説明

O/W型エマルジョン

【課題】
本発明の目的は、皮膚上に保水膜を形成することによって水分を保持し、さらには水分の蒸発を防ぐ働きがあり、角質の水分量を保ち、みずみずしい皮膚が得られ、また、柔軟効果も期待でき、皮膚につけるとしっとりとなめらかな感触で、さっぱりした使用感が得られ、ハンドクリームに最適なO/W型エマルジョンを得ることにある。
【解決手段】
メドウフォーム油、高級アルコール、ワセリン、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルを含む油相と、トリメチルグリシン、水溶性高分子、多価アルコールを含む水相をリン脂質を含む乳化剤で乳化したO/W型エマルジョン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚上に保水膜を形成することによって水分を保持し、さらには水分の蒸発を防ぐ働きがあり、角質の水分量を保ち、みずみずしい皮膚が得られ、また、柔軟効果も期待でき、皮膚につけるとしっとりとなめらかな感触で、さっぱりした使用感が得られる、ハンドクリームに最適なO/W型エマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に適用されるエマルジョンの基本的に求められる効果は、角質の水分量を保ち、みずみずしい皮膚が得られ、皮膚につけるとしっとりとなめらかな感触で、なお且つさっぱりした使用感のあるエマルジョンが求められています。
保湿性を高くするために、グリセリンをはじめとする多価アルコールが用いられますが、多価アルコールを主としてこの保湿性向上のために用いると、べたべたした使用感の製剤しか得られない。勿論油相の成分を種々選択して、適度に皮膚上を閉塞し、水分量を保つ工夫がなされている。
しかしながら、角質の水分量を充分に保ち、しっとりとうるおいがありながら、使い心地は、さっぱりとした使用感のあるクリームはなかなか得られていない。
【0003】
【特許文献1】特開2011−093835号公報
【特許文献2】特開2011−111402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は角質の水分量を保ち、みずみずしい皮膚を得、皮膚につけるとしっとりとなめらかな感触で、なお且つ、さっぱりした使用感のある皮膚外用剤用のエマルジョンを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、メドウフォーム油、高級アルコール、ワセリン、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルを含む油相と、トリメチルグリシン、水溶性高分子、多価アルコールを含む水相をリン脂質を含む乳化剤で乳化したO/W型エマルジョンが本発明の目的を達成することがわかった。
【0006】
メドウフォーム油は、リムナテンス科植物メドウフォーム(Limnanthes alba)の種子から抽出される油で、エイコセン酸約60%、エルカ酸約15%と長鎖脂肪酸で構成されたトリグリセリドを主成分とする油である。
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、べへニルアルコールなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。セチルアルコール、ステアリルアルコール、べへニルアルコールを用いることが好ましい。
ワセリンは、石油から得た炭化水素類の混合物を脱色して精製したもので、本発明では、凝固点が38〜60℃で、稠度が140〜200のものを用いるのが好ましい。
【0007】
油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルについて記載すると、まず長鎖アシル基としては炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基で例えばラウリン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸等の単一組成の脂肪酸によるアシル基の他に、ヤシ油脂肪酸,牛脂脂肪酸,硬化牛脂脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸あるいは合成により得られる脂肪酸(分枝脂肪酸を含む)のアシル基であってもよい。
酸性アミノ酸としてはアスパラギン酸、グルタミン酸から選ばれる。
これにエステル結合するアルコールは、炭素数8〜30の飽和、不飽和、分岐の脂肪族アルコール類、コレステロール、ラノステロール、スティグマステロールおよびこれらの水添物およびこれらの配合物などのコレステロール類が例示でき、これらの単独または混合物のモノ或いはジエステルあるいはその混合物が利用される。
実際にはN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベへニル・オクチルドデシル)が本発明に用いるのに市販もされており、物性的にも利用価値が高い。
【0008】
このほかにも以下に例示するような、油脂、油溶性有効成分等を必要に応じて配合する。
アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、牛脂脂肪酸、サフラワー油、シア脂、大豆油、ツバキ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、スクワレン、スクワラン、プリスタン、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックス、これらの水素添加物等の各種油脂類、ロウ類。
パラフィン、セレシン、マイクロクリスタンワックス、オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、プリスタン、水添ポリブテン、水添ポリデセン、重質流動イソパラフィン等の鉱物油。
