説明

DNAとキトサンを利用した酵素固定化電極及びその製造方法

【課題】本発明は、容易に製造でき、酵素へのダメージが少なく、カーボンの分散性が良く、基質に漬けても剥がれにくい酵素固定化電極を提供することを課題とする。
【解決手段】生体成分高分子であるDNAとキトサンを用いることで、酵素へのダメージが少なく、製造が容易で、カーボンの分散性が高く、基質中に漬けても酵素が剥がれにくい(結着性が高い)酵素固定化電極を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAとキトサンを利用した酵素固定化電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素固定化電極は、バイオセンサーやバイオ燃料電池に用いられている。酵素固定化電極の製造方法は様々であり、その中で例として酵素を電極上に固定化するための結着剤、酵素-電極間の電子伝達を仲介させる電子メディエーター、電子伝達を促進するための電
子伝導性材料であるカーボン、カーボンを分散させる分散剤の4つを組み合わせて酵素を
修飾したものがある。例えば、特許文献1には、酵素溶液、ポリカチオン溶液、ポリアニオン溶液によりカーボン電極を作製する方法が開示されている。また、特許文献2には電子メディエーターを含んだ酵素電極生成溶液を電極に塗布し、乾燥させて酵素電極を作製する方法が開示されている。
【0003】
しかし、これらの従来技術で用いられる結着剤や分散剤にはNafion等のポリマーやカチオン性界面活性剤等が使用され、これらには酵素にダメージを与えるという問題があった。そのため、酵素にダメージを与えない素材を用いた電極が求められている。これまで、特許文献3及び4のように結着剤としてキトサンを用いることは知られていたが、DNAとキトサンを併用する電極は知られていなかった。
【0004】
また、従来の酵素電極の製造においては、例えば特許文献2及び3では、基体の上に段階的に材料を塗布し、乾燥等して固定する製法が採用されており、手順が複雑なものが多い。したがって、容易に製造でき、且つ、酵素やその他の素材を安定して固定できる酵素固定化電極およびその製造方法が求められている。
【0005】
さらに、従来の酵素固定化電極で一般に用いられている電子伝導性材料のカーボンナノチューブは高価であり、分散性が悪く、静電気的な力を受けやすいという問題がある。そのため、安価で、分散性がよく、静電気的な力を受けにくい素材を使用した電極およびその製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−178886号公報
【特許文献2】特開2004−294231号公報
【特許文献3】特開2003−329634号公報
【特許文献4】特開平9−80010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、容易に製造でき、酵素へのダメージが少なく、カーボンの分散性が良く、基質に漬けても剥がれにくい酵素固定化電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、生体成分高分子であるDNAとキトサンを用いることで、酵素へのダメージが少なく、製造が容易で、カーボンの分散性が高く、基質に漬けても酵素が剥がれにくい(結着性が高い)酵素固定化電極を見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)基体上にカーボン粒子および酵素が固定化された層を有する酵素固定化電極であって、前記層はDNAおよびキトサンを含む、酵素固定化電極。
(2)前記カーボン粒子がカーボンブラックである、(1)に記載の酵素固定化電極。
(3)DNAおよびキトサンの重量比が1:3〜3:1である、(1)又は(2)に記載の酵素固定化電極。
(4)前記層が、さらに電子メディエーターを含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の酵素固定化電極。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の酵素固定化電極を用いたバイオセンサー。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の酵素固定化電極を用いたバイオ燃料電池。
(7)DNA、キトサン、カーボン粒子及び酵素を混合する混合工程、
および、該混合物を基体に塗布する塗布工程を含む、酵素固定化電極の製造方法。
(8)前記カーボン粒子がカーボンブラックである、(7)に記載の酵素固定化電極の製造方法。
(9)前記混合工程において、DNAおよびキトサンを重量比1:3〜3:1で混合する、(7)又は(8)に記載の酵素固定化電極の製造方法。
(10)前記混合工程においてさらに電子メディエーターを混合するか、又は、前記混合工程の後に、さらに電子メディエーターを混合する工程を含む、(7)〜(9)のいずれかに記載の酵素固定化電極の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生体成分高分子であるDNAおよびキトサンを用いることで、従来のものに比べて、酵素を変性させにくい電極を製造することができる。また、DNAおよびキトサンが分散剤および結着剤として機能するので、カーボンの分散性が高く、基質に漬けても酵素が剥がれにくい電極を製造することができる。さらに、電極の製造において、一度に材料を混合し、塗布も一段階で済むため、手順の簡略化が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1及び比較例1の電極を用いて行ったCV曲線。
