説明

1,4−ブタンジアミンの生化学合成

【課題】生体内変化による1,4−ブタンジアミンの大規模産業生産のための改善された可能性を提供する。
【解決手段】オルニチンデカルボキシラーゼの過剰発現によって、増加したレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性を有する微生物における1,4−ブタンジアミンの生化学合成のためのプロセス。並びに、下記のいずれかの過剰発現によって増加した酵素活性を有する微生物における前記プロセス。(i)アルギニンデカルボキシラーゼおよびアグマチナーゼ;または(ii)アルギニンデカルボキシラーゼ、アグマチンイミノヒドロラーゼ、およびN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ、ならびに場合によりまた、アグマチナーゼのいずれか1つ、もしくはそれ以上の上記の酵素活性を担持するベクター、プラスミドおよび宿主。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生来のレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性と比較して増加したレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性を有する微生物における1,4−ブタンジアミン(CAS番号110−60−1;テトラメチレンジアミンとも称される化合物;生化学的文献では、プトレシンとも称されている)の生化学合成のための新規のプロセスに関する。以後、オルニチンデカルボキシラーゼは「ODC」とも称される。以後、「オルニチンデカルボキシラーゼ活性の増加したレベル」は「増加したODC活性」とも称される。一般に、ODC活性を有する微生物は、スペルミジンおよびスペルミン(それぞれ産物N−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンおよびN,N’−ビス−(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンの一般名である)のようなポリアミン類を産生することが可能であることが既知である。そのような化合物、ならびに例えば、1,4−ブタンジアミンおよび1,5−ペンタンジアミン(カダベリンとも称される)のような多様な短い直鎖ジアミン自体は、しばしば、生化学研究において、ポリアミン類と称されるが、ポリアミン類の厳密な化学的定義からでも、より多数のアミノ基が予想される。しかし、本特許出願の目的のために、ポリアミン類という用語は、その生化学的意味で使用されており、従って、1,4−ブタンジアミンを含む。
【背景技術】
【0002】
化合物1,4−ブタンジアミンは、主なエンジニアリングプラスチック:ホモポリマー、または例えば、約5重量%のポリアミド−6モノマー(カプロラクタム)とのコポリマー化されたいずれかの形態のポリアミド−4,6のいくつかの生成のための重要な原材料である。ホモポリマーのポリアミド−4,6(ナイロン−4,6)は、1938年と早くから記載されていた(米国特許第2,130,948号明細書、カラザーズ(Carothers))。それは、モノマーの1,4−ブタンジアミンとアジピン酸との重縮合産物である。現在、特に、ポリアミド−4,6の化合物が生産され、STANYL(登録商標)の商品名で蘭国においてDSMより販売されている。
【0003】
1,4−ブタンジアミンの合成のための多くの化学的経路が既知である。これらのすべての化学的経路は、出発物質が、再生不能と考えられている供給源から入手しなければならないという欠点を免れない。しかし、再生可能な炭素源から出発し、生細胞における生化学的プロセス(「生体内変化」とも称される)を使用する1,4−ブタンジアミンの合成のための新規かつ容易な経路を提供する実質的な必要性がある。一般に、ポリアミン類は、生化学的産生におけるいずれの細胞または微生物においても毒性であると考えられる。従って、しかしながら、現在まで、生化学合成によるそのような新規の経路は魅力がないと考えられていた。
【0004】
これは、例えば、次の参考文献:フクチ(Fukuchi)ら、J.Biol.Chem.、第270巻(1995年)、18831−18835頁;およびスズキ(Suzuki)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第91巻(1994年)、8930−8934頁から認めることができる。
【0005】
フクチ(Fukuchi)は、大腸菌(E.coli)のスペルミジンアセチルトランスフェラーゼ欠乏細胞における(即ち、アセチルトランスフェラーゼSpeGを欠く細胞における)スペルミジンの蓄積による細胞生存能(およびほとんどすべての種類のタンパク質の合成)の減少について明確に記載している。スペルミジンは、中間体としての1,4−ブタンジアミンから細胞において産生されている産物である。従って、1,4−ブタンジアミンの生合成は、必然的に、スペルミジンの形成をももたらす。
【0006】
一方、スズキ(Suzuki)もまた、(マウス細胞において)ODCの過剰産生がポリアミン類、具体的には、スペルミジンの蓄積を生じ、speG欠乏でない細胞であっても、少量のスペルミジンの添加時に、常に細胞死が観察されることを実証している。
【0007】
リムスウム(Limsuwum)ら(J.Bacteriol.第182巻(2000年)、5373−5380頁)が、低い温度で、特定の遺伝子speGの過剰発現によってそのような問題を克服することができることを示していることに留意すべきである。スズキ(Suzuki)ら(上記において引用した)は、低減された細胞生存能はアンチザイムによるODCの不十分なフィードバック阻害によるものであり、適切なアンチザイムの過剰産生によって克服することができることを示唆している。次いで、アンチザイムのそのような過剰産生もまた、細胞におけるポリアミン類の産生を低減し、従って、DAB産生にはふさわしくない。
【0008】
さらに、J.Bacteriol.第170巻(1988年)、3131−3135頁においてカシワギ(Kashiwagi)らが説明しているように、大腸菌(E.coli)におけるポリアミン類の含量は、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)をコードする遺伝子、特に、構成性に発現されるspeCの過剰発現によって調整することができる。それらの実験のために、ボイル(Boyle)ら(Methodsin Enzymology、第94巻(1983年)、117−121頁によって産生されるようなプラスミドpODCがクローニングにおいて使用された。カシワギ(Kashiwagi)らによって教示されているように、生来の転写および翻訳制御下(即ち、リボソーム結合部位およびプロモーターからなる生来の遺伝子エレメントを使用する)オルニチンデカルボキシラーゼSpeCの70倍の過剰産生でも、細胞内および外1,4−ブタンジアミン含量の合計で僅かに増加したレベルしかもたらさなかった。引用したカシワギ(Kashiwagi)の参考文献において認められるように、前記著者らは、(オルニチン供給を伴わずに)約25mg/lより高い産生レベルの1,4−ブタンジアミンに達することができなかった。さらに、彼らは、細胞におけるODCの過剰産生が、細胞におけるオルニチン含量の強度の減少(約65μmol/lから1μmol/lへ)をもたらしたことを示し、ODCが過剰産生される場合、細胞がオルニチン欠乏になると結論した。カシワギ(Kashiwagi)らは、オルニチンの外部供給によるオルニチン含量の観察された限界を取り除くことを試みたが、僅かな改善が達成されたが、1,4−ブタンジアミンの産生レベルは約30mg/lよりも高くなかった。ODC過剰産生による前駆体供給の記載の制限のため、およびさらに、より高いレベルのODCのようなタンパク質は、より多量のポリアミン類の存在のため細胞における毒性の影響の増加を生じることが予想されるため、当業者であれば、上記の参考文献を考慮して、30mg/lより有意に高いレベルでの1,4−ブタンジアミンの産生のための生化学合成プロセスを提供することは不可能であると想定するであろう。
【0009】
EP−A−0726240号明細書は、現在までのところ、1,4−ブタンジアミンを含むポリアミン類の生化学合成に関する数少ない特許文献の1つである。しかし、それは、主な成分としてタンパク質を含有する天然産物の発酵による、とりわけ、1,4−ブタンジアミンの産生について、記載している。前記プロセスでは、天然産物は、まず、それらを部分または全分解に供することによって処置し、次いで、発酵工程の前に、任意の好ましくない成分(例えば、Hg、Cr、As、Cd、SeおよびPb)、細胞増殖インヒビター、農薬、抗生物質、界面活性剤、石鹸、脂肪、油、シアン化物およびフェノール類を取り出す。そのような方法で産生されるプトレシンおよび他のジアミン類は、肥料および肥やしとして(再)利用されているが、非常に多量の他の物質を含有するため、それらは例えば、ポリアミド−4,6の産生のための原材料として不適切である。
