説明

CTにおけるエネルギー分布再構成

本発明の一態様に従って、検出器は、或る閾値を超える光子に対してその数をカウントする多数の小さい画素で構成される検出素子を有し、この検出器の位置におけるエネルギー分布の再構成が最尤解析を用いて実行される。故に、再構成手法は測定における冗長性を使用し、それに従ってポアソン統計を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線撮像分野に関する。具体的には、本発明はコンピュータ断層撮影装置、コンピュータ断層撮影装置を用いた興味対象の検査方法、コンピュータ可読媒体及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年の間に、X線手荷物検査は、操作者による相互やり取りに完全に依存する単純なX線撮像システムから、ある特定種類の物質を自動的に認識し、且つ危険物の存在時に警報を始動させることが可能な一層と洗練された自動化システムへと進化してきた。検査システムは、検査される荷物を貫通して検出器に透過されたり、あるいは該荷物から検出器へと散乱されたりするX線を放射するX線放射線源を用いている。
【0003】
コンピュータ断層撮影法(CT)は、単一の回転軸の周りで撮られた一連の2次元X線画像から対象物内部の3次元画像を生成するためのデジタル処理を用いる処理である。CT画像の再構成は適当なアルゴリズムを適用することによって行われることができる。コヒーレントに散乱されたX線光子又は量子に基づく撮像技術は、所謂“コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影法”(CSCT)である。CSCTは興味対象の(特に小角)散乱特性の画像を作り出す技術である。散乱特性は対象物の分子構造に依存し、各成分の物質固有マップを作成することを可能にする。小角散乱の支配的な成分はコヒーレント散乱である。コヒーレント散乱のスペクトルは散乱する試料の原子配列に依存するので、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影法は、2次元対象区画を横切る荷物又は生物組織に対して、それらの分子構造の空間変化を画像化する高感度の技術である。
【0004】
信頼性の高いCT/CSCTシステムが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エネルギー分布を再構成するための、コンピュータ断層撮影装置、コンピュータ断層撮影装置を用いた興味対象の検査方法、コンピュータ可読媒体及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の典型的な一実施形態に従って提供される興味対象の検査用のコンピュータ断層撮影装置は、第1のエネルギー閾値より高い第1のエネルギーを有する第1の放射線、及び第2のエネルギー閾値より高い第2のエネルギーを有する第2の放射線を検出し、検出データをもたらすように適応された検出素子;及び検出データの統計分析に基づいてエネルギー分布を再構成するように適応された再構成ユニットを有する。
【0007】
この本発明の典型的な実施形態によれば、検出された光子の統計分析に基づいて再構成されたエネルギー分布は、改善された品質を示し得る。これにより、改善された画像再構成がもたらされる。CT/CSCTシステムはエネルギー分解型の計数検出器を使用し得る。
【0008】
また、エネルギー分布の再構成は、決定論的な解析に基づいてではなく検出データの統計分析に基づいて実行されるので、各光子のエネルギー情報を個々に使用することが可能なように光子の統計が考慮され得る。
【0009】
本発明の典型的な他の一実施形態によれば、再構成ユニットは検出データの最尤解析に基づいて前記エネルギー分布を再構成するように適応されている。“最大尤度”に基づく統計分析は、感度の向上を可能にする再構成法を含み得る。本発明の典型的な他の一実施形態によれば、得られた対数尤度関数に基づいて、個々の光子各々のエネルギー情報及び位置情報(例えば、CSCTのため)が個々に考慮される。
【0010】
多量の利用可能な情報を使用すること、とりわけ、散乱又は減弱された光子各々の情報を個々に使用することにより、最大限の情報が測定から得られ、それによりコンピュータ断層撮影分析の正確性が増大される。
【0011】
なお、本発明に係る方法は如何なる軌跡、検出器形状、ビーム幾何学形状(例えば、扇ビーム、円錐ビーム等)にも有効であり、エネルギー依存減弱マップをサポートするものである。
【0012】
