説明

高輝度蛍光体及びその製造方法

【課題】濃度消光を抑制した高輝度蛍光体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含む化合物を含有する高輝度蛍光体の前駆体と発熱分解性化合物を容器内に投入する(ステップS1)。次に、この密閉容器を封止して密閉する(ステップS2)。次に、発熱分解性化合物を加熱する(ステップS3)。次に、発熱分解性化合物を分解して、密閉容器内を1MPa以上50MPa以下に加圧する(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度蛍光体及びその製造方法に関し、より詳細には、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤からなる高輝度蛍光体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や資源問題を解決するため照明や各種モニターのバックライトといった光源の固体化が急速に進んでいる。これらの光源は白色であることが必要であるために、高いエネルギーを有する紫外から青色の発光光源を用い、蛍光体を用いて白色に変換される。そのため、これらの波長の光を可視域の波長に変換する高輝度の蛍光体の開発が盛んに行われている。
【0003】
蛍光体は、一般に母材化合物に、発光色に応じた賦活剤を固溶させて発光させる。そのため、高輝度の蛍光体を得るには、賦活剤を多く母材に固溶させることが必要であるが、賦活剤の量が多くなりすぎると、かえって発光輝度が低下するという現象(濃度消光)が発現し発光輝度が高くならない。
【0004】
母材に多くの賦活剤を含有させることを目的として、例えば、特許文献1には、高温で焼成した後に衝撃力を加えて歪みを形成し、更に低温で焼成する方法が提案されているが、この方法は、工程が煩雑で製造が困難であるという問題を有していた。また、例えば、特許文献2には、同様の方法を用い、更に高輝度化を目的として、蛍光体の粒径を制御する技術が開示されている。しかしながら、この技術は、依然、煩雑な工程が必要であり、また、焼成工程を経ているので、粒径は依然として15μm以上の大きなものであった。
【0005】
蛍光体は、通常、電気炉の如くの加熱装置内に蛍光体の前駆体を投入して、焼成することによって合成される。例えば、特許文献3には立方晶(閃亜鉛鉱型構造)の硫化亜鉛に銀と共にツリウムを増感剤として使用する方法が開示されているが、硫化亜鉛が閃亜鉛鉱型構造からウルツ鉱型構造へ相転移する温度(1020℃)より低温で焼成しているため、賦活剤の反応が十分ではなかった。そのため、高温、高圧下で岩塩構造を含むウルツ鉱型の硫化亜鉛にイリジウムで賦活する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されているが、粒径の増大を抑制することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−330035号公報
【特許文献2】特開平8−283711号公報
【特許文献3】特開平4−183780号公報
【特許文献4】特開2010−31154号公報
【特許文献5】国際公開WO2008/013243号公報
【特許文献6】特表2009−511645号公報
【特許文献7】国際公開WO2009/099250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況の中、瞬時に高いエネルギーを蛍光体前駆体に与えて、蛍光体を製造する試みがなされている。例えば、特許文献5には、蛍光体の前駆体に常温で0.1GPa以上の衝撃を与える方法が提案されているが、常温で実施するために、高い圧力を付与する必要があった。また、例えば、特許文献6には、火薬や爆薬と共に蛍光体の前駆体を密閉容器内に投入し、火薬又は爆薬を爆破することによって500気圧或いは0.1GPa〜50GPaの圧力を付与する方法が提案されている。この方法であれば、爆破による熱と圧力を同時に付与できるが、密閉容器内で極めて高い圧力を生じさせるため、容器の破壊などの問題があり、更には、圧力が高すぎるため、粒径が増大したり、結晶が再転移する(仮にウルツ鉱型構造が形成してもが圧力によって閃亜鉛鉱型構造に戻る転移が起る)などの問題を有していた。そのため、ウルツ鉱型構造の粒子を得る試みが、例えば、特許文献7に開示されている。この方法では、原料の亜鉛と硫化剤を密閉容器に投入し、パルスプラズマを付与してウルツ鉱型構造の硫化亜鉛が得られているが、双晶構造になるため結晶性が低く、かつ粒子サイズを制御するのが困難であった。更に、金属原料を用いるために、金属亜鉛が混在してしまう問題を有していた。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤からなり、濃度消光を抑制した高輝度蛍光体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤を含有する蛍光体が特定範囲のウルツ鉱型の結晶構造を有し、かつ平均粒径が50ナノメートル以上、5マイクロメートル以下である場合、とりわけ、第2族元素及び/又は第12族元素が第12族元素を含む場合であって第12族元素が亜鉛を主成分として含み、第16族元素が硫黄を主成分として含む場合に、あるいは、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含有する化合物を含有する蛍光体の前駆体と発熱分解性化合物を密閉容器内に投入して封止し、発熱分解性化合物を分解させて加圧し、該密閉容器内の到達圧力を1MPa以上、50MPa以下にして製造されたウルツ鉱型の蛍光体である場合に濃度消光が抑制された蛍光体が得られることを見出し、更には、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤を含有する蛍光体が岩塩構造を有し、平均粒径が50ナノメートル以上、5マイクロメートル以下である場合、とりわけ、第2族元素及び/又は第12族元素が第2族元素を含む場合であって第2族元素がストロンチウムを主成分として含み、第16族元素が硫黄を主成分として含む場合に、高輝度蛍光体が得られることを見出し本発明に至った。
【0010】
本発明は、上述したような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、高輝度蛍光体の製造方法であって、立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含む化合物を含有する高輝度蛍光体の前駆体と、ニトロ化物,ニトロソ化合物,過酸化物,アゾ化合物,ジアゾ化合物,ヒドラジン誘導体,ヒドロキシルアミン及びその塩,アジ化物,過塩素酸塩,硝酸化合物及びこれらの変性体から選ばれる発熱分解性化合物とを密閉容器内に投入して封止する工程と、前記発熱分解性化合物を加熱により分解させて加圧する工程とを有し、前記密閉容器内の到達圧力を1MPa以上、50MPa以下にすることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高輝度蛍光体の製造方法によって製造された高輝度蛍光体であって、ウルツ鉱型の結晶構造を有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤を含有する高輝度蛍光体であって、ウルツ鉱型の結晶構造を有し、X線回折法で得られる(002)面の面間隔を反映したX線回折