説明

LED照明ユニット

【課題】銅又は銅合金を基材として、表面に銀めっき皮膜が形成された反射部を有するLED照明ユニットにおいて、経時的な反射率の低下を有効に抑制できる手段を提供する
【解決手段】LED発光素子と表面が銀めっきされた反射部とを有するLED照明ユニットであって、該反射部が、銅又は銅合金を基材として、Ni-P合金めっき皮膜及び銀めっき皮膜が順次形成されたものである、LED照明ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)を用いる照明装置は、エネルギー消費が低く、長寿命であり、発熱電球や蛍光灯に代わる光源として広く注目されている。
【0003】
LEDを発光素子とするパッケージ化されたLED照明ユニットでは、LED 素子から発光する光を効率よく反射するために、光沢度や反射率が高い銀やアルミニウムを蒸着させた反射部を設けられている(下記特許文献1参照)。また、反射部に銀めっきを施すことによって、青色、青緑色、緑色発等の吸収が抑制されて高い発光出力が得られることも報告されている(下記特許文献2参照)。
【0004】
一方、銀めっき皮膜の下地として、安価で放熱性が良好な銅又は銅合金を用いる場合には、銅原子が銀めっき皮膜の表面に拡散して経時的に反射率が低下するという問題点がある。特に、白色LED発光素子は、消費電力の内で可視光に変換されるのは数十%程度であり、その他は熱となり、しかも、他の光源と比べて小型のために空間的に狭い領域に熱が集中し易く、長期間使用時には熱拡散により反射率の低下が大きな問題となる。
【0005】
銀めっきされた反射部を有するLED照明ユニットにおいて、銀めっきの下地に含まれる成分が銀めっき皮膜に拡散することを防止する方法として、Pd、Rh等の貴金属からなる拡散防止層を形成することが報告されている(下記特許文献3参照)。しかしながら、この方法では、拡散防止層に含まれる貴金属成分自体が銀めっき皮膜に拡散して、反射率の低下を生じるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−56941号公報
【特許文献2】特開平9−293904号公報
【特許文献3】特開2007−258514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、銅又は銅合金を基材として、表面に銀めっき皮膜が形成された反射部を有するLED照明ユニットにおいて、経時的な反射率の低下を有効に抑制できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、銅又は銅合金からなる基材の表面に銀めっき皮膜が形成された反射部において、銀めっき皮膜の下地としてNi-P合金めっき皮膜を形成することによって、下地に含まれる銅原子の拡散が抑制されて、高い反射率を長期間維持することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記のLED照明ユニットを提供するものである。
項1. LED発光素子と表面が銀めっきされた反射部とを有するLED照明ユニットであって、
該反射部が、銅又は銅合金を基材として、Ni-P合金めっき皮膜及び銀めっき皮膜が順次形成されたものである、LED照明ユニット。
項2. Ni-P合金めっき皮膜が、電気めっき法又は無電解めっき法によって形成されたものである上記項1に記載のLED照明ユニット。
項3. 銀めっき皮膜が、光沢銀めっき皮膜又は無光沢銀めっき皮膜である、上記項1又は2に記載のLED照明ユニット。
【0010】
本発明のLED照明ユニットは、LED発光素子と表面が銀めっきされた反射部とを有するパッケージ化されたLED照明ユニットにおいて、銅又は銅合金を基材として、その表面に銀めっき皮膜が形成された反射部を有するものである。
【0011】
反射部において、基材とする銅及び銅合金の種類については特に限定はなく、銅合金としては、銅含有率が60重量%程度以上の銅合金を用いることが好ましく、例えば、銅亜鉛合金、銅スズ合金、銅ニッケル合金、銅アルミ合金などを用いることができる。
【0012】
反射部の表面に形成する銀めっき皮膜の種類についても特に限定はなく、電気めっき法、無電解めっき法など任意の方法で形成することができる。例えば、電気めっき法で形成する場合には、必要に応じて、シアン化銀めっき浴などを用いてストライクめっきを行った後、公知の銀めっき浴を用いて銀めっき皮膜を形成すればよい。また、銀めっき皮膜は光沢銀めっき皮膜、無光沢銀めっき皮膜のいずれであってもよい。銀めっき皮膜の厚さについても特に限定はないが、通常は、0.1 〜10μm程度とすればよい。
【0013】
本発明では、反射部における銀めっき皮膜の下地、即ち、銅又は銅合金からなる基材と銀めっき皮膜との間にNi-P合金めっき皮膜を形成することが必要である。Ni-P合金めっき皮膜を形成することによって、基材の銅又は銅合金から銅原子が銀皮膜に拡散することを抑制して、長期間良好な反射率を維持することができる。
【0014】
Ni-P合金めっき皮膜のリン含有量については特に限定的ではないが、通常、1〜13重量%程度のものが好ましく、3〜10重量%程度のものがより好ましい。
【0015】
