説明

Eg5阻害化合物

【課題】置換基としてシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基またはピペリジノ基を有する非縮合二環性化合物を有効成分として含有するEg5阻害剤を提供する。
【解決手段】式(I)


(式中、XおよびXの片方が、−SONH、−NHSONH、−NHCONH、−NHCSNH等を、他方がRまたはRを表し、RおよびRは、アルキル、ハロゲン等を表し、Rは、水素、ハロゲン等を表し、Zは、窒素または炭素等を表す)で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するEg5阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換基としてシクロヘキシル基、シクロヘキセニル基またはピペリジノ基を有する非縮合二環性化合物を有効成分として含有するEg5阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
Eg5(KSP)は、モータータンパクの一種であり、癌細胞などの細胞分裂において重要な役割を果たしている。すなわちEg5は、中心体の分離・移動、紡錘体の形成・維持および紡錘体極の形成などに関与しており、M期における細胞分裂の進行を制御している(例えば、非特許文献1参照)。Eg5を阻害することにより、癌細胞はM期に停止され、アポトーシスが誘導されることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。したがってEg5阻害剤は、癌などの細胞増殖性疾患の治療薬として期待される。
【0003】
抗ウイルス活性を有している下記式(A)
【0004】
【化1】

で表される化合物において、置換基としてチオウレア基を有し、A〜Aで形成される環がフェニル基を表し、Aの置換基がシクロヘキシル基やピペリジノ基であるベンゼン誘導体が知られている。具体的には、例えば、下記式(A−1)、(A−2)等で示される化合物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【化2】

【0006】
また、下記式(B)で示されるビフェニル誘導体において、RおよびRの少なくとも一つのアミノ基が、アルキルスルホニル基等で置換されたアルキルスルホニルアミノ基等を有する化合物(例えば、特許文献2参照)が、また、スルファモイル基で置換されたスルファモイルアミノ基等を有する化合物(例えば、特許文献3参照)が、さらに、カルバモイル基で置換されたウレイド基等を有する化合物(例えば、特許文献4参照)が、KSP阻害活性を有し抗癌剤等として有用であることが知られている。
【0007】
【化3】

【0008】
(式中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン、アミノスルホニル、アミノカルボニル等を、Yは、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキル基、ハロゲン、トリフルオロメトキシ、SOCF、COCF等を表す)
【0009】
また、KSP阻害活性を有する下記式(C)で示されるビフェニル誘導体において、Rが、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基およびウレイド基等を有する化合物(例えば、非特許文献3参照)が記載されている。
【0010】
【化4】

【0011】
(式中、R、R、Rは、水素原子、メチル、メトキシ、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン等を表す)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2005/007601
【特許文献2】WO2005/060692
【特許文献3】WO2005/062847
【特許文献4】WO2006/020358
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cell, 1995, 83, 1159-1169
【非特許文献2】Curr. Biol., 1998, 8, 903-913
【非特許文献3】J. Med. Chem., 50, 4939-4952 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、ベンゼン環に、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ピペリジン環等が直接結合したある種の非縮合二環性化合物を有効成分として含有するEg5阻害剤および新規非縮合二環性化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ベンゼン環に、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、ピペリジン環等6員環状化合物が直接結合した二環性化合物のパラ位にスルファモイル基や、スルホニル、ホルミル、カルバモイル、チオカルバモイル等で置換されたアミノ基等を置換基として有する非縮合二環性化合物が、Eg5阻害活性を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1) 式(I)
【0017】
【化5】

【0018】
{式中、
a−b間の結合は、単結合または二重結合を表し、
は、置換若しくは非置換アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子または置換若しくは非置換アルキル基を表す)、SiR(式中、R、R及びRは、同一または異なって、前記Rの定義と同義である)、ハロゲン原子またはSFを表し、ここで、Rが同時に複数存在するときは、同一または異なっていてもよく、
は、前記Rと同義であるか、または、Rが同一炭素に同時に二個存在するとき、二個のRが一緒になって、置換若しくは非置換アルキリデン基、オキソ基またはスピロ環を形成してもよく、ここで、Rが同時に複数存在するときは、同一または異なっていてもよく、
は、水素原子、ハロゲン原子またはニトロ基を表し、
及びXは、Xが−Y−Q[式中、Yは、単結合または置換若しくは非置換アルキレン基を表し、Qは、−SONH、−NHSO(式中、Rは、置換若しくは非置換アルキル基またはアミノ基を表す)、−NHCOR(式中、Rは、水素原子またはアミノ基を表す)または−NHCSNHを表す]を表すとき、Xは、前記Rの定義と同義であり、Xが−Y−Q(式中、Y及びQは、前記と同義である)を表すとき、Xは、前記Rの定義と同義であり、
Zは、a−b間の結合が単結合を表すとき、窒素原子、CHまたはCR(式中、Rは、前記と同義である)を表し、a−b間の結合が二重結合を表すとき、炭素原子を表し、
mは、0〜3の整数を表し
nは、0〜9の整数を表す}
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するEg5阻害剤や、
(2) 式(I)で表される化合物が、下記式(Ia)
【0019】
【化6】

【0020】
(式中、nは、0〜10の整数を表し、R、R、R、X、X及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)記載のEg5阻害剤や、
(3) 式(Ia)で表される化合物が、下記式(Iaa)
【0021】
【化7】

【0022】
(式中、nは、1〜11の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれか記載のEg5阻害剤や、
(4) 式(Ia)で表される化合物が、下記式(Iab)
【0023】
【化8】

【0024】
(式中、mは、1〜4の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれか記載のEg5阻害剤や、
(5) 式(I)で表される化合物が、下記式(Ib)
【0025】
【化9】