【図2】バッファーを載せた電極表面の様子(写真)。(A)比較例2の電極(B)実施例2の電極。
【図3】実施例3の電極を用いて行ったCV曲線。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、基体上にカーボン粒子および酵素が固定化された層を有する酵素固定化電極であって、前記層はDNAおよびキトサンを含む、酵素固定化電極である。
【0013】
以下、本発明の酵素固定化電極の作製法を例示する。ただし、この作製法は一例にすぎず、本発明の酵素固定化電極は以下の方法により作製されるものには限定されない。
1.まず、DNA溶液、キトサン溶液、カーボン粒子および酵素を混合する。
2.得られた混合物に対しガラスビーズを用いて超音波分散処理を行う。
3.所望の量の分散した混合物を取り、基体の電極塗布面に塗布し、乾燥させる。
【0014】
本発明は、このようにすべての材料を一度に混合して、塗布・乾燥することで作製でき、従来の電極の様な段階的な塗布を省略できるので、手順が簡便である。
【0015】
電極の基体
本発明の電極は電極材料を混合し、好ましくは分散させ、基体に塗布し、乾燥させることで作製される。本発明で用いる基体は、基体と固定化された酵素の層との界面に外部回路と電気的に接続可能な導電性のある部分を有していればよい。基体の導電性のある部分
に用いられる材料としては、炭素材料、金属、導電性高分子、金属酸化物を挙げることができ、炭素材料が好ましい。炭素材料としてはグラッシーカーボン、カーボンペースト、カーボンファイバー、グラファイト、導電性ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン等が挙げられる。金属材料としては、Pt、Au、Ag等が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン類、ポリアリーレン類、ポリアリーレンビニレン類等が挙げられる。金属酸化物としては、In、Sn、Zn等を含む金属酸化物が挙げられる。
【0016】
本発明では、酵素固定化層の分散剤および結着剤として、DNAおよびキトサンを含む。DNAおよびキトサンは生体成分高分子であり、酵素を変性させにくい。また、DNAはマイナスに帯電したポリアニオンであり、キトサンはプラスに帯電したポリカチオンである。これらポリアニオンおよびポリカチオンは、個々ではカーボンの分散剤として機能し、両者を混合することで結着剤の役割を果たす。このような役割により、基質に電極を漬けても、酵素が剥がれにくい酵素固定化電極を実現できる。
【0017】
DNA
用いるDNAは天然由来でも合成物でも良く、配列は何でも良い。また、1本鎖DNAを用いても、2本鎖DNAを用いてもよいが、2本鎖DNAを用いるのが好ましい。用いるDNAの長さは特に制限されないが、2本鎖DNAの場合は、50〜10000bpのものを用いることが好ましく、50〜2000bpの混合物を用いることがより好ましい。例えば、染色体DNAを超音波処理して得られた50〜2000bpの長さの混合物を用いることができる。
【0018】
キトサン
用いるキトサンは天然由来でも合成物でも良い。修飾体でも良いが、DNAとの結合のため、アミノ基が多いものが好ましい。分子量も特に制限されないが粘度(0.5%酢酸、0.5%キトサン溶液)300cps以上が好ましい。
【0019】
DNAとキトサンの混合比および濃度
本発明では、酵素固定化層の分散剤および結着剤として、DNAおよびキトサンを混合して用いる。その重量比はDNA:キトサン=3:1〜1:3で用いることが好ましく、1:1が特に好ましい。どちらか一方のみでは結着剤の役割を果たすことができず、電極が剥がれやすくなってしまう。DNAまたはキトサン溶液の濃度は特に限定されないが、例えば、それぞれ1〜3mg/mlのものを用いることができる。電極に塗布する混合物中のDNAまたはキトサン溶液の最終濃度は0.25〜5mg/mlで調製することが好ましい。また、DNAまたはキトサンは後述するカーボン粒子に対し、それぞれ、重量比でDNA:カーボン粒子=1:5〜100、キトサン:カーボン粒子=1:5〜100で用いるのが好ましく、DNA:カーボン粒子=1:25、キトサン:カーボン粒子=1:25で用いるのが特に好ましい。
【0020】
カーボン粒子
本発明に用いるカーボン粒子としては、直径3〜500nmのものを用いることができる。カーボン粒子の例としてはカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノホーン等が挙げられるが、カーボンブラックが好ましい。本発明では、カーボン粒子の濃度は電極に塗布する混合物中1〜50mg/mlが好ましい。
【0021】
カーボンブラックは直径3〜500nm程度の炭素の微粒子である。製造法により、粒子径、粒子のつながり、表面性状(官能基)をある程度コントロールできる。このようなカーボンブラックは、その微粒子間に粒界ができ、そこに酵素が入り込むことで、基質中に浸けても剥がれにくい酵素の固定化が可能になる。従来の酵素電極では、カーボンナノチューブが用いられていたが、高価で、分散性が悪く、静電気的な力を受けやすいという