【0010】
従って、約30mg/lよりも有意に高い力価で、好ましくは、(高価な)オルニチンの外部供給をも伴うことなく、1,4−ブタンジアミンの合成のための効率的な生合成経路の必要性が依然としてある。このような1,4−ブタンジアミンの改善された利用可能性に対する必要性は、主に、例えば、ポリアミド−4,6の産生のための出発物質としてのその意図される使用に基づく。一般に、今日までのところ既知である1,4−ブタンジアミンへの経路は、かなり労力を要し、面倒であり、さらなる精製を伴わなければナイロンの産生において使用が困難であるような前記産物の品質をもたらし得る。1,4−ブタンジアミンへの既知の化学経路は、相対的に高価な出発物質および反応物(取り扱いが困難な反応物を含む)、および多段階およびマルチリアクター設計における温度および圧力の相対的に厳密な反応条件、ならびに高価な触媒系の使用を必要とする。従って、好ましくは、はるかに安価な原材料からで、およびシアン化水素酸のような反応物を取り扱う問題を回避する1,4−ブタンジアミンへの代替的経路の必要性が依然としてある。天然において増殖し、従って、農業生産から再生可能な材料が、発酵において使用することができるグルコースのような炭素源(または他の適切な炭素源およびそれらの混合物)の基本であることは周知である。そのような再生可能な材料は、相対的に安価であり、豊富に利用可能である。一般に、再生可能な材料をすべての種類の化学材料の出発物質として使用することができれば、きわめて有利であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、生体内変化による1,4−ブタンジアミンの大規模産業生産のための改善された可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、意外なことに、この目的が、生来のレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性と比較して増加したレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性(増加したODC活性)を有する微生物における1,4−ブタンジアミンの生化学合成のための新規のプロセスであって、ここで、増加したオルニチンデカルボキシラーゼ活性は、増加した転写および/または翻訳効率によるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子の過剰発現によって得られ、そのような微生物において産生される1,4−ブタンジアミンは、発酵ブロスに分泌され、発酵ブロスから回収される、プロセスによって達成されることを見出した。
【0013】
本発明によれば、1,4−ブタンジアミンの合成のための改善された生化学的プロセスが提供され、得られた1,4−ブタンジアミンは、例えば、ポリアミド−4,6の産生のための原材料として極めて適切である。
【0014】
本特許出願において意味するように、用語「生化学合成」(本特許出願において、「生体内変化」と代替的に称される用語)は、(多くの純粋な化学的反応工程の他に)適切な産生株の細胞全体を使用する1つもしくはそれ以上の生体触媒反応を伴うプロセスだけではなく、適切な産生株の細胞全体を使用する純粋な生化学的プロセスをも含む。そのような純粋な生化学的プロセスは、それぞれ、生化学合成が適切な炭素源から出発する場合は発酵と称され、または生合成が、合成しようとする標的分子を得ることができる炭素骨格を既に有する中間産物から出発する場合には、前駆体発酵と称される。プロセスは、好気的または嫌気的条件下で行われ得る。
【0015】
本発明の生化学合成における生体触媒反応は、インビボまたはインビトロのいずれでも行うことができる。一般に、インビボプロセスは、生細胞(従って、用語「生細胞」は、いわゆる休止細胞も含む)を使用する場合に行われるプロセスであり;一方、インビトロプロセスは、通常、細胞溶解物または(部分的に)精製された酵素を使用して、行われている。本発明にかかる生化学合成は、微生物において行われる。これは、適切な産生株の細胞全体を使用して行うことができるが、また、透過した細胞を使用して行ってもよく;しかし、インビボとインビトロとを区別することは、透過した細胞または固定化された宿主細胞で行われるプロセスに対してあまり意味を成さない。しかし、例えば、固定化された酵素などを使用することによって行う場合の本発明のプロセス由来の個々の生体触媒工程は、本出願において意味するとおりの生化学合成におけるそのような工程に等価であるとみなされることは明白である。
【0016】
オルニチンデカルボキシラーゼ(即ち、オルニチン脱炭酸反応活性を有する酵素、またはODC)は、クラスE.C.4.1.1.17に分類される酵素である。過剰産生される場合、オルニチンデカルボキシラーゼの活性のレベルは、SigmaDiagnostics二酸化炭素検出キット(Sigma);オステルマン,A.L.(Osterman,A.L.)ら1994年、Biochemistry33,13662−13667頁に記載のアッセイを使用して、無細胞抽出物内において標準的条件(オルニチンおよびPLPの存在下37℃)下で、生来の(即ち、過剰産生されていない)レベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性と容易に比較することができる。従って、当業者であれば、タンパク質含量の決定、またはRNAレベルを決定することによって、使用する微生物における生来のレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性と比較して増加した翻訳および/または転写効率に基づいて、使用するODCが増加したレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性(増加したODC活性)を有するかどうかを容易に確立することができる。タンパク質含量の決定のための多様な標準的手順、例えば、比色定量的ならびに分光的方法については、ロットスパイヒ(Lottspeich)およびゾルバス(Zorbas)、Bioanalytik,SpektrumAkademischer Verlag GmbH,Heidelberg/Berlin,ISBN3−8274−0041−4(1998年)、第3、5、21、22および24章に記載されている。タンパク質レベルならびにRNAレベルの決定のための方法、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR、および他の多くの方法については、J.サンブルック(J.Sambrook)、E.F.フリッシュ(E.F.Fritsch)およびT.マニアティス(T.Maniatis)、MolecularCloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN0−87969−309−6(1989年)において記載されている。しかし、他の多くの標準的な手順は、この分析分野における当業者に公知であり、ここで述べる必要はない。
【0017】
本発明のプロセスにおいて使用することができる適切なオルニチンデカルボキシラーゼは、オルニチンを脱炭酸化することが可能であるすべての酵素およびその変異体である。そのような任意の酵素は、増加したレベルの活性で、即ち、増加した転写および/または翻訳効率でオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子を過剰発現させることによる過剰産生される形態で、本発明のプロセスにおいて使用することができる。さらに、任意の具体的に命名された酵素活性について本明細書において使用される用語「増加したレベルの活性」もまた、そのような酵素活性、例えば、オルニチンデカルボキシラーゼの活性が微生物の天然の供給源において全く存在しないような状況を包含することが意図され、ここで、反応は生じているが、そこで、増加した転写および/または翻訳効率で、遺伝子修飾により意図的に誘導されることに留意すべきである。
【0018】
上記のように、1,4−ブタンジアミンの生化学合成では、いずれのODC酵素を使用してもよく、その増加したODC活性は、増加した翻訳および/または転写効率でのODCをコードする遺伝子の過剰発現によって得られる。好ましくは、増加した翻訳および/または転写効率は、強力な調節プロモーターの使用、好ましくは、強力な誘導性プロモーターの使用によって得られる。
【0019】
最も好ましくは、増加した翻訳および/または転写効率は、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性の強力なプロモーターの使用によって得られる。適切な強力なプロモーターについては、J.サンブルック(J.Sambrook)、E.F.フリッシュ(E.F.Fritsch)およびT.マニアティス(T.Maniatis)、MolecularCloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN0−87969−309−6(1989年)に記載されている。
