説明

NSR及びSCR触媒を有する放出ガス処理システム

【課題】窒素酸化物(NOx)を含む排気ガス流中の汚染物を減少させるのに有用な方法を提供する。
【解決手段】NOx吸収剤を少なくとも0.1g/inの濃度で及び白金族金属成分を、耐火性金属酸化物担体上に分散させて有するNOx貯蔵還元(NSR)触媒,及び該NSR触媒の下流に配置されたSCR触媒、を含んでなる排気ガス流のための放出ガス処理システムが提供される。本放出ガス処理システムはジ−ゼルエンジンまたは希薄な燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス流の処理に有利に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NSR及びSCR触媒を有する放出ガス処理システム及び排気ガス流、特に窒素酸化物(NOx)を含む排気ガス流中の汚染物を減少させるのに有用な方法に関する。更に特に、本発明は、改良されたNSR触媒、放出ガス処理システム、及びジ−ゼルエンジン及び可燃性成分の薄い(lean)(以下「希薄な」として言及)燃焼ガソリンエンジンを含む希薄な燃焼エンジンに対するその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
希薄な燃焼エンジン(lean burn engine)、例えばジ−ゼルエンジン及び希薄な燃焼のガソリンエンジンの運転は、使用者に優れた燃料経済性を与え、また燃料の乏しい条件下の高空気/燃料比での運転のために気相炭化水素及び一酸化炭素を非常に低濃度でしか放出しない。ジ−ゼルエンジンは、特にその耐久性並びに低速において高いトルクを発生させる能力に関してガソリンエンジンよりもかなりの利点を提供する。しかしながら、希薄な燃焼のガソリンエンジンからの排気ガスは、量論的な空気/燃料条件でまたはその附近で運転する通常のガソリンエンジンに比べて比較的高いNOxの放出で特徴づけられる。希薄な燃焼のエンジンからのNOxの効果的な除去は、高NOx転化速度が典型的には還元剤の豊富な条件を必要とするから達成するのが困難である。排気ガスのNOx成分の無害な成分への転化は、一般に燃料の希薄な条件での運転のために、特別なNOx除去方策を必要とする。
【0003】
希薄な燃焼エンジンからの排気ガス流中のNOx除去のそのような1つの方策は、技術的には「NOx捕捉(trap)」としても公知のNOx貯蔵還元(NSR)触媒を使用する。NSR触媒は、希薄な条件下に窒素酸化物を吸着または「捕捉」しうるNOx吸収剤物質、及び触媒に酸化・還元機能を付与する白金族金属成分を含む。この使用に関して、NSR触媒は下に方程式1−5で示される一連の基本段階を促進する。酸化環境では、NOはNOに酸化される(式1)。これはNOxの貯蔵に重要な段階である。低温の場合、この反応は典型的には白金族金属成分、例えば白金成分によって触媒される。この酸化工程はこれで終わりではない。原子状酸素の導入を伴うNOの硝酸塩への更なる酸化も触媒反応である(式2)。NOをNOx源として使用しても、白金族金属成分が存在しなければ硝酸塩はほとんど生成しない。白金族金属成分は、酸化と還元の両方の機能を持つ。それが還元で働く場合、白金族金属成分は先ず還元剤、例えばCO(一酸化炭素)またはHC(炭化水素)の排気ガスへの導入時にNOxの放出を触媒する(式3)。この段階は、いくつかのNOx貯蔵点を回復させるが、NOx種の還元には何も寄与しない。次いで放出されたNOxは可燃性成分の濃厚な(rich)(以下「濃厚な」として言及)環境において気体Nに更に還元される(式4及び5)。NOxの放出は実質的に酸化環境においてでさえ、燃料の注入によって誘導できる。しかしながら、放出したNOxのCOによる効率良い還元は濃厚な条件を必要とする。温度の急上昇も、硝酸金属が高温で安定性が低下するからNOx放出の引き金となりうる。NOx捕捉の触媒作用は循環作用である。金属化合物は希薄/濃厚な運転中、支配的経路として、炭酸塩/硝酸塩変換を受けると思われる。
【0004】
NOのNOへの酸化
NO+1/2O→NO (1)
NOxの硝酸塩としての貯蔵
2NO+MCO+1/2O→M(NO+CO (2)
NOxの放出
M(NO+2CO→MCO+NO+NO+CO (3)
NOxのNへの還元
NO+CO→NO+CO (4)
2NO+2CO→N+2CO (5)
式2及び3において、Mは2価の金属カチオンを表す。Mは式が再バランスを必要とする場合には1または3価の金属化合物であってもよい。
【0005】
NO及びNOのNへの還元が濃厚な期間中NSR触媒の存在下に起こる時、NSR触媒の濃厚なパルス再生の副生物としてアンモニア(NH)の生成しうることも観察された。例えばNOのCO及びHOでの還元は下に式(6)で示される。
【0006】
NOのNHへの還元
2NO+5CO+3HO→2NH+5CO (6)
このNSR触媒の性質は、それ自体有毒な成分であるNHが排気ガスの大気放出に先立って無毒な種へ転化されねばならないことを要求する。
【0007】
(希薄な燃焼エンジンからの排気ガス処理を含めて)可動性の用途の下でのNOx除去に対する別の方策は、選択的な接触還元(SCR)触媒技術を使用することである。この方策は静置源、例えば煙道ガスの処理に適用する時に有効であることが分かっている。この場合、NOxは典型的には卑金属からなるSCR触媒上で還元剤、例えばNHにより窒素(N)へ還元される。この技術は90%以上のNOx還元が可能である。かくしてそれは積極的なNOx還元の目的を達成するために最良な手法の1つである。
【0008】
アンモニアは、SCR技術を使用する希薄な条件でのNOxに対する最も有効な還元剤の1つである。ジ−ゼルエンジン(多くの高荷重ジ−ゼル車)におけるNOxの除去について研究されている方法の1つは尿素を還元剤として使用するものである。加水分解してアンモニアを生じる尿素を、SCR触媒の前に温度範囲200−600℃で排気ガス中に注入する。この技術の主な欠点の1つは、車に積まれた尿素を保持する非常に大きな容器を必要とすることである。他の重要な関連事項は、必要な時に容器に尿素を再補充することが車の運転者に義務付けられることであり、尿素を運転者に供給する施設が必要なことである。それゆえに排気ガスのSCR処理のために還元剤NHを供給する面倒でない代替的供給源が望ましい。
【0009】
NHまたはNH前駆体の外置き容器の代わりに排気ガス中のNOxの接触還元を利用してNHを発生させる放出ガス処理システムは技術的に公知である。言い換えると、そのようなシステムでは排気ガス中のNOx成分の一部をNH前駆体として使用するものである。例えば特許文献1は希薄な及び濃厚な条件で交互に運転される燃焼システムからの排気ガスの処理法を開示している。この方法では、窒素酸化物を希薄な運転中にすぐに貯蔵し、濃厚な運転中にそれを放出させてNHを生成させ、それを貯蔵する。この貯蔵されたNHを放出させ、これにより続く希薄な運転中に窒素酸化物を還元する。
【0010】
特許文献2は、NHを吸着及び酸化する(NH−AO)触媒へ連結された3元触媒を有するエンジンの排気ガスを浄化する装置を記述している。このエンジンでは濃厚な及び希薄な期間を交互に運転する。濃厚な運転中、3元触媒は流入する排気ガス中のNOxからNHを合成し、次いでこのNHはNH−AO触媒に吸着される。希薄な運転中、NOxは3元触媒を通過し、吸着されたNHは脱着して流入するNOxを還元する。
【0011】
特許文献3は、エンジンからの排気ガスを浄化する方法及び装置を開示し、特に排気ガス中のNOxを浄化する方法及び装置を記述している。ある具体例において、この特許はNOxを吸蔵及び還元する触媒の上流に且つそれと同一の担体上に3元触媒を有する装置を記述している。NOxを吸蔵及び還元する(NOx−OR)触媒の下流にはNHを吸
着及び酸化するNH−AO触媒が存在する。いずれかのNHが流出するのを防ぐために、装置には、NH−AO触媒の下流にNH浄化触媒も備えている。エンジン筒の空気/燃料比は交互に及び繰り返して希薄及び濃厚な状態にせしめられ、これによって排気ガスの空気/燃料比は交互に及び繰り返し濃厚及び希薄な状態にさせる。