本発明の典型的な他の一実施形態によれば、第1のエネルギー閾値は第2のエネルギー閾値と異なっている。故に、検出素子に突き当たる第1のエネルギー閾値より高いエネルギーを有する光子と、検出素子に突き当たる第2の(且つ異なる)エネルギー閾値より高いエネルギーを有する光子との間の区別が為され得る。
【0013】
本発明の典型的な他の一実施形態によれば、これらの光子は個々にカウントされ、それぞれのカウント数が後続の統計分析に用いられ、良好なエネルギー分布の再構成、ひいては良好な画質がもたらされる。
【0014】
本発明の典型的な他の一実施形態によれば、検出素子は、第1の放射線を検出するように適応された第1のエネルギー閾値を有する第1画素、及び第2の放射線を検出するように適応された第2のエネルギー閾値を有する第2画素を有する。検出素子は複数の異なる画素から成り、各画素がそれぞれのエネルギー閾値を超える光子を計数してもよく、それにより検出データが改善される。
【0015】
本発明の典型的な他の一実施形態によれば、第1画素は更に第3のエネルギー閾値を有し、第2画素は更に第4のエネルギー閾値を有する。第1の放射線を検出することに加え、第1画素は更に、第3のエネルギー閾値より高い第3のエネルギーを有する第3の放射線を検出するように適応されていてもよい。第2の放射線を検出することに加え、第2画素は更に、第4のエネルギー閾値より高い第4のエネルギーを有する第4の放射線を検出するように適応されていてもよい。これにより、例えば、再構成それ自体に検出器の影響が含められ得る。
【0016】
本発明の典型的な更に他の一実施形態によれば、検出素子は第1の放射線の単一の第1光子及び第2の放射線の単一の第2光子を検出するように適応されており、第1光子のエネルギーは第1のエネルギー閾値より高いものであり、第2光子のエネルギーは第2のエネルギー閾値より高いものである。さらに、検出素子は、検出された単一の第1光子の数である第1の数、及び検出された単一の第2光子の数である第2の数を計数するように適応されている。個々の単一光子をそれらそれぞれの最小エネルギーとともに検出することは、これに続く光子統計に基づく統計分析と一緒になって、良好なエネルギー分布の再構成及び良好な画質をもたらす。
【0017】
本発明は、コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影において、特に検出器の少なくとも一部がエネルギー分解型であるシングルスライス型検出器及びマルチスライス型検出器に適用されることが可能である。
【0018】
故に、本発明は、少なくとも幾つかの個々の光子統計(位置及びエネルギー)の測定が考慮されることにより画像が再構成され、そのとき、測定結果と最大尤度手法とを用いて画像が再構成されるCSCT/CT装置に関連する。
【0019】
コンピュータ断層撮影装置は、興味対象に電磁放射線を放射するように適応された電磁放射線源、及び電磁放射線源と検出素子との間に配置されたコリメータであり、電磁放射線源によって放射された電磁放射線ビームを平行にして、扇ビーム若しくは円錐ビーム、又は何らかの他の所望幾何学形状を有するビームを形成するように適応されたコリメータを更に有していてもよい。コンピュータ断層撮影装置の検出素子はシングルスライス型検出器アレイを形成していてもよいし、他の例では、マルチスライス型検出器アレイを形成していてもよい。シングルスライス型検出器アレイは、構成が単純であり且つ検出信号の評価が高速であるという利点を有する。また一方、マルチスライス型検出器アレイは格別に高い検出信号の解像度と多量の検出信号とを実現するように実装され得る。
【0020】
本発明に従ったコンピュータ断層撮影装置は手荷物検査装置、医療用装置、材料試験装置、又は材料科学分析装置に適用され得る。本発明の好適な適用分野は手荷物検査である。何故なら、本発明に係る既定の機能により、疑わしい内容物の検出を可能にし、更にはその荷物品目内の物質の種類を判定することを可能にする、荷物品目の内容物の安全で信頼性のある分析が実現されるからである。本発明の典型的な一実施形態に従った、このような装置又は方法は、或る特定種類の物質を認識し、必要に応じて、危険物が存在するときに警報を発することを自動的に実行する高品質の自動化システムを作り出し得る。このような検査システムは、検査対象の荷物を透過するか、それによって散乱されるかして、コヒーレント散乱された放射線をエネルギー分解的に検出することが可能な検出器へと達するX線を放射するX線放射線源とともに、本発明に係るコンピュータ断層撮影装置を用いてもよい。
