスとして使用されているアクリル及びポリカーボネート・シートに、優れた傷抵抗性及び引っ掻き抵抗性を提供する。これらのコーティングが有用である事例として、幅広く使用された透明なポリカーボネート・ガラスの一つの例としては、ゼネラル エレクトリック カンパニイにより販売されたLexan(登録商標)ポリカーボネート樹脂がある。
【0003】
当該シリコーン樹脂のコーティング製剤は、一般的にコロイド状シリカ或いはシリカ・ゲルの水分散液、及び化学式がRSi(OR)である三官能基シランのような加水分解性シランから形成したシリコーン・シルセスキオキサン樹脂、及びアルコール及び水のような溶剤を含む。
【0004】
屋外で使用する時、長い間、水分、湿気及び紫外線に暴露することによるシリコーン・コーティング・組成物の分解、特に、耐候性コーティングの分解は、確かに問題になる。これらの保護するコーティングの剥離層に沿って生じた黄変及びヘイズがよく観察できる。上記のようなシリコーン・コーティングの寿命を延長する試みとして、溶剤キャリアの改良及び樹脂組成物の改良が含まれる。これらの改良として、特許文献1で公開されたコーティングへの添加物の説明、及び特許文献2で公開された当該組成物のpHを変更するものが含まれる。
【0005】
コーティングを応用することにおいて、望ましい性能を獲得するために、塗膜の厚さを制御することは、重要な処理パラメータである。通常、所定の基材に適用する時、最終塗膜の厚さを増加するために、高い固形体含量のレベルが必要になる。特許文献3、特許文献4及び特許文献5において、請求した方法に適用できる当該シリコーン樹脂組成物が見つけられる。
【0006】
シリコーン樹脂溶液中の固形体を増加する一般的な方法としては、副産物であるアルコールと残留水の組成を最小限に抑えるために反応物の化学量論を調整するか、或いは溶剤を取り除いて当該樹脂を濃縮するために、加熱及び/或いは真空を印加することの何れかの一つを要求する。前者の方法(化学量論)は、反応の副産物を最小限に抑えるために当該シリコーン樹脂に投入する投入量を変化したので、硬化したコーティングの硬度及び耐亀裂性のような他の性能属性を損害することを引き起こした。後者の方法、即ちストリッピング方法は、選択するシリコーンのハードコート・グレィドを製造することを実行した。当該方法において、初期の樹脂加水分解物の中に存在している揮発性溶剤が取り除かれて、樹脂に対してその含有量(>35%)が高い媒介溶剤を提供した。加熱/真空を積極的に応用する、或いは加熱/真空を例えば>24時間である長い間応用すると、シラノール官能基が顕著に縮合することを引き起こすので、この方法を利用する時、気をつけなければならない。これらの官能基は、コーティングを基材に適用した後、当該コーティングを硬化する効果を発揮するように要求されている。さらに、シラノール基が過剰に縮合しすぎると、硬化したコーティングの粘着力及び硬度のような特性に悪い影響を与える。
【0007】
上記に説明した工程は、満足するコーティング製剤を提供したが、さらに改良する余地がある。例えば、本発明を構成する方法は、シリコーン樹脂溶液を濃縮するために加熱或いは真空を使用する必要がなく、且つかなり少ない時間で、樹脂中の固形体の濃度を増加することができ、現在実行されているプロセスを顕著に改善した。
【特許文献1】米国特許出願第4,277,287号
【特許文献2】米国特許出願第4,368,235号
【特許文献3】米国特許出願第3,976,497号
【特許文献4】米国特許出願第3,986,997号
【特許文献5】米国特許出願第4,177,315号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明において、シリコーン樹脂のコーティング組成物中の樹脂固形体の濃度を増加する方法を提供し、当該方法には、水抽出液により、樹脂固形体の初期濃度を有するシリコーン樹脂溶液を抽出することが含まれる。当該シリコーン樹脂溶液と水抽出液を激しく混合した後、静置させる。溶液が静置されたことにより、水層である上層とシリコーン樹脂の固形体を含む下層を提供する。下層中の固形体の濃度は、抽出前の初期シリコーン樹脂溶液中の固形体の濃度より高い。樹脂を含有する下層は、廃棄される可能性のある上層から分離される。結果として、下層の樹脂溶液は、約40〜約70重量パーセントの固形体を含む。
【0009】
定義
ここで使用されている「シリコーン樹脂」とは、高度に架橋したシロキサン系を意味し、当該架橋成分は、通常に三官能基或いは四官能基のシランとして知られるものであるが、少量の二官能基及び単官能基シランが含まれてもよい。シリコーン樹脂の特性は、選択したシラン、硬化程度及びプロセス条件により決められる。
