説明

ALC壁の断熱構造

【課題】
ALC壁への断熱材の取付け及び解体の際のALC壁からの断熱材の分離がともに容易なALC壁の断熱構造を提供する。
【解決手段】
ALC壁1の屋内側に板状の断熱材2が後張りで設けられてなる断熱構造であって、断熱材2をALC用ビス3によりALC壁1に留め付けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALC(autoclaved light weight concrete)壁の断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化の対策として、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出を削減する必要があるとの認識が高まり、その一環として省エネルギーにより温室効果ガスの排出を削減することが要望されている。そして、建築物における省エネルギーでは、壁や窓等を通じての熱損失を防止すべく、従来にも増して断熱性の向上が望まれている。
【0003】
従来の建物の壁の断熱手段として、例えば、壁の屋内側等に、断熱材であるポリウレタンフォームをスプレー等により吹き付ける工法や(例えば、特許文献1参照)、内壁ボードと断熱パネルとが一体になった断熱内壁ボードを用いる工法がある。
【0004】
【特許文献1】特開平11−29995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポリウレタンフォームを吹き付ける工法では、吹き付けたポリウレタンフォームを乾燥させるために、吹付け後に他の施工も中断して養生期間を設けなければならず、また、その養生期間も天候等によって延長することがあり、その結果、施工期間が長びくおそれがある。また、ポリウレタンフォームの吹付け施工には専門の業者や設備が必要であり、施工コストもかかるという問題がある。更に、乾燥させたポリウレタンフォームは壁材等から容易に分離できないので、建物を解体する際に壁材等をリサイクル資源として活用し難いという問題もある。
【0006】
一方、断熱内壁ボードは自重が大きいので、壁の構造部材等に強固に固定する必要があり、また、その内壁面では不陸の調整も必要である。また、最近では耐震性の向上という観点から、ALC壁においては、ALCボードを構造部材に強固に固定せずに、地震の揺れに応じて謂わばガタツキ可能に固定している。このようなALC壁に断熱内壁ボードを直接固定すれば、地震の際にALCボードのガタツキにより断熱内壁ボードの固定が外れ、屋内側に倒れることが懸念される。一方、断熱内壁ボードをALC壁に強固に固定すれば、該断熱内壁ボードによりALCボードのガタツキが制止されて、耐震性に影響を与える。
【0007】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、ALC壁への断熱材の取付け及び解体の際のALC壁からの断熱材の分離がともに容易なALC壁の断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ALC壁の屋内側に板状の断熱材が後張りで設けられてなる断熱構造であって、前記断熱材を固着具により前記ALC壁に留め付けたことを特徴とする。固着具は、断熱材をALC壁に簡易に留め付けられるものであれば特に限定されないが、代表的なものとして、例えば、ビス、アンカーボルト、釘、ネジ、接着剤、両面テープ等がある。
【0009】
また、本発明は、前記固着具が、断熱材を貫通してALC壁に貫入されるものであり、好ましくは、ビスである。なお、断熱材を貫通してALC壁に貫入される固着具としては、ビスの他、アンカーボルト、釘、ネジ等がある。
【0010】