【0026】
(式中、nは、0〜8の整数を表し、R、R、R、X、X及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)記載のEg5阻害剤や、
(6) 式(Ib)で表される化合物が、下記式(Iba)
【0027】
【化10】

【0028】
(式中、nは、1〜9の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)または(5)のいずれか記載のEg5阻害剤や、
(7) 式(Ib)で表される化合物が、下記式(Ibb)
【0029】
【化11】

【0030】
(式中、mは、1〜4の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)または(5)のいずれか記載のEg5阻害剤や、
(8) 式(I)で表される化合物が、下記式(Ic)
【0031】
【化12】

【0032】
(式中、R、R、X、X、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)記載のEg5阻害剤や、
(9) 式(Ic)で表される化合物が、下記式(Ica)
【0033】
【化13】

【0034】
(式中、Q、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)または(8)のいずれか記載のEg5阻害剤や、
(10) 式(Ic)で表される化合物が、下記式(Icb)
【0035】
【化14】

【0036】
(式中、Q、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする上記(1)または(8)のいずれか記載のEg5阻害剤に関する。
【0037】
また、本発明は、
(11) 上記(1)〜(10)のいずれか記載のEg5阻害剤の少なくとも一成分を有効成分として含有することを特徴とする抗癌剤に関する。
【0038】
さらに、本発明は、
(12) 式(Iaa−A)
【0039】
【化15】

【0040】
[式中、Qは、Qの定義中の−SONH、−NHSO5a(式中、R5aは、メチル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基またはアミノ基を表す)及び−NHCOR(式中、Rは、前記と同義である)から選ばれ、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩や、
(13) 式(Iba−A)
【0041】
【化16】

【0042】
(式中、Q、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩や、
(14) 式(Ica−A)
【0043】
【化17】

【0044】
(式中、Qは、Qの定義中の−NHSO5a(式中、R5aは、前記と同義である)及び−NHCOR(式中、Rは、前記と同義である)から選ばれ、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩や、
(15) 式(Icb−A)
【0045】
【化18】

【0046】
[式中、Qは、Qの定義中の−NHSO5a(式中、R5aは、前記と同義である)、−NHCOR(式中、Rは、前記と同義である)及び−NHCSNHから選ばれ、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩に関する。
【発明の効果】
【0047】
本発明で使用される化合物(I)は、これまで知られていなかった優れたEg5阻害活性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明のEg5阻害剤として使用される化合物(I)における各基の定義に用いられる基の具体例を示すが、これらは本発明の好ましい例を示すものであって、勿論これらによって限定されるものではない。
【0049】
アルキル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数1〜12のアルキル、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。
【0050】
アルキレン基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数1〜12のアルキレン、具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン等が挙げられる。
【0051】
アルキリデン基は、例えば、直鎖、分岐状または環状の炭素数1〜12のアルキリデン、具体的には、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、ビニリデン、シクロヘキシリデン等が挙げられる。
【0052】
スピロ環は、例えば、炭素数3〜8のシクロアルカン類、具体的には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、1−シクロヘキセン等から形成されるスピロ環が挙げられる。
【0053】
ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
また、これらの各基において位置異性体が存在する基は、すべての可能な位置異性体を表す。
【0054】
アルキル基、アルキレン基およびアルキリデン基における置換基としては、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基、脂環式複素環基、OR、NR、S(O)pR(式中、pは、0、1または2を表す)、COR、COOR、OCOR、CONR、SONR、ニトロ基、シアノ基およびハロゲン原子等から適宜選択される。ここで、R〜Rは、同一または異なって、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基または脂環式複素環基等を表す。
【0055】
ここで、置換基としてのアルケニル基は、例えば、直鎖または分岐状の炭素数2〜12のアルケニル、具体的には、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、メタクリル、ブテニル、1,3−ブタジエニル、クロチル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、デセニル、ドデセニル等が挙げられる。
【0056】
シクロアルキル基は、飽和または一部不飽和結合が存在してもよい3〜12員のシクロアルキル基であり、単環性あるいは該単環性のシクロアルキル基が複数またはアリール基もしくは芳香族複素環基と縮合した多環性の縮合シクロアルキル基であってもよく、単環性のシクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜8の単環性シクロアルキル、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、1−シクロヘキセニル等が挙げられ、多環性のシクロアルキル基としては、例えば、炭素数5〜12の多環性シクロアルキル、具体的には、ピナニル、アダマンチル、ビシクロ[3.3.1]オクチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル等が挙げられる。
【0057】
アリール基は、例えば、炭素数6〜14のアリール、具体的には、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【0058】
芳香族複素環基は、同一または異なって、少なくとも1以上の異項原子、例えば、窒素、酸素、硫黄等を含む5員または6員の芳香族複素環基からなり、該複素環基は、単環性または該単環性複素環基が複数またはアリール基と縮合した多環性の縮合芳香族複素環基、例えば、二環性もしくは三環性複素環基であってもよい。単環性の芳香族複素環基の具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル等が挙げられ、多環性の縮合芳香族複素環基としては、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、カルバゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、フタラジニル、キノキサリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、ピリドピリミジニル、ピリミドピリミジニル、プテリジニル、アクリジニル、チアントレニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル等を挙げることができる。
【0059】
脂環式複素環基は、同一または異なって、少なくとも1以上の異項原子、例えば、窒素、酸素、硫黄等を含み、飽和または一部不飽和結合が存在してもよい3〜8員の脂環式複素環基であり、単環性あるいは該単環性の複素環基が複数またはアリール基もしくは芳香族複素環基と縮合した多環性の縮合脂環式複素環基であってもよい。単環性の脂環式複素環基として、具体的には、アジリジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジヒドロチアゾリル、テトラヒドロフラニル、1,3−ジオキソラニル、チオラニル、オキサゾリジル、チアゾリジニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペラジニル、ホモピペリジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、オキサチアニル、オキサジアジニル、チアジアジニル、ジチアジニル、アゼピニル、ジヒドロアゾシニル等が例示され、多環性の縮合脂環式複素環基として、具体的には、インドリニル、イソインドリニル、クロマニル、イソクロマニル、キヌクリジニル等を挙げることができる。
ハロゲン原子は、前記と同義である。
【0060】
また、置換基としのシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環基および脂環式複素環基等は、さらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記した置換基と同様のものが挙げられる。
【0061】
これら置換基の置換数としては、同一または異なって、最大各基に存在する水素原子の数まで可能であるが、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
【0062】
式(I)で表される本発明のEg5阻害剤として使用される化合物(以下、化合物(I)という。他の式番号の化合物についても同様である)は、抗癌剤として有用であり、抗癌剤として使用できる化合物(I)としては、化合物(I)であれば特に制限されない。
【0063】
化合物(I)の薬理学的に許容される塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の各無機酸塩、および、有機酸としてのギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸類が挙げられる。薬理学的に許容される金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩が、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の各塩が、薬理学的に許容される有機アミン塩としては、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、トルイジン等の各塩が、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、リジン、グリシン、フェニルアラニン等の付加塩が挙げられる。
【0064】
次に、化合物(I)の製造法について説明するが、該化合物は、文献(例えば、Jie Jack Li等、Palladium in Heterocyclic chemistry、Pergamon出版、2000年6月、6−18頁および183−232頁等)記載の方法に準じて、種々のクロスカップリング反応を用いることで製造可能である。
【0065】
製造法1
化合物(Ia)および(Ib)は、次の反応工程に従い製造することができる。
【0066】
【化19】

