2次電池
【課題】各電池セルの温度にばらつきがある2次電池においても、各電池セルの電圧や電流量等の出力のばらつきが抑制され、長寿命化が図られた2次電池を提供することである。
【解決手段】板状に形成された電解質層27と、電解質層27の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極28と、電解質層27の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極26とを有する単位電池25と、単位電池25間に設けられた導電層29とを備え、単位電池25および導電膜29を複数積層した2次電池4であって、2次電池4内の温度分布に応じて、正極活物質および負極活物質の濃度を設定する。
【解決手段】板状に形成された電解質層27と、電解質層27の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極28と、電解質層27の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極26とを有する単位電池25と、単位電池25間に設けられた導電層29とを備え、単位電池25および導電膜29を複数積層した2次電池4であって、2次電池4内の温度分布に応じて、正極活物質および負極活物質の濃度を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位電池を積層して構成された2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電解質層の表面に正極と負極とが形成された複数の電池セルを集電板を介して積層して構成された2次電池が知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
このような2次電池は、蓄電池として利用されており、正極と負極との間に生じる電極反応によって放電が行われる。
【特許文献1】特開2004−31255号公報
【特許文献2】特開2005−174691号公報
【特許文献3】特開2005−50756号公報
【特許文献4】特開2005−11660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような2次電池においては、2次電池の内方側と端部側とでは放熱効率が異なり、2次電池の内方ほど温度が高くなる傾向にある。このため、2次電池の内方に位置する電池セルの電極反応が活発となり、2次電池の内方に位置する電池セルが早期に劣化してしまい、2次電池全体の寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
さらに、各電池セルが正常に駆動している場合においても、2次電池内の温度分布によって各電池セルの出力電圧にばらつきが生じる。このため、各電池セルの出力電圧をセンシングして所定電圧からずれた電池セルを検出することができたとしても、その原因が当該電池セルの故障によるものなのか、温度によるものなのかを判断することが困難なものとなっている。このように、従来の2次電池においては、不具合を生じた電池セルの特定が困難なものとなっている。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、位置によって放熱効率が異なり、各電池セルの温度にばらつきがある2次電池においても、各電池セルの電圧や電流量等の出力のばらつきが抑制され、長寿命化が図られた2次電池を提供することである。また、第2の目的は、不具合の生じた電池セルを特定する正確さの向上が図られた2次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る2次電池は、1つの局面では、板状に形成された電解質層と、電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する単位電池と、単位電池間に設けられた導電層とを備え、単位電池および導電膜を複数積層した2次電池であって、2次電池内の温度分布に応じて、正極活物質および負極活物質の濃度が設定される。好ましくは、上記単位電池は、第1単位電池と、第1単位電池より温度が高くなる第2単位電池とを含み、第1単位電池の正極活物質および負極活物質の濃度よりも、第2単位電池の正極活物質および負極活物質の濃度を低くする。好ましくは、上記正極は、第1添加物をさらに含み、負極は、第2添加物をさらに含み、2次電池内の温度分布に応じて、第1添加物および第2添加物の添加量を設定する。
【0008】
本発明に係る2次電池は、他の局面では、板状に形成された電解質層と、電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する単位電池と、単位電池間に配置された導電層とを備え、単位電池および導電膜を複数積層した2次電池であって、単位電池の積層方向に位置する2次電池の端面側から内方に向かうに従って単位電池の温度が高くなると共に、正極に含まれる正極活物質および負極に含まれる負極活物質の濃度が低くなる。好ましくは、上記単位電池の積層方向の内方に位置する単位電池の出力を基準出力として、各単位電池の出力が基準出力となるように、各単位電池の正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定する。好ましくは、上記端面に位置する単位電池の出力を基準出力として、各単位電池の出力が基準出力となるように、各単位電池の正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る2次電池においては、2次電池内の温度分布にあわせて、負極活物質および正極活物質の濃度を設定して、温度の高い単位電池程、正極活物質および負極活物質の濃度を低くすることにより、各単位電池の出力を均一化することができ、特定の単位電池のみが劣化することを抑制することができる。さらに、2次電池内の各単位電池の出力を近似させることができるため、各単位電池の出力をセンシングすることにより、不具合を生じた単位電池を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1から図13を用いて、本実施の形態に係るバイポーラ2次電池4について説明する。図1は、本実施の形態に係るバイポーラ2次電池の断面図である。この図1に示されるように、バイポーラ2次電池4は、集電箔(導電膜)29を介して、複数の電極シート(単位電池)25を積層して形成されている。バイポーラ2次電池4は、略直方体形状とされている。
【0011】
バイポーラ2次電池4は、図示されないケーシングに収納され、たとえば、ハイブリット車や、電気自動車などに搭載される。このバイポーラ2次電池4は、電極シート25の積層方向の一端面に設けられた正極集電板23と、他方の端面に設けられた負極集電板21とを備えている。
【0012】
この正極集電板23と負極集電板21とには、PCU(Power Control Unit)などの外部の部材に接続された配線が接続される端子部が形成されており、ケーシングから外方に突出している。
【0013】
このため、この端子部からケーシングの外部に熱が放熱されたり、ケーシングを介して、正極集電板23および負極集電板21の表面から外方に熱が放熱されたりする。このように、バイポーラ2次電池4の端面側は、バイポーラ2次電池4の中央部よりも放熱効率が高いものとなっている。
【0014】
そして、バイポーラ2次電池の内部に熱がこもり、バイポーラ2次電池4の端面側に位置する電極シート25の温度よりも、バイポーラ2次電池4の内部側に位置する電極シート25の温度の方が高くなる。
【0015】