【0020】
詳細には、増加した翻訳および/または転写効率は、T7、T5、ptac、およびplacプロモーターからなる群から選択されるプロモーターの使用によって得られる。プロモーターの至適な選択は、使用すべき宿主および適用すべき反応条件に依存することは当業者に明らかである。
【0021】
本発明の極めて好適な実施形態では、オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、リボソームによるRNA−テンプレートの良好な認識を達成するためにRBSが適用される前記遺伝子のコーディング領域の上流に局在するリボソーム結合部位(RBS)を有する。RBSの適応は、当業者に公知の任意の方法によって行うことができ、使用する宿主の特定の特性などを考慮する。
【0022】
最も好ましくは、過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子はオルニチンデカルボキシラーゼspeFまたはspeC遺伝子(それぞれE.C.4.1.1.17に属する)である。これまでのところ、文献的には、SpeCがSpeFよりもはるかによく調べられている。最も意外なことに、しかし、最も好ましくは、本発明に従う最も良好な結果は、それがオルニチンデカルボキシラーゼspeF遺伝子である場合に達成される。
【0023】
本発明に従うプロセスにおいて使用される過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)、およびシェワネラ(Shewanella)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子speFまたはspeCであることが、特に好適である。オルニチンデカルボキシラーゼspeFは誘導性オルニチンデカルボキシラーゼであり;オルニチンデカルボキシラーゼspeCは構成性オルニチンデカルボキシラーゼである。
【0024】
より好ましくは、過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)、B群赤痢菌(Shigellaflexneri)、サルモネラ・チフィムチウム(Salmonella typhimutium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、およびシェワネラ・オネイデンシス(Shewanellaoneidensis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子である。最も好ましくは、過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichiacoli)、サルモネラ・チフィムチウム(Salmonella typhimutium)、およびシェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するspeFである。構成性オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speCの過剰発現による結果と比較すると、これまでのところ、本発明に従う最も良好な結果は、実際に、speFを使用する場合に達成されている。
【0025】
詳細には、本発明によれば、大腸菌(E.coli)対照酵素由来のODCと十分な、即ち、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、および最も好ましくは少なくとも65%同一性を有し、オルニチン脱炭酸反応を触媒することが可能であるすべてのオルニチンデカルボキシラーゼを使用することができる。大腸菌(E.coli)対照酵素とそのような相対的に高いレベルの同一性を有する多くのODCが公知である。
【0026】
対照酵素との同一性百分率を決定することは、当業者に既知の方法によって、例えば、例えば他のファミリーメンバーまたは関連する配列を同定するために、公的なデータベースに対する検索を実施するための「問い合わせ配列」としての参照酵素のタンパク質配列を使用することによって、実施することができる。そのような検索は、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用するBLASTプログラム(バージョン2.2)を使用して、実施することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、1,4−ブタンジアミンの合成のための改善された生化学的プロセスが提供され、得られた1,4−ブタンジアミンは、ポリアミド−4,6および/または他のポリアミド類の産生のための原材料として極めて適切である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明において、上記のオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子のいずれかと相同であり、示されるオルニチンデカルボキシラーゼに十分匹敵するオルニチンデカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする任意の遺伝子は、それらの等価物であり、本発明のプロセスに適切であるとみなされるべきであることが明らかである。そのような等価な遺伝子は、当業者に公知の任意の適切なクローニングストラテジー、例えば、本明細書の実験の部に記載の方法によって、適切に得ることができる。あるいは、そのような等価なオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子はまた、意図的な構築によって得ることもできる。
【0029】
本発明のさらなる好適な実施形態では、1,4−ブタンジアミンの生化学合成のためのプロセスは微生物において行われ、ここで、さらに、増加したODC活性のために、以下のいずれかの過剰発現によって、少なくとも2つの他の酵素についても増加した酵素活性が得られる:
(i)アルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speA(E.C.4.1.1.19に属する)およびアグマチナーゼをコードする遺伝子speB(E.C.3.5.3.11に属する;アグマチンウレアヒドロラーゼをコードする遺伝子とも称される);または
(ii)アルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speA(E.C.4.1.1.19に属する)、およびアグマチンイミノヒドロラーゼをコードする遺伝子aguA(E.C.3.5.3.12に属する;アグマチンデイミナーゼをコードする遺伝子とも称される)、およびN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子aguB(E.C.3.5.1.53に属する)、および場合によりまた、アグマチナーゼをコードする遺伝子speB(E.C.3.5.3.11に属する)。
【0030】
これらのさらに増加した酵素活性に対して本明細書において意味する過剰発現は、当業者に既知の任意の方法によって;例えば、それぞれの遺伝子の翻訳および/または転写効率を増加することによって、但しまた、遺伝子コピー数を増加するような他の任意の既知の方法によって、または変異による酵素の内因性活性もしくは構造を増加することによって、あるいは脱調節された酵素を使用することによって、達成することができる。上記のさらなる好適な実施形態の部(i)において意味するように、SpeAおよびSpeBの組み合わせは、SpeAおよびSpeBの任意の機能的な組み合わせ(組み合わされた融合タンパク質としてか、または個別の酵素活性としてかにかかわらず)を表すことが意図される。事実、この組み合わせはまた、SpeABとも呼ばれる。それらの部(ii)は、SpeAおよびSpeBのそのような組み合わせで、SpeB部分自体が、AguAおよびAguBの任意の機能的組み合わせ(組み合わされた融合タンパク質としてか、または個別の酵素活性としてかにかかわらず)によって置き換えられ得ることを表す。
【0031】
ヤノウィッツ(Janowitz)ら、FEBS Letters544(2003年)、258−261は、アグマチンデイミナーゼAguAが高等植物のアルギニンデカルボキシラーゼ経路に関与することを記載している。SpeBによって触媒される変換もまた、植物において生じる酵素によって、即ち、アグマチンデイミナーゼAguAとN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼAguBとの組み合わされた作用によって触媒され得ることが、ナカダ(Nakada)ら、Microbiology,149(2003年)、707−714よりさらに公知である。従って、本発明においては、SpeBの代わりに、またはさらにそれとの組み合わせで、AguAおよびAguBを使用することもできる。そのようなaguAおよびaguB遺伝子の供給源は、シロイヌナズナ(Arabidopsisthaliana)およびトマト(Lycopersicon esculentum)であり得るが、しかし、匹敵する遺伝子は、緑膿菌(Pseudomonas aeroginosa)の変異体においても見出され得る。
