説明

高屈折率ポリカーボネート共重合体及び光学レンズ

【課題】高屈折率であり且つ低複屈折性、加工性、透明性に優れたポリカーボネート共重合体及び該ポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズを提供する。
【解決手段】全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び置換、非置換ジヒドロキシベンゼンもしくは置換、非置換ジヒドロキシナフタレンから選択されるジヒドロキシ化合物よりなり、それらのモノマーの合計の割合が全モノマーの100〜70%であり、且つ一般式(1):一般式(2)もしくは一般式(3)の割合がモル比で50%以上〜98%以下:50%以下〜2%以上の範囲で構成されたポリカーボネート共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のジヒドロキシ化合物を特定割合含有する高屈折率ポリカーボネート共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性や透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れ、様々な屈折率やアッベ数を有する多種類の材料が存在しているが、材料コストが高い上、成形加工性が悪く、また生産性が低いという問題点を有している。
【0003】
一方、光学用透明樹脂、中でも熱可塑性透明樹脂は、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有しており、現在カメラ用レンズの材料としてポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化やカメラの高画素化により、レンズ用樹脂に求められる光学性能はより高くなっている。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い結像性能の高い、より低複屈折の光学レンズが求められている。一般に、複屈折を小さくする方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ組成同士で、互いの複屈折を打ち消しあう手法が挙げられる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料組成の構成比率は非常に重要となる。さらに、射出成形の際に生じる光学歪みを小さくするために樹脂の成形流動性も重要である。
【0004】
例えば、フルオレン構造を有するポリカーボネート共重合体が開示されている(特許文献1)。しかし、該特許文献によれば、優れた光学特性を有するとしているが、レンズにとって重要な光学物性である屈折率ならびにアッベ数、複屈折に関して調べられておらず、発明の効果として光ディスクといった光学材料基盤用途を想定しているに過ぎない。その為、比粘度が高く成形流動性に乏しいことが想定でき、更にはフルオレン誘導体の組成比が特定できておらず、複屈折を少なくするには不十分である。よって、光学レンズに使用するには、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−101786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、特定のジヒドロキシ化合物を特定割合含有するポリカーボネート共重合体及び該ポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズに関する。さらに詳しくは高屈折率であり且つ低複屈折性、加工性、透明性に優れた光学レンズ用ポリカーボネート共重合体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定のフルオレン含有ジヒドロキシ化合物及びジヒドロキシ化合物を特定割合で共重合することで、上記目的を達成することを見出し本発明に到達した。
【0008】
1.全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)もしくは一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の合計の割合が100〜70%であり、且つ一般式(1):一般式(2)もしくは一般式(3)の割合がモル比で50%以上〜98%以下:50%以下〜2%以上の範囲で構成されたポリカーボネート共重合体。
【化1】