電極シート25は、板状に形成された電解質層27と、電解質層27の一方の主表面上に形成された正極28と、他方の主表面上に形成された負極26とを備えている。そして、各電極シート25は、集電箔(導電膜)29を介して直列に接続されている。具体的には、負極集電板21の下面と接触する電極シート25n1が設けられ、導電箔29を介して電極シート25n1に隣接する電極シート25n2が設けられ、さらに複数の電極シートが積層される。そして、正極集電板23の上面には、電極シート25nm(mは、正の数である。)が設けられ、本実施の形態においては、m個の電極シート25が積層されている。
【0016】
なお、負極26は、集電箔29の一方の表面に負極活物質や添加物をスパッタリングにより塗布することにより形成され、正極28は、集電箔29の他方の表面に正極活物質や添加物をスパッタリングにより塗布することにより形成される。
【0017】
正極28に含まれる正極活物質の濃度および負極26に含まれる負極活物質の濃度は、バイポーラ2次電池4が駆動したときのバイポーラ2次電池4内の温度分布に応じて設定されている。
【0018】
すなわち、バイポーラ2次電池4の駆動時に、一の電極シート(第1単位電池)25よりも温度が高くなる他の電極シート(第2単位電池)25は、一の電極シート25の正極活物質および負極活物質の濃度よりも、他の電極シート25の正極活物質および負極活物質の濃度よりも、低く設定する。
【0019】
このため、バイポーラ2次電池4が駆動して、バイポーラ2次電池4内の温度分布にばらつきが生じて、電極シート25の位置によって温度が異なるようになっても、温度が高くなる電極シート25の電極反応が活発化することを抑制することができる。これにより、各電極シート25の放電電流量や電圧にばらつきが生じることを抑制することができ、各電極シート25の出力を均一化することができる。
【0020】
このように、各電極シート25の出力が均一化されることにより、特定の電極シート25が劣化されることを抑制することができ、バイポーラ2次電池4の長寿命化を図ることができる。
【0021】
本実施の形態に係るバイポーラ2次電池4においては、電極シート25の積層方向の端面側に位置する部分よりも、積層方向の内方側に位置する部分の温度の方が高くなる。
【0022】
このため、電極シート25の積層方向に位置するバイポーラ2次電池4の端面側から内方に向かうに従って、電極シート25の正極28の正極活物質および負極26の負極活物質の濃度が低くなるようにするのが好ましい。これにより、電極シート25の積層方向に温度のばらつきが生じたとしても、各電極シート25の出力を均一化することができる。
【0023】
ここで、各電極シート25の正極28内の正極活物質および、負極26内の負極活物質の濃度を調整する方法としては、各正極28内の正極活物質の含有量および各負極26内の負極活物質の含有量を一定としつつも、各正極28内に含まれる添加物(第1添加物)および負極26内に含まれる添加物(第2添加物)の含有量を調整する手法が考えられる。
【0024】
そして、図1に示すバイポーラ2次電池4においては、電極シート25の積層方向の内方側からバイポーラ2次電池4の端面側に向かうに従って、各正極28内に含まれる添加物および各負極26内に含まれる添加物の含有量を低減して、バイポーラ2次電池4の内方側に向かうに従って、各正極28内に含まれる正極活物質および各負極26内に含まれる負極活物質の含有率を増加させる。
【0025】
これにより、バイポーラ2次電池4の端面側に向かうに従って、正極28および負極26に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を高めることができると共に、バイポーラ2次電池4の端面側に向かうに従って、各正極28および各負極26に厚みが薄くなり、バイポーラ2次電池4をコンパクトに構成することができる。
【0026】
なお、各正極28内に含まれる正極活物質および各負極26内に含まれる負極活物質の濃度を調整する手法としては、各正極28を構成する正極活物質および添加物の総質量と、各負極26を構成する負極活物質と添加物の総質量を一定としつつも、正極活物質および負極活物質の含有率を変動させてもよい。このようにして、各正極28の正極活物質および負極26の負極活物質の濃度を設定することにより、従来のバイポーラ2次電池と比較しても容積が変動せず、従来から用いられているバイポーラ2次電池のケーシングを援用することができる。
【0027】
図2は、正極活物質および負極活物質の濃度分布を示すグラフである。図3は、正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときにおける、バイポーラ2次電池4の入出力値(電流量)の分布を示し、図4は、各電極シートについて、出力される電圧分布を示す。さらに、図5は、正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときの、バイポーラ2電池4の温度分布を示すグラフである。なお、図2から図13において、縦軸は、図1に示す各電極シート25n1〜25nmを示し、電極シート25nlは、電極シート25n1〜25nmの積層方向の中央に位置する電極シートとする。
【0028】
そして、図2に示すバイポーラ2次電池4の積層方向の正極活物質および負極活物質の濃度分布は、図5に示すバイポーラ2次電池4の積層方向の温度分布と対応するように設定されている。
【0029】
このため、図3および図4に示すように、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧および出力電流量は、略一致しており、所定電圧および所定電流となる。
【0030】
このように、バイポーラ2次電池4の駆動時において、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧等が所定電圧となるため、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧などをセンシングすることにより、不具合を生じて、出力電圧等が所定電圧からずれるような電極シート25を容易に特定することができる。
【0031】
すなわち、従来においては、正常に駆動しているバイポーラ2次電池の各電極シート25n1〜25nmの出力電圧にばらつきが生じるため、不具合を生じた電極シート25n1〜25nmの特定が非常に困難である一方で、本実施の形態に係るバイポーラ2次電池4においては、容易に不具合を生じた電極シート25n1〜25nmを容易に特定することができる。
【0032】
また、図2に示す例においては、電極シート25n1〜25nmの積層方向の内方に位置する電極シート25nlの出力を基準出力として、各電極シート25n1〜25nmの出力が基準出力となるように設定されている。バイポーラ2次電池4の中央部に位置する電極シート25nlは駆動時に温度が高くなり易いため、基準出力も高くなり、バイポーラ2次電池4の総出力電圧および電流を高くすることができる。
【0033】
具体的な濃度分布としては、電極シート25n1〜25nmの積層方向の中央部に位置する電極シート25nlの正極28および負極26に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を85%程度として、バイポーラ2次電池4の端面に位置する電極シート25n1、25nmの正極28および負極26に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を95%程度に設定する。
【0034】
図6は、バイポーラ2次電池4の端面に位置する電極シート25n1、25nmの出力を基準出力として、各電極シート25n1〜25nmの出力が、基準出力となるように各電極シート25n1〜25nmの正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの濃度分布を示すグラフである。
【0035】