【0032】
本発明において、上記のアルギニンデカルボキシラーゼ、それぞれアグマチナーゼ、またはアグマチンイミノヒドロラーゼもしくはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードし、それぞれの酵素に十分匹敵するアルギニンデカルボキシラーゼ(それぞれ、アグマチナーゼ、またはアグマチンイミノヒドロラーゼもしくはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ)活性を有するそのようなそれぞれの酵素をコードする遺伝子のいずれかと相同であるいずれの遺伝子も、場合により、それらの等価物であり、このような本発明のプロセスのさらなる好適な実施形態に適切であるとみなされるべきであることが明らかである。そのような等価な遺伝子は、当業者に公知の任意の適切なクローニングストラテジー、例えば、本明細書の実験の部に記載の方法によって、適切に得ることができる。あるいは、そのような等価な遺伝子はまた、意図的な構築によって得ることもできる。
【0033】
従って、本発明のプロセスのこのような好適な実施形態では、過剰発現される遺伝子のさらなる組み合わせ、即ち、(i)アルギニンデカルボキシラーゼおよびアグマチナーゼ、または(ii)アルギニンデカルボキシラーゼならびにアグマチンイミノヒドロラーゼおよびN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ、ならびに場合により、アグマチナーゼをコードする遺伝子もまた、使用されている。
【0034】
本発明のこのようなさらなる好適な実施形態では、好ましくは、過剰発現されるアルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)、パスツレラ(Pasteurella)、およびナイセリア(Neisseria)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するアルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子speAである。より好ましくは、過剰発現されるアルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichiacoli)、B群赤痢菌(Shigella flexneri)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、パスツレラ菌(Pasteurellamultocida)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するアルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子speAである。
【0035】
詳細には、本発明によれば、大腸菌(E.coli)対照酵素由来のアルギニンデカルボキシラーゼと十分な、即ち、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、および最も好ましくは少なくとも65%同一性を有し、アルギニン脱炭酸反応を触媒することが可能であるすべてのアルギニンデカルボキシラーゼを使用することができる。大腸菌(E.coli)対照酵素とそのような相対的に高いレベルの同一性を有する多くのアルギニンデカルボキシラーゼが公知である。
【0036】
本発明のこのようなさらなる好適な実施形態では、過剰発現されるアグマチナーゼをコードする遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、プロテウス(Proteus)、フォトルハブダス(Photorhabdus)、ビブリオ(Vibrio)、およびナイセリア(Neisseria)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するアグマチナーゼ遺伝子speBである。より好ましくは、過剰発現されるアグマチナーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichiacoli)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、フォトルハブダス・ルミネセンス(Photorhabdusluminescens)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するアグマチナーゼ遺伝子speBである。
【0037】
詳細には、本発明によれば、大腸菌(E.coli)対照酵素由来のアグマチナーゼと十分な、即ち、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、および最も好ましくは少なくとも60%同一性を有し、アグマチナーゼ反応を触媒することが可能であるすべてのアグマチナーゼを使用することができる。大腸菌(E.coli)対照酵素とそのような相対的に高いレベルの同一性を有する多くのアグマチナーゼが公知である。
【0038】
本発明のこのようなさらなる好適な実施形態では、さらに、過剰発現されるアグマチンイミノヒドロラーゼをコードする遺伝子および/または過剰発現されるN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス(Pseudomonas)、連鎖球菌(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アゾトバクター(Azotobacter)、アラビドプシス(Arabidopsis)、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)、およびバチルス(Bacillus)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するアグマチンイミノヒドロラーゼ遺伝子aguAおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ遺伝子aguBである。より好ましくは、過剰発現されるアグマチンイミノヒドロラーゼをコードする遺伝子および/または過剰発現されるN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス・エアルギノサ(Pseudomonasaeruginosa)、ミュータンス菌(Streptococcus mutans)、ストレプトマイセス・アバーミチリス(Streptomyces avermitilis)、アゾトバクター・フィネランディ(Azotobactervinelandii)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボラン(Novosphingobium aromaticivorans)、およびセレウス菌(Bacilluscereus)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するアグマチンイミノヒドロラーゼ遺伝子aguAおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ遺伝子aguBである。
【0039】
詳細には、本発明によれば、シュードモナス(Pseudomonas)対照酵素由来のアグマチンイミノヒドロラーゼおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼと十分な、即ち、少なくとも30%、および最も好ましくは少なくとも40%同一性を有し、アグマチンイミノヒドロラーゼ、それぞれN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ反応を触媒することが可能であるすべてのアグマチンイミノヒドロラーゼおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼを使用することができる。シュードモナス(Pseudomonas)対照酵素とそのような相対的に高いレベルの同一性を有する多くのアグマチンイミノヒドロラーゼおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼが公知である。
【0040】
本発明にかかるプロセスは、オルニチンの増加した細胞内レベルを確実にする一方で行われていることが好ましい。このことは、例えば、オルニチンの外的供給によって達成することができる。
【0041】
本発明のプロセスは、任意の適切な宿主生物体において行われ得る。宿主は、生合成において当業者に一般に公知の産生生物体(または細胞)の群から選択され得る。そのような生物体は、真核生物由来であっても、またはより好適には、原核生物由来であってもよい。真核細胞は、例えば、植物および真菌、ならびに他の多様な群(該他の群は集合的に「原生生物界」と称される)由来の細胞であり得る。
