説明

LED照明装置

本発明はLED照明装置(LLD)に関する。このLED照明装置は、前面側および背面側を有する熱拡散器と、熱拡散器の前面側に位置するPCB上に装着されるLEDと、LEDをカバーする反射器またはレンズと、給電装置が受け入れるソケットと、任意選択的なベース部分と、前記熱拡散器の背面側、あるいはソケットまたはベース部分の内部に装着される電子ドライバ素子と、ソケット、電子ドライバ素子および熱拡散器を接続する電気リードまたは配線システムと、電子素子および電気リードまたは配線システムを任意選択的に被包するハウジングであって、熱拡散器と伝熱接触するハウジングと、を含み、ハウジングが、伝熱性で導電性のプラスチック材料(TC/EC材料−A)から作製され、そのハウジングの外面において、電気絶縁性の材料(EI材料−B)からなる防護層で被覆される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はLED照明装置に関し、さらに具体的には、熱拡散器と、LEDと、反射器またはレンズと、ソケットと、電子ドライバ素子と、電気リードまたは配線システムと、ハウジングとを含むLED照明装置(LED Lighting Device:LLD)に関する。
【0002】
LEDまたはLED照明器具として知られる発光ダイオードは固体照明(solid state lighting:SSL)における光源として用いられる。LED照明または照明器具は一般的に反射器(MR、PAR、R、A)とソケットベース(GU、E、バヨネット)との形状に基づいて分類される。SSLは、通常、電子ドライバと反射器を含む光学装置とを備えた適切なハウジング内に、LEDの集合体を含んでいる。照明器具は、通常ルーメン(lumen)で表現される光の出力を発出し、一方ワット(watt)で表現される電力を消費する。照明器具の効率、または実際には照明器具の光の効率はルーメン/ワットで表現できる。非効率性は、主として、LEDおよび電子ドライバが熱を発生するという事実から生じる。
【0003】
LED照明に関わる問題は、LEDによって生成される光とLEDの寿命とが、LED照明装置におけるLED接合および電子装置から発生する熱によって負の影響を受けるという点にある。熱は、光の出力および照明器具の寿命に負の影響を及ぼすので、LEDは冷却する必要がある。ここで、LEDの寿命というのは、LEDが破損するまたは機能不全になり始める時点までの時間というよりはむしろ、機能的使用の間におけるLEDの効率が減退する速度である。寿命は、例えば、効率がそれ以後は当初効率の70%未満に低下する機能的使用の時間として表現することが可能である。発熱および過熱のこの問題に対しては、一般的に、熱拡散器と、伝熱材料、特に金属のハウジングとを用いることによって対処する。金属は適切な熱管理上の解決策を提供するが、デザイン、製造および安全のための絶縁の分野で重大な欠点を有する。この理由から、LED照明器具のメーカは金属に代わる材料を模索し始めた。セラミックが考えられたが、セラミックはいくつかの場合には過度の脆性が問題であると見られたため、その使用はまだ制限される。LED照明器具のハウジング部分には、プラスチック、特に伝熱グレードのプラスチックが導入される。例えば、欧州特許出願公開第1691130A1号明細書および国際公開第2006/094346A1号パンフレットには、熱拡散器と、PCB上に装着されるLEDと、反射器と、ソケットと、ハウジングとを含むLED照明器装置が記載されている。このハウジングは伝熱性のプラスチック材料から作製される。このプラスチックはその熱伝導率が制限され過ぎるか、あるいは、このプラスチックは、高い熱伝導率を有するプラスチック材料を用いる場合には上記の金属の場合と同じ問題点が生じる。
【0004】
