説明

InVivo造影剤

本発明は、医学的イメージングの分野、そして特にケモカイン受容体5(CCR5)の上方制御と関連する疾患状態のイメージングの分野に関する。そのような疾患状態をイメージングする際に有用な造影剤、前駆体および方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的イメージングの分野、そして特にケモカイン受容体(CCR)の特定のクラスの上方制御と関連する疾患状態のin vivoでのイメージングの分野に関する。そのような疾患状態をイメージングするために有用な化合物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインシステムは、免疫細胞の組織へのトラフィッキングを制御し、そして従って炎症において中心的役割をはたす。このシステムは、増殖制御、造血および血管形成等の多数のその他の生物学的プロセスにも関与している。さらに、ケモカインは、中枢神経系において中心的役割をはたすと考えられている。走化性ケモカイン(chemotactic cytokines)は、2つの必須のジスルフィド結合(Cys1-Cys3;Cys2-Cys4)を形成する4箇所の保存されたシステイン残基により特徴づけられる小型の分泌分子である。それらは、2つのシステイン残基の相対的位置に基づいて、2種類の主要なクラスを示すCCとCXCとに簡単に分類することができる。ケモカインは、化学伝達物質として作用し、浸潤性の免疫細胞によるかまたは炎症部位に局在する常在細胞により、放出される。
【0003】
ケモカインは、ケモカイン受容体(CCR)との相互作用を介してそれらの生物学的作用を誘導する。CCRは、不可欠な膜タンパク質であり、細胞内ループおよび細胞外ループ、細胞外N-末端および細胞質側C-末端により連結される7回膜貫通α-ヘリックスドメインから形成される。それらは全て、C-末端α-ヘリックスにより一つの面を覆われる3本鎖のアンチパラレル型β-シートの共通の折り畳みを共有し、そして不規則なN-末端が先行する。それらの機能特性に必須な二量体化/オリゴマー化のプロセスには、N-末端が関与する。
【0004】
ケモカイン受容体(CCR)は、炎症が役割を果たす特定の疾患状態において、乱されることが見出された。例えば、多発性硬化症(MS)などの神経炎症性疾患[Rottman et al., 2000 Eur. J. Immunol.30 p2372]、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)[Xia & Hyman 1999 J. Neurovirology 5 p32]、および同様にアテローム性動脈硬化症[Greaves & Channon 2002 Trends Immunol. 23(11) p535]などのその他の病的な炎症性症状、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、変形性関節症、アレルギー性疾患、HIV/AIDS、喘息、および癌など。
【0005】
特定の疾患状態において特に重要な一つのケモカイン受容体は、CCR5である。ヒト免疫不全ウィルス(HIV)がマクロファージ中への進入を引き起こすために使用するのがまさにケモカイン受容体であり、そしてCCR5発現が慢性HIV感染において亢進制御されているため、それがかなりの治療法の開発の対象であった。MS、アルツハイマー病およびPD等の様々な神経炎症性症状の病態生理学へのその関与のためにも、CCR5は注目を惹いてきた。
【0006】
ケモカイン受容体リガンドは、GaoおよびMetz[Chem.Rev., 103, 3733-52 (2003)]およびRibeiroおよびHoruk[Pharmacol.Ther., 107, 44-58 (2005)]によりレビューされてきた。
【0007】
核医学的イメージングのためにサイトカインおよびケモカイン受容体を標的化することは、挑戦として記載されてきた[Signore et al., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 30(1), 149-165 (2003)]。Signoreらは、ケモカイン受容体を標的化することが知られている主要なアプローチは、放射性標識したインターロイキン-8(IL-8)であることを報告した。
【0008】
WO 02/36581は、CCR1受容体に結合し、そして血液-脳関門(BBB)を通過することができる放射性医薬品を教示する。これらの放射性医薬品は、アルツハイマー病を診断する際に有用であると考えられる。
【0009】
WO 2006/102395は、イメージング部分(その文献中では“造影剤”と呼ばれる)をアテロームプラークに標的化することが教示される。CCR5受容体に結合するこのリガンドRANTESは、RANTESに結合する場合に、アテローム性動脈硬化症病変に対して造影部分を送達するために適した多数の標的化部分の一つと示されている。教示される画像化部分には、ある範囲のin vivo画像診断法、例えば、単一光子放出型コンピュータ断層撮影(SPECT)、磁気共鳴映像法(MRI)および陽電子放出断層撮影法(PET)、に適したものが含まれる。
【0010】
CCR5が特異的に関係する症状、特に神経炎症、を画像化する能力は、様々な急性および慢性の病態の初期の診断のための重要なツールを示し、そして治療アプローチおよび戦略をサポートすることができる。従って、CCR5を画像化する造影剤の必要性、そして特にBBBを通過することができる造影剤の必要性が、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO 02/36581
【特許文献2】WO 2006/102395
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Rottman et al., 2000 Eur. J. Immunol.30 p2372
【非特許文献2】Xia & Hyman, 1999 J. Neurovirology 5 p32
【非特許文献3】Greaves & Channon, 2002 Trends Immunol. 23(11) p535
【非特許文献4】Gao and Metz, Chem.Rev., 103, 3733-52 (2003)
【非特許文献5】Ribeiro and Horuk, Pharmacol. Ther., 107, 44-58 (2005)
【非特許文献6】Signore et al., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 30(1), 149-165 (2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、in vivo画像化に関し、そして特にケモカイン受容体5(CCR5)のin vivo画像化において使用するために適する新規な造影剤に関する。本発明は、本発明の造影剤ならびにそれらを含む医薬組成物の調製のための方法もまた、提供する。医薬化合物の簡易な調製のため、キットが提供される。さらに、本発明は、本発明の造影剤および医薬組成物を使用するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第一の側面において、本発明は、ケモカイン受容体5(CCR5)に対して親和性を有しそして3000ダルトン以下の分子量を有し、少なくとも1つの造影部分により標識された合成化合物を含む造影剤を提供し、ここで、この化合物を哺乳動物の身体に対してin vivoにて投与した後、造影部分を外部から非侵襲的に検出することができ、そしてその造影部分は:
(i)γ線-放出性放射性ハロゲン;または
(ii)陽電子-放出性放射性非金属;
から選択される。
【0015】
“CCR5に対する親和性”を有する化合物は、本発明において、MIP-1βのCCR5-発現CHO細胞の結合を0.1 nM〜10 nMの範囲のIC50値で阻害する化合物と定義される。ここで、MIP-1βは、マクロファージ炎症性タンパク質1β(CCR5のリガンド)である[Samson et al., J. Biol. Chem., 272, 24934-41 (1997)]。実施例4も参照のこと。本発明のCCR5化合物はまた、好ましくは、その他のケモカイン受容体(例えばCCR1またはCCR3)よりも、CCR5に対して選択性である。その様な選択的阻害剤は、適切には、Kiにより定義されるCCR5についての強度が、CCR1についての強度と比較して、少なくとも50倍、好ましくは少なくとも100倍、最も好ましくは少なくとも500倍高い強度を示す。
【0016】
合成化合物は、好ましくは非ペプチド性である。用語“非ペプチド”は、ペプチド結合、すなわち、2つのアミノ酸残基間のアミド結合、を何も含まない化合物のことを意味する。ケモカイン受容体5(CCR5)に対する親和性を有する合成化合物は、好ましくは、1000ダルトン以下の分子量、そして最も好ましくは600ダルトン以下の分子量を有する。合成化合物は、好ましくは、2〜6個の窒素(N)原子、最も好ましくは2〜5個の窒素(N)原子を含む。このN原子は、アミド;アミン;または5-員または6-員の窒素含有ヘテロアリール環官能基の一部として存在する。ヘテロアリール環は、1または2個のNヘテロ原子を有することができる。アミンが存在する場合、それは適切には、開鎖であるか、または5-員または6-員の飽和脂肪族環の一部である。そのような好ましい環状アミンは、ピペリジン、ピペラジンまたはモルホリンである。アミドが存在する場合、それは適切には、開鎖であり、すなわち、ラクタムを含まない。そのような好ましいアミドは、ベンズアミドまたはアニリンのアシル誘導体、ベンジルアミンまたはアミノピペリジン残基である。合成化合物はまた、好ましくは、1〜3個のフェニル環、最も好ましくは1または2個のフェニル環を含む。CCR5ファーマコフォアは、好ましくは、2個の水素結合アクセプターおよび3個の疎水性相互作用を含み;特にそれはフェニル環から5〜7Åの位置に塩基性アミンを有する。
【0017】
用語“により標識された”は、官能基が造影部分を含むか、または追加の種として造影部分が結合するか、のいずれかを意味する。官能基が造影部分を含む場合、このことは‘造影部分’が化学構造の一部を形成し、そしてその同位体の天然の存在レベルよりも顕著に高いレベルで存在する放射性同位体であることを意味する。そのような同位体のレベルの上昇または増加は、適切には、少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも20倍であり;そして理想的には、問題になっている同位体の天然に存在するレベルの少なくとも50倍であるか、または問題となっている同位体の増加のレベルが90〜100%であるレベルで存在するか、のいずれかである。そのような官能基の例には、11Cのレベルが増加されたCH3基、そして18Fのレベルが増加されたフルオロアルキル基が含まれ、その結果造影部分は、化学構造中の同位体で標識された11C原子または18F原子である。放射性同位体3Hおよび14Cは、適切な造影部分ではない。
【0018】
造影部分がγ線-放出性放射性ハロゲンの場合、放射性ハロゲンは、適切には、123I、131I、または77Brから選択される。好ましいγ線-放出性放射性ハロゲンは、123Iである。造影部分が陽電子-放出性放射性非金属である場合、造影剤は、陽電子放出断層撮影法(PET)に適したものである。適切なそのような陽電子放出物質には:11C、13N、17F、18F、75Br、76Br、または124Iが含まれる。好ましい陽電子-放出性放射性非金属は、11C、13N、124I、および18F、特に11C、および18F、最も好ましくは18Fである。
【0019】
造影部分は、好ましくは、陽電子-放出性放射性非金属である。PET造影部分の使用は、以下:
(i)改善された診断情報のための、機能的画像(PET)および解剖的画像(CT)の簡便な同時記録(co-registration)を可能にするPETカメラ/CTカメラの開発;
(ii)PET画像を定量化して、段階決定および治療のモニタリングのための正確な評価を可能にするための設備;
(iii)より小型の標的組織を可視化することができる感度の増大;
を含む、特定の技術的利点を有する。
【0020】
一態様において、造影剤は、以下の式I:
【0021】
【化1】

