説明

DHAエステルを含む非経口投与のための医薬組成物

本発明は、a)少なくとも1つのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、および、b)少なくとも1つのリン脂質誘導体から選択される少なくとも2つの界面活性剤の混合物を用いて水相に分散させたサブミクロンのドコサヘキサエン酸のエステル粒子を含む、非経口投与のための医薬組成物に関する。本発明はまた、前記医薬組成物の調製方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドコサヘキサエン酸エステルを含む、非経口投与のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オメガ3脂肪酸類は、藻類、油の強い魚(サケ、サバ、イワシ、マグロ)、菜種、クルミ、大豆などに特に見出される多価不飽和脂肪酸である。一般的に、脂肪酸CH−(CH−COOHの分類は、炭素鎖の長さ(n=2〜4は短い、n=6〜8は中程度、n≧10は長い)、二重結合数(不飽和、一価または多価不飽和脂肪酸)およびカルボキシル基の炭素から開始する二重結合の位置に基づく。ω準拠系は、炭素鎖の長さ、二重結合数、および、定義によれば、カルボキシル基から最も遠い鎖内の最後の炭素である前記ω炭素から開始して最も近いω炭素の二重結合の位置を示す。
【0003】
ω3群の主要な脂肪酸は、
−リノレン酸18:3(9、12、15)またはALA
−エイコサペンタエン酸20:5(5、8、11、14、17)またはEPA
−ドコサヘキサエン酸22:6(4、7、10、13、16、19)またはDHA
である。
【0004】
オメガ3脂肪酸は、ヒトの健康上数多くの有益な効果を提供する。
【0005】
特許出願WO01/46115号公報には、EPAおよびDHAが豊富な魚油ベースの食品の、心臓血管の異変の減少に対する利益が要約されている。その中で、当業者に周知の方法を用いて、例えば、非イオン性界面活性剤を水で希釈して、加熱し、DNAおよびEPAエステルを添加することにより得られる球形粒子懸濁液の形態の、非経口形態のEPAおよびDHAが記載されている。この出願はまた、出版物(Billman et al. 1997 Lipids 32 1161-1168)の8頁2行目で、大豆油およびトリグリセリドを含有する静脈内投与を意図したエマルジョンを開示している。
【0006】
しかしながら、このような方法を用いると、すぐに使えるか、凍結乾燥形態を用いて再構成される安定な非経口製剤(非経口製剤中、平均粒径が、100nm未満であり、大量の活性成分を含み、かつ、長期的に毒性を有し得ることが示されている過剰に高い割合の界面活性剤は含まない)を得ることは困難である。
【0007】
DHAエステル類のうち、ニコチンエステル、または、ピリジン−3−イルメチル−シス−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸が、考え得る治療上の興味を有するエステルである。
【0008】
DHAのニコチンエステル、または、ピリジン−3−イルメチル−シス−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸の構造式は、以下:
【化1】

で与えられる。
【0009】
2837NOに相当し、その分子量は、419.60gである。
【0010】
これは非常に疎水性の高い化合物であり(LogPは約7)、水への溶解度は、平衡時で1μg/mL未満である。従って、これは、非経口投与のために製剤化することが困難である。
【0011】
さらなる特段の興味のあるDHAエステルは、DHAのパンテノールエステルであり、あるいは、パンテニルドコサヘキサノエートと呼ばれ、具体的には、下記式(A):
【化2】

を有する、DHAのパンテノールモノエステル 2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタンアミドプロピルドコサ4,7,10,13,16,19−ヘキサノエート、若しくは、その薬学上許容可能な塩、エナンチオマー若しくはジアステレオマー、または、ラセミ混合物を含むそれらの混合物のいずれかである。
【0012】
より具体的には、エステルは、下記式(B):
【化3】

を有するDHAのパンテノールモノエステルであり、「D−パンテノールDHAエステル」とも呼ばれる。
【0013】
これらのエステルは、WO2007/147899号公報に記載されるように、例えば、心房細胞の治療に非常に効果的である。これらは、加水分解後に体内でDHAを放出するプロドラッグとして作用する。
【発明の具体的説明】
【0014】
本発明では、用語「エナンチオマー」とは、同一の分子式を有するが、その立体配置が異なり、重ね合せることができない鏡像である、光学異性体化合物を意味する。用語「ジアステレオマー」とは、互いに鏡像ではない光学異性体を意味する。本発明によれば、「ラセミ体混合物」とは、キラルな分子の左旋性および右旋性のエナンチオマーの等量の混合物である。
【0015】