【0010】
ここで使用している「シリコーン樹脂固形体」は、シラン、有機シラン、無機シラン、ポリシロキサン、重合した有機シラン、部分重合した有機シラン、有機シリコサノール等から製造されたシリコーン樹脂のコーティング組成物材料であり、確定の形状及び体積を有する。これらの樹脂は、コロイド状のシリカを含んでもよく、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン及び/又は他の酸化金属のような他の無機粒子を含んでも良い。
【0011】
ここで使用している「水抽出液」は、水を溶剤とした溶液である。当該水抽出液には、当該シリコーン樹脂溶液内において特定のアルコールの移動効果を抑えて、且つ濃縮された樹脂相中の残余溶剤成分を変性するように、アルコールが含まれても良い。当該抽出液に酸を追加して、塩基性コーティング溶液を中和し、且つpHを4.0〜6.5範囲内に調整させるように抽出して、安定する高固形体含量の産物を産出するようにしても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によれば、水抽出液により、初期固形体の濃度が約5〜約45重量パーセントであるシリコーン樹脂のコーティング溶液を抽出することにより、シリコーン樹脂のコーティング組成物で固形体の濃度を増加する方法を提供した。当該方法には、水抽出液をシリコーン樹脂の溶液と混合させ、且つそれらを激しくかき混ぜて、静置することにより、水層である上層及びシリコーン樹脂と固形体微粒を含む下層を提供することが含まれる。液体層を分離すると、当該下層には、濃度が約40〜約70重量パーセントである樹脂固形体を有する。
【0013】
シリコーン樹脂溶液のシリカは、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを加水分解して形成したポリケイ酸から獲得することができる。当該加水分解は、例えば脂肪族アルコール及び酸を添加するような慣用の工程により実行することができる。インスタント組成物に用いられるポリシルセスキ・オキサンを製造することに使用される有機シラノールは、通常RSi(OH)である化学式を有する。当該コーティング組成物の最適な性能のために、R基の中で、少なくとも約60重量パーセントがメチル基で、望ましくは約80重量パーセント〜100重量パーセントがメチル基である。或いは、最大約40重量パーセントのR基が、ビニール基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基及びγ−メタクリロキシプロピル基から選択された高級アルキル基或いはアルキル基であっても良い。
【0014】
シリコーン樹脂のコーティング組成物の初期溶液の結集された固形体は、シリカ及び部分的に重合した有機シラノールが含まれ、通常、初期の全体組成物の約15〜約45重量パーセントを構成する。当該固形体において、当該シリカが約0〜50重量パーセントを含むことが望ましく、約20〜30重量パーセントを含むのがより望ましい。その余分が有機シロキサノール(siloxanol)からなる。
【0015】
通常、初期コーティング組成物の溶剤成分は、水と一つ又はそれ以上の低級脂肪族アルコールの混合物を含む。当該低級脂肪族アルコールは、上記コーティング組成物の約40〜90重量パーセントが含まれる。適当なアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、メトキシプロパノール、第三ブタノール及びそれらの混合物のような炭素数が1〜4である低級脂肪族アルコールが含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明に係る一つの実施形態において、初期コーティング組成物中のアルコールには、メタノール、イソプロパーノル、及びn−ブタノールが含まれる。
【0016】
通常、水は、当該溶剤混合物の約10〜30重量パーセントを占める。当該水の上限は、初期樹脂組成物の濃度に関係があり、樹脂の濃度が下がるほど、相分離前に、最も多くの水が当該初期コーティング組成物の中に溜まっていることができる。
【0017】
当該溶剤は、当該溶剤の総量の約0〜10重量パーセントのカルボン酸のような酸が含まれていても良い。このようなカルボン酸は、1〜3個の炭素数を有する。当該初期コーティング組成物のカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロパン酸及びそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明から見ると、当該初期コーティング組成物のカルボン酸として、酢酸がより好ましい。