【0022】
式中:
R1およびR2は、独立して、C1-6アルキルまたはC1-6ハロアルキルであり;
R3aおよびR3bは、独立して、結合またはC1-5アルキレン、-O-[C1-4アルキレン]-、または-[C1-2アルキレン]-O-[C1-2アルキレン]-から選択されるリンカー基を示し;
R4は、H、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシから選択され;そして,
QaおよびQbは、独立してA3基または-(A2n-R5であり;
ここでA2は-O-、-OCH2-、-CH2O-、CH2、C=O、S=O、SO2、-NH(CO)-、または-CO(NH)-から選択され、R5はA3基である0〜3個の置換基を有するフェニル基であり、そしてnは0〜3の整数の値であり;
ここで-A3はH、C1-6アルキル、OH、またはHalである、
の合成化合物を含む。
【0023】
式Iの好ましい化合物は、以下:
R1およびR2は、独立して、メチル、エチル、1-メチルエチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、または1-フルオロメチルエチルから選択され;
R3aおよびR3bは、独立して、C1-3アルキレンまたはC1-3アルコキシであり;
R4は、HまたはC1-3アルキルであり;
Qは、3-フェノキシ、4-フェノキシ、4-(3-ヒドロキシフェノキシ)、4-(4-メチルフェニル)スルホニル、4-(4-クロロフェニル)スルホニル、4-(2,4-ジクロロフェニル)スルホニル、4-(4-クロロフェノキシ)、4-メチルフェニルアミノ、4-フェニルアミノ、4-フェニルチオ、4-フェニルスルホニル、4-ベンゾイル、4-(4-ヨードフェノキシ)、3-(4-ヨードフェノキシ)、4-(4-フルオロフェノキシ)、3-(4-フルオロフェノキシ)、または3-(4-フルオロエチル)フェノキシである;
のものである。
【0024】
式Iの化合物を含む好ましい造影剤は、以下の式Ia:
【0025】
【化2】

【0026】
式中:
IM1およびIM3は、独立して、Hまたは造影部分であり;
IM2はCまたは造影部分11Cであり;
但し、少なくとも1つのIM1〜IM3が造影部分である;
のものである。
【0027】
式Iaの好ましい化合物は、以下のものである。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
式Iの別の好ましい化合物は、以下の式Ib:
【0033】
【化7】

【0034】
式中:
IM1aおよびIM2aは、独立して、H、Hal、または造影部分であり;
IM3aは、Cまたは造影部分11Cであり;
但し、少なくとも1つのIM1〜IM3は造影部分である;
の化合物である。
【0035】
さらなる態様において、造影剤は、以下の式II:
【0036】
【化8】

【0037】
式中:
R6はアシル、フルオロアシル、またはメチルスルホニルであり;
R8〜R9は、独立して、H、C1-3アルキル、OHまたはHalから選択され;
EはNまたはCHであり;
EがNである場合、X1は-CH2-であり、そしてEがCHである場合、X1は-CH2-または-O-であり;
Ar1は0〜2個のNヘテロ原子を有しそして0〜3個のR7基により置換された6-員のアリール環であり;
それぞれのR7は、独立して、C1-3アルキル、OH、Hal、NO2、NH2、CO2H、C1-6アルコキシ、C1-6アミノ、C1-6アミド、-O(CH2CH2O)xX2または-NH(CH2CH2O)xX2から選択され、ここでxは0〜4の整数値であり、そしてX2はHまたはCH3である;
の合成化合物を含む。
【0038】
式IIにおいて、R6は好ましくはアセチルであり;R8〜R9は好ましくはH、CH3、OH、Cl、FおよびIから選択され;そしてAr1は好ましくはフェニル環またはピリジン環を含み、最も好ましくはフェニル環を含む。好ましくは、Ar1環は、1個のR7基を有する不飽和または飽和のものである。存在する場合、R7は、好ましくは:-OH、-NHCH3、F、-O(CH2CH2O)xX2、またはNH(CH2CH2O)xX2から選択される。X2は、好ましくはHである。
【0039】
式IIの化合物を含む好ましい造影剤は、式IIa:
【0040】
【化9】

【0041】
式中:
IM4は、独立して、H、CH3、または造影部分であり;
IM6、IM7およびIM8は、独立して、Hまたは造影部分であり;
IM5は、Cまたは造影部分11Cであり;
但し、少なくとも1つのIM4〜IM8は造影部分であり;そして
X1は式IIについて上記に定義された通りである;
のものである。
【0042】
式IIaの好ましい化合物は、以下:
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

【0046】
【化13】

【0047】
【化14】

【0048】
【化15】

【0049】
式中、X1は式IIについて上記に定義された通りである;
のものである。
さらなる態様において、造影剤は、式III:
【0050】
【化16】

【0051】
式中:
R10はHまたはC1-3アルキルであり;
R10aは、CH2またはC1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、またはHalから選択される0〜2個の置換基を有するフェニレン基であり;
R11はHまたは独立してOH、Hal、C1-6アルキル、C1-6アルコキシアルキル、C1-6フルオロアルキル、またはニトリルから選択される0〜3個の置換基を有するフェニル基;
R11aはCH、C1-3アルキレン、および-O-C1-3アルキレンから選択され;
R12は、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、Hal、C1-3アルキルスルホニルから選択される0〜3個の置換基を有するフェニル基であるか、またはR12は-NHC=O-RxRyであり:
ここでRxは酸素およびpが0〜3の整数値である(CH2pから選択され;そして
RyはO、NおよびSから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する6員環であり;
R12aはHまたはOHであり;
R13はH、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり;そして
QcおよびQdは、独立して、H、Hal、C1-3アルキル、およびC1-3アルキルスルホニルから選択される置換基である;
の合成化合物を含む。
【0052】
式IIIの好ましい化合物は、以下:
R10=Hであり;
R10a=CH2であり;
R11=3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、3-クロロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、3-フルオロ、4-クロロ-フェニル、3-ヒドロキシ、4-ヨードフェニル、4-ヨードフェニルであり;
R11a=CHであり;
R12=C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、Hal、C1-3アルキルスルホニルから選択される1または2個の置換基を有するフェニル基であるか、またはR12はNHC=O-RxRyであり:
ここでRxは酸素であり;そして
Ryはシクロヘキシル、ジヒドロピラン、またはテトラヒドロピランであり;
R12a=Hであり;
R13=エチル、フルオロエチル、プロピル、またはフルオロプロピルであり;そして
QcはHであり、そしてQdは4-C1-3アルキルまたは4-C1-3アルキルスルホニルである;
を有する。
【0053】
別の好ましい式IIIの化合物は:
R10=HまたはCH3であり;
R10a=Hal置換基を有するフェニレン基であり;
R11=Hであり;
R11a=C1-3アルコキシであり;
R12=C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、Hal、C1-3アルキルスルホニルから選択される1または2個の置換基を有するフェニル基であるか、または、R12がNHC=O-RxRyであり:
ここで、Rxは酸素であり;そして
Ryはシクロヘキシル、ジヒドロピラン、またはテトラヒドロピランであり;
R12a=OHであり;
R13=エチル、フルオロエチル、プロピル、またはフルオロプロピルであり;そして
QcはHであり、そしてQdは4-C1-3アルキルまたは4-C1-3アルキルスルホニルである;
である。
【0054】
式IIIの化合物を含む好ましい造影剤は、式IIIa〜IIIc:
【0055】
【化17】