具体的には、端面側に位置する電極シート25n1、25nmの正極活物質および負極活物質の濃度を85%程度として、積層方向の中央部に位置する電極シート25nlの正極活物質および負極活物質の濃度を75%程度とする。
【0036】
このように正極活物質および負極活物質の濃度を設定することにより、必要とする正極活物質量および負極活物質量を低減することができ、低コストでバイポーラ2次電池4を構成することができる。
【0037】
図7は、図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、各電極シート25n1〜25nmの出力電流を示すグラフであり、図8は、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧を示すグラフである。さらに、図9は、バイポーラ2次電池4内の温度分布を示すグラフである。
【0038】
この図7から図9に示すバイポーラ2次電池4においても、バイポーラ2次電池4内の温度分布に応じて、正極活物質および負極活物質の濃度を設定しているため、図7および図8に示すように、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧および出力電流が均一なものとなる。
【0039】
このため、このバイポーラ2次電池4においても、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧などをセンシングすることにより、不具合を生じた電極シート25n1〜25nmを容易に特定することができる。
【0040】
図10に示すように、バイポーラ2次電池4の中央部と端面との間に位置する電極シート25k(kは正の数であり、1<k<l<mである。)の出力を基準出力として、他の電極シート25の正極活物質および負極活物質の濃度を設定してもよい。
【0041】
具体的には、端面に位置する電極シート25n1、25nmの正極活物質および負極活物質の濃度を90%とし、中央部に位置する電極シート25nlの正極活物質および負極活物質の濃度を80%程度とする。
【0042】
そして、図13は、図10のように正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたバイポーラ2次電池4の積層方向の温度分布を示すグラフであり、このバイポーラ2次電池4内の温度分布に応じて、各電極シート25n1〜25nmの正極活物質および負極活物質の濃度分布を設定する。
【0043】
図11は、図10に示すように、正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたときの各電極シート25n1〜25nmの出力電流を示すグラフであり、図12は、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧を示すグラフである。これら、図11および図12に示されるように、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧および出力電流は、均一化される。
【0044】
なお、上述のように電極シート25の積層方向における温度分布のばらつきに着目して、各電極シート25の出力の均一化を図ることに着目しているが、これに限られない。
【0045】
たとえば、各正極28および負極26についても、主表面方向に温度にばらつきがあり、各正極28および負極26内においても位置によって、電極反応が活発な部分と、不活性な部分とがある。
【0046】
たとえば、端子部のうち、配線が接続される接続部分の温度は高くなり易い。このため、正極集電板23や負極集電板21に隣接する電極シート25のうち、接続部分の近傍に位置する部分の温度は、他の部分より温度が高くなりやすい。
【0047】
そこで、1つの電極シート25のうちでも、温度が高くなる部分の濃度を低くして、温度が低い部分の濃度を高くして、1つの電極シート25内においても、部分劣化が生じることを抑制することができる。
【0048】
図1において、電解質層27は、イオン伝導性を示す材料から形成される層である。電解質層27は、固体電解質であってもよいし、ゲル状電解質であってもよい。電解質層27を介在させることによって、正極28および負極26間のイオン伝導がスムーズになり、バイポーラ2次電池の出力を向上させることができる。
【0049】
なお、バイポーラ電極30は、電解質層27間に形成されており、集電箔29と集電箔29の一方の主表面上に形成された正極28と他方の主表面上に形成された負極26とを備えている。
【0050】
電極シート25の積層方向の端部に位置するバイポーラ2次電池4の端面には、板状の負極集電板21と板状の正極集電板23とを備えている。
【0051】
そして、負極集電板21の一方の主表面には、この負極集電板21に対して電極シート25の積層方向に隣接する電極シート25の負極26が接触している。また、正極集電板23の一方の主表面には、この正極集電板23に対して電極シート25の積層方向に隣接する電極シート25の正極28が接触している。
【0052】
上記のように構成されたバイポーラ2次電池4の構成について詳細に説明する。集電箔29は、たとえば、アルミニウムから形成されている。この場合、集電箔29の表面に設けられる活物質層が固体高分子電解質を含んでも、集電箔29の機械的強度を十分に確保することができる。集電箔29は、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)もしくはこれらの合金等、アルミニウム以外の金属の表面にアルミニウムを被膜することによって形成されてもよい。
【0053】
正極28は、正極活物質および固体高分子電解質等の添加物を含む。さらに、正極28は、添加物として、イオン伝導性を高めるための支持塩(リチウム塩)、電子伝導性を高めるための導電助剤、スラリー粘度の調整溶媒としてのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)、重合開始剤としてのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等を含んでもよい。
【0054】
正極活物質としては、リチウムイオン2次電池で一般的に用いられる、リチウムと遷移金属との複合酸化物を使用することができる。正極活物質として、たとえば、LiCoO2等のLi・Co系複合酸化物、LiNiO2等のLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4等のLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2等のLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。その他、LiFePO4等の遷移金属とリチウムとのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3等の遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOH等が挙げられる。
【0055】
固体高分子電解質は、イオン伝導性を示す高分子であれば、特に限定されず、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体などが挙げられる。このようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2等のリチウム塩を容易に溶解する。固体高分子電解質は、正極28および負極26の少なくとも一方に含まれる。より好ましくは、固体高分子電解質は、正極28および負極26の双方に含まれる。
【0056】