【0012】
この装置に対して特許文献3に記述される方法では、排気ガスの空気/燃料比が希薄な時NOxは3元触媒を通過し、NOxはNOx−OR触媒に吸蔵される。NOxのNOx−OR触媒への通流は次のNH−AO触媒で浄化されると記載されている。NHは排気ガスの空気/燃料比が希薄な時NH−AO触媒から脱着し、この脱着されたNHがNOxを還元することになる。
【0013】
排気ガスの空気/燃料比が濃厚な場合、排気ガス中のNOxの一部は3元触媒でNH
に転化される。次いでこのNHはNOx−OR触媒に至り、そこで放出されたNOxが流入するNHで還元され、浄化される。NOxの還元で消費されないでNOx−OR触媒を通過するいずれかのNHはNH−AO触媒に吸着され或いは下流のNH浄化触媒で浄化される。
【0014】
排気ガス中のNOxの一部分をNH前駆体として使用する方法と関連した1つの問題は、運転条件に依存して、濃厚な運転期間中、希薄な期間(即ち排気ガスの組成がλ>1を有する時)においてNOxを処理するのには不十分なNHしか生成しないことである。例えばNOxをNHに転化する3元触媒を使用するシステムの場合、濃厚な期間(即ち排気ガスの組成がλ<1の時)に生成するNHの最大量は排気ガス中のNOx成分の量により制限される。更に、排気ガスが濃厚の場合、排気ガス中のNOx量は典型的には排気ガスが希薄な時にその量より低い。それゆえに、続く希薄な排気ガス期間に、処理システムを通流するより高い濃度のNOxを処理するために必要とされるNHを生成させるには、NH前駆体が少なすぎる。この欠陥は、NOxが放出ガス処理システムで効果的に処理される運転条件の範囲を制限し得る。従って濃厚なサイクル中により多くのNHを生成させる能力を有するシステムは、NOxを効果的に処理できる運転条件の範囲を広げる可能性を与える。
【0015】
放出ガス処理システムが働く条件は希薄な燃焼エンジンを動力とする異なる車で変化するので、NOx除去のためのより厳しい必要条件を達成するには、放出ガス処理システムに対して柔軟な手法のデザインが必要である。特にNSR触媒組成物を変えることの、希薄な及び濃厚な運転期間中のNOx貯蔵及びNH生成に及ぼす影響を説明する研究法は、この目的を達成するためのより信頼できる且つ実際的な道すじを提示する。
【特許文献1】米国特許第6176079号
【特許文献2】ヨ−ロッパ特許第773354号
【特許文献3】WO第97/17532号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
ある観点において、本発明は、例えばジ−ゼルエンジンまたは希薄な燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス流に対する放出ガス処理システムに関する。このシステムは、NOx吸収剤を少なくとも0.0061g/mlの濃度で且つ白金族金属成分を耐火性金属酸化物担体上に分散させて有するNOx貯蔵還元(NSR)触媒を含む。またこの放出ガス処理システムは、該NSR触媒の下流に配置されたSCR触媒も含む。
【0017】
本放出ガス処理システムは、典型的にはNSR触媒の上流の排気ガス流において空気/燃料比を周期的に低下させる制御器を有する。いくつかの具体例において、この制御器はエンジンを周期的に濃厚なモードで運転するエンジン管理システムである。制御器は、N
SR触媒の上流の排気ガス流中へ、炭化水素燃料、一酸化炭素及び水素の少なくとも1つから選択される還元剤、を周期的に秤量して、濃厚なガス流を形成させる注入器も含んでなる。
【0018】
NSR触媒の白金族金属成分は一般に白金、パラジウム、ロジウム成分及びその混合物からなる群から選択され、典型的には10−250g/0.27mで存在する。好ましくはNSR触媒は白金成分を50−200g/0.27mで有する。
【0019】
NSR触媒のNOx吸収剤は、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムの酸化物から選択される少なくとも1つのアルカリまたはアルカリ土類金属酸化物である。好ましくは、NOx吸収剤はバリウムを含む。
【0020】
放出ガス処理システムのNSR触媒は、好ましくはランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジムの酸化物の1つまたはそれ以上から選択される酸素貯蔵成分を更に含んでいてもよい。存在する場合、NSR触媒中に存在する酸素貯蔵成分は0.0305g/ml未満である。この酸素貯蔵成分は、濃厚な期間におけるNSR触媒からの硫黄の除去に役立ち、またすすフィルターの粒状物質の大きさ及び量を減少させるのに役立つ。
【0021】
放出ガス処理システムにおけるNSR触媒の耐火性金属酸化物は、典型的にはアルミナ上に分散されたアルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、セリア、アルミナ上に分散されたチタニア及びアルミナ上のシリカからなる群から選択される。好適な具体例において、NSR触媒の耐火性金属酸化物は少なくとも50m/gの表面積を有するアルミナである。
【0022】
本放出ガス処理システムのいくつかの好適な具体例において、NSR触媒は基材上に堆積された少なくとも2つの触媒層を有する。他の具体例では、NSR触媒は基材上に堆積された単一の触媒層である。この基材はハニカム流通基材または壁流フィルター基材であってよい。
【0023】
放出ガス処理システムのためのある好適なSCR触媒は、ゼオライト成分、例えば鉄または銅交換のゼオライトを含む。他の好適なSCR触媒は、V、WO及びTiOを含む。SCR触媒はセラミックまたは金属ハニカム流通基材上に堆積できる。他の具体例では、SCR触媒は壁流フィルター基材上に配置させることもできる。
【0024】
随意の具体例において、放出ガス処理システムはNSR触媒の上流またはSCR触媒の下流のいずれかにジ−ゼル酸化触媒も有する。このジ−ゼル酸化触媒は、例えばNSR触媒の上流またはSCR触媒の下流のいずれかのすすフィルター上に配置させうる。
【0025】
本発明の好適な具体例は、バリウム成分を少なくとも0.0122−0.0366g/mlで及び白金金属成分を50−200g/0.028mの濃度で、耐火性金属酸化物担体上に分散させて有するNOx貯蔵還元(NSR)触媒を有する排気ガス流のための放出ガス処理システムに関する。このシステムは又、NSR触媒の下流に配置されたSCR触媒を有し、このSCR触媒は鉄で交換されたゼオライト物質を含んでなる。
【0026】
他の観点において、本発明はジ−ゼルエンジンまたは希薄な燃焼ガソリンエンジンからの排気ガス中のNOxをNへ転化する方法に関する。この方法は、
(a)NOxを含んでなる排気ガスを、白金族金属成分及び少なくとも0.0061g/mlのNOx吸収剤を耐火性金属酸化物上に分散させて含んでなるNOx貯蔵還元(NSR)触媒と可燃性成分の希薄な期間接触させて、排気ガスからのNOxの一部を吸収さ
せ、そしてこのNOxの一部を未処理のNSR触媒中に流通させ、
(b)排気ガス流の空気/燃料比を周期的に変えて可燃性成分の濃厚な期間中に可燃性成分の濃厚なガス流を供給し、
(c)この可燃性成分の濃厚なガス流をNSR触媒と接触させて、吸収されたNOxをNHに還元し、そして
(d)続いてこのNHと排気ガス中の未処理のNOxの混合物をSCR触媒と接触させてNを生成させる、
ことを含む。
【0027】
本方法は、好ましくは工程(c)に続いて工程(c1)を含む。工程(c1)はNHの一部分をSCR触媒上に吸収させることである。
【0028】
(b)における排気ガス流の空気/燃料比の変更は、エンジンを濃厚モードで周期的に運転することにより、または炭化水素燃料をNSR触媒の上流の排気ガス流へ注入することにより行うことができる。
【0029】
(a)の排気ガスは、一般に10,000−200,000時−1の空間速度でNSR触媒を通過する。同様に(d)の排気ガスは一般に10,000−200,000時−1の空間速度でSCR触媒を通過する。