また、本発明は、前記ビスのネジ部が挿通されるとともに該ビスの頭部が係止する挿通孔が穿設された固定盤が、前記断熱材を前記ALC壁に留め付けたビスの頭部と該断熱材との間に介設されたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記ビスと固定盤とが、予め一体にされたものである。ビスと固定盤とが一体にされたとは、溶接や接着のようにビスに対して固定盤が完全に固着されて一体にされたもののほか、ビスと固定盤とが嵌め合い構造により、回転や移動可能に一体とされたものをも含む。
【0012】
また、本発明は、前記固定盤から突出して前記断熱材に貫入する爪が設けられたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記固着具が、前記断熱材を貫通してALC壁の下孔に貫入するアンカー部と、該アンカー部の基端側に設けられて前記断熱材の屋内側面と圧接する平板部とを備えたアンカーボルトであり、好ましくは、アンカー部と平板部とが一体成形された合成樹脂製のものである。
【0014】
また、本発明は、前記固着具が、接着剤又は両面テープであり、好ましくは、前記断熱材の所定箇所が固着具により前記ALC壁に部分的に留め付けられたものである。
【0015】
また、本発明は、前記断熱材の屋内側に、該断熱材と独立して内壁材が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る断熱構造によれば、断熱材を固着具によりALC壁に留め付けているので、断熱材をALC壁へ取り付ける作業、及び解体の際のALC壁から分離する作業がともに容易となる。特に、前記固着具として、ビスのように、断熱材を貫通してALC壁に貫入されるものを用いることにより、ALC壁に下孔を穿つことなく断熱材を取り付けることができるので、取付作業が簡便である。
【0017】
また、本発明によれば、前記ビスのネジ部が挿通されるとともにビスの頭部が係止する挿通孔が穿設された固定盤が、前記断熱材を前記ALC壁に留め付けたビスの頭部と該断熱材との間に介設されたので、ビスの頭部により断熱材の表面に作用する留付け力が固定盤により分散される。従って、例えば発泡合成樹脂のように容易に塑性変形する断熱材を用いた場合に、該断熱材にビスをねじ込む際の押圧力により断熱材を損傷することがない。また、前記ビスと固定盤とが、予め一体にされることにより、固定盤を仮止め等する必要がなく、施工が容易となる。
【0018】
また、本発明によれば、前記固定盤から突出して前記断熱材に貫入する爪が設けられたので、断熱材の表面における固定盤の位置決めが容易となる。
【0019】
また、本発明によれば、前記固着具が、前記断熱材を貫通してALC壁の下孔に貫入するアンカー部と、該アンカー部の基端側に設けられて前記断熱材の屋内側面と圧接する平板部とを備えたアンカーボルトとしたので、前述と同様に、断熱材を損傷することなく留め付けることができる。また、該アンカーボルトを、アンカー部と平板部とが一体成形された合成樹脂製のものとすることにより、アンカーボルトによるALC壁から屋内側への熱伝導を抑制することができる。
【0020】
また、本発明によれば、前記固着具が、接着剤又は両面テープであり、好ましくは、前記断熱材の所定箇所が固着具により前記ALC壁に部分的に留め付けられたので、ALC壁に下孔を穿つことなく容易に断熱材を取り付けることができる。
【0021】
また、本発明によれば、前記断熱材の屋内側に、該断熱材と独立して内壁材が設けられたので、地震の揺れに対してガタツキ可能に固定されたALC壁において、そのガタツキが断熱材を介して内壁材に伝達されることがなく、地震の際の安全性が高まることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るALC壁の断熱構造の概略であるが、図に示すように、建築物の躯体としてALC壁1が形成されており、該ALC壁1の屋内側に断熱材2が設けられている。
【0023】