【0056】
式中:
IM9およびIM10は、独立して、Hまたは造影部分であり;
但し、少なくとも1つのIM9〜IM10は造影部分である;
【0057】
【化18】

【0058】
式中:
IM11およびIM12は、独立して、H、CH3、または造影部分であり;
但し、少なくとも1つのIM11〜IM12は造影部分である;
【0059】
【化19】

【0060】
式中:
IM12a〜IM12dは、独立して、H、CH3、または造影部分であり;
但し、少なくとも1つのIM12a〜IM12dは造影部分である;
のものである。
【0061】
式IIIaの好ましい造影剤は、以下のもの:
【0062】
【化20】

【0063】
【化21】

【0064】
から選択される。
式IIIbの好ましい造影剤は、以下のもの:
【0065】
【化22】

【0066】
【化23】

【0067】
から選択される。
さらなる態様において、造影剤は、式IV:
【0068】
【化24】

【0069】
式中:
R14は、H、C1-6アルキル、C1-6フルオロアルキル、C1-6アルコキシ、またはA4基により置換されていてもよいフェニル基またはベンジル基であり;
ここでA4はC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、またはHalであり;
R14aは、HalまたはC1-3ハロアルキルから選択され;そして
R14bおよびR14cは、独立して、CH2またはNから選択される;
の合成化合物を含む。
【0070】
好ましくは、式IVにおいて:
R14はC1-3フルオロアルキルまたはハロフェニルであり;
R14aはC1-3ハロアルキルであり;そして
R14bおよびR14cは両方ともNである。
【0071】
あるいは、好ましくは、式IVにおいて:
R14はC1-3アルキルであり;
R14aはHalであり;そして
R14bおよびR14cは両方ともCH2である。
【0072】
式IVの化合物を含む好ましい造影剤は、式IVaまたは式IVb:
【0073】
【化25】

【0074】
式中:
IM13は、独立して、CH3または造影部分であり;
IM14は、独立して、Cまたは造影部分11Cであり;
但し、少なくとも1つのIM13〜IM14は造影部分である;
【0075】
【化26】

【0076】
式中:
IM14aは、独立して、CH3または造影部分であり;
IM14bは、独立して、Cまたは造影部分11Cであり;
但し、少なくとも1つのlM14a〜IM14bが造影部分である;
のものである。
【0077】
式IVaの好ましい造影剤は、以下:
【0078】
【化27】

【0079】
【化28】

【0080】
【化29】

【0081】
から選択される。
式IVbの好ましい造影剤は、以下:
【0082】
【化30】

【0083】
【化31】

【0084】
から選択される。
さらなる態様において、造影剤は、式V:
【0085】
【化32】

【0086】
式中:
R15およびR16は、独立して、H、OH、C1-3アルキル、またはHalであり;そして
R17は、H、C1-6アルキルまたはC1-6ハロアルキルである;
の合成化合物を含む。
【0087】
式Vの好ましい化合物は、以下:
R15およびR16は、独立して、HまたはHalであり;そして
R17は、C1-3フルオロアルキルである;
のものである。
【0088】
式Vの化合物を含む好ましい造影剤は、式Va:
【0089】
【化33】

【0090】
式中:
IM15〜IM17は、独立して、Hまたは造影部分であり;
但し、少なくとも1つのIM15〜IM17は造影部分である;
のものである。
【0091】
式Vaの好ましい造影剤は、以下:
【0092】
【化34】

【0093】
【化35】

【0094】
から選択される。
さらなる態様において、造影剤は、式VI:
【0095】
【化36】

【0096】
式中:
R18はHまたはHalであり;
R19はC1-6アルキルまたはC1-6ハロアルキルであり;
R20はH、OH、またはHalであり;そして
R21はC1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、またはC1-6ハロアルキルである;
の合成化合物を含む。
【0097】
式VIの好ましい造影剤の例は、以下:
【0098】
【化37】