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類。
ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール等のエステル類。
。 さらに、ビタミンA油、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート、リボフラビン、ビタミンCジパルミテート、エルゴカルシフェロール、ビタミンE、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート等の油溶性ビタミン類。
パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t一ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸などの紫外線吸収剤。
ユーカリ油、ノバラ油、アルモアズ油、ローマカミツレ油、ウイキョウ油、ハッカ油、ベルガモット油、ペパーミント油、スペアミント油、バジル油、タイム油、ローレルリーフ油、油溶性甘草等のの植物の油溶性成分。
ベータカロチン、アスタキサンチン、コレステロール、フィトステロール、セラミド、グアイアズレン、ニコチン酸ベンジル、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等。
【0009】
メドウフォーム油、高級アルコール、ワセリン、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルの配合量や配合バランスについては、これらの原料の種類やこれ以外の原料の種類や量、製剤の使用目的によって変化するが、基本的には以下の範囲が好ましい。
まず、油相全体の割合であるが、組成物全体に対しての割合が10〜30%になるように配合する。
次に、油相に占める割合で、メドウフォーム油が30〜70%、高級アルコールが15〜30%、ワセリンが6〜15%、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルが3〜10%になるように配合することが、本発明の主旨に合致することも本発明者らの検討によってわかった。
【0010】
次に水相であるが、まずトリメチルグリシンであるが、トリメチルグリシンは、野菜、キノコなどの食物に含まれ、特にテンサイ (甜菜) に多量に含まれるグリシンの窒素が四級アンモニウムの形までメチル化した構造を持つ有機化合物である。
トリメチルグリシンの配合量は0.5〜20.0%が好ましい。
次に、多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、1,2ペンタンジオール、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、イソペンチルジオール、エチルヘキサンジオール、オゾン化グリセリン、カプリリルグリコール、グリコール、ジエチレングリコール、ジチアオクタンジオール、、チオグリセリン、1,10−デカンジオール、デシレングリコール、トリエチレングリコール、チリメチルギドロキシメチルシクロヘキサノール、フィタントリオール、フェノキシプロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ヘキシレングリコール、メチルプロパンジオール、メンタンジオール、ラウリルグリコール、イノシトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール等が挙がられる。
多価アルコールの配合量はその種類等によって大きく異なるが、1.0〜30.0%が好ましい。
【0011】
水溶性高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸カルシウム、カルボキシビニルポリマー、エチレン/アクリル酸共重合体、ビニルピロリドン系ポリマー、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体、窒素置換アクリルアミド系ポリマー、ポリアクリルアミド、カチオン化ガーガムなどのカチオン系ポリマー、ジメチルアクリルアンモニウム系ポリマー、アクリル酸メタクリル酸アクリル共重合体、POE/POP共重合体、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、コラーゲン、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、ガーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン、セルロース、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、高重合度ポリエチレングリコール、カチオン化シリコーン重合体等が挙げられる。
水溶性高分子の配合量はその種類等によって大きく異なるが、0.1〜10.0%が好ましい。
【0012】
このほかにも水溶性成分、水溶性有効成分等を必要に応じて配合する。
これら、油相、水相を乳化剤で乳化するが、リン脂質を用いる。
リン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミンなどが挙げられ、また、これらのものを含有する組成物、すなわち、大豆レシチン、卵黄レシチン、コーンレシチンやこれらの水素添加物なども挙げることができる。
リン脂質の配合量はリン脂質の種類や製剤の目的、他の原料、特に油相のの種類や配合量によって変化するが、0.01〜10%が好ましい。
勿論、これ以外の乳化剤を配合することはなんら問題はない。
【0013】
さらに式(1)の共重合体を配合すると効果が増大される。このなかでも特に好ましいのはmが20〜200、nが30〜500、Rの炭素数が12〜20である。
【0014】
【化2】