ALC壁1は、図2に示すように、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」という。)が所定寸法の矩形のパネルに形成されてなるALCパネル10が、H型の鋼材11に適宜ファスナを用いてボルト等により固定されて、建築物の外壁を構成している。ALCパネル10や鋼材11は特に限定されるものではないが、図に示すように、鋼材11間に横長矩形のALCパネル10が同一面の壁を形成するように積み重ねられ、各ALCパネル10間に防水シーリング等がなされて、ALC壁1が構成されるのが一般的である。また、該ALCパネル10は、例えばALCパネル10の両端の各1箇所において鋼材11と固定されることにより、地震により鋼材11が上下に震動した際にガタツキ可能であり、これにより、地震の揺れを吸収して建築物の耐震性を向上している。なお、鋼材12の上側には梁等の構造部材が配設されているが、図においては説明の便宜上省略している。また、本実施の形態では、鋼材11に断熱を施工していないが、鋼材11を適宜断熱材で被覆してもよい。
【0024】
断熱材2は、スチレン樹脂やポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂の発泡体からなる板状のものであり、押出発泡成形されたスチレン樹脂からなるものが、軽量で適度な強度を有し、且つ断熱性が高いので好適である。断熱材2の大きさや厚みは特に限定されるものではないが、前記ALCパネル10の寸法が規格化されていれば、その寸法にあわせて断熱材2の形状や寸法を規格化することができる。例えば、一対の鋼材11間のALC壁1に対して矩形の断熱材2を上下2段に各3枚の計6枚を配設するようにして、各断熱材2の大きさを設定すればよい。また、断熱材2の厚みは、求められる断熱性能に応じて適宜設定すればよい。なお、隅部や窓周り等のように規格化された断熱材2で対応できない箇所は、断熱材2を現場で所定の寸法に裁断すればよい。
【0025】
前記断熱材2は、該断熱材2を貫通してALC壁1に貫入される固着具により、ALC壁1に留め付けられるが、以下、ALC用ビス3を例に前記断熱材2の留付けについて説明する。
【0026】
図3及び図4は、断熱材2を留め付けるためのALC用ビス3及び固定盤4を示すものであるが、ALC用ビス3は、図3に示すように、雄ネジが形成されたネジ部30と、該ネジ部30の基端で径方向に突出した頭部31とからなるものである。ネジ部30はALCパネル10に貫入されてネジ山がALCパネル10内部で引抜抵抗を発揮するものであり、ALCパネル10が木材や通常のコンクリートより脆弱であることを考慮して、一般的なビスよりネジ山が大きく形成されている。頭部31は断熱材2を押え付けるためのものであり、図には示していないが、基端面にはドライバ等の工具が嵌合される溝が形成されている。なお、本実施の形態では、断熱材2の留付け力が大きいALC用ビス3を用いているが、一般的なビスを用いて断熱材2を留め付けることも勿論可能である。
【0027】
固定盤4は、図4に示すように、円盤状の薄板であり、その中心に前記ALC用ビス3のネジ部30が挿通可能であり、且つ頭部31が通過できずに周縁に係止する径の挿通孔40が穿設されている。該挿通孔40の周囲は、ALC用ビス3の頭部31の形状に合わせて凹陥されており、該凹陥に頭部31がはまり込むようにして係止されるまた、固定盤4には、断熱材4と当接する面、即ち裏面に該断熱材4に貫入可能な爪41が突設されている。該爪41は、固定盤4にV字状の切込みを形成して該切込み部分を曲げ起こすことにより形成されたものであり、固定盤4の複数の位置に均等な設けられている。
【0028】
なお、固定盤4の形状は円盤に限定されるものではなく、また、強度を向上させるために適宜湾曲や折曲げを形成する等は任意であり、鋼板や合成樹脂の成形品等を用いて作製することができる。また、本実施の形態ではALCビス3の頭部31の形状に合わせて固定盤4の挿通孔40の周囲が凹陥されているが、例えばALCビス3の頭部31が平板状であれば挿通孔40の周囲を凹陥させる必要はない。また、ALCビス3と固定盤4とは必ずしも別部材である必要はなく、ALCビス3と固定盤4とを溶接や接着剤、嵌め合い構造等により予め一体にしておけば、固定盤4を別途位置決めする必要がなく、施工が容易となる。