【0018】
アルコール及び水のような基礎溶剤成分の他に、インスタント組成物の溶剤部分には、更に10重量パーセント以上の共存できる極性プロトン性(水素結合)溶剤が含まれてもよい。極性非プロトン性溶剤(非水素結合)を添加すると、樹脂中のシリカ含有片が沈殿してしまうことを招く(その時混合物の一部として存在する)。
【0019】
適当な極性プロトン溶剤として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールのようなグリコール、及びエチレングリコール・モノエチルエーテル、エチレングリコール・モノブチレンエーテル、ジエチレングリコール・モノエーテルのようなグリコール・モノエーテル、及びメトキシプロパノール及びそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明の一つの実施形態において、本発明の極性プロトン溶剤は、メトキシプロパノールである。
【0020】
当該インスタントコーティング組成物において、硬化触媒を含む更なる成分が存在しても良い。これらは、組成物の総重量に対して、約0.01〜0.1重量パーセントの濃度で存在することが好ましい、組成物の総重量に対して、約0.01〜0.3重量パーセントの濃度で存在することがより好ましい。当該コーティング組成物に使用できる硬化触媒としては、広い範囲で変化することができる。代表的な触媒としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウムのようなカルボン酸のアルカリ金属塩が含まれる。他の使用できる代表的な硬化触媒としては、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムのような第四アンモニウム・カルボン酸塩が含まれる。シリコーン樹脂の初期溶剤中の他の成分として、シリル化ジベンジルレゾルシノール或いはシリル化ヒドロキシベンゾフェノン及びそれらの類似物のようなUV吸収剤が含まれても良い。
【0021】
本組成物の一つの重要な特徴は、初期シリコーン樹脂のコーティング組成物が酸性pHを有することである。初期シリコーン樹脂のコーティング組成物のpHは、約4.0より大きく、約8.0より小さい方が良い。本発明の一つの実施形態において、本発明に係る初期シリコーン樹脂のコーティング組成物は、少なくとも4.0〜7.0のpHを有する。本発明の他の一つの実施形態において、初期シリコーン樹脂のコーティング組成物のpHは、約4.0〜約6.5である。
【0022】
コーティング溶液のpHは、酸性或いは塩基性溶液を添加することが含まれる、当該分野においてよく知られている技術によって調整することができる。コーティング溶液のpHを調整することに適当な酸としては、塩酸、リン酸、カルボン酸及びそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明の一つの実施形態において、酢酸を使用して、初期シリコーン樹脂のコーティング組成物のpHを調節する。コーティング溶液のpHを調整することに適当な塩基としては、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム、及び水酸化テトラアルキルアンモニウム及びそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明の他の一つの実施形態において、水酸化アンモニウムを使用して、初期シリコーン樹脂組成物のpHを調節する。
【0023】
当該pHが4.0〜6.5の範囲にある場合、水抽出液が液相分離において更に多い極性溶剤(例えば、メタノール、エタノール、酢酸及びメトキシプロパノール)を優先的に抽出して、水層である上層或いは「軽い」層を形成することが見つけられた。当該相分離において、当該シリコーン樹脂及び当該溶剤混合物中の低極性溶剤(例えばn−ブタノール及びイソブタノール)が下層或いは「重い」層を形成する。当該下層である濃縮された樹脂溶液は、更なる濃縮に対して安定し、それに室温で数週間溶液として保持することができる。早期にシロキサン樹脂溶液においての水の効果に対して研究を試みた結果、濃縮した樹脂溶液を数日放置すると、水により濃縮された樹脂溶液のゲル化が不可逆になると判定された。早期の樹脂溶液は、7以上のpHを有する。
【0024】
本発明に係るシリコーン樹脂溶液の中で高い濃度の固形体を生じる方法において、ゼネラル エレクトリック カンパニイにより販売されているAS4010、AS4700及びAS4000(酸性化後)グレードの他の樹脂を使用している。しかしながら、大部分の樹脂は酸性pHを有し、且つ酸性化できる樹脂は、シリコーン樹脂溶液中の固形体の濃度を高めることに用いることができる。