【0030】
好ましくは、濃厚なガス流のλは0.80−0.995である。希薄な期間中、排気ガス流のλは好ましくは1.1以上である。典型的には濃厚な期間は希薄な期間の1−50%である。
【0031】
一般に(a)の排気ガスはNSR触媒中で100−600℃の温度を有する。好ましくは(a)の排気ガスはNSR触媒中で150−450℃の温度を有する。
定義
次の術語は、本明細書の目的のために、それぞれ以下に示す意味を有する。
【0032】
希薄な排気ガス流を含む「希薄なガス流」とは、λ>1.0を有するガス流を意味する。
【0033】
「希薄な期間」とは、排気ガス組成物が希薄、即ちλ>1.0を有する排気ガス流を処理する期間を意味する。
【0034】
「白金族金属成分」とは、白金族金属またはその酸化物の1つを意味する。
【0035】
「希土類金属成分」とは、ランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジムを含む元素周期律表で定義されたランタン系の1つまたはそれ以上の酸化物を意味する。
【0036】
濃厚な排気ガス流を含む「濃厚なガス流」とは、λ<1.0を有するガス流を意味する。
【0037】
「濃厚な期間」とは、排気ガス組成物が濃厚、即ちλ<1.0を有する排気ガス流を処理する期間を意味する。
【0038】
「ウォッシュコ−ト(washcoat)」とは、耐火性基材、例えば処理するガス流を流通させるのに十分多孔性であるハニカム流通モノリス型基材のような耐火性基材に適用された触媒または他の物質の薄い付着コ−ティングという技術的に普通の意味のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、未燃焼の気体状炭化水素、例えば一酸化炭素、粒状物質(例えばジ−ゼル排気ガス)及び特にNOxを含む希薄な燃焼エンジンからの排気ガス成分を処理するのに有効な放出ガス処理システムに関する。本システムは、二重の触媒機能を有する上流のNSR触媒及び下流のSCR触媒を有し、希薄及び濃厚が交互の排気ガスに関して運転される。本NSR触媒は式(1)及び(2)に従う希薄な運転期間中のNOxの貯蔵を促進し、そして濃厚な期間中にそれが貯蔵されたNOxのNへの還元(式5)ばかりでなく、気体NOx及び貯蔵されたNOxの両方からのNHの生成(式6)も触媒する。本出願人は、NSR触媒成分の選択及びNSR触媒組成物中の各成分濃度の選択により、排気ガスが希薄の時にNOxを効果的に処理できるように排気ガスを濃厚にする場合、十分な且つ予想できる量のNHを生成させることができる。ここに記述される手法は、ジ−ゼルエンジン及び希薄な燃焼ガソリンエンジンを含む種々の希薄燃焼エンジンから放出される排気ガスに適応させうる放出ガス処理システムをデザインするための柔軟で、効果的な、及び予想できる手法を提供する。
【0040】
図1Aにおいて10Aとして示される放出ガス処理システムの1つの具体例は、SCR触媒の上流にあるNSR触媒を含む。NSR触媒は、耐火性セラミックまたは金属基材上のNSR触媒組成物の形であってよい。希薄な期間において、エンジン1の排気ガスマニホ−ルドから流れる排気ガス組成物は、NSR触媒2と接触し、そこでそれに含まれるNOxの一部分がNSR触媒上に吸着され、そしてNOxの他の部分は未処理のNSR触媒中を通過する。次いで排気ガス組成物の空気/燃料比を変化させて、濃厚な期間中濃厚なガス流にする。次いで濃厚なガス流は、NSR触媒と接触して、吸収されたNOxをN及びNHに還元する。それゆえにこのように製造されたNH量は、エンジンから出るNOx放出量以上となる。更に濃厚な流れ中の気体NOxも又還元されて更なる量のNHを供給する。次いでNHはシステムの下流のSCR触媒3へ流れる。このSCR触媒は耐火性セラミックまたは金属基材上に配置されたSCR触媒組成物の形であってよい。典型的にはNHの一部はSCR触媒に吸着される。次いで未処理のNOxはSCR触媒と接触し、貯蔵されたNHと反応して希薄な期間中にNを生成する。
【0041】
他の具体例において、NSR及びSCR触媒は、同一の基材上の別々の領域に配置されていてよい。この場合NSR触媒は基材の上流部分に配置され、SCR触媒は下流部分に配置される。
【0042】
ここに記述されるNSR触媒の使用は、希薄な燃焼エンジンに対する放出ガス処理システムの設計に重大な利点を与える。NSR触媒は希薄な運転期間中のNOx貯蔵機能及び濃厚な運転期間中のNH発生機能の両方を有するので、これら2つの機能を果たす別の触媒基材を使用することが不必要である。結果として、別々の触媒基材の製造及び使用という負担はない。更に、二重機能のNSR触媒を用いると、全体の白金族金属の使用が減少する。NOxの貯蔵を促進する触媒及びNHの生成を促進する触媒は、両方とも一般にその組成物に白金族金属成分を含むからである。それゆえにNOxの貯蔵及びNHの生成に対する別々の触媒の代わりに単一のNSR触媒を有する放出ガス処理システムは、システム設計者にかなりの経費節約をもたらす。
【0043】
排気ガス組成物の空気/燃料比を変えて、同業者には公知の多くの方法により濃厚なガス流を与えることができる。希薄な燃焼エンジンを周期的に濃厚なモードで運転し、またはより直接的に排気ガス流の空気/燃料比を変える制御器が使用できる。例えば空気/燃料比はよく知られたエンジンの運転管理を行なうことにより、エンジンを濃厚なモードで周期的に運転して濃厚にすることができる。他に排気ガス流はNSR触媒の上流において炭化水素燃料(例えばジ−ゼル燃料)を周期的に秤量して濃厚にすることができる。濃厚
な気体の排気ガス流は、NSR触媒の上流でCO及びHを排気ガス流へ添加することによっても生成させうる。これらは例えば少量の炭化水素燃料を部分的な酸化反応で処理することにより発生させることができる。
【0044】
濃厚な期間中に生成するNHの量は、濃厚なガス流を発生させるために用いる濃厚なパルスの長さ及び強度の両方に依存する。濃厚な期間中、本発明の放出ガス処理システムを運転する目的のためには、濃厚なガス流は一般に0.80−0.995のλを有する。好ましくは、濃厚なガス流は0.90−0.95のλを有する。希薄な期間中、希薄なガス流は好ましくはλ>1.1を有する。濃厚な期間の長さは希薄な期間の1−50%である。更に好ましくは、濃厚な期間の長さは希薄な期間の2−10%である。そのような運転パラメ−タ−は、適切な量のNHが最少の燃料の消費で生じさせうることを保証する。
【0045】
NSR触媒により本発明の放出ガス処理システムでNOxを処理する空間速度は10,000−200,000時−1である。更に好ましくは、放出ガスの空間速度は10,000−100,000時−1である。同様に、SCR触媒を通る排気ガスの空間速度は好ましくは10,000−200,000時−1、より好ましくは10,000−100,000時−1である。
【0046】
NSR触媒組成物
本発明のシステムで使用されるNSR触媒組成物は、耐火性金属酸化物担体上に分散されたNOx吸収剤及び白金族金属成分を含む。更にNSR組成物は、随時他の成分、例えば濃厚な運転期間中に生成するNHの量に著しく影響する酸素貯蔵成分及び鉄成分を含む。そのような組成物は、引用により本明細書に包含される2003年1月31日付けの出願米国特許願第10/355779号に開示されているものと同様である。そのようなNSR組成物は100−600℃の排気ガス温度、より特定的には150−450℃の排気ガス温度において良好なNOx貯蔵/NOx還元活性を示す。更にそのようなNSR触媒組成物は際立った熱安定性と硫黄化合物を適度な条件下に除去する能力を示す。
【0047】
NSR触媒は、自己支持性粒子(例えばタブレット、ビーズなど)、または触媒組成物からなる固体のハニカムモノリスのようないずれの形も取りうる。しかしながら、NSR触媒組成物は好ましくはセラミックまたは金属基材上にウォッシュコ−トとしてまたはウォッシュコ−トの組み合わせ(層状触媒複合物を形成する)として配置される。本発明の好適な具体例において、NSR触媒は、単一層、または基材に付着された底部層及びこの底部層を被覆する上層を有する2層触媒複合物のいずれかの形である。
