説明

魚礁ブロック及びその製造方法並びにピラミッド型魚礁

【課題】構成が簡単で組み立て作業が容易であり貝殻を利用して渦流効果や陰影効果に優れた魚礁を容易且つ安価に製造する。
【解決手段】コンクリート製の多角柱形状を有し内部が空洞2で且つ周面が稜線を柱3状に残して開口4したブロック本体1と、内部に貝殻を収容してブロック本体1内に挿入・固定される通水性の貝殻保持ケース6とからなる魚礁ブロック200であって、貝殻保持ケース6は、開口4からブロック本体1内に挿入してブロック本体1に固定可能な多角形状の下部枠体7と、下部枠体7に嵌合して上部の開放口8から貝殻を充填するようにした通水籠9と、通水籠9の上部開放口8を覆う通水蓋10とを有し、下部枠体7は、外側角部から外側へ突出し、ブロック本体1の側部柱3aに嵌合して横方向への移動を拘束し且つブロック本体1の底部柱3b上に載置して下方への移動を拘束する係止部材12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚礁ブロック及びその製造方法並びにピラミッド型魚礁に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は従来から図19〜図21に示すようなピラミッド型魚礁100を提供している。このピラミッド型魚礁100は、コンクリート製の多角柱形状を有し内部が空洞2になっており且つ周面(6面)が稜線を柱3状に残して開口4を形成したブロック本体1を基本構成として組み立てられている。上記ブロック本体1は、多角柱形状の1つである正四面体とした場合を示しており、又、このような正四面体のブロック本体1と、正四面体を一直線に複数個(図示例では4個)連結した長ブロック本体1Lとを備えている。そして、長ブロック本体1Lを組み合わせて例えば平面矩形(ロの字状)の空間aを有するようにした底部構造を形成し、その底部構造の上部に、前記正四面体のブロック本体1を組み合わせて固定することにより、内部及び周方向に所要の空間aが形成されるようにしたピラミッド型魚礁100を組み立てている。上記ピラミッド型魚礁100を構成するブロック本体1と長ブロック本体1Lはクレーン等により吊り上げてボルト締結することにより組み立てられる。
【0003】
コンクリート製の上記ブロック本体1及び長ブロック本体1Lは強度に優れており、従って、これらのブロック本体1及び長ブロック本体1Lを地上で組み合わせることで大型のピラミッド型魚礁100を容易に製造することができ、製造したピラミッド型魚礁100は台舶等により目的の海域まで搬送し、クレーン等により吊り降ろして海底に設置している。
【0004】
前記ピラミッド型魚礁100では、柱構造を持つブロック本体1及び長ブロック本体1Lが複雑な空間を提供し、陰影効果及び渦流効果により、メバル、イサキ、ヒラマサ、ヒラメ等の有用魚種が蝟集する、又、ブロック表面にはゴカイ、アミ、エビ、カニ等の多毛類、小型の甲殻類等の幼生が付着して微小動物が生息するようになることで、上記魚類の稚魚未生魚が蝟集することから、有用魚種の稚魚等の育成場として重要な機能を発揮するようになるという利点がある。又、人工魚礁に貝殻を利用した場合には、表面積及び内部空間が大きくなり、更に複雑な空間を提供することができ、ゴカイ、アミ、エビ、カニ等の多毛類、小型の甲殻類等の付着動物が生息しやすくなり、人工魚礁の効果が早期に発現されるという利点がある。
【0005】
一方、例えばホタテ、牡蠣、あこや貝等の貝類を生産している地域では、これらの貝類を加工する際に大量の貝殻が廃棄物として発生し、これらの貝殻は単に山積みされておりその処理に苦慮しているのが現状である。
【0006】
そこで、このような貝殻を利用した人工魚礁を構成することが種々提案されている。例えば、筒状の通水性ネット或いはケースに貝殻を充填し、貝殻を充填した多数のネット或いはケースを鋼製等の構造物内に収容するようにしたもの(特許文献1、2等参照)、或いは矩形の通水性ケースに貝殻を充填したものを鋼製等の構造物に取り付けるようにしたもの(特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−233265号公報
【特許文献2】特開平09−163894号公報
【特許文献3】特開2001−346476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の貝殻を利用した人工魚礁は、貝殻を収容したネットやケースを鋼製の構造物内に収容したり構造物に取り付けるようにした方式であるため、貝殻を充填したネットやケースは作業者が持ち運べる小さい容量とする必要があり、しかもこのようなネットやケースに貝殻を充填する作業は手作業で行う必要があり、従って、多数のネットやケースに貝殻を充填する作業が非常に大変であるという問題があり、更に、貝殻を充填した多数の貝殻収容体を鋼製の構造物に収納したり取り付ける作業も非常に大変となり、そのために、貝殻を利用した人工魚礁の製造には時間が掛り、製造コストが増加するという問題を有していた。