支持塩としては、Li(C2F5SO2)2N、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2C2F5)2、もしくはこれらの混合物等を使用することができる。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等を使用することができる。
【0057】
負極26は、負極活物質および固体高分子電解質等の添加物を含む。負極活物質は、添加物として、イオン伝導性を高めるための支持塩(リチウム塩)、電子伝導性を高めるための導電助剤、スラリー粘度の調整溶媒としてのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)、重合開始剤としてのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等を含んでもよい。
【0058】
負極活物質としては、リチウムイオン2次電池で一般的に用いられる材料を使用することができる。但し、固体電解質を使用する場合、負極活物質として、カーボンもしくはリチウムと金属酸化物もしくは金属との複合酸化物を用いることが好ましい。より好ましくは、負極活物質は、カーボンもしくはリチウムと遷移金属との複合酸化物である。さらに好ましくは、遷移金属はチタンである。つまり、負極活物質は、チタン酸化物もしくはチタンとリチウムとの複合酸化物であることがさらに好ましい。
【0059】
電解質層27を形成する固体電解質としては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体等、固体高分子電解質を使用することができる。固体電解質は、イオン伝導性を確保するための支持塩(リチウム塩)を含む。支持塩としては、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、もしくはこれらの混合物等を使用することができる。
【0060】
さらに、正極28、負極26および電解質層27を形成する材料の具体例を表1から表3に示す。表1は、電解質層27が有機系固体電解質である場合の具体例を示し、表2は、電解質層27が無機系固体電解質である場合の具体例を示し、表3は、電解質層27がゲル状電解質である場合の具体例を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
多くの場合、2次電池に用いられる電解質は液体である。たとえば鉛蓄電池の場合には電解液に稀硫酸が用いられる。正極集電板23および負極集電板21はある程度の強度を有する。本実施の形態では複数のバイポーラ2次電池4の各々は正極集電板23および負極集電板21により挟まれる。正極集電板23および負極集電板21をバイポーラ2次電池4に挟んだときに正極集電板23とバイポーラ2次電池4との隙間、あるいは負極集電板21とバイポーラ2次電池4との隙間をなくすことができる。
【0065】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、複数の単位電池を積層して構成されたバイポーラ2次電池に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態に係るバイポーラ2次電池の断面図である。
【図2】正極活物質および負極活物質の濃度分布を示すグラフである。
【図3】正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときにおける、バイポーラ2次電池の入出力値(電流量)の分布を示すグラフである。
【図4】各電極シートについて、出力される電圧分布を示すグラフである。
【図5】正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときの、バイポーラ2電池の温度分布を示すグラフである。
【図6】バイポーラ2次電池の端面に位置する電極シート25の出力を基準出力として、各電極シート25の出力が、基準出力となるように各電極シート25の正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの濃度分布を示すグラフである。
【図7】図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、各電極シートの出力電流を示すグラフである。
【図8】図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、各電極シートの出力電圧を示すグラフである。
【図9】図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、バイポーラ2次電池内の温度分布を示すグラフである。
【図10】バイポーラ2次電池の中央部と端面との間に位置する電極シートの出力を基準出力として、他の電極シートの正極活物質および負極活物質の濃度分布を示すグラフである。
【図11】図10に示すように、正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたときの各電極シートの出力電流を示すグラフである。
【図12】図10に示すように、正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたときの各電極シートの出力電圧を示すグラフである。
【図13】図10のように正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたバイポーラ2次電池の積層方向の温度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
4 バイポーラ2次電池、21 負極集電板、23 正極集電板、25,25n1,25nm 電極シート、26 負極、27 電解質層、28 正極、29 集電箔、30 バイポーラ電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位電池を積層して構成された2次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電解質層の表面に正極と負極とが形成された複数の電池セルを集電板を介して積層して構成された2次電池が知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
このような2次電池は、蓄電池として利用されており、正極と負極との間に生じる電極反応によって放電が行われる。
【特許文献1】特開2004−31255号公報
【特許文献2】特開2005−174691号公報
【特許文献3】特開2005−50756号公報
【特許文献4】特開2005−11660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような2次電池においては、2次電池の内方側と端部側とでは放熱効率が異なり、2次電池の内方ほど温度が高くなる傾向にある。このため、2次電池の内方に位置する電池セルの電極反応が活発となり、2次電池の内方に位置する電池セルが早期に劣化してしまい、2次電池全体の寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