【0067】
(式中、Lは脱離基を表し、Mはクロスカップリング反応に適した含金属脱離基を表し、a−b、X、X、R、R、R、mおよびnは前記と同義である)
【0068】
Lの定義における脱離基としては、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアルキルスルホニルオキシ基、置換もしくは非置換のアリールスルホニルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子は前記と同義である。アルキルスルホニルオキシ基は、そのアルキル部分は前記アルキル基と同義であり、例えば、炭素数1〜12のアルキルスルホニルオキシ基が、また、アリールスルホニルオキシ基は、そのアリール部分は前記アリール基と同義であり、例えば、炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基が挙げられ、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基等が挙げられ、ハロゲン原子およびアルキル基は前記と同義である。具体的には、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ等のアルキルスルホニルオキシ基や、ベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ等のアリールスルホニルオキシ基を例示することができる。
【0069】
Mの定義におけるクロスカップリング反応に適した含金属脱離基の金属としては、リチウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、スズ等が挙げられ、含金属脱離基の具体例としては、−B(OH)、−B(−OC(CHC(CHO−)、−MgCl、−MgBr、−ZnBr、−ZnI、−Sn(nBu)、−SiCl(C)等が挙げられる。
【0070】
化合物(Ia)および(Ib)は、化合物(1a)と化合物(2a)または化合物(1b)と化合物(2b)とを、遷移金属触媒および塩基存在下、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、水もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。
【0071】
遷移金属触媒の遷移金属としては、パラジウム、ニッケル、銅、鉄等が挙げられ、遷移金属触媒の具体例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)等が挙げられる。これらの遷移金属触媒は、配位子存在下、対応する遷移金属塩等からin situで調製してもよく、配位子としてはトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’ ,6’−トリイソプロピルビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等が挙げられ、遷移金属塩等としては塩化パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウム−炭素、塩化ニッケル、塩化銅(I)、酸化銅(I)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)等が挙げられる。
【0072】
塩基としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、カリウム tert−ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
なお、化合物(1a)、(1b)および化合物(2a)、(2b)は、市販品として入手可能であるか、上記文献等に記載されている方法あるいはそれらに準じて得ることもできる。
【0073】
製造法2
化合物(Ic)は、次の反応工程に従い製造することができる。
【0074】
【化20】

【0075】
(式中、L、X、X、R、R、R、mおよびnは前記と同義である)
化合物(Ic)は、化合物(3)と化合物(2b)とを、製造法1記載の方法に準じて得ることができる。
なお、化合物(3)は、市販品として入手可能であるか、上記文献等に記載されている方法あるいはそれらに準じて得ることもできる。
【0076】
製造法3
化合物(Id)〜化合物(Ih)は、置換基としてアミノ基を有する化合物(II)または(III)から、下記反応工程に示される方法(a)〜(g)等によっても製造することができる。
化合物(II)および(III)は、上記文献等に記載されている方法、参考例に記載されている方法あるいはそれらに準じて合成することができる。
【0077】
【化21】

