説明

P38のインヒビターとしてのピリジン誘導体

【課題】細胞増殖、細胞死および細胞外刺激に対する応答に関与する哺乳動物プロテインキナーゼであるP38のインヒビターとしてのピリジン誘導体の提供。
【解決手段】下記10に代表される化合物をインヒビターとする薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、細胞増殖、細胞死および細胞外刺激に対する応答に関する哺乳動物のプロテインキナーゼであるp38のインヒビターに関する。本発明はまた、これらのインヒビターの産生方法に関する。本発明はまた、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物ならびにこれらの組成物を種々の障害の処置および予防に用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
プロテインキナーゼは、細胞外シグナルに対する種々細胞応答に関する。最近、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のファミリーが発見された。このファミリーのメンバーは、これらの基質をリン酸化により活性化するSer/Thrキナーゼである(B.Steinら、Ann.Rep.Med.Chem.、31、289−98(1996))。MAPKは、自身を種々のシグナル(増殖因子、サイトカイン、UV照射およびストレス誘導因子が挙げられる)により、活性化する。
【0003】
特に興味を持たれるMAPKは、p38である。p38は、サイトカイン抑制性抗炎症薬結合タンパク質(CSBP)およびRKとしても公知である。p38は、リポ多糖(LPS)レセプター(CD14)でトランスフェクトされ、LPSで誘導されたマウスpre−B細胞から単離された。その後p38は、ヒトおよびマウスにおいてp38をコードするcDNAとして、単離および配列決定された。活性化p38は、ストレスによる刺激(例えば、リポ多糖(LPS)、UV、アニソマイシンまたは浸透圧衝撃の処理)およびサイトカインによる刺激(例えば、IL−1およびTNF)をうけた細胞において観察された。
【0004】
p38キナーゼの阻害は、IL−1およびTNFの両方の産生の遮断をもたらす。IL−1およびTNFは、他の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL−6およびIL−8)の産生を刺激し、急性および慢性の炎症性疾患ならびに閉経後骨粗鬆症に関する(R.B.Kimbleら、Endocrinol.、136、3054−61(1995))。
【0005】
この知見に基づき、p38は、他のMAPKと同様に、炎症性刺激(例えば、白血球集積、マクロファージ/単球活性化、組織再吸収、熱、急性期応答および好中球増加症)に対する細胞応答を媒介する役割を有すると考えられる。さらに、MAPK(例えば、p38)は、癌、トロンビン誘導性血小板凝集、免疫不全障害、自己免疫疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症および神経変性障害に関する。p38のインヒビターはまた、プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ−2の誘導の阻害を介する疼痛管理の領域に関する。IL−1、IL−6、IL−8またはTNFの過剰発現に関する他の疾患は、WO96/21654に示される。
【0006】
当業者は、既に、MAPKを特異的に阻害する薬物開発の試みを始めている。例えば、PCT国際公開WO95/31451は、MAPK(特に、p38)を阻害するピラゾール化合物を記載している。しかし、これらのインヒビターのインビボでの有効性は、なお調査中である。
【0007】
WO98/27098、WO99/00357、WO99/10291、WO99/58502、WO99/64400、WO00/17175およびWO00/17204に記載されるものを含む、他のp38インヒビターが産生されている。
【0008】
従って、p38の他の強力なインヒビター(p38特異的インヒビターを含む)を開発するべき必要性がなおもおおいに存在し、これらは、p38活性化に関する種々の状態を処置するのに有用である。
【0009】
細胞外シグナルに対する細胞応答に関する別のプロテインキナーゼは、ZAP70である。T細胞中のT細胞レセプター(TCR)が、抗原結合によりトリガーされた場合、次にこれは、ZAP70を活性化する。ZAP70は、TCRを、T細胞分化および増殖に必要な多くの必須シグナル伝達経路に共役するよう作用する。
【0010】
ZAP70の所定の役割は、T細胞シグナル伝達なので、ZAP70は、T細胞媒介性疾患における役割を有し得る。このような疾患は、以下が挙げられるが、これらに限定されない:移植、自己免疫疾患(例えば、RA、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺炎、肺線維症、閉塞性細気管支炎、溶血性貧血およびヴェーゲナー肉芽腫症、癌(白血病およびリンパ腫を含む)、多発性硬化症、対宿主性移植片病および川崎病。
【0011】
従って、ZAP70活性化に関する種々の状態を処置するの有用な、ZAPのインヒビターを開発すべき大いなる必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、p38および/またはZAP70の阻害を示す化合物を提供することにより、この問題に取り組む。
【0013】
これらの化合物は、以下:
【0014】
【化18】

