説明

H形鋼の曲がり矯正装置

【課題】異なる断面寸法のH形鋼を矯正する場合に矯正変更動作を簡単に行なうことができるH形鋼の曲がり矯正装置を提供する。
【解決手段】内圧延ロール14,15を回転自在に支持する内圧延ロール支持部19,20と、これら内圧延ロール支持部が、回転ピン19a,20aを回転中心としてH形鋼1の搬送方向に直交する平面内で揺動自在となるように支持し、回転軸が上下方向に延在した内圧延ロールを、左フランジ1b1の内面に対して離接するように設けた内圧延ロールハウジング12と、内圧延ロールを左フランジの内面に向けて圧下させる内圧延ロール圧下手段16,17と、左フランジの外面を圧下する外圧延ロール23と、回転軸が上下方向に延在するように外圧延ロールを支持する外圧延ロールハウジング13と,を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形鋼工場精製ラインにおいて圧延工程で発生したH形鋼の長手方向曲がりを圧延ロールによる冷間圧延で矯正するH形鋼の曲がり矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延工程で発生したH形鋼の曲がりは、オフラインに配置した曲がり矯正装置において圧延ロールによる冷間圧延で矯正されている。
曲がり矯正装置に搬送されてくるH形鋼の姿勢は、搬送状態が安定するH姿勢である(図6に示すように、ウェブ1aが水平に延在し、ウェブ1aの左右に一対のフランジ1b1,1b2が位置したH形鋼1の姿勢である)。このH姿勢で圧延工程から搬送されてきたH形鋼1は、図7に示すように、長手方向曲がり(図7は右フランジ1b2を内側として湾曲する右曲がりであるが、左フランジ1b1を内側として湾曲する左曲がりも含む)が発生しやすい。
【0003】
このH姿勢のH形鋼1の長手方向曲がりを矯正する曲がり矯正装置として、例えば特許文献1の装置が知られている。
この特許文献1の曲がり矯正装置は、図8に示すように、H形鋼1の左フランジ1b1の内面を圧下する内圧延ロール3と、左フランジ1b1の外面を圧下する外圧延ロール4と、内圧延ロール3及び外圧延ロール4を支持する中フレーム5と、中フレーム5の右フレーム部と装置本体6との間に配置されて中フレーム5を支持する油圧シリンダ7、とを備えている。内圧延ロール3は、H形鋼1のウェブ1aを挟んで上下に一対配置されているとともに、中フレーム5の右フレーム部に回転自在に固定されている。外圧延ロール4は、中フレーム5の左フレーム部に油圧シリンダ8を介して回転自在に、且つ左右方向(H形鋼1の搬送方向に対して直交する方向)に移動可能に支持されている。また、油圧シリンダ7,8は油圧配管9を介して連通している。
【0004】
そして、左フランジ1b1を内側として湾曲したH形鋼1の左曲がりを矯正する場合には、油圧シリンダ7内の油を所定の高圧に圧縮すると同時に、油圧シリンダ7と油圧シリンダ8とが油圧配管9により連絡してあるので、内圧延ロール3及び外圧延ロール4間で左フランジ1b1の内外面を左右方向から圧下して左曲がりを矯正する。
また、右フランジ1b2を内側として湾曲したH形鋼1の右曲がりを矯正する場合には、H形鋼1の搬送方向に図8の装置に連続して配置され、図8の装置とは構成部材を左右逆にした右曲がり用の矯正装置(不図示)により、内圧延ロール3及び外圧延ロール4間で右フランジ1b2の内外面を左右方向から圧下してH形鋼1の右曲がりが矯正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2002−282943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロールでフランジを圧下することによりH形鋼の曲がりを矯正する曲り矯正装置では、ロールの摩耗の進行に伴い、ロールを交換しなければならない。したがって、ある量のH形鋼の処理を行った後にはロール組み換え作業が必ず発生する。