【0009】
又、大型の人工魚礁を製造する際には、貝殻を充填した膨大な数のネットやケースを用意する必要があり、且つこのネットやケースを支持するための鋼製の構造物には大きな機械的強度が要求され、更に、渦流効果や陰影効果を考慮した場合には、鋼製の構造物の形状構造が複雑になる上に機械的強度を更に増加する必要があるために、製造コストが大幅に増加するという問題を有していた。
【0010】
本発明は上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、構成が簡単で組み立て作業が容易であり、貝殻を利用して渦流効果及び陰影効果に優れた魚礁を容易且つ安価に製造できる魚礁ブロック及びその製造方法並びにピラミッド型魚礁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、コンクリート製の多角柱形状を有し、内部が空洞で且つ周面が稜線を柱状に残して開口したブロック本体と、内部に貝殻を収容して前記ブロック本体内に挿入・固定される通水性の貝殻保持ケースとからなる魚礁ブロックであって、
前記貝殻保持ケースは、前記空間からブロック本体内に挿入してブロック本体に固定可能な多角形状を有する下部枠体と、該下部枠体に嵌合して上部の開放口から貝殻を充填するようにした通水籠と、該通水籠の上部開放口を覆う通水蓋とを有し、
前記下部枠体は、多角形状の外側角部から外側へ突出し、前記ブロック本体の側部柱の内側角部に嵌合して下部枠体の横方向への移動を拘束すると共にブロック本体の底部柱上に載置して下部枠体の下方への移動を拘束するようにした係止部材を有することを特徴とする魚礁ブロックである。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記下部枠体に、ブロック本体に当接して下部枠体の浮き上がりを防止するための枠体係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロックである。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記下部枠体に通水籠を固定して通水籠の浮き上がりを防止するための籠係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロックである。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記通水籠に通水蓋を固定して通水蓋の浮き上がりを防止するための蓋係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロックである。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記下部枠体と通水籠、及び通水籠と通水蓋が、ボルトにより固定又は固縛具により固縛又は溶接により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロックである。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記通水籠に貝殻に代えて石を充填するようにしたことを特徴とする請求項1〜5に記載の魚礁ブロックである。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の魚礁ブロックの製造方法であって、多角形状の下部枠体を傾斜させて開口からブロック本体の空洞内に挿入するステップと、下部枠体を水平に戻して外側角部の係止部材をブロック本体の側部柱の内側角部に嵌合させると共にブロック本体の底部柱上に載置させて下部枠体の横方向への移動と下方への移動を拘束するステップと、通水籠をブロック本体の開口から空洞内に挿入して下部枠体に嵌合設置するステップと、通水籠内に上部開放口から貝殻を供給して充填するステップと、上部開放口を通水蓋で覆うステップとからなることを特徴とする魚礁ブロックの製造方法である。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項1〜6に記載の魚礁ブロックを複数組み付けて構成したことを特徴とするピラミッド型魚礁である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、多角形状の下部枠体を傾斜させて開口からブロック本体の空洞内に挿入すし、下部枠体を水平に戻してコーナ部の係止部材をブロック本体の側部柱の内側に嵌合させると共にブロック本体の底部柱上に載置させて下部枠体の横方向への移動と下方への移動を拘束し、通水籠をブロック本体の開口から空洞内に挿入して下部枠体に嵌合設置し、通水籠内に上部開放口から貝殻を供給して充填し、上部開放口を通水蓋で覆うようにしたので、ブロック本体に貝殻保持ケースを取り付けて設置する作業が非常に容易になると共に、ブロック本体の柱形状を利用して貝殻保持ケースの移動を確実に拘束して支持することができ、更に、通水籠内に貝殻を供給して充填する作業は容易であり、従って、魚礁ブロックを容易且つ安価に製造することができ、よって貝殻を用いた魚礁ブロックの利用が促進されるという優れた効果を奏し得る。