(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nおよびmは1〜10の整数である。)
【化2】

(式中、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【化3】

(式中、R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
2.全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)もしくは一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の合計の割合が100〜80%であり、且つ一般式(1):一般式(2)もしくは一般式(3)の割合がモル比で50%以上〜98%以下:50%以下〜2%以上の範囲で構成された前記1記載のポリカーボネート共重合体。
3.一般式(2)で表される化合物が、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記1または2のポリカーボネート共重合体。
4.一般式(3)で表される化合物が、2,6−ナフタレンジオールである前記1または2に記載のポリカーボネート共重合体。
5.一般式(1)で表される化合物において、R1、R2、R3およびR4が水素原子、Xがエチレン基、n=1およびm=1である前記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
6.屈折率が1.630〜1.655、かつガラス転移温度が130℃〜170℃である前記1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
7.該ポリカーボネート樹脂はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.55である前記1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体。
8.前記1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート共重合体より形成された光学レンズ。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高屈折率であり且つ低複屈折性、加工性、透明性に優れたポリカーボネート共重合体を得ることができ、該ポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは、射出成形可能で生産性が高く安価であるため、カメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価なガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。また、本発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率低複屈折非球面レンズを射出成形により簡便に得ることができ極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例8のプロトンNMRである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物の割合が98モル%を超える場合、該ポリカーボネート共重合体から得られる光学部材の負の複屈折が大きくなり好ましくない。
本発明のポリカーボネート共重合体における化学式(2)もしくは化学式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の割合が50モル%より多い場合、該ポリカーボネート共重合体から得られる光学部材の正の複屈折が大きくなり好ましくない。
【0012】
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン等があげられ、中でも9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ成分であれば良く、中でもヒドロキノン、レゾルシノール、カテコールが好ましい。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明のポリカーボネート共重合体における一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、ナフタレンジオール成分であれば良く、中でも2、6−ナフタレンジオールが好ましい。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
一般式(1):一般式(2)もしくは一般式(3)の割合がモル比で50%以上〜98%以下:50%以下〜2%以上の範囲であり、50%以上〜95%以下:50%以下〜5%以上の範囲が好ましく、50%以上〜90%以下:50%以下〜10%以上の範囲がより一層好ましい。
【0016】
本発明のポリカーボネート共重合体は目的に応じて一般式(1)及び(2)及び(3)と共重合可能な他のジヒドロキシ化合物を加えても良く、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の芳香族ジオール、エチレングリコール等の脂肪族ジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2, 6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール等の脂環式ジオールがあげられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが好ましい。これらの他のジヒドロキシ化合物は全ジヒドロキシ化合物成分の30モル%以下であり、好ましくは20モル%以下である。
【0017】
本発明のポリカーボネート共重合体は、通常のポリカーボネート共重合体を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ化合物にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。
【0018】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えばピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0019】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、2種以上のジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルと塩基性化合物触媒、エステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、反応させる公知の溶融重縮合法により製造することができる。炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特にジフェニルカーボネートが好ましい。炭酸ジエステルは、ジオール成分1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.10モルの比率である。
【0020】
塩基性化合物触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等があげられる。
このような化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物等の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド、または4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0021】
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が用いられる。
【0022】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0023】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール、基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が用いられる。
【0024】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−4モルの比率で用いられる。
【0025】
本発明にかかわる溶融重縮合法は、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段行程で実施される。
【0026】
具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めてジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には1mmHg以下の減圧下、200〜350℃の温度で0.05〜2時間重縮合反応を行う。このような反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよく、また、これらを重合物の粘度を勘案して適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0027】
本発明にかかわるポリカーボネート樹脂は、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させる。一般的には、公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法が好適に実施される。これらの物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類、亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類、ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類、ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物、ジメチル硫酸等のアルキル硫酸、塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0028】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良く、このためには、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0029】
本発明におけるポリカーボネート共重合体はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.55の範囲のものが好ましく、0.15〜0.45の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.12未満では成形品が脆くなり、0.55より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になるので好ましくない。
【0030】