【0025】
本発明のシリコーン樹脂溶液は、通常、0.25〜2重量部の水抽出液(例えば水)と混合される。本発明の一つの実施形態において、本発明のシリコーン樹脂溶液は、0.8〜1.2重量部の水抽出液と混合される。本発明の他の一つの実施形態において、本発明のシリコーン樹脂溶液は、例えば、水抽出液とシリコーン樹脂溶液の比がおおよそ1:1である約相同重量部の水抽出液と混合される。当該初期シリコーン樹脂溶液は、一般的に約10〜約45重量パーセントの固形体から始まり、固形体が20〜25重量パーセントであるのが好ましい。
【0026】
本発明の水抽出液は、水が主な溶剤である溶液である。通常、当該水抽出液において、水が約80〜約100重量パーセントを占める。本発明の一つの実施形態において、本発明の水抽出液は、100重量パーセントの水を含む。他の一つの実施形態において、本発明の水抽出液に、一つ或いはそれ以上の水溶性溶剤を含む。適当な水溶性溶剤の具体的な例としては、アルコール、グリコール、グリコールであるグリコール・モノエーテル及び酸が含まれるが、これに限定されるわけではない。
【0027】
当該水抽出液の水溶性溶剤として適当なアルコールとしては、例えば、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−ペンタノール、3−ヘキサノール及びそれらの混合物のような通常炭素数が3〜6である低級脂肪族アルコールが含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明の一つの実施形態において、当該水抽出液のアルコールは、n−ブタノール、sec−ブタノール及び2−メチル−2−ブタノールである。本発明の他の一つの実施形態において、当該水抽出液のアルコールは、n−ブタノール及びsec−ブタノールである。しかしながら、ここで、水抽出液の水溶性溶剤として適当な長鎖アルコールもあるべきことと考えている。
【0028】
当該水抽出液の水溶性溶剤として適当なモノエーテルとしては、エチレングリコール・モノエーテル、エチレングリコール・モノブチルエーテル、ジエチレングリコール・モノエチルエーテル、メトキシプロパノール及びそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明の一つの実施形態において、当該水抽出液のモノエチルエーテルは、エチレングリコール・モノブチルエーテル、メトキシプロパノールである。本発明の他の一つの実施形態において、当該水抽出液のモノエーテルは、メトキシプロパノールである。
【0029】
更に、当該水抽出液に酸を添加して、塩基性のコーティング溶液を中和し、且つpHを4.0〜6.5範囲にシフトして、安定する高固形体含量の製品を製造することができる。pHを調整するために当該水抽出液に添加することができる適当な酸としては、塩酸、リン酸、カルボン酸及びそれらの混合物が含まれるが、これに限定されるわけではない。本発明から見ると、本発明の水抽出液は、酢酸を使用して、pHを調整して、高固形体含量の製品を製造することが好ましい。
【0030】
本発明の一つの実施形態において、当該水抽出液は、約0重量パーセント〜約20重量パーセントの水溶性溶剤を含む。本発明の他の一つの実施形態において、当該水抽出液は、約0重量パーセント〜約10重量パーセントの水溶性溶剤、および約0重量パーセント〜約10重量パーセントの酢酸のような酸を含む。本発明のもう一つの実施形態において、当該水抽出液は、約0重量パーセント〜約5重量パーセントの酢酸を含む。
【0031】
当該シリコーン樹脂溶液と水抽出液を混合した後、当該混合物を、おおよそ2〜10分間、激しく攪拌してから、分液漏斗或いは相分離できる他の容器に注ぐ。二つの液体層が確かに見えるまで、当該混合物を20〜60分間静置する。当該樹脂溶液を含む下層である「重い」層を取り除いて、当該上層である「軽い」層を捨てる。得られた当該下層の樹脂溶液には、40〜70重量パーセントの固形体を含んでいる。一般的に、得られた樹脂溶液には、おおよそ59重量パーセントの固形体を含んでいる。シリコーン樹脂溶液において固形体を濃縮する上記のような方法は、最少の時間内で実行することができる。
【0032】
上記下層の当該シリコーン溶液中の得られた固形体の濃度は、当該樹脂溶液中の初期溶剤の濃度、及び当該初期樹脂溶液と添加した多水抽出液(例えば水)の比に関係がある。初期溶剤の濃度及び濃縮された樹脂相における得られた固形体のパーセントは、表1に示している。
【0033】