さらに、各電池セルが正常に駆動している場合においても、2次電池内の温度分布によって各電池セルの出力電圧にばらつきが生じる。このため、各電池セルの出力電圧をセンシングして所定電圧からずれた電池セルを検出することができたとしても、その原因が当該電池セルの故障によるものなのか、温度によるものなのかを判断することが困難なものとなっている。このように、従来の2次電池においては、不具合を生じた電池セルの特定が困難なものとなっている。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、位置によって放熱効率が異なり、各電池セルの温度にばらつきがある2次電池においても、各電池セルの電圧や電流量等の出力のばらつきが抑制され、長寿命化が図られた2次電池を提供することである。また、第2の目的は、不具合の生じた電池セルを特定する正確さの向上が図られた2次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る2次電池は、1つの局面では、板状に形成された電解質層と、電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する単位電池と、単位電池間に設けられた導電層とを備え、単位電池および導電膜を複数積層した2次電池であって、2次電池内の温度分布に応じて、正極活物質および負極活物質の濃度が設定される。好ましくは、上記単位電池は、第1単位電池と、第1単位電池より温度が高くなる第2単位電池とを含み、第1単位電池の正極活物質および負極活物質の濃度よりも、第2単位電池の正極活物質および負極活物質の濃度を低くする。好ましくは、上記正極は、第1添加物をさらに含み、負極は、第2添加物をさらに含み、2次電池内の温度分布に応じて、第1添加物および第2添加物の添加量を設定する。
【0008】
本発明に係る2次電池は、他の局面では、板状に形成された電解質層と、電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する単位電池と、単位電池間に配置された導電層とを備え、単位電池および導電膜を複数積層した2次電池であって、単位電池の積層方向に位置する2次電池の端面側から内方に向かうに従って単位電池の温度が高くなると共に、正極に含まれる正極活物質および負極に含まれる負極活物質の濃度が低くなる。好ましくは、上記単位電池の積層方向の内方に位置する単位電池の出力を基準出力として、各単位電池の出力が基準出力となるように、各単位電池の正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定する。好ましくは、上記端面に位置する単位電池の出力を基準出力として、各単位電池の出力が基準出力となるように、各単位電池の正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る2次電池においては、2次電池内の温度分布にあわせて、負極活物質および正極活物質の濃度を設定して、温度の高い単位電池程、正極活物質および負極活物質の濃度を低くすることにより、各単位電池の出力を均一化することができ、特定の単位電池のみが劣化することを抑制することができる。さらに、2次電池内の各単位電池の出力を近似させることができるため、各単位電池の出力をセンシングすることにより、不具合を生じた単位電池を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1から図13を用いて、本実施の形態に係るバイポーラ2次電池4について説明する。図1は、本実施の形態に係るバイポーラ2次電池の断面図である。この図1に示されるように、バイポーラ2次電池4は、集電箔(導電膜)29を介して、複数の電極シート(単位電池)25を積層して形成されている。バイポーラ2次電池4は、略直方体形状とされている。
【0011】
バイポーラ2次電池4は、図示されないケーシングに収納され、たとえば、ハイブリット車や、電気自動車などに搭載される。このバイポーラ2次電池4は、電極シート25の積層方向の一端面に設けられた正極集電板23と、他方の端面に設けられた負極集電板21とを備えている。
【0012】
この正極集電板23と負極集電板21とには、PCU(Power Control Unit)などの外部の部材に接続された配線が接続される端子部が形成されており、ケーシングから外方に突出している。
【0013】
このため、この端子部からケーシングの外部に熱が放熱されたり、ケーシングを介して、正極集電板23および負極集電板21の表面から外方に熱が放熱されたりする。このように、バイポーラ2次電池4の端面側は、バイポーラ2次電池4の中央部よりも放熱効率が高いものとなっている。
【0014】
そして、バイポーラ2次電池の内部に熱がこもり、バイポーラ2次電池4の端面側に位置する電極シート25の温度よりも、バイポーラ2次電池4の内部側に位置する電極シート25の温度の方が高くなる。
【0015】
電極シート25は、板状に形成された電解質層27と、電解質層27の一方の主表面上に形成された正極28と、他方の主表面上に形成された負極26とを備えている。そして、各電極シート25は、集電箔(導電膜)29を介して直列に接続されている。具体的には、負極集電板21の下面と接触する電極シート25n1が設けられ、導電箔29を介して電極シート25n1に隣接する電極シート25n2が設けられ、さらに複数の電極シートが積層される。そして、正極集電板23の上面には、電極シート25nm(mは、正の数である。)が設けられ、本実施の形態においては、m個の電極シート25が積層されている。
【0016】
なお、負極26は、集電箔29の一方の表面に負極活物質や添加物をスパッタリングにより塗布することにより形成され、正極28は、集電箔29の他方の表面に正極活物質や添加物をスパッタリングにより塗布することにより形成される。
【0017】
正極28に含まれる正極活物質の濃度および負極26に含まれる負極活物質の濃度は、バイポーラ2次電池4が駆動したときのバイポーラ2次電池4内の温度分布に応じて設定されている。
【0018】
すなわち、バイポーラ2次電池4の駆動時に、一の電極シート(第1単位電池)25よりも温度が高くなる他の電極シート(第2単位電池)25は、一の電極シート25の正極活物質および負極活物質の濃度よりも、他の電極シート25の正極活物質および負極活物質の濃度よりも、低く設定する。
【0019】
このため、バイポーラ2次電池4が駆動して、バイポーラ2次電池4内の温度分布にばらつきが生じて、電極シート25の位置によって温度が異なるようになっても、温度が高くなる電極シート25の電極反応が活発化することを抑制することができる。これにより、各電極シート25の放電電流量や電圧にばらつきが生じることを抑制することができ、各電極シート25の出力を均一化することができる。
【0020】
このように、各電極シート25の出力が均一化されることにより、特定の電極シート25が劣化されることを抑制することができ、バイポーラ2次電池4の長寿命化を図ることができる。
【0021】
本実施の形態に係るバイポーラ2次電池4においては、電極シート25の積層方向の端面側に位置する部分よりも、積層方向の内方側に位置する部分の温度の方が高くなる。
【0022】
このため、電極シート25の積層方向に位置するバイポーラ2次電池4の端面側から内方に向かうに従って、電極シート25の正極28の正極活物質および負極26の負極活物質の濃度が低くなるようにするのが好ましい。これにより、電極シート25の積層方向に温度のばらつきが生じたとしても、各電極シート25の出力を均一化することができる。
【0023】
ここで、各電極シート25の正極28内の正極活物質および、負極26内の負極活物質の濃度を調整する方法としては、各正極28内の正極活物質の含有量および各負極26内の負極活物質の含有量を一定としつつも、各正極28内に含まれる添加物(第1添加物)および負極26内に含まれる添加物(第2添加物)の含有量を調整する手法が考えられる。
【0024】
そして、図1に示すバイポーラ2次電池4においては、電極シート25の積層方向の内方側からバイポーラ2次電池4の端面側に向かうに従って、各正極28内に含まれる添加物および各負極26内に含まれる添加物の含有量を低減して、バイポーラ2次電池4の内方側に向かうに従って、各正極28内に含まれる正極活物質および各負極26内に含まれる負極活物質の含有率を増加させる。
【0025】