図8の曲がり矯正装置はH姿勢のH形鋼1を矯正するので、内圧延ロール3及び外圧延ロール4は軸が上下方向に延在して配置されており、これらのロール組み換えは、内圧延ロール3及び外圧延ロール4を支持する中フレーム5を装置本体6内部の定位置に固定した状態で、中フレーム5の上下に設けた開口部から、内圧延ロール3を支持する軸受を内蔵した支持装置と、外圧延ロール4を支持する軸受を内蔵した支持装置とを出し入れする作業を行なわなければならない。したがって、図8の曲がり矯正装置は、ロール組み換えに多くの手間を要するのが現状である。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ロール組み換え作業を簡単に行なうことができるH形鋼の曲がり矯正装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載のH形鋼の曲がり矯正装置は、搬送方向に対して直交する左右方向にウェブが延在し、このウェブの左右端から上下方向に左右フランジが延在するH形鋼の長手方向曲がりを矯正する装置であって、前記左右フランジの一方の内面を圧下する内圧延ロールを回転自在に支持する内圧延ロール支持部と、この内圧延ロール支持部が前記H形鋼の搬送方向に直交する平面内で揺動自在となるように支持する内圧延ロールハウジングと、前記内圧延ロールを前記左右フランジの一方の内面に向けて圧下させる内圧延ロール圧下手段と、前記左右フランジの一方の外面を圧下する外圧延ロールと、回転軸が上下方向に延在するように前記外圧延ロールを支持する外圧延ロールハウジングと、前記内圧延ロールハウジング及び前記外圧延ロールハウジングを分割可能に結合するハウジング着脱部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のH形鋼の曲がり矯正装置において、前記ハウジング着脱部は、前記内圧延ロールハウジングを前記外圧延ロールハウジングに向かう前記左右方向に移動させ、前記内圧延ロールハウジングの左右方向位置を調整するハウジング位置調整機構を備えている。
【0009】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載のH形鋼の曲がり矯正装置において、前記ハウジング着脱部は、前記内圧延ロールハウジングの側部に設けた第1結合凸部と、前記外圧延ロールハウジングの側部に設けられ、前記第1結合凸部に上下方向から重合する第2結合凸部と、これら第1及び第2結合凸部に上下方向に連通して設けた貫通穴と、これら貫通穴に挿入することで前記第1及び第2結合凸部を結合するコッターと、を備えているとともに、前記コッターは、基端側から先端側に向かうに従い、漸次縮径したテーパ外周を有し、前記第1及び第2結合凸部の前記貫通穴へのコッターの挿入量を増大すると、前記テーパ外周及び前記第1結合穴の内面の係合により、前記内圧延ロールハウジングを前記外圧延ロールハウジングに向かう前記左右方向に移動させ、前記内圧延ロールハウジングの左右方向位置を調整する前記ハウジング位置調整機構として機能する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るH形鋼の曲がり矯正装置によれば、ロール組み換えを行う場合には、内圧延ロールハウジングを外圧延ロールとを、内圧延ロールをその軸方向が水平になるまで内圧延ロール支持部を揺動させても内圧延ロールと外圧延ロールとが干渉しないように分離させ、その後、内圧延ロールハウジングに支持された内圧延ロール支持部をH形鋼の搬送方向に直交する平面内で揺動させると、内圧延ロールが内圧延ロールハウジングから突出した状態となるので、内圧延ロールのロール組み換えを簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るH形鋼の曲がり矯正装置を平面視で示した図である。
【図2】本発明に係るH形鋼の曲がり矯正装置の主要構成部を示す図である。
【図3】本発明に係るH形鋼の曲がり矯正装置の内圧延ロールハウジング及び外圧延ロールハウジングの結合構造を示す図である。
【図4】本発明に係る内圧延ロールハウジング及び外圧延ロールハウジングを左右方向に分離した状態を示す図である。
【図5】本発明に係るロール支持部が、H形鋼の搬送方向に対して直交する平面内で回転自在に配置されている状態を示す図である。
