説明

2部材の連結装置

【課題】第1部材に対し、それに外嵌した第2部材を、軽い力で容易に、かつ強固に固定しうるようにした2部材の連結装置を提供する。
【解決手段】第1部材12の連結片15に外嵌される第2部材の被連結片21に、後向U字状の切欠き溝25を設け、この切欠き溝25により囲まれた部分を弾性片26として、この両弾性片26を締付ハンドル37により第1部材12の連結片15の外側面に圧接させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物品載置用什器や壁面等に装着したアームの先端部に、物品載置用のトレーやディスプレイ等のオプション部材を、上下方向に回動可能、かつ所定の回動角度で固定可能に取り付ける際に使用される2部材の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の一般的な連結装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、1対の昇降フレームの先端部に、下向きコ字状の天板支持フレームを、上下に回動可能に枢着し、昇降フレームと天板支持フレームとに挿通したボルトの一端部に螺合した固定用ハンドルを締め付けることにより、天板支持フレームの折曲げ部を昇降フレームの外側面に圧接させて、天板支持フレームを所定の回動角度に固定するようにしたものや、特許文献2に開示されているように、アームの先端部に取り付けたコ字状断面の取付金具に、事務機器取付板を取り付けたコ字状断面の連結片部を外嵌し、これらを、ボルトとナットにより、上下に相対回動可能に連結し、ボルトを締め付けて連結片部の両側片を取付金具の外側面に圧接させることにより、連結片部を所定の回動角度に固定しうるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−253930号公報
【特許文献2】特開平11−63382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載されている連結装置は、固定用ハンドルを回動操作して昇降フレームの外面に圧接させる際に、コ字状の天板支持フレームの折曲げ部全体を内向きに弾性変形させなければならず、また、特許文献2に記載されている連結装置においても、取付金具に外嵌したコ字状断面の連結片部の両側片全体を、ボルトにより内向きに弾性変形させて取付金具の外面に圧接させなければならないので、いずれの連結装置も、天板支持フレーム及び連結片部を強固に固定するためには、固定用ハンドル及びボルトを強い力で締め付ける必要があり、使い勝手が悪いという問題がある。
【0005】
この問題を解決するためには、天板支持フレームの折曲げ部及び連結片部の両側片を長寸とし、両部材の連結軸から大きく離間する先端部付近を、固定用ハンドル及びボルトで締め付けるようにすることも考えられるが、このようにすると、天板支持フレーム及び連結片部が大型化して重くなるので好ましくない。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、第1部材に対し、それに外嵌した第2部材を、この第2部材を大きくしたりすることなく、軽い力で容易に、かつ強固に固定しうるようにするとともに、第1、第2部材を小型化することができるようにした2部材の連結装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の2部材の連結装置は、
2つの部材を上下方向に相対回動可能、かつ所定の回動角度に固定可能に連結する2部材の連結装置であって、
互いに対向する1対の連結片を有するコ字状断面の第1部材と、
前記第1部材の両連結片に外嵌される1対の被連結片を有するコ字状断面をなし、かつ前記両被連結片の所定領域を、切込み溝により囲まれた厚さ方向に弾性変形可能な弾性片とした第2部材と、
前記第1部材の両連結片と前記第2部材の両被連結片における前記弾性片の基端部付近同士を相対回動可能に連結する第1の連結軸と、
前記第1部材の両連結片と第2部材の両弾性片とを前記第1の連結軸を中心とする回動角度を調整可能に連結する第2の連結軸と、
前記第2の連結軸に設けられ、前記両弾性片を内向きに弾性変形させて前記第1部材の両連結片の外面に圧接させることにより、前記第1部材と第2部材とを所定の回動角度に固定する締付手段と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、第1部材の連結片に外嵌される第2部材の被連結片の一部を、切欠き溝により囲まれた弾性片として、第1部材の連結片の外側面に圧接させるようにしているので、第2部材の被連結片全体を内向きに弾性変形させる必要がない。従って、締付手段を軽い力で締め付けるだけで、第2部材に第1部材を強固に固定することができる。