【0078】
(式中、Cyは、式(II)または(III)で表される化合物からアミノ基を除いた基を表し、a−b、L、R、R、R,R、Z、m、m、nおよびnは前記と同義である)
【0079】
方法(a):
化合物(Id)は、常法により、化合物(II)または(III)をカルバモイル化することにより得ることができる。すなわち、化合物(Id)は、化合物(II)または(III)とシアン酸カリウム等とを、酸存在下、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、酢酸、塩酸、水等のプロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、酢酸、ピバル酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム等のルイス酸等が挙げられる。
【0080】
方法(b):
化合物(Id)は、化合物(II)または(III)を常法(例えば、ホスゲン、トリホスゲン、N,N’−カルボニルジイミダゾール等)により対応するイソシアネートへ誘導した後に、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、アンモニアと5分〜48時間反応させることにより得ることができる。
【0081】
方法(c):
化合物(Ie)は、常法により、化合物(II)または(III)をチオカルバモイル化することにより得ることができる。すなわち、化合物(Ie)は、化合物(II)または(III)とチオシアン酸カリウム等とを、酸存在下、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、酢酸、塩酸、水等のプロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。使用する酸としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、酢酸、ピバル酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム等のルイス酸等が挙げられる。
【0082】
方法(d):
化合物(Ie)は、化合物(II)または(III)を常法(例えば、チオホスゲン、N,N’−チオカルボニルジイミダゾール等)により対応するイソチオシアネートへ誘導した後に、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、アンモニアと5分〜48時間反応させることにより得ることができる。
【0083】
方法(e):
化合物(If)は、化合物(II)または(III)をスルファモイル化することにより得ることができる。すなわち、化合物(If)は、化合物(II)または(III)と市販もしくは常法(例えば、Bioorg. Med. Chem.、2002、10、1509−1523)により合成できるスルファモイルクロリドやスルファミド誘導体等とを、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。本反応は、場合によっては塩基を必要とし、その場合の塩基としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、カリウム tert−ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0084】
方法(f):
化合物(Ig)は、化合物(II)または(III)をスルホニル化することにより得ることができる。すなわち、化合物(Ig)は、化合物(II)または(III)と市販のスルホニルクロリドやスルホン酸無水物等とを、塩基存在下、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。使用する塩基としては、例えばトリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基、ナトリウムメトキシド、カリウム tert−ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
【0085】
方法(g):
化合物(Ih)は、化合物(II)または(III)をホルミル化することにより得ることができる。すなわち、化合物(Ih)は、化合物(II)または(III)とギ酸等とを、適当な不活性溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、DMF、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒もしくはこれらの混合溶媒中、−78℃〜用いた溶媒の沸点の間の温度で、5分〜48時間反応させることにより得ることができる。本反応は、場合によっては縮合剤を必要とし、その場合の縮合剤としては、例えば、DCC、WSCI等のカルボジイミド系縮合剤、BOP等のホスホニウム型縮合剤、HATU、HBTU等のグアニジウム塩型縮合剤、DMT−MM、CDI、DPP−Cl等が挙げられる。
【0086】
製造法4
化合物(Id)は、置換基としてカルボキシル基を有する化合物(IV)または(V)から、下記反応式に示される方法によっても製造することができる。
【0087】
【化22】

【0088】
(式中、Cyは、式(IV)または(V)で表される化合物からカルボキシル基を除いた基を表し、a−b、R、R、R、Z、m、m、nおよびnは、前記と同義である)
【0089】
化合物(Id)は、化合物(IV)または(V)から、クルティウス転位反応[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis) 、塩入ら著(1991年、6巻、795−828頁)、パーガモン(Pergamon)出版]等の転移反応の常法によりイソシアネートへ誘導した後に、アンモニアと反応させることにより製造することができる。化合物(IV)および(V)は、市販品として入手可能か、上記文献等に記載されている方法、参考例に記載されている方法あるいはそれらに準じて合成することができる。
【0090】
上記各製造法において、定義した基が実施方法の条件下で変化するかまたは方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される保護基の導入および脱離方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン(T. W. Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)参照]等を用いることにより目的化合物を得ることができる。また、各置換基に含まれる官能基の変換は、上記製造法以外にも公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations) 、R.C.ラロック(Larock)著(1989年)等]によっても行うことができ、化合物(I)の中には、これを合成中間体としてさらに別の誘導体(I)へ導くことができるものもある。
【0091】
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
化合物(I)の中には、異性体が存在し得るものがあるが、本発明は、全ての可能な異性体およびそれらの混合物をEg5阻害剤として使用することができる。
【0092】
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸または塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
【0093】
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明のEg5阻害剤として使用することができる。
【0094】
上記製造法によって得られる化合物(I)の具体例を表1〜表3に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
化合物(I)またはそれらの薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤とすることが望ましく、該医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくは二種以上の担体と混合し、製剤学の常法により製造することができる。
【0099】
投与経路としては、経口投与または吸入投与、静脈内投与などの非経口投与が挙げられる。
【0100】
投与形態としては、錠剤、注射剤などが挙げられ、錠剤は、例えば乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、界面活性剤、グリセリン等の、各種添加剤を混合し、常法に従い製造すればよく、吸入剤は、例えば乳糖等を添加し、常法に従い製造すればよい。注射剤は、水、生理食塩水、植物油、可溶化剤、保存剤等を添加し、常法に従い製造すればよい。
【0101】
化合物(I)またはそれらの薬理学的に許容される塩の有効量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、通常成人一人当たり、0.001mg〜5g、好ましくは0.1mg〜1g、より好ましくは1mg〜500mgを、一日一回ないし数回に分けて投与する。
【0102】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0103】
Eg5ATPase阻害試験
本試験は、文献(Chemistry&Biology、2002、9、989−996)記載の方法に準じ、以下に記載する方法により実施した。
【0104】
各種濃度となるように調製した試験サンプル(DMSO溶液より調製)を含む96穴プレート(白)に、大腸菌で発現させたEg5モータードメイン組換えタンパク質とタキソールで安定化させたマイクロチューブルを加え、25℃で10分間静置した。その後、終濃度30μMになるようにATP溶液を加えることで、ATP加水分解反応を開始した。反応液には、40nMのEg5モーター組換えタンパク質と、350nMのチューブリンタンパク質から調製したマイクロチューブルを含む。20分後に反応停止と残存ATP量の定量を行うため、ルシフェラーゼによるATP測定法(プロメガ(Promega)社;Kinase-Glo Plus assay)を用いて測定し、ATP加水分解スコアを次式に従って算出した。
【0105】
ATP加水分解スコア(%)= 100 x (L0-Lchem)/(L0-LDMSO)