欠点があった。それに比べてカーボンブラックは安価で、分散性が良い。
【0022】
カーボンブラックとしては直径3〜500nmのものを用いることができる。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、170〜300cm3/100gのものが好ましい。
このような好ましいカーボンブラックの例としては、Vulcan XC72R(Cabot社)、ケッチェンブラックEC300J、ケッチェンブラックEC600JD(ライオン株式会社)が挙げられる。
【0023】
酵素
本発明に用いる酵素は、酵素(酵素タンパク)であれば特に限定されず、例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素であっても良い。また、本発明に用いる酵素は、生来の酵素分子であっても、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。このような酵素分子や酵素断片は、動植物や微生物から抽出したものでも良く、形質転換体由来のものでも化学的に合成したものであっても良い。酵素の量は、用いる酵素の活性に応じて選択することができる。
【0024】
酸化還元酵素としては、例えば、グルコースオキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ホルムアルデヒドオキシダーゼ、ソルビトールオキシダーゼ、フルクトースオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、フルクトシルアミンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、サルコシンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ソルビトールデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、グリセロールデヒドロゲナーゼ、グルタメートデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、ウリカーゼ等を用いることができる。
【0025】
加水分解酵素としては、例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、インベルターゼ、マルターゼ、β−ガラクトシダーゼ、リゾチーム、ウレアーゼ、エステラーゼ、ヌクレアーゼ群、ホスファターゼ群等を用いることができる。
転移酵素としては、例えば、各種アシル転移酵素、キナーゼ群、アミノトランスフェラーゼ群等を用いることができる。
異性化酵素としては、例えば、ラセマーゼ群、ホスホグリセリン酸ホスホムターゼ、グルコース6−リン酸イソメラーゼ等を用いることができる。
【0026】
本発明に用いる酵素は、例えば電極をバイオセンサーとして用いる場合、測定対象物質に応じて選択することができる。測定対象物質がグルコースである場合はグルコースオキシダーゼが採用され、測定対象物質が尿酸である場合にはウリカーゼが採用される。
【0027】
電子メディエーター(電子伝達媒介分子)
本発明の電極には、さらに酵素−電極間の電子の運搬を促進する電子メディエーターを用いることもできる。電子メディエーターを混合する場合は、DNA、キトサン、カーボン粒子及び酵素と共に初めから混合しても良いし、混合物を分散させた後に加えても良い。
【0028】
電子メディエーターの種類は特に限定されないが、テトラチアフルバレン(TTF)、フェリシアン化カリウム、フェロセン、フェロセン誘導体、ベンゾキノン、キノン誘導体、オスミウム錯体等公知のものを用いることができ、テトラチアフルバレン(TTF)が好適に例示できる。
【0029】
本発明により作製される電極は、バイオセンサーやバイオ燃料電池に用いることができる。バイオセンサーとして用いる場合は、例えばグルコースセンサー等が例示できる。グルコースセンサーは、電極のグルコースオキシダーゼがグルコースを酸化することにより得られる電流から、試料中のグルコース濃度を知ることができものである。
【0030】
バイオ燃料電池として用いる場合は、例えば、酸化酵素電極にグルコースオキシダーゼを用い、還元酵素電極にビリルビンオキシダーゼを用いることができる。その場合、グルコースオキシダーゼによるグルコースの酸化反応と、ビリルビンオキシダーゼによる酸素の還元反応により電気エネルギーを得ることができる。また、還元電極には白金電極等を用いることもできる
【実施例】
【0031】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0032】
DNAおよびキトサンの調製
本実施例で用いるDNA溶液は、5mg/mlの牛胸腺由来のDNAを5分間超音波処理し、約50〜2000bpの断片の混合物にしたものを、2mg/mlに希釈して用いた。キトサンは粘度(0.5%酢酸、0.5%キトサン溶液)300cpsのものを用いた。
【0033】
DNAとキトサンの混合比の検討
DNAとキトサンの混合比を決めるために、以下の内容で結着性を試験した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1のNo.1〜5の混合量で調製し、それぞれソニケーター(アズワン社)で1時間混合