【0099】
【化38】

【0100】
【化39】

【0101】
のものである。
ケモカイン受容体5(CCR5)に対する親和性を有する合成化合物は、以下の様に取得することができる:
式I - WO 00/06146、Shiraishi et al.,[J. Med. Chem.43 pp2049-63 (2000)];
式II - ピペリジン-4-カルボキサミド誘導体、Imamura et al.,[Bioorg. Med. Chem. 13 p.397-416 (2005)およびJ. Med. Chem.49 pp2784-93 (2006)];
式III - ジフェニルプロピルピペリジン誘導体、Cumming et al.,[Bioorg. Med. Chem. Lett, 16 p3533-3536 (2006)およびShou-Fu Lu et al.,[Bioorg. Med. Chem. Lett, 2007, 17, 1883-1887];
式IV - ピペラジン-ベースの誘導体、Tagat et al.,[J.Med.Chem.,47, 2405-8 (2004)];およびTagat et al.,[J. Med. Chem 44, 3343-6 (2001)];
式V - Wood and Armour[Prog.Med.Chem., 43, 239-271 (2005)];
式VI - Mitsuya et al., [J. Med. Chem.49 pp4140-52 (2006)およびBioorg. Med. Chem. Lett. 17 pp727-31 (2007)]。
【0102】
第一の側面の造影剤は、以下の第二の側面において記載する様に、前駆体と反応させることにより、適切に調製される。
第二の側面において、本発明は、第一の側面の造影剤を調製するための方法を提供し、これは以下:
(i)非放射性前駆体;と
(ii)第一の側面の造影部分の適切な供給源;
との反応を含み、ここで
前駆体が第一の側面の合成化合物の誘導体であり、そしてその誘導体が造影部分の適切な供給源と反応して、所望の造影剤をもたらすことができる置換基Y1を含む。
【0103】
“前駆体”は、適切には、所望の非-金属製放射性同位体の便利な化学形態との化学反応を、最小の工程数で(理想的には単一の工程で)、そして顕著な精製を必要とすることなく(理想的にはさらなる精製おこなわずに)行って、所望の放射性生成物を得ることができるように設計された、合成化合物の非放射性誘導体を含む。そのような前駆体は合成のものであり、そして良好な化学的精製度で都合良く得ることができる。“前駆体”は、合成CCR5化合物の特定の官能基のための保護基(PGP)を含んでいてもよい。適切な前駆体は、Bolton, J.Lab.Comp.Radiopharm., 45, 485-528 (2002)に記載されている。
【0104】
用語“保護基”(PGP)は、望ましくない化学反応を阻害または抑制するが、分子の残りの部分を修飾しないほどに十分に穏やかな条件下で、問題となる官能基から切り出すことができる程度に十分に反応性であるように設計される、基のことを意味する。脱保護の後、所望の生成物が得られる。保護基は、当業者に周知であり、そしてアミン基について:Boc(Bocはtert-ブチルオキシカルボニルである)、Fmoc(Fmocは、フルオレニルメトキシカルボニルである)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[すなわち、l-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]またはNpys(すなわち、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニル);そしてカルボキシル基について:メチルエステル、tert-ブチルエステルまたはベンジルエステル;から適切には選択される。ヒドロキシル基について、適切な保護基は:メチル、エチルまたはtert-ブチル;アルコキシメチルまたはアルコキシエチル;ベンジル;アセチル;ベンゾイル;トリチル(Trt)または例えば、tert-ブチルジメチルシリルなどのトリアルキルシリルである。チオール基について、適切な保護基は:トリチルおよび4-メトキシベンジルである。さらなる保護基を使用することは、‘Protective Groups in Organic Synthesis’、Theorodora W. Greene and Peter G. M. Wilts(第3版、John Wiley & Sons, 1999)中に記載される。
【0105】
好ましい前駆体は、Y1が、直接的な求電子性ハロゲン化または求核性ハロゲン化を受けるか;アルキルハロゲン化物またはフルオロアルキルハロゲン化物、トシレート、トリフラート(すなわち、トリフルオロメタンスルホネート)、メシラート、マレイミド、または標識化N-ハロアセチル部分から選択される標識化アルキル化剤による、簡易アルキル化を受けるか;チオール部分をアルキル化して、チオエーテル結合を形成するか;または標識化活性エステル、アルデヒドまたはケトンとの縮合を受けるか、のいずれかである誘導体であるものである。第一のカテゴリーの例は:
(a)トリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタンニルまたはトリブチルスタンニル)、またはトリアルキルシラン(例えば、トリメチルシリル)などの有機金属誘導体;
(b)ハロゲン置換用には非-放射性ヨウ化アルキルまたは臭化アルキル、および求核性ハロゲン化用にはアルキルトシレート、メシラートまたはトリフラート;
(c)求電子性ハロゲン化に対して活性化された芳香環(例えば、フェノール)、および求核性ハロゲン化に対して活性化された芳香環(例えば、アリールヨードニウム、アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩またはニトロアリール誘導体);
である。
【0106】
簡易アルキル化を受ける好ましい誘導体は、アルコール基、フェノール基、アミン基、またはチオール基であり、特にチオールと立体的に遮蔽されていない第1級アミンまたは第2級アミンである。
【0107】
チオール-含有放射性同位体反応物質をアルキル化する好ましい誘導体は、マレイミド誘導体またはN-ハロアセチル基である。後者の好ましい例は、N-クロロアセチル誘導体およびN-ブロモアセチル誘導体である。
【0108】
標識化活性エステル部分との縮合を受ける好ましい誘導体は、アミンであり、特に立体的に遮蔽されていない第1級アミンまたは第2級アミンである。
標識化アルデヒドまたはケトンとの縮合を受ける好ましい誘導体は、アミノオキシ基およびヒドラジド基であり、特にアミノオキシ誘導体である。
【0109】
固相支持体マトリクスに対して共有結合された“前駆体”が、供給されてもよい。そのような場合、所望の造影剤生成物は溶液中で形成され、それに対して開始物質と不純物は固相に結合したままである。18F-フッ化物を用いた固相求電子性フッ素化のための前駆体は、WO 03/002489中に記載される。18F-フッ化物を用いた固相求核性フッ素化のための前駆体は、WO 03/002157中に記載される。従って、固相支持体-結合前駆体は、適切に適合された自動化合成装置に差し込むことができるキットカートリッジとして提供することができる。カートリッジは、固相支持体-結合前駆体とは別に、不要なフッ化物イオンを取り除くためのカラム、および反応混合物を蒸発させそして生成物を必要に応じて製剤化することができるように接続された適切な容器を含むことができる。試薬および溶媒および合成のために必要なその他の消耗品は、放射能濃度、容量、送達の時間等について顧客の要求を満たすような方法で合成装置を操作できるようにするソフトウェアを保存するコンパクトディスクと一緒に含まれてもよい。好都合なことに、キットの全ての構成要素は使い捨てであり、実施毎のコンタミネーションの可能性を最小にし、そして滅菌そして品質を保証する。
【0110】
造影部分が放射性ヨウ素同位体を含む場合、Y1は適切には:ヨウ化アリールまたは臭化アリール等の非放射性前駆体ハロゲン原子(放射性ヨウ素置換を可能にする);活性化前駆体アリール環(例えば、フェノール基またはアニリン基);イミダゾール環;インドール環;有機金属前駆体化合物(例えば、トリアルキルスズまたはトリアルキルシリル);またはトリアジン等の有機前駆体またはヨードニウム塩等の求核置換反応のために適した離脱基;を含む。放射性ハロゲン(123Iおよび18Fを含む)を導入する方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm., 45, 485-528 (2002)]により記載される。放射性ハロゲン、特にヨウ素が結合することができる適切な前駆体アリール基の例は、以下に示される:
【0111】
【化40】

【0112】
両方とも、芳香環上での簡易な放射性ヨウ素置換を可能にする置換基を含有する。放射性ヨウ素を含有する代わりの置換基は、放射性ハロゲン置換を介して直接的ヨウ素化により、例えば、
【0113】
【化41】

【0114】
により、合成することができる。
ヨウ素の放射性同位体については、放射性ヨウ素原子が、好ましくは、ベンゼン環などの芳香環またはビニル基への直接的共有結合を介して結合される。というのも、飽和脂肪族系に結合するヨウ素原子は、in vivo代謝を受けやすく、従って放射性ヨウ素が喪失しやすいことが知られているためである。フェノールなどの活性化アリール環に結合したヨウ素原子はまた、特定の環境下では、in vivo安定性が限定的であることが観察された。
【0115】
造影部分がフッ素の放射性同位体を含む場合、放射性フッ素原子はフルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基の一部を形成することができる。というのも、フッ化アルキルはin vivo代謝に耐性であるためである。フッ素の放射性同位体(例えば、18F)について、18F-フッ化物と適した離脱基を有する適した前駆体(例えば、臭化アルキル、アルキル メシラートまたはアルキルトシレート)との反応を使用した直接的標識化を介して、放射性ハロゲン化を行うことができる。あるいは、ベンゼン環などの芳香環に対する直接的共有結合を介して、放射性フッ素原子を結合させることができる。そのようなアリール系について、前駆体は、適切には、活性化ニトロアリール環、アリールジアゾニウム塩、またはアリールトリアルキルアンモニウム塩を含む。しかしながら、直接的放射性フッ素化は、感受性の官能基にとっては有害である可能性がある。というのも、これらの求核性反応は、強塩基条件下で、極性非プロトン性溶媒中で無水[18F]フッ化物イオンを用いて行われるからである。
【0116】
合成化合物がアルカリ-感受性官能基または直接的な放射性ハロゲン化のためには適さないその他の官能基を有する場合、間接的放射性ハロゲン化方法が好ましい。従って、造影部分が放射性ハロゲン、例えば123Iおよび18Fを含む場合、Y1は放射性標識シントンと選択的に反応しそして従って抱合に際して所望の造影剤生成物をもたらす官能基を含むことが好ましい。用語“放射性標識シントン”は:
(i)既に放射性標識されて、それにより放射性標識がシントンに安定な様式で結合されており;
(ii)放射性標識される所望の化合物の一部である対応する官能基と選択的かつ特異的に反応するように設計された官能基を含む;
小型の合成有機分子を意味する。このアプローチは、直接的放射性標識化アプローチと比較して、放射性標識のin vivo安定性を改善した造影剤 を生成するためのよりよい機会をもたらす。
【0117】
シントンのアプローチは、造影部分の導入のために使用される条件においてもより高い柔軟性が可能になる。
18F-はまた、N-(CH2318F をもたらすための18F(CH23OMs(ここで、Msはメシラートである)などのアルキル化剤シントンによるアミン前駆体のN-アルキル化、18F(CH23OMs、18F(CH23OTs、または18F(CH23Brによるヒドロキシル基のO-アルキル化、または18F(CH23OMsまたは18F(CH23Brによるチオール基のS-アルキル化、により導入することができる。18Fはまた、-NH(CO)CH2O(CH2318F誘導体をもたらすための18F(CH23OH反応物質によるN-ハロアセチル基のアルキル化、または-NH(CO)CH2S(CH2318F誘導体をもたらすための18F(CH23SH反応物質によるN-ハロアセチル基のアルキル化により、導入することができる。18Fは、マレイミド-含有前駆体を18F(CH23SHと反応させることにより導入することもできる。アリール系について、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物、またはアリール第4級アンモニウム塩からの18F-フッ化物求核性置換は、造影剤の前駆体に対して抱合させるために有用なアリール-18F標識化シントンのために適切な経路である。
【0118】
Y1が第1級アミン基を含む前駆体は、Kahn et al.,[J.Lab.Comp.Radiopharm.45, 1045-1053 (2002)]およびBorch et al.,[J. Am. Chem. Soc. 93, 2897 (1971)]に教示されるように、18F-C6H4-CHOを用いた還元的アミノ化により、18Fにより標識することもできる。このアプローチは、フェニル-NH2基またはフェニル-CH2NH2基を含む化合物などのアリール1級アミンに対して役立つように適用することもできる。
【0119】
塩基-感受性前駆体のための特に好ましい方法は、Y1が酸性条件下(例えば、pH 2〜4)で18F-C6H4-CHOと縮合した式-NH(C=O)CH2-O-NH2のアミノオキシ基を含む場合である。18F-標識化誘導体への合成経路のさらなる詳細は、Bolton, J.Lab.Comp.Radiopharm., 45, 485-528 (2002)により記載される。
【0120】
前駆体は、好ましくは、滅菌された無発熱原の形態である。無菌性を維持するための方法は、以下の第三の側面において記載される。
本発明の造影剤を生成するために適した前駆体の例は、Y1がシントンN-スクシンイミジル4-[123I]ヨード安息香酸とpH 7.5〜8.5で縮合され、アミド結合で結合された生成物をもたらすアミン基を含むものがある。
【0121】
式I〜式Vの化合物を含む好ましい前駆体は、それぞれ式Ip〜Vp:
【0122】
【化42】