【0008】
本発明の2部材の連結装置は、
前記切込み溝を、第1の連結軸付近から第2の連結軸付近までの領域に形成された側面視でU字状またはコ字状をなすものとし、前記切込み溝により囲まれた領域が前記弾性片となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、両弾性片を内向きに弾性変形させやすくなるので、第1の連結軸と、第2の連結軸とを近づけることができる。その結果、第1部材の連結片と第2部材の被連結片の長さを小さくすることができ、第1部材と第2部材を小型化することが可能となる。
【0009】
本発明の2部材の連結装置は、
前記第2の連結軸を、第1部材の両連結片と第2部材の両弾性片とに挿通された連結ボルトとし、この連結ボルトと、その一方の突出端部の雄ねじ部に螺合した締付ハンドルとにより、前記締付手段を構成したことを特徴としている。
この特徴によれば、第2の連結軸が締付手段の一部を兼ねるので、締付手段の構成が簡単となるとともに、締付ハンドルを回動操作するだけで、第1部材と第2部材とを所定の回動角度に容易に調節することができる。
【0010】
本発明の2部材の連結装置は、
前記第1の連結軸に、第2部材の両被連結片の対向面間の間隔を一定とする第1のスペーサを嵌合したことを特徴としている。
この特徴によれば、第2部材の両被連結片の対向面間の間隔が第1のスペーサにより一定に保持されているので、連結ボルトにより第2部材の両被連結片を強く締め付けても、両被連結片が第1部材の連結片の外面に圧接することがなく、従って、第1部材と第2部材との相対回動が円滑となる。
【0011】
本発明の2部材の連結装置は、
前記第2の連結軸に、第1部材の連結片の対向面間の間隔を一定とする第2のスペーサを嵌合したことを特徴としている。
この特徴によれば、第1部材の両連結片間の間隔は、第2のスペーサにより一定に保持されているので、締付手段の締め付け時に、両弾性片のみを内向きに効果的に弾性変形させることができ、第1部材の外側面に両弾性片が強く圧接するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の連結装置を適用した物品載置用什器の斜視図である。
【図2】連結装置と、その装着部材を下方より見た斜視図である。
【図3】同じく、連結装置と、その装着部材を左側方より見た斜視図である。
【図4】同じく、連結装置の分解斜視図である。
【図5】第2部材の斜視図である。
【図6】連結装置と、その装着部材の側面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う拡大横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る2部材の連結装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の連結装置を適用した物品載置用什器1の斜視図で、連結装置は、オプション部材の下面、例えば、パソコンのキーボード2(図3参照)等を載置するトレー3の下面に設けられている。
【0015】
物品載置用什器1における左右1対の支柱4、4の中間部の対向面同士を連結している左右方向の梁部材5の左端部には、トレー3を支持するアーム6の取付ブラケット7が取り付けられ、この取付ブラケット7の上下1対の前向片8、8により、支持アーム6の基端部が、上下方向を向く連結ボルト9と、その下端部に螺合した手回し可能な締付ハンドル10とにより水平回動可能、かつ任意の回動角度で固定可能に支持されている。
【0016】
図2〜図7に示すように、支持アーム6の先端部には、本発明の2部材の連結装置11が装着されている。この連結装置11は、正面視上向きコ字状をなす第1部材12と、この第1部材12に外嵌される第2部材13とを備えている。
【0017】
第1部材12は、斜め前上方を向く基片14と、その両側縁より起立する左右1対の連結片15、15と、両連結片15の上端に連設された外向きのフランジ片16、16とからなり、両フランジ片16の上面には、トレー3の中央部下面が複数のボルト17により固定されている。
【0018】
また、両連結片15には、円形の軸孔18、18と、それと対向する後方に、軸孔18を中心とする円弧状の長孔19、19とが形成されている。
【0019】
図5に示すように、第2部材13は、垂直の基片20と、その両側縁より前向きに延出する左右1対の被連結片21、21と、基片20の上縁と下縁より後向きに延出する上下1対の取付片22、22とを備えている。
【0020】