の一般式を有し、ここでQおよびQのそれぞれは、フェニルまたは5〜6員環の複素環式芳香族または8〜10員環の二環式(炭素環式芳香族、複素環式芳香族、または炭素環式芳香族および複素環式芳香族の組み合わせを含む)から別個に選択される。
【0015】
複素環式または複素環は、1〜4のヘテロ原子を含み、これらは、N、O、S、SOおよびSOから別個に選択される。
【0016】
を構成する環は、1〜4の置換基で置換され、これらのそれぞれは、以下から別個に選択される:ハロ;必要に応じてNR’、OR’、COR’またはCONR’で置換されるC−Cアルキル;必要に応じてNR’、OR’、COR’またはCONR’で置換されるO−(C−C)−アルキル;NR’;OCF;CF;NO;COR’;CONR’;SR’;S(O)N(R’);SCF;CN;N(R’)C(O)R;N(R’)C(O)OR;N(R’)C(O)C(O)R;N(R’)S(O)R;N(R’)R;N(R;OR;OC(O)R;OP(O);またはN=C−N(R’)
【0017】
を構成する環は、必要に応じて、4つまでの置換基で置換され、このそれぞれは、以下から別個に選択される:ハロゲン;必要に応じてR’、NR’、OR’、COR’、S(O)N(R’)、N=C−N(R’)、R、O−P(O)HまたはCONR’で置換されるC−C直鎖または分枝アルキル;O−(C−C)−アルキル;必要に応じてNR’、OR’、COR’、S(O)N(R’)、N=CR’−N(R’)、R、OP(O)H、またはCONR’で置換されるO−(C−C)−アルキル;NR’;OCF;CF;NO;COR’;CONR’;R;OR;NR;SR;C(O)R;C(O)N(R’)R;C(O)OR;SR’;S(O)N(R’);SCF;N=CR’−N(R’);OR;O−CO;N(R’)C(O)R;N(R’)C(O)OR;N(R’)C(O)C(O)R;N(R’)S(O)R;N(R’)R;N(R;OR;OC(O)R;OP(O);K;またはCN。
【0018】
各R’は、別個に以下から選択される;水素;(C−C)−アルキル;(C−C)−アルケニルまたはアルキニル;フェニルまたは以下から選択される1〜3の置換基で別個に置換されたフェニル:ハロ、メトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、メチルまたはエチル;または必要に応じて、以下から選択される1〜3の置換基で別個に置換された複素環式5〜6員の複素環環:ハロ、メトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、メチルまたはエチル。
【0019】
各Rは、別個に以下から選択される:−R、−N(R、−OR、SR、−C(O)−N(R)2、−S(O)−N(R、−C(O)−ORまたは−C(O)R。ここで2つの隣接するRは、必要に応じて、もうひとつに結合し、これらがそれぞれ結合する各Yと共に、4〜8員環の炭素環または複素環を形成する。
【0020】
各Rは、別個に以下から選択される;水素;または(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニル、それぞれ必要に応じて以下で置換されたもの:−N(R’)、−OR’、SR’、−O−C(O)−N(R’)、−C(O)−N(R’)、−S(O)−N(R’)、−C(O)−OR’、−NSO、−NSO、−C(O)N(R’)(R)、−NC(O)R、−N(R’)(R)、−N(R’)(R)、−C(O)R、−C(O)N(R’)(R)、−N(R、−C(O)N=C(NH)またはR
【0021】
各Rは、別個に以下から選択される;5〜8員環芳香族または非芳香族炭素環または複素環式、それぞれ必要に応じて、以下で置換されたもの:R’、R、−C(O)R’、−C(O)R、−C(O)ORまたは−K;または以下を含む8〜10員環の二環式:炭素環式芳香族、複素環式芳香族、または必要に応じて以下で置換された炭素環式芳香族と複素環式芳香族の組み合わせ:R’、R、−C(O)R’、−C(O)R、−C(O)ORまたは−K。
【0022】
各Rは、別個に以下から選択される;R’;必要に応じて以下で置換された(C−C)−直鎖または分枝アルキル:R’、N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、SON(R’)またはSON(R;または必要に応じて以下で置換された5−6員環の炭素環もしくは複素環式:N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、SON(R’)またはSON(R
【0023】
各Rは、別個に以下から選択される;水素;または(C−C)−アルキルまたは(C−C)−アルケニル、それぞれ必要に応じて以下で置換されたもの:−N(R’)、−OR’、SR’、−C(O)N(R’)、−S(0)−N(R’)、−C(O)−OR’、−N−S(O)(R’)、−NSO、−C(O)N(R’)(R)、−NC(O)R’、−N(R’)(R)、−C(O)R、−C(O)N=C(NH)またはR
【0024】
各Rは、別個に以下から選択される;5〜8員環芳香族または非芳香族炭素環または複素環式、それぞれ必要に応じて、以下で置換されたもの:R’、−C(O)R’、または−C(O)OR’;または以下を含む8〜10員環の二環式:炭素環式芳香族、複素環式芳香族、または必要に応じて以下で置換された炭素環式芳香族と複素環式芳香族の組み合わせ:R’、−C(O)R’、または−C(O)OR’。
【0025】
は、以下から選択される:H、ハロゲンまたは(C−C)直鎖アルキルもしくは分枝鎖アルキル。
【0026】
各Yは、別個に以下から選択される:NまたはC。いずれかのYがNである場合、Yに結合するRまたはUは、孤立電子対である。
【0027】
Zは、CH、N、C(OCH)、C(CH)、C(NH)、C(OH)またはC(F)である。
【0028】
各Uは、別個にRまたはJから選択される。
【0029】
各Jは、別個に、Tで置換された(C−C)直鎖または分枝鎖アルキル誘導体から選択される。
【0030】
各Tは、O(V)またはN(H)(V)のいずれかから別個に選択される。
【0031】
各Vは、別個にC(O)N=C(R)(N(R))から選択され、ここで窒素上の2つのジェミナルRは、必要に応じて互いに結合して、4−8員環の炭素環または複素環を形成する。
【0032】
2つのR成分が環を形成する場合、各融合していないRから末端ハロゲンが失われることは、当業者にとって明白なことである。例えば、環構造がこれら2つのR成分(1つは、−CHであり、他方は、−CH−CHである)を共に結合することによって形成される場合、各R成分上の1つの末端水素(太字で示される)が失われる。それ故、環構造の生じる部分は、式−CH−CH−CH−である。
【0033】
各Kは、別個に以下から選択される:Dまたは−OP(O)(OH)で置換された(C−C)直鎖または分枝鎖アルキル誘導体。
【0034】
各Dは、以下のエナンチオマーから別個に選択される:
【0035】
【化19】


【0036】
各Mは、OまたはNHのいずれかから選択される。
【0037】
各Gは、NH、OHまたはHから別個に選択される。
【0038】
各Rは、以下から別個に選択される:H,OH、C(O)OH、またはN(R’)、OR’、COR’、CON(R’)もしくはSON(Rで必要に応じて置換された(C−C)直鎖アルキルまたは分枝鎖アルキル;または5−6員環の炭素環、必要に応じて以下で置換される複素環またはヘテロアリル環式:N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)またはSON(R。Gが、Rと環を形成する場合、融合していないGおよびR成分から末端水素が失われることは、当業者に明白である。例えば、環構造は、GおよびR成分をとも(1つは、−NHであり、他方は、−CH−CH−CH−CHである)に結合することによって形成される場合、各R成分上の1つの末端水素基(太字で示す)が失われる。それ故、環構造の生じる部分は、式−HN−CH−CH−CH−CH−である。
【0039】
別の実施形態において、本発明は、本発明のp38および/またはZAP70のインヒビターを含む薬学的組成物を提供する。これらの組成物は、p38媒介性の種々の障害(例えば、癌、炎症性疾患、自己免疫疾患、崩壊性骨障害、増殖性障害、感染疾患、ウイルス性疾患および神経変性疾患)またはZAP−70媒介性障害(移植、自己免疫疾患、癌、多発性硬化症、対宿主性移植片病および川崎病を含む)を処置または予防する方法に利用され得る。これらの組成物はまた、細胞死および過形成を予防する方法に有用であり、従って、発作、心臓発作および器官の低酸素症における再灌流/虚血を処置または予防するのに有用であり得る。この組成物はまた、トロンビン誘導性血小板凝集を予防する方法に有用である。これら上記の方法のそれぞれもまた、本発明の一部である。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1) 以下の式:
【化1】