得られた下層の樹脂溶液の溶剤は、初期樹脂溶液に比べて、更に多い量の極性アルコールとカルボン酸(例えば、それぞれメタノール、エタノール、メトキシプロパノール及び酢酸)を消耗する。得られた下層樹脂溶液中の溶剤の濃度は、当該初期樹脂溶液と水抽出液の比に関係がある。当該初期樹脂溶液と水抽出液の様々な比に対応して得られた固形体の濃度は、表2に示している。
【0034】
ここで公開された方法で濃縮されたシリコーン樹脂のコーティング組成物は、示されたように、時間と共にシラノール基の濃度が変化することに従って、初期固形体の保存安定性のレベルと相同するサンプルの保存安定性を有する。これは、Si29 NMRにより樹脂サンプルのT:Tの比を測定し、且つ時間による変化をモニターすることにより、便利に測ることができる。代表的なサンプルのデータは、表4に示している。
【0035】
本発明の一つの実施例において、当該初期シリコーン樹脂のコーティング組成物は、必ず0.5以上のT:Tを有することが必要である。本発明の他の一つの実施形態において、当該プロセスがうまく適用できる初期シリコーン樹脂のコーティング組成物は、必ず約0.52〜約1.70のT:T比が必要である。T:T比が約0.5より少ないように、水抽出液(例えば水)を樹脂溶液に添加すると、混合物を形成して、二つの明確な相に分離することができなくなり、従って、表5のデータに示したように、濃縮された樹脂相を単離することができなくなる。
【0036】
本発明のコーティング組成物は、幅広い種類のコーティング用途に使用されることができ、耐久性のある耐擦傷性表面に使用されるのが好ましい。本発明の組成物は、特に、ポリカーボネート、メタクリル酸メチルポリマー及びその共重合体、ポリエチレンテレフタレートから製造されたフィルム、シート材料及び射出成形品のコーティングに満足できることが見つけられた。同様の組成物が、防食を目的とする金属基材のコーティングにも満足できることが見つけられた。
【0037】
樹脂溶液と水抽出液(水)が1:1(重量比)である混合物と混合且つ分離した後、初期樹脂溶液の溶解できる組成物と得られた濃縮された樹脂相の固形物が濃縮される。濃縮された樹脂相の物理特性は、自身の重さにより生じた当該材料の流量に基づいて測定されたものである。当該材料の粘性は下記のように増加される、即ち、粘性のある溶液<粘性の高い溶液<半固体<硬い半固体<非常に硬い半固体である。
【0038】
【表1】

樹脂溶液の固形体の重量パーセント濃度は、初期樹脂溶液:水抽出液(水)の比に関係する。
【0039】
【表2】

溶剤の濃度は、初期樹脂溶液:水抽出液(水)の比に関係する。
【0040】
【表3】

公開されたプロセスにより、特定の低固形体含有樹脂溶液と高固形体含有樹脂溶液のT:T比(シラノールの濃度に比例する)を用意した。Tは、樹脂組成物において、二重に縮合した三官能性シランであり、Tは、樹脂組成物において、三重に縮合した三官能性シランである。
【0041】
【表4】

優れた抽出及び相分離は、T:Tの比に関係する。表に示しているAS4000(酸性化した)、AS4010、及びAS4700サンプルは、1:1の重量比である水と樹脂溶液により抽出されたものである。
【0042】
【表5】

【0043】
下記の実施例は、当業者に当該発明を実施するために提供したものであり、本発明の実施例に過ぎない。特許請求の範囲で定義されたように、当該実施例は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるわけではない。
【0044】
実施例1
オーバーヘッド式撹拌器(4ブレード振動器)を備える12Lジャケット付きガラス反応器を装備する。その後、25重量パーセントの固形体を含有するシリコーン樹脂溶液(AS4010)6Lをケトルに装填する。上記振動器が振動し始めてから、上記反応器に6Lの脱イオン水を添加する。5分間攪拌し、この間、上記混合物は乳白色の懸濁液として現れる。その後、攪拌を停止し、上記混合物を60分間静置させる。上記樹脂相(下層相)を取除いて、1.9Lのこはく色の溶液を生じる。上記材料は、57.1重量パーセントの固形体を含有することが見つかれる。上記分離プロセスは、上記樹脂相のデカンテーションを完了するために初期に添加する時間から計算して75分かかる。
【0045】
実施例2