【0021】
本発明の典型的な他の一実施形態に従って提供される、コンピュータ断層撮影装置を用いて興味対象を検査する方法は、第1のエネルギー閾値より高い第1のエネルギーを有する第1の放射線を検出する段階、第2のエネルギー閾値より高い第2のエネルギーを有する第2の放射線を検出する段階、及びこれら段階によりもたらされる検出データの統計分析に基づいて、エネルギー分布を再構成する段階を有する。
【0022】
これにより、検出データからのエネルギー分布再構成が改善される。
【0023】
本発明の典型的な他の一実施形態に従って提供されるコンピュータ可読媒体にあっては、コンピュータ断層撮影装置を用いて興味対象を検査するコンピュータプログラムであり、プロセッサによって実行されるとき上述の方法段階を実行するように適応されたコンピュータプログラムが格納されている。さらに、興味対象を検査するコンピュータプログラムが提供され、このプログラムは、プロセッサによって起動されるとき上述の方法段階を実行するように適応されている。
【0024】
本発明に従った興味対象の検査は、コンピュータプログラムすなわちソフトウェアによって、あるいは1つ又は複数の特別な最適化電子回路すなわちハードウェアを用いて実現されてもよいし、複合形態すなわちソフトウェア要素及びハードウェア要素によって実現されてもよい。
【0025】
本発明の典型的な一実施形態の要点として理解されるように、異なる閾値を有する画素群として適応されたエネルギー分解型の計数検出器が使用される。
【0026】
本発明のこれら及びその他の態様は、以下に記載される実施形態を参照することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の典型的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。図面は概略的なものである。相異なる図における似通った、あるいは相等しい要素には同一の参照符号を用いることとする。
【0028】
図1は、本発明の典型的な一実施形態に従ったCSCTスキャナシステムを示している。この典型的な実施形態を参照し、荷物品目に含まれる例えば爆発物などの危険物を検出するための手荷物検査への適用に関して本発明を説明する。しかしながら、本発明はこの用途に限られるものではなく、医療撮像、又は例えば材料試験などのその他の産業用途の分野にも適用され得るものである。
【0029】
図1に描かれたコンピュータ断層撮影装置100は円錐ビームによるCTスキャナである。しかしながら、本発明は扇ビームの幾何学形状を用いて実現されてもよい。図1に描かれたCTスキャナはガントリー101を有し、ガントリー101は回転軸102の周りを回転可能である。ガントリー101はモータ103によって駆動される。参照符号104は例えばX線源などの放射線源を示しており、本発明の一態様によれば、この放射線源は多色放射線を放射する。
【0030】
参照符号105は、放射線源から放射された放射線ビームを円錐状の放射線ビーム106に整形する開口系を示している。円錐ビーム106は、ガントリー101の中央、すなわちCSCTスキャナの検査領域、に配置された興味対象107を貫通するように向けられ、検出器108に突き当たる。検出器108は、図1から理解され得るように、検出器108の表面に扇ビーム106が及ぶように、放射線源104に対向してガントリー101に配置されている。図1に描かれた検出器108は複数の検出素子123を有しており、各検出素子123は興味対象107によってコヒーレント散乱されたX線又は個々の光子を、(検出器108が、各々が或る所定のエネルギー閾値を有し、且つ該所定のエネルギー閾値より高いエネルギーを有する光子を検出・計数するとともに、例えば該所定のエネルギー閾値より低いエネルギーを有する光子を更に検出・計数するように適応されているような、複数の画素を有するという意味において)エネルギー分解的に検出することができる。
【0031】
興味対象107のスキャン中、放射線源104、開口系105及び検出器108はガントリー101とともに矢印116で指し示される方向に回転させられる。放射線源104、開口系105及び検出器108を備えるガントリー101の回転のため、モータ103はモータ制御ユニット117に接続されており、モータ制御ユニット117は計算又は決定ユニット118に接続されている。
【0032】