ピーク面積に対する(100)面の面間隔を反映したX線回折ピーク面積の比が、1.5以上3.5以下であり、かつ、平均粒径が50ナノメートル以上5マイクロメートル以下であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記第12族元素として亜鉛を主成分として含み、前記第16族元素として硫黄を主成分として含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の高輝度蛍光体の製造方法によって製造された高輝度蛍光体であって、岩塩型の結晶構造を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤を含有する高輝度蛍光体であって、岩塩型の結晶構造を有し、平均粒径が50ナノメートル以上5マイクロメートル以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、前記第2族元素としてストロンチウムを主成分として含み、前記第16族元素として硫黄を主成分として含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含む化合物を含有する高輝度蛍光体の前駆体と、ニトロ化物,ニトロソ化合物,過酸化物,アゾ化合物,ジアゾ化合物,ヒドラジン誘導体,ヒドロキシルアミン及びその塩,アジ化物,過塩素酸塩,硝酸化合物及びこれらの変性体から選ばれる発熱分解性化合物とを密閉容器内に投入して封止する工程と、発熱分解性化合物を加熱により分解させて加圧する工程とを有し、密閉容器内の到達圧力を1MPa以上、50MPa以下にするので、濃度消光を抑制した高輝度蛍光体及びその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る高輝度蛍光体の製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の高輝度蛍光体は、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤からなる。
【0020】
本発明において、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物とは、後述する特定範囲のウルツ鉱型構造になる化合物または岩塩構造を有する化合物であれば特に限定されないが、第2族元素及び/又は第12族元素としては、マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,亜鉛,カドミウムなどが例示でき、第16族元素としては、酸素,硫黄,セレン,テルルなどが例示でき、これらが結合して化合物を形成した化合物である。具体的には、MgS,CaS,SrS,ZnS,CdSなどの二価金属硫化物及びそれらを主成分とする化合物、MgSe,CaSe,SrSe,ZnSe,CdSeなどの二価金属セレン化物及びそれらを主成分とする化合物、MgTe,CaTe,SrTe,ZnTe,CdTeなどの二価金属テルル化物及びそれらを主成分とする化合物及びそれらの混晶及びそれらを主成分とする化合物が例示できる。
【0021】
これらの化合物の中で、第2族元素及び/又は第12族元素として第12族元素を含む場合であって第12族元素が亜鉛またはカドミウムを主成分として含み、第16族元素として硫黄を主成分として含む化合物及びそれらの混晶からなる化合物は、ウルツ鉱型構造をとりやすく好ましい。更に、第12族元素として、亜鉛を主成分として含み、第16族元素として硫黄を主成分として含む化合物は、毒性が低くより好ましく用いられる。このような化合物は、しばしば表面が酸化する等して、部分酸化物のような構造になるが、後述する分析によってその成分や構造を特定して用いられる。
【0022】
また、第2族元素及び/又は第12族元素として第2族元素を含む場合であって第2族元素がマグネシウムやストロンチウムを主成分として含み、第16族元素として硫黄を主成分として含む化合物及びそれらの混晶からなる化合物は、岩塩型構造をとりやすく好ましい。更に、第2族元素として、ストロンチウムを主成分として含み、第16族元素として硫黄を主成分として含む化合物は、高輝度蛍光体が得られやすく好ましく用いられる。このような化合物は、しばしば表面が酸化する等して、部分酸化物のような構造になるが、後述する分析によってその成分や構造を特定して用いられる。
【0023】
本発明において、主成分として含むとは、分析に供された蛍光体の平均値として、その比較される対象元素の分析値の50原子%以上含むことを意味する。
【0024】
また、本発明の高輝度蛍光体が第2族元素及び第12族元素を含む場合、第2族元素や第12族元素の主成分の判定を、第2族元素及び第12族元素の総和を対象元素として行うことが好ましい。そのようにすることによって、より組成由来の発光の特徴が明確になる。即ち、第12族元素として亜鉛を主成分として含む場合、分析によって検出された第2族元素及び第12族元素の総量に対して、亜鉛が50原子%以上であることが好ましく、第2族元素としてストロンチウムを主成分として含む場合は、分析によって検出された第2族元素及び第12族元素の総量に対して、ストロンチウムが50原子%以上であることが好ましい。
【0025】
なお、第16族元素が硫黄を主成分として含むとは、分析によって検出された第16族元素の総量に対して、硫黄が50原子%以上であることを意味する。
【0026】
本発明の高輝度蛍光体は、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物からなる母材に賦活剤を含んでなる。賦活剤は、母材に添加されることによって、発光色を変化させたり、発光輝度を向上できる物質であれば何でもよく、母材の成分に応じて適宜選択できる。
【0027】
本発明の、好ましい母材である、第2族元素及び/又は第12族元素が、第12族元素を含む場合であって第12族元素が亜鉛を主成分として含み、第16族元素が硫黄を主成分として含む化合物の場合、代表的な賦活剤として、マンガン,銅,銀,金,イリジウム,イットリウム,ユーロピウム,プラセオジム,テルビウムなどの希土類などの賦活剤やこれらの混合物が例示できる。
【0028】
また、岩塩構造をとりやすく好ましい母材である、第2族元素及び/又は第12族元素が、第2族元素を含む場合であって第2族元素がストロンチウムを主成分として含み、第16族元素が硫黄を主成分として含む化合物の場合、代表的な賦活剤として、セリウム,ユーロピウムなどの希土類などの賦活剤やこれらの混合物が例示できる。
【0029】
これらの賦活剤の混合量は、通常の焼成法などによって得られる5μmより大きな粒径を有する蛍光体と比べて、発光輝度が高い蛍光体を得られるという本発明の効果が得られる範囲であれば特に限定されず、その成分によって適宜選択される。
【0030】
本発明の、好ましい母材である、第2族元素及び/又は第12族元素が、第12族元素を含む場合であって第12族元素が亜鉛を主成分として含み、第16族元素として硫黄を主成分として含む化合物の代表的な賦活剤であるマンガンを賦活剤に用いた場合について説明する。
【0031】
本発明において、この場合の好ましい賦活剤の混合量は、上述したような効果が得られる範囲であればよいが、絶対的な発光輝度が高くなるので、蛍光体の重量に対して、好ましくは0.001重量%以上10重量%以下、より好ましくは、0,01重量%以上5重量%以下である。これらの好ましい濃度は、賦活剤の種類によっても異なり、例えば賦活剤がマンガンの場合は、最も好ましくは、0.5重量%以上5重量%以下であり、賦活剤が銀の場合は、もっとも好ましくは、0.01重量%以上1重量%以下である。