448.6gのメチルトリモトキシシランと10.9gの酢酸を2Lの三角フラスコに添加する。上記混合物を攪拌しながら、20分に渡って、上記シラン/酢酸に30.8%(SiOのようなもの)のコロイダルシリカ水溶液360.1gを添加する。14時間間、上記反応混合物を攪拌してから、48.9gの酢酸を添加する。その後、反応混合物の一部(サンプルa’)は、一部の水と素早く混合させて、シリコーン樹脂の抽出を試みているが、明確な相分離が発生しなかった。1重量部の反応混合物、0.05重量部の酢酸、0.29重量部のイソプロパノール、0.29重量部のn−ブタノールを含む第二サンプル(サンプルa”)がすぐに調製された。その後、サンプルa”は、一部の水と素早く混合して、シリコーン樹脂の抽出を試みているが、明確な相分離が発生しなかった。これらの樹脂溶液のT:Tは、各々0.43及び0.37と測定された(その結果は、表5に示している)。その後、上記シリコーン樹脂溶液は、水抽出試験に用いる前に、「エイジ」するように、2週間間放置する(a&bは、表6に示し、樹脂溶液のT:Tは、各々1.30及び1.18と測定された)。その後、当該溶液部分は、異なる固形体濃度を有する樹脂溶液と開始溶剤組成(c−hは、表6に示している)を製造するのに用いられる。その上、本樹脂溶液をテストするために、シリル化ジベンジルレゾルシノール(SDBR)を含有するサンプル(g&h)も製造された。上記SDBRを含有する処方は、何れの抽出が実行される前に、SDBRが上記樹脂構造に組み合わせるように少なくとも16時間の間放置する。その後、表1に記載されている処方a−hは、一部の水(水抽出液)と混合されて一部の最終樹脂溶液になる。上記混合物は、2分間揺すってから、30分間静置する。処方a−c、f及びhは、半固体を形成し、簡単なデカンテーションで分離することができる。処方d、e及びgは、粘性を有する液体溶液を形成し、分液漏斗を使用して水相から分離される。具体的な樹脂溶液の抽出結果は、表1に示している。
【0046】
実施例2で説明された基礎溶液から調製された其々の具体的な処方(a−h)の重量部は、下記に示している。これらの樹脂溶液の抽出結果は、表1に示している。
【0047】
【表6】

【0048】
比較例1
伝統的な「ストリッピング」プロセスにより比較サンプルを調製する。1Lジャケット付きガラス反応器に、20重量パーセントのシリコーン樹脂溶液(AS4700)1122gを装填する。容器内部の圧力を100mmHgまで減少し、且つ上記溶液を50°Cまで加熱して、揮発性溶剤が上記溶液から離れるように、120分間加熱する。
【0049】
その後、上記溶液を室温まで冷却して、反応器から離れて33重量パーセントの固形体を含有するシリコーン樹脂溶液880gを形成する。ストリッピングプロセスに係る総計時間は、ストリップされた樹脂相を取り除くために初期に添加した時間から130分である。
【0050】
比較例2
1Lジャケット付きガラス反応器に、20重量パーセントのシリコーン樹脂溶液1038gにより再び装填される。容器内部の圧力を100mmHgまで減少し、且つ上記溶液を50°Cまで加熱して、揮発性溶剤が上記溶液から離れるように、195分間加熱する。その後、上記溶液を室温まで冷却して、反応器から離れて42重量パーセントの固形体を含有するシリコーン樹脂溶液634gを形成する。当該ストリッピングプロセスに係る総計の時間は、ストリップされた樹脂相を取り除くために初期に添加した時間から205分である。
【0051】
上記示唆により、本発明に対して他の改良及び変更することができるのは明らかである。従って、添付した請求項の範囲のように、本発明の予定された範囲内で、上記記載された詳細な実施例を変化することは理解できるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)樹脂固形体の初期濃度を有するシリコーン樹脂溶液を水抽出液により抽出して、水層である上層とシリコーン樹脂固形体を含む下層を提供し、前記下層の固形体の濃度が抽出する前のシリコーン樹脂溶液の初期濃度より高いこと、及び
(b)上記上層から上記下層を分離し、抽出する前の上記シリコーン樹脂の初期溶液は以下の比であり、前記水抽出液は水及び随意に少なくとも一種の水溶性溶剤を含み、上記水抽出液は0〜20重量パーセントの水溶性溶剤を含む、
シリコーン樹脂のコーティング組成物における固形体の濃度を増加する方法。
三重に結合した三官能性シランT:二重に結合した三官能性シランT=0.52から1.70
【請求項2】