これにより、バイポーラ2次電池4の端面側に向かうに従って、正極28および負極26に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を高めることができると共に、バイポーラ2次電池4の端面側に向かうに従って、各正極28および各負極26に厚みが薄くなり、バイポーラ2次電池4をコンパクトに構成することができる。
【0026】
なお、各正極28内に含まれる正極活物質および各負極26内に含まれる負極活物質の濃度を調整する手法としては、各正極28を構成する正極活物質および添加物の総質量と、各負極26を構成する負極活物質と添加物の総質量を一定としつつも、正極活物質および負極活物質の含有率を変動させてもよい。このようにして、各正極28の正極活物質および負極26の負極活物質の濃度を設定することにより、従来のバイポーラ2次電池と比較しても容積が変動せず、従来から用いられているバイポーラ2次電池のケーシングを援用することができる。
【0027】
図2は、正極活物質および負極活物質の濃度分布を示すグラフである。図3は、正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときにおける、バイポーラ2次電池4の入出力値(電流量)の分布を示し、図4は、各電極シートについて、出力される電圧分布を示す。さらに、図5は、正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときの、バイポーラ2電池4の温度分布を示すグラフである。なお、図2から図13において、縦軸は、図1に示す各電極シート25n1〜25nmを示し、電極シート25nlは、電極シート25n1〜25nmの積層方向の中央に位置する電極シートとする。
【0028】
そして、図2に示すバイポーラ2次電池4の積層方向の正極活物質および負極活物質の濃度分布は、図5に示すバイポーラ2次電池4の積層方向の温度分布と対応するように設定されている。
【0029】
このため、図3および図4に示すように、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧および出力電流量は、略一致しており、所定電圧および所定電流となる。
【0030】
このように、バイポーラ2次電池4の駆動時において、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧等が所定電圧となるため、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧などをセンシングすることにより、不具合を生じて、出力電圧等が所定電圧からずれるような電極シート25を容易に特定することができる。
【0031】
すなわち、従来においては、正常に駆動しているバイポーラ2次電池の各電極シート25n1〜25nmの出力電圧にばらつきが生じるため、不具合を生じた電極シート25n1〜25nmの特定が非常に困難である一方で、本実施の形態に係るバイポーラ2次電池4においては、容易に不具合を生じた電極シート25n1〜25nmを容易に特定することができる。
【0032】
また、図2に示す例においては、電極シート25n1〜25nmの積層方向の内方に位置する電極シート25nlの出力を基準出力として、各電極シート25n1〜25nmの出力が基準出力となるように設定されている。バイポーラ2次電池4の中央部に位置する電極シート25nlは駆動時に温度が高くなり易いため、基準出力も高くなり、バイポーラ2次電池4の総出力電圧および電流を高くすることができる。
【0033】
具体的な濃度分布としては、電極シート25n1〜25nmの積層方向の中央部に位置する電極シート25nlの正極28および負極26に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を85%程度として、バイポーラ2次電池4の端面に位置する電極シート25n1、25nmの正極28および負極26に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を95%程度に設定する。
【0034】
図6は、バイポーラ2次電池4の端面に位置する電極シート25n1、25nmの出力を基準出力として、各電極シート25n1〜25nmの出力が、基準出力となるように各電極シート25n1〜25nmの正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの濃度分布を示すグラフである。
【0035】
具体的には、端面側に位置する電極シート25n1、25nmの正極活物質および負極活物質の濃度を85%程度として、積層方向の中央部に位置する電極シート25nlの正極活物質および負極活物質の濃度を75%程度とする。
【0036】
このように正極活物質および負極活物質の濃度を設定することにより、必要とする正極活物質量および負極活物質量を低減することができ、低コストでバイポーラ2次電池4を構成することができる。
【0037】
図7は、図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、各電極シート25n1〜25nmの出力電流を示すグラフであり、図8は、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧を示すグラフである。さらに、図9は、バイポーラ2次電池4内の温度分布を示すグラフである。
【0038】
この図7から図9に示すバイポーラ2次電池4においても、バイポーラ2次電池4内の温度分布に応じて、正極活物質および負極活物質の濃度を設定しているため、図7および図8に示すように、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧および出力電流が均一なものとなる。
【0039】
このため、このバイポーラ2次電池4においても、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧などをセンシングすることにより、不具合を生じた電極シート25n1〜25nmを容易に特定することができる。
【0040】
図10に示すように、バイポーラ2次電池4の中央部と端面との間に位置する電極シート25k(kは正の数であり、1<k<l<mである。)の出力を基準出力として、他の電極シート25の正極活物質および負極活物質の濃度を設定してもよい。
【0041】
具体的には、端面に位置する電極シート25n1、25nmの正極活物質および負極活物質の濃度を90%とし、中央部に位置する電極シート25nlの正極活物質および負極活物質の濃度を80%程度とする。
【0042】
そして、図13は、図10のように正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたバイポーラ2次電池4の積層方向の温度分布を示すグラフであり、このバイポーラ2次電池4内の温度分布に応じて、各電極シート25n1〜25nmの正極活物質および負極活物質の濃度分布を設定する。
【0043】
図11は、図10に示すように、正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたときの各電極シート25n1〜25nmの出力電流を示すグラフであり、図12は、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧を示すグラフである。これら、図11および図12に示されるように、各電極シート25n1〜25nmの出力電圧および出力電流は、均一化される。
【0044】
なお、上述のように電極シート25の積層方向における温度分布のばらつきに着目して、各電極シート25の出力の均一化を図ることに着目しているが、これに限られない。
【0045】
たとえば、各正極28および負極26についても、主表面方向に温度にばらつきがあり、各正極28および負極26内においても位置によって、電極反応が活発な部分と、不活性な部分とがある。