L0:Eg5組換えタンパク質なしに試験サンプル溶解用の溶媒のみを添加した場合の発光量
Lchem:試験サンプルを添加した場合の発光量
LDMSO:試験サンプル溶解用の溶媒のみを添加した場合の発光量
【0106】
試験結果は、試験サンプル20μMの濃度でのATP加水分解阻害率で表した。
結果を表4に示す。
【0107】
【表4】

【実施例2】
【0108】
HeLa細胞増殖阻害試験
ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞を、10%のウシ胎児血清(FBS;ハイクロン(Hyclone)社)を含有したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;インビトロジェン−ギブコBRL(Invitrogen-Gibco BRL)社)を培養培地として、96穴プレートで5000細胞/ウエル(cells/well)の密度で、5%COで満たされた37℃の恒温室で8時間培養した。各ウエルに、各種濃度となるように調製した試験サンプル(DMSO溶液より調製)の10%FBS含有DMEM溶液を添加し、培養を継続した。2日間培養後の生細胞数を、MTS法による細胞増殖試験キット(プロメガ(Promega)社;CellTiter96(R) AQueousOne Solution Cell Proliferation Assay)を用いて測定し、細胞増殖スコアを次式に従って算出した。
【0109】
細胞増殖スコア(%)= 100 x M/M

:サンプルを添加した場合のMTS試薬による吸光度
:サンプル溶解用の溶媒のみを添加した場合のMTS試薬による吸光度
【0110】
試験結果は、試験サンプル20μMの濃度での細胞増殖阻害率で表した。
結果を表5に示す。
【0111】
【表5】

【実施例3】
【0112】
HCT116細胞増殖阻害試験
ヒト大腸がん由来細胞株HCT116を、10%のウシ胎児血清(FBS;ハイクロン(Hyclone)社)を含有したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM;和光純薬工業株式会社)を培養培地として、96穴プレートで3000細胞/ウエル(cells/well)の密度で、5%COで満たされた37℃の恒温室で24時間培養した。各ウエルに、各種濃度となるように調製した試験サンプル(DMSO溶液より調製)の10%FBS含有DMEM溶液を添加し、培養を継続した。3日間培養後の生細胞数を、MTS法による細胞増殖試験キット(プロメガ(Promega)社;CellTiter96(R) AQueousOne Solution Cell Proliferation Assay)を用いて測定し、細胞増殖スコアを次式に従って算出した。
【0113】
細胞増殖スコア(%)= 100 x M/M

:サンプルを添加した場合のMTS試薬による吸光度
:サンプル溶解用の溶媒のみを添加した場合のMTS試薬による吸光度
【0114】
試験結果は、試験サンプル20μMの濃度での細胞増殖阻害率で表した。
結果を表6に示す。
【0115】
【表6】