Ni-P合金めっき皮膜の形成方法についても特に限定はなく、電気Ni-P合金めっき浴、無電解Ni-P合金めっき浴などの公知の各種のNi-P合金めっき浴を用いて、常法に従って、基材とする銅又は銅合金上にNi-P合金めっき皮膜を形成すればよい。
【0016】
電気Ni-P合金めっき浴の組成及びめっき条件の一例としては下記の通りである。
(1)めっき浴組成
硫酸ニッケル 200〜400 g/L、
塩化ニッケル 30〜60 g/L、
ホウ酸30〜50 g/L、
亜リン酸1〜10g/L
(2)めっき条件
pH 1.0 〜4.5、浴温 40 〜60 ℃、電流密度 1〜3 A/dm2
以上の条件で電気Ni-P合金めっきを行うことによって、リン含有率2〜10重量%程度の範囲のNi-P合金めっき皮膜を形成することができる。
【0017】
また、無電解Ni-P合金めっき浴としては、次亜リン酸塩を還元剤として含む公知の無電解Ni-P合金めっき浴を用いることができる。
【0018】
これらの内で、特に、電気Ni-P合金めっき浴を用いることによって、効率良くNi-P合金めっき皮膜を形成することができる。
【0019】
Ni-P合金めっき皮膜の厚さについては特に限定的ではないが、通常1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0020】
上記した方法で基材上にNi-P合金めっき皮膜、及び銀めっき皮膜を形成してなる反射部は、LED発光素子を用いるパッケージ化された公知の構造のLED照明ユニットにおける反射部として使用できる。この様なLED照明ユニットの一例の概略図を図1に示す。このLED照明ユニットでは、セラミックス、ガラス等の基板上に電極を介してLED発光素子が配置されており、LED発光素子の周辺に発光した光を有効に活用するために反射部が設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、LED発光素子と表面が銀めっきされた反射部とを有するパッケージ化されたLED照明ユニットにおいて、反射部における銅原子の熱拡散が抑制されて反射率の低下が少なく、高い反射率を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】LED照明ユニットの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0024】
実施例1
圧延銅板(大きさ50×50mm、厚さ0.3mm)を被めっき物として、下記表1に示す工程で電気めっき法により、Ni-P合金めっきを行い、引き続き、銀めっきを行った。使用したNi-P合金めっき浴の組成を表2に示し、銀めっき浴の組成を表3及び表4に示す。Ni-P合金めっきとしては、厚さ1μm、2μm、及び3μmの三種類のめっき皮膜を形成し、銀めっきとしては、光沢浴又は無光沢浴を用いて、光沢銀めっき皮膜又は無光沢銀めっき皮膜を形成した。形成されたNi-P合金めっき皮膜は、リン含有率が7wt%であった。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
尚、比較として、Ni-P合金めっきに代えて、スルファミン酸ニッケルめっき浴(スルファミン酸ニッケル320g/L、臭化ニッケル30g/L、ホウ酸10g/L、浴中Ni濃度66.2g/L)を用いて、浴温50℃、陰極電流密度3.0A/dm2の条件で厚さ1μm、2μm又は3μmのニッケルめっき皮膜を形成し、その他は実施例1と同様の方法で、光沢銀めっき皮膜又は無光沢銀めっき皮膜を形成した。
【0030】
上記した方法で銀めっき皮膜を形成した各試料について、波長450nmの光の反射率を測定した後、空気中、150℃で1000時間の熱処理を行い、その後波長450nmの光の反射率を測定した。結果を下記表5に示す。
【0031】
【表5】

【0032】
以上の結果から明らかなように、銀めっき皮膜の下地としてNi-Pめっき皮膜を形成した場合には、スルファミン酸ニッケル浴からニッケルめっき皮膜を形成した場合と比較して、熱処理後の反射率の低下が大きく抑制されていることが明らかである。従って、銀めっき皮膜を形成した反射部を有するLED照明ユニットにおいて、銅又は銅合金上に、Ni-Pめっき皮膜を形成し、その後銀めっき皮膜を形成することによって、基材からの銅原子の熱拡散が抑制されて、高い反射率を長時間維持できることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED発光素子と表面が銀めっきされた反射部とを有するLED照明ユニットであって、
該反射部が、銅又は銅合金を基材として、Ni-P合金めっき皮膜及び銀めっき皮膜が順次形成されたものである、LED照明ユニット。
【請求項2】
Ni-P合金めっき皮膜が、電気めっき法又は無電解めっき法によって形成されたものである請求項1に記載のLED照明ユニット。
【請求項3】
銀めっき皮膜が、光沢銀めっき皮膜又は無光沢銀めっき皮膜である、請求項1又は2に記載のLED照明ユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2012−222191(P2012−222191A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87180(P2011−87180)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【Fターム(参考)】