【0029】
断熱材2を留め付ける際には、先ず、断熱材2をALC壁1の屋内側の所定位置に配置する。例えば、図2に示すように、鋼材11間のALC壁1に配置する場合には、断熱材2の下端を床スラブに密着させ、側端を鋼材11に密着させ、且つ、断熱材2とALC壁1と密着させて配置する。
【0030】
次に、図5に示すように、該断熱材2の表面の所定位置に固定盤4を位置せしめる。前述したように、固定盤4には爪41が突設されているので、断熱材2に固定盤4を押し付ければ該爪41が断熱材2に貫入するので、容易に仮止めができる。固定盤4の位置は、断熱材2の留付け位置であり、施工時の留付け作業及び解体時の分離作業の便宜を考慮すると、例えば寸法が3尺×6尺の1枚の断熱材2に対して4,5箇所で留め付けることが好適である。勿論、断熱材2の大きさに合わせて留付け位置は適宜増減すればよい。本実施の形態では、1枚の断熱材2を、その4隅付近と中央付近との5箇所で留め付けている。固定盤4は、各留め付け位置においてALC用ビス3をねじ込む毎に仮止めしても、予め5箇所すべての留付け位置に仮止めしておいてもよい。なお、留付け位置がALCパネル10の継ぎ目であると、ALC用ビス3を貫入しても十分な引抜抵抗が得られないおそれがあるので、ALCパネル10の継ぎ目は避ける方がよい。ALC壁1の屋内側からALCパネル10の継ぎ目は容易に目視確認できるので、前述したように断熱材2をALC壁1の屋内側に配置した状態で、固定盤4を仮止めする位置、即ち留付け位置がALCパネル10の継ぎ目であるか否かの確認は容易である。
【0031】
次に、仮止めした固定盤4の挿通孔40にALC用ビス3のネジ部30を挿通し、断熱材2を貫通してALCパネル10に貫入するようにねじ込む。ALC用ビス3のねじ込みにはドライバ等の工具を用いて行う。これにより、図6に示すように、ALC用ビス3及び固定盤4により、断熱材2がALC壁1に留め付けられる。ALC用ビス3は、ALCパネル10に下孔を穿つことなく貫入できるので、断熱材2の表面から下孔の位置確認等を行う必要がなく、留付け作業が簡便である。また、ALC用ビス3をねじ込んで断熱材2を留め付ける際に、頭部31が断熱材2の表面を押圧するが、その頭部31の押圧力や、断熱材2を留め付けるための留付け力が固定盤4により分散されて断熱材2の表面に伝達する。従って、ALC用ビス3で留め付ける際に断熱材2を塑性変形させたり、損傷させることがない。このALC用ビス3による留付けを断熱材2の4隅付近と中央付近の5箇所で行い、断熱材2をALC壁1に取り付ける。他の断熱材2も順次隙間なく並べて、同様にALC用ビス3でALC壁1に取り付ける。なお、必要であれば断熱材2は所定の寸法に裁断する。
【0032】
ALC壁1の屋内側に断熱材2を取り付けた後、内壁材として、内壁枠、内壁パネル、壁紙等が設けられるが、これら内壁材は前記断熱材2と独立して設けられる。詳細には、図7に示すように、コの字状のランナー50を、前記断熱材2より屋内側に離間させて床及び天井に配置して鋼材11に固定し、該ランナー50にスタッド51を立て付けて内壁枠5を構成する。該内壁枠5に石膏ボード等の内壁パネル6を固定し、該内壁パネル6に壁紙等の化粧材(不図示)を配設する。このように、断熱材2と独立して内壁枠5や内壁パネル6等の内壁材を設けることにより、地震の揺れに対してガタツキ可能に固定されたALCパネル1のガタツキが、断熱材2を介して各種内壁材に伝達されることがないので、ALCパネル1のガタツキによる内壁材の倒壊の恐れがない。また、内壁材が独立して配設されているので、断熱材2の屋内側の面において不陸を調整する必要はない。
【0033】
このように、本実施の形態に係るALC壁の断熱構造によれば、断熱材2をALC用ビス3によりALC壁1に留め付けているので、断熱材2をALC壁1へ取り付ける作業、及び解体の際のALC壁1から分離する作業がともに容易となる。なお、本実施の形態においては、1枚の断熱材2を5箇所で留め付けているが、留付け位置は断熱材2の大きさや重量等に合わせて適宜変更可能である。また、ALC壁1や内壁材の構成は一例であり、他の周知のALC壁や内壁材の構成に変更することも勿論可能である。