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が110〜170℃であることが好ましく、120〜165℃であることがより好ましく、130〜160℃であることがさらに好ましい。Tgが110℃未満では、該共重合体を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが170℃より高い場合では溶融粘度が高くなり、薄物の成形体を形成する上での取扱いが困難となるので好ましくない。
【0031】
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、熱安定性の指標として、昇温速度20℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましい。さらには400℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
【0032】
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、25℃、波長587nmにおける屈折率が好ましくは1.630〜1.655である。
本発明におけるポリカーボネート共重合体からなる光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。
【0033】
本発明のポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズには、本発明の目的を損なわない範囲で各種特性を付与する為に、各種添加剤を使用することができる。添加剤としては離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、熱線遮蔽剤、蛍光染料(蛍光増白剤含む)、顔料、光拡散剤、強化充填剤、他の樹脂やエラストマー等を配合することができる。
【0034】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0035】
具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
【0036】
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
【0037】
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
ポリカーボネート共重合体粉粒体中の離型剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0038】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
【0039】
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。なかでも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイトが使用され、特に好ましくはテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
【0040】
ポリカーボネート共重合体粉粒体中のリン系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0041】
硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3、3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3、3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3、3’−チオジプロピオネート等が挙げられ、なかでもペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル−3、3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3、3’−チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)である。該チオエーテル系化合物は住友化学工業(株)からスミライザーTP−D(商品名)およびスミライザーTPM(商品名)等として市販されており、容易に利用できる。
【0042】
ポリカーボネート共重合体粉粒体中の硫黄系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0043】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられ、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが特に好ましく用いられる。
【0044】
ポリカーボネート共重合体粉粒体中のヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して0.001〜0.3重量部が好ましい。
【0045】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0046】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上の混合物で用いることができる。好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ルであり、より好ましくは、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]である。
【0047】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンソフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0048】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2.4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0049】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。なかでも2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適であり、特に2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適である。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
【0050】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0051】
紫外線吸収剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体粉粒体100重量部に対して好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート共重合体成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0052】
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル−RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、ポリカーボネート共重合体粉粒体の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与したポリカーボネート共重合体粉粒体の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によってポリカーボネート樹脂成形品が黄色味を帯びやすい現実があり、特にシートやレンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
ブルーイング剤の配合量は、ポリカーボネート共重合体粉粒体に対して好ましくは0.05〜1.5ppmであり、より好ましくは0.1〜1.2ppmである。
【0053】
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは、成形片の550nmにおける透過率が80%以上であることが好ましい。更には85%以上であることが好ましい。透過率が80%より低いと、光学レンズとして使用することは困難である。
【0054】
また、本発明の光学レンズは、光学歪みが小さいことが好ましい。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは光学歪みが大きく、成形条件によりその値を低減することは可能である場合もあるが、通常その条件幅は非常に小さく、したがって成形が非常に困難である。本発明のポリカーボネート共重合体は、樹脂の配向により生じる光学歪みが小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
【0055】
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【0056】
本発明におけるポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られたポリカーボネート共重合体ペレットを120℃で4時間乾燥し、該ペレット0.35gを塩化メチレン50ccに溶解した溶液を測定サンプルとした。測定は20±0.01℃の恒温槽中でオスワルト粘度管の標線間の通過時間を計測し、下記式からその溶液の20℃における比粘度(ηsp)を求めた。
ηsp=(t−t)/t
ここで比粘度のt:ポリマー溶液の標線間通過時間、t:塩化メチレンの標線間通過時間である。
(2)共重合比:非球面レンズの成形片から切り出した該ポリカーボネート樹脂を日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。
(3)ガラス転移点(Tg):デュポン社製910型DSC により測定した。
(4)屈折率(n):ATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて測定した。
(5)光学歪み:成形したレンズを二枚の偏光板の間に挟み直行ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより評価した。
(6)全光線透過率:1mm厚の成形片を日本電色(株)製MDH−300Aを用いて測定した。
【0058】
ポリカーボネート共重合体の合成
実施例1
9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)42.97重量部、ヒドロキノン0.22重量部、ジフェニルカーボネート22.06重量部、水酸化ナトリウム4.00×10−5重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド4.56×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101kPaの下30分かけて180℃に加熱し撹拌した。