上下の取付片22間に支持アーム6の先端部を挟入し、それら同士を、取付片22の角形をなす軸孔23と支持アーム6の図示しない軸孔に回り止めして挿入した連結ボルト24と、その下方の突出端部に螺合した手回し可能な締付ハンドル10とにより連結することにより、第2部材13は、支持アーム6の先端部に、水平回動可能、かつ支持アーム6に対し任意の角度で固定しうるように連結されている(図2参照)。
【0021】
第2部材13の左右の被連結片21、21には、前端部寄りに上下に離間する始点と終点を有する側面視で後向U字状のスリット状の切欠き溝25が形成され、この切欠き溝25により囲まれた両被連結片21の中央部には、前後方向に長い弾性片26、26が一体的に形成されている。両被連結片21における弾性片26の基端部と近接する前端部の上下方向の中央部と、弾性片26の後方寄りの中央部とには、それぞれ、円形の軸孔27と角形の軸孔28が、前後に対向するようにして形成されている。なお、切欠き溝25は、側面視でコ字状をなすものとしてもよい。
【0022】
第1部材12と第2部材13は、次のようにして連結されている。図4及び図7に示すように、まず第1部材12における左右の連結片15の軸孔18、18と長孔19、19とに、合成樹脂よりなる円筒形の鍔付きブッシュ29、30を外方より摺動可能に嵌合する。
【0023】
次いで、第1部材12の両連結片15に第2部材13の両被連結片21を外嵌した後、第2部材13の両被連結片21の前部の軸孔27、27と、第1部材12の両連結片15に嵌合した前部の鍔付きブッシュ29、29とに、第1の連結軸である連結ボルト31と軸状袋ナット32とを、左右両端が第2部材13の両被連結片21の対向面に当接する左右寸法の円筒形のスペーサ33に挿通させて嵌合し、連結ボルト31の先端部の雄ねじ部31aに、軸状袋ナット32の内面の雌ねじ32aを螺合させる。
【0024】
これにより、第1部材12と第2部材13の前端部同士は、上下方向に相対回動可能に連結される。この際、スペーサ33の両端が第2部材13の両被連結片21の対向面に当接し、両被連結片21の対向面間の間隔が一定に保持されているので、軸状袋ナット32を強く締め付けても、第2部材13の被連結片21が、第1部材12の連結片15の外面に圧接するのが防止され、第1部材12と第2部材13とが円滑に相対回動するようになる。
【0025】
次いで、第2部材13の左右の弾性片26、26に形成した角形の軸孔28と、第1部材12の両連結片15の長孔19に嵌合した鍔付きブッシュ29とに、第2の連結軸である長寸の連結ボルト34を、平ワッシャ35及び左右両端が第2部材13の両被連結片21の対向面に当接する左右寸法の円筒形のスペーサ36を介して一側方より挿入し、連結ボルト34の基端部に形成された角軸部34aを軸孔28に嵌合することにより、回り止めする。
【0026】
次いで、連結ボルト34の突出端部に形成された雄ねじ部34bに、手回し可能な締付ハンドル37の内部に一体的にモールド成形して固定されたナット38を、平ワッシャ39を介して螺合する。これにより、第1部材12と第2部材13とが連結され、締付ハンドル37を緩めた状態では、第2部材13に対し、第1部材12及びそれに取り付けたトレー3を、長孔19の長さの範囲だけ、前部の連結ボルト31と軸状袋ナット32を中心として、上下方向に回動させることができる。
【0027】
締付ハンドル37を締め付けると、その内側面と連結ボルト34の頭部とにより、左右の弾性片26、26が前方の基端部を中心として内向きに弾性変形させられることにより、両弾性片26の内側面が、第1部材12の左右の連結片15に嵌合した鍔付きブッシュ29の外面に圧接して、両鍔付きブッシュ29を左右両側より強く挟持する。これにより、第2部材13に対し、第1部材12及びそれに取り付けたトレー3を所定の回動角度で固定することができる。この際、第1部材12の両連結片15間の間隔は、スペーサ36により一定に保持されているので、締付ハンドル37の締め付け時に、両弾性片26のみが内向きに効果的に弾性変形し、第1部材12の左右の鍔付きブッシュ29の外側面に強く圧接するようになる。
【0028】
以上説明したように、前記実施例の連結装置11においては、第1部材12の連結片15に外嵌される第2部材の被連結片21に、後向U字状の切欠き溝25を設け、この切欠き溝25により囲まれた部分を弾性片26として、第1部材12の連結片15の外側面に圧接させるようにしているので、第2部材の被連結片21全体を内向きに弾性変形させる必要がない。従って、締付ハンドル37を軽い力で締め付けるだけで、第2部材13に第1部材12を強固に固定することができる。
【0029】