【0042】
本発明にかかるプロセスは、サッカロミセス(Saccharomyces)sp.、バチルス(Bacillus)sp.、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.、エシェリキア(Escherichia)sp.およびピキア(Pichia)sp.からなる群から選択される宿主生物体において行われることが特に好ましい。
【0043】
本発明のプロセスでは、宿主として使用すべき微生物は、アミノ酸、オルニチンおよび/またはアルギニンを産生することが可能であることが特に好ましい。ほとんどの天然の微生物について、アルギニンは必須アミノ酸であることから、通常、そのような能力はすべての野生型株において利用可能であるため、この要件は満たされる。
【0044】
これらの種のうち、エシェリキア(Escherichia)sp.は、それらが、所望の過剰発現される酵素活性を伴う株を提供するために、遺伝子操作によって取り扱うことが容易であるため、好適である。さらに、エシェリキア(Escherichia)sp.は、天然において既に、ほとんどの上記の酵素活性のそれぞれ(即ち、植物由来のagu遺伝子は別として)を含有し、そのため、過剰発現される遺伝子のほとんどを相同遺伝子として使用することができる。また、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.(但し、天然のオルニチンデカルボキシラーゼを欠く)は、発酵プロセスにおいて容易に取り扱うことができる適切なグルタミン酸産生株であるため、特に好ましい。
【0045】
本発明のプロセスでは、グルタミン酸は極めて適切な前駆体である。従って、プロセスは、好ましくは、グルタミン酸の発酵が可能な宿主株(例えば、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacteriumglutamicum))において行われている。
【0046】
本発明にかかるプロセスがサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.およびエシェリキア(Escherichia)sp.からなる群由来の宿主生物体において行われる場合、最も良好な結果が達成されており、ここで、オルニチンデカルボキシラーゼの活性は別として、アルギニンデカルボキシラーゼおよび少なくともアグマチナーゼまたはアグマチンイミノヒドロラーゼおよびN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ酵素活性は、宿主微生物に相同である前記酵素活性の生来のレベルと比較して増加した活性レベルで宿主微生物に存在している。
【0047】
本発明のプロセスは、好ましくは、発酵条件として通常的でもある反応条件下で行われることが明らかである。従って、プロセスは、バッチ式、但しまた、所望であれば、流加培養で行うことができる。宿主生物体として使用される生物体が、形成される1,4−ジアミノブタンに適切な輸送系を有するかまたは備えることを確実にすることは好都合であり得る:好ましくは、そのような輸送系は生来のものである。
【0048】
もちろん、本発明はまた、増加したレベルの活性で、添付の特許請求の範囲に従う1つもしくはそれ以上の上記の酵素活性を担持するすべてのベクター、プラスミドおよび宿主を包含する。
【0049】
以下、いくつかの実験結果によって本発明を説明するが、本発明の範囲を限定する意図は全くない。
【実施例】
【0050】
実験の部
一般的手順
すべてのDNA操作については、標準的な手順を適用した(サンブルック,J(Sambrook,J.)ら(1989年)、Molecularcloning:a laboratory manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold SpringHarbor、ニューヨーク)。DNAは、他に示さない場合、大腸菌(E.coli)LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら(2000年)、J Bacteriol.182,4443−4452)の染色体DNAから増幅した。PCR増幅は、製造のプロトコルに従い、プルーフリーディング酵素SAWADYPwo−DNA−ポリメラーゼ(Peqlab Biotechnologie GmbH,Erlangen、独国)またはPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen,Karlsruhe、独国)を使用して実施する一方、構築された株の確認は、TaqポリメラーゼREADYMIX(Sigma,Taufkirchen、独国)を利用するコロニーPCRによって行った。その後のクローニングならびにさらなる操作のための制限部位は、MWG−Biotech(Ebersberg、独国)から購入したオリゴヌクレオチドにより導入した。DNAフラグメントは、製造のプロトコルに従い、MinEluteGel Extraction Kit(Qiagen,Hilden、独国)で精製した。プラスミドDNAの調製は、QIAprepスピンMiniprep Kit(Qiagen,Hilden、独国)の利用によって達成した。構築されたプラスミドの確認は、制限解析および以後の配列決定(Agowa,Berlin、独国)によって行った。
【0051】
プラスミドの構築
(i)プラスミドpDAB3(pJF119EH−speCnRBS)の構築
大腸菌(E.coli)LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)の(構成性、生合成性の)オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speCを発現ベクターpJF119EH(フェルステ,J.P.(Fuerste,J.P.)ら(1986年)、Gene48,119−131)にクローニングし、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性tacプロモーターおよびlacリプレッサー系(lacI)下の転写制御に基づく強力な遺伝子発現を可能にした。従って、コーディング遺伝子speCを、本来のRBS、開始および終止コドンと共にクローニングした。
【0052】
2235bpのspeCnRBS含有DNAフラグメントを、以下のオリゴヌクレオチドを使用して、大腸菌(E.coli)LJ110の染色体DNAから増幅した(受託番号AE000379;ヌクレオチド2650−4867):
5’−GAG CTC TAG ACC AGT TTG ACC CAT ATC T−3’ [配列番号1]
(変異は太字、XbaI制限部位は斜字体)
および
5’−TTT TGC ATGCTT ACT TCA ACA CAT AAC CGT AC−3’ [配列番号2]
(変異は太字、SphI制限部位は斜字体)
【0053】
エンドヌクレアーゼXbaIおよびSphIによる末端修飾後、PCR産物を、同じ様式で切断したプラスミドpJF119EHに連結した。大腸菌(E.coli)DH5a細胞(Invitrogen,Karlsruhe、独国)における形質転換後、100mg/lアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で形質転換体を選択した。調製後、得られたプラスミドpDAB3(pJF119EH−speCnRBS、7491bp)の確認を、制限解析および以後の配列決定によって行った。
【0054】
(ii)プラスミドpDAB4(pJF119EH−speCaRBS)の構築
大腸菌(E.coli)LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)の(構成性、生合成性の)オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speCを発現ベクターpJF119EH(フェルステ,J.P.(Fuerste,J.P.)ら(1986年)、Gene48,119−131)にクローニングし、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性tacプロモーターおよびlacリプレッサー系(lacI)下の転写制御に基づく強力な遺伝子発現を可能にした。従って、コーディング遺伝子speCを、本来の開始および終止コドンと共にクローニングした。インシリコ研究を利用してspeCに対する保存されたリボソーム結合部位(RBS)を決定することができなかったため、部位特異的変異誘発により、speC開始コドンの7bp上流に局在するRBSを大腸菌(E.coli)のコンセンサス配列に適応した。
【0055】
2235bpのspeCaRBS含有DNAフラグメントを、以下のオリゴヌクレオチドを使用して、大腸菌(E.coli)LJ110の染色体DNAから増幅した(受託番号AE000379;ヌクレオチド2650−4867):