【0032】
これらの分析は、蛍光X線分光分析法(XRF法)や、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP法)などによって求めることができる。
【0033】
高輝度蛍光体の結晶構造は、通常、X線回折法を用いて分析されるが、本発明の蛍光体は、ウルツ鉱型構造の結晶構造を有する場合は、X線回折法で得られる(002)面由来のピーク面積に対する(100)面由来のピーク面積の比が、1.5以上3.5以下であることが特徴である。ここで「(002)面由来のピーク面積」というのは、「(002)面の面間隔を反映したX線回折ピーク面積」を意味している。結晶構造と発光特性の関係は定かではないが、本発明の結晶構造を有する蛍光体は、賦活剤成分の種類や混合量にもよるが、このような結晶構造を有する場合に高輝度の発光が得られる。輝度が高い蛍光体が得られやすくなるため、(002)面由来のピーク面積に対する(100)面由来のピーク面積の比は好ましくは1.55以上2.9以下である。
【0034】
本発明の高輝度蛍光体がウルツ鉱型構造の結晶構造を有する場合、閃亜鉛鉱型構造や岩塩構造を含んでいてもよいが、好ましくは、これらの結晶構造を含まない方が高輝度の発光が実現できて好ましい。なお、閃亜鉛鉱型構造の(111)面のピークとウルツ鉱型構造の(100)面のピークは極めて近い位置に観測されるため、一般に分離することが困難である。本発明において、蛍光体が閃亜鉛鉱型構造を含み、その(111)面のピークがウルツ鉱型構造の(100)面のピークと重なって分離できない場合は、閃亜鉛鉱構造の(111)面のピーク面積分をウルツ鉱型構造の(100)面のピーク面積に含んで、ウルツ鉱型構造の(002)面由来のピーク面積に対する(100)面のピーク面積の比(W(100)/W(002))を算出する。なお、このような結晶構造は、分析に供された蛍光体の平均値として得られる測定値を用いて特定される。
【0035】
一方、本発明の高輝度蛍光体が岩塩構造を有する場合も同様に閃亜鉛鉱型構造に代表される異なる構造を含んでいても良いが、含まない方が高輝度の発光が実現できるため好ましい。更に、岩塩構造の蛍光体の場合、例えば硫化物の硫黄が抜けるなどの格子欠陥が発光輝度に影響を与える場合が多く、短時間の加熱によって蛍光体を製造することが好ましく、本発明の製造方法が好ましく用いられる。
【0036】
以下、硫化亜鉛(ZnS)の結晶構造を用いてより詳細に説明する。
ウルツ鉱型の硫化亜鉛をX線回折法で分析した場合、2θ=26.9°付近に(100)面、2θ=28.5°付近に(002)面、2θ=30.6°付近に(101)面に由来するピークが観測される。これらの3種のピークが観測されることによって、ウルツ鉱型構造であると判別できる。
【0037】
一方、閃亜鉛鉱型構造を有する場合には、2θ=33°付近に(200)面に由来するピークが観測され、岩塩構造を有する場合には、2θ=34°付近に(200)面に由来するピークが観測される。従って、閃亜鉛鉱型構造あるいは岩塩構造を含まないとは、これらのピークがノイズレベル以下で実質的に観測されないことを意味する。
【0038】
本発明において、蛍光体の結晶性は特に制限は無いが、結晶性が悪いと発光輝度が低くなるため好ましくない。結晶性の程度は、X線回折法で観測されたピークの半値幅で判断できる。
【0039】
本発明の高輝度蛍光体がウルツ鉱型の結晶構造を有する場合、(100)面(硫化亜鉛の場合は2θ=26.9°付近に観測される)の半値幅で評価すればよく、好ましくは2θで°0.3°以下、より好ましくは0.2°以下である。下限に関しては特に制約は無いが、装置の測定限界以上である。
【0040】
また、本発明の高輝度蛍光体が岩塩型の結晶構造を有する場合は、(200)面(硫化ストロンチウムの場合は2θ=29.7°付近に観測される)の半値幅で評価すればよく、好ましくは2θで°0.3°以下、より好ましくは0.2°以下、更に好ましくは、0.15°以下である。下限に関しては特に制約は無いが、装置の測定限界以上である。
【0041】
本発明の高輝度蛍光体には、塩化ナトリウム,塩化リチウムといった焼結助剤由来の成分や、塩素,フッ素の如くのハロゲン元素に代表されるドナーやリン,砒素,アンチモンといった15族元素に代表されるアクセプターになる成分を含んでいても良い。なお、塩素,フッ素の如くのハロゲン元素は、しばしば賦活剤の活性を更に高める共賦活剤としても作用する。
【0042】
本発明の高輝度蛍光体には、上述したように様々な材料を混合して用いることが可能であるが、蛍光体と化合物を形成していない単体の金属の混合は好ましくない。このような成分は発光に寄与しないため発光輝度を低下させるばかりか、本発明の高輝度蛍光体を分散型エレクトロルミネッセンス素子の如くの発光素子に用いる際、金属が混合していると短絡して電場を加えることができないためである。このような、結合していない金属の存在は、X線回折法で金属由来のピークの有無を観察することによって確認できる。
【0043】
本発明の高輝度蛍光体は、平均粒径が50nm以上5μm以下であることが特徴である。粒子サイズが大きくなると、対向する一対の電極間に挟持して電気的に発光せしめるときに、発光輝度が低下し好ましくない。より好ましい平均粒径は4μm以下であり、より好ましくは3.5μm以下である。一方、粒径が小さすぎると結晶性が低下して発光輝度が低下するため、50nm以上であることが必要で、好ましくは100nm以上、より好ましくは500nm、更に好ましくは1μm以上である。
【0044】
このような平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10個の粒子の直径を測定し、その平均として求められる。
【0045】
このような、ウルツ鉱型の結晶構造を有し、高結晶性で小粒径の第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤からなる蛍光体は、立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含有する化合物を含有する蛍光体の前駆体と、ニトロ化物,ニトロソ化合物,過酸化物,アゾ化合物,ジアゾ化合物,ヒドラジン誘導体,ヒドロキシルアミン及びその塩,アジ化物,過塩素酸塩,硝酸化合物及びこれらの変性体から選ばれる発熱分解性化合物を密閉容器内に投入して封止し、該発熱分解性化合物を加熱により分解させて加圧し、該密閉容器内の到達圧力を1MPa以上、50MPa以下にして製造された場合に得られる。
【0046】
次に、本発明の高輝度蛍光体の製造方法について説明する。
図1は、本発明に係る高輝度蛍光体の製造方法を説明するための工程図である。まず、立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含む化合物を含有する高輝度蛍光体の前駆体と発熱分解性化合物を容器内に投入する(ステップS1)。次に、この密閉容器を封止して密閉する(ステップS2)。次に、発熱分解性化合物を加熱する(ステップS3)。次に、発熱分解性化合物を分解して、密閉容器内を1MPa以上50MPa以下に加圧する(ステップS4)。
【0047】