【0123】
式中、少なくとも1つのE1〜E4およびYa〜Ybは、Y1を含み、そして残りのE1〜E4およびYa〜Ybの基はそれぞれ式IのR1〜R4およびQa〜Qbである;
【0124】
【化43】

【0125】
式中、少なくとも1つのE6〜E9はY1を含み、そして残りのE6〜E9の基は、それぞれ式IIのR6〜R9の基である;
【0126】
【化44】

【0127】
式中、少なくとも1つのE10、E11、E12、またはE13はY1を含み、そして残りのE10、E11、E12、またはE13の基は、それぞれ式IIIのR10〜R13の基であり;
E11a〜E12aは式IIIのE11a〜E12aについて定義されたとおりであり;そして
YcおよびYdは式IIIのQcおよびQdについて定義された通りである;
【0128】
【化45】

【0129】
式中、E14はY1を含む式IVのR14の基であり、そして
E14a〜E14cは、式IVのR14a〜R14cについて定義された通りである;
【0130】
【化46】

【0131】
式中、少なくとも1つのE15〜E17はY1を含み、そして残りのE15〜E17の基はそれぞれ式VのR15〜R17である;
【0132】
【化47】

【0133】
式中、少なくとも1つのE18〜E20はY1を含み、そして残りのE18〜E20の基はそれぞれ式VIのR18〜R20であり;そして
E21は式VIについて定義したとおりのR21である;
のものである。
【0134】
第三の側面において、本発明は、哺乳動物への投与に適した形状で、生体適合性のキャリアと共に第一の側面造影剤を含む、医薬組成物を提供する。
“生体適合性のキャリア”は液体のものであり、特に組成物が生理学的に耐用性であるように造影剤を懸濁しまたは溶解することができる液体であり、すなわち、造影剤を毒性なしにまたは過度な不快なしに哺乳動物の身体に対して投与することができる液体である。生体適合性のキャリアは、適切には、無菌の発熱物質不含の注射用水等の注射可能キャリア液体;塩類溶液などの水溶液(有利なことには緩衝化されて、それにより注射用の最終生成物が等張であってもよい);1またはそれ以上の浸透圧調節物質(tonicity-adjusting substances)の水溶液(例えば、生体適合性カウンターイオンを有するプラズマカチオンの塩)、糖類(例えば、グルコースまたはスクロース)、糖アルコール類(例えば、ソルビトールまたはマンニトール)、グリセロール類(例えば、グリセロール)、またはその他の非-イオン性ポリオール物質(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど);である。好ましくは、生体適合性のキャリアは、発熱物質-不含の注射羊水または等張性塩類溶液である。
【0135】
そのような放射活性医薬組成物(すなわち、放射性医薬組成物)は、適切には、無菌の完全性を維持しつつ、皮下注射針を用いて1回または複数回貫通させる(puncturing)ために適したシール(例えば、圧着型(crimped-on)中隔シール封鎖)により提供される容器のいずれかにおいて供給される。そのような容器は、1回または複数の患者用量を含有することができる。好ましい複数用量容器は、複数の患者用量を含む単一のバルクバイアル(例えば、10〜30 cm3の容量のもの)を含み、それにより調製物の実行可能な耐用時間のあいだ、様々な時間間隔で、1回患者用量を臨床グレードのシリンジ中に取り出して、臨床の状況に適合させることができる。予め充填されたシリンジを1回ヒト用量または“単位用量”を含ませるように設計し、そして従って好ましくは使い捨てのものであるか、または臨床用途に適したその他のシリンジである。予め充填されたシリンジは、放射線量から操作者を保護するためのシリンジシールドと共に提供することもできる。適切なそのような放射性医薬品シリンジシールドは当該技術分野において公知であり、そして好ましくは鉛またはタングステンのいずれかである。
【0136】
放射性医薬組成物は、以下の第4の側面において記載するように、キットから調製することができる。あるいは、放射性医薬品は、無菌の製造条件下で調製され、所望の無菌生成物をもたらすことができる。放射性医薬品は、非-無菌条件下で調製して、例えば、ガンマ線-照射、オートクレーブ、乾熱、または化学物質処理(例えば、エチレンオキシドを用いて)を使用した最終的な無菌処理により調製することもできる。
【0137】
第4の側面において、本発明は、第3の側面の医薬組成物の調製のためのキットを提供し、このキットは第2の側面の前駆体を含む。そのようなキットは、第2の側面の“前駆体”を、好ましくは無菌の非-発熱性の形式で含み、そのため放射性同位体造影部分の無菌の供給源との反応により、最小数の操作で、所望の放射性医薬品をもたらす。放射性同位体が比較的短い半減期を有し、そして扱いやすいものであり、そして従って放射性薬剤師のために放射線量を減らす場合、そのような検討は、特に重要である。従って、そのようなキットの再構成のための反応培地は、好ましくは、上記に定義したとおりの“生体適合性のキャリア”であり、そして最も好ましくは水である。
【0138】
適切なキット容器は、無菌の完全性の維持および/または放射性の安全性の維持を可能にし、それに加えて、場合によっては不活性ヘッドスペース・ガス(例えば、窒素またはアルゴン)の維持を可能にする一方で、シリンジによる溶液の追加および抜き取りを可能にする、シールされた容器を含む。好ましいそのような容器は、気密性封鎖がオーバーシール(overseal)(典型的にはアルミニウムのもの)と圧着されている、中隔シールバイアルである。そのような容器は、封鎖が、所望の場合には例えば減圧に耐えて、ヘッドスペース・ガスまたは脱ガス溶液を変化させることができる、という追加の利点を有する。
【0139】
非放射性キットは、さらに放射性防護剤、抗菌性保存料、pH-調節剤または充填剤などの追加の構成要素を含んでもよい。用語“放射性防護剤”により、高反応性フリーラジカル(水の放射線分解により生じる酸素-含有フリーラジカルなど)を捕捉することにより、酸化還元プロセスなどの分解反応を阻害する化合物を意味する。本発明の放射性防護剤は、適切には:アスコルビン酸、パラ-アミノ安息香酸(すなわち、4-アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(すなわち、2,5-ジヒドロキシ安息香酸)、およびこれらの生体適合性カチオンとの塩から選択される。用語“生体適合性カチオン”により、非-毒性であり従って哺乳動物の身体、特にヒトの身体に投与するためにも適しており、イオン化され負に荷電した基と塩を形成する、正に荷電した対イオンのことを意味する。適切な生体適合性カチオンの例には:アルカリ金属ナトリウムまたはカリウム;アルカリ土類金属カルシウムおよびマグネシウム;そしてアンモニウムイオンが含まれる。好ましい生体適合性カチオンは、ナトリウムおよびカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0140】
用語“抗菌性保存料”により、潜在的に有害な微生物(例えば、バクテリア、酵母または菌類)の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌性保存料は、用量に依存して、何らかの殺菌特性を示すこともできる。本発明の抗菌性保存料の主要な役割は、再構成後の放射性医薬組成物中での、すなわち、放射性診断用生成物自体中での、そのような微生物の増殖を阻害することである。しかしながら、抗菌性保存料を使用して、再構成前の本発明の非放射性キットの1またはそれ以上の構成成分中での、潜在的に有害な微生物の増殖を阻害することもできる。適切な抗菌性保存料には:パラベン類、すなわち、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベン、またはこれらの混合物;ベンジルアルコール;フェノール;クレゾール;セトリミドおよびチオマーサル;が含まれる。好ましい抗菌性保存料はパラベンである。
【0141】
用語“pH-調節剤”は、再構成されたキットのpHがヒトまたは哺乳動物への投与のために許容可能な限界(およそpH 4.0〜10.5)中にあることを保証するために有用な、化合物または化合物の混合物を意味する。適切なそのようなpH-調節剤には、医薬的に許容可能なバッファー(例えば、トリシン、リン酸またはTRIS[すなわち、tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン]など)、および医薬的に許容可能な塩基(例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、またはこれらの混合物)が含まれる。複合体が酸性塩の形状で使用される場合、pH調節剤は別個のバイアルまたは容器で提供されてもよく、その結果、キットのユーザーは複数の工程手順の一部として、pHを調節することができる。
【0142】
用語“充填剤”により、製造および凍結乾燥のあいだ物質の取り扱いを容易にすることができる医薬的に許容可能な充填剤のことを意味する。適切な充填剤には、塩化ナトリウムなどの無機塩、およびスクロース、マルトース、マンニトール、またはトレハロース等の水溶性の糖類または糖アルコールが含まれる。
【0143】
キットにおいて用いられる場合の“前駆体”の好ましい側面は、上述の第二の側面について定義された通りである。キットにおいて使用するための前駆体は、無菌の製造条件下で使用されて、所望の無菌の非-発熱原性物質をもたらすことができる。前駆体は、非-無菌条件下で使用して、例えば、ガンマ線-照射、オートクレーブ、乾熱または化学物質処理(例えば、エチレンオキシドを用いて)を使用した最終的な無菌処理により使用することもできる。好ましくは、前駆体は無菌の非-発熱性の形式で使用される。最も好ましくは、無菌の非-発熱性前駆体は、上述したように、シールされた容器中で使用される。
【0144】
第5の側面において、本発明は、第3の側面の医薬組成物を投与することを含む、CCR5症状の被検体におけるin vivo診断またはイメージングのための方法を提供する。用語“CCR5症状”により、CCR5の発現が亢進制御または抑制制御された、哺乳動物、特にヒト、の身体の疾患状態を意味する。好ましくは、CCR5の発現は、in vivoでの診断用イメージングにおいて、より良好なシグナル対バックグラウンドをもたらすため、亢進制御される。CCR5の発現は、慢性のHIV感染において亢進制御される。CCR5の症状には、様々な病理学的炎症症状ならびに神経炎症性症状も含まれる。病理学的炎症性症状には:アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、変形性関節症、アレルギー性疾患、HIV/AIDS、喘息および癌が含まれる。神経炎症性症状には:多発性硬化症(MS)、アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)が含まれる。第5の側面の好ましい方法は、神経炎症のin vivo診断またはイメージングである。ほとんどの神経変性性疾患は、炎症の要因を有する。
【0145】
第6の側面において、本発明は、CCR5症状を被検体においてin vivoでイメージングするための、第3の側面の医薬組成物の使用を提供し、ここで被検体はこの医薬組成物を以前に投与された被検体である。“CCR5症状”およびその好ましい態様は、上述した第5の側面において定義したとおりである。“以前に投与された”という場合、造影剤組成物を患者に対して、例えば、静脈注射により投与する場合の臨床医が関与する工程が、既に行われた場合を意味する。
【0146】
第7の側面において、本発明は、CCR5症状の診断のための方法において使用するための医薬品の製造のために、第一の側面のいずれかの造影剤を使用することを提供する。“CCR5症状”およびその好ましい態様は、上述した第5の側面について定義したとおりである。
【0147】
第8の側面において、本発明は、CCR5症状に対抗するための医薬を用いてヒトまたは動物の身体を治療することの効果をモニタリングするための方法を提供し、この方法は、そのような身体に第3の側面の医薬組成物を投与し、そして医薬組成物の造影剤の取り込みを検出することを含む。“CCR5症状”およびその好ましい態様は、上述した第5の側面について定義した通りである。
【0148】
第9の側面において、本発明は、CCR5症状を診断するための方法において使用するための本発明の医薬組成物を提供する。“CCR5症状”およびその好ましい態様は、上述した第5の側面について定義したとおりである。
【0149】
本発明は、以下の実施例により説明される。
実施例1は、本発明の式Iに包含される非放射性19Fの対応物化合物(“化合物1”)の合成を提供する。18Fの化合物はフッ素の同位体である点でのみ相違しているため、それは化学的にはほとんど同一である。
【0150】
実施例2は、本発明の式IIに包含される非放射性19Fの対応物化合物(“化合物8”)の合成を提供する。18Fの化合物はフッ素の同位体である点でのみ相違しているため、それは化学的にはほとんど同一である。
【0151】
実施例3および4は、18F-標識化された化合物1および化合物8の合成の例を提供する。実施例5は、式Vの18F-標識化された化合物の合成の例を提供する。
実施例6は、実施例2の化合物8についての生物学的スクリーニングを提供する。これは、化合物8がCCR5に高い親和性で結合することを示し、そしてそれがCCR1およびCCR2Bには結合しないため、CCR5に対して選択的であることを示す。
【0152】
実施例7は、膜浸透性アッセイ(PAMPAアッセイ)における化合物1および8のスクリーニングを提供する。Pe(透過性)は、化合物8について高いCNS(血液脳関門)浸透性を示しそして化合物1について中間の浸透性を示す。
【0153】
略語:
以下の略語を使用する:
DCM=ジクロロメタン
DIAD=ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DIEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N'-ジメチルホルムアミド
EDCI=l-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
HOBT=1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
LCMS=液体クロマトグラフィー質量マススペクトル法
THF=テトラヒドロフラン。
【実施例】
【0154】
実施例1:化合物1の合成
【0155】
【化48】