【図6】H形鋼の形状を示す図である。
【図7】H形鋼の長手方向の曲がりを示す図である。
【図8】従来のH形鋼の曲がり矯正装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、オフラインに配置したH形鋼1の長手方向の左曲がりを矯正する矯正装置10を示すものである。この矯正装置10に、H姿勢で搬送されてきたH形鋼1が通過することで、左曲がりが矯正される。なお、H形鋼1のH姿勢とは、図6で示したように、ウェブ1aが水平に延在し、ウェブ1aの左右に一対のフランジ1b1,1b2が位置した姿勢である。
【0013】
図2に示すように、本実施形態の曲がり矯正装置10は、装置架台11の内部に、内圧延ロールハウジング12と外圧延ロールハウジング13とが配置されており、これら内圧延ロールハウジング12及び外圧延ロールハウジング13は、ハウジング着脱部26に結合されている(図3(a)参照)。
装置架台11の床部には、内圧延ロールハウジング12が分離する左右方向(H形鋼1の搬送方向に対して直交する方向)に沿って軌道30が敷設されており、この軌道30は、装置架台11の外部まで延設されている。
内圧延ロールハウジング12には、上部内圧延ロール14、上部ロール支持部19、下部内圧延ロール15、下部ロール支持部20、上部内圧延ロール圧下機構16及び下部内圧延ロール圧下機構17が配置されている。
【0014】
また、内圧延ロールハウジング12には、H姿勢のH形鋼1が通過する窓18が形成されている。
上部ロール支持部19は、上部内圧延ロール14の回転軸を支持する軸受(不図示)を備えた装置であり、回転ピン19aを介して内圧延ロールハウジング12に支持され、H形鋼1の搬送方向に対して直交する平面内で揺動自在とされ、図2に示した状態では、上部内圧延ロール14の回転軸(不図示)が上下方向に延在するように配置されている。そして、上部内圧延ロール14は、回転軸方向を上下方向とした状態で、窓18を通過するH形鋼1のウェブ1aより上部の左フランジ1b1の内面に当接可能となっている。
【0015】
下部ロール支持部20は、下部内圧延ロール15の回転軸を支持する軸受(不図示)を備えた装置であり、回転ピン20aを介して内圧延ロールハウジング12に支持され、H形鋼1の搬送方向に対して直交する平面内で揺動自在とされ、図2に示した状態では、下部内圧延ロール15の回転軸(不図示)が上下方向に延在するように配置されている。そして、下部内圧延ロール15は、回転軸方向を上下方向とした状態で、窓18を通過するH形鋼1のウェブ1aより上部の左フランジ1b1の内面に当接可能となっている。
【0016】
上部内圧延ロール圧下機構16は、内圧延ロールハウジング12に配置した圧下シリンダで構成されており、この圧下シリンダのピストンロッドが上部ロール支持部19に向けて伸長することで、回転軸が上下方向となる状態で上部ロール支持部19に支持された上部内圧延ロール14をH形鋼1のウェブ1aより上部の左フランジ1b1の内面から外面に向けて圧下するようになっている。
【0017】
下部内圧延ロール圧下機構17も、内圧延ロールハウジング12に配置した圧下シリンダで構成されており、この圧下シリンダのピストンロッドが下部ロール支持部20に向けて伸長することで、回転軸が上下方向となる状態で下部ロール支持部20に支持された下部内圧延ロール15をH形鋼1のウェブ1aより下部の左フランジ1b1の内面から外面に向けて圧下するようになっている。
上部ロール支持部19は、内圧延ロールハウジング12に配置した上部昇降機構32aにより上下方向位置が調整可能とされ、下部ロール支持部20も、内圧延ロールハウジング12に配置した下部昇降機構32bにより上下方向位置が調整可能とされている。
そして、内圧延ロールハウジング12の下端部には、軌道30上を転動する車輪31が設けられている。
【0018】
一方、外圧延ロールハウジング13は、図2に示すように、回転軸が上下方向に延在するように軸受13bを介して左外圧延ロール23を支持しており、左外圧延ロール23は、窓18を通過したH形鋼1の左フランジ1b1の外面に当接する。そして、左外圧延ロール23には、装置架台11の上部に配置した回転動力源24から動力伝達軸25を介して回転駆動力が伝達される。