100μlずつガラス板にスポット

1日乾燥

Milli−Q水に漬ける
【0036】
Milli−Q水に漬けると、No.1と5のスポットはすべて剥がれてしまった。一方、No.2〜4はスポットが残り、No.3が一番結着性が高かった。したがって、D
NAとキトサンの混合比は重量比で3:1〜1:3が好ましく、1:1が特に好ましいと考えられた。
【0037】
実施例1:グルコースオキシダーゼ修飾電極
以下の手順で、グルコースオキシダーゼ修飾電極(実施例1)を作製した。
【0038】
2mg/ml DNA 200μl
2mg/ml キトサン 200μl
Vulcan XC72R(Cabot社) 10mg
Glucose Oxidase(オリエンタル酵母工業社) 2mg

上記材料をボルテックスミキサーを用いて混合した。

得られた混合物に対してULTRASONIC CLEANER MUS−60(東京理化器械)を使用し、ガラスビーズを用いた超音波分散処理を20分行った。

超音波分散処理を行った混合物を10μl取り、グラッシーカーボン電極(BAS社)に塗布し、1日乾燥させた。
【0039】
比較例1:グルコースオキシダーゼを含有しない電極
以下の手順で、グルコースオキシダーゼを含有しない電極(比較例1)を作製した。
【0040】
2mg/ml DNA 200μl
2mg/ml キトサン 200μl
Vulcan XC72R(Cabot社) 10mg

上記材料をボルテックスミキサーを用いて混合した。

得られた混合物に対してULTRASONIC CLEANER MUS−60(東京理化器械)を使用し、ガラスビーズを用いた超音波分散処理を20分行った。

超音波分散処理を行った混合物を10μl取り、グラッシーカーボン電極(BAS社)に塗布し、1日乾燥させた。
【0041】
電極の評価
上記のように作製した、実施例1の電極および比較例1の電極を用いて、窒素飽和した10mMリン酸バッファー(pH7.4)中で、走査速度0.01V/sで、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。基準電極にはAg/AgCl電極(飽和KCl)を用い、補助電極には白金電極を用いた。得られたCV曲線を図1に示す。実施例1の曲線では、−0.46V付近にピークが現れた。グルコースオキシダーゼ自体の酸化還元電位は−0.46Vであることが知られている(Y. Liu et al., Biosensor and Bioelectronics 21 (2005) 984-988)。このピーク面積から概算すると、グルコースオキシダー
ゼの酸化量が約256pmolであり、還元量が約322pmolであることが分かった。これは、グルコースオキシダーゼの塗布量である約300pmolとほぼ一致している。これらの結果は、塗布したグルコースオキシダーゼのほぼ全量が電極に固定できたことを示唆している。なお、実施例1及び比較例1では、結着条件の比較と、固定化されたグルコースオキシダーゼの量の比較を行うため、電子メディエーターであるTTFは添加しなかった。
【0042】
実施例2:メディエーター型グルコースオキシダーゼ修飾電極
以下の手順で、グルコースオキシダーゼ修飾電極(実施例2)を作製した。
【0043】
2mg/ml DNA 200μl
2mg/ml キトサン 200μl
Vulcan XC72R(Cabot社) 10mg
Glucose Oxidase(オリエンタル酵母工業社) 2mg

上記材料をボルテックスミキサーを用いて混合した。

得られた混合物に対してULTRASONIC CLEANER MUS−60(東京理化器械)を使用し、ガラスビーズを用いた超音波分散処理を20分行った。

超音波分散処理を行った混合物を100μl取り、30μlのTTFメタノール飽和溶液(シグマアルドリッチ)を添加した。

TTFを添加した混合物から13μl取り、グラッシーカーボン電極(BAS社)に塗布し、1日乾燥させた。
【0044】
比較例2:従来型のメディエーター型グルコースオキシダーゼ修飾電極
以下の手順で、段階的な塗布による、界面活性剤および結着剤を使用した従来型のグルコースオキシダーゼ修飾電極(比較例2)を作製した。
【0045】
1mg/ml Vulcan懸濁液(0.1wt%CTAB1mlにVulcan XC72Rを1mg加え、ガラスビーズを用いた超音波処理を30分行ったもの)を、グラッシーカーボン電極(BAS社)に10μl塗布し、一晩乾燥させた。