つまり、本発明の高輝度蛍光体は、立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物と賦活剤成分を含有する化合物を含有する蛍光体の前駆体と、ニトロ化物,ニトロソ化合物,過酸化物,アゾ化合物,ジアゾ化合物、ヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン及びその塩、アジ化物、過塩素酸塩,硝酸化合物及びこれらの変性体から選ばれる発熱分解性化合物とを密閉容器内に投入して封止し、この発熱分解性化合物を加熱して分解し、蛍光体の前駆体に熱と圧力を加えることによって製造されることを特徴とする。
【0048】
本発明の高輝度蛍光体の前駆体は、立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物と賦活剤成分を含有する化合物とを含有する。
【0049】
本発明の高輝度蛍光体の前駆体に含有される第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物は、蛍光体のところで説明した化合物と同様であるが、蛍光体の前駆体は立方晶の結晶構造を有することが必要である。立方晶の結晶構造を有する蛍光体の前駆体に、発熱分解性化合物の分解によって発生した熱と圧力を加えることにより、本発明の特徴ある構造の蛍光体が得られ、優れた発光特性が実現できる。なお、蛍光体の前駆体は、六方晶に代表される立方晶以外の構造を含んでいてもよい。
【0050】
本発明の高輝度蛍光体の前駆体に含有される賦活剤成分を含有する化合物とは、上述した賦活剤となる元素を含む、硫酸塩,硝酸塩,炭酸塩などの無機酸塩,塩化物,フッ化物などのハロゲン化物である。
【0051】
本発明の高輝度蛍光体の前駆体には、これらの他に、焼結助剤,ドナー性元素含有化合物,アクセプター性元素含有化合物などを所望に応じて混合できる。焼結助剤とは、融点を有する無機化合物で、塩化ナトリウム、塩化リチウムなどのアルカリ金属ハロゲン化物、塩化マグネシウム、フッ化バリウムなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物などが例示できる。
【0052】
ドナー性元素含有化合物とは、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物に対しドナー性を有する元素を含有する化合物で、具体的には、第3族元素含有化合物、第13族元素含有化合物、第17族元素含有化合物である。
【0053】
アクセプター性元素含有化合物とは、第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物に対しアクセプター性を有する元素を含有する化合物で、具体的には、第1族元素含有化合物、第11族元素含有化合物、第15族元素含有化合物である。
【0054】
本発明において発熱分解性化合物とは、加熱などの衝撃によって自発的に分解して発熱する化合物である。このような化合物が分解して発熱することによって蛍光体の前駆体を加熱し、また、分解によって生じたガスが密閉容器内に閉じ込められることによって蛍光体の前駆体を加圧することができる。
【0055】
本発明の発熱分解性化合物は、ニトロ化物,ニトロソ化合物,過酸化物,アゾ化合物,ジアゾ化合物,ヒドラジン誘導体,ヒドロキシルアミン及びその塩,アジ化物,過塩素酸塩,硝酸化合物及びこれらの変性体から選ばれる。これらの化合物は、加熱などの衝撃が与えられると、分解して発熱する機能を有する。
【0056】
より具体的には、トリニトロトルエン,ジニトロトルエン,ニトロセルロース,ニトログリセリンなどのニトロ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化アセトンなどの過酸化物類,過塩素酸アンモニウムに代表される過塩素酸類,アゾビスイソブチロニトリルに代表されるアゾ化合物類,硝酸アンモニウム及びその変性体,四硝酸ペンタエリスリットなどの硝酸化合物類などが例示できる。これらの中で、トリニトロトルエン,ニトロセルロースのような火薬類は、発熱が大きく好ましいが、爆破すると衝撃波が生じて容器が破損するため生産性が低いので、爆破させないように徐々に加熱するなどの方法で用いる必要がある。
【0057】
また、密閉容器内で発熱分解性化合物が分解発熱する際に、蛍光体前駆体とよく混合していることが好ましいため、上述した化合物の中で、分解温度より低い融点を有する化合物が好ましく用いられる。
【0058】
密閉容器内の上記発熱分解性化合物を加熱によって分解発熱させる場合は、容器を外部から加熱しても良いし、容器の内部に電熱線などの加熱源を投入して行っても良い。外部から加熱する場合は、発熱分解性化合物が蛍光体前駆体と混合しやすいため好ましく、電熱線などの加熱源を投入する方法は、速やかに発熱分解性化合物を加熱できるので好ましい。
【0059】
なお、密閉容器内に蛍光体前駆体と発熱分解性化合物を投入する方法は特に制限は無いが、上述したように、両者がよく混合していることが好ましいため、発熱分解性化合物と蛍光体前駆体を交互に積層して混合する方法、予めよく混合しておく方法などが好ましい。
【0060】
密閉容器内の到達圧力は、50MPa以下であることが必要である。すなわち、容器内の到達圧力が高すぎると容器の設計が困難になるばかりか、ウルツ鉱型の結晶構造の完全性が低下するためである。容器内の到達圧力は、容器の設計の容易さなどのから、より好ましくは、40MPa以下であり更に好ましくは35MPa以下である。下限に関しては、常圧では高い結晶性の蛍光体が得られないので、1MPa以上であることが必要であり、好ましくは5MPa以上、更に好ましくは10MPa以上である。なお、容器の内圧は、発熱分解性化合物の分解反応式から特定される発生ガス量と容器の体積と後述の方法で測定した内温を用いて、算出して求めてもよいし、例えば、破裂板に代表される一定圧力で破壊する部材を容器に接続して、実験的に測定することもできる。
【0061】
このような圧力に達したときの容器の内温は、蛍光体前駆体の相変化などと強く関連する。そのため、好ましくは900℃以上、より好ましくは950℃以上、更に好ましくは1000℃以上である。上限に関しては特に制限は無いが、高温になると容器の強度が不足したり、容器からの不純物の拡散が発生したりするので、好ましくは1600℃以下、より好ましくは1500℃以下、更に好ましくは1400℃以下、最も好ましくは1300℃以下である。なお、容器の内温は、容器の内部に圧力が漏れないように設置された熱電対によって測定できる。
【0062】
容器内の圧力や温度が高い状態で保持される時間は、長いと粒子サイズが大きくなるので好ましくなく、粒子サイズの成長を伴う700℃以上に保持される時間は、好ましくは20分以下、より好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下である。下限に関しては特に制限は無いが、短すぎると相転移が不十分な場合があるので、好ましくは1秒以上、より好ましくは10秒以上、更に好ましくは30秒以上である。
【0063】
なお、本発明の高輝度蛍光体の製造に用いられる密閉容器は、上述した圧力で漏れたり破壊したりしない容器であることが必要である。すなわち、容器が破壊すると製造の度に新しい容器を用いる必要が生じて生産性が悪くなり、更に蛍光体の回収が困難になるためである。また、漏れが発生すると、急速に内圧、内温が低下し、ウルツ鉱型への相転移が十分に進行せず発光輝度が低下するためである。このような容器は、水熱合成用容器に代表される高圧容器やその部品、高圧配管の部品などを用いて製作できる。特に、密閉容器のシール方式は重要で、コーン方式やグレイロック方式(グレイロック:商標登録済)が例示できる。これらの中で、グレイロック方式は大口径の密閉容器のシール方式に適し、本発明の高輝度蛍光体の生産性が向上するので好ましい。