【0019】
一方、内圧延ロールハウジング12及び外圧延ロールハウジング13を結合しているハウジング着脱部26は、図3(a)に示すように、外圧延ロールハウジング13の側部に設けた結合凸部13aと、この結合凸部13aの上下方向に貫通して形成した貫通穴13a1と、結合凸部13aに上下から重合する内圧延ロールハウジング12の側部に設けた一対の結合凸部12a,12bと、結合凸部13aの貫通穴13a1に連通するように一対の結合凸部12a,12bに上下方向に貫通して形成した貫通穴12a1,12b1と、結合凸部13aの貫通穴13a1及び一対の結合凸部12a,12bの貫通穴12a1,12b1に挿入されているコッター27とを備えている。コッター27は、基端側から先端側に向かうに従い、漸次縮径したテーパ形状の外周を有するものである。
【0020】
コッター27の下端は、図4に示すように、内圧延ロールハウジング12に配置したコッター昇降機構28に連結している。コッター昇降機構28は、図2に示すように、回転力が伝達されることで直動する直動機構28aと、直動機構28aに回転力を伝達するサーボモータ28bとで構成されている。
そして、サーボモータ28bの正回転により直動機構28aが上方移動すると、コッター27が上方に移動して内圧延ロールハウジング12及び外圧延ロールハウジング13が結合する。
【0021】
ここで、図3(b)に示すように、コッター27の上方移動を増大させると、コッター27のテーパ形状の外周面が貫通穴12a1,12b1に摺動することで、一対の結合凸部12a,12bが外圧延ロールハウジング13側に移動する。
また、サーボモータ28bの逆回転により直動機構28aが下方移動すると、コッター27が下方に移動し、少なくとも、結合凸部13aの貫通穴13a1及び結合凸部12aの貫通穴12a1から抜け、内圧延ロールハウジング12及び外圧延ロールハウジング13は左右方向(H形鋼1の搬送方向に対して直交する方向)に分離可能とされる。
【0022】
また、図3(a)に示すように、外圧延ロールハウジング13には、一対のコッター抜け止め用シリンダ29が設けられている。一対のコッター抜け止め用シリンダ29は、外圧延ロールハウジング13の結合凸部13aを間に挟んだ位置に設けられ、内圧延ロールハウジング12の一対の結合凸部12a,12bの先端に向けてピストンロッド29aが伸長するように設けられている。この一対のコッター抜け止め用シリンダ29のピストンロッド29aが伸長して一対の結合凸部12a,12bに当接すると、内圧延ロールハウジング12が外圧延ロールハウジング13に対して左右方向に離間する方向に押圧されるので、結合凸部13a及び一対の結合凸部12a,12bに挿入されているコッター27の抜けが防止される。
【0023】
なお、H形鋼1の搬送方向には矯正装置10に連続してH形鋼1の長手方向の右曲がりを矯正する矯正装置が配置されており、この装置は、矯正装置10とは構成部材を左右逆にした装置である。
ここで、上部内圧延ロール14,下部内圧延ロール15が本発明に係る内圧延ロールに対応し、左外圧延ロール23が本発明に係る外圧延ロールに対応し、結合凸部12a,12bが本発明に係る第1結合凸部に対応し、結合凸部13aが本発明に係る第2結合凸部に対応し、上部内圧延ロール圧下機構16及び下部内圧延ロール圧下機構17が本発明に係る内圧延ロール圧下手段に対応し、テーパ形状の外周面を持つコッター27が本発明に係るハウジング位置調整機構に対応している。
【0024】
図2及び図3で示した本実施形態の曲がり矯正装置10は、上部昇降機構32a及び下部昇降機構32bの動作により上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15の上下位置を調整し、上部内圧延ロール圧下機構16及び下部内圧延ロール圧下機構17の動作により上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15を、H形鋼1の左フランジ1b1の内面から外面に向かう方向に押し付け、回転動力源24から動力伝達軸25介して回転力が伝達される左外圧延ロール23がH形鋼1を搬送することで(図1のH形鋼1の矢印方向)、上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15が左フランジ1b1の内面に対して圧下を行い、左外圧延ロール23が左フランジ1b1の外面に対して圧下を行うことにより、H形鋼1の長手方向の左曲がりを矯正する。