【0034】
以下、本発明の第2の実施の形態に係るALC壁の断熱構造について説明する。本実施の形態に係る断熱構造は、前記第1の実施の形態に係るALC壁の断熱構造のALC用ビス3及び固定盤4に代えてアンカーボルト7を用いたものであり、その他の部材は前記第1の実施の形態と同様であり、各図において前記第1の実施の形態と同一の符号のものは同一の部材を示している。
【0035】
図8は、アンカーボルト7を示すものであるが、図に示すように、アンカーボルト7は、断熱材2を貫通してALC壁1に貫入するアンカー部70と、該アンカー部70の基端に設けられた平板部71とを備えてなるものである。アンカー部70は、軸72の先端側に円盤状の突片73が径方向へ突出するようにして並設されてなり、該突片73は、ALC壁1へ貫入された際に変形可能な程度の厚さであり、必要に応じて切込み或いは切欠きが適宜形成されている。平板部71は、軸72の基端から径方向に突出するように設けられた円盤状のものであり、平板部71の中心と軸72とが対応している。このようなアンカー部70と平板部71とが合成樹脂により一体成形されてアンカーボルト7を構成している。
【0036】
以下、前記アンカーボルト7を用いた断熱材2の留付けについて説明する。
先ず、ALC壁1の屋内側における断熱材2の配置を、例えば図2に示したように決定し、該配置をALC壁1に墨等で記す。この配置に基づいて、ALC壁1の各断熱材2の留付け位置に下孔を穿つ。留付け位置は、前記第1の実施の形態と同様に、寸法が3尺×6尺の1枚の断熱材2に対して4,5箇所が好適であり、本実施の形態でも、1枚の断熱材2に対して、その4隅付近と中央付近との5箇所で留め付ける。従って、図9に示すように、1枚の断熱材2を配置するALC壁1の対応部分において、所定の5箇所に下孔12を穿つ。下孔12の径は、アンカーボルト7のアンカー部70の寸法に合わせて設定され、軸72の径より大きく、突片73の径より小さいものである。なお、第1の実施の形態と同様に、留付け位置はALCパネル10の継ぎ目を避ける方がよい。
【0037】
一方、断熱材2にも留付け位置となる5箇所を墨等で記しておく。該断熱材2をALC壁1に記した墨等に従って配置して、屋内側から断熱材2の各留付け位置に前記アンカーボルト7を打ち込む。断熱材2は合成樹脂の発泡体なので、数センチメートル程度のものであれば下孔を穿つことなくアンカーボルト7を貫通できるが、断熱材2が比較的厚い場合等の必要に応じて下孔を穿設してもよい。断熱材2を貫通させたアンカーボルト7を、平板部71が断熱材2の表面に圧接するまで、そのまま前記下孔12に貫入する。該下孔12に貫入されたアンカーボルト7のアンカー部70は、その突片73が下孔12の内部でALC壁1の屋内側へ反り返るように変形して下孔12の内面と圧接し、該突片73によりアンカー部70に引抜抵抗が生じて、断熱材2を留め付けることができる。
【0038】
なお、アンカーボルト7の打ち込みは、手で圧入する他、ハンマー等の工具を用いてもよく、また、下孔12にねじ込むように回し入れてもよい。その際に、断熱材2の表面に押圧力や留付け力が作用するが、これらは平板部71により分散されて断熱材2の表面に伝達するので、断熱材2が塑性変形したり、損傷することがない。
【0039】
このアンカーボルト7による留付けを5箇所で行って断熱材2をALC壁1に取り付け、他の断熱材2もALC壁1の墨等に従って順次並べて、同様にアンカーボルト7でALC壁1に取り付ける。なお、ALC壁1の屋内側に断熱材2を取り付けた後に、内壁材を該断熱材2と独立して設ける点は前記第1の実施の形態と同様なので、詳細な説明は省略する。
【0040】