【0048】
NSR触媒組成物の担体は、高表面積の耐火性金属酸化物、例えばアルミナ、チタニア、ジルコニア、アルミナとチタニア、ジルコニア及びセリアの1つなたはそれ以上との混合物、セリア被覆のアルミナ、またはチタニア被覆のアルミナからなる。耐火性金属酸化物はシリカ−アルミナ、非晶性または結晶性であってよいアルミノシリケ−ト、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−セリアなどからなるか、又は混合酸化物を含む。好適な耐火性金属酸化物はガンマアルミナ、セリア被覆アルミナ及びチタニア被覆アルミナである。
【0049】
典型的には、耐火性金属酸化物は約50−約300m/gの比表面積を有するであろう。担体は典型的には約0.0305−約0.183g/mlの量で存在する。但しこの量は2つまたはそれ以上の触媒層を含む具体例における全量である。2層が存在する本発明の具体例においては、底部層に選択される担体が上層に選択されるものと同じである必要がないが、簡便にはそれと同一である。更に底部層における担体の量は、底部層及び上層における担体量が上述の範囲内にあるかぎり、上層と同一である必要はない。
【0050】
1つまたはそれ以上の白金族金属成分、例えば白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物は耐火性金属酸化物担体上に分散されよう。好ましくは貴金属成分は白金を含んでなる。NSR触媒のこれらの成分は、窒素種の酸化及び還元を促進する。白金族金属成分の負荷量は約10−約250g/0.028mの範囲で、好ましくは50−200g/0.028mの範囲であるだろう。但しこの量は2つまたはそれ以上の触媒層を含む具体例における全量である。ここに再び、2層触媒複合物を用いる本発明の具体例において、底部層に対して選択される白金族金属成分は、上層に対して選択されるものと同一である必要はないが、簡便には同一である。更に底部層における白金族金属成分の量は、底部層及び上層における白金族金属成分の量が上述の範囲内にあるかぎり、上部層と同一である必要はない。
【0051】
本発明の目的に対して、NSR触媒は適度なNOx貯蔵能力を確保するために少なくとも1つのNOx吸収剤成分も含有する。更にNOx貯蔵能力は、濃厚な運転期間中のNHの生成が一部貯蔵されたNOx(即ち金属硝酸塩として)の供給によって制限されるから、NSR触媒のNH生成能力にかなり影響する。典型的には、NOx吸収成分は適当なNOx貯蔵を確保するために少なくとも0.0061g/ml、例えば0.0061−0.061g/mlの量で存在する。更に好ましくは組成物中のNOx吸収剤は、少なくとも約0.0122g/ml、更に好ましくは少なくとも0.0183g/mlで存在する。適当なNOx吸収剤成分は、アルカリまたはアルカリ土類金属の塩基性酸素化化合物を含んでなる。ここにアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムであってよく、アルカリ土類金属はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムであってよい。好適なアルカリ金属はカリウムであり、好適なアルカリ土類金属はバリウムである。
【0052】
NSR触媒を2層触媒複合物として生成させる本発明の具体例において、底部層におけるNOx吸収剤成分は約0.0183g/ml以上の量で存在し、また上層におけるNOx吸収剤は0.0−約0.0183g/ml未満の量で存在することが好適である。上層において約0.0183g/mlまたはそれ以上の量でのNOx吸収剤成分量は、炭化水素の酸化及び一酸化炭素の二酸化炭素への酸化を触媒する白金族金属成分の能力に致命的な影響を与えうる。
【0053】
生成するNHの量に影響するNSR触媒組成物の随意の成分は、典型的には希土類金属成分から生成される酸素貯蔵成分である。酸素貯蔵成分は(いくつかのジ−ゼル用に対して重要である)組成物の脱硫能力を改善するけれど、酸素貯蔵組成物の多すぎる濃度は濃厚な運転中に生成しうるNHの量を制限してしまう。特別な理論に束縛されたくはないが、本出願人は、酸素貯蔵成分の酸化された種の存在が濃厚な期間中におけるNHのNOxまたはNOへの酸化に帰結し、これによって究極的にNSR触媒によって生成するNHの量を限定する。それゆえに酸素貯蔵成分の量は0.0305g/ml未満、好ましくは0.0213g/ml未満である。
【0054】
酸素貯蔵成分は、希土類金属成分及び最も好ましくはセリウムまたはプラセオジム成分からなる群から選択される少なくとも1つの金属の酸化物を含み、最も好適な酸素貯蔵成分はセリウム酸化物(セリア)である。酸素貯蔵成分は、例えば可溶性前駆体(例えば硝酸セリウム)を耐火性金属酸化物担体上に分散させることにより耐火性金属酸化物担体上に分散させることができる。他に酸素貯蔵成分は組成物中にバルク形態で付与される。ここにバルク形態とは、組成物が好ましくは卑金属ウォッシュコ−ト中に溶液で分散されるのに対して、直径が1〜15ミクロン程度に小さいまたはそれ以下であってよい細かい粒子として固体で存在することを意味する。プラセオジムを使用する場合、それは好ましくはセリアと組み合わせて使用される。
【0055】
いくつかの具体例において、酸素貯蔵成分は市販されているまたは同業者には容易に明らかであるような共生成された希土類金属−ジルコニア複合物(例えばセリア−ジルコニア複合物)のバルクな細かい粒状物質からなっていてよい。例えば共生成された複合物は米国特許第5,057,483号に記述されている。これらの粒子は、安定化されたアルミナウォッシュコ−トと反応せず、長期間900℃に露呈しても40m/g以上のBET表面積を維持する。NSR触媒組成物中に添加される酸素貯蔵成分の量を計算する目的のための、複合物物質の希土類成分(例えばセリア)の割合は重要な成分である。
【0056】
鉄成分は濃厚な期間中にNSR触媒によって生成されるNHの量に影響する他の随時の成分である。特に鉄成分を含有させることは、鉄成分のない同様のNSR組成物で生成させるよりもNHの量を増大させる。NSR触媒中の鉄成分の濃度は、存在する場合典型的には0.00305−0.0183g/ml、好ましくは0.0061−0.0122g/mlである。
【0057】
NSR組成物に添加しうる他の成分は、他の遷移金属、例えばジルコニウム、マンガン、イットリウム、及びチタンを含む。使用する場合、そのような遷移金属成分は典型的には約0.00061−約0.0305g/mlの量で存在する。
【0058】
本発明のNSR触媒複合物は、良く知られた方法によって容易に製造しうる。二層NSR触媒の代表的な製造法を以下に示す。
【0059】
本触媒複合物は、モノリスハニカム基材上に層中に容易に製造できる。底部層に対して、は、高表面積の耐火性金属酸化物、例えばガンマアルミナの微粉砕された粒子を適当なビヒクル、例えば水にスラリ−とさせる。次いで基材をそのようなスラリ−に1回またはそれ以上浸漬させ、または基材(たとえばハニカム流通基材)上に金属酸化物が所望の負荷量で、例えば約0.0305−約0.183g/mlで存在するように金属酸化物を所望な負荷量で基材上に付着させる。白金族金属、遷移金属酸化物、安定剤、促進剤及びNOx吸収剤成分のような成分は、水溶性または水分散性の化合物または錯体の混合物としてスラリ−中に混入しうる。次いでコ−ティングされた基材を例えば400−600℃で1−3時間加熱することによって焼成する。
【0060】