の化合物であって、
式中、QおよびQの各々は、フェニルもしくは5〜6員の芳香族複素環式環系、または芳香族炭素環式環、芳香族複素環式環もしくは芳香族炭素環式環と芳香族複素環式環との組合せを含む8〜10員の二環式環系から独立して選択され;
式中、Qを構成する環は、1〜4つの置換基で置換され、該置換基の各々は、ハロ;NR’、OR’、COR’、またはCONR’で必要に応じて置換されたC〜Cアルキル;NR’、OR’、COR’、またはCONR’で必要に応じて置換されたO−(C〜C)−アルキル;NR’;OCF;CF;NO;COR’;CONR’;SR’;S(O)N(R’);SCF;CN;N(R’)C(O)R;N(R’)C(O)OR;N(R’)C(O)C(O)R;N(R’)S(O)R;N(R’)R;N(R;OR;OC(O)R;OP(O);またはN=C−N(R’)から独立して選択され;
式中、Qを構成する環は、4つまでの置換基で必要に応じて置換され、該値環基の各々は、ハロゲン;R’、NR’、OR’、COR’、S(O)N(R’)、N=C−N(R’)、R、O−P(O)H、またはCONR’で必要に応じて置換された直鎖または分枝のC〜Cアルキル;O−(C〜C−アルキル;NR’、OR’、COR’、S(O)N(R’)、N=CR’−N(R’)、R、OP(O)H、またはCONR’で必要に応じて置換されたO−(C〜C)−アルキル;NR’;OCF;CF;NO;COR’;CONR’;R;OR;NR;SR;C(O)R;C(O)N(R’)R;C(O)OR;SR’;S(O)N(R’);SCF;N=CR’−N(R’);OR;O−CO;N(R’)C(O)R;N(R’)C(O)OR;N(R’)C(O)C(O)R;N(R’)S(O)R;N(R’)R;N(R;OR;OC(O)R;OP(O);K;またはCNから独立して選択され;
式中、各R’は、水素;(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニルまたはアルキニル;フェニル、またはハロ、メトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、メチルもしくはエチルから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されたフェニル;あるいはハロ、メトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、メチルもしくはエチルから独立して選択される1〜3つの置換基で必要に応じて置換された5〜6員の複素環式環系、から独立して選択され;
式中、各Rは、水素、−R、−N(R、−OR、SR、−C(O)−N(R、−S(O)−N(R、−C(O)−ORまたは−C(O)Rから独立して選択され、ここで2つの隣接したRは、必要に応じて互いに結合し、そしてRがそれぞれ結合している各Yと共に4〜8員の炭素環式環または複素環式環を形成し;
式中、各Rは、水素;または(C〜C)−アルキルもしくは(C〜C)−アルケニル(それぞれが、−N(R’)、−OR’、SR’、−O−C(O)−N(R’)、−C(O)−N(R’)、−S(O)−N(R’)、−C(O)−OR’、−NSO、−NSO、−C(O)N(R’)(R)、−NC(O)R、−N(R’)(R)、−N(R’)(R)、−C(O)R、−C(O)N(R’)(R)、−N(R、−C(O)N=C(NH)またはRで必要に応じて置換される)、から独立して選択され;
式中、各Rは、5〜8員の芳香族もしくは非芳香族の炭素環式環系もしくは複素環式環系(それぞれが、R’、R、−C(O)R’、−C(O)R、−C(O)ORまたは−Kで必要に応じて置換される);または芳香族炭素環式環、芳香族複素環式環、もしくは芳香族炭素環式環と芳香族複素環式環の組合せを含む8〜10員の二環式環系(それぞれがR’、R、−C(O)R’、−C(O)R、−C(O)ORまたは−Kで必要に応じて置換される)、から独立して選択され;
式中、各Rは、R’;R’、N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、SON(R’)もしくはSON(Rで必要に応じて置換された、(C〜C)−直鎖アルキルもしくは(C〜C)−分枝アルキル;またはN(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、SON(R’)またはSON(Rで必要に応じて置換された、5〜6員の炭素環式環系もしくは複素環式環系、から独立して選択され;
式中、各Rは、水素、(C〜C)−アルキル、または(C〜C)−アルケニルから独立して選択され;それぞれが、−N(R’)、−OR’、SR’、−C(O)N(R’)、−S(O)−N(R’)、−C(O)−OR’、−N−S(O)(R’)、−NSO、−C(O)N(R’)(R)、−NC(O)R’,−N(R’)(R)、−C(O)R、−C(O)N=C(NH)もしくはRで必要に応じて置換され;
式中、各Rは、それぞれがR’、−C(O)R’もしくは−C(O)OR’で必要に応じて置換される、5〜8員の芳香族もしくは非芳香族の炭素環式環系もしくは複素環式環系;またはそれぞれがR’、−C(O)R’もしくは−C(O)OR’で必要に応じて置換される、芳香族炭素環式環、芳香族複素環式環もしくは芳香族炭素環式環と芳香族複素環式環との組合せを含む、8〜10員の二環式環系、から独立して選択され;
式中、Rは、H、ハロゲン、または(C〜C)直鎖アルキルまたは分枝アルキルから選択され;
式中、各Yは、NまたはCから独立して選択され、いずれかのYがNである場合、Yに結合しているRもしくはUが孤立電子対であり;
式中、Zは、CH、N、C(OCH)、C(CH)、C(NH)、C(OH)またはC(F)であり;
式中、各Uは、RまたはJから独立して選択され;
式中、各Jは、Tで置換された(C〜C)直鎖もしくは分枝アルキル誘導体から独立して選択され;
式中、各Tは、O(V)またはN(H)(V)のいずれかから独立して選択され;
式中、各Vは、C(O)N=C(R)(N(R))から独立して選択され、ここで窒素上の2つのジェミナルRは、必要に応じて互いに結合して4〜8員の炭素環式環もしくは複素環式環を形成し;
式中、各Kは、Dまたは−OP(O)(OH)で置換された(C〜C)直鎖または分枝アルキル誘導体から独立して選択され;
式中、各Dは、
【化2】