このように、本実施の形態に係るALC壁の断熱構造によれば、断熱材2をアンカーボルト7によりALC壁1に留め付けているので、断熱材2をALC壁1へ取り付ける作業、及び解体の際のALC壁1から分離する作業がともに容易となる。また、アンカーボルト7が、アンカー部70と平板部71とが一体成形された合成樹脂製のものなので、アンカーボルト7を介したALC壁1から屋内側への熱伝導を抑制できる。
【0041】
なお、本実施の形態で示したアンカーボルト7は一例であり、例えば、図10に示すアンカーボルト7Aのように、アンカー部74の軸75が中空の筒状であって、その先端から基端側へ切欠き75aが形成されており、平板部76の基端面から軸75の中空へ径大のピン77を挿入することにより、切欠き75aが開いて軸75が拡径し、径方向に突出された突起78が下孔12に圧接して引抜抵抗を生じさせるものや、図には示していないが、基端面にドライバ等の工具が嵌合される溝が形成されて下孔にねじ込むもの等、その他の形状のものを用いることができる。
【0042】
また、本実施の形態では、ALC壁1及び各断熱材2の留付け位置を墨等で記して下孔12を穿っているが、ALC壁1に断熱材2を配置した状態で、該断熱材2の屋内側からドリル等の工具により断熱材2及びALC壁1の両方に下孔を穿つようにすれば、墨出しが不要となるので施工を簡略化できる。この場合、両面テープ等で断熱材2をALC壁1に仮止めすれば、下孔を穿つ際に断熱材2の位置がずれないので好ましい。
【0043】
以下、本発明の第3の実施の形態に係るALC壁の断熱構造について説明する。本実施の形態に係る断熱構造は、前記第1の実施の形態に係るALC壁の断熱構造のALC用ビス3及び固定盤4に代えて接着剤を用いたものであり、その他の部材は前記第1の実施の形態と同様であり、各図において前記第1の実施の形態と同一の符号のものは同一の部材を示している。
【0044】
以下、接着剤を用いた断熱材2の留付けについて説明する。
先ず、ALC壁1の屋内側における断熱材2の配置を、例えば図2に示したように決定し、該配置をALC壁1に墨等で記す。この配置に基づいて、各断熱材2の留付け位置に接着剤8を塗布する。留付け位置は、前記第1の実施の形態と同様に、1枚の断熱材2に対して4,5箇所が好適であり、本実施の形態でも、1枚の断熱材2に対して、その4隅付近と中央付近との5箇所で留め付ける。従って、図11に示すように、1枚の断熱材2を配置するALC壁1の対応部分において、所定の5箇所に接着剤8を塗布する。接着剤8は、ALCボード10及び断熱材2に容易に塗布できるものであれば任意である。
【0045】
つぎに、断熱材2をALC壁1に記した墨等に従って配置してALC壁1に押し付ける。ALC壁1の他の箇所にも同様に接着剤8を塗布して断熱材2を配設し、所定枚数の断熱材2を配設した後、所定期間養生する。これにより、接着剤8がALCボード10及び断熱材2に圧着して、各断熱材2をALC壁1に留め付けることができる。なお、ALC壁1の屋内側に断熱材2を取り付けた後に、内壁材を該断熱材2と独立して設ける点は前記第1の実施の形態と同様なので、詳細な説明は省略する。また、接着剤8による留付け位置には、それ程高い精度が要求されないので、ALC壁1への墨付けは省略してもよい。
【0046】
このように、本実施の形態に係るALC壁の断熱構造によれば、断熱材2を接着剤8により部分的にALC壁1に留め付けているので、ALC壁1に下孔を穿つことなく断熱材2を取り付けることができ、断熱材2をALC壁1へ取り付ける作業、及び解体の際のALC壁1から分離する作業がともに容易である。なお、本実施の形態では、接着剤8をALC壁1に塗布したが、断熱材2の裏面に塗布してALC壁1の屋内側の所定位置に配設してもよい。また、図12に示すように、接着剤8に代えて両面テープ10をALC壁1の所定の5箇所に貼り付けて、断熱材2を留め付けてもよい。両面テープ9を用いれば養生期間が不要なので、前述した効果に加えて施工期間が短くなるという利点がある。
【0047】