典型的には、白金族金属成分、例えば白金成分は、耐火性金属酸化物、例えば活性アルミナ上に、白金族金属塩または錯体(または白金族金属前駆体)を用いて分散される。本発明の目的に対して、用語「白金族金属前駆体」とは、その焼成または使用時に触媒活性形、通常金属または金属酸化物、に分解またはさもなければ転化される化合物、錯体などを意味する。金属成分の水溶性化合物または水分散性化合物或いは錯体は、該金属成分を耐火性金属酸化物担体粒子上に含浸または堆積させるために使用される液体媒体が、金属或いはその化合物または錯体、更には触媒組成物に存在してよい他の成分と悪い反応をせず、加熱及び/または真空の適用時に蒸発または分解して金属成分から除去できる限りにおいて使用することができる。いくつかの場合、液体除去の完了は、触媒が使用されるまで及び運転中に遭遇する高温に曝されるまで起こらなくてもよい。一般に経済的観点及び環境的観点の両方から、白金族金族の可溶性化合物または錯体の水溶液は好適である。例えば、適当な化合物はクロロ白金酸、アミン可溶化水酸化白金、硝酸パラジウムまたは塩化パラジウム、塩化ロジウム、硝酸ロジウム、ヘキサミンロジウムクロライドなどである。焼成工程中または少なくとも複合物の使用の初期の段階で、そのような化合物はその金属またはある化合物の触媒的に活性な形に転化される。
【0061】
本発明の層状触媒複合物の底部層を生成させる好適な方法は、白金族金属前駆体の溶液及び十分に乾燥すると実質的にすべての溶液を吸収してスラリ−を生成する少なくとも1
つの微粉砕された、高表面積の耐火性金属酸化物担体、例えばガンマアルミナの混合物を調製することである。好ましくはこのスラリ−は酸性で、約2−7未満のpHを有する。スラリ−のpHは、少量の無機酸または有機酸、例えば塩酸または硝酸、好ましくは酢酸をスラリ−に添加することにより低下せしめられる。次いでNOx吸収剤成分、及び随意の遷移金属成分、安定剤及び/または促進剤もスラリ−に添加することができる。
【0062】
特に好適な具体例においては、次いでスラリ−を粉砕して、実質的にすべてを、平均直径20ミクロン未満、即ち1−15ミクロンの粒子寸法を有する固体とする。この粉砕は、ボ−ルミルまたは他の同様な装置を用いて行うことができ、スラリ−の固体含量は例えば20−60重量%、好ましくは35−45重量%であってよい。
【0063】
次いで上層を準備し、上述したものと同様な方法で焼成された複合物の底部層上に堆積せしめられる。すべてのコ−ティング操作が完了した後、複合物を例えば400−600℃に1−3時間加熱して再び焼成する。
【0064】
SCR触媒
放出ガス処理システムは多くの公知のSCR触媒を用いて、NSR触媒の下流でNOxを処理することができる。例えば卑金属(例えば銅、鉄)で交換されたゼオライト組成物またはバナジアに基づく組成物(例えばV/WO/TiO/SiO)を用いてSCR触媒を生成させることができる。このSCR触媒は自己支持性触媒粒子の形でまたはSCR触媒組成物のハニカムモノリス形であってよい。しかしながら本発明
の好適な具体例において、NSR触媒組成物はウォッシュコ−トとしてまたはウォッシュコ−トの組み合わせとしてセラミックまたは金属基材、好ましくはハニカム流通基材上に配置される。
【0065】
放出ガス処理システムの好適な具体例において、SCR触媒は卑金属交換ゼオライト物質から生成される。そのようなSCR触媒組成物は例えば全体が引用により本明細書に包含される米国特許第4,961,917号(第´917号特許)及び第5,516,497号に記述されている。第´917号特許に開示されている組成物はゼオライト中に、促進剤とゼオライトの全重量の約0.1−30重量%、好ましくは約1−5重量%の量で存在する鉄及び銅促進剤の1つまたは両方を含む。好適な具体例において、ゼオライトは鉄成分を含む。そのような組成物に使用されるゼオライトは、硫黄毒に対して耐性があり、SCR法の活性を高度に維持する。これらのセオライトは、短期間の硫黄被毒に由来する酸化硫黄及び/または長期間の硫黄被毒に由来するサルフェ−ト付着物の存在における細孔系への反応性分子NO及びNH、及び細孔系からの生成物分子N及びHOの適切な移動を可能にするのに十分な大きい細孔寸法を有する。適当な寸法の細孔系はすべての3つの結晶学的次元において互いに連結している。ゼオライト技術において同業者が良く知るように、ゼオライトの結晶構造は、多かれ少なかれ規則的な反復連結、交差などを有する複雑な細孔構造を示す。特別な特徴、例えば一定の次元の直径または断面積配置を有する細孔は、これらの細孔が他の同様な細孔と交差しないならば1次元であるといわれる。細孔が他の同様な細孔と一定の平面内でのみ交差するならば、特徴的なその細孔は2(結晶学的)次元で交差すると言われる。細孔が同一平面及び他の平面の両方に位置する他の同様な細孔と交差するならば、そのような同様な細孔は3次元で互いに連結する、即ち「3次元」であるといわれる。サルフェ−ト毒に非常に耐性があり且つSCR法に良好な活性を与え、且つ高温、水熱条件及びサルフェ−ト毒に供した時でさえ良好な活性を保持するゼオライトは、少なくとも約7オングストロ−ムの細孔直径を有し且つ3次元で交差している細孔を有するゼオライトであることが判明した。ここに特別な理論によって束縛されたくはないが、直径が少なくとも7オングストロ−ムの細孔の3次元での交差はゼオライト構造を通してのサルフェ−ト分子の良好な移動性を提供し、これによってサルフェ−ト分子が触媒から遊離して反応物NOx及びNH分子に対して利用し得る多くの吸着点を
開放させると考えられる。
【0066】
本発明の好適な具体例において、ゼオライトは少なくとも2.5,更に好ましくは少なくとも10のSi/Al比を有する。上述の基準に適合するゼオライトはいずれも、本発明の実施に使用するのに適当である。これらの基準に合う特別なゼオライトは、ベ−タ、ZSM−5、ZSM−11、脱アルミネ−トY、及び脱アルミネ−トモルデナイトである。他のゼオライトも上述の基準を満足しうる。
【0067】
そのようなSCR触媒組成物は、ハニカムモノリス基材に付着させた場合、所望のNOxの還元が達成されることを保証し且つ触媒の長期使用の適当な耐性を保証するために、少くとも0.0793g/mlの濃度で堆積される。好適な具体例において、SCR組成物は少くとも0.0976g/ml、特に少くとも0.0976−0.136g/mlが壁流モノリスに配置される。
【0068】
基材(subtrate)
好ましくは、NSR及びSCR触媒組成物のそれぞれは基材上に配置される。この基材は触媒の製造に典型的に使用される材料のいずれであってよく、好ましくはセラミックまたは金属ハニカム構造を含んでなる。通路が全体にわたって流体の流れに対し開かれている(ハニカム流通基材として言及)いずれか適当な基材、例えば基材の入口または出口面から全体に延びる細い平行なガス流通路を有する種類のモノリス型基材が使用しうる。流体の入口から流体の出口まで本質的に真っ直ぐな通路を有する通路は、通路を流れるガスが触媒物質と接触するように、触媒物質がウォッシュコ−トとして被覆されている壁によって規制される。モノリス型基材の流通路は、いかなる適当な断面積及び形、例えば台形、長方形、正方形、シヌソイド形、6角形、楕円形、円形などであってよい薄壁路である。そのような構造は断面積平方インチ当たり約60−約300もしくはそれ以上のガス入口開口(即ちセル)を含み得る。
【0069】
本基材は、通路が交互に閉鎖されて、その通路に一方向(入口方向)から入ったガス流が路壁を通って他の方向(出口方向)から通路を出るようにした壁流フィルタ−基材であってもよい。NSR及び/またはSCR触媒組成物のいずれかが壁流フィルタ−上に被覆されていてもよい。そのような基材を使用する場合、得られるシステムは粒状物を気体状汚染物と一緒に除去しうるであろう。壁流フィルター基材は、技術的に良く知られた材料、例えばコ−ディエライトまたは炭化ケイ素から作ることができる。
【0070】
本セラミック基材は、適当な耐火性材料、例えばコ−ディエライト、コ−ディエライト−アルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポデュメン(spodumene)、アルミナ−シリカ、マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケ−トなどから作ることができる。
【0071】