また、弾性片26の基端部付近において、第1部材12の連結片15と第2部材13の被連結片21とを、第1の連結軸である連結ボルト31と軸状袋ナット32により連結しているので、両弾性片26を内向きに弾性変形させやすくなり、従って前部の連結ボルト31と、第2の連結軸である後部の連結ボルト34とを近づけることができる。その結果、第1部材12の連結片15と第2部材13の被連結片21の前後寸法を小さくすることができ、第1部材12と第2部材13を小型化することが可能となる。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0031】
例えば、前記実施例では、第2部材13の左右の弾性片26を、第1部材12の連結片15の長孔19に嵌合した鍔付きブッシュ30の外面に圧接するようにしているが、このような鍔付きブッシュ30を省略して、左右の弾性片26を、第1部材12の連結片15の外側面に直接圧接するようにしてもよい。
【0032】
また、前記実施例では、第2部材13の被連結片21に、側面視後向U字状の切欠き溝25を設け、それにより囲まれた弾性片26を、前端部を中心として弾性変形するものとしたが、切欠き溝25を前後反対向きとして、それにより囲まれた弾性片26が後端部を中心として弾性変形するものとしてもよい。この際には、第1部材12の軸孔18と長孔19、及び第2部材13の軸孔27、28を、それぞれ前後反対として設ければよい。
【0033】
さらに、前記実施例では、第1部材12と第2部材13の前端部同士を連結する第1の連結軸として、連結ボルト31と軸状袋ナット32を用いているが、軸状袋ナット32を用いないで、連結ボルト31を長寸とし、第2部材13の被連結片21よりの突出端部に、単にナットを螺合してもよく、また、ナットを省略して、連結ボルト31の突出端をかしめたり、スナップリング等を用いて抜け止めするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 物品載置用什器
11 連結装置
12 第1部材
13 第2部材
15 連結片
21 被連結片
22 取付片
24 連結ボルト
25 切欠き溝
26 弾性片
31 連結ボルト(第1の連結軸)
31a 雄ねじ部
32 軸状袋ナット(第1の連結軸)
32a 雌ねじ部
33 スペーサ
34 連結ボルト(第2の連結軸)
36 スペーサ
37 締付ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材を上下方向に相対回動可能、かつ所定の回動角度に固定可能に連結する2部材の連結装置であって、
互いに対向する1対の連結片を有するコ字状断面の第1部材と、
前記第1部材の両連結片に外嵌される1対の被連結片を有するコ字状断面をなし、かつ前記両被連結片の所定領域を、切込み溝により囲まれた厚さ方向に弾性変形可能な弾性片とした第2部材と、
前記第1部材の両連結片と前記第2部材の両被連結片における前記弾性片の基端部付近同士を相対回動可能に連結する第1の連結軸と、
前記第1部材の両連結片と第2部材の両弾性片とを前記第1の連結軸を中心とする回動角度を調整可能に連結する第2の連結軸と、
前記第2の連結軸に設けられ、前記両弾性片を内向きに弾性変形させて前記第1部材の両連結片の外面に圧接させることにより、前記第1部材と第2部材とを所定の回動角度に固定する締付手段と、
を備えることを特徴とする2部材の連結装置。
【請求項2】
前記切込み溝を、第1の連結軸付近から第2の連結軸付近までの領域に形成された側面視でU字状またはコ字状をなすものとし、前記切込み溝により囲まれた領域が前記弾性片となっていることを特徴とする請求項1に記載の2部材の連結装置。
【請求項3】
前記第2の連結軸を、第1部材の両連結片と第2部材の両弾性片とに挿通された連結ボルトとし、この連結ボルトと、その一方の突出端部の雄ねじ部に螺合した締付ハンドルとにより、前記締付手段を構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の2部材の連結装置。
【請求項4】
前記第1の連結軸に、第2部材の両被連結片の対向面間の間隔を一定とする第1のスペーサを嵌合したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の2部材の連結装置。
【請求項5】
前記第2の連結軸に、第1部材の連結片の対向面間の間隔を一定とする第2のスペーサを嵌合したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の2部材の連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111362(P2013−111362A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262046(P2011−262046)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】