【0046】
たとえば、端子部のうち、配線が接続される接続部分の温度は高くなり易い。このため、正極集電板23や負極集電板21に隣接する電極シート25のうち、接続部分の近傍に位置する部分の温度は、他の部分より温度が高くなりやすい。
【0047】
そこで、1つの電極シート25のうちでも、温度が高くなる部分の濃度を低くして、温度が低い部分の濃度を高くして、1つの電極シート25内においても、部分劣化が生じることを抑制することができる。
【0048】
図1において、電解質層27は、イオン伝導性を示す材料から形成される層である。電解質層27は、固体電解質であってもよいし、ゲル状電解質であってもよい。電解質層27を介在させることによって、正極28および負極26間のイオン伝導がスムーズになり、バイポーラ2次電池の出力を向上させることができる。
【0049】
なお、バイポーラ電極30は、電解質層27間に形成されており、集電箔29と集電箔29の一方の主表面上に形成された正極28と他方の主表面上に形成された負極26とを備えている。
【0050】
電極シート25の積層方向の端部に位置するバイポーラ2次電池4の端面には、板状の負極集電板21と板状の正極集電板23とを備えている。
【0051】
そして、負極集電板21の一方の主表面には、この負極集電板21に対して電極シート25の積層方向に隣接する電極シート25の負極26が接触している。また、正極集電板23の一方の主表面には、この正極集電板23に対して電極シート25の積層方向に隣接する電極シート25の正極28が接触している。
【0052】
上記のように構成されたバイポーラ2次電池4の構成について詳細に説明する。集電箔29は、たとえば、アルミニウムから形成されている。この場合、集電箔29の表面に設けられる活物質層が固体高分子電解質を含んでも、集電箔29の機械的強度を十分に確保することができる。集電箔29は、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)もしくはこれらの合金等、アルミニウム以外の金属の表面にアルミニウムを被膜することによって形成されてもよい。
【0053】
正極28は、正極活物質および固体高分子電解質等の添加物を含む。さらに、正極28は、添加物として、イオン伝導性を高めるための支持塩(リチウム塩)、電子伝導性を高めるための導電助剤、スラリー粘度の調整溶媒としてのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)、重合開始剤としてのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等を含んでもよい。
【0054】
正極活物質としては、リチウムイオン2次電池で一般的に用いられる、リチウムと遷移金属との複合酸化物を使用することができる。正極活物質として、たとえば、LiCoO2等のLi・Co系複合酸化物、LiNiO2等のLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4等のLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2等のLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。その他、LiFePO4等の遷移金属とリチウムとのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3等の遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOH等が挙げられる。
【0055】
固体高分子電解質は、イオン伝導性を示す高分子であれば、特に限定されず、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体などが挙げられる。このようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2等のリチウム塩を容易に溶解する。固体高分子電解質は、正極28および負極26の少なくとも一方に含まれる。より好ましくは、固体高分子電解質は、正極28および負極26の双方に含まれる。
【0056】
支持塩としては、Li(C2F5SO2)2N、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2C2F5)2、もしくはこれらの混合物等を使用することができる。導電助剤としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等を使用することができる。
【0057】
負極26は、負極活物質および固体高分子電解質等の添加物を含む。負極活物質は、添加物として、イオン伝導性を高めるための支持塩(リチウム塩)、電子伝導性を高めるための導電助剤、スラリー粘度の調整溶媒としてのNMP(N−メチル−2−ピロリドン)、重合開始剤としてのAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等を含んでもよい。
【0058】
負極活物質としては、リチウムイオン2次電池で一般的に用いられる材料を使用することができる。但し、固体電解質を使用する場合、負極活物質として、カーボンもしくはリチウムと金属酸化物もしくは金属との複合酸化物を用いることが好ましい。より好ましくは、負極活物質は、カーボンもしくはリチウムと遷移金属との複合酸化物である。さらに好ましくは、遷移金属はチタンである。つまり、負極活物質は、チタン酸化物もしくはチタンとリチウムとの複合酸化物であることがさらに好ましい。
【0059】
電解質層27を形成する固体電解質としては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体等、固体高分子電解質を使用することができる。固体電解質は、イオン伝導性を確保するための支持塩(リチウム塩)を含む。支持塩としては、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、もしくはこれらの混合物等を使用することができる。
【0060】
さらに、正極28、負極26および電解質層27を形成する材料の具体例を表1から表3に示す。表1は、電解質層27が有機系固体電解質である場合の具体例を示し、表2は、電解質層27が無機系固体電解質である場合の具体例を示し、表3は、電解質層27がゲル状電解質である場合の具体例を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
多くの場合、2次電池に用いられる電解質は液体である。たとえば鉛蓄電池の場合には電解液に稀硫酸が用いられる。正極集電板23および負極集電板21はある程度の強度を有する。本実施の形態では複数のバイポーラ2次電池4の各々は正極集電板23および負極集電板21により挟まれる。正極集電板23および負極集電板21をバイポーラ2次電池4に挟んだときに正極集電板23とバイポーラ2次電池4との隙間、あるいは負極集電板21とバイポーラ2次電池4との隙間をなくすことができる。
【0065】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、複数の単位電池を積層して構成されたバイポーラ2次電池に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態に係るバイポーラ2次電池の断面図である。
【図2】正極活物質および負極活物質の濃度分布を示すグラフである。
【図3】正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときにおける、バイポーラ2次電池の入出力値(電流量)の分布を示すグラフである。