のいずれかの鏡像体から独立して選択され;
式中、各Mは、OまたはNHのいずれかから独立して選択され;
式中、各Gは、NH、OH、またはHから独立して選択され;
式中、各Rは、H、OH、C(O)OH、(C〜C)−直鎖もしくは分枝アルキル(N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、またはSON(Rで必要に応じて置換される);またはN(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、またはSON(Rで必要に応じて置換される、5〜6員の、炭素環式環系、複素環式環系またはヘテロアリール環系から独立して選択され;ここでGおよびRは、必要に応じて互いに結合して環を形成する、
化合物。
(項目2) 項目1に記載の化合物であって、ここでQは、クロロ、フルオロ、ブロモ、−CH、−OCH、−OH、−CF、−OCF、−O(CHCH、NH、3,4−メチレンジオキシ、−N(CH、−NH−S(O)−フェニル、−NH−C(O)O−CH−4−ピリジン、−NH−C(O)CH−モルホリン、−NH−C(O)CH−N(CH、−NH−C(O)CH−ピペラジン、−NH−C(O)CH−ピロリジン、−NH−C(O)C(O)−モルホリン、−NH−C(O)C(O)−ピペラジン、−NH−C(O)C(O)−ピロリジン、−O−C(O)CH−N(CH、または−O−(CH−N(CHから独立して選択される1〜3つの置換基を含む、フェニルまたはピリジルから選択され、そしてここで該置換基の少なくとも1つは、オルト位にある、化合物。
(項目3) Qは、少なくとも2つの置換基を含み、該置換基のうちの2つがオルト位にある、項目2に記載の化合物。
(項目4) Qが、以下:
【化3】








から選択される、項目2に記載の化合物。
(項目5) Qは、2−フルオロ−6−トリフルオロメチルフェニル、2、6−ジフルオロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル、2−クロロ−4−アミノフェニル、2,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、2,6−ジクロロ−3−アミノフェニル、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシ−3,5−ジクロロ−4−ピリジル、2−クロロ−4,5−メチレンジオキシフェニル、または2−クロロ−4−(N−2−モルホリノ−アセトアミド)フェニルから選択される、項目4に記載の化合物。
(項目6) Qは、フェニル、ピリジルまたはナフチルから選択され、そしてここでQは、必要に応じて3つまでの置換基を含み、該置換基の各々は、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、エチル、イソプロピル、−OCH、−OH、−NH、−CF、−OCF、−SCH、−OCH、−C(O)OH,−C(O)OCH、−CHNH、−N(CH、−CH−ピロリジンおよび−CHOHから独立して選択される、項目1に記載の化合物。
(項目7) Qは、以下:
【化4】








、無置換2−ピリジルまたは無置換フェニルから選択される、項目6に記載の化合物。
(項目8) Qは、フェニル、2−イソプロピルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、2−エチルフェニル、3−フルオロフェニル、2−メチルフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−クロロフェニル、2−カルボメトキシフェニル、2−カルボキシフェニル、2−メチル−4−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、2−ピリジル、2−メチレンヒドロキシフェニル、4−フルオロフェニル、2−メチル−4−フルオロフェニル、2−クロロ−4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2−ヒドロキシ−4−フルオロフェニルまたは2−メチレンヒドロキシ−4−フルオロフェニル、1−ナフチル、3−クロロ−2−メチレンヒドロキシ、3−クロロ−2−メチル、または4−フルオロ−2−メチルから選択される、項目7に記載の化合物。
(項目9) 各YがCである、項目1に記載の化合物。
(項目10) Yに結合した前記Rが、水素またはメチルから独立して選択される、項目9に記載の化合物。
(項目11) Jは、アルコール、アミン、カルボン酸、エステル、アミド、アミジンまたは複素環を末端とする0〜8個の原子の鎖である、項目1に記載の化合物。
(項目12) Jが、以下:
【化5】


から選択される、項目11に記載の化合物。
(項目13) Kが、以下:
【化6】


から選択される、項目1に記載の化合物。
(項目14) 表1〜3に示される化合物のいずれか1つから選択される、項目1に記載の化合物。
(項目15) 前記化合物が、
【化7】


であり、ここでArは、
【化8】


であり、そしてXは、
【化9】


である、項目1に記載の化合物。
(項目16) 前記化合物が、
【化10】


であり、ここでArが
【化11】


である、項目1に記載の化合物。
(項目17) 前記化合物が、
【化12】


であり、ここでArが、
【化13】


である、項目1に記載の化合物。
(項目18) 前記化合物が
【化14】


であり、ここでXが
【化15】


である、項目1に記載の化合物。
(項目19) 前記化合物が、
【化16】


であり、ここでXが、
【化17】


である、項目1に記載の化合物。
(項目20) p38を阻害するために有効な量の、項目1〜19のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目21) 患者における、炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖性障害、感染症、神経変性疾患、アレルギー、発作の際の再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、器官低酸素症、脈管過形成、心臓肥大、トロンビン誘導血小板凝集またはプロスタグランジンエンドペルオキシダーゼシンターゼ−2に関連する状態を、処置または予防する方法であって、該方法は、該患者に項目20に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目22) 項目21に記載の方法であって、該方法が、急性膵炎、慢性膵炎、ぜん息、アレルギー、または成人呼吸窮迫症候群から選択される炎症性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目23) 項目21に記載の方法であって、該方法が、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少、血小板減少、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、または対宿主性移植片病から選択される自己免疫疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目24) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、変形性関節症、骨粗鬆症、または多発性骨髄腫関連骨障害から選択される破壊性骨障害を処置または予防するために使用される、方法。
(項目25) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、または多発性骨髄腫から選択される増殖性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目26) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、敗血症、敗血症性ショック、または細菌性赤痢から選択される感染症を処置または予防するために使用される、方法。
(項目27) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、急性肝炎感染、HIV感染またはCMV網膜炎から選択されるウイルス性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目28) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳虚血または外傷によって引き起こされる神経変性疾患から選択される神経変性疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目29) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、発作もしくは心筋虚血の際の虚血/再灌流、腎虚血、心臓発作、器官低酸素症またはトロンビン誘導血小板凝集を処置または予防するために使用される、方法。
(項目30) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、浮腫、発熱、痛覚脱失または疼痛から選択される、プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ−2に関連する状態を処置または予防するために使用される、方法。
(項目31) 項目30に記載の方法であって、前記疼痛が、神経筋痛、頭痛、癌による痛み、歯痛または関節痛から選択される、方法。
(項目32) 項目21に記載の方法であって、前記方法が、固形腫瘍、眼の新生血管形成、または乳児血管腫から選択される脈管形成障害を処置または予防するために使用される、方法。
(項目33) p38媒介性疾患を処置又は予防する方法であって、該方法は、項目20に記載の組成物を、前記患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目34) ZAP70を阻害するために有効な量の、項目1〜19のいずれか1項に記載の化合物、および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
(項目35) 移植、自己免疫疾患、癌、多発性硬化症、対宿主性移植片病、および川崎病と関連した器官拒絶もしくは組織拒絶を処置または予防する方法であって、該方法は、項目34に記載の組成物を、前記患者に投与する工程を包含する、方法。
(項目36) 項目35に記載の方法であって、前記方法は、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺炎、肺線維症、閉塞性細気管支炎、溶血性貧血、およびヴェーゲナー肉芽腫症から選択される自己免疫疾患を処置または予防するために使用される、方法。
(項目37) 項目35に記載の方法であって、前記方法が、白血病およびリンパ腫から選択される癌を処置または予防するために使用される、方法。
(項目38) ZAP70媒介性疾患を処置または予防する方法であって、該方法は、項目34に記載の組成物を前記患者に投与する工程を包含する、方法。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
これらの化合物は、以下の一般式を有する:
【0041】
【化20】