本発明によれば、用語「薬学上許容可能な」または「薬学的な条件で許容可能な」とは、一般的に、安全で、無毒性で、かつ、非生物的であるか望ましくないその他のものではなく、かつ、獣医学的およびヒトの医薬的使用の両方に許容される医薬組成物の製造における使用に適していることを意味する。
【0016】
化合物の用語「薬学上許容される塩」とは、本明細書で定義されるように、薬学上許容可能であり、かつ、親化合物の望まれる薬学上の活性を有する塩を意味する。そのような塩としては、
(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸および類似のものなどの無機酸と形成するか;または、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンフルスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、ジベンゾイル−L−酒石酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、トリフルオロ酢酸および類似のものなどの有機酸と形成する酸付加塩;または、
(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアルミニウムイオンで置き換えられ;または、有機塩基若しくは無機塩基とまとまったときに、形成する塩が挙げられる。許容可能な有機塩基としては、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンおよび類似のものが挙げられる。許容可能な無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0017】
好ましい薬学上許容可能な塩は、塩酸、トリフルオロ酢酸、ジベンゾイル−L−酒石酸およびリン酸から形成される塩である。
【0018】
薬学上許容可能な塩には、同一の酸付加塩の、本明細書で定義される、溶媒和形態(溶媒和物)または結晶形態(多形)が含まれる。
【0019】
本発明者らは、意外にも、2つのタイプの界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびリン脂質誘導体を組み合わせて用いて、非経口投与のためのDNAエステルを含む組成物を調製することができることを発見した。
【0020】
従って、本発明は、
a)少なくとも1つのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、および
b)少なくとも1つのリン脂質誘導体
から選択される少なくとも2つの界面活性剤の混合物を用いて水相に分散させたサブミクロンのドコサヘキサエン酸のエステル粒子を含む、非経口投与のための医薬組成物に関する。
【0021】
本発明の一つの態様によれば、組成物は、a)およびb)の2つのタイプの界面活性剤のみを界面活性剤として含む。
【0022】
ドコサヘキサエン酸のエステルは、いかなるタイプであってもよい。具体的には、エチルエステルであるか、または、特許出願WO2007/147899号公報に記載されたビタミンBとのエステルであり得る。
【0023】
本発明の一つの態様では、それは、DHAのニコチンエステル、すなわち、ピリジン−3−イルメチル−シス−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、または、DHAのパンテノールエステル、具体的には、DHAのパンテノールモノエステル 2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタンアミドプロピルドコサ4,7,10,13,16,19−ヘキサノエート、より具体的には、D−パンテノールDHAエステルであり、これらは非経口投与用に製剤することが特に困難である。
【0024】
本発明の一つの態様では、ドコサヘキサエン酸のエステルの濃度は、10mg/mL以上であり、例えば、30mg/mL以上である。
【0025】
第一の界面活性剤(a)は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの群に属する。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、脂肪酸とエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールとの反応により得ることができる。
【0026】
具体的には、本発明によるポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、下記式(1)または(2):
(1)RCOO.(O.CHCH
(2)RCOO.(O.CHCHCOOR
(ここで、R、RおよびRはそれぞれ、独立して親脂肪酸のアルキル基またはアルケニル基を表し、nは、オキシエチレン構造ユニットのポリマー鎖長を表す)
を有する。例えば、nは、10〜60であり、例えば、12〜20であり、例えば、15である。
【0027】