【実施例4】
【0116】
化合物(Iba−4)10mg、乳糖70mg、デンプン15mg、ポリビニルアルコール4mgおよびステアリン酸マグネシウム1mg(計100mg)からなる組成を用い、常法により、錠剤を調製する。
【実施例5】
【0117】
常法により、化合物(Ica−3)70mg、精製大豆油50mg、卵黄レシチン10mgおよびグリセリン25mgからなる組成に、全容量100mLとなるよう注射用蒸留水を添加し、バイアルに充填後、加熱滅菌して注射剤を調製する。
【実施例6】
【0118】
4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキシル)フェニルスルホンアミド(シス/トランス混合物)(化合物Iaa−1)
後述の化合物Iba−1を水素添加に付すことにより標記化合物を得た。
収率:71%
ES-Mass (m/z): 294 (M - H)-.
[製造例1]
【0119】
N−[4−(トランス−4−プロピル−1−シクロヘキシル)フェニル]チオウレア(化合物Iaa−2)
0.5Mアンモニア−1,4−ジオキサン溶液(5mL)に、市販の1−イソチオシアネート−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン(150mg,0.58mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で1.5時間攪拌した。反応液を濃縮後、メタノールでリスラリーすることにより標記化合物(74mg,0.27mmol)を得た。
収率:47%
ES-Mass (m/z): 277 (M + H)+.
【実施例7】
【0120】
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)フェニルスルホンアミド(化合物Iba−1)
PdCl(dppf)CHCl(47mg,0.06mmol)の1,4−ジオキサン(3mL)およびDMF(0.5mL)混合懸濁液に、市販の4−tert−ブチルシクロヘキセン−1−イルボロン酸(125mg,0.69mmol)、p−ブロモベンゼンスルホンアミド(135mg,0.57mmol)、リン酸三カリウム(243mg,1.14mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、85℃で4.5時間加熱攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、析出した固体を濾取、水洗、乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標記化合物(74mg,0.25mmol)を得た。
【0121】
収率:44%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 7.75 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.58 (H, d, J = 8.5 Hz), 7.31 (2H, s), 6.33 (1H, t, J = 2.8 Hz), 2.54 (1H, m), 2.43 (1H, m), 2.26 (1H, m), 2.00-1.95 (2H, m), 1.35-1.19 (2H, m), 0.91 (9H, s) .
ES-Mass (m/z): 292 (M - H)-.
【実施例8】
【0122】
4−(4,4−ジメチル−1−シクロヘキセニル)フェニルスルホンアミド(化合物Iba−2)
4−tert−ブチルシクロヘキセン−1−イルボロン酸のかわりに市販の4,4−ジメチルシクロヘキセン−1−イルボロン酸ピナコールエステルを使用し、化合物Iba−1の製造方法に準じて標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 264 (M - H)-.
【実施例9】
【0123】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)フェニル]スルファミド(化合物Iba−3)
参考例1記載の(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリン(35mg,0.15mmol)の1,4−ジオキサン(2mL)溶液に、スルファミド(73mg,0.76mmol)を加え、7時間加熱還流した。反応液を濃縮後、残渣に飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、析出した結晶を濾取、水洗、乾燥後、分取シリカゲル薄層クロマトグラフィーにて精製し、標記化合物(34mg,0.11mmol)を得た。
【0124】
収率:73%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 9.42 (1H, brs), 7.29 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.09 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.04 (2H, s), 6.06 (1H, t, J = 2.8 Hz), 2.45 (1H, m), 2.31 (1H, m), 2.18 (1H, m), 1.95-1.92 (2H, m), 1.28-1.18 (2H, m), 0.89 (9H, s).
ES-Mass (m/z): 309 (M + H)+.
【実施例10】
【0125】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロフェニル]スルファミド(化合物Iba−4)
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンのかわりに参考例2に記載の(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロアニリンを使用し、化合物Iba−3の製造方法に準じて標記化合物を得た。
【0126】
収率:61%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 9.09 (1H, s), 7.40 (1H, t, J = 8.5 Hz), 7.24-7.19 (2H, m), 7.09 (2H, brs), 6.20 (1H, t, J = 2.8 Hz), 2.46 (1H, m), 2.33 (1H, m), 2.21 (1H, m), 1.94 (2H, m), 1.29-1.17 (2H, m), 0.90 (9H, s).
ES-Mass (m/z): 327 (M + H)+.
【実施例11】
【0127】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)フェニル]ウレア(化合物Iba−5)
p−ブロモベンゼンスルホンアミドのかわりに市販の(4−ブロモフェニル)ウレアを使用し、化合物Iba−1の製造方法に準じて標記化合物を得た。
【0128】
収率:12%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 8.26 (1H, brs), 7.30 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.23 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.02 (1H, t, J = 2.9 Hz), 2.44 (1H, m), 2.31 (1H, m), 2.19 (1H, m), 1.95-1.92 (2H, m), 1.33-1.05 (2H, m), 0.89 (9H, s).
ES-Mass (m/z): 273 (M + H)+.
【実施例12】
【0129】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロフェニル]ウレア(化合物Iba−6)
参考例2に記載の(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロアニリン(45mg,0.18mmol)の塩化メチレン(1mL)溶液に、氷冷下でトリエチルアミン(126μL,0.90mmol)およびトリホスゲン(36mg,0.12mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で2時間攪拌した。反応液に0.5Mアンモニア−1,4−ジオキサン溶液(10mL)を加え、室温で終夜攪拌した。反応液にメタノールを加えた後、溶媒留去して得られた残渣に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、析出した結晶を濾取、水洗、乾燥後、分取シリカゲル薄層クロマトグラフィーにて精製し、標記化合物(24mg,0.08mmol)を得た。
【0130】
収率:44%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 8.28 (1H, s), 8.03 (1H, t, J = 8.5 Hz), 7.18 (1H, dd, J = 13.6 Hz, 2.3 Hz), 7.11 (1H, dd, J = 8.5 Hz, 2.3 Hz), 6.13 (3H, brs), 2.44 (1H, m), 2.29 (1H, m), 2.18 (1H, m), 1.91 (2H, m), 1.26-1.17 (2H, m), 0.88 (9H, s).
ES-Mass (m/z): 291 (M + H)+.
【実施例13】
【0131】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロフェニル]チオウレア(化合物Iba−7)
トリホスゲンのかわりにチオホスゲンを使用し、化合物Iba−6の製造方法に準じて標記化合物を得た。
【0132】
収率:24%
1H NMR (CDCl3) δ: 7.88 (1H, brs), 7.30 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.22-7.18 (2H, m), 6.20 (1H, t, J = 2.8 Hz), 2.47-2.35 (2H, m), 2.28 (1H, m), 2.01-1.99 (2H, m), 1.39-1.30 (2H, m), 0.93 (9H, s).
ES-Mass (m/z): 307 (M + H)+.
【実施例14】
【0133】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)フェニル]ホルムアミド(化合物Iba−8)
p−ブロモベンゼンスルホンアミドのかわりに市販のN−(4−ブロモフェニル)ホルムアミドを使用し、化合物Iba−1の製造方法に準じて標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 258 (M + H)+.
【実施例15】
【0134】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロフェニル]メタンスルホンアミド(化合物Iba−9)
参考例2に記載の(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロアニリンを常法によりメタンスルホニル化することにより、標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 326 (M + H)+.
【実施例16】
【0135】
(dl)−N−[4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロフェニル]ホルムアミド(化合物Iba−10)
参考例2に記載の(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロアニリン(23mg,0.09mmol)の塩化メチレン(1mL)溶液に、ギ酸(4μL,0.11mmol)、HATU(43mg,0.11mmol)およびトリエチルアミン(26μL,0.19mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液にHOAt(15mg,0.11mmol)を加え、3時間攪拌した後に、ギ酸(18μL,0.48mmol)、HATU(43mg,0.11mmol)およびトリエチルアミン(26μL,0.19mmol)を加え、室温で1.5時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた残渣を分取シリカゲル薄層クロマトグラフィーにて精製し、標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 276 (M + H)+.
