説明

LED表示灯

【課題】駆動機構を持たず、なおかつ敷き詰めるほどに多数のLEDを必要とせず、擬似的に回転もしくは移動しているかのように見えるLED表示灯を得ること。
【解決手段】複数のLED点光源を透明円筒体の内部に筒軸方向に直列に配し、前記複数のLED点光源を順次点滅させる制御回路を接続してなるLED表示灯であって、前記透明円筒体の筒内壁面に透明シートを嵌め込んでなり、前記透明シートは表面に一方向に平行して連続した微細な半円柱状凹凸を有し、前記透明円筒体の筒軸方向と前記透明シートの半円柱状凹凸の柱方向の角度が0〜50°の範囲内にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に理髪店看板や、商業施設、イベント、各種看板、店舗、工事現場などに使われる表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の利用分野における表示灯は、主に半透明のカラーフィルムにカラーの線や模様、文字を配置したものをモーターなどの駆動装置を用いて移動・回転させ、その内部に各種電球・蛍光灯もしくはLEDなどを用いてフィルムを照らすことにより目立たせたものである。
【0003】
ここ数年は、これらのものから発光体として有機ELやLED(発光ダイオード)を用いたものが増えてきた。特にLEDは、省エネ、高寿命の点からも大変注目されており、性能の向上や普及が目覚ましい。これを利用し、LEDを筒状筐体表面全体にドットマトリクス状に配置させ、表示回路により文字や絵のパターンが動いて見えるようにLEDを点滅発光させることにより、あたかも光った文字や絵が動いていくように見えるような工夫を凝らしたものも出てきている。
【0004】
しかしながら、駆動機構を持った表示灯は、モーターや減速機等の部品を要し機構も複雑でありながら回転部分の摩擦も生じることから、故障しやすくこまめなメンテナンスが必要となる。また、駆動機構の部品の消耗による熱、ノイズの発生や、駆動に必要な電力の面からも、決して時代にあった高寿命、低電力のものとは言えなくなってきている。LEDを用いて擬似的に動いていくかのように見せるものでも、LEDを表示面全体に敷き詰めたり、それらの個々のLEDの点滅表示回路と情報のインプット等が必要となったりすることから、複雑な構造であり且つ高価なものとなってしまう。また、LEDが点光源であることから、表現方法はドット状のものに限定されてしまう。それを低減するには更にLEDを小型で緻密な配置にする必要があるために、より複雑化、コストアップ化してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、駆動機構を持たず、なおかつ敷き詰めるほどに多数のLEDを必要とせず、擬似的に回転もしくは移動しているかのように見えるLED表示灯を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、複数のLED点光源を透明円筒体の内部に筒軸方向に直列に配し、前記複数のLED点光源を順次点滅させる制御回路を接続してなるLED表示灯であって、前記透明円筒体の筒内壁面に透明シートを嵌め込んでなり、前記透明シートは表面に一方向に平行して連続した微細な半円柱状凹凸を有し、前記透明円筒体の筒軸方向と前記透明シートの半円柱状凹凸の柱方向の角度が0〜50°の範囲内にあることを特徴とするLED表示灯である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のLED表示灯は、透明円筒体の筒内壁面に微細な半円柱状凹凸を有する透明シートを嵌め込むことで、透明円筒体の内部に筒軸方向に直列に配した複数のLED点光源を擬似的に線光源に変形させる。そして前記複数のLED点光源を制御回路にて順次点滅させることで、擬似的な線光源が擬似的に動いていくかのように点滅し、前記透明円筒体の光が擬似的に回転もしくは移動しているかのように見えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のLED表示灯の一実施例の構造を示す説明図である。(a)は側面構造を示し、(b)は断面構造を示す。
【図2】本発明の実施例1のLED表示灯の光の状態を示す写真である。左から全点灯(赤)、順次点滅(赤)、順次点滅(カラー)の状態を示す。
【図3】本発明の実施例2のLED表示灯の光の状態を示す写真である。左から全点灯(赤)、順次点滅(赤)、順次点滅(カラー)の状態を示す。
【図4】本発明の比較例1のLED表示灯の光の状態を示す写真である。左から全点灯(赤)、順次点滅(赤)、順次点滅(カラー)の状態を示す。
【図5】本発明の比較例2のLED表示灯の光の状態を示す写真である。左から全点灯(赤)、順次点滅(赤)、順次点滅(カラー)の状態を示す。
【図6】本発明の比較例3のLED表示灯の光の状態を示す写真である。左から全点灯(赤)、順次点滅(赤)、順次点滅(カラー)の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明のLED表示灯の一実施例の構造を示す。透明円筒体1の内面に透明シート2を貼り合わせてなり、内部に複数のLED点光源3を配してなる。
【0010】
本発明における透明円筒体1としては、光を効率的に透過させることができるように、高透明であるガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、MS(メチルメタクリレート−スチレン共重合)樹脂等でできた透明円筒体が好ましい。樹脂製の場合は作製方法が、射出法、押し出し法などの方法があるが、作製方法により寸法精度や切削・接着性、曲げ加工性、硬度などに差が出てくるため、使用用途によって作製方法を選択することが好ましい。また、内部のLEDの光の色を違う色に変えるために透明のカラー着色剤を添加することや、内部の光の形状が分からなくならない程度に拡散剤を添加することで円筒体全体をぼんやり光らせたり、一部分にロゴや名称、図柄を印刷したりレーザー彫刻を入れておくことも可能である。
【0011】