脂肪酸は、飽和でも不飽和でもよい。それは水酸化されている。最も一般的な飽和脂肪酸は、以下の通りである。
【表1】

【0028】
結果として、R、RおよびRは、例えば、アルキルまたはアルケニル鎖であり、例えば、アルキルであり、直鎖若しくは分岐であり、例えば、直鎖であり、C〜C23であり、例えば、C11〜C23であり、例えば、C15〜C21であり、例えば、脂肪酸は、長鎖の、すなわち、16個以上の炭素原子を有する飽和脂肪酸である。
【0029】
一つの態様では、脂肪酸は、12〜24個の炭素原子、例えば、14〜22個の炭素原子、例えば、16〜20個の炭素原子を有し、例えば、それは18個の炭素原子を有し、例えば、それはステアリン酸である。
【0030】
それは、脂肪酸モノエステル若しくはジエステル、またはそれらの混合物であり得る。本発明の一つの態様では、それは、脂肪酸モノエステル若しくはジエステルの混合物である。例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、マクロゴール−15ヒドロキシステアレート(商標名:SOLUTOL HS15、製造者:BASF社、Ludwigshafen、ドイツ)である。それは、非イオン性可溶化剤であり、12−ヒドロキシステアリン酸および12−ヒドロキシステアリン酸のエトキシル化により得られるマクロゴールのモノエステルおよびジエステルから本質的になる。1モルの12−ヒドロキシステアリン酸当りと反応するエチレンオキシドのモル数は、15である。それは、水への可溶性が非常に高い黄色かがった蝋のような物質の形態である。
【0031】
具体的には、本発明の範囲の使用に適したポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、非イオン性界面活性剤である。
【0032】
第二の界面活性剤(b)は、リン脂質誘導体の群に属する:従って、それは、例えば、大豆若しくは卵レクチンなどの天然起源のレクチン、例えば、大豆若しくは卵リン脂質などの天然起源のリン脂質、合成リン脂質、またはこれらの混合物からなり得る。例えば、それは、例えば、1,2−ジミリストイルホスファチジルコリンまたは1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリンなどのホスファチジルコリン類、およびホスファチジルエタノールアミン類、例えば、ホスファチジルコリン類、例えば、1,2−ジミリストイルホスファチジルグリセロールなどのホスファチジルグリセロール類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルイノシトール類およびホスファチジン酸、例えば、ホスファチジルグリセロール類などの負電荷のリン脂質などの天然のリン脂質、またはこれらの混合物からなり得る。例えば、それは、ホスファチジルコリンなどの天然のリン脂質、負電荷のリン脂質類、例えば、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリンおよび1,2−ジミリストイルホスファチジルグリセロールからなり得る。
【0033】
中性リン脂質と負電荷のリン脂質との混合物中では、組成物全体に対する負電荷のリン脂質の重量パーセントは、10%未満であり、1%〜5%であり、例えば、3%に等しい。
【0034】
それはまた、天然起源のレクチンと負電荷のリン脂質との、具体的には、卵レクチンと1,2−ジミリストイルホスファチジルグリセロールとの混合物からなり得る。
【0035】
タイプ(a)界面活性剤:タイプ(b)界面活性剤の重量比は、1:3〜3:1であり得、例えば、1:1である。
【0036】
リン脂質誘導体は、図1に示される一般構造を有する。
【0037】
本発明の一つの態様では、リン脂質誘導体は、大豆レクチンまたは大豆リン脂質を含まない。
【0038】
一つの態様では、サブミクロンの粒子は、混合型ミセル若しくはベシクル、またはミセル若しくはベシクルの複合構造などのサブミクロンの粒子である。
【0039】
本発明による混合型ミセルは、2つの異なるタイプの界面活性剤(a)と(b)との混合物からなるミセル、例えば、集合体であり、界面活性剤分子の親水性の極性の頭部は、DHAエステルと相互作用して水相に向き、疎水性鎖は内側を向く。
【0040】
本発明によるベシクルは、構造体であり、界面活性剤は、細胞膜に見られる構造と同一の二重層配置により編成されている。これらの界面活性剤は、液胞または水性の空洞を囲む。
【0041】
本発明によるミセルおよびベシクル複合構造は、混合型ミセルとベシクルとの中間構造であり、前記液胞が存在しても良い。
【0042】
斯くして、本発明の組成物は、例えば、混合型ミセル若しくはベシクルまたはミセルおよびベシクルの複合構造の分散液である。例えば、これらの粒子は、クリオフラクチャー法後の電子顕微鏡下での平面破壊面を示す。
【0043】
本発明の一つの態様によれば、本発明の組成物は、エマルジョンの形態ではない。
【0044】