【0025】
また、H形鋼1の搬送方向に矯正装置10に連続して配置され、H形鋼1の長手方向の右曲がりを矯正する装置(不図示)は、上部内圧延ロール及び下部内圧延ロールが右フランジ1b2の内面に対して圧下を行い、右外圧延ロールが右フランジ1b2の外面に対して圧下を行うことにより、H形鋼1の長手方向の右曲がりを矯正する。
【0026】
以上説明した、本実施形態に係る矯正装置において、ロール組み換えを行なう際の組み換え方法を説明する。
まず、ハウジング着脱部26(図3(a)参照)による内圧延ロールハウジング12及び外圧延ロールハウジング13の結合状態を解除する。結合状態の解除は、コッター昇降機構28のサーボモータ28bを逆回転させることで直動機構28aを下方移動させ、コッター27を結合凸部13aの貫通孔13a1及び結合凸部12aの貫通孔12a1から抜くことで行なう。
【0027】
結合を解除した後に、図4に示すように、内圧延ロールハウジング12を外圧延ロールハウジング13から離間させる方向に移動させる。内圧延ロールハウジング12の下端部には車輪31が設けられており、この車輪31は軌道30上を転動させることで、内圧延ロールハウジング12を装置架台11の外部まで移動できる。内圧延ロールハウジング12を装置架台11の外部まで移動させ、内圧延ロールハウジング12と外圧延ロールハウジング13とを、十分に離間させた状態とする。ここで十分に離間させた状態とは、後述するように内圧延ロール支持部(上部ロール支持部19および下部ロール支持部20)を水平状態にまで揺動させても、内圧延ロール(上部内圧延ロール14、下部内圧延ロール15)が外圧延ロール23や外圧延ロールハウジング13、さらには、動力伝達軸25と干渉せず、なおかつ、内圧延ロール(上部内圧延ロール14、下部内圧延ロール15)を内圧延ロール支持部(上部ロール支持部19および下部ロール支持部20)から抜き取る作業ができる空間が確保できる状態のことである。
【0028】
この状態で、例えば、上圧延ロールの組み換えを行う場合には、上部ロール支持部19を、クレーン(不図示)を使用して回転ピン19a回りに回転させ、上部内圧延ロール14の回転軸が水平方向に延在するようになるまで揺動させると(図4の二点鎖線で示す上部内圧延ロール14及び上部ロール支持部19)、上部内圧延ロール14が内圧延ロールハウジング12から突出するので、上部内圧延ロール14の組み換え作業を容易に行なうことができる。また、上部ロール支持部19ごと上部内圧延ロール14を組み換えることもできる。
【0029】
また、図示していないが、下部ロール支持部20も回転ピン20回りに回転させ、回転軸が水平方向に延在するように下部内圧延ロール15を配置すると、下部内圧延ロール15の組み換え作業を容易に行なうことができる。
ここで、H形鋼1は、フランジ厚み、ウェブ厚みが複数種類の断面寸法を有しているが、本実施形態の曲がり矯正装置10は、断面寸法が異なるH形鋼1を矯正する場合には、図5で示す矯正変更動作を行なう。
【0030】
先ず、上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15が、矯正を行なうH形鋼1のウェブ1aの上面、下面に当接するように、上部昇降機構32a及び下部昇降機構32bの動作による上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15の上下位置を調整する。すなわち、ウェブ厚みが大きなH形鋼1に変更する場合には、上部内圧延ロール14を上方に移動させ、下部内圧延ロール15を下方に移動させるとともに、ウェブ厚みが小さなH形鋼1に変更する場合には、上部内圧延ロール14を下方に移動させ、下部内圧延ロール15を上方に移動させる。