【0064】
上述したように製造された本発明の高輝度蛍光体は、そのまま用いることもできるが、通常、カーボンに代表される発熱分解性化合物の分解残渣が蛍光体表面に付着しているため、好ましくは洗浄してから用いられる。
【0065】
洗浄方法は、発熱分解性化合物の分解残渣を取り除くことができれば特に限定されないが、水や希酸などの水性媒体を用いて、ろ過や遠心分離を用いて洗浄する方法、水性媒体を用いて、超音波を付与して洗浄する方法、水性媒体と、水性媒体とは混合しない油性溶剤との界面を利用して分離して洗浄する方法やこれらを組み合わせた方法で洗浄できる。
【0066】
これらの方法で、十分にカーボンを除去することができない場合は、600℃以下の温度で酸素が混在する雰囲気下、1時間から3時間焼成し、カーボンを酸化して消失させる方法が好ましく用いられる。
【0067】
なお、600℃より高い温度で焼成すると粒径が増大するので好ましくない。また、酸素の分圧や焼成時間にもよるが、蛍光体の酸化が進行して発光を損なう場合があるので、より好ましくは500℃以下である。また、この際、蛍光体の表面が酸化する場合があり、発光特性に悪影響を与えるときは、焼成後に希酸で洗浄する方法が好ましく用いられる。
【0068】
本発明の高輝度蛍光体は、紫外線に代表される高エネルギーの光を受けて明るく発光する特性を有するので、各種光源の波長変換材料として好適に用いられる。
【0069】
また、小粒径で高輝度の特性を有するので、本発明の蛍光体から形成された発光層を、対向する一対の電極間に挟持して、発光素子を作製し、光源として用いられる。
【0070】
このような発光層は、本発明の蛍光体を有機バインダーや無機バインダーと共にコーティングや印刷などによって形成する塗布法,真空蒸着,スパッタなどによって成膜する真空成膜法,プレス機や圧延機などを用いて加圧して形成するプレス法などによって形成される。
【0071】
これらの中で、有機バインダーや無機バインダーと共にコーティングや印刷などによって形成する塗布法は、生産性が高く、本発明の蛍光体の優れた発光特性を維持した発光素子を作製しやすいので好ましい。
【0072】
一方、本発明の高輝度蛍光体は、結晶構造が熱的に安定である特徴も有するので、真空成膜法によって成膜した際、特徴のある薄膜を形成することができるので、真空成膜法は好ましい発光層の形成方法である。特に、電子線蒸着や抵抗加熱蒸着法などの真空蒸着法は、本発明の高輝度蛍光体の熱的な構造安定性による薄膜の特徴ある構造発現の効果が高く好ましい。
【0073】
また、真空成膜法を用いる場合は、本発明の高輝度蛍光体と混晶を形成できる化合物や、上述したドナー性元素含有化合物やアクセプター性元素含有化合物と共蒸着して所望の電気特性を有する発光層を形成することも可能である。このようにすることによって、電気特性の優れた、直流駆動や交流駆動の薄膜型エレクトロルミネッセンス素子を作製することが可能になる。
【0074】
更には、本発明の発光層をn型,p型の半導体に狭持し、直流駆動のエレクトロルミネッセンス素子を作製することも可能である。
【0075】
以下、本発明を実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されない。
【実施例】
【0076】
本発明で用いられる測定法は、以下のとおりである。
(1)結晶構造
蛍光体を2mmの深さを有する粉末試料ホルダーに詰めて固定し、X線回折装置を用い、ターゲットとしてCuを用い、励起電圧40kV、励起電流40mAとし、操作軸は2θ/θとして測定した。検出器には、高速1次元X線検出器D/teX Ultraを用いた。
(2)結晶性
結晶構造の測定と同様の測定を行い、ウルツ鉱型構造の(100)面のピークの半値幅を評価した。
(3)粒子サイズ
蛍光体をホルダーに導電性両面テープで固定し、走査型電子顕微鏡を用いて、電子顕微鏡写真を撮影し、10個の粒子のサイズを測定して平均化し平均粒径として求めた。粒子の形状が球状(写真では円状)でない場合は、最も長い部位と最も短い部位の平均をその粒子の粒径とした。
(4)発光特性(フォトルミネッセンス特性)
蛍光分光光度計を用い、光源側、検出器側ともスリット幅1nmに設定し、励起波長250nmで評価した。
(5)発光特性(エレクトロルミネッセンス特性)
Multifunction Synthesizerを用いて正弦波を発生させ、High Voltage Power Amplifierを用いて増幅し、発光素子に電場をかけて発光特性を評価した。
(6)成分分析
蛍光体を錠剤成型した後に測定した。管球にはロジウム管球を用い、X線照射径はφ3mmとした。定量には、簡易FP法を用いた。
(7)焼成法によるZnS系蛍光体の作製
蛍光体前駆体をアルミナ製ルツボに入れ、タンマン管式電気炉にセットした。電気炉の扉を閉めた後、電気炉内を減圧し、雰囲気ガスを窒素に置換した後、窒素を0.5ml/分で流しながら1230℃で2時間焼成した。冷却後、ルツボを電気炉から取り出し、ルツボから粉体を取り出し、水洗、乾燥を行った。
(8)焼成法によるSrS系蛍光体の作製
蛍光体前駆体をアルミナ製ルツボに入れ、タンマン管式電気炉にセットした。電気炉の扉を閉めた後、電気炉内を減圧し、雰囲気ガスを窒素に置換した後、窒素を0.5ml/分で流しながら1100℃で2.75時間焼成した。冷却後、ルツボを電気炉から取り出し、ルツボから粉体を取り出した。
【実施例1】
【0077】
<蛍光体前駆体の調製>
閃亜鉛鉱型の結晶構造を有する硫化亜鉛100重量部と酸化亜鉛0.5重量部と焼結助剤としてフッ化バリウム3重量部、塩化マグネシウム・6水和物6.4重量部、塩化ナトリウム2重量部と賦活剤として硫酸マンガン(II)・5水和物0.43重量部、塩化イリジウム(III)0.012重量部を乳鉢で1時間混合し、蛍光体前駆体Aを得た。
【0078】
<蛍光体の合成、洗浄>
直径10cmで円筒状の容積800mlの耐圧容器の円筒部に蛍光体前駆体Aを108g投入し、次いで発熱分解性化合物として2,4,6−トリニトロトルエン(以下、TNTと略す)51.2gを積層して投入した。容器を密閉した後、容器を50Pa以下まで減圧して封止した。容器の外部に設置された電熱線を用いて容器を加熱し、発熱分解性化合物が分解して発熱したことが容器内部に設置した熱電対の温度上昇によって確認された。その際に到達した内温は1120℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約4分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。容器を冷却後開封し、内部の粉体を取り出した。この粉体には多くのTNTの燃焼残渣が付着していたので、超音波ホモジナイザーを用いた水洗とデカンテーションを繰り返した後、大気雰囲気下500℃で3時間焼成してTNTの燃焼残渣成分を取り除いた。次いで、15重量%の酢酸水溶液を用いて洗浄し、水洗、乾燥して蛍光体A1を得た。
【0079】
<蛍光体の分析>
蛍光体A1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、1.94であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.148°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.7μmであった。