本発明の一つの態様では、サブミクロンの粒子は、例えば、0.5未満の多分散性を有する、100nm未満、例えば、25〜70nmの平均サイズを有する(サイズと多分散性は、Malvern社製のZetasizerユニットを用いた光相関分光学により測定される)。
【0045】
上記のサブミクロンの粒子に加えて、本発明の組成物はまた、
− 組成物中に溶存する酸素による酸化から、DHAエステル、特に、DHAのニコチンエステルまたはパンテノールエステル、および具体的には、D−パンテノールDHAエステルを保護する、抗酸化剤。非制限的な例としては、アスコルビン酸およびその誘導体、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの硫黄を放出する化合物、プロピルガレート、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、D,L−α−トコフェロール、エチレンジアミン四酢酸誘導体およびそれらの組み合わせが挙げられる。これらの含有量は、0.01%〜1%(m/V)、特には、0.01%〜0.50%(m/V)である。抗酸化剤の作用は、注射用組成物の製造および包装の際に、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスを用いて適切に補うことができる。
−pH調整剤。これらは、当業者に知られ、無機または有機酸および塩基、並びにバッファー系を含む。その使用は、本発明による組成物のpHを、非経口投与に用いることができるpH=4〜pH=9の値に調整することを可能にする。従って、それは、アスコルビン酸からなり得る。
−血液との等張性を保証するために本発明の組成物の浸透圧を調整する剤。これらは、例えば、炭化水素、例えば、還元していても良い単糖類[例えば、5%(m/V)以下の濃度のグルコースまたはマンニトール]または二糖類[例えば、10%(m/V)以下の濃度のスクロース]などの中性分子である。
−分散液溶媒としての注射用の水、例えば、5%グルコース溶液または0.9%塩化ナトリウム溶液
を含んでいても良い。
【0046】
本発明による組成物は、すぐに投与できる水性分散液の形態であるか、投与前に注射用の水を用いて即席で再構成される凍結乾燥分散剤の形態である。
【0047】
非限定的な例としては、30mg/mL−または3%(m/V)−の濃度のDHAのニコチンエステルに対して、SOLUTOL HS15およびリン脂質誘導体の濃度はそれぞれ、2.5%〜5%(m/V)および0〜10%(m/V)である。好ましくは、5%(m/V)のSOLUTOL HS15および5%(m/V)のリン脂質誘導体を伴う組成物が用いられる。
【0048】
下記の表1で与えられた製剤は、本発明を説明するものである。これらは、以降で記載される最初の方法を用いて調製された。
【表2】

【0049】
本発明はさらに、本発明による組成物の調製方法であって、以下の工程:
−HDAエステル、具体的には、DHAのニコチンエステルまたはDHAのパンテノールエステル、具体的には、式(A)または式(B)を有するDHAのパンテノールモノエステル、リン脂質誘導体、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えば、SOLUTOL HS15を、非経口投与のための水溶液、例えば、5%グルコース溶液に、均一であるが濁った分散液が得られるまで、電磁式またはアンカー型の攪拌により、例えば、約700rpmで攪拌して、分散させる工程、
−得られた分散液を、例えば、ローター/タービン静翼(例えば、Labortechnik社製T25(IKA)タイプまたはその同等品)を、例えば、約13,500rpmで用いて、その後、高圧ホモジェナイザー(例えば、EMULSIFLEX C−5タイプ(AVESTIN社製)またはその同等品)で、例えば、1300〜1600バールの圧力でホモジェナイズする工程、
−得られたコロイド状の製剤を、ミリポア社製DURAPORE(商標)タイプまたはその同等品などの0.2μmの滅菌フィルターで濾過することにより滅菌する工程
を含む方法に関する。
【0050】
この方法は、濾液を無菌的雰囲気下で、清潔かつ事前に滅菌した直接包装材中に詰めることからなるさらなる工程を含んでいても良い。
【0051】
この直接包装は、例えば、密封式バイアル、弾性体の栓若しくは圧着キャップで密封されたフラスコ、または、事前に充填したすぐに投与できるシリンジである。
【0052】
代替法としては、界面活性剤(a)および(b)の両方は、DHAエステル、具体的には、DHAのニコチンエステルまたはDHAパンテノールエステル、具体的には、式(A)または式(B)を有するDHAのパンテノールモノエステルを加え、最後のホモジェナイズを行う前に、5%グルコース溶液などの非経口投与のための水溶液中で、事前に一緒にホモジェナイズすることができる。
【0053】
さらなる代替法としては、界面活性剤(a)およびDHAエステルは、界面活性剤(b)を加えて全体をホモジェナイズする前に、ホモジェナイズする。その後、溶媒、例えば、アルコール/水混合物、例えば、エタノール/水、例えば、それぞれ15.8:1 v/vで加え、ホモジェナイズを続ける。その後、真空乾燥により溶媒を除去する。得られた複合体は、その後、5%グルコース溶液で希釈する。得られた分散液は、例えば、高圧ホモジェナイザーを用いてホモジェナイズしてもよい。得られた製剤は、上記の0.22μmフィルターを通して濾過することにより滅菌される。