しかし、一般工業および消費者向け用途の場合には、安全上の要求は継続的に増大している。特に、電気的短絡回路発生のリスクがある金属および高伝導率材料製の部品の場合には、安全性が問題になる。この理由から、LED照明器具のメーカは、絶縁されたドライバシステムを有する安全な電子装置を使用している。しかし、絶縁ドライバシステムは、生成される同じ量の光に対してより高いエネルギー入力を必要とし、従って、ドライバ効率がかなり低下するだけでなく、熱の発生も増大する。この加熱効果は、現在のところ約11WであるLED照明器具の最大出力をも制限する。代わりの方式として、LED照明装置が、電子素子が外部部品と接触するのを防護する内部絶縁遮蔽を含む方式がある。しかし、このような防護は、電子装置が発生する熱の消散を複雑にすると共に強化することにもなる。従って、エネルギー効率的であり、非安全な(すなわち絶縁されていない)電子ドライバシステムと共に使用可能であり、それにも拘らず安全上の規制に適合しかつ好ましくは高出力の照明器具として設計可能なLED照明装置が必要である。
【0005】
本発明の目的は、経済的であると共に光の発生において効率的であり、および/またはLED照明の長寿命を可能にし、製作が容易でしかも安全であるようなLED照明装置を提供することにある。さらに、このような照明器具はますます消費者向けの分野に使用されるようになっているので、LED照明装置は、好ましくは、その製作および組み立てが簡単で、大量生産を可能にするものであるべきである。
【0006】
この目的は、本発明によるLED照明装置(LLD)によって実現された。このLLDは、
−前面側および背面側を有する熱拡散器と、
−熱拡散器の前面側に位置するPCB上に装着されるLEDと、
−LEDをカバーする反射器またはレンズと、
−給電装置が受け入れるソケットと、
−任意選択的にベース部分と、
−熱拡散器の背面側、あるいはソケットまたはベース部分の内部に装着される電子ドライバ素子と、
−ソケット、電子ドライバ素子および熱拡散器を接続する電気リードまたは配線システムと、
−電子素子および電気リードまたは配線システムを任意選択的に被包するハウジングであって、熱拡散器と伝熱接触するハウジングと、
を含み、
ハウジングが、伝熱性で導電性のプラスチック材料(TC/EC材料−A)から作製され、そのハウジングの外面において、電気絶縁性の材料(EI材料−B)からなる防護層で被覆される。
【0007】
本発明の効果は、LED照明装置が非常に良好な熱の消散を呈する一方、電気絶縁性の防護層の存在が、その防護層が電気絶縁性で非伝熱性の材料製であっても、照明器具の熱管理および光効率にいかなる影響をもほとんど及ぼさない、という点にある。一方、LLDの安全性は増大する。これは、本発明によるLED照明装置が、110または220ボルトで作動する非絶縁または非安全ドライバシステムと組み合わせて用いることが可能であり、一方では、内部遮蔽の必要性なしになお安全構造を提供することを意味する。同様に、本発明によるLLDにおける電子素子は「非安全な」電子素子である。この新規かつ進歩性のあるLLDは、絶縁されたドライバシステムと組み合わせて用いてもよく、それによって安全性が増大する。本発明による解決策は、また熱管理の点でも、ハウジングおよび熱拡散器間の電気遮蔽層、あるいはハウジング内部の絶縁層のような代替的解決策よりも遥かに効率的である。さらに、ハウジングの外面に電気絶縁性の防護層が設けられるハウジングは、例えば粉体塗料の静電塗装のような簡易な製作プロセスによって製作することが可能であるが、内側の層の場合には、これは大幅に複雑なものになるであろう。
【0008】
静電塗装による粉体塗料の金属への塗装は当分野で知られている。このような塗装は、一般的に、彩色用として、あるいは発錆からの金属の保護用として機能する。静電塗装による粉体塗料の導電性ポリマーへの塗装は、それ自体として当分野で知られている。伝導性ポリマーは、自動車部品から電子器具、建築および建設の範囲に及ぶ用途に用いられるようになった。これらの用途において、塗装は、通常、プラスチック部品に金属部品の外観を付与し得るものとして用いられる。被膜処理は、さらに、表面品質を改善するためにも適用することができる。例えば、国際公開第2004/036114A1号パンフレットはヘッドランプ用の反射器を記述している。国際公開第2004/036114A1号パンフレットの反射器は、それを静電粉体堆積技法によって塗装し得るという目的に適うように導電性を付与された伝熱材料から作製される。その後、塗装された反射器が、薄い反射層で被膜処理された。
【0009】
LLDにおけるレンズは、一般的に、透明または半透明な材料、例えばガラスまたは透明なプラスチックから作製される。また、レンズは、多数レンズ、例えば各個別LEDに対して1つのレンズを含むそのような透明カバーから構成することもできる。