。ここでQ1およびQ2のそれぞれは、以下から別個に選択される:フェニルまたは5〜6員環の複素環式芳香族または炭素環芳香族を含む8〜10員環の二環式、複素環式芳香族、または炭素環芳香族および複素環式芳香族の組み合わせ。
【0042】
Q1を構成する環は、1〜4の置換基で置換され、そのそれぞれは、以下から別個に選択される:ハロ;必要に応じて以下で置換されるC−Cアルキル:NR’、OR’、COR’またはCONR’;必要に応じて以下で置換されるO−(C−C)−アルキル:NR’、OR’、COR’またはCONR’;NR’;OCF;CF;N0;COR’;CONR’;SR’;S(O)N(R’);SCF;CN;N(R’)C(O)R;N(R’)C(O)OR;N(R’)C(O)C(O)R;N(R’)S(0)R;N(R’)R;N(R;OR;OC(O)R;OP(O);またはN=C−N(R’)
【0043】
を構成する環は、4つまでの置換基で必要に応じて置換され、該置換基の各々は、ハロゲン;R’、NR’、OR’、COR’、S(O)N(R’)、N=C−N(R’)、R、O−P(O)H、またはCONR’で必要に応じて置換された直鎖または分枝のC〜Cアルキル;O−(C〜C)−アルキル;NR’、OR’、COR’、S(O)N(R’)、N=CR’−N(R’)、R、OP(O)H、またはCONR’で必要に応じて置換されたO−(C〜C)−アルキル;NR’;OCF;CF;NO;COR’;CONR’;R;OR;NR;SR;C(O)R;C(O)N(R’)R;C(O)OR;SR’;S(O)N(R’);SCF;N=CR’−N(R’);OR;O−CO;N(R’)C(O)R;N(R’)C(O)OR;N(R’)C(O)C(O)R;N(R’)S(O)R;N(R’)R;N(R;OR;OC(O)R;OP(O);K;あるいはCNから独立して選択される。
【0044】
各R’は、水素;(C〜C)−アルキル;(C〜C)−アルケニルまたはアルキニル;フェニル、またはハロ、メトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、メチルもしくはエチルから独立して選択される1〜3つの置換基で置換されたフェニル;あるいはハロ、メトキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、メチルもしくはエチルから独立して選択される1〜3つの置換基で必要に応じて置換された5〜6員の複素環式環系、から独立して選択される。
【0045】
各Rは、水素、−R、−N(R、−OR、SR、−C(O)−N(R、−S(O)−N(R、−C(O)−ORまたは−C(O)Rから独立して選択され、ここで2つの隣接したRは、必要に応じて互いに結合し、そしてRがそれぞれ結合している各Yと共に4〜8員の炭素環式環または複素環式環を形成する。
【0046】
各Rは、水素;または(C〜C)−アルキルもしくは(C〜C)−アルケニル(それぞれが、−N(R’)、−OR’、SR’、−O−C(O)−N(R’)、−C(O)−N(R’)、−S(O)−N(R’)、−C(O)−OR’、−NSO、−NSO、−C(O)N(R’)(R)、−NC(O)R、−N(R’)(R)、−N(R’)(R)、−C(O)R、−C(O)N(R’)(R)、−N(R、−C(O)N=C(NH)またはRで必要に応じて置換される)、から独立して選択される。
【0047】
各Rは、5〜8員の芳香族もしくは非芳香族の炭素環式環系もしくは複素環式環系(それぞれが、R’、R、−C(O)R’、−C(O)R、−C(O)ORまたは−Kで必要に応じて置換される);または芳香族炭素環式環、芳香族複素環式環、もしくは芳香族炭素環式環と芳香族複素環式環の組合せを含む8〜10員の二環式環系(それぞれがR’、R、−C(O)R’、−C(O)R、−C(O)ORまたは−Kで必要に応じて置換される)、から独立して選択される。
【0048】
各Rは、R’;R’、N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、SON(R’)もしくはSON(Rで必要に応じて置換された、(C〜C)−直鎖アルキルもしくは(C〜C)−分枝アルキル;またはN(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、SON(R’)もしくはSON(Rで必要に応じて置換された、5〜6員の炭素環式環系もしくは複素環式環系、から独立して選択される。
【0049】
各Rは、水素、(C〜C)−アルキル、または(C〜C)−アルケニルから独立して選択され;それぞれが、−N(R’)、−OR’、SR’、−C(O)−N−(R’)、−S(O)−N(R’)、−C(O)−OR’、−N−S(O)(R’)、−NSO、−C(O)N(R’)(R)、−NC(O)R’、−N(R’)(R)、−C(O)R、−C(O)N=C(NH)もしくはRで必要に応じて置換される。
【0050】
各Rは、それぞれがR’、−C(O)R’もしくは−C(O)OR’で必要に応じて置換された、5〜8員の芳香族もしくは非芳香族の炭素環式環系もしくは複素環式環系;またはそれぞれがR’、−C(O)R’もしくは−C(O)OR’で必要に応じて置換された、芳香族炭素環式環、芳香族複素環式環もしくは芳香族炭素環式環と芳香族複素環式環との組合せを含む、8〜10員の二環式環系、から独立して選択される。
【0051】
は、H、ハロゲン、または(C〜C)直鎖アルキルもしくは分枝アルキルから選択される。
【0052】
各Yは、NまたはCから独立して選択され、いずれかのYがNである場合、Yに結合しているRもしくはUが孤立電子対である。
【0053】
Zは、CH、N、C(OCH)、C(CH)、C(NH)、C(OH)またはC(F)である。
【0054】
各Uは、RまたはJから独立して選択される。
【0055】
各Jは、Tで置換された(C〜C)直鎖もしくは分枝アルキル誘導体から独立して選択される。
【0056】
各Tは、O(V)またはN(H)(V)のいずれかから独立して選択される。
【0057】
各Vは、C(O)N=C(R)(N(R))から独立して選択され、ここで窒素上の2つのジェミナルRは、必要に応じて互いに結合して4〜8員の炭素環式環もしくは複素環式環を形成する。
【0058】
2つのR構成要素が、環を形成する場合、縮合していないR構成要素のそれぞれから末端水素が失われることは、当業者に明らかである。例えば、環構造が、それらの2つの構成要素(一方は−CHであり、そして他方は−CH−CHである)が共に結合することにより形成される場合、各R構成要素上の1つの末端水素(太字で示す)が失われる。従って、結果として得られるこの環構造の部分は、式−CH−CH−CH−を有する。
【0059】
各Kは、Dまたは−OP(O)(OH)で置換された(C〜C)直鎖または分枝アルキル誘導体から独立して選択される。
【0060】
各Dは、
【0061】
【化21】