図1において、興味対象107はコンベヤーベルト119上に置かれた荷物品目である。興味対象107のスキャン中、ガントリー101が荷物品目107の周りを回転しながら、コンベヤーベルト119が興味対象107をガントリー101の回転軸102に平行な方向に移動させる。これにより、興味対象107は螺旋状のスキャン経路に沿ってスキャンされる。コンベヤーベルト119がスキャン中に停止されることにより、単一の断層が測定されてもよい。コンベヤーベルト119を設ける代わりに、例えば興味対象107が患者である医療用途においては、可動式のテーブルが用いられてもよい。しかしながら、説明される何れの場合においても、回転軸102に平行な方向の移動がなくて回転軸102の周りのガントリー101の回転だけである円形スキャンを実行することも可能である。
【0033】
なお、強調しておくが、図1に示された円錐ビーム構成の代替として、本発明は扇ビーム構成によって実現されてもよい。主の扇ビームを生成するため、開口系105はスリットコリメータとして構成され得る。
【0034】
検出器108は決定ユニット118に接続されている。決定ユニット118は、検出器108の検出素子123からの出力である検出結果を受取り、これら出力に基づいてスキャン結果を決定する。さらに、決定ユニット118はモータ制御ユニット117と信号伝達し、モータ103及び120を用いてガントリー101及びコンベヤーベルト119の動作を調整する。
【0035】
決定ユニット118は、本発明の典型的な一実施形態に従って、統計的手法を用いて検出器108の出力から画像を構築するように適応されている。計算ユニット118によって作成された再構成画像はインターフェース122を介してディスプレー(図1には図示せず)に出力されてもよい。
【0036】
決定ユニット118は、検出器108の検出素子123から読み出された出力を処理するデータプロセッサによって実現されてもよい。
【0037】
また、図1から理解され得るように、決定ユニット118は、例えば荷物品目107内に疑わしい物質を検出した場合に自動的に警報を発生させるよう、スピーカ121に接続されていてもよい。
【0038】
興味対象107の検査用のコンピュータ断層撮影装置100が含む検出器108には、興味対象107によってコヒーレント散乱された電磁放射線を、閾値に基づいて、故にエネルギー分解的に、検出するように各々が適応された複数の検出素子123がマトリックス状に配置されている。さらに、コンピュータ断層撮影装置100は、検出されたデータの統計分析に基づいてエネルギー分布を再構成するように適応された決定ユニット又は再構成ユニット118を有している。具体的には、再構成ユニット118は検出されたデータの最尤解析(Maximum Likelihood analysis)に基づいてエネルギー分布を再構成する。この評価の枠組みにおいては、興味対象107に関する構造情報は、実験的に予め知られた吸収係数の値を更に考慮して再構成ユニット118によって決定され得る。
【0039】
コンピュータ断層撮影装置100は興味対象107にX線を放射するように適応されたX線源104を有している。電磁放射線源104と検出素子123との間に設置されたコリメータ105は、電磁放射線源104により放射された電磁放射線ビームを平行にして円錐ビームを形成するように適応されている。他の例では、図1には示されていないが、扇ビームを生成するためにコリメータ105に代えてスリットコリメータが用いられてもよい。検出素子123はマルチスライス型検出器アレイ108を形成している。コンピュータ断層撮影装置100は手荷物検査装置として構成されている。
【0040】
続いて図2を参照して、再構成ユニット118によって実行される統計分析について更に詳細に説明する。
【0041】
この方法は、段階S1にて、検出データの収集により始まる。データ収集用の検出素子は、本発明の典型的な一実施形態に従って、幾つかの小さな画素から成り、各画素は或る閾値群を超える(あるいは、例えば或る閾値群未満の)光子の数を測定する。この閾値群は画素ごとに異なるように選定されてもよく、それにより、エネルギー分布の再構成が可能になる。この測定は冗長性を有し得るので、最大尤度を用いる再構成は非常に正確になり得る。
【0042】
本発明の典型的な一実施形態に従って、段階S1にて実行されるデータ収集は、第1の閾値より高いエネルギーを有する多数の第1の光子の検出と検出された光子を数えることとを有する。さらに、収集段階S1は、(第1の閾値とは異なる)第2の閾値より高いエネルギーを有する第2の光子の検出と第2の光子を数えることとを有する。第1の光子の検出は検出素子の第1の画素によって行われ、第2の光子の検出は検出素子の第2の画素(これは第1の画素と同一の画素であってもよい)によって行われ得る。従って、第3及び第4の閾値より高い(あるいは低い)エネルギーを有する第3及び第4の光子をそれぞれ検出・計数する第3及び第4の画素が検出素子に設けられてもよい。