5’−GAG CTC TAG ACC AGT TTG AGG AAT ATC T−3’[配列番号3]
(変異は太字、XbaI制限部位は斜字体)
および
5’−TTT TGC ATGCTT ACT TCA ACA CAT AAC CGT AC−3’ [配列番号2]
(変異は太字、SphI制限部位は斜字体)
【0056】
エンドヌクレアーゼXbaIおよびSphIによる末端修飾後、PCR産物を、同じ様式で切断したプラスミドpJF119EHに連結した。大腸菌(E.coli)DH5a細胞(Invitrogen,Karlsruhe、独国)における形質転換後、100mg/lアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で形質転換体を選択した。調製後、得られたプラスミドpDAB4(pJF119EH−speCaRBS、7491bp)の確認を、制限解析および以後の配列決定によって行った。
【0057】
(iii)プラスミドpDAB2(pJF119EH−speF)の構築
大腸菌(E.coli)LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)の(誘導性、生分解性の)オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speFを、発現ベクターpJF119EH(フェルステ,J.P.(Fuerste,J.P.)ら(1986年)、Gene48,119−131)にクローニングした。このベクターは、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性tac促進剤およびlacリプレッサー系(lacl)下で、クローニングされた遺伝子の転写制御に基づく高レベルタンパク質産生を可能にする。発現プラスミドpDAB2(pJF119EH−speF)の構築のために、コーディング遺伝子speFを、本来のRBS(リボソーム結合部位)、開始および終止コドンと共にクローニングした。
【0058】
2247bpのspeF含有DNAフラグメントを、以下のオリゴヌクレオチドを使用して、大腸菌(E.coli)LJ110の染色体DNAから増幅した(受託番号AE000172;ヌクレオチド10242−12468):
5’−GAC CTG CTG GTA CCT AAA ATA AAG AGA TGA AA−3’ [配列番号4]
(変異は太字、KpnI制限部位は斜字体)
および
5’−TCG ATC TAG ACTGAC TCA TAA TTT TTC CCC−3’ [配列番号5]
(変異は太字、XbaI制限部位は斜字体)。
【0059】
フラグメントを制限エンドヌクレアーゼKpnIおよびXbaIで末端修飾し、同じ様式で切断した発現ベクターpJF119EHに連結した。大腸菌(E.coli)DH5a細胞(Invitrogen,Karlsruhe、独国)における形質転換後、100mg/lアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で形質転換体を選択した。調製後、得られたプラスミドpDAB2(pJF119EH−speF、7502bp)を、制限解析および以後の配列決定によって確認した。
【0060】
(iv)プラスミドpDAB7(pJF119EH−speAB)の構築
大腸菌(E.coli)LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)の、アルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speAならびにアグマチナーゼをコードするspeBを発現ベクターpJF119EH(フェルステ,J.P.(Fuerste,J.P.)ら(1986年)、Gene48,119−131)にクローニングし、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性tac促進剤およびlacリプレッサー系(lacI)下のクローニングされた遺伝子の転写制御に基づく高レベルタンパク質産生を可能にした。このように、遺伝子の本来のオペロン構造ならびにRBS、開始および終止コドンを維持した。
【0061】
3079bpのspeAB含有DNAフラグメントを、以下のオリゴヌクレオチドを使用して、大腸菌(E.coli)LJ110の染色体DNAから増幅した(受託番号AE000377;ヌクレオチド1190−4247):
5’−ACA CTT TCT AGA ATA ATT TGA GGT TCG CTATG−3’ [配列番号6]
(変異は太字、XbaI制限部位は斜字体)
および
5’−CAT GGC ATG CGGTGC TTA CTC G−3’ [配列番号7]
(変異は太字、SphI制限部位は斜字体)
【0062】
制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびSphIによる末端修飾後、DNAフラグメントを、同様に切断した発現プラスミドpJF119EHに連結した。大腸菌(E.coli)DH5a細胞(Invitrogen,Karlsruhe、独国)における形質転換後、100mg/lアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で形質転換体を選択した。調製後、得られたプラスミドpDAB7(pJF119EH−speAB、8339bp)の確認を、制限解析および以後の配列決定によって行った。
【0063】
(v)プラスミドpDAB8(pJF119EH−speF−speAB)の構築
オルニチンデカルボキシラーゼSpeF、アルギニンデカルボキシラーゼSpeAおよびアグマチナーゼSpeBの同時産生を可能にするために、大腸菌(E.coli)LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)のspeAB遺伝子を、speF発現ベクターpDAB2(iiiを参照のこと))にクローニングした。
【0064】
制限エンドヌクレアーゼXbaIおよびSphIによるプラスミドpDAB7(ivを参照のこと))の消化によって、speAB遺伝子オペロンを含んでなる3067bpを分離し、同じ様式で切断したspeF含有プラスミドpDAB2((iii)を参照のこと)に連結した。大腸菌(E.coli)DH5a細胞(Invitrogen,Karlsruhe、独国)における形質転換後、100mg/lアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で形質転換体を選択した。調製後、SpeFABの同時産生を可能にする得られたプラスミドpDAB8(pJH119EH−speFAB、10547bp)を、制限解析によって確認した。
【0065】
実施例1:増加した翻訳および/または転写効率でのオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子の過剰発現によるDAB産生の改善
実施例1.1 オルニチンデカルボキシラーゼの過剰産生を介する1,4−ブタンジアミンの産生(フラスコ振盪法)
(増加した翻訳および/または転写効率での)オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speFまたはspeCの過剰発現のDAB産生に対する影響について、プラスミドpDAB2((iii)を参照のこと)、またはpDAB3((i)を参照のこと)、またはpDAB4((ii)を参照のこと)を担持する大腸菌(E.coli)宿主株LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)内において調べた。
【0066】
これらの株を、MgSO・7HO(300mg/l)、CaCl・2HO(15mg/l)、KHPO(3g/l)、KHPO(12g/l)、NaCl(100mg/l)、(NHSO(5g/l)、クエン酸Na・3HO(1g/l)、FeSO・7HO(75mg/l)、チアミン・HCl(ビタミンB1)(5mg/l)ならびに微量元素Al(SO・18HO(3mg/l)、CoCl・6HO(1.05mg/l)、CuSO・5HO(3.75mg/l)、HBO(0.75mg/l)、MnCl・4HO(30mg/l)、NaMoO・2HO(4.5mg/l)、NiSO・6HO(3mg/l)およびZnSO・7HO(22.5mg/l)からなる最小培地を利用するフラスコ振盪実験において試験した。グルコースのストック溶液(500g/l)を個別にオートクレーブし、滅菌した培地に10g/lの最終濃度まで添加した。
【0067】
100mg/lアンピシリン(ampicilline)を含有する最小培地の前培養物に1〜5μl/mlストック溶液を播種し、2のOD620まで33℃、180rpmで、16時間、インキュベートした。この培養物の5mlを、続いて、50mlの同培地からなる主培養物の播種に使用し、24時間、33℃および180rpmでインキュベートした。細胞が1.5のOD620nmに到達した(約7時間後)ため、50μM IPTGの添加によって遺伝子発現を誘発した。