【0020】
更に、上記魚礁ブロックを複数組み付けることにより、機械的強度を有し且つ渦流効果や陰影効果を有する大型のピラミッド型魚礁を容易に製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の魚礁ブロックを構成するブロック本体の一例を示す正面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【図3】図1のブロック本体内に挿入設置して本発明の魚礁ブロックを構成する通水性の貝殻保持ケースの一例を示す正面図である。
【図4】図3をIV−IV方向から見た平面図である。
【図5】貝殻保持ケースを構成する下部枠体の一例を示す正面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】枠体係止手段の他の例を示す説明図である。
【図8】貝殻保持ケースを構成する通水籠の一例を示す正面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】貝殻保持ケースを構成する通水蓋の一例を示す平面図である。
【図11】蓋体係止手段の一例を示す説明図である。
【図12】ブロック本体内に下部枠体を挿入する状態を示す正面図である。
【図13】ブロック本体内に挿入した下部枠体を水平に戻してL字形の係止部材をブロック本体の側部柱に嵌合させて設置する状態を示す正面図である。
【図14】通水籠を挿入して下部枠体上に設置する状態を示す正面図である。
【図15】通水籠が下部枠体上に設置された状態を示す正面図である。
【図16】通水籠内に貝殻を充填する状態を示す正面図である。
【図17】通水蓋を挿入して通水籠上に設置することにより魚礁ブロックを構成した状態を示す正面図である。
【図18】本発明の魚礁ブロックの他の実施例を示す正面図である。
【図19】(a)は通水籠の他の構成例を示す網の斜視図、(b)は通水籠に網を挿入した状態を示す正面図である。
【図20】本出願人が既に提供しているピラミッド型魚礁の一例を示す斜視図である。
【図21】図20をXXI−XXI方向から見た矢視図である。
【図22】図20をXXII−XXII方向から見た矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0023】
図1は本発明の魚礁ブロックを構成するブロック本体の一例を示す断面図、図2は図1のII−II方向矢視図であり、このブロック本体1は、コンクリートにより多角柱形状の1つである正四面体を形成しており、内部が空洞2となっており且つ周面(6面)が稜線を柱3状に残して開口4を形成している。図1のブロック本体1は、例えば一辺が1.5メートルの長さとなっており、上下の開口4は図2に示すように四角形を有し、四周の開口4には図1に示すように四隅部に各柱3の断面積を大きくして強度を高めたハンチ5(斜面)が形成されている。又、前記ブロック本体1の各柱3は図2に示すように、ブロック本体1をコンクリート打設して製造する際の型抜けを良くするために空間4は外側に向かって広がっており、従って柱3の断面は内側角部が鋭角になっている。尚、柱3の断面は矩形(直角)になっていてもよい。
【0024】
図3は前記ブロック本体1内に挿入して設置することにより本発明の魚礁ブロック200を構成する通水性(透水性)の貝殻保持ケース6の一例を示す正面図、図4は図3をIV−IV方向から見た平面図である。
【0025】
貝殻保持ケース6は、前記空間4からブロック本体1内に挿入してブロック本体1に固定可能な四角形の下部枠体7と、該下部枠体7に嵌合して上部の開放口8から貝殻を充填するようにした通水籠9と、該通水籠9の上部開放口8を覆うように固定される通水蓋10とにより構成されている。
【0026】
前記下部枠体7は、図3、図4及び図5、図6に示すように、外側の立上り部11aと内側の水平部11bを有するL形アングル材によって前記空間4より小さい四角形に形成したアングル枠11を有しており、該アングル枠11の4つの外側角部には、平面L字形を有して外側に突出し図4に示すようにブロック本体1の側部柱3aの内側角部に嵌合するようにした係止部材12を設けている。この係止部材12はL形アングル材にて形成されており、L形アングル材の一辺で形成されるL字形が図4に示すように側部柱3aの内側角部に嵌合することで下部枠体7がブロック本体1に対して横方向へ移動できないように拘束されており、又、L形アングル材の他辺が図3に示すように前記側部柱3aと底部柱3bとの境に形成されたハンチ5に当接することで、下部枠体7が下方へ移動できないように拘束されている。