【0043】
また、本発明の典型的な他の一実施形態に従って、第1の画素は(それぞれ第1及び第2の閾値より高いエネルギーを有する)第1及び第2の光子を検出するように適応され、第2の画素は(それぞれ第3及び第4の閾値より高いエネルギーを有する)第3及び第4の光子を検出するように適応されていてもよい。本発明の典型的な一実施形態に従って、検出器の各検出素子は第1の閾値より高いエネルギーを有する光子の数である第1の数と、第2の閾値は検出素子ごとに異なるとして、第2の閾値より高いエネルギーを有する光子の数である第2の数とを計数してもよい。
【0044】
なお、この方法は一層複雑な閾値設定に拡張されてもよく、再構成それ自体に検出器の影響を含めることができる。
【0045】
言い換えれば、1つの検出素子は異なるエネルギー閾値を有するN-1個の異なる画素に分割され、故に、エネルギー分布をN個の範囲(瓶)で測定する。各画素iは2つの相異なる閾値を超える光子数(第1の閾値に関するy1,i及び第2の閾値に関するy2,i)を測定し、故に、第2の閾値より高い光子数(xa,i=y2,i)及び第2の閾値より低い光子数(xb,i=y2,i−y1,i)が分かる。測定される光子数はポアソン分布に従い、平均値μを用いて、
【0046】
【数1】

となる。
【0047】
検出データの収集後、再構成ユニットは検出データの統計分析に基づいてエネルギー分布の再構成を実行する。本発明の一態様に従って、この統計分析は最尤解析、特に段階S2における検出データの対数尤度(Log-Likelihood)解析に基づく。
【0048】
本発明の一態様に従って、最尤解析はニュートンの二次近似及びライン探索に基づいて最大限にされ得る。決定されるべき各瓶j内の光子数がμjであるとき、最尤関数Lは
【0049】
【数2】

で与えられる。対数尤度関数は、
【0050】
【数3】

となる。
【0051】
この対数尤度は、ニュートンの二次近似及びライン探索を用いることによって最大化され得る。そして、全てのエネルギー瓶μjのベクトルμに関する反復更新n→n+1は、
【0052】
【数4】

で与えられる。ただし、αは0<α≦1のライン探索パラメータであり、更新により尤度が増大されるように選定される。グラジエントとヘッシアン(Hessian)は、
【0053】
【数5】

及び
【0054】
【数6】

である。
【0055】
本発明に係る方法は段階S3にて終了する。
【0056】
図3は、仮定したエネルギー分布301、再構成手法に従って再構成されたエネルギー分布306、307、及び最尤解析に基づいて再構成されたエネルギー分布308を示している。
【0057】
横軸304は計数された光子が分類されるそれぞれのエネルギー瓶を示しており、縦軸305は瓶ごとの計数された光子数を示している。
【0058】
図3及び表1に示されるように、本発明に従って再構成されたエネルギー分布308は、その他のエネルギー分布再構成手法306又は307より遙かに良好且つ正確なエネルギー分布をもたらす。
【0059】
先ず、10個のエネルギー瓶におけるエネルギー分布を仮定した。次に、仮定された分布に従った58500個の光子をシミュレーションし、曲線301を得た。続いて、過剰に決定された一組の方程式を解く解析手順である疑似逆(pseudo inverse)手順に基づいて、(各検出素子又は画素の)測定光子数をエネルギー分布306に変換した。自由パラメータとして調整が用いられ、平滑化307が得られる。
【0060】
【表1】

表1においては、シミュレーションされたエネルギー分布301が、シミュレーションされた分布からのχ2偏差を計算することによって、疑似逆エネルギー分布(PI)306、調整された疑似逆エネルギー分布(PIr)307、及びML再構成308と比較されている。表1に示されるように、χ2偏差はML再構成308について12(これは最も小さい値である)、疑似逆エネルギー分布(PI)306について57、そして調整された疑似逆エネルギー分布(PIr)307について35である。
【0061】
本発明に従った上述の再構成法は、例えば相異なる閾値を有する画素群から成るような、あらゆる種類のエネルギー分解的な計数検出器によって収集されたデータを用いて実行され得る。
【0062】
また、計測データ数は最尤画像再構成と比較して少ないので、最大化は高速となり、またライン上で行われることができる。