【0010】
LLDは任意選択的にベース部分を含む。ベース部分というのは、ソケットおよびハウジングの間の部分と考えられる。ベース部分は、それ自体としてはハウジングの延長部分と考えることもできる。LLDが別個のベース部分を含まない場合には、ハウジングは、ベース部分と同じ機能を担う一体化された延長部分を含むことができる。
【0011】
ハウジングを作製するための伝熱性で導電性のプラスチック材料は、本明細書においてはさらにTC/EC材料−Aとも呼称する。TC/EC材料−A用として用いられる材料は、伝熱性でありかつ導電性である任意のプラスチック材料とすることができる。このような材料の調製処方は、通常、ポリマーと、一般的に相対的に高い量の充填剤であって、導電性でもある伝熱性の充填剤とを含む。このような充填剤の例として、金属およびグラファイトが含まれる。
【0012】
本発明に用いられるTC/EC材料−Aは、広範囲にわたって変化する熱伝導率を有することができる。
【0013】
TC/EC材料−Aは、少なくとも1W/mK、さらに好ましくは少なくとも1.5W/m/K、最も好ましくは少なくとも2W/mKの面貫通熱伝導率を有することが適切である。面貫通熱伝導率に対する真の最大値は存在しないが、一般的には、それは高くても6W/mKであろう。また、TC/EC材料−Aは、少なくとも2.5W/mK、さらに好ましくは少なくとも5W/m/K、最も好ましくは少なくとも10W/mKの平行面内熱伝導率を有することが適切である。面貫通熱伝導率に対する真の最大値は存在しないが、一般的には、それは高くても20W/mKであろう。伝熱材料の導電率は一般的には増大するであろうから、熱伝導率を制限することが有利である。TC/EC材料−Aは、1.5〜4W/mKの範囲の面貫通熱伝導率、および/または、5〜15W/mKの範囲の平行面内熱伝導率を有することが好ましい。
【0014】
本明細書において言及する熱伝導率は以下の後段に述べる方法によって測定される。本明細書において言及する材料特性は、すべて、室温すなわち20℃において測定されることに留意されたい。
【0015】
TC/EC材料−Aは、広範囲にわたって変化する導電率をも有することができる。TC/EC材料−Aは、サンプルについてISO69003による方法に従って面貫通方向において測定される体積抵抗率であって、高くても10オームの体積抵抗率を有することが適切である。この体積抵抗率は、非安全な電子装置を含むハウジングにおいて、電気絶縁性の防護層を用いることなく安全に使用できる程には高くない。しかし、この体積抵抗率は、ハウジングに、粉体塗料による静電噴霧塗装プロセスによって前記のような電気絶縁性の防護層を設けるには十分な程低い。本発明の範囲内においては、TC/EC材料−Aの体積抵抗率に対して最小値を設定する実際の必要性は存在しないが、一般的には、安全上の理由から、その材料の導電率が制限されることが好ましい。この点に関して、TC/EC材料−Aが、少なくとも10−2オーム、好ましくは少なくとも1オームの体積抵抗率を有することが適切である。さらに好ましくは、この体積抵抗率は10〜10オームの範囲内である。
【0016】
TC/EC材料−Aは、少なくとも160℃、好ましくは少なくとも180℃、さらに好ましくは少なくとも200℃の(ISO75によって測定される)熱変形温度(HDT−A)を有することが適切である。粉体塗料は、静電塗装によって塗布された後、通常、それが流動して膜を形成し得るように加熱処理される。HDTが高い方が、より良好な加熱処理プロセスに対して有利であり、それによって、電気絶縁性の防護層と、ハウジングのベース部分が作製されるTC/EC材料−Aとの間のより良好な付着が得られる。
【0017】
電気絶縁性の防護層は、きわめて広幅の範囲にわたって変化する厚さを有することができる。この範囲は、EI材料−Bの伝熱特性と、LLDの熱性能要件とによって変化することがあり得る。この厚さは、もちろん、ハウジングによる熱の消散を妨げるように厚くなり過ぎるべきではなく、また十分な防護を妨げる程薄くなり過ぎるべきでもない。防護層の厚さは、25〜250μmの範囲内が適切である。但し、層の電気絶縁特性がどの程度良好であるかに応じて、厚さを下限値より低くすることも可能であり、あるいは、層の伝熱特性がどの程度良好であるかに応じて、上限値より高くすることが可能である。この厚さは50〜150μmの範囲内であることが好ましい。