20mg/mlのグルコースオキシダーゼ水溶液を15μl塗布し、一晩乾燥させた。

TTFメタノール飽和溶液15μl塗布し、一晩乾燥させた。

1mg/ml Vulcan懸濁液を10μl塗布し、一晩乾燥させた。

PLL(poly−L−lysine(モノマーユニットで50mmol/dm3))
およびPSS(Poly(sodium 4−stylenesulfonate)(モノマーユニットで60mmol/dm3))の混合液16μl(PLL10μl+PSS
6μl)塗布し、一晩乾燥させた。
【0046】
電極の評価
上記のように作製した、実施例2の電極および比較例2の電極の表面に0.1Mグルコースを含むバッファーを載せ、電極表面の様子を比較した。この写真を図2に示す。比較例2の電極は、分布が不均一であり、グルコースオキシダーゼおよびTTFの溶出が確認できた。それに対し、実施例2の電極は、均一であり、グルコースオキシダーゼおよびTTFの溶出はなかった。作製した電極をサイクリックボルタンメトリーで評価したところ、比較例2の電極は、基質中で電極が剥がれ、計測できなかった。一方、実施例2の電極ではグルコースオキシダーゼの活性が保たれていることが示された。これらの結果により、本発明の電極は従来のものより容易に作製でき、且つ、カーボンの分散性及び酵素の結着性が高いことが示された。従来の段階的塗布による電極の作製方法では結着性が不十分であるために、分布が不均一となり、基質中で電極が剥がれてしまうと考えられる。
【0047】
実施例3:メディエーター型グルコースオキシダーゼ修飾電極
以下の手順で、グルコースオキシダーゼ修飾電極(実施例3)を作製した。
【0048】
2mg/ml DNA 200μl
2mg/ml キトサン 200μl
Vulcan XC72R(Cabot社) 10mg
Glucose Oxidase(オリエンタル酵母工業社) 2mg
TTF(メタノール飽和溶液) 118μl

上記材料をボルテックスミキサーを用いて混合した。

得られた混合物に対してULTRASONIC CLEANER MUS−60(東京理化器械)を使用し、ガラスビーズを用いた超音波分散処理を20分行った。

超音波分散処理を行った混合物から13μl取り、グラッシーカーボン電極(BAS社)に塗布し、1日乾燥させた。
【0049】
上記のように作製した、実施例3の電極を用いて、走査速度0.01V/sにて、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。基準電極にはAg/AgCl電極(飽和KCl)を用い、補助電極には白金電極を用いた。窒素飽和した10mMリン酸バッファー(pH7.4)中で測定した曲線(以下、「グルコース無」とする)と、0.1Mグルコースを含む窒素飽和した10mMリン酸バッファー(pH7.4)中で測定した曲線(以下、「グルコース入り」とする)とを比較した。得られたCV曲線を図3に示す。電流値に大きな差が確認できた。これにより実施例3の電極ではグルコースオキシダーゼの活性が保たれていることが示された。
【0050】
また、実施例3の電極を他の文献による調製法と比較した表を以下に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2によると、実施例3の電極では、酵素の固定量300pmolで出力が22μA/mm2であるのに対し、Komaba et alの電極では、酵素の固定量2μmolで出力は実施
例3と同等の20μA/mm2であった。このことから、従来の方法では、約7倍の酵素
を固定しているにもかかわらず、酵素がダメージを受けているために、実施例3と同等の出力となってしまうと考えられる。すなわち、本願発明の方法により酵素のダメージをなくすことが可能になったと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上にカーボン粒子および酵素が固定化された層を有する酵素固定化電極であって、前記層はDNAおよびキトサンを含む、酵素固定化電極。
【請求項2】
前記カーボン粒子がカーボンブラックである、請求項1に記載の酵素固定化電極。
【請求項3】
DNAおよびキトサンの重量比が1:3〜3:1である、請求項1又は2に記載の酵素固定化電極。
【請求項4】
前記層が、さらに電子メディエーターを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酵素固定化電極。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の酵素固定化電極を用いたバイオセンサー。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の酵素固定化電極を用いたバイオ燃料電池。
【請求項7】
DNA、キトサン、カーボン粒子及び酵素を混合する混合工程、
および、該混合物を基体に塗布する塗布工程を含む、酵素固定化電極の製造方法。
【請求項8】
前記カーボン粒子がカーボンブラックである、請求項7に記載の酵素固定化電極の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程において、DNAおよびキトサンを重量比1:3〜3:1で混合する、請求項7又は8に記載の酵素固定化電極の製造方法。
【請求項10】
前記混合工程においてさらに電子メディエーターを混合するか、又は、前記混合工程の後に、さらに電子メディエーターを混合する工程を含む、請求項7〜9のいずれかに記載の酵素固定化電極の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−53907(P2013−53907A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191800(P2011−191800)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】