【0063】
図4は、本発明に従った方法の典型的な一実施形態を実行するための、本発明に従ったデータ処理装置400の典型的な一実施形態を示している。図4に描かれたデータ処理装置400は、例えば患者や荷物品目などの興味対象を描写する画像を保存するメモリ402に接続された中央処理ユニット(CPU)又は画像プロセッサ401を有している。データプロセッサ401は、複数の入力/出力ネットワーク、又は例えばCT装置などの診断装置に接続されていてもよい。データプロセッサ401は更に、該データプロセッサ401にて計算あるいは適応された情報又は画像を表示する例えばコンピュータモニターといった表示装置403に接続されていてもよい。操作者又はユーザは、キーボード404、及び/又は図4には描かれていないその他の出力装置を介してデータプロセッサ401とやり取りしてもよい。さらに、バスシステム405を介して、画像処理及び制御プロセッサ401を、例えば、興味対象の動きを監視する動きモニターに接続することも可能である。例えば、患者の肺が撮像される場合、動きセンサーは呼吸センサーとしてもよい。心臓が撮像される場合には、動きセンサーは心電図(ECG)としてもよい。
【0064】
本発明が効果的に適用され得る典型的な技術分野には、手荷物検査、医療応用、材料試験、及び材料科学が含まれる。画質向上及び計算量削減が小さい努力で達成され得る。また、本発明は心疾患を検出する心臓スキャンの分野に適用されることができる。
【0065】
なお、用語“有する”はその他の要素又は段階の存在を排除するものではなく、“或る(a又はan)”は複数であることを排除するものではない。また、相異なる実施形態に関連して説明された要素が組み合わされてもよい。さらに、請求項中の参照符号は請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の典型的な一実施形態に従ったコンピュータ断層撮影装置を示す図である。
【図2】本発明に従った興味対象の検査方法の典型的な一実施形態を示すフローチャートである。
【図3】仮定したエネルギー分布、標準的な再構成手法に従って再構成されたエネルギー分布、及び最尤解析に基づいて再構成されたエネルギー分布とを示す図である。
【図4】本発明に係るコンピュータ断層撮影装置内に実装されるデータ処理装置の典型的な一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
興味対象の検査用のコンピュータ断層撮影装置であって:
第1のエネルギー閾値より高い第1のエネルギーを有する第1の放射線、及び第2のエネルギー閾値より高い第2のエネルギーを有する第2の放射線を検出し、検出データをもたらすように適応された検出素子;及び
前記検出データの統計分析に基づいてエネルギー分布を再構成するように適応された再構成ユニット;
を有するコンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記再構成ユニットは前記検出データの最尤解析に基づいて前記エネルギー分布を再構成するように適応されている、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記再構成ユニットは前記検出データの対数尤度解析に基づいて前記エネルギー分布を再構成するように適応されている、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
第1のエネルギー閾値は第2のエネルギー閾値と異なる、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記検出素子は、第1の放射線を検出するように適応された第1のエネルギー閾値を有する第1画素、及び第2の放射線を検出するように適応された第2のエネルギー閾値を有する第2画素を有する、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
第1画素は更に第3のエネルギー閾値を有し;
第2画素は更に第4のエネルギー閾値を有し;
第1画素は更に、第3のエネルギー閾値より高い第3のエネルギーを有する第3の放射線を検出するように適応されており;且つ
第2画素は更に、第4のエネルギー閾値より高い第4のエネルギーを有する第4の放射線を検出するように適応されている;
請求項5に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記検出素子は第1の放射線の単一の第1光子及び第2の放射線の単一の第2光子を検出するように適応されており;