【0054】
抗酸化剤、pH調整剤および/または等張剤のいずれも、ホモジェナイズの前後のいずれかで溶解させる。
【0055】
一つの態様では、本発明の医薬組成物は、静脈内、動脈内、心臓内、皮下、皮内、筋肉内、脊椎内、硬膜下腔内、腹腔内、眼内、心室内、心膜内、硬膜内または関節内投与を意図している。
【0056】
一般に、本発明の組成物は、そのまま、または、5%グルコース溶液若しくは0.9%塩化ナトリウム水溶液などの生理学的に許容可能な溶液に希釈した後に、静脈内に投与される。
【0057】
これらの組成物はまた、動脈内、心臓内、皮下、皮内、筋肉内または脊椎内経路でも投与され得る。
【0058】
本発明はさらに、医薬製品としての使用のための、本発明の医薬組成物に関する。
【0059】
医薬製品は、例えば、上室性のおよび/または心室の不整脈、頻脈、および/または、細動、例えば、心房細動から選択される心臓血管疾患の予防および/または治療;心筋細胞の電気伝導機能異常により代表される疾患の予防および/または治療;例えば、高グリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、脂質代謝異常、例えば、混合型脂質代謝異常、血液凝固および/または血小板凝固因子II(トロンビン)機能亢進により誘発される動静脈血栓症、および/または、動脈性高血圧から選択される、心臓血管疾患の多重リスクファクターの予防および/または治療;上室性のおよび/または心室の不整脈、頻脈、細動および/または心筋梗塞により誘発される電気伝導機能異常、有利には、急死に由来する心臓血管疾患の一次若しくは二次予防および/または治療;梗塞後治療を意図している。
【0060】
本発明は、以降の図面および心房細動に関する試験に照らせば、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、リン脂質誘導体の一般的な構造を表す。
【図2】図2は、本発明の組成物(DHAのニコチンエステル10mg/kgを一回で+DHAのニコチンエステル10mg/kgを輸液で40分かけて)を120bpmおよび150bpmの頻度で刺激しながら投与した後の、麻酔したブタにおける心房の不応期の測定を表す。
【図3】図3は、比較組成物(反例)(DHAのニコチンエステル10mg/kgを一度に+DHAのニコチンエステル10mg/kgを輸液で40分かけて)を150bpmの頻度で刺激しながら投与した後の、麻痺したブタにおける心房の不応期の測定を表す。
【実施例】
【0062】
実施例1
例えば、心房細動の治療における表1で与えられる本発明の組成物の活性を、以降に記載される薬学的試験により完全に証明する。
【0063】
ランドレース種の雄の豚(22〜25kg)は、イソフルラン(1.5〜3%)を用いて麻酔する。その後、動物に挿管して空気を通し、動脈内の気体の値を生理学的限度内に維持する。第4肋間腔で、左開胸術を行う。動脈と乳房静脈を単離し、カテーテルを静脈に挿入して試験下で製品を投与し、動脈においては動脈圧を測定し、血液サンプルを回収する。心膜の埋め込みを実施する。心房心電図(ECG)を連続的に記録し、三本の電極を心外膜に配置し、縫合する。このために、ECGは、心房層上の情報のみを提供する。2本の二極式の電極は、左心耳上に配置した:これらは、所定の頻度で心耳を電気的に刺激するために用いられる。
【0064】
実験プロトコル:
十分な回復期間の後に、制御条件下で心房不応期の測定が開始できる。一連の連続した刺激(S1)は、心臓を刺激するには不十分な非常に低い電圧(0.1V)で開始する。電圧は、徐々に増加させて(0.1V間隔で)適用した頻度をモニターして刺激の閾値を測定する。この閾値は、刺激頻度それぞれに対して測定する。4つの刺激頻度は、90、120、150、180bpmである。もし、ブタが90bpmよりも大きい基準心拍数を有しているなら、第一の刺激頻度は適用しない。同様に、もし基準心拍数が低ければ(<90bpm)、試験される最後の刺激頻度(180bpm)は必ずしも心臓を刺激するわけではない。閾値が決定されると、刺激S1(10回の一連の刺激)の電圧は、閾値の倍と等しくし、割増刺激S2は閾値の4倍と等しくする。10回のS1毎に、割増刺激S2を不応期中(すなわち、最後のS1の80ms後に予想される不応期は少なくとも100msである)に与え、10回の刺激S1毎に、割増刺激は、それが鼓動に携わるまで、(5msの増加幅で)最後のS1から離す。S2への応答を誘発しない最も長い間隔が、心房の不応期である。不応期は、4つの異なる刺激頻度で連続して3回、すなわち12回の測定で、評価される(平均で表現)。試験下の製品は1回投与および40分(すべての不応期を評価するために必要な時間)にわたる輸液の形態で投与される。閾値は、再計算されず、不応期はすぐに測定される(1回投与の終了5分後に)。もし、製品が活性であれば、不応期は、対照相と比較して増加する。