【0156】
工程(i):化合物Aの合成(スキーム1)
DMF(20 mL)中5-アミノ-2-メトキシフェノール(2.78 g、0.020 mol)、4-フェノキシ安息香酸(4.28 g、0.020 mol)、DIEA(3.1 g、4.2 mL、0.024 mol)およびHOBT(3.2 g、0.024 mol)の溶液を0℃まで冷却し、EDCI(4.6 g、0.024 mol)を窒素下で一度に添加した。混合物を室温で一晩攪拌した。混合物を氷冷水(100 mL)に注ぎ入れ、そして酢酸エチル(50 mL×3)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を水、ブラインで洗浄し、そして乾燥させて(MgSO4)、そして濃縮して乾燥させた。残留固形物をDCM/ヘキサンで粉砕し、白色固体を得た(4.1 g、62%)。1H NMRおよびLCMS解析により、>98%の精製度が示された。
【0157】
工程(ii):2-(エチル-2'-フルオロエチルアミノ)エタノールの合成
必要とされる中間体2-(エチル-2'-フルオロエチルアミノ)エタノールを、スキーム2に示されるようにして調製した。
【0158】
【化49】

【0159】
2-エチルアミノエタノール(6.7 g、0.075 mol)、2-フルオロエチルブロミド(12 g、0.094 mol)、無水炭酸カリウム(10.3 g、0.075 mol)および乾燥ベンゼン(50 mL)の混合物を、攪拌しながら、還流下で48時間加熱した。室温にまで冷却したのち、固体を濾過により取り出し、そしてベンゼンで洗浄した:ベンゼンは減圧下にて除去した。1H NMR解析により、生成物の純度が約90%であると示され、そしてそれは、さらに精製することなく、次の工程において直接的に使用された(9.0 g、89%)。
【0160】
工程(iii):化合物1の合成
DIAD(1.36 g、1.3 mL、6.71 mmol)を、工程(i)から得られた化合物A(1.50 g、4.47 mmol)、工程(ii)から得られた2-(エチル-2'-フルオロエチルアミノ)エタノール(0.91 g、6.71 mmol)、およびPPh3(1.76 g、6.71 mmol)の無水DCM/THF(12 mL、5:1)中溶液に対して滴加した。発熱性反応がすぐに観察された。次いで、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を濃縮して乾燥させ、そして残留固形物をカラムクロマトグラフィー[シリカ、DCM→DCM/MeOH(98:2)]により精製した。2番目のフラクションが所望の生成物であり、このフラクションを上記と同一の条件下にて再度クロマトグラフィーにかけた。DCM/ヘキサンから再結晶化することにより、無色固体が得られた(0.81 g、40%)。分析的データにより、>98%の精製度であることが示された。LCMS(API-ES+)m/z 453.3(M+H+)。サポートデータ:化合物1の1H NMR、13C NMR、HPLC、LCMS。
【0161】
実施例2:化合物8の合成
化合物8をスキーム3およびスキーム4に従って調製した:
【0162】
【化50】