本発明の触媒に有用な基材は、本質的に金属であり、且つ1つまたはそれ以上の金属または合金からなっていてよい。金属基材は種々の形態で、例えば波型シートまたはモノリス形で使用できる。好適な金属担体は、耐熱性金属及び金属合金、例えばチタン及びステンレス鋼並びに鉄が実質的なまたは主な成分である他の合金を含む。そのような合金は、ニッケル、クロム、及び/またはアルミニウムの1つまたはそれ以上を含むことができ、これらの金属の全量は有利には少なくとも15重量%の合金、例えば10−25重量%のクロム、3−8重量%のアルミニウム、及び20重量%までのニッケルを含んでいてよい。合金は更に少量または痕跡量の1つまたはそれ以上の他の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタンなども含みうる。表面または金属基材は高温、例えば1000℃またはそれ以上で酸化して基材の表面に酸化物層を形成させることによって合金の耐腐食性を改善することもできる。そのような高温で誘導される酸化は耐火性金属酸化物担体の付着
及び触媒的に向上させる金属成分の基材への付着を高める。
【0072】
他の具体例において、NSRまたはSCR触媒組成物の1つまたは両方は、連続気泡セルの発泡基材上に堆積することができる。そのような基材は技術的によく知られており、典型的には耐火性セラミックまたは金属材料から形成される。
【0073】
放出ガス処理システムの他の具体例
図1Aに示すような放出ガス処理システムは単独で使用でき、随時そのシステムは図1Bのシステム10Bで示されるように、NSR触媒2の上流に及び/またはSCR触媒3の下流(4Bとして)にジ−ゼル酸化(DOC)触媒4Aを含むことができる。DOC組成物は技術的によく知られており、卑金属(例えばセリア)及び/または白金族金属を触媒試剤として含んでなってよい。
【0074】
上流位置(即ち4Aとして)において、DOCはいくつかの有利な機能を有する。触媒は未燃焼の気体状及び非揮発性炭化水素(即ち、ジ−ゼル粒状物の可溶性有機画分)及び一酸化炭素の二酸化炭素及び水への酸化に役立つ。DOC触媒を用いるSOFの実質的部分の除去は、とくにNSR及びSCR触媒上での粒状物の付着が多くなりすぎるのを防止するのに役立つ。他の機能において、NOx成分のNOの実質的な部分は酸化触媒でNOに酸化される。NOx成分中のNOの増大した部分は、NOが一般的にNOより反応性の種であると考えられるから、より少ない量でNOを含むNOx混合物に比べてNSR触媒の捕捉及び触媒機能を促進する。DOCがSCR触媒の下流に位置する配置の場合、DOCは特にそれが白金族金属成分を含むならば、上述した未燃焼の炭化水素及びCOの燃焼に役立つばかりでなく、未反応のNHが大気へ放出されるのを防止するアンモニア低下酸化触媒としても役立つ。
【0075】
本発明のある具体例において、DOCはすすフィルター、例えば壁流フィルター上にコ−ティングされて、排気ガス流中の粒状物質、特に粒状物質のすす画分(または炭素質画分)の除去に役立つ。DOCは、上述した他の酸化機能に加えて、すす画分がCO及びHOへ酸化される温度を低下させる。触媒コ−ティングは、すすがフィルター上に蓄積されるのでフィルターの再生に役立つ。すすフィルターはSCR触媒の下流に位置してよいけれど、触媒を有するすすフィルターはNSR触媒の上流に位置して、NSR触媒及び下流のSCR触媒の粒状物質による汚れを最小にし、または防止するのが好ましい。
【0076】
次の実施例は本発明を更に例示するが、勿論いずれの具合にも本発明の範囲を限定するものと見なすべきでない。
【実施例1】
【0077】
触媒基材(NSR触媒)の製造
触媒A
基材はコ−ディエライトからなった。底部層は白金75g/0.028m、BaO 0.0256g/ml 、ZrO0.00305g/ml、及びCeO被覆のAlからなる担体0.111g/mlからなった。この担体は初期湿式技術で製造し、CeO10重量%をAlの表面上に配置せしめた。担体材料を、アミン可溶化水酸化白金を含浸させて、所望の装填を達成した。次いで粒子の90%が10ミクロン以下の粒径(即ちd90<10μ)を有して、それにより高固体スラリ−が得られるように、粉末を水の存在下にミル処理した。このミル処理中、水に溶解した酢酸バリウム及び酢酸ジルコニルも添加した。
【0078】
続いて底部層のスラリ−をコ−ディエライト基材上にウォッシュコ−ティングし、次いでコ−ティングした基材を110℃で約1時間乾燥した。続いてこの乾燥したコ−ティン
グ基材を、空気流中、450℃に1時間加熱して焼成した。
【0079】
次いで上層を、底部層の表面にウォッシュコ−ティングし、110℃で約1時間乾燥し、続いて450℃に1時間加熱して焼成した。上層に対するスラリ−を、底部層に対して上述したものと同一の方法で製造した。上層は白金65g/0.028m、ロジウム10g/0.028m、BaO 0.00488g/ml、ZrO0.00183g/ml 、及びCeO被覆のAl(CeO10重量%)からなる担体0.0732g/mlからなった。続いて白金及びロジウム成分を担体材料上に含浸させた。次いで粒子の90%が10ミクロン以下の粒径(即ちd90<10μ)を有して、それにより高固体スラリ−が得られるように、粉末を水の存在下にミル処理した。このミル処理中、水に溶解した酢酸バリウム及び酢酸ジルコニルも添加した。
【0080】
触媒B
触媒Bは次のように製造した2層触媒複合物である。基材はコ−ディエライトであった。底部層は白金75g/0.028m、BaO 0.0256g/ml、ZrO0.00305g/ml、及びTiO被覆のAlからなる担体0.111g/mlからなった。この担体を化学的蒸着法で製造し、TiO10重量%をAlの表面上に堆積せしめた。この担体材料に、アミン可溶化水酸化白金を含浸させて、所望の装填を達成した。次いで粒子の90%が10ミクロン以下の粒径(即ちd90<10μ)を有して、それにより高固体スラリ−が得られるように、粉末を水の存在下にミル処理した。このミル処理中、水に溶解した酢酸バリウム及び酢酸ジルコニルの溶液も添加した。
【0081】
次いで底部層のスラリ−をコ−ディエライト基材上にウォッシュコ−ティングし、次いでコ−ティングした基材を110℃で約1時間乾燥した。この乾燥したコ−ティングした基材を450℃に1時間加熱して焼成した。
【0082】
続いて上層スラリ−を、底部層の表面にウォッシュコ−ティングし、110℃で約1時間乾燥し、次いで450℃に1時間加熱して焼成した。この上層に対するスラリ−を、底部層に対して上述したものと同一の方法で製造した。上層は白金65g/0.028m、ロジウム10g/0.028m、BaO 0.00488g/ml、ZrO0.00183g/ml、及びTiO被覆のAlからなる担体0.072g/mlからなった。続いて白金及びロジウム成分を担体上に含浸させた。次いで粒子の90%が10ミクロン以下の粒径(即ちd90<10μ)を有して、それにより高固体スラリ−が得られるように、粉末を水の存在下にミル処理した。このミル処理中、水に溶解した酢酸バリウム及び酢酸ジルコニルも添加した。
【0083】
触媒C
触媒Cは単層触媒複合物であり、即ち1つの層だけをコ−ディエライト基材上に付着させた。単一層は、触媒Aに対する層で上述したのと同一の方法で製造した。この単一層は白金150g/0.028m、BaO 0.0244g/ml、Fe0.0122g/ml、及びAl担体0.146g/mlからなった。複合物は硝酸鉄、酢酸バリウム及びアミン可溶化水酸化白金を用いて、担体に連続含浸させて製造した。
【0084】
触媒A、B及びCに対する希薄なエ−ジング(aging)条件
触媒の希薄なエ−ジングは、触媒を入口温度700℃で4時間、時間空間速度30,000時−1下に空気/水蒸気(水蒸気10%)流に露呈することにより行った。
【実施例2】
【0085】
NSR触媒として触媒Aを有する放出ガス処理システムに対する性能試験:濃厚な供給物中のCO濃度の関数としての性能