【0031】
次いで、上部ロール支持部19を回転ピン19a回りに回転させ、上部内圧延ロール14をH形鋼1のウェブ1aより上部の左フランジ1b1の内面に当接させる。すなわち、フランジ厚みが大きなH形鋼1に変更する場合には、上部ロール支持部19を回転ピン19a回りに反時計回りに回転させ、フランジ厚みが小さなH形鋼1に変更する場合には、上部ロール支持部19を回転ピン19a回りに時計回りに回転させる。
【0032】
また、下部ロール支持部20を回転ピン20a回りに回転させ、下部内圧延ロール15をH形鋼1のウェブ1aより下部の左フランジ1b1の内面に当接させる。すなわち、フランジ厚みが大きなH形鋼1に変更する場合には、下部ロール支持部20を回転ピン20a回りに時計回りに回転させ、フランジ厚みが小さなH形鋼1に変更する場合には、下部ロール支持部20を回転ピン20a回りに反時計回りに回転させる。
また、本実施形態の曲がり矯正装置10は、上記した上部ロール支持部19、下部ロール支持部20の回転に伴い、上部内圧延ロール14、下部内圧延ロール15の回転軸が上下方向からずれるので、これを修正するように、図3(a)で示す内圧延ロールハウジング12の左右方向への移動を行なう。
【0033】
すなわち、図3(b)に示すように、サーボモータ28bの正回転により直動機構28aが上方移動し、これによりコッター27が上昇移動すると、コッター27のテーパ形状の外周面が貫通穴12a1,12b1に摺動することで、一対の結合凸部12a,12bが外圧延ロールハウジング13側に移動する。逆に、サーボモータ28bの逆回転により直動機構28aが下方移動し、これによりコッター27が下方移動すると、コッター27のテーパ形状の外周面が貫通穴12a1,12b1に摺動することで、一対の結合凸部12a,12bが外圧延ロールハウジング13と反対側に移動する。つまり、コッター27を上下動させることにより内圧延ロールハウジング12を外圧延ロールハウジング13へ近づける方向あるいは遠ざける方向へと移動させることが可能である。このことは、上部ロール支持部19と内圧延ロールハウジング12との接続部である回転ピン19a、および、下部ロール支持部20と内圧延ロールハウジング12との接続部である回転ピン20aを、左右方向すなわちH形鋼1の搬送方向に直交する面内で水平方向に移動させることができるということである。したがって、上部ロール支持部19および下部ロール支持部20がそれぞれ回転ピン19a,20aの回りに回転させたことにより、上部内圧延ロール14および下部内圧延ロール15の回転軸が上下方向からはずれた時には、コッター27を上下動させることにより、内圧延ロールハウジング12の左右方向の位置調整を行い、回転ピン19a,20aの左右方向の位置を調整して、上部内圧延ロール14および下部内圧延ロール15それぞれの回転軸が上下方向となるように修正することができる。
【0034】
また、上部内圧延ロール14および下部内圧延ロール15は、使用するにつれて摩耗が進行し、同一フランジ厚みのH形鋼の処理を続けていても、それぞれの内圧延ロールをH形鋼のフランジ内面に接触させようとすると、上部内圧延ロール14および下部内圧延ロール15の回転軸が上下方向からずれていくことがあるが、その際には、コッター27を上方移動させることにより、上部内圧延ロール14および下部内圧延ロール15の回転軸が上下方向となるように内圧延ロールハウジング12の位置を調整することが可能である。
【0035】
このように本実施形態の曲がり矯正装置10は、断面寸法が異なるH形鋼1を矯正する場合には、矯正を行なうH形鋼1のウェブ1aの上面、下面に当接するように、上部昇降機構32a及び下部昇降機構32bの動作による上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15の上下位置を調整し、上部ロール支持部19を回転ピン19a回りに揺動させて上部内圧延ロール14をH形鋼1の左フランジ1b1の内面に当接し、下部ロール支持部20を回転ピン20a回りに揺動させて下部内圧延ロール15をH形鋼1の左フランジ1b1の内面に当接させる動作を行ない、さらに上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15の回転軸が上下方向からずれた場合には、コッター27を上下動させることで、上部内圧延ロール14及び下部内圧延ロール15の回転軸が上下方向となるように内圧延ロールハウジング12を左右方向に移動させることができるので、矯正変更動作を簡単に行なうことができる。