のいずれかの鏡像体から独立して選択される。
【0062】
各Mは、OまたはNHのいずれかから独立して選択される。
【0063】
各Gは、NH、OH、またはHから独立して選択される。
【0064】
各Rは、H、OH、C(O)OH、(C〜C)−直鎖もしくは分枝アルキル(N(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、またはSON(Rで必要に応じて置換される);またはN(R’)、OR’、COR’、CON(R’)、またはSON(Rで必要に応じて置換される、5〜6員の、炭素環式環系、複素環式環系またはヘテロアリール環系から独立して選択される。GがRと共に環を形成する場合、縮合していないGおよびRの構成要素から末端水素が失われることは、当業者に明らかである。例えば、環構造がGおよびRの構成要素(一方が−NHであり、他方が−CH−CH−CH−CHである)が共に結合することにより形成される場合、各R構成要素上の1つの末端水素(太字で示される)が失われる。従って、結果として得られる環構造の部分は、式−NH−CH−CH−CH−CH−を有する。
【0065】
複素環式環系または複素環式環は、1〜4個のヘテロ原子を含む。このヘテロ原子は、N、O、およびSから独立して選択される。芳香族複素環式環または非芳香族複素環式環上の置換可能な窒素は、必要に応じて置換され得る。NまたはSはまた、NO、SO、およびSOのような酸化形態で存在し得る。
【0066】
当業者は、安定で、化学的に可能な複素環式環中のヘテロ原子の最大数が、その環が芳香族かまたは非芳香族のどちらでも、環の大きさ、不飽和度、およびヘテロ原子の原子価によって決定されることを認識する。一般的に、複素環式環は、その複素環式環が化学的に可能でかつ安定である限り、1〜4つのヘテロ原子を有し得る。
【0067】
用語「化学的に安定な配置」または「化学的に可能でかつ安定な」とは、本明細書中で使用される場合、当該分野で公知の方法による製造および哺乳動物への投与を可能にするように、その化合物を十分安定にする化合物構造をいう。代表的には、このような化合物は、40℃以下の温度で、湿気または化学的に反応性のその他の状態の非存在下において少なくとも1週間安定である。
【0068】
好ましい実施形態によれば、Qは、1〜3つの置換基を含む、フェニルまたはピリジルから選択され、ここでこれらの置換基の少なくとも1つは、オルト位にあり、そしてこれらの置換基は、クロロ、フルオロ、ブロモ、−CH、−OCH、−OH、−CF、−OCF、−O(CHCH、NH、3,4−メチレンジオキシ、−N(CH、−NH−S(O)−フェニル、−NH−C(O)O−CH−4−ピリジン、−NH−C(O)CH−モルホリン、−NH−C(O)CH−N(CH、−NH−C(O)CH−ピペラジン、−NH−C(O)CH−ピロリジン、−NH−C(O)C(O)−モルホリン、−NH−C(O)C(O)−ピペラジン、−NH−C(O)C(O)−ピロリジン、−O−C(O)CH−N(CH、または−O−(CH−N(CHから独立して選択される。
【0069】
少なくとも2つの上記の置換基を含み、それらの2つがオルト位にあるフェニルまたはピリジルは、さらにより好ましい。
【0070】
好ましいQのいくつかの具体例は、以下である:
【0071】
【化22】



最も好ましくは、Qは、2−フルオロ−6−トリフルオロメチルフェニル、2、6−ジフルオロフェニル、2,6−ジクロロフェニル、2−クロロ−4−ヒドロキシフェニル、2−クロロ−4−アミノフェニル、2,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、2,6−ジクロロ−3−アミノフェニル、2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシ−3,5−ジクロロ−4−ピリジル、2−クロロ−4,5−メチレンジオキシフェニル、または2−クロロ−4−(N−2−モルホリノ−アセトアミド)フェニルから選択される。
【0072】
好ましい実施形態によれば、Qは、0〜3つの置換基を含む、フェニル、ピリジルまたはナフチルであり、ここで置換基の各々は、クロロ、フルオロ、ブロモ、メチル、エチル、イソプロピル、−OCH、−OH、−NH、−CF、−OCF、−SCH、−OCH、−C(O)OH,−C(O)OCH、−CHNH、−N(CH、−CH−ピロリジンおよび−CHOHから独立して選択される。
【0073】
好ましいQのいくつかの具体例は、以下である:
【0074】
【化23】