【0068】
時間依存的DAB産生を観察するため、培養中の異なる時間ポイントでサンプルを採取した。遠心分離を利用する細胞の分離後、希釈した上清をHPLCによって分析した。ここで、含有するアミン類を、オルト−フタルジアルデヒド(OPA)誘導体として、50%緩衝液B(緩衝液A、0.1M酢酸ナトリウムpH7.2;緩衝液Bメタノール)で平衡化したC18−逆相カラム(Nucleosil120−5C18,Macherey&Nagel,Dueren、独国)を使用するHewlett−Packard 1100Series装置上、230nmで検出した。分離のため、次の勾配を適用した:1〜7分:0.5ml/分の流速での50%〜75%緩衝液Bにおける直線勾配、7〜13分:0.5ml/分の流速での75%〜85%緩衝液B、13〜14.5分:1ml/分の低速(lowrate)での85%〜50%緩衝液B、14.5〜17分:1ml/分の流速での50%緩衝液B、および17〜20分:0.5ml/分の流速での50%緩衝液B。
【0069】
較正のための標準物質の利用によって、NMR分光学により以下のDAB濃度を決定し(表1を参照のこと)、確認することができた。
【表1】



【0070】
実施例1.2 流加培養(21)内のオルニチンデカルボキシラーゼの過剰産生を介する1,4−ブタンジアミンの産生
流加培養条件下での発酵DAB産生の能力を、labforsバイオリアクター(Infors,Einsbach、独国)内での高レベルDAB産生者株LJ110pDAB2の利用により調べた。DABを産生する株は、その増殖に対しアミノ酸依存的ではないため、細胞増殖を制限するために、リン酸制限培養のために開発されたプロトコルを適用した。従って、MgSO・7HO(3g/l)、CaCl・2HO(15mg/l)、KHPO(400mg/l)、NaCl(1g/l)、(NHSO(5g/l)ならびに微量元素Al(SO・18HO(3mg/l)、CoCl・6HO(1.05mg/l)、CuSO・5HO(3.75mg/l)、HBO(0.75mg/l)、MnCl・4HO(30mg/l)、NaMoO・2HO(4.5mg/l)、NiSO・6HO(3mg/l)およびZnSO・7HO(22.5mg/l)からなるリン酸制限最小培地を使用した。オートクレーブ後、クエン酸Na・3HO(1.5g/l)、FeSO・7HO(112.5mg/l)、チアミン・HCl(ビタミンB1)(7.5mg/l)、アンピシリン(ampicilline)(100mg/l)およびグルコース(10g/l)を滅菌条件下でバイオリアクターに添加した。
【0071】
100mg/lアンピシリン(ampicilline)を含有する最小培地(1.1を参照のこと)の前培養物に1〜5μl/mlストック溶液を播種し、2の620nmでの光学密度まで33℃、180rpmで、16時間、インキュベートした。その後、この培養物を、続いて、2lのリン酸制限最小培地からなる主培養物の1:10播種に使用した。培養中、温度を33℃で一定に保持し、5NKOHの添加によりpHを6.8+0.1に制御した。増殖中、1500rpmの安定な撹拌速度を使用した。酸素制限を回避するために、培養中の容器内への気流を2.5〜10l/分に増加した。必要に応じて消泡剤Dehysanを添加した。
【0072】
細胞を5のOD620で50μM IPTGとともにインキュベートし、続いて、グルコース(500g/l)/硫酸アンモニア(200g/l)の組み合わせを供給する一方、10g/lグルコースおよび1.5g/lアンモニアの安定な濃度を受け入れるために供給速度を適応させた。誘導の2時間後、7ml/hの供給速度を伴う18g/lKHPOからなるリン酸供給を8時間、開始した。このように、細胞増殖を約50のOD620に制限することができた。
【0073】
時間依存的DAB産生を観察するため、培養中の異なる時間ポイントでサンプルを採取した。遠心分離を利用する細胞の分離後、上清をHPLC(1.1を参照のこと)によって分析し、5.1g/lのDAB量(0.403g/gBDW;BDWバイオマス乾燥重量を意味する)が決定され、NMR分光法により確認された。
【0074】
実施例2:オルニチンならびにアルギニンから出発するバッチ内の1,4−ブタンジアミンの産生(フラスコ振盪法)
オルニチンならびにアルギニンから出発するDAB形成のさらなる改善を実証するために、オルニチンデカルボキシラーゼSpeF(増加した転写効率を伴う)、アルギニンデカルボキシラーゼSpeAおよびアグマチナーゼSpeBの組み合わされた過剰産生の影響について調べた。
【0075】
従って、プラスミドpDAB8((v)を参照のこと)を担持する大腸菌(E.coli)宿主株LJ110(ゼッペンフィールド(Zeppenfeld)ら、一般的手順を参照のこと)の利用によって、最小培地(1.1を参照のこと)においてフラスコ振盪培養を行った。従って、100mg/lアンピシリン(ampicilline)を含有する最小培地の前培養物に1〜5μl/mlストック溶液を播種し、2の620nmでの光学密度まで33℃、180rpmで、16時間、インキュベートした。この培養物の5mlを、続いて、50mlの同培地からなる主培養物の播種に使用し、24時間、33℃および180rpmでインキュベートした。細胞が1.5のOD620nmに到達した(約7時間後)ため、10μM IPTGの添加によって遺伝子発現を誘導した。
【0076】
時間依存的DAB産生を観察するため、培養中の異なる時間ポイントでサンプルを採取した。遠心分離を利用する細胞の分離後、上清をHPLCによって分析した(1.1を参照のこと)。較正のための標準物質の利用によって、以下のDAB濃度を決定することができた(表3を参照のこと)。
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
生来のレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性と比較して増加したレベルのオルニチンデカルボキシラーゼ活性(増加したODC活性)を有する微生物における1,4−ブタンジアミンの生化学合成のための方法であって、
増加したオルニチンデカルボキシラーゼ活性は、増加した翻訳および/または転写効率によるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子の過剰発現によって得られ、そして微生物において産生される1,4−ブタンジアミンは、発酵ブロスに分泌され、発酵ブロスから回収されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
増加した翻訳および/または転写効率は、強力な調節プロモーターの使用、好ましくは、強力な誘導性プロモーターの使用によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増加した翻訳および/または転写効率は、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)誘導性の強力なプロモーターの使用によって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
増加した翻訳および/または転写効率は、T7、T5、ptac、およびplacプロモーターからなる群から選択されるプロモーターの使用によって得られる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
オルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、リボソームによるRNA−テンプレートの良好な認識を達成するためにRBSが適用される前記遺伝子のコーディング領域の上流に局在するリボソーム結合部位(RBS)を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子はオルニチンデカルボキシラーゼspeFまたはspeC遺伝子(それぞれE.C.4.1.1.17に属する)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子はオルニチンデカルボキシラーゼspeF遺伝子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)、およびシェワネラ(Shewanella)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子speFまたはspeCである、請求項6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)、B群赤痢菌(Shigellaflexneri)、サルモネラ・チフィムチウム(Salmonella typhimutium)、ペスト菌(Yersinia pestis)、およびシェワネラ・オネイデンシス(Shewanellaoneidensis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