【0015】
製造方法は特段限定されることはなく、常用される方法で行えばよく、以下に例示する。
必要に応じて加温溶解し、撹拌を加えながら油相と水相と乳化剤を混合し、加温した場合は冷却し、室温にする。
混合は、乳化剤の種類や量、また、製剤の使用目的等によってホモミキサー,コロイドミル,ホモジナイザー,プロペラ型ミキサーの乳化機を使用して行う。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を記載する。なお、実施例の数字は重量部である。
なお、製造方法は油相と、水相に乳化剤を加えたものをそれぞれ、80℃まで加温し、ホモミキサーで撹拌しながら、水相に乳化剤を加えたものに油相を徐々に加えた。これを35℃までゆっくり撹拌しながら冷却した。
【0017】
実施例1
メドウフォーム油 10.0
ワセリン 2.5
ステアリルアルコール 2.0
セチルアルコール 2.0
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリ 1.5
ル・ベへニル・オクチルドデシル)

水添リン脂質 1.0

水 69.3
トリメチルグリシン 2.0
ヒアルロン酸 0.5
グリセリン 2.0
1,3ブチレングリコール 5.0
1,2ペンタンジオール 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【0018】
実施例2
メドウフォーム油 8.5
ワセリン 2.0
ステアリルアルコール 2.0
ベへニルアルコール 2.5
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステ 1.0
リル・2−オクチルドデシル)
スクワラン 7.5
パラフィンワックス135゜F 3.5

モノミリスチン酸ポリグリセリン(グリセリンの 0.5
平均重合度が8)
水添リン脂質 0.5

水 56.1
トリメチルグリシン 10.0
キサンタンガム 0.5
カルボキシビニルポリマー(1%水溶液pH7.0中和)1.0
ポリアクリル酸アミド 0.2
ヒアルロン酸 1.0
ジプロピレングリコール 1.0
1,3ブチレングリコール 1.0
1,2ペンタンジオール 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【0019】
実施例3
メドウフォーム油 7.8
ワセリン 1.0
ステアリルアルコール 1.0
ベへニルアルコール 1.0
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリ 0.5
ル・ベへニル・オクチルドデシル)
N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステ 0.7
リル・2−オクチルドデシル)
ビタミンE 0.5
ビタミンA油 0.5

ポリオキシエチレン(7E.O.)ラウリルエーテル 0.2
水添リン脂質 0.2
水添リゾリン脂質 0.2

水 71.4
トリメチルグリシン 5.0
キサンタンガム 0.5
カルボキシビニルポリマー(1%水溶液pH7.0中和)1.0
ポリアクリル酸アミド 0.2
ヒアルロン酸 0.1
グリセリン 2.0
1,3ブチレングリコール 2.0
1,2ペンタンジオール 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
式(2)の共重合体 1.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
1.0%加水分解コンキオリン水溶液 0.5
【0020】
【化3】

【0021】
実施例1〜3を1ヵ月間使用してみたところ、角質の水分量は増加し、使用感もしっとりとなめらかな感触で、さっぱりした使用感であるとの評価が多く、従来のエマルジョンにははない有効性と使用感が得られ、本発明の課題が解決されていることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メドウフォーム油、高級アルコール、ワセリン、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルを含む油相と、トリメチルグリシン、水溶性高分子、多価アルコールを含む水相をリン脂質を含む乳化剤で乳化したO/W型エマルジョン
【請求項2】
水溶性高分子が、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、ヒアルロン酸から選ばれる1種以上である請求項1のO/W型エマルジョン
【請求項3】
油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルが、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・2−オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベへニル・オクチルドデシル)から選択される1種以上である請求項1乃至請求項2のO/W型エマルジョン
【請求項4】
油相に占める割合が、メドウフォーム油が30〜70%、高級アルコールが15〜30%、ワセリンが6〜15%、油溶性N−長鎖アシル酸性アミノ酸エステルが3〜10%、油相が組成物全体に対しての割合がO/W型エマルジョンの10〜30%である請求項1乃至請求項3のO/W型エマルジョン
【請求項5】
さらに式(1)の共重合体を配合した請求項1乃至請求項4のO/W型エマルジョン
【化1】

【請求項6】
請求項1乃至請求項5のハンドクリーム用O/W型エマルジョン

【公開番号】特開2013−6790(P2013−6790A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140198(P2011−140198)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】