【0080】
蛍光体A1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0081】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体A1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ586nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Aを焼成して得られた平均粒径16μmの蛍光体(以下、基準蛍光体という)の発光輝度を100とした場合、180であった。
【実施例2】
【0082】
<蛍光体の合成、洗浄>
TNTの投入量を32gに変更した以外は、実施例1と同様にして蛍光体A2を得た。その際に到達した内温は1010℃であり、算出された内圧は18MPaであり、700℃以上の保持時間は、約3分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0083】
<蛍光体の分析>
蛍光体A2をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、1.65であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.190°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.0μmであった。
【0084】
蛍光体A2を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/または第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0085】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体A2のフォトルミネッセンス特性を評価したところ582nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Aを焼成して得られた平均粒径16μmの蛍光体(基準蛍光体)の発光輝度を100とした場合、130であった。
【実施例3】
【0086】
<蛍光体前駆体の調製>
硫酸マンガン(II)・5水和物の量を3重量部とし、塩化イリジウム(III)の量を0.084重量部とした以外は実施例1と同様にして蛍光体前駆体Bを得た。
【0087】
<蛍光体の合成、洗浄>
蛍光体前駆体Aの108gに代えて蛍光体前駆体Bの110gを投入した以外は、実施例1と同様にして蛍光体B1を得た。その際に到達した内温は1100℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約4分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0088】
<蛍光体の分析>
蛍光体B1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、2.87であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.155°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は3.1μmであった。
【0089】
蛍光体B1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0090】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体B1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ584nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Bを焼成して得られた平均粒径11μmの蛍光体の発光輝度を100とした場合、220であり、基準蛍光体の発光輝度を100とした場合460であった。
【実施例4】
【0091】
<蛍光体前駆体の調製>
硫酸マンガン(II)・5水和物の量を4.7重量部とし、塩化イリジウム(III)の量を0.132重量部とした以外は実施例1と同様にして蛍光体前駆体Cを得た。
【0092】
<蛍光体の合成、洗浄>
蛍光体前駆体Aの108gに代えて蛍光体前駆体Cの112gを投入した以外は、実施例1と同様にして蛍光体C1を得た。その際に到達した内温は1120℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約3分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0093】
<蛍光体の分析>
蛍光体C1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、1.59であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.125°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.9μmであった。
【0094】
蛍光体C1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0095】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体C1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ582nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Cを焼成して得られた平均粒径13μmの蛍光体の発光輝度を100とした場合、220であり、基準蛍光体の発光輝度を100とした場合470であった。
【実施例5】
【0096】
<蛍光体前駆体の調製>
硫酸マンガン(II)・5水和物の量を9.4重量部とし、塩化イリジウム(III)の量を0.264重量部とした以外は実施例1と同様にして蛍光体前駆体Dを得た。
【0097】
<蛍光体の合成、洗浄>
蛍光体前駆体Aの108gに代えて蛍光体前駆体Dの116gを投入した以外は、実施例1と同様にして蛍光体D1を得た。その際に到達した内温は1110℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約2分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0098】
<蛍光体の分析>
蛍光体D1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、2.21であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.155°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.8μmであった。
【0099】