【0018】
本明細書においては、防護層を作製するための電気絶縁性の材料をEI材料−Bと略称するが、この材料は大きな範囲にわたって変化する絶縁耐力を有することができる。この場合、絶縁耐力が高い程、防護層の電気絶縁特性が良好であり、換言すれば防護層を一層薄くできることが明らかである。EI材料−Bの絶縁耐力(ASTM D149に従って測定される)は、少なくとも1kV/mmであることが適切である。絶縁耐力は、好ましくは少なくとも5kV/mm、さらに一層好ましくは10kV/mmである。
【0019】
電気絶縁性の防護層用としては、粉体塗料としての処理が可能であり、かつ上記の誘電体特性を有する任意の材料を用いることができる。前記材料は、熱硬化性または熱可塑性のいずれの材料とすることも可能である。代わりの方式として、電気絶縁性の成形組成物が防護層に対して用いられる。この目的に対しては、通常熱可塑性材料が用いられる。前記材料は、熱硬化性および/または熱可塑性のポリマー材料と並んで、他の構成成分、例えば、充填剤、顔料、安定剤、および粉体塗料に用いられる他の補助添加剤、並びに難燃剤および伝熱性充填剤を、材料に用いられる1つまたは複数のこれらの構成成分が高い絶縁耐力を有する限り、含むことができる。当業者は、普通の一般的な知識に基づいて、EI材料−Bに適切に使用可能な構成成分を選択できる。
【0020】
EI材料−Bは、伝熱性の充填剤を含む、伝熱性で電気絶縁性の材料とすることができる。このような材料は、0.5〜1.5W/mKの範囲、好ましくは0.5〜1.0W/mKの範囲の面貫通熱伝導率を好適に有することができる。
【0021】
代替的には、EI材料−Bを断熱性の材料とすることができる。これは、本発明によるLLDの熱管理特性に影響を及ぼさない、少なくとも顕著な程度には影響を及ぼさないように見える。断熱材料であるEI材料−Bの利点は、一般的にLLDの安全性能がさらに強化されるという点である。このEI材料−Bは、0.5W/mKより小さい面貫通熱伝導率を有することが適切である。
【0022】
EI材料−Bは難燃剤を含むことが好ましい。この利点は、燃焼性に関するLLDの安全性能がさらによく保持され、あるいはさらに強化されるということである。
【0023】
ハウジングと熱拡散器との間の良好な熱接触を形成するために、1つ以上の金属部品に成形材料をオーバーモールドすることによってハウジングを製作し、それによってハウジングを成形することが適切である。この1つまたは複数の金属部品は、熱拡散器、あるいは、熱拡散器上のLLDに組み込み装着される金属要素のいずれかとすることができる。このようなオーバーモールド法によって、ハウジングと1つまたは複数の金属部品との間の最良の伝熱接触を実現でき、一方では、相互に直接接触する異なる金属間の伝熱性は非常に良好である。
【0024】
本発明によるLLDの好ましい一実施形態においては、防護層が被膜層である。この被膜は、静電噴霧塗装によって塗布される粉体塗料であることが好ましい。十分に高い熱変形温度(HDT)を有する伝熱性で導電性のプラスチック材料を使用すると、このような静電噴霧塗装による被膜処理が可能になるだけでなく、粉体塗料の加熱処理もできる。伝熱性で導電性のプラスチック材料のHDTは、好ましくは少なくとも160℃、さらに好ましくは少なくとも180℃、なお一層好ましくは少なくとも200℃である。
【0025】
本発明によるLLDの別の好ましい実施形態においては、ハウジングが2K成形プロセスで製作される。この場合、第1成形体をEC/TC材料−Aから作製し、続いて、それに、EI材料−Bの層をオーバーモールドする。
【0026】
本発明はLLD用ハウジングの作製プロセスにも関する。本発明によるプロセスは、次のステップ、すなわち、
a.ハウジングを成形するためのキャビティを備えたモールドを用意するステップと、
b.そのキャビティの中に伝熱性で導電性のプラスチック材料を射出成形して、成形部品を形成するステップと、
c.このように形成された成形部品をキャビティから取り出すステップと、