【0027】
又、図5、図6に示すように、前記アングル枠11の前後の中間位置と左右の中間位置にはL形アングル材からなる補強材13が十字状に且つアングル枠11の外側に張り出して設けてあり、更に、前記アングル枠11の水平部11b上及び前記補強材13上には丸棒等からなる複数の網支持材14が所要の間隔で交差して固定されており、更に、網支持材14上にはプラスチック網或いは金属網からなる底部網15が固定されている。更に、前記十字状の補強材13における夫々の端部には、図2示すように下端が底部柱3bの上面に当接するようにしたスペーサ16を固定して荷重を受けるようになっている。上記下部枠体7は、溶接等によって一体に組み立てることができる。
【0028】
更に、前記L字形の係止部材12の上面には、上側に突出した開口17付きの板18が固定されていると共に、前記開口17に螺合するボルト19(図4)が設けてあり、前記ボルト19の先端をブロック本体1の側部柱3aの内側角部に当接させることで下部枠体7の浮き上がりを防止する枠体係止手段20を構成している。この枠体係止手段20は他の例を示す図7のような構成を有していてもよい。図7の枠体係止手段20は、前記係止部材12の上面に、上端が破線で示すように側部柱3a側に張り出すように固定したバネ板18aを設けている。図7の枠体係止手段20においては、下部枠体7をブロック本体1内に設置する際には破線で示すバネ板18aが実線で示すように下部枠体7側に押し曲げられた状態となっており、下部枠体7が上方へ浮き上がろうとすると、バネ板18aの先端がバネ力によって側部柱3aの内側角部に押付けられていることでストッパの作用を発揮するようになっている。
【0029】
図8は前記通水籠9の正面図、図9は図8の平面図であり、通水籠9は、L形アングル材によって四角形に形成された上部アングル枠21と、該上部アングル枠21のコーナ部から所要の長さで下側に延びるように固定したL形アングル材からなるコーナ部材22と、前記上部アングル枠21及びコーナ部材22の内側に丸棒等を所要の間隔で交差して固定した網支持材23と、該網支持材23の内側の四周に固定したプラスチック網或いは金属網からなる側部網24とから構成されており、前記通水籠9は、図5の下部枠体7におけるアングル枠11の立上り部11aの内側に丁度嵌合する大きさとなっている。上記通水籠9は、金具や線材等の固縛材等によって一体に組み立てることができる。
【0030】
又、上記実施例においては、下部枠体7に底部網15を設け、通水籠9の四周に側部網24を設けるようにした場合について例示したが、下部枠体7に底部網15を設けることなく、通水籠9に上部が開放口8となった容器状の網を設けるようにしてもよい。
【0031】
又、前記通水籠9のコーナ部材22の下端と図5の下部枠体7の立上り部11aの対応する位置にはボルト孔25が設けてあり、該ボルト孔25にボルト26(図4)を通して固定することにより、通水籠9の浮き上がりを防止するようにした籠係止手段27を設けている。
【0032】
図10は前記通水籠9の上部の開放口8を覆うように設けられる通水蓋10の平面図であり、通水蓋10は、丸棒等により四角形に形成された内部に更に丸棒等を所要の間隔で交差するよう固定した網支持材28を設け、該網支持材28にプラスチック網或いは金属網からなる上部網29を一体に固定している。上記通水蓋10は、溶接等によって一体に組み立てることができる。
【0033】
又、図9に示すように、前記通水籠9の上部アングル枠21のコーナ部と中間部における前記図10の通水蓋10の網支持材28が対応する位置にはボルト孔30が設けてあり、図11に示すように網支持材28に掛けた固定具31の開口(図示せず)を前記ボルト孔30に一致させボルト32を通して固定することにより、通水蓋10の浮き上がりを防止するようにした蓋係止手段33を設けている。又、通水蓋10の浮き上がりを防止するためには金具や線材等の固縛材を用いた固縛或いは溶接による固定としてもよい。
【0034】
以下に上記実施例の作用を説明する。
【0035】
図12〜図17は本発明の魚礁ブロック200を製造する方法のステップを示している。
【0036】
図12は下部枠体7をブロック本体1に挿入する状態を示している。下部枠体7はブロック本体1内に係止させて移動を拘束するための係止部材12を外側角部に突出して設けているために、開口4の左右、上下間隔よりも大きくなっている。このため、下部枠体7は開口4の対角位置を向くように傾斜させることで開口4から空洞2内に挿入することができる。