【0065】
図2および3に示されるように、本発明の組成物だけが、この薬学的試験に対して明確に反応することは注目されるべきである。
【0066】
反例は、下記表2に示されるように、本発明による製剤と非常に類似した製剤であるが、これらは、劣った薬理活性を示すか、または、薬理活性を示さない。
【表3】

【0067】
従って、DHAのニコチンエステルを含む非経口投与のための組成物中で、界面活性剤の一つの欠如((a)または(b)、それぞれ、反例3および反例1)、または、(a)若しくは(b)以外の他の界面活性剤の使用は、望まれる活性を得られなくしてしまう。
【0068】
実施例2:式(B)を有するDHAのパンテノールエステルを含む注射用製剤
POPC=1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン
EPCS=卵ホスファチジルコリン
DMPG=1,2,ジミリストイルホスファチジルグリセロール
1− 溶媒存在下で複合体形成させることによる調製方法
Solutol HS15および式(B)を有するDHAのパンテノールエステルは、ホモジェナイズするまで50℃の温度で混合する。リン脂質をその後添加して、混合物を不活性雰囲気下、例えば、窒素中で1時間〜1時間30分50℃の温度で電磁式攪拌機下においた。エタノールおよび水、例えば、エタノール/水[15.8:1 v/v]を混合物に添加し、脂質が完全に分散するまで不活性雰囲気下で攪拌を続ける。その後、混合物は超音波処理により30分間処理して、リン脂質の完全な分散液を得る。得られた分散液は、少なくとも24時間真空下において溶媒および水を除去する。
【0069】
複合体は、5%グルコース溶液中に希釈する。分散液が不透明であれば、分散液が透明かつ透き通るまで高圧ホモジェナイザーでホモジェナイズする。それは、0.22μmのPVDFフィルターで滅菌する。
【0070】
2− DHAのパンテノールエステルとリン脂質およびSolutol HS15の分散液との混合による調製方法
リン脂質、Solutol HS15および5%グルコース溶液は、重量を測定し、今後物は、分散液が得られるまで電磁方式で攪拌し、60℃まで加熱する。その後、分散液は、透き通ったおよび/または透明な分散液が得られるまで、高圧ホモジェナイザーを用いて周期を回す。
【0071】
式(B)を有するDHAのパンテノールエステルは、その後、前記分散液に添加し、混合物は、13,500rpmにて1〜2分間ホモジェナイズする。その後、分散液は、透き通ったおよび/または透明な分散液が得られるまで、例えば、多くても5回だが、高圧ホモジェナイザーを用いて周期を回す。分散液は、0.22μmのPVDFフィルターを通して濾過する。
【0072】
3− DHAのパンテノールエステル、リン脂質およびSolutol HS15を混合することによる調製方法
すべての成分はフラスコに内で計量され、磁石の棒が加えられ、フラスコは不活性雰囲気下、例えば、窒素下で、密封される。混合物は、30分間、または、均一な分散液が得られるまで攪拌する。分散液は、13,500rpmで1〜2分間ホモジェナイズし、透き通ったおよび/または透明な分散液、若しくは、一定した透過性が得られるまで、例えば、6回の周期の後まで、高圧ホモジェナイザーで処理する。製剤は、0.22μmフィルターで濾過して、視覚的な様相、顕微鏡下での外観、pH、透明性および粒子サイズを、T0で、並びに4℃、25℃および40℃で2週間保存した後に、測定する。
【0073】
製剤は、下記表3に与えられる組成物で作られた。
【表4】

【0074】
上記実施例は、DHAのパンテノールエステル、例えば、式(B)を有するパンテノールエステルが、賦形剤と直接組み合わさって複合体(複合体は、5%グルコース溶液でその後希釈され、注射に適した分散液を与え得る)を形成し得るかを確かめるために用いられた。
【0075】
3通りの調製方法のそれぞれにより得られた組成物が、解析された。
【0076】
製剤の視覚的様相および外観は、顕微鏡下で観察され、pH、透過性および粒子サイズは、T0で、並びに4℃、25℃および40℃で2〜4週間保存した後に測定する。
【0077】
これらの観察の結果は、1mL当り30mgの式(B)を有するDHAのパンテノールエステル、Solutol HS15、DMPGと共にPOPCまたはEPCS、および、5%グルコース溶液を含む組成物は、記載された3通りの調製方法に従って調製することができるということである。2週間後もpHは安定に保持され、粒子サイズは100nm未満に保持された。HPLCクロマトグラフィーでは、分解物のピークは観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、および
b)少なくとも1つのリン脂質誘導体
から選択される少なくとも2つの界面活性剤の混合物を用いて水相に分散させたサブミクロンのドコサヘキサエン酸のエステル粒子を含む、非経口投与のための医薬組成物。
【請求項2】