【0163】
【化51】

【0164】
工程(i):化合物5の合成:
エチルピペリジン-4-カルボキシレート(10 g、0.064 mol、1.1 eq)およびトリエチルアミン(15 ml、2 eq)をDCM(30 ml)中に溶解し、そして氷冷水浴中でマグネティックスターラーで攪拌しながら冷却した。DCM(20 mL)中2-フルオロアセチルクロリド(5 g、0.052 mol、1.0 eq)を反応物に対して滴加し(15 min)、1時間攪拌した。水(100 ml)を添加し、そして溶媒を減圧下にて除去した。残留物を酢酸エチル(300 mL)中で抽出し、それを水、2 N HCl、飽和NaHCO3、ブラインで洗浄し、そしてMg2SO4上で乾燥させた。有機溶液を濾別し、次いで濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの後、6.2 g(収率55%)の生成物化合物5が得られた。
【0165】
工程(ii):化合物6の合成
化合物5(6.2 g、0.029 mol、1 eq)をメタノール(100 ml)中に溶解し、そして2 N NaOH(30 ml、2 eq)を添加し、一晩攪拌した。次いで、メタノールを減圧下にて除去した。残留物を2 N HClを用いてpH 3になるまで酸性化し、酢酸エチルを用いて抽出し(3×500 ml)、MgSO4上で乾燥させ、濾過しそして濃縮して、化合物6を得た(4.3 g、収率78%)。
【0166】
工程(iii):化合物7の合成
化合物6(4.3 g、0.023 mol)をDCM(50 ml)中に溶解し、そしてDMF(一滴)を添加し、氷冷水浴中で冷却し、その後シュウ酸ジクロライド(2.3 g、1.5 ml、2.5 eq)を添加し、そして2時間攪拌した。溶媒を除去し、そして乾燥トルエン(50 ml)を添加して可能性のある残留溶媒を50℃の水浴に対して追いだし、化合物7を得た(4.2 g、収率88%)。
【0167】
工程(iv):スキーム4の化合物1の合成
3-クロロ-4-メチルベンゼンアミン(15 g、0.106 mol、1 eq)、2-(エトキシカルボニル)-酢酸(14 g、0.106 mol、1 eq)、ジイソプロピルエチルアミン(16.5 g、22.3 ml、1.2 eq)、HOBT(17 g、1.2 eq)およびDCM(150 ml)を、併せて混合した。次いで、[1-エチル-(3-ジメチル-アミノ-プロピル)カルボジイミド塩酸塩無水物](EDCI、24.5 g、1.2 eq)を添加し、そして得られた混合物をN2の下で一晩攪拌した。得られた反応混合物を、水、飽和NaHCO3、1 N HClおよびブラインを用いて洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。濾別し、そして濃縮して、化合物1を得た(18.5 g、収率70%)。
【0168】
工程(v):スキーム4の化合物2の合成
上記の工程(iv)から得られた化合物1(18.5 g;約0.072 mol)を、メタノール(100 ml)中に溶解し、そして氷冷水浴中で冷却した。2 N NaOH(72 ml、2 eq)を添加し、そして混合物を一晩攪拌した。次いで、溶媒メタノールを減圧下にて除去した。残留物を2 N HClを用いてpH 2になるまで酸性化し、そして酢酸エチル(500 ml)を用いて抽出し、MgSO4上で乾燥させ、濾別し、そして濃縮して化合物2を得た(13 g、80%)。
【0169】
工程(vi):スキーム4の化合物3の合成
工程(v)から得られた化合物2(4.9 g、約0.021 mol)、4-フルオロベンジルピペリジン塩酸塩(4.9 g、0.021 mol)、ジイソプロピルエチルアミン(12 g、2.2 eq)、HOBT(3.5 g、1.2 eq)およびDMF(150 ml)を併せて混合した。次いで、[1-エチル-(3-ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩無水物](EDCI、5 g、1.2 eq)を添加した。得られた混合物をN2の下で一晩攪拌した。得られた反応混合物を水(800 ml)で希釈し、酢酸エチル(500 ml)で抽出し、水、飽和NaHCO3、1 N HClおよびブラインを用いて洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。濾別し、そして濃縮して、化合物3を得た(6.8 g、収率80%)。
【0170】
工程(vi):スキーム4の化合物4の合成
工程(v)から得られた化合物3(6.8 g、0.017 mol)を、THF(100 ml)中に溶解し、そしてBH3(THF中1 M溶液、170 ml、10 eq)を添加して、反応が完了するまで4日間還流した(LCMSで確認した)。次いで、溶媒THFを除去し、そしてメタノール(100 ml)、6 N HCl(100 ml)を添加し、反応が完了するまで5日間還流した(LCMSで確認した)。次いで、メタノールを除去し、そして残留物をpH 11になるまで酸性化した。DCM(500 ml)を用いて抽出し、MgSO4上で乾燥させ、濾別しそして濃縮した(粗製6.2 g)。シリカゲルカラムの後、化合物4を得た(3.7 g、58%)。
【0171】
工程(vii):スキーム4の化合物8の合成
工程(vi)から得られた化合物4(2.5 g、0.0067 mol)およびトリエチルアミン(7 g、10 ml、0.068 mol、10 eq)をDCM(50 ml)中で溶解し、氷冷水浴中で冷却し、DCM(50 ml)中の化合物7(4.2 g、約3 eq)を添加した。得られた混合物を一晩攪拌した。反応は煩雑であるが、しかしLCMSは所望の生成物分子量を示した。水を添加し、溶媒DCMを減圧下にて除去した。残留物を酢酸エチル(500 ml)を用いて抽出し、水を用いて洗浄し、NaHCO3で飽和させ、MgSO4上で乾燥させ、濾別し、そして濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーの後、最終化合物8を得た(179 mg、5%)。LCMS(API-ES+)m/z 546.3(M+H+)。
【0172】
実施例3:18F-標識化化合物1の合成
18F-標識化化合物1は、スキーム5に示されるように調製される:
【0173】
【化52】

【0174】
実施例4:18F-標識化化合物8の合成
化合物8のF-18類似体を、スキーム6に示されるように、実施例2の化合物4 から合成する:
【0175】
【化53】

【0176】
実施例5:式Vの18F-標識化化合物の合成
式Vの18F-標識化化合物は、スキーム7に示されるように調製した:
【0177】
【化54】

【0178】
実施例6:化合物8のスクリーニング
実施例2の化合物8を、以下の様にCCR結合アッセイにおいてスクリーニングした:
CCR1結合アッセイは、文献[Ben-Baruch et al., J. Biol. Chern., 270(38), 22123-8 (1995);Pease et Ol, J. Biol. Chem., 273(32), 19972-6 (1998)]から適合させた方法に従って、以下の条件下でおこなった。
【0179】
従って、化合物8は、25℃にて3時間、1 mM CaCl2、0.5%BSA、5 mM MgCl2および1%DMSOを、ヒト組換えCHO-K1細胞と共に含有する50 mM HEPES、pH7.4中で、0.02 nM[125I]-MIP-1αの存在下にて、インキュベーションした。MIP-1αは、マクロファージ炎症性タンパク質1α(CCR1およびCCR5のリガンド)である。
【0180】
CCR2B結合アッセイを、文献[Gong et al.,, J. Biol. Chem., 272, 11682-5 (1997);Moore et al., J. Leukoc. Biol., 62, 911-5 (1997)]から適合させた方法に従って、以下の条件下でおこなった。
【0181】
従って、化合物8は、25℃にて1時間、1 mM CaCl2、0.5%BSA、5 mM MgCl2、0.1%NaN3および1%DMSOを、ヒト組換えCHO-K1細胞と共に含有する25 mM HEPES、pH7.4 中で、0.1 nM[125I]-MCP-1の存在下にて、インキュベーションした。MCP-1は、単球走化性タンパク質(CCR2のリガンド)である。
【0182】
CCR5結合アッセイは、文献[Samson et al.,, J. Biol. Chem., 272, 24934- 41 (1997)]から適合させた方法に従って、以下の条件下でおこなった。
従って、化合物8は、25℃にて2時間、1 mM CaCl2、0.5%BSA、5 mM MgCl2および1%DMSOを、ヒト組換えCHO-K1細胞と共に含有する50 mM HEPES、pH7.4中で、0.1 nM[125I]-MIP-1β(マクロファージ炎症性タンパク質1β)の存在下にて、インキュベーションした。
【0183】
CCR1に対する結合親和性はもっとずっと低く(10μMの化合物8で32%結合阻害)そして10μM濃度で化合物8はMCP-1のCCR2Bに対する結合を阻害しなかったため、化合物8が、CCR5に対して選択的(Ki 0.79 nM)であることが見出された。
【0184】
実施例7:化合物8の浸透性
CCR化合物の浸透性は、人工膜を介した浸透性アッセイ(PAMPA)において測定され、それにより受動拡散により血液脳関門を貫通するとの予想がもたらされる[Di et al., EurJ.Med.Chem., 38(3), 223-232 (2003)]。
【0185】
このPAMPAアッセイに関して共通して受け入れられた分類範囲は、以下の通り:
・高予測受動BBB透過:Pe>4.0×10-06 cm/sec;
・低予測受動BBB透過:Pe<2.0×10-06 cm/sec;
である。BBB透過の不確定な予測は:2.0×10-06 cm/sec<Pe<4.0×10-06 cm/secであった。
【0186】
結果は、化合物1についてPe=3.2E-06 cm/secであり、そして化合物8についてPe=6.8E-06であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケモカイン受容体5(CCR5)に対して親和性を有しそして3000ダルトン以下の分子量を有する少なくとも1つの造影部分により標識された合成化合物を含む、造影剤であって、この化合物を哺乳動物の身体に対してin vivoにて投与した後、造影部分を外部から非侵襲性に検出することができ、そしてその造影部分が:
(i)γ線-放出性放射性ハロゲン;または
(ii)陽電子-放出性放射性非金属;
から選択される、前記造影剤
【請求項2】
γ線-放出性放射性ハロゲンが、123Iである、請求項1に記載の造影剤。
【請求項3】
陽電子-放出性放射性非金属が、18Fまたは11Cである、請求項1に記載の造影剤。
【請求項4】
合成化合物が、以下の式I:
【化1】