上記水溶性溶剤は、炭素数が1〜6である脂肪族アルコール、グリコール・モノエテール、酸及びそれらの混合物からなる組から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記水溶性溶剤は、炭素数が3〜6である脂肪族アルコールからなる組から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記脂肪族アルコールは、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、第三級ブタノール及びそれらの混合物からなる組から選ばれる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記アルコールは、イソプロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、及び2−メチル−2−ブタノール及びそれらの混合物からなる組から選ばれる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記モノエーテルは、エチレングリコール・モノエチルエーテル、エチレングリコール・モノブチルエーテル、ジエチレングリコール・モノエチルエーテル、メトキシプロパノール及びそれらの混合物からなる組から選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項7】
上記酸は、塩酸、リン酸、カルボン酸、スルホン酸及びそれらの混合物からなる組から選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項8】
上記酸は、酢酸である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記水抽出液は、80〜100重量パーセントの水を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記水抽出液は、100重量パーセントの水を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記水抽出液は、0〜10重量パーセントの水溶性溶剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記水抽出液は、0〜5重量パーセントの酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコーン樹脂溶液に対する上記水抽出液の重量比は、シリコーン樹脂溶液1部に対して水抽出液が0.34部〜1.98部である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記水抽出液とシリコーン樹脂溶液の比は、1:1である請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記シリコーン樹脂溶液は、3.5〜7.0範囲内のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記シリコーン樹脂溶液は、4.5〜6.5範囲内のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記シリコーン樹脂溶液は、4.5のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
上記水抽出液は、3.5〜7.0範囲内のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記水抽出液は、4.5〜6.5範囲内のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
上記水抽出液は、4.5のpHを有する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
シリコーン樹脂を含有する上記下層は、40〜70重量パーセントの固形体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
シリコーン樹脂を含有する上記下層は、60重量パーセントの固形体を含む請求項1に記載の方法。
【請求項23】
上記下層のシリコーン樹脂のコーティング組成物は、大気温度において、少なくとも4週間の寿命を有する請求項1に記載の方法。
【請求項24】
基材に適用する前に、下層に含有されているシリコーン樹脂は、極性有機溶剤により希釈される請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2013−100513(P2013−100513A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278777(P2012−278777)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2008−530062(P2008−530062)の分割
【原出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】