無置換の2−ピリジル、または無置換のフェニル。
【0075】
が以下から選択される化合物が最も好ましい:フェニル、2−イソプロピルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、2−エチルフェニル、3−フルオロフェニル、2−メチルフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、3−クロロフェニル、2−カルボメトキシルフェニル、2−カルボキシフェニル、2−メチル−4−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、2−ピリジル、2−メチレンヒドロキシフェニル、4−フルオロフェニル、2−メチル−4−フルオロフェニル、2−クロロ−4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2−ヒドロキシ−4−フルオロフェニル、2−メチレンヒドロキシ−4−フルオロフェニル、1−ナフチル、3−クロロ−2−メチレンヒドロキシ、3−クロロ−2−メチル、または4−フルオロ−2−メチル。
【0076】
別の好ましい実施形態によれば、Rはハロゲンである。より好ましい実施形態において、RはClである。
【0077】
別の好ましい実施形態によれば、各YはCである。
【0078】
なおより好ましい実施形態によれば、各YはCであり、そして各Y構成要素に結合したRおよびUは、水素である。
【0079】
好ましいJのいくつかの具体例は、以下である:
【0080】
【化24】

別の好ましい実施形態によれば、Kは、末端がエステルの0〜4個の原子鎖である。
【0081】
別の好ましい実施形態によれば、MはOである。
【0082】
好ましいKのいくつかの具体例は、以下である:
【0083】
【化25】

より好ましくは、Kは、以下から選択される:
【0084】
【化26】

いくつかの好ましい実施形態を、以下の表1〜3に示す:
【0085】
【表1】


【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

特に好ましい実施形態は、以下を含む:
【0088】
【化27】

ここでArは、
【0089】
【化28】

であり、そしてXは、
【0090】
【化29】

である。
【0091】
特に好ましい実施形態はまた、以下を含む:
【0092】
【化30】

ここでArは
【0093】
【化31】

である。
【0094】
他の特に好ましい実施形態は、以下を含む:
【0095】
【化32】

ここでArは、
【0096】
【化33】

である。
【0097】
他の特に好ましい実施形態は、以下を含む:
【0098】
【化34】

ここでXは、
【0099】
【化35】

である。
【0100】
他の特に好ましい実施形態は、以下を含む:
【0101】
【化36】

ここでXは、
【0102】
【化37】

である。
【0103】
他の特に好ましい実施形態は、以下を含む:
【0104】
【化38】

ここでXは、N(CH
【0105】
【化39】

である。
【0106】
他の特に好ましい実施形態は、以下を含む:
【0107】
【化40】

ここでYはMeまたはHであり;そしてXは(CH、CHC(CHCH、CHN(Me)C(O)CHである。
【0108】
いくつかの最も好ましい実施形態としては、以下が挙げられる:
【0109】
【化41】

別の実施形態に従って、本発明は、上記で同定される式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)の化合物を生成する方法を提供する。代表的な合成スキームを以下に示す。全てのスキームにおいて、出発物質上のL1基およびL2基は、複素環式環中の窒素原子に対してオルトである代表的な脱離基を意味する。例えば、化合物Aは、2,6−ジクロロ−3ニトロピリジンであり得る。
【0110】
【化42】