式中:
R1およびR2は、独立して、C1-6アルキルまたはC1-6ハロアルキルであり;
R3aおよびR3bは、独立して、結合またはC1-5アルキレン、-O-[C1-4アルキレン]-または-[C1-2アルキレン]-O-[C1-2アルキレン]-から選択されるリンカー基を示し;
R4は、H、C1-6アルキル、またはC1-6アルコキシから選択され;そして
QaおよびQbは、独立してA3基または-(A2n-R5であり;
ここでA2は-O-、-OCH2-、-CH2O-、CH2、C=O、S=O、SO2、-NH(CO)-、または-CO(NH)-から選択され、R5はA3基である0〜3個の置換基を有するフェニル基であり、そして0〜3の整数の値であり;
ここで-A3はH、C1-6アルキル、OHまたはHalである、
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤。
【請求項5】
合成化合物が、以下の式II:
【化2】

式中:
R6はアシル、フルオロアシル、またはメチルスルホニルであり;
R8〜R9は、独立して、H、C1-3アルキル、OHまたはHalから選択され;
EはNまたはCHであり;
EがNである場合、X1は-CH2-であり、そしてEがCHである場合、X1は-CH2-または-O-であり;
Ar1は0〜2個のNヘテロ原子を有しそして0〜3個のR7基により置換された6員のアリール環であり;
それぞれのR7は、独立して、C1-3アルキル、OH、Hal、NO2、NH2、CO2H、C1-6アルコキシ、C1-6アミノ、C1-6アミド、-O(CH2CH2O)xX2または-NH(CH2CH2O)xX2から選択され、ここでxは0〜4の整数値であり、そしてX2はHまたはCH3である;
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影剤。
【請求項6】
合成化合物が式III:
【化3】

式中:
R10はHまたはC1-3アルキルであり;
R10aはCH2またはC1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、またはHalから選択される0〜2個の置換基を有するフェニル基であり;
R11はHまたは独立してOH、Hal、C1-6アルキル、C1-6アルコキシアルキル、C1-6フルオロアルキル、またはニトリルから選択される0〜3個の置換基を有するフェニル基;
R11aはCH、C1-3アルキレン、および-O-C1-3アルキレンから選択され;
R12は、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、Hal、C1-3アルキルスルホニルから選択される0〜3個の置換基を有するフェニル基であるか、またはR12は-NHC=O-RxRyであり:
ここでRxは酸素およびpは0〜3の整数値である(CH2Pから選択され;そして
RyはO、N、およびSから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する6員環であり;
R12aはHまたはOHであり;
R13はH、C1-3アルキルまたはC1-3ハロアルキルであり;そして
QcおよびQdは、独立して、H、Hal、C1-3アルキル、およびC1-3アルキルスルホニルから選択される置換基である;
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
合成化合物が、式IV:
【化4】

式中:
R14はH、C1-6アルキル、C1-6フルオロアルキル、C1-6アルコキシ、またはA4基により置換されていてもよいファニル基またはベンジル基であり;
ここでA4はC1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはHalであり;
R14aは、HalまたはC1-3ハロアルキルから選択され;そして
R14bおよびR14cは、独立して、CH2またはNから選択され;
好ましくは式IV中:
R14がC1-3フルオロアルキルまたはハロフェニルであり;
R14aがC1-3ハロアルキルであり;そして
R14bおよびR14cが両方ともNであり;
あるいは好ましくは式IV中:
R14がC1-3アルキルであり;
R14aがHalであり;そして
R14bおよびR14cが両方ともCH2である;
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
合成化合物が式V:
【化5】

式中:
R15およびR16は、独立して、H、OH、C1-3アルキル、またはHalであり;そして
R17はH、C1-6アルキル、またはC1-6ハロアルキルである;
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
合成化合物が式VI:
【化6】

式中:
R18はHまたはHalであり;
R19はC1-5アルキルまたはC1-6ハロアルキルであり;
R20はH、OH、またはHalであり;そして
R21はC1-6アルキル、C1-6シクロアルキル、またはC1-6ハロアルキルである;
の化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の造影剤を調製するための方法。
(i)非放射性前駆体;と
(ii)請求項1〜3のいずれか1項に記載の造影部分の適切な供給源;
との反応を含み、ここで前駆体が請求項1または請求項4〜9のいずれか1項に記載の合成化合物の誘導体であり、そしてその誘導体が造影部分の適切な供給源と反応して請求項1〜9のいずれか1項に記載の造影剤をもたらすことができる置換基Y1を含む、
【請求項11】
反応性置換基Y1が以下のもの:
(i)トリアルキルスタンナンまたはトリアルキルシランなどの有機金属誘導体;
(ii)求核置換反応のためのアルキルハロゲン化物、アルキルトシレートまたはアルキルメシラートを含有する誘導体;
(iii)求核置換反応または求電子置換反応に対して活性化された芳香環を含有する誘導体;
(iv)簡易アルキル化を受ける官能基を含有する誘導体;
(v)チオール含有化合物をアルキル化して、チオエーテル-含有生成物を得る誘導体;
(vi)アルデヒドまたはケトンを用いた濃縮を受ける誘導体;
(vii)活性エステル基によりアシル化される誘導体;
から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前駆体が、滅菌され無発熱原状態である、請求項10または11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前駆体が固相に対して結合する、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
造影部分の供給源が:
(i)ハロゲン化物イオン;
(ii)F+またはI+
(iii)アルキルまたはフルオロアルキルハロゲン化物、トシレート、トリフラート、またはメシラートから選択されるアルキル化剤;
から選択される、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の造影剤を、生体適合性のキャリアとともに、哺乳動物への投与に適した形状で含む、医薬組成物。
【請求項16】
一人の患者に対して適切な放射線量を有し、そして適切なシリンジまたは容器にて提供される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項10〜13のいずれか1項に定義したとおりの前駆体を含む、請求項15または16のいずれかに記載の医薬組成物を調製するためのキット。
【請求項18】
請求項15または16のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、CCR5症状の被検体の被検体において、in vivoで診断またはイメージングするための方法。
【請求項19】
請求項15または16のいずれかに記載の医薬組成物を以前に投与されたCCR5症状の被検体において、in vivoでイメージングするための、請求項15または16のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
CCR5症状の診断のための方法において使用するための医薬を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の造影剤の使用。
【請求項21】
請求項15または16のいずれかに記載の医薬組成物をヒトまたは動物の身体に投与し、そしてこの医薬組成物の造影剤の取り込みを検出することを含む、CCR5症状と闘うための医薬を用いてヒトまたは動物の身体の治療の効果をモニタリングする方法。
【請求項22】
CCR5症状の診断のための方法において使用するための、請求項15または16のいずれかに記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−513441(P2010−513441A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542206(P2009−542206)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004880
【国際公開番号】WO2008/075040
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【出願人】(504000591)ハマースミス・イメイネット・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】Hammersmith Imanet Ltd
【Fターム(参考)】