[製造例2]
【0136】
N−[4−(4−イソプロピルピペリジノ)フェニル]スルホンアミド(化合物Ica−1)
市販の4−フルオロベンゼンスルホンアミド(138mg,0.79mmol)のエタノール(5mL)溶液に、4−イソプロピルピペリジン(349μL,2.36mmol)を加え、70℃で終夜加熱攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標記化合物(156mg,0.55mmol)を得た。
収率:70%
ES-Mass (m/z): 283 (M + H)+.
【実施例17】
【0137】
N−[4−(4−イソプロピルピペリジノ)フェニル]スルファミド(化合物Ica−2)
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンのかわりに参考例3に記載の4−(4−イソプロピルピペリジノ)アニリンを使用し、化合物Iba−3の製造方法に準じて標記化合物を得た。
【0138】
収率:69%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 8.89 (1H, s), 7.03 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.85 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.82 (2H, brs), 3.60 (2H, m), 2.50 (2H, m), 1.70 (2H, m), 1.43 (1H, q, J = 6.8 Hz), 1.26 (2H, m), 1.11 (1H, m), 0.88 (6H, d, J = 6.8 Hz).
ES-Mass (m/z): 298 (M + H)+.
【実施例18】
【0139】
N−[4−(4−tert−ブチルピペリジノ)フェニル]スルファミド(化合物Ica−3)
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンのかわりに参考例4に記載の4−(4−tert−ブチルピペリジノ)アニリンを使用し、化合物Iba−3の製造方法に準じて標記化合物を得た。
【0140】
収率:7%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 8.88 (1H, brs), 7.04 (2H, d, J = 9.1 Hz), 6.86 (2H, d, J = 9.1 Hz), 6.82 (2H, brs), 3.65 (2H, m), 2.47 (2H, m), 1.72 (2H, m), 1.30 (2H, m), 1.09 (1H, m), 0.87 (9H, s).
ES-Mass (m/z): 312 (M + H)+.
【実施例19】
【0141】
N−[4−(4−トリフルオロメチルピペリジノ)フェニル]スルファミド(化合物Ica−4)
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンのかわりに参考例5に記載の4−(4−トリフルオロメチルピペリジノ)アニリンを使用し、化合物Iba−3の合成と同様の方法により標記化合物を得た。
【0142】
収率:65%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 8.95 (1H, s), 7.05 (2H, d, J = 9.1 Hz), 6.88 (2H, d, J = 9.1 Hz), 6.85 (2H, brs), 3.66 (2H, m), 2.63 (2H, m), 2.44 (1H, m), 1.86 (2H, m), 1.55 (2H, m).
ES-Mass (m/z): 324 (M + H)+.
【実施例20】
【0143】
N−[4−(4,4−ジフルオロピペリジノ)フェニル]スルファミド(化合物Ica−5)
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンのかわりに参考例6に記載の4−(4,4−ジフルオロピペリジノ)アニリンを使用し、化合物Iba−3の合成と同様の方法により標記化合物を得た。
【0144】
収率:40%
1H NMR (DMSO-d6) δ: 8.99 (1H, br), 7.07 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.94 (2H, d, J = 8.5 Hz), 6.87 (2H, br), 3.23 (2H, m), 2.05 (2H, m).
ES-Mass (m/z): 292 (M + H)+.
【実施例21】
【0145】
N−[1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4−ピペリジニル]スルファミド(化合物Icb−1)
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンのかわりに参考例7に記載の4−アミノ−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジンを使用し、化合物Iba−3の製造方法に準じて標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 324 (M + H)+.
[参考例1]
【0146】
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)アニリンの合成
酢酸パラジウム(17mg,0.08mmol)の1−ブタノール(3mL)懸濁液に、市販の4−tert−ブチルシクロヘキセン−1−イルボロン酸(150mg,0.82mmol)、4−ヨードアニリン(164mg,0.75mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフィン−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル(71mg,0.15mmol)およびリン酸三カリウム(318mg,1.50mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、85℃で終夜加熱攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標記化合物(69mg,0.30mmol)を得た。
ES-Mass (m/z): 230 (M + H)+.
[参考例2]
【0147】
(dl)−4−(4−tert−ブチル−1−シクロヘキセニル)−2−フルオロアニリンの合成
4−ヨードアニリンのかわりに市販の2−フルオロ−4−ヨードアニリンを使用し、参考例1の製造方法に準じて標記化合物を合成した。
ES-Mass (m/z): 248 (M + H)+.
[参考例3]
【0148】
4−(4−イソプロピルピペリジノ)アニリンの合成
(1)p−フルオロニトロベンゼン(139μL,1.31mmol)のエタノール(3mL)溶液に、市販の4−イソプロピルピペリジン(581μL,3.93mmol)を加え、60℃で終夜加熱攪拌した。反応液を放冷後、析出した固体を濾取、エタノール洗浄、乾燥して1−(4−イソプロピルピペリジノ)−4−ニトロベンゼン(185mg,0.75mmol)を得た。
ES-Mass (m/z): 249 (M + H)+.
【0149】
(2)10%Pd−C(50%含水,30mg)のエタノール(10mL)および水(1mL)懸濁液に、上記で得られた1−(4−イソプロピルピペリジノ)−4−ニトロベンゼン(166mg,0.67mmol)を加え、水素雰囲気下、室温で4時間攪拌した。セライトを用いて触媒を濾別し、溶媒留去して標記化合物(144mg,0.66mmol)を得た。
ES-Mass (m/z): 219 (M + H)+.
[参考例4]
【0150】
4−(4−tert−ブチルピペリジノ)アニリンの合成
4−イソプロピルピペリジンのかわりに市販の4−tert−ブチルピペリジン塩酸塩および炭酸カリウムを使用し、参考例3の製造方法に準じて標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 233 (M + H)+.
[参考例5]
【0151】
4−(4−トリフルオロメチルピペリジノ)アニリンの合成
4−イソプロピルピペリジンのかわりに市販の4−トリフルオロメチルピペリジン塩酸塩および炭酸カリウムを使用し、参考例3の製造方法に準じて標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 245 (M + H)+.
[参考例6]
【0152】
4−(4,4−ジフルオロピペリジノ)アニリンの合成
4−イソプロピルピペリジンのかわりに市販の4,4−ジフルオロピペリジン塩酸塩および炭酸カリウムを使用し、参考例3と同様の方法により標記化合物を合成した。
ES-Mass (m/z): 213 (M + H)+.
[参考例7]
【0153】
4−アミノ−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジンの合成
(1)4−フルオロベンゾトリフルオリド(2.6mL)に4−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ピペリジン(150mg,0.75mmol)および炭酸カリウム(248mg,1.79mmol)を加え、20日間加熱攪拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン(54mg,0.16mmol)を得た。
ES-Mass (m/z): 345 (M + H)+.
【0154】
(2)上記で得られた4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピペリジン(49mg,0.14mmol)の塩化メチレン(2mL)溶液に、氷冷下でトリフルオロ酢酸(105μL,1.40mmol)を加えた。同温度で1.5時間攪拌した後、トリフルオロ酢酸(0.5mL)を加え、同温度でさらに4時間攪拌した。溶媒留去して得られた残渣にトリエチルアミン(1mL)を加え、濃縮することにより標記化合物を得た。
ES-Mass (m/z): 245 (M + H)+.
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明のEg5阻害活性を有する非縮合二環性化合物は、Eg5阻害剤として有用であり、また、抗癌剤として使用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、
a−b間の結合は、単結合または二重結合を表し、
は、置換若しくは非置換アルキル基、OR(式中、Rは、水素原子または置換若しくは非置換アルキル基を表す)、SiR(式中、R、R及びRは、同一または異なって、前記Rの定義と同義である)、ハロゲン原子またはSFを表し、ここで、Rが同時に複数存在するときは、同一または異なっていてもよく、
は、前記Rと同義であるか、または、Rが同一炭素に同時に二個存在するとき、二個のRが一緒になって、置換若しくは非置換アルキリデン基、オキソ基またはスピロ環を形成してもよく、ここで、Rが同時に複数存在するときは、同一または異なっていてもよく、
は、水素原子、ハロゲン原子またはニトロ基を表し、
及びXは、Xが−Y−Q[式中、Yは、単結合または置換若しくは非置換アルキレン基を表し、Qは、−SONH、−NHSO(式中、Rは、置換若しくは非置換アルキル基またはアミノ基を表す)、−NHCOR(式中、Rは、水素原子またはアミノ基を表す)または−NHCSNHを表す]を表すとき、Xは、前記Rの定義と同義であり、Xが−Y−Q(式中、Y及びQは、前記と同義である)を表すとき、Xは、前記Rの定義と同義であり、
Zは、a−b間の結合が単結合を表すとき、窒素原子、CHまたはCR(式中、Rは、前記と同義である)を表し、a−b間の結合が二重結合を表すとき、炭素原子を表し、
mは、0〜3の整数を表し
nは、0〜9の整数を表す}
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するEg5阻害剤。
【請求項2】
式(I)で表される化合物が、下記式(Ia)
【化2】