【0037】
続いて、図13に示すように、空洞2内に挿入した下部枠体7を水平に戻して外側角部に設けたL字形の係止部材12をブロック本体1の側部柱3aの内側角部に嵌合させると共にブロック本体1のハンチ5及び底部柱3b上に載置させる。これにより、下部枠体7は横方向への移動と下方への移動が拘束される。このとき、図4に示すように、枠体係止手段20を構成する板18の開口17にボルト19を螺合して該ボルト19の先端をブロック本体1の側部柱3aの内側角部に当接させることにより、下部枠体7の浮き上がりを防止する。
【0038】
続いて、図14に示すように上部の開口4又は四周方向の開口4から通水籠9をブロック本体1の空洞2内に挿入し、図15に示すように、通水籠9を下部枠体7のアングル枠11の内側に嵌合設置する。このとき、籠係止手段27を構成する通水籠9のコーナ部材22の下端と前記下部枠体7の立上り部11aが一致する位置に設けられたボルト孔25にボルト26(図4)を通して固定することにより、通水籠9の浮き上がりを防止する。 続いて、図16に示すように、ホイールローダやショベルカー等の積込み機械Aを用いて上部開放口8から通水籠9内に貝殻Bを供給して充填する。
【0039】
続いて、図17に示すように上部の開口4又は四周方向の開口4から通水蓋10をブロック本体1の空洞2内に挿入し、通水蓋10を前記通水籠9の開放口8を覆うように設置する。このとき、図11の蓋係止手段33を構成する固定具31を網支持材28に掛け、固定具31の開口(図示せず)を通水籠9の上部アングル枠21に設けたボルト孔30(図9)に一致させてボルト32を通して固定することにより、通水蓋10の浮き上がりを防止する。これにより本発明の魚礁ブロック200が構成される。
【0040】
尚、前記したような籠係止手段27及び蓋係止手段33を設けることなしに、前記下部枠体7と通水籠9を溶接によって一体に固定し、通水籠9と通水蓋10とを溶接によって一体に固定するようにしてもよい。
【0041】
図18は本発明の他の実施例を示したもので、ブロック本体1の空洞2内に2段の貝殻保持ケース6,6’を備えた場合を示している。図18のようにブロック本体1内に2段の貝殻保持ケース6,6’を設置する場合には、先ず、前記と同様に下部枠体7を傾斜させて開口4から空洞2内に挿入し、続いて、下部枠体7を水平に戻して外側角部に設けたL字形の係止部材12をブロック本体1の側部柱3aの内側角部に嵌合させるようにして設置する。続いて、下部枠体7’を同様に傾斜させて開口4から空洞2内に挿入し、水平に戻した後、この下部枠体7’は上側に吊り上げてブロック本体1の内側上部に仮止めしておく。この状態で、前記と同様に通水籠9をブロック本体1内に挿入して前記下部枠体7に嵌合させると共に固定し、図16のように積込み機械Aを用いて通水籠9内に貝殻Bを供給して充填し、更に、通水蓋10をブロック本体1内に挿入して通水籠9上に載置して固定することにより貝殻保持ケース6を構成する。次に、前記仮止めした下部枠体7’吊り降ろし、スペーサ16’を介して下部枠体7’を貝殻保持ケース6上に載置した後、通水籠9’を挿入して下部枠体7’上に固定し、図16のように積込み機械Aを用いて通水籠9’内に貝殻Bを供給して充填し、更に、通水蓋10’を挿入して通水籠9’上に固定することにより貝殻保持ケース6’を構成する。これによって、ブロック本体1の空洞2内に複数段の貝殻保持ケース6,6’を備えた魚礁ブロック200を構成することができる。
【0042】
図19(a)、(b)は前記通水籠9の他の構成例を示すものであり、図15に示すようにブロック本体1の空洞2内に挿入した通水籠9を下部枠体7のアングル枠11の内側に嵌合設置した状態において、通水籠9の矩形内部空間の一辺と略同一の幅を有するプラスチック製の可撓性を有する網を所要の長さに切断し、切断した1つの網34aを図19(a)に示すようにU字状に曲げて図19(b)の通水籠9内に挿入し、続いてもう1つの網34bをU字状に曲げて前記網34aと90゜異なる方向に挿入する。これにより、図19(b)の通水籠9の底面と四周面は網34a,34bによって覆われた状態となる。このとき、通水籠9に挿入した網34a,34bの両端は折曲げることで通水籠9の上面を覆うことができる長さに予め切断されている。
【0043】
従って、図19(b)のように通水籠9内に網34a,34bを挿入した状態で貝殻を通水籠9の高さと同等程度になるように充填した後、他方の網34bの前後の両端を通水籠9の上面に折曲げて倒し、続いて、一方の網の左右の両端を二点鎖線で示すようにその上に曲げて倒してその両端を金具や線材等の固縛材35で固縛する。これにより、貝殻は網34a,34bによって包み込まれた状態となって浮き上がりが防止される。
【0044】