その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整し、15.0℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、20kPaで10分間保持した。その後、20kPaから80分かけて0.13kPa以下まで減圧した。更に240℃、0.13kPa以下の条件下で20分間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを2.92×10−3重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとヒドロキノンとの構成単位の比がモル比で98:2であった。
【0059】
実施例2
実施例1のBPEFの使用量を37.27重量部、ヒドロキノンの使用量を1.65重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとヒドロキノンの比がモル比で85:15であった。
【0060】
実施例3
実施例1のBPEFの使用量を21.93重量部、ヒドロキノンの使用量を5.51重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとヒドロキノンの比がモル比で50:50であった。
【0061】
実施例4
実施例1のBPEFの使用量を37.27重量部、レゾルシノールの使用量を1.65重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとレゾルシノールの比がモル比で85:15であった。
【0062】
実施例5
実施例1のBPEFの使用量を37.27重量部、カテコールの使用量を1.65重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとカテコールの比がモル比で85:15であった。
【0063】
実施例6
実施例1のBPEFの使用量を42.97重量部、ナフタレンジオールの使用量を0.32重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとナフタレンジオールの比がモル比で98:2であった。
【0064】
実施例7
実施例1のBPEFの使用量を39.47重量部、ナフタレンジオールの使用量を1.60重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとナフタレンジオールの比がモル比で90:10であった。
【0065】
実施例8
実施例1のBPEFの使用量を37.27重量部、ナフタレンジオールの使用量を2.40重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとナフタレンジオールの比がモル比で85:15であった。
【0066】
実施例9
実施例1のBPEFの使用量を21.93重量部、ナフタレンジオールの使用量を8.01重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとナフタレンジオールの比がモル比で50:50であった。
【0067】
実施例10
実施例1のBPEFの使用量を30.67重量部、ヒドロキノンの使用量を2.20重量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と省略することがある)2.28重量部とする以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとナフタレンジオールとBPAの比がモル比で70:20:10であった。
【0068】
比較例1
BPEF43.85重量部、ジフェニルカーボネート22.06重量部、水酸化ナトリウム4.00×10−5重量部及びテトラメチルアンモニウムヒドロキシド4.56×10−3重量部を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気760Torrの下30時間かけて180℃に加熱し撹拌した。
その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整し、15.0℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、20kPaで10分間保持した。その後、20kPaから80分かけて0.13kPa以下まで減圧した。更に240℃、0.13kPa以下の条件下で20分間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にした後、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを2.92×10−3重量部添加し触媒を失活させた。その後、生成したポリカーボネート共重合体をペレタイズしながら抜き出し、BPEFホモポリマーを得た。
【0069】
比較例2
比較例1のBPEFの使用量を24.12重量部、ヒドロキノンの使用量を1.65重量部、BPA6.85重量部とする以外は比較例1と同様にしてポリカーボネート共重合体を合成した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとナフタレンジオールとBPAの比がモル比で55:15:30であった。
【0070】
比較例3
BPEF38.15g、BPA2.97g、ジフェニルカーボネート;22.06g、および炭酸水素ナトリウム5.04×10−5gを攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気101kPa下1時間かけて215℃に加熱し撹拌した。
その後、15分かけて減圧度を20kPaに調整し、215℃、20kPaの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに37.5℃/hrの速度で240℃まで昇温し、240℃、20kPaで10分間保持した。その後、10分かけてに調整し、240℃、13kPaで70分間保持した。その後、10分かけて13kPaに調整し、240℃、13kPaで10分間保持した。更に40分かけて0.13kPa以下とし、240℃、0.13kPa以下の条件下で10分間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出した。該ポリカーボネート共重合体はBPEFとBPAの比がモル比で87:13であった。
【0071】
実施例1〜10及び比較例1〜3は、IR測定より、1760cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収が確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。
【0072】
実施例1〜10、比較例1〜3
作成したポリカーボネート共重合体を120℃で24時間真空乾燥した後、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いてペレット化した。その後、下記成形条件にて、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmのレンズ及びJSW(株)製N−20C射出成形機を用いて厚さ1.0mm、幅1.0cm、長さ2.0cmの成形片を射出成形した。上記レンズを二枚の偏光板の間に挟み直行ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより評価した。評価は、◎:殆ど光漏れがない、○:僅かに光漏れが認められる、△:少し光漏れが認められる、×:光漏れが顕著である とした。また、上記成形片を用いて全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
実施例1〜10はTgが適度な範囲であり得られた成形品は耐熱性に優れ、加工性にも優れる。また、屈折率が高く、光学歪みも小さいことからレンズとして適している。中でも、実施例2、7は特に光学歪が小さく良好であり、更には、実施例7は屈折率も高くレンズに好適である。これに対して、比較例1は光学歪みが大きいこと、比較例2は屈折率が低いこと、比較例3は屈折率が低く、更に比粘度が高く加工性に劣り、レンズとしての使用範囲が限定される。
【0074】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズはカメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)もしくは一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の合計の割合が100〜70%であり、且つ一般式(1):一般式(2)もしくは一般式(3)の割合がモル比で50%以上〜98%以下:50%以下〜2%以上の範囲で構成されたポリカーボネート共重合体。
【化1】

(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。nおよびmは1〜10の整数である。)
【化2】

(式中、R5およびR6は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【化3】

(式中、R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【請求項2】
全ヒドロキシ化合物中の一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)もしくは一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物の合計の割合が100〜80%であり、且つ一般式(1):一般式(2)もしくは一般式(3)の割合がモル比で50%以上〜98%以下:50%以下〜2%以上の範囲で構成された請求項1記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項3】
一般式(2)で表される化合物が、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項4】
一般式(3)で表される化合物が、2,6−ナフタレンジオールである請求項1または2記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物において、R1、R2、R3およびR4が水素原子、Xがエチレン基、n=1およびm=1である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項6】
屈折率が1.630〜1.655、かつガラス転移温度が130℃〜170℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項7】
該ポリカーボネート樹脂はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.55である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体より形成された光学レンズ。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1867(P2013−1867A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136326(P2011−136326)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】