蛍光体D1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0100】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体D1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ580nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Dを焼成して得られた平均粒径12μmの蛍光体の発光輝度を100とした場合、150であり、基準蛍光体の発光輝度を100とした場合350であった。
【実施例6】
【0101】
<蛍光体前駆体の調製>
硫酸マンガン(II)・5水和物0.43部に変えて、塩化銀0.03重量部に変えた以外は実施例1と同様にして蛍光体前駆体Fを得た。(少ないほう)
【0102】
<蛍光体の合成、洗浄>
蛍光体前駆体Aの108gに代えて蛍光体前駆体Eの108gを投入した以外は、実施例1と同様にして蛍光体E1を得た。その際に到達した内温は1100℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約4分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0103】
<蛍光体の分析>
蛍光体E1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、1.65であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.159°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.2μmであった。
【0104】
蛍光体E1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/または第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0105】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体E1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ434nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Eを1230℃で焼成して得られた僅かにウルツ鉱型化した平均粒径11μmの蛍光体の発光輝度を100とした場合、190であった。
【0106】
<発光素子の作製と評価>
蛍光体E1の1重量部を誘電体ポリマー溶液1重量部と混合し、透明導電膜ITO付ガラスに約25μmのギャップに調整したブレードコーターを用いてコーティングし、ホットプレートを用いて130℃で1分間加熱してベーキングして、蛍光体E1から形成された発光層を設置した。次いで、チタン酸バリウム粒子分散液を約50μmのギャップに調整したブレードコーターを用いてコーティングし、ホットプレートを用いて130℃で1分間加熱してベーキングした。さらに、ブレードコーターのギャップを約75μmに調整し、同様にベーキングする工程を、2回繰り返し誘電体層を設置した。次いで、カーボン導電性ペーストを約100μmのギャップに調整したブレードコーターを用いてコーティングし、ホットプレートを用いて130℃で1分間加熱してベーキングして発光素子を作製した。この発光素子を200V、3kHzの条件で評価したところ青色の面発光が観測された。
【実施例7】
【0107】
<蛍光体前駆体の調製>
塩化銀の量を0.30重量部に変えた以外は実施例6と同様にして蛍光体前駆体Fを得た。
【0108】
<蛍光体の合成、洗浄>
蛍光体前駆体Aの108gに代えて蛍光体前駆体Fの108gを投入した以外は、実施例1と同様にして蛍光体F1を得た。その際に到達した内温は1130℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約3分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0109】
<蛍光体の分析>
蛍光体F1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、2.32であり、純度の高いウルツ鉱型構造を有することが確認された。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.164°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.8μmであった。
【0110】
蛍光体F1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/または第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0111】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体F1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ432nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Fを1230℃で焼成して得られた僅かにウルツ鉱型化した平均粒径11μmの蛍光体の発光輝度を100とした場合、180であった。
【0112】
<発光素子の作製と評価>
蛍光体E1をF1に変えた以外は実施例6と同様にして評価したところ、青色の面発光が観測された。
【実施例8】
【0113】
硫化ストロンチウム100重量部と焼結助剤として塩化カリウム0.3重量部と賦活剤としてフッ化セリウム0.3重量部を乳鉢で1時間混合し、蛍光体前駆体Gを得た。
【0114】
<蛍光体の合成、洗浄>
直径10cmで円筒状の容積800mlの耐圧容器の円筒部に蛍光体前駆体Gを101g投入し、次いで発熱分解性化合物として2,4,6−トリニトロトルエン(以下、TNTと略す)51.2gを積層して投入した。容器を密閉した後、容器を50Pa以下まで減圧して封止した。容器の外部に設置された電熱線を用いて容器を加熱し、発熱分解性化合物が分解して発熱したことが容器内部に設置した熱電対の温度上昇によって確認された。その際に到達した内温は1100℃であり、算出された内圧は31MPaであり、700℃以上の保持時間は、約3分間であった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。容器を冷却後開封し、内部の粉体を取り出した。TNTの燃焼残渣の付着が少ない部分を選んで採取し、蛍光体G1を得た。
【0115】
<蛍光体の分析>
蛍光体G1をX線回折法で分析した結果、岩塩構造であった。2θ=29.7°付近の(200)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.112°であり、結晶性が高いことが確認された。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は3.3μmであった。
【0116】
蛍光体G1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中ではストロンチウムが50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0117】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体G1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ480nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Gを焼成して得られた平均粒径5.6μmの蛍光体の発光輝度を100とした場合、460であった。