本実施例では、NOx転化、NH及びN生成を、濃厚なパルス(即ち濃厚なガス流)におけるCO濃度の関数として決定した。先ず一連の配置において触媒Aを上流基材として及び下流の基材としてモノリス基材を通流するブランク流を有するシステムを用いてこれらの決定を行った。このシステムはここでは「システムI]と言及する。
【0086】
評価した第2のシステムは、一連の配置において、触媒Aを上流基材として及びSCR触媒Dを下流基材として有し、ここではこれを「システムII」として言及する。SCR触媒Dは、流通モノリス基材上にコ−ティングされたZrO結合剤を4重量%含む鉄交換されたベ−タゼオライト0.109g/mlを有する触媒組成物を含む。
【0087】
性能試験は希薄な期間50秒及び濃厚な期間5秒の、希薄な及び濃厚な供給を交互にして行った。希薄な供給物はO10%、HO 10%、CO5%、及びNO 200ppmからなった。濃厚な供給物は、HC(Cとして)0.8%、O1%、HO10%、CO5%、NO 200ppm、及び交互にCO 0.5、1、2、3または4%からなった。このシステムは、200、250、300、350、及び450℃でGHSV60,000時−1で評価した。性能が一定の温度で安定化したら、10分間データを取った。NO及びNO濃度(及びそれゆえにNOx濃度)及びNH生成を、フ−リエ変換赤外線分光器(FTIR)で決定した。Nの生成は残存窒素種として計算することにより決定した。触媒の下流のNOx濃度をシステムの上流のそれと比較した。NOx濃度の相対的消失、NH及びNの生成をパ−セントで表し、データ捕収期間を通して1/秒で計算した。
【0088】
次いで瞬時のNOx転化率、NH生成及びNの生成を平均し、触媒入口温度に対してプロットし、システムIに対して図2−4及びシステムIIに対して図5−7を得た。図2及び5を比較して分かるように、全NOx転化率は濃厚な供給物が300℃以下の入口温度において2%またはそれ以上のCO含む時、システムIよりもシステムIIに対して高い。両システムI及びIIに対して分かるように、製造されるNHの濃度は濃厚な供給物においてCOの濃度に比例した。システムIIの出口におけるNHの量はいずれの濃厚なCO量においてもシステムIよりはるかに低い(図3及び6)。これは、NSR触媒上で製造されたNHの一部分が下流のSCR触媒で消費されたことを示唆する。図4及び7で示されるように、SCR触媒上でのNHの消費は、生成する更なるNに寄与する。Nの生成だけは真のNOxの還元と考えられる。濃厚なCO濃度が2%より高い場合、システムII上でのNの生成は温度範囲全体にわたってシステムIと比べて非常に高かった。この効果は、排気ガス温度が典型的に低い低荷重のジ−ゼル用途に対して本システムを非常に魅力的にする<300℃の低温において特に明白である。
【実施例3】
【0089】
触媒AをNSR触媒として有する放出ガス処理システムに対する性能試験:濃厚な供給物タイミング(timing)の関数としての性能
本実施例において、NOx転化率、NH及びN生成を、濃厚な供給物タイミング(timing)の関数として決定した。先ずこの決定は、システムI及びシステムIIの両方を用いて行った。システムI及びシステムIIは、実施例2に記述してある。
【0090】
性能試験は希薄な及び濃厚な供給物を交互にして行なった。希薄な供給物はO10%、HO 10%、CO5%、及びNO 200ppmからなった。濃厚な供給物は、HC(Cとして)0.8%、O1%、HO 10%、CO5%、NO200ppm、及びCO 4%からなった。このシステムは、200、250、300、350、及び450℃でGHSV60,000時−1で評価した。この試験において、濃厚なパルス(濃厚な期間)の長さは1、3または5秒であり、一方希薄な期間は常に50秒であった。性能が一定の温度で安定化するや、10分間データを取った。NO及びNO
濃度(及びそれゆえにNOx濃度)及びNH生成をFTIR分光法で決定した。Nの生成は残存窒素種として計算することにより決定した。触媒の下流のNOx濃度を、システムの上流のそれと比較した。NOx濃度の相対的消失、NH及びNの生成をパ−セントで表し、デ−タ捕収期間を通して1/秒で計算した。
【0091】
次いで瞬時のNOx転化率、NH生成及びNの生成を平均し、触媒入口温度に対してプロットした。
【0092】
増大する濃厚なタイミングは、濃厚なパルスCO濃度を増加させることと同様な効果を有する。全NOxの転化率は、システムI及びシステムIIの両方に対して濃厚なタイミングを増加する酢と共に増加する。しかしながら、システムII上でのNOxの転化率は<300℃においてシステムIのそれより高い。システムの出口において生成するNH
間においてより顕著な比較が可能である。システムI上でのNHの生成はすべての濃厚なタイミングにおいてシステムII上でのそれの2倍より多かった(図8及び10参照)。再び、これはシステムIIがSCR反応に対してNHを消費することを示す。これはシステムIIで生成するNがすべての濃厚なタイミングにおいてシステムIのそれよりはるかに高いという事実で明らかである(参照図9及び11)。例えばNの生成は250℃、5秒の濃厚物の場合、システムII上において57%であり、一方システムI上でのそれは同一の条件下に20%にすぎなかった。
【実施例4】
【0093】
触媒AをNSR触媒として有する放出ガス処理システムに対する性能試験:化学量論点附近で濃厚な供給物を用いる性能
本実施例において、NOx転化率、NH及びN生成を、化学量論点附近の濃厚な供給物を用いて決定した。この決定は、実施例2に記述してあるシステムI及びシステムIIの両方を用いて行った。
【0094】
性能試験は希薄な及び濃厚な供給物を、希薄な期間50秒及び濃厚な期間5秒で交互にして行なった。希薄な供給物はO10%、HO 10%、CO5%、及びNO 200ppmからなった。濃厚な供給物は、O1%、HO 10%、CO5%、NO 200ppm、及びCO 2%からなった。濃厚な供給物に対するλは1.0であった(この供給物は、事実定義によれば濃厚で無いが、本実験に使用した希薄な供給物と比べた時だけ濃厚である)。システムは、200、250、300、350、及び450℃、GHSV60,000時−1で評価した。性能が一定の温度で安定化するや、10分間データを取った。NO及びNO濃度(及びそれゆえにNOx濃度)及びNH生成をFTIR分光法で決定した。Nの生成は残存窒素種として計算することにより決定した。触媒の下流のNOx濃度を、システムの上流のそれと比較した。NOx濃度の相対的消失、NH及びNの生成をパ−セントで表わし、データ捕収期間を通して1/秒で計算した。
【0095】
我々は濃厚なパルスにおけるλ値が1.0である時、NHはいずれのシステムでも生成しないことを見出した。結果としてNOx転化率、NH生成又はNの生成において、これら2つのシステムで明白な差はなかった。
【実施例5】
【0096】
NSR触媒に対する性能試験の比較:触媒A、B及びCを用いるNOx転化率及びNH生成
本実施例において、NH生成を、3つのNSR触媒、触媒A、B及びC、間で同一の条件下に比較した。性能試験は希薄な及び濃厚な供給物を、希薄な期間50秒及び濃厚な期間5秒で交互にして行なった。希薄な供給物はO10%、HO 10%、CO
5%、及びNO500ppmからなった。濃厚な供給物は、O1%、HO 10%、CO5%、NO 500ppm、及びCO4%からなった。濃厚な供給物に対するλは約0.94であった。システムは、200、250、300、350、及び450℃でGHSV30,000時−1で評価した。性能が一定の温度で安定化するや、10分間データを取った。NO及びNO濃度(及びそれゆえにNOx濃度)及びNH生成をフ−リエ変換赤外分光法(FTIR)で決定した。触媒の下流のNOx濃度を、システムの上流のそれと比較した。NOx濃度の相対的消失、NH及びNの生成をパ−セントで表し、データ捕収期間を通して1/秒で計算した。
【0097】