(式中、nは、0〜10の整数を表し、R、R、R、X、X及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1記載のEg5阻害剤。
【請求項3】
式(Ia)で表される化合物が、下記式(Iaa)
【化3】

(式中、nは、1〜11の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載のEg5阻害剤。
【請求項4】
式(Ia)で表される化合物が、下記式(Iab)
【化4】

(式中、mは、1〜4の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載のEg5阻害剤。
【請求項5】
式(I)で表される化合物が、下記式(Ib)
【化5】

(式中、nは、0〜8の整数を表し、R、R、R、X、X及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1記載のEg5阻害剤。
【請求項6】
式(Ib)で表される化合物が、下記式(Iba)
【化6】

(式中、nは、1〜9の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びmは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1または5のいずれか記載のEg5阻害剤。
【請求項7】
式(Ib)で表される化合物が、下記式(Ibb)
【化7】

(式中、mは、1〜4の整数を表し、Q、Y、R、R、R及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1または5のいずれか記載のEg5阻害剤。
【請求項8】
式(I)で表される化合物が、下記式(Ic)
【化8】

(式中、R、R、X、X、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1記載のEg5阻害剤。
【請求項9】
式(Ic)で表される化合物が、下記式(Ica)
【化9】

(式中、Q、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1または8のいずれか記載のEg5阻害剤。
【請求項10】
式(Ic)で表される化合物が、下記式(Icb)
【化10】

(式中、Q、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩であることを特徴とする請求項1または8のいずれか記載のEg5阻害剤。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか記載のEg5阻害剤の少なくとも一成分を有効成分として含有することを特徴とする抗癌剤。
【請求項12】
式(Iaa−A)
【化11】

[式中、Qは、Qの定義中の−SONH、−NHSO5a(式中、R5aは、メチル基、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基またはアミノ基を表す)及び−NHCOR(式中、Rは、前記と同義である)から選ばれ、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項13】
式(Iba−A)
【化12】

(式中、Q、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項14】
式(Ica−A)
【化13】

(式中、Qは、Qの定義中の−NHSO5a(式中、R5aは、前記と同義である)及び−NHCOR(式中、Rは、前記と同義である)から選ばれ、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である)
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項15】
式(Icb−A)
【化14】

[式中、Qは、Qの定義中の−NHSO5a(式中、R5aは、前記と同義である)、−NHCOR(式中、Rは、前記と同義である)及び−NHCSNHから選ばれ、Y、R、R、R、m及びnは、前記と同義である]
で表される非縮合二環性化合物またはその薬理学的に許容される塩。



【公開番号】特開2011−32196(P2011−32196A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178912(P2009−178912)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(506374708)一般社団法人ファルマIP (9)
【Fターム(参考)】