d.ハウジングの外面に静電噴霧塗装法によって粉体塗料を塗布するステップと、
e.任意選択的に塗布された粉体塗料を加熱処理するステップと、
を含む。
【0027】
本発明によるLLD用のハウジングの代替方式としてのプロセスは、次のステップ、すなわち、
a.ハウジングを成形するためのキャビティを備えたモールドを用意するステップと、
b.(i)そのキャビティの中に伝熱性で導電性のプラスチック材料を射出成形して、成形部品を形成するステップと、
(ii)そのキャビティの中に電気絶縁性のプラスチック材料を射出成形して、それによって、成形部品の外面に電気絶縁層を形成するステップと、
c.このように形成された電気絶縁層を含む成形部品をキャビティから取り出すステップと、
を含む。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態においては、このプロセスが、ステップ(a)の後、ステップ(b)の前に、キャビティ内に1つ以上の金属部品を配置するステップ(a−1)を含む。この1つまたは複数の金属部品は、それぞれステップ(b)および(b)(i)において、導電性のプラスチック材料(TC/EC材料)で部分的にオーバーモールドされる。
【0029】
金属の熱拡散器または他の金属部品を伝熱性のプラスチック材料でオーバーモールドすることによって製作されるハウジングは、前述のように被膜層によって被膜処理できる。また、任意選択的に、金属の熱拡散器およびその部品も、同時に電気絶縁性の被膜層で被膜処理できる。被膜処理されるべきでない金属の熱拡散器およびその部品は、必要な場合には、被膜処理プロセスの間、遮蔽することが可能である。
【0030】
以下、実施例および比較実験によって本発明をさらに説明する。
【0031】
[実施例および比較実験による説明]
[方法]
この説明のために、金属の熱拡散器および金属ハウジングを有する従来型のLED照明装置を用いた。この場合、この金属ハウジングを、グラファイトを充填した伝熱性で導電性のプラスチック材料から作製された同様のハウジングで置き換えた。このプラスチック材料は、約10オームの体積抵抗率と、約15W/mKの面内熱伝導率と、約1.75W/mKの面貫通熱伝導率とを有するものであった。
【0032】
[熱伝導率]
面貫通熱伝導率の測定はレーザフラッシュおよびプローブ法を用いて行った。ASTM標準E1461によるレーザフラッシュ試験を実施するために、Netzsch社のNanoFlash(商標)計器を使用した。レーザフラッシュ用の試験片の寸法は2mm厚さ×12.5mm直径とした。熱伝導率はElmer Pyris熱伝導率プローブを用いて測定した。結果は、ワット毎メートル−ケルビン(W/mK)で表示される。測定はすべて、射出成形されたプラークについて室温(20℃)で行った。
【0033】
[実施例I]
プラスチックハウジングに、厚さ100μmの被膜層であって、透明な断熱性の材料(λ−被膜=0.2W/mK)からなる被膜層を設けた。照明装置内部の電子素子の温度に対する効果は、約1℃の温度上昇であった。
【0034】
[実施例II]
プラスチックハウジングに、(λ−被膜=1.0W/mK)の熱伝導率を呈する充填被膜層を設けた以外は実施例Iと同じとした。照明装置内部の電子素子の温度に対する効果は、僅かに0.2℃の温度上昇に低下した。
【0035】
[実施例III]
試験サンプルを実施例に用いた材料から調製した。最初に、グラファイト充填した伝熱性で導電性のプラスチック材料を、80×80mmおよび厚さ2mmのプレートに射出成形した。離型および冷却後、透明な断熱性の材料を、約100μmの厚さの被膜層となるように塗布した。この試験プレートは、10kVを超えるブレークスルー電圧を有するように見える。
【0036】
[比較実施例A]
熱拡散器およびハウジングの間の接触位置の熱拡散器に、透明な断熱性の材料(λ−被膜=0.2W/mK)からなる厚さ100μmの被膜層を設けた。照明装置内部の電子素子の温度に対する効果は、約10℃の温度上昇であった。
【0037】
[比較実施例B]
実施例IIと同じ伝熱性の被膜層(λ−被膜=1.0W/mK)を設けた熱拡散器を使用し、これ以外は比較実施例Aと同じとした。照明装置内部の電子素子の温度に対する効果は、約2℃の温度上昇に低下した。
【0038】