ドコサヘキサエン酸のエステルが、ニコチンエステルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ドコサヘキサエン酸のエステルが、下記式(A):
【化1】

を有するDHAのパンテノールエステル、若しくは、その薬学上許容可能な塩、エナンチオマー、若しくは、ジアステレオマー、またはラセミ混合物を含むそれらの混合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ドコサヘキサエン酸のエステルが、下記式(B):
【化2】

を有するDHAのパンテノールエステルである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが、マクロゴール−15ヒドロキシステアレートである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
リン脂質誘導体が、例えば、大豆若しくは卵レクチンなどの天然起源のレクチン、例えば、大豆若しくは卵リン脂質などの天然起源のリン脂質、若しくは、合成リン脂質、または、それらの混合物から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
リン脂質誘導体が、中性リン脂質および負電荷のリン脂質の混合物である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ドコサヘキサエン酸エステルの濃度が、10mg/mL以上であり、有利には、30mg/mL以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
混合型ミセル若しくはベシクル、またはミセルおよびベシクルの複合構造の分散液である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
サブミクロンの粒子が、0.5未満の多分散性を有する、100nm未満、より具体的には、25〜70nmの平均サイズを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法であって、以下の工程:
− DHAエステル、具体的には、請求項2で定義されたDHAのニコチンエステルまたは請求項3若しくは4で定義されたDHAのパンテノールエステル、リン脂質誘導体およびポリオキシエチレン脂肪酸エステル、具体的には、SOLUTOL HS15を、非経口投与される水溶液、具体的には、5%グルコース溶液に、均一であるが濁った分散液が得られるまで、具体的には、約700rpmで攪拌して、分散させる工程、
− 得られた分散液を、例えば、ローター/タービン静翼を、具体的には、約13,500rpmで用い、その後、高圧ホモジェナイザーで、具体的には、1300〜1600バールでホモジェナイズする工程、
− 得られたコロイド状の製剤を、例えば、0.2μmの滅菌フィルターで濾過することにより滅菌する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項12】
静脈内、動脈内、心臓内、皮下、皮内、筋肉内、脊椎内、硬膜下腔内、腹腔内、眼内、心室内、心膜内、硬膜内、または関節内投与を意図した、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬製品としての使用のための、請求項1〜10および12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
医薬製品が、例えば、上室性のおよび/または心室の不整脈、頻脈、および/または、細動、例えば、心房細動から選択される心臓血管疾患の予防および/または治療;心筋細胞の電気伝導機能異常により代表される疾患の予防および/または治療;例えば、高グリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、脂質代謝異常、例えば、混合型脂質代謝異常、血液凝固および/または血小板凝固因子II(トロンビン)機能亢進により誘発される動静脈血栓症、および/または、動脈性高血圧症から選択される、心臓血管疾患の多重リスクファクターの予防および/または治療;上室性のおよび/または心室の不整脈、頻脈、細動、および/または、心筋梗塞により誘発される電気伝導機能異常、有利には、急死に由来する心臓血管疾患の一次若しくは二次予防および/または治療;梗塞後治療を意図した、請求項13に記載の医薬組成物。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−501752(P2013−501752A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524230(P2012−524230)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061701
【国際公開番号】WO2011/018480
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【Fターム(参考)】