【符号の説明】
【0036】
1…H形鋼、1a…ウェブ、1b1…左フランジ、1b2…右フランジ、10…曲がり矯正装置、11…装置架台、12…内圧延ロールハウジング、12a,12b…結合凸部
、12a1,12b1…貫通穴、13…外圧延ロールハウジング、13a…結合凸部、13a1…貫通穴、13b…軸受、14…上部内圧延ロール、15…下部内圧延ロール、16…上部内圧延ロール圧下機構、17…下部内圧延ロール圧下機構、18…窓、19…上部ロール支持部、19a…回転ピン、20…下部ロール支持部、20a…回転ピン、23…左外圧延ロール、24…回転動力源、25…動力伝達軸、26…ハウジング着脱部、27…コッター、28…コッター昇降機構、28a…直動機構、28b…サーボモータ、29…コッター抜け止め用シリンダ、29a…ピストンロッド、30…軌道、31…車輪、32a…上部昇降機構、32b…下部昇降機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に対して直交する左右方向にウェブが延在し、このウェブの左右端から上下方向に左右フランジが延在するH形鋼の長手方向曲がりを矯正する装置であって、
前記左右フランジの一方の内面を圧下する内圧延ロールを回転自在に支持する内圧延ロール支持部と、
この内圧延ロール支持部が前記H形鋼の搬送方向に直交する平面内で揺動自在となるように支持する内圧延ロールハウジングと、
前記内圧延ロールを前記左右フランジの一方の内面に向けて圧下させる内圧延ロール圧下手段と、
前記左右フランジの一方の外面を圧下する外圧延ロールと、
回転軸が上下方向に延在するように前記外圧延ロールを支持する外圧延ロールハウジングと、
前記内圧延ロールハウジング及び前記外圧延ロールハウジングを分割可能に結合するハウジング着脱部と、を備えたことを特徴とするH形鋼の曲がり矯正装置。
【請求項2】
前記内圧延ロールハウジング及び前記外圧延ロールハウジングを分離可能に結合するハウジング着脱部を備え、
このハウジング着脱部は、前記内圧延ロールハウジングを前記外圧延ロールハウジングに向かう前記左右方向に移動させ、前記内圧延ロールハウジングの左右方向位置を調整するハウジング位置調整機構を備えていることを特徴とする請求項1記載のH形鋼の曲がり矯正装置。
【請求項3】
前記ハウジング着脱部は、
前記内圧延ロールハウジングの側部に設けた第1結合凸部と、
前記外圧延ロールハウジングの側部に設けられ、前記第1結合凸部に上下方向から重合する第2結合凸部と、
これら第1及び第2結合凸部に上下方向に連通して設けた貫通穴と、
これら貫通穴に挿入することで前記第1及び第2結合凸部を結合するコッターと、を備えているとともに、
前記コッターは、基端側から先端側に向かうに従い、漸次縮径したテーパ外周を有し、前記第1及び第2結合凸部の前記貫通穴へのコッターの挿入量を増大すると、前記テーパ外周及び前記第1結合穴の内面の係合により、前記内圧延ロールハウジングを前記外圧延ロールハウジングに向かう前記左右方向に移動させ、前記内圧延ロールハウジングの左右方向位置を調整する前記ハウジング位置調整機構として機能することを特徴とする請求項2記載のH形鋼の曲がり矯正装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−71168(P2013−71168A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213147(P2011−213147)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000200334)JFEメカニカル株式会社 (48)