過剰発現されるオルニチンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・チフィムチウム(Salmonellatyphimutium)、およびシェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するspeFである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、増加したODC活性のために、
(i)アルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speA(E.C.4.1.1.19に属する)およびアグマチナーゼをコードする遺伝子speB(E.C.3.5.3.11に属する、アグマチンウレアヒドロラーゼをコードする遺伝子とも称される)、または
アルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子speA(E.C.4.1.1.19に属する)、およびアグマチンイミノヒドロラーゼをコードする遺伝子aguA(E.C.3.5.3.12に属する、アグマチンデイミナーゼをコードする遺伝子とも称される)、およびN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子aguB(E.C.3.5.1.53に属する)、および場合によりまた、アグマチナーゼをコードする遺伝子speB(E.C.3.5.3.11に属する)
のいずれかの過剰発現によって、少なくとも2つの他の酵素についても増加した酵素活性が得られる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
過剰発現されるアルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)、赤痢菌(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)、パスツレラ(Pasteurella)、およびナイセリア(Neisseria)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するアルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子speAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
過剰発現されるアルギニンデカルボキシラーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)、B群赤痢菌(Shigellaflexneri)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、ペスト菌(Yersinia pestis)、パスツレラ菌(Pasteurellamultocida)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するアルギニンデカルボキシラーゼ遺伝子speAである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
過剰発現されるアグマチナーゼをコードする遺伝子は、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、プロテウス(Proteus)、フォトルハブダス(Photorhabdus)、ビブリオ(Vibrio)、およびナイセリア(Neisseria)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するアグマチナーゼ遺伝子speBである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
過剰発現されるアグマチナーゼをコードする遺伝子は、大腸菌(Escherichia coli)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonellaenterica)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、フォトルハブダス・ルミネセンス(Photorhabdus luminescens)、コレラ菌(Vibriocholerae)、および髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するアグマチナーゼ遺伝子speBである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
過剰発現されるアグマチンイミノヒドロラーゼをコードする遺伝子および/または過剰発現されるN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス(Pseudomonas)、連鎖球菌(Streptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、アゾトバクター(Azotobacter)、アラビドプシス(Arabidopsis)、ノボスフィンゴビウム(Novosphingobium)、およびバチルス(Bacillus)からなる群から選択される属のうちの1つから由来するアグマチンイミノヒドロラーゼ遺伝子aguAおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ遺伝子aguBである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
過剰発現されるアグマチンイミノヒドロラーゼをコードする遺伝子および/または過剰発現されるN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス・エアルギノサ(Pseudomonasaeruginosa)、ミュータンス菌(Streptococcus mutans)、ストレプトマイセス・アバーミチリス(Streptomyces avermitilis)、アゾトバクター・フィネランディ(Azotobactervinelandii)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ノボスフィンゴビウム・アロマチシボラン(Novosphingobium aromaticivorans)、およびセレウス菌(Bacilluscereus)からなる群から選択される種のうちの1つから由来するアグマチンイミノヒドロラーゼ遺伝子aguAおよび/またはN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼ遺伝子aguBである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
方法は、増加した細胞内レベルのオルニチンを確実にする一方で行われる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
方法は、サッカロミセス(Saccharomyces)sp.、バチルス(Bacillus)sp.、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.、エシェリキア(Escherichia)sp.およびピキア(Pichia)sp.からなる群から選択される宿主生物体において行われる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
方法は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)sp.およびエシェリキア(Escherichia)sp.からなる群から選択される宿主生物体において行われ、オルニチンデカルボキシラーゼの増加したレベルの活性とは別に、少なくともアグマチナーゼならびに/またはアグマチンイミノヒドロラーゼおよびN−カルバモイルプトレシンアミドヒドロラーゼと組み合わされたアルギニンデカルボキシラーゼの活性のレベルも増加する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
増加したレベルの活性で、請求項1〜20のいずれか一項に記載の1つもしくはそれ以上の酵素活性を担持するベクター、プラスミドおよび宿主。

【公開番号】特開2012−130343(P2012−130343A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−10241(P2012−10241)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【分割の表示】特願2007−520745(P2007−520745)の分割
【原出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】