次いで瞬時のNH生成を平均し、触媒入口温度に対してプロットし、図12のグラフを得た。図から分かるように、NH生成は300℃以下の温度において触媒Cに対してより高く、触媒Bは>300℃においてより多くのNHを生成した。触媒Aは250℃を中心とする最低量のNH生成を示した。触媒A中に存在する酸素貯蔵成分は、触媒Bと比べて高温におけるNHの生成を減少させるようである。恐らく、酸素貯蔵成分は高温で反応性になり、生成したNHをNO及び多分他のN含有種へ酸化する。触媒Cに存在する鉄酸化物成分は、NH生成を促進することも明らかである。
【0098】
本発明を好適な具体例で強調して記述してきたが、普通の同業者には、この好適な装置及び方法に対してその変形が使用できること、及び本発明が本明細書で特に記述したもの以外でも実施できることが意図されていることが明白であろう。したがって本発明は特許請求の範囲で定義されるごとき本発明の精神及び範囲内に網羅されるすべての改変を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1A】NSR及びSCR触媒を有する放出ガス処理システムの1つの具体例を示すブロック図。
【図1B】DOC、NSR及びSCR触媒を有する放出ガス処理システムの1つの具体例を示すブロック図。
【図2】システムIにおける、濃厚なパルス中のCO濃度の関数としての全NOx転化率。
【図3】システムIにおける、濃厚なパルス中のCO濃度の関数としてのNH生成。
【図4】システムIにおける、濃厚なパルス中のCO濃度の関数としてのN生成。
【図5】システムIIにおける、濃厚なパルス中のCO濃度の関数としての全NOx転化率。
【図6】システムIIにおける、濃厚なパルス中のCO濃度の関数としてのNH生成。
【図7】システムIIにおける、濃厚なパルス中のCO濃度の関数としてのN生成。
【図8】システムIにおける、濃厚なタイミングの関数としてのNH生成。
【図9】システムIにおける、濃厚なタイミングの関数としてのN生成。
【図10】システムIIにおける、濃厚なタイミングの関数としてのNH生成。
【図11】システムIIにおける、濃厚なタイミングの関数としてのN生成。
【図12】3種のNSR触媒、触媒A、B、及びC、上におけるNH生成。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx吸収剤を少なくとも0.0061g/ml(0.1g/in)の濃度で且つ白金族金属成分を耐火性金属酸化物担体上に分散させて含んでなるNOx貯蔵還元(NSR)触媒,及び
該NSR触媒の下流に配置されたSCR触媒、
を含んでなり、但し該NSR触媒がセリウム及びプラセオジムの酸化物1つまたはそれ以上からの酸素貯蔵成分およびロジウムおよび鉄から選択されるアンモニア形成を促進する成分を更に含んでなり、酸素貯蔵成分が0.0305g/ml(0.5g/in)未満であり、排気ガス流のための放出ガス処理システム。
【請求項2】
NSR触媒の白金族金属成分が白金、パラジウム、ロジウム成分及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項3】
酸素貯蔵成分がセリアである、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項4】
NOx吸収剤がリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン、及びネオジムの酸化物から選択される少なくとも1つの金属酸化物である、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項5】
SCR触媒がゼオライト成分、V、WO及びTiOからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含んでなる、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項6】
SCR触媒が鉄及び銅からなる群から選択されたイオンでイオン交換されたゼオライトを含んでなる、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項7】
NSR触媒成分が基材上に配置された少なくとも2つの触媒層を含んでなる、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項8】
NSR触媒成分が基材上に堆積された単一の触媒層である、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項9】
上流ジ−ゼル酸化触媒をNSR触媒の上流に及び/または下流酸化触媒をSCR触媒の下流に更に含んでなる、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項10】
すすフィルターがNSRの上流にまたはNSR触媒とSCR触媒の間に配置されている、請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項11】
NSR触媒及びSCR触媒の少なくとも1つがすすフィルター上に配置されている請求項1の放出ガス処理システム。
【請求項12】
上流ジ−ゼル酸化触媒がNSR触媒の上流のすすフィルター上に配置され及び/または下流酸化触媒がSCR触媒の下流のすすフィルター上に配置されている、請求項11の放出ガス処理システム。
【請求項13】
すすフィルターが入口端、出口端、及び入口端から出口端まで延び且つ開放された入口と閉鎖された出口を有する入口チャンネル及び開放された出口と閉鎖された入口を有する出口チャンネルを含んでなる交互のチャンネルを持つ入口チャンネル側及び出口チャンネル側を含んでなる複数の通路を規定する内壁を含んでなる壁流フィルターであり、こゝでNSR触媒が入口チャンネル側に配置され、SCR触媒が出口チャンネル側に配置され、
且つNSR触媒が開放された入口から閉鎖された出口へ向かう距離の少なくとも一部分に対して入口端から延び、そしてSCR触媒が開放された出口から閉鎖された出口へ向かう距離の少なくとも一部分に対して出口端から延びる、請求項12の放出ガス処理システム。
【請求項14】
(a)NOxを含んでなる排気ガスを、白金族金属成分及びアルカリ土類金属酸化物からなる群から選択される少なくとも0.0061g/ml(0.1g/in)のNOx吸収剤を耐火性金属酸化物担体上に分散させて含んでなるNOx貯蔵還元(NSR)触媒と可燃性成分の希薄な期間接触させて、排気ガスからのNOxの一部をアルカリ土類金属硝酸塩の形で吸収させ、そしてこのNOxの一部を未処理のNSR触媒中に流通させ、
(b)排気ガス流の空気/燃料比を周期的に変えて可燃性成分の濃厚な期間中可燃性成分の濃厚なガス流を供給し、
(c)この可燃性成分の濃厚なガス流をNSR触媒と接触させて、吸収されたNOxをNHへ還元し、そして
(d)続いてこのNHと排気ガス中の未処理のNOxの混合物をSCR触媒と接触させてNを生成させ、但し該NSR及びSCRの少なくとも1つがセリウム及びプラセオジムの酸化物1つまたはそれ以上からの酸素貯蔵成分を更に含んでなり、酸素貯蔵成分が0.0305g/ml(0.5g/in)未満であり、ロジウムおよび鉄から選択されるアンモニア形成を促進する成分を含んでなる、
ジ−ゼルエンジンまたは可燃性成分の希薄な燃焼のガソリンエンジンからの排気ガス中のNOxをNへ転化する方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−39566(P2013−39566A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204800(P2012−204800)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2006−538478(P2006−538478)の分割
【原出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(308009565)バスフ・カタリスツ・エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】