絶縁性の被膜層を用いても、照明装置の熱管理に対しては限定された効果しか有しないことは意外である。ハウジング上の被膜の効果は、熱拡散器およびハウジングの間に同様の絶縁層を用いる場合よりも遥かに小さい。さらに、ハウジング上の層は、電気的なブレークダウンに対して、特に、そのようなブレークダウンが電気的素子からハウジングを通して直接生起する場合には、熱拡散器上の絶縁層よりもより良好な防護を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−前面側および背面側を有する熱拡散器と、
−前記熱拡散器の前面側に位置するPCB上に装着されるLEDと、
−前記LEDをカバーする反射器またはレンズと、
−給電装置が受け入れるソケットと、
−任意選択的にベース部分と、
−前記熱拡散器の背面側、あるいは前記ソケットまたは前記ベース部分の内部に装着される電子ドライバ素子と、
−前記ソケット、前記電子ドライバ素子および前記熱拡散器を接続する電気リードまたは配線システムと、
−前記電子素子および前記電気リードまたは配線システムを任意選択的に被包するハウジングであって、前記熱拡散器と伝熱接触するハウジングと、
を含むLED照明装置(LED lighting device:LLD)であって、
前記ハウジングが、伝熱性で導電性のプラスチック材料(TC/EC材料−A)から作製され、前記ハウジングの外面において、電気絶縁性の材料(EI材料−B)からなる防護層で被覆される、
LED照明装置(LLD)。
【請求項2】
前記TC/EC材料−Aが、[方法]による方法に従って測定される1〜6W/mKの範囲の面貫通熱伝導率を有する、請求項1または2に記載のLLD。
【請求項3】
前記TC/EC材料−Aが、ISO69003による方法に従って面貫通方向において測定される10−2〜10オームの範囲の体積抵抗率を有する、請求項1または2に記載のLLD。
【請求項4】
前記TC/EC材料−Aが、少なくとも160℃、さらに好ましくは少なくとも180℃、なお一層好ましくは少なくとも200℃の(ISO75によって測定される)熱変形温度(HDT−A)を有する、請求項1または2に記載のLLD。
【請求項5】
前記防護層が、静電噴霧塗装プロセスによって塗布される被膜層である、請求項1に記載のLLD。
【請求項6】
前記防護層の厚さが25〜250μmである、請求項1または2に記載のLLD。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のLLD用のハウジングの作製方法であって、次のステップ、
a.ハウジングを成形するためのキャビティを備えたモールドを用意するステップと、
b.前記キャビティの中に伝熱性で導電性のプラスチック材料を射出成形して、成形部品を形成するステップと、
c.このように形成された前記成形部品を前記キャビティから取り出すステップと、
d.前記ハウジングの外面に静電噴霧塗装法によって粉体塗料を塗布するステップと、
e.任意選択的に塗布された前記粉体塗料を加熱処理するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のLLD用のハウジングの作製方法であって、次のステップ、すなわち、
a.ハウジングを成形するためのキャビティを備えたモールドを用意するステップと、
b.(i)前記キャビティの中に伝熱性で導電性のプラスチック材料を射出成形して、成形部品を形成するステップと、
(ii)前記キャビティの中に電気絶縁性のプラスチック材料を射出成形して、それによって、前記成形部品の外面に電気絶縁層を形成するステップと、
c.このように形成された前記電気絶縁層を含む前記成形部品を前記キャビティから取り出すステップと、
を含む方法。

【公表番号】特表2013−519972(P2013−519972A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552374(P2012−552374)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051850
【国際公開番号】WO2011/098463
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】