【図4】各電極シートについて、出力される電圧分布を示すグラフである。
【図5】正極活物質および負極活物質の濃度分布を図2に示すように設定したときの、バイポーラ2電池の温度分布を示すグラフである。
【図6】バイポーラ2次電池の端面に位置する電極シート25の出力を基準出力として、各電極シート25の出力が、基準出力となるように各電極シート25の正極および負極に含まれる正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの濃度分布を示すグラフである。
【図7】図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、各電極シートの出力電流を示すグラフである。
【図8】図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、各電極シートの出力電圧を示すグラフである。
【図9】図6の示すように、正極活物質および負極活物質の濃度を設定したときの、バイポーラ2次電池内の温度分布を示すグラフである。
【図10】バイポーラ2次電池の中央部と端面との間に位置する電極シートの出力を基準出力として、他の電極シートの正極活物質および負極活物質の濃度分布を示すグラフである。
【図11】図10に示すように、正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたときの各電極シートの出力電流を示すグラフである。
【図12】図10に示すように、正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたときの各電極シートの出力電圧を示すグラフである。
【図13】図10のように正極活物質および負極活物質の濃度が設定されたバイポーラ2次電池の積層方向の温度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
4 バイポーラ2次電池、21 負極集電板、23 正極集電板、25,25n1,25nm 電極シート、26 負極、27 電解質層、28 正極、29 集電箔、30 バイポーラ電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成された電解質層と、前記電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、前記電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する単位電池と、
前記単位電池間に設けられた導電層とを備え、前記単位電池および前記導電層を複数積層した2次電池であって、
前記2次電池内の温度分布に応じて、前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を設定する、2次電池。
【請求項2】
前記単位電池は、第1単位電池と、前記第1単位電池より温度が高くなる第2単位電池とを含み、
前記第1単位電池の前記正極活物質および前記負極活物質の濃度よりも、前記第2単位電池の前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を低くする、請求項1に記載の2次電池。
【請求項3】
前記正極は、第1添加物をさらに含み、
前記負極は、第2添加物をさらに含み、
前記2次電池内の温度分布に応じて、前記第1添加物および前記第2添加物の添加量を設定する、請求項1に記載の2次電池。
【請求項4】
板状に形成された電解質層と、前記電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、前記電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する電池と、前記単位電池および導電膜を複数積層した2次電池であって、
前記単位電池間に配置された導電層と、
を備え、前記単位電池および前記導電層を複数積層した2次電池であって、
前記単位電池の積層方向に位置する前記2次電池の端面側から内方に向かうに従って前記単位電池の温度が高くなると共に、前記正極に含まれる正極活物質および前記負極に含まれる負極活物質の濃度が低くなる、2次電池。
【請求項5】
前記単位電池の積層方向の内方に位置する前記単位電池の出力を基準出力として、前記各単位電池の出力が前記基準出力となるように、前記各単位電池の正極および負極に含まれる前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を設定した、請求項4に記載の2次電池。
【請求項6】
前記端面に位置する前記単位電池の出力を基準出力として、前記各単位電池の出力が前記基準出力となるように、前記各単位電池の正極および負極に含まれる前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を設定した、請求項4に記載の2次電池。
【請求項1】
板状に形成された電解質層と、前記電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、前記電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する単位電池と、
前記単位電池間に設けられた導電層とを備え、前記単位電池および前記導電層を複数積層した2次電池であって、
前記2次電池内の温度分布に応じて、前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を設定する、2次電池。
【請求項2】
前記単位電池は、第1単位電池と、前記第1単位電池より温度が高くなる第2単位電池とを含み、
前記第1単位電池の前記正極活物質および前記負極活物質の濃度よりも、前記第2単位電池の前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を低くする、請求項1に記載の2次電池。
【請求項3】
前記正極は、第1添加物をさらに含み、
前記負極は、第2添加物をさらに含み、
前記2次電池内の温度分布に応じて、前記第1添加物および前記第2添加物の添加量を設定する、請求項1に記載の2次電池。
【請求項4】
板状に形成された電解質層と、前記電解質層の第1主表面上に形成され正極活物質を含む正極と、前記電解質層の第2主表面上に形成され負極活物質を含む負極とを有する電池と、前記単位電池および導電膜を複数積層した2次電池であって、
前記単位電池間に配置された導電層と、
を備え、前記単位電池および前記導電層を複数積層した2次電池であって、
前記単位電池の積層方向に位置する前記2次電池の端面側から内方に向かうに従って前記単位電池の温度が高くなると共に、前記正極に含まれる正極活物質および前記負極に含まれる負極活物質の濃度が低くなる、2次電池。
【請求項5】
前記単位電池の積層方向の内方に位置する前記単位電池の出力を基準出力として、前記各単位電池の出力が前記基準出力となるように、前記各単位電池の正極および負極に含まれる前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を設定した、請求項4に記載の2次電池。
【請求項6】
前記端面に位置する前記単位電池の出力を基準出力として、前記各単位電池の出力が前記基準出力となるように、前記各単位電池の正極および負極に含まれる前記正極活物質および前記負極活物質の濃度を設定した、請求項4に記載の2次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−27662(P2008−27662A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196981(P2006−196981)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]