第1光子のエネルギーは第1のエネルギー閾値より高く;
第2光子のエネルギーは第2のエネルギー閾値より高く;且つ
前記検出素子は、検出された単一の第1光子の数である第1の数、及び検出された単一の第2光子の数である第2の数を計数するように適応されている;
請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記検出素子は単一の第3光子及び単一の第4光子を検出するように適応されており;
単一の第3光子のエネルギーは第1のエネルギー閾値より低く;
単一の第4光子のエネルギーは第2のエネルギー閾値より低く;且つ
前記検出素子は、検出された単一の第3光子の数である第3の数、及び検出された単一の第4光子の数である第4の数を計数するように適応されている;
請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
コヒーレント散乱コンピュータ断層撮影装置として適応されている請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
興味対象に電磁放射線を放射するように適応された電磁放射線源;及び
前記電磁放射線源と前記検出素子との間に配置されたコリメータであり、前記電磁放射線源によって放射された電磁放射線ビームを平行にして、扇ビーム又は円錐ビームを形成するように適応されたコリメータ;
を更に有する請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記検出素子はシングルスライス型検出器アレイを形成している、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項12】
前記検出素子はマルチスライス型検出器アレイを形成している、請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項13】
手荷物検査装置、医療用装置、材料試験装置、及び材料科学分析装置から成るグループの1つとして構成された請求項1に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項14】
前記最尤解析はニュートンの二次近似及びライン探索に基づいて最大化される、請求項2に記載のコンピュータ断層撮影装置。
【請求項15】
コンピュータ断層撮影装置を用いて興味対象を検査する方法であって:
第1のエネルギー閾値より高い第1のエネルギーを有する第1の放射線を検出する段階;
第2のエネルギー閾値より高い第2のエネルギーを有する第2の放射線を検出する段階;及び
第1の放射線の検出及び第2の放射線の検出によりもたらされる検出データの統計分析に基づいて、エネルギー分布を再構成する段階;
を有する方法。
【請求項16】
コンピュータ断層撮影装置を用いて興味対象を検査するコンピュータプログラムであり、プロセッサによって実行されるとき:
第1のエネルギー閾値より高い第1のエネルギーを有する第1の放射線を検出する段階;
第2のエネルギー閾値より高い第2のエネルギーを有する第2の放射線を検出する段階;及び
第1の放射線の検出及び第2の放射線の検出によりもたらされる検出データの統計分析に基づいて、エネルギー分布を再構成する段階;
を実行するように適応されたコンピュータプログラム、が格納されたコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
興味対象を検査するコンピュータプログラムであって、プロセッサによって起動されるとき:
第1のエネルギー閾値より高い第1のエネルギーを有する第1の放射線を検出する段階;
第2のエネルギー閾値より高い第2のエネルギーを有する第2の放射線を検出する段階;及び
第1の放射線の検出及び第2の放射線の検出によりもたらされる検出データの統計分析に基づいて、エネルギー分布を再構成する段階;
を実行するように適応されたコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−536138(P2008−536138A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506016(P2008−506016)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051068
【国際公開番号】WO2006/109227
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】