本発明における透明シート2としては、表面に微細な半円柱状凹凸を有するものが用いられる。透明シート2の製造方法としては、1枚のフィルムの表面に半円柱状凹凸の賦形を行う方法と、ベースとなるフィルムに半円柱状凹凸形状を賦形形成する方法などにより可能である。
【0012】
前記ベースとなるフィルムとしては、種々の材料を使用することができるが、フィルム表面から光を効率的に取り出せるようにするため、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂等でできたフィルムを使用するのが好ましい。またPET樹脂ならば2軸延伸の高透明フィルムがより好適である。厚みは任意のものが使用できるが、半円柱状凹凸を賦形形成する塗布厚よりもベースとなるフィルムのほうが厚い方が、フィルムの腰を活かして加工がし易い。ただしフィルムが厚くなりすぎると切断加工が困難になることから、50μm〜200μmが好ましい。
【0013】
前記半円柱状凹凸形状を賦形形成する材料としては、種々の材料を使用することができるが、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を使用することが好ましく、両者を併用することも可能である。
【0014】
本発明における微細な半円柱状凹凸の形状としては、集光・拡散の効果が得られるものを任意に使用することができる。具体的にはピッチ100〜200μm、高さ50〜150μmの連続する半円柱形状とするのが好ましい。微細な半円柱状凹凸を有する透明シートの表面もしくは裏面から点光源を任意の距離をあけて点灯し、点光源とは逆の面からシートを見ると、半円柱状凹凸の柱方向とは垂直の方向に光りが線状に伸びて見える。半円柱のピッチと高さが大きい、即ち大きな半円柱形状にしすぎると、光源の形がそのままシートに映ってしまい、集光・拡散の効果が得られ難い。逆にピッチと高さが細かすぎると、半円柱形状が小さくなり、シート表面が平滑に近づくことになる。これは平滑な通常のシートに近づくことを意味するので、これも集光・拡散の効果が得られにくくなくなってしまう。
【0015】
本発明における複数のLED点光源3としては、透明円筒体1に内部に入るような棒状部材に複数のLED点光源を等間隔に配して点光源を順次点滅させる制御回路を接続したものが好適に用いられる。これにより透明円筒体の内部にスムーズに配することが可能となる。用いるLED点光源としては特に限定するものではないが、低電力や低発熱、高寿命、小パッケージ、更にフルカラー対応も可能であるものが好適である。
【実施例1】
【0016】
<透明円筒体1と透明シート2>
透明円筒体1として、アクリル製の外径70mm、内径62mm、厚み4mm、長さ1000mmの円筒体を用いる。
ベースとなるフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製75μmPET)を用い、この一方の面に、アクリル系紫外線硬化型樹脂(ADEKA(株)製)を単位半円柱のピッチ140μm、高さ80μmの半円柱状凹凸郡となるように塗工・硬化して透明シート2を作成した。
このようにして得た透明シート2を、前記透明円筒体1の内壁面に、筒軸方向に対して半円柱の柱方向が50°になるように傾けてはめ込んだ。その際、半円柱状凹凸のある面を内面になるようにして丸めてはめ込んだ。
【0017】
<LED点光源3>
直線状に連続したLED点光源3として、フルカラーLEDテープライト(LEDチップ5mm角、ピッチ18mm、幅12mm、端部リード線含む長さ約1m中に直線状にLEDを等間隔に45個配置したもの)を使用し、これをステンレス板(幅20mm、長さ1000mm、厚み1mm)に取り付けて、透明シート2をはめ込んだ前記透明円筒体1の内部の側面に取り付けた。端部リード線を点滅制御用のコントローラー(T79(3310)i25)及び電源につなぎ、本発明のLED表示灯を完成させた。
【実施例2】
【0018】
実施例1と同様に透明シート2を筒軸方向に対して半円柱の柱方向を10°にして取り付けてLED表示灯を完成させた。
【0019】
<比較例1>
実施例1の透明円筒体1内に、透明シート2を取り付けずに、LED点光源3だけを実施例1と同様に取り付けてLED表示灯を完成させた。
【0020】
<比較例2>
実施例1と同様に透明シート2を筒軸方向に対して半円柱の柱方向を80°にして取り付けてLED表示灯を完成させた。
【0021】
<比較例3>
実施例1と同様に透明シート2を筒軸方向に対して半円柱の柱方向を60°にして取り付けてLED表示灯を完成させた。
【0022】
<性能評価>
結果を図2〜図6に示す。実施例1、2の図2,3では、図の違いから分かるように、透明円筒体内を綺麗に線状の光が移動するものとなった。比較例1、2、3では、光が点だったり、線が重なったり、円筒体内部の光が狭かったりして見栄えのよくないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のLED表示灯は、主に理髪店看板や、商業施設、イベント、各種看板、店舗、工事現場などに使用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…透明円筒体
2…透明シート
3…LED点光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED点光源を透明円筒体の内部に筒軸方向に直列に配し、前記複数のLED点光源を順次点滅させる制御回路を接続してなるLED表示灯であって、前記透明円筒体の筒内壁面に透明シートを嵌め込んでなり、前記透明シートは表面に一方向に平行して連続した微細な半円柱状凹凸を有し、前記透明円筒体の筒軸方向と前記透明シートの半円柱状凹凸の柱方向の角度が0〜50°の範囲内にあることを特徴とするLED表示灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88708(P2013−88708A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230687(P2011−230687)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】