当業者は、スキーム1が一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)または(Id)を有する化合物を合成するために使用され得ることを認識する。
【0111】
本発明の別の実施形態に従って、本発明のp38インヒビターの活性は、インビトロ、インビボ、または細胞株中でアッセイされ得る。インビトロアッセイとしては、活性化されたp38のキナーゼ活性またはATPase活性のいずれかの阻害を決定するアッセイが挙げられる。代替のインビトロアッセイは、p38に結合するインヒビターの能力を定量する。この代替のインビトロアッセイは、結合の前にこのインヒビターを放射性標識し、インヒビター/p38複合体を単離し、放射性標識の結合量を決定するか、または新規インヒビターを既知の放射リガンドに結合したp38とインキュベートする競合実験を実行するかのいずれかによって、測定され得る。
【0112】
本発明の化合物の阻害効果の細胞培養アッセイは、ネガティブコントロールで処理した細胞と比較した、インヒビターで処理した細胞中の全血またはその細胞画分中に産生されるTNF、IL−1、IL−6またはIL−8の量を決定し得る。これらのサイトカインのレベルは、市販のELISAの使用を通して決定され得る。
【0113】
本発明のp38インヒビターの阻害活性を決定するのに有用なインビボアッセイは、Mycobacterium butyricum誘導性のアジュバント関節炎を有するラットにおける後肢浮腫の抑制である。これは、J.C.Boehmら、J.Med.Chem.,39、3929−37頁(1996)(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載される。本発明のp38インヒビターはまた、A.M.Badgerら、J.Pharmacol.Experimental Therapeutics,279、1453−61頁(1996)(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、関節炎、骨再吸収、エンドトキシンショックおよび免疫機能の動物モデルにおいてアッセイされ得る。
【0114】
p38インヒビターまたはその薬学的な塩は、動物またはヒトへの投与のために薬学的組成物に処方され得る。p38媒介性の状態を処置または予防するのに有効量のp38インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含むこれらの薬学的組成物は、本発明の別の実施形態である。
【0115】
本明細書中に使用される場合、用語「p38媒介性の状態」とは、p38がある役割を果たしていることが公知である任意の疾患または他の有害な状態を意味する。これは、IL−1過剰産生、TNF過剰産生、IL−6過剰産生またはIL−8過剰産生によって引き起こされることが公知の状態を含む。このような状態としては、炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害(destructive bone disorder)、増殖性障害、感染疾患、神経変性疾患、アレルギー、発作中の再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、器官低酸素症、脈管の過形成、心肥大、トロンビン誘導性血小板凝集、およびプロスタグランジンエンドペルオキサイドシンターゼ−2と関連する状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
本発明の化合物によって処置または予防され得る炎症性疾患としては、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、アレルギー、および成人呼吸促進症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本発明の化合物によって処置または予防され得る自己免疫疾患としては、糸球体腎炎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーヴズ病、自己免疫胃炎、糖尿病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎(chronic active hepatitis)、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸結腸炎、クローン病、乾癬、または対宿主性移植片病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
本発明の化合物によって処置または予防され得る破壊性骨障害としては、骨粗鬆症、変形性関節症および多発性骨髄腫関連の骨障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
本発明の化合物によって処置または予防され得る増殖性疾患としては、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポージ肉腫、および多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
本発明の化合物によって処置または予防され得る脈管形成障害としては、固形腫瘍、眼の新生血管形成(ocular neovasculization)、乳児血管種(infantile haemangiomas)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
本発明の化合物によって処置または予防され得る感染症としては、敗血症、敗血症性ショック、および細菌性赤痢が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
本発明の化合物によって処置または予防され得るウイルス性疾患としては、急性肝炎の感染(A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎を含む)、HIV感染およびCMV網膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本発明の化合物によって処置または予防され得る神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳虚血、または外傷性傷害によって引き起こされる神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
「p38媒介性の状態」としてはまた、発作における虚血/再灌流、心臓発作、心筋虚血、器官低酸素症、脈管の過形成、心肥大、およびトロンビン誘導性血小板凝集が挙げられる。
【0125】
さらに、本発明のp38インヒビターはまた、プロスタグランジンエンドペルオキサイドシンターゼ−2(PGHS−2)(シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)とも称される)のような誘導性の炎症前タンパク質の発現を阻害し得る。従って、本発明の化合物によって処置され得る他の「p38媒介性の状態」としては、浮腫、痛覚脱失、熱および疼痛(例えば、神経筋の疼痛、頭痛、癌の疼痛、歯の疼痛および関節炎の疼痛)が挙げられる。
【0126】
本発明のp38インヒビターによって処置または予防され得る疾患としてはまた、その疾患を担うと考えられるサイトカイン(IL−1、TNF、IL−6、IL−8)によって簡便に分類され得る。
【0127】
従って、IL−1媒介性の疾患または状態としては、慢性関節リウマチ、変形性関節症、発作、内毒素血症および/またはトキシックショック症候群、エンドトキシンによって誘導される炎症反応、炎症性腸疾患、結核、アテローム性動脈硬化症、筋肉の変性、悪液質、乾癬性関節炎、ライター症候群、痛風、外傷性関節炎、風疹性関節炎、急性滑膜炎、糖尿病、膵臓B細胞疾患およびアルツハイマー病が挙げられる。
【0128】
TNF媒介性の疾患または状態としては、慢性関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、変形性関節症、痛風性関節炎、および他の関節炎状態、敗血症、敗血症性ショック、エンドトキシンショック、グラム陰性敗血症、トキシックショック症候群、成人呼吸促進症候群、大脳マラリア、慢性肺炎症性疾患、珪肺症、肺サルコイドーシス、骨再吸収の疾患、再灌流障害、対宿主性移植片反応、同種移植拒絶、感染に起因する熱および筋肉痛、感染に対して二次的な悪液質、AIDS、ARCまたは悪性疾患、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸結腸炎または不全麻痺(pyresis)が挙げられる。TNF媒介性の疾患としてはまた、ウイルス感染(例えば、HIV、CMV、インフルエンザおよびヘルペス);および獣医学的ウイルス感染(例えば、レンチウイルス感染(ウマ伝染性貧血ウイルス、ヤギ関節炎ウイルス、ビスナウイルスまたはマエディウイルスが挙げられるが、これらに限定されない));あるいはレトロウイルス感染(ネコ免疫不全ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、またはイヌ免疫不全ウイルスが挙げられる)が挙げられる。
【0129】
IL−8媒介性の疾患または状態としては、広範囲の好中球浸潤によって特徴付けられる疾患(例えば、乾癬、炎症性腸疾患、喘息、心臓および腎臓の再灌流傷害、成人呼吸促進症候群、血栓症および糸球体腎炎)が挙げられる。
【0130】
さらに、本発明の化合物は、IL−1またはTNFによって引き起こされるかまたは悪化する状態を処置または予防するために局所的に使用され得る。このような状態としては、炎症性関節、湿疹、乾癬、炎症性皮膚の状態(例えば、日焼け)、炎症性の眼の状態(例えば、結膜炎)、不全麻痺、疼痛および炎症と関連する他の状態が挙げられる。
【0131】
別の実施形態に従って、本発明の化合物は、ZAP70媒介性の状態(移植に関連する器官または組織の拒絶、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺炎、肺の線維症、閉塞性細気管支炎、溶血性貧血、およびヴェーゲナー肉芽腫症)、癌(白血病およびリンパ腫を含む)、多発性硬化症、対宿主性移植片病および川崎病が挙げられるがこれらに限定されない)を処置するために使用され得る。
【0132】
ZAP70インヒビターまたはその薬学的な塩は、動物またはヒトへの投与のための薬学的組成物中に処方され得る。ZAP70媒介性の状態を処置または予防するのに有効量のZAP70インヒビターおよび薬学的に受容可能なキャリアを含むこれらの薬学的組成物は、本発明の別の実施形態である。
【0133】
本発明の化合物に加えて、本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩もまた、上記の障害を処置または予防するために組成物中に使用され得る。
【0134】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な、無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から誘導される塩が挙げられる。適切な酸塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、およびウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸のような他の酸は、それら自体は薬学的に受容可能ではないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得る工程の中間物として有用な塩の調製において、使用され得る。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウムおよびN−(C1−4アルキル)4+塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性または油溶性あるいは分散可能な生成物は、このような四級化によって得られ得る。
【0135】
これらの薬学的組成物において用いられ得る、薬学的に受容可能なキャリアとしては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸塩)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
本発明の組成物は、経口投与、非経口投与、吸引スプレー投与、局所的投与、直腸投与、鼻部投与、頬側投与、膣投与または貯蔵器の移植を介する投与がなされ得る。本明細書中で使用される用語「非経口」とは、皮下、静脈内、筋内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内局、頭蓋内の注射または注入技術が挙げられる。好ましくは、この組成物は、経口、腹腔内または静脈内投与される。
【0137】
本発明の組成物の無菌注射可能な形態は、水性懸濁剤または油性懸濁剤であり得る。これらの懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて当該分野で公知の技術に従って処方され得る。この無菌注射可能な調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶液(例えば、1,3−ブタンジオールの溶液として)において、無菌注射可能な溶液または懸濁剤であり得る。とりわけ使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、慣用的に溶媒または懸濁媒体として使用される。この目的のために、任意の無刺激の(bland)不揮発性油としては、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドが使用され得る。脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、注射可能な調製物において、天然の薬学的に受容可能な油(例えば、オリーブオイルまたはヒマシ油、特にそのポリオキシエチル化バージョン)として有用である。これらの油剤または懸濁