なお、前記実施の形態では、断熱材を貫通してALC壁に貫入される固着具としてALC用ビス3やアンカーボルト7を例に説明したが、この他、釘やネジ等を用いても同様の効果が得られる。また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で実施形態を適宜変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るALC壁の断熱構造を示す横断面図である。
【図2】ALC壁1及び断熱材2の構成を示す斜視図である。
【図3】ALC用ビス3の構成を示す平面図である。
【図4】固定盤4の構成を示す正面図及び側面図である。
【図5】留付け位置を示す拡大正面図である。
【図6】断熱材2を留め付けた状態を示す縦断面図である。
【図7】内壁材の構成を示す斜視図である。
【図8】アンカーボルト7の構成を示す斜視図である。
【図9】アンカーボルト7による断熱材2の留付け方法を示す斜視図である。
【図10】アンカーボルト7Aの構成を示す斜視図である。
【図11】接着剤8による断熱材2の留付け方法を示す斜視図である。
【図12】両面テープ9による断熱材2の留付け方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ALC壁
2 断熱材
3 ALC用ビス(固着具)
4 固定盤
5 内壁枠(内壁材)
6 内壁パネル(内壁材)
7 アンカーボルト(固着具)
8 接着剤(固着具)
9 両面テープ(固着具)
30 ネジ部
31 頭部
40 挿通孔
41 爪
70 アンカー部
71 平板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALC壁の屋内側に板状の断熱材が後張りで設けられてなる断熱構造であって、前記断熱材を固着具により前記ALC壁に留め付けたことを特徴とするALC壁の断熱構造。
【請求項2】
前記固着具は、断熱材を貫通してALC壁に貫入されるものであることを特徴とする請求項1記載のALC壁の断熱構造。
【請求項3】
前記固着具は、ビスである請求項2記載のALC壁の断熱構造。
【請求項4】
前記ビスのネジ部が挿通されるとともに該ビスの頭部が係止する挿通孔が穿設された固定盤が、前記断熱材を前記ALC壁に留め付けたビスの頭部と該断熱材との間に介設されたことを特徴とする請求項3記載のALC壁の断熱構造。
【請求項5】
前記ビスと固定盤とが、予め一体にされたものである請求項4記載のALC壁の断熱構造。
【請求項6】
前記固定盤から突出して前記断熱材に貫入する爪が設けられたことを特徴とする請求項4又は5記載のALC壁の断熱構造。
【請求項7】
前記固着具は、前記断熱材を貫通してALC壁の下孔に貫入するアンカー部と、該アンカー部の基端側に設けられて前記断熱材の屋内側面と圧接する平板部とを備えたアンカーボルトであることを特徴とする請求項2記載のALC壁の断熱構造。
【請求項8】
前記アンカーボルトは、アンカー部と平板部とが一体成形された合成樹脂製のものであることを特徴とする請求項7記載のALC壁の断熱構造。
【請求項9】
前記固着具は、接着剤又は両面テープであることを特徴とする請求項1記載のALC壁の断熱構造。
【請求項10】
前記接着剤又は両面テープにより、前記断熱材の所定箇所が前記ALC壁に部分的に留め付けられたものであることを特徴とする請求項9記載のALC壁の断熱構造。
【請求項11】
前記断熱材の屋内側に、該断熱材と独立して内壁材が設けられたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のALC壁の断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−63663(P2006−63663A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248115(P2004−248115)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】