【0118】
[比較例1]
<蛍光体の合成、洗浄>
強度が無く加圧によって容易に破壊する容器を用いた以外は実施例2と同様にして蛍光体A3を合成した。合成の際、容器が破壊して火炎が噴出すのが観察され、発熱分解性化合物が分解して発熱したことが確認された。その際に到達した内温は容器の破壊によって測定できず、圧力を算出することもできなかった。粉体の大半は回収できなかったが、飛び散った粉体を集めて実施例1と同様にして蛍光体A3を得た。
【0119】
<蛍光体の分析>
蛍光体A3をX線回折法で分析した結果、僅かにウルツ鉱型構造を示しているが、閃亜鉛鉱型構造が残存していた。岩塩構造は観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、0.20であった。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=141°であった。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は1.5μmであった。
【0120】
蛍光体A3を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0121】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体A3のフォトルミネッセンス特性を評価したところ586nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Aを焼成して得られた平均粒径16μmの蛍光体(基準蛍光体)の発光輝度を100とした場合、38であった。
【0122】
[比較例2]
<蛍光体の合成、洗浄>
TNTの投入量を85.3gに変更した以外は実施例1と同様にして蛍光体A4を合成した。その際に到達した内温は1370℃であり、算出された内圧は61MPaであった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0123】
<蛍光体の分析>
蛍光体A4をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、1.46であった。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.186°であった。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.8μmであった。
【0124】
蛍光体A4を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0125】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体A4のフォトルミネッセンス特性を評価したところ588nmに賦活剤由来の発光が観測された。この発光輝度は、蛍光体前駆体Aを焼成して得られた平均粒径16μmの蛍光体(基準蛍光体)の発光輝度を100とした場合、60であった。
【0126】
[比較例3]
<蛍光体前駆体の調製>
硫酸マンガン(II)・5水和物と塩化イリジウム(III)の量を加えなかった以外は実施例1と同様にして蛍光体前駆体Eを得た。
【0127】
<蛍光体の合成、洗浄>
蛍光体前駆体Aに代えて蛍光体前駆体Eを投入した以外は、実施例1と同様にして蛍光体E1を得た。その際に到達した内温は1140℃であり、算出された内圧は31MPaであった。この際、圧力の漏れは観測されなかった。
【0128】
<蛍光体の分析>
蛍光体E1をX線回折法で分析した結果、ウルツ鉱型構造であり、閃亜鉛鉱型構造、岩塩構造ともに観測されなかった。ウルツ鉱型構造の2θ=26.9°付近の(100)面のピーク面積の2θ=28.5°付近の(002)面のピーク面積に対する比は、2.29であった。2θ=26.9°付近の(100)面に由来するピークの半値幅は2θ=0.126°でった。また、単体金属由来のピークは観測されなかった。この蛍光体の平均粒径は2.8μmであった。
【0129】
蛍光体E1を蛍光X線分光分析法で分析したところ、第2族元素及び/又は第12族元素の中では亜鉛が50%以上であり、第16族元素の中では硫黄が50%以上であり、それぞれ主成分であることが確認された。
【0130】
<発光(フォトルミネッセンス)特性>
蛍光体E1のフォトルミネッセンス特性を評価したところ賦活剤由来の発光は観測されなかった。
【0131】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の高輝度蛍光体は、紫外線を受光して高輝度に発光するので波長変換材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶の結晶構造を有する第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤成分を含む化合物を含有する高輝度蛍光体の前駆体と、ニトロ化物,ニトロソ化合物,過酸化物,アゾ化合物,ジアゾ化合物,ヒドラジン誘導体,ヒドロキシルアミン及びその塩,アジ化物,過塩素酸塩,硝酸化合物及びこれらの変性体から選ばれる発熱分解性化合物とを密閉容器内に投入して封止する工程と、
前記発熱分解性化合物を加熱により分解させて加圧する工程とを有し、
前記密閉容器内の到達圧力を1MPa以上、50MPa以下にすることを特徴とする高輝度蛍光体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高輝度蛍光体の製造方法によって製造された高輝度蛍光体であって、ウルツ鉱型の結晶構造を有することを特徴とする高輝度蛍光体。
【請求項3】
第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤を含有する高輝度蛍光体であって、
ウルツ鉱型の結晶構造を有し、X線回折法で得られる(002)面の面間隔を反映したX線回折ピーク面積に対する(100)面の面間隔を反映したX線回折ピーク面積の比が、1.5以上3.5以下であり、かつ、平均粒径が50ナノメートル以上5マイクロメートル以下であることを特徴とする高輝度蛍光体。
【請求項4】
前記第12族元素として亜鉛を主成分として含み、前記第16族元素として硫黄を主成分として含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の高輝度蛍光体。
【請求項5】
請求項1に記載の高輝度蛍光体の製造方法によって製造された高輝度蛍光体であって、岩塩型の結晶構造を有することを特徴とする高輝度蛍光体。
【請求項6】
第2族元素及び/又は第12族元素と第16族元素の化合物及び賦活剤を含有する高輝度蛍光体であって、
岩塩型の結晶構造を有し、平均粒径が50ナノメートル以上5マイクロメートル以下であることを特徴とする高輝度蛍光体。
【請求項7】
前記第2族元素としてストロンチウムを主成分として含み、前記第16族元素として硫黄を主成分として含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の高輝度蛍光体。

【図1】
image rotate