尚、上記各実施例で示したブロック本体1は四角柱の柱構造とした場合を例示したが、これ以外に、三角柱、或いは六角柱等の柱構造を有していてもよく、この場合には貝殻保持ケース6,6’もブロック本体1に対応するように三角形、或いは六角形とする。
【0045】
上記したブロック本体1はコンクリート打設することで量産することができ、又、貝殻保持ケース6,6’を構成する下部枠体7,7’と、通水籠9,9’と、通水蓋10,10’も同一寸法のものを量産することができる。
【0046】
又、上記した魚礁ブロック200は複数個組み付けることによって図19に示したようなピラミッド型魚礁100を構成することができ、これによって貝殻が充填された貝殻保持ケース6,6’を有するピラミッド型魚礁100を安価に製造できると共に、貝殻による海藻類の付着生長が促進されると共に、渦流効果及び陰影効果に優れたピラミッド型魚礁100を提供できるようになる。
【0047】
尚、本発明の魚礁ブロック及びその製造方法並びにピラミッド型魚礁は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
1 ブロック本体
1L 長ブロック本体
2 空洞
3 柱
3a 側部柱
3b 底部柱
4 開口
6 貝殻保持ケース
6’ 貝殻保持ケース
7 下部枠体
7’ 下部枠体
8 開放口
9 通水籠
9’ 通水籠
10 通水蓋
10’ 通水蓋
12 係止部材
20 枠体係止手段
27 籠係止手段
33 蓋係止手段
100 ピラミッド型魚礁
200 魚礁ブロック
B 貝殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の多角柱形状を有し、内部が空洞で且つ周面が稜線を柱状に残して開口したブロック本体と、内部に貝殻を収容して前記ブロック本体内に挿入・固定される通水性の貝殻保持ケースとからなる魚礁ブロックであって、
前記貝殻保持ケースは、前記空間からブロック本体内に挿入してブロック本体に固定可能な多角形状を有する下部枠体と、該下部枠体に嵌合して上部の開放口から貝殻を充填するようにした通水籠と、該通水籠の上部開放口を覆う通水蓋とを有し、
前記下部枠体は、多角形状の外側角部から外側へ突出し、前記ブロック本体の側部柱の内側角部に嵌合して下部枠体の横方向への移動を拘束すると共にブロック本体の底部柱上に載置して下部枠体の下方への移動を拘束するようにした係止部材を有することを特徴とする魚礁ブロック。
【請求項2】
前記下部枠体に、ブロック本体に当接して下部枠体の浮き上がりを防止するための枠体係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロック。
【請求項3】
前記下部枠体に通水籠を固定して通水籠の浮き上がりを防止するための籠係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロック。
【請求項4】
前記通水籠に通水蓋を固定して通水蓋の浮き上がりを防止するための蓋係止手段を有することを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロック。
【請求項5】
前記下部枠体と通水籠、及び通水籠と通水蓋が、ボルトにより固定又は固縛具により固縛又は溶接により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の魚礁ブロック。
【請求項6】
前記通水籠に貝殻に代えて石を充填するようにしたことを特徴とする請求項1〜5に記載の魚礁ブロック。
【請求項7】
請求項1に記載の魚礁ブロックの製造方法であって、多角形状の下部枠体を傾斜させて開口からブロック本体の空洞内に挿入するステップと、下部枠体を水平に戻して外側角部の係止部材をブロック本体の側部柱の内側角部に嵌合させると共にブロック本体の底部柱上に載置させて下部枠体の横方向への移動と下方への移動を拘束するステップと、通水籠をブロック本体の開口から空洞内に挿入して下部枠体に嵌合設置するステップと、通水籠内に上部開放口から貝殻を供給して充填するステップと、上部開放口を通水蓋で覆うステップとからなることを特徴とする魚礁ブロックの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6に記載の魚礁ブロックを複数組み付けて構成したことを特徴とするピラミッド型魚礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−142856(P2011−142856A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5773(P2010−5773)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390008338)広和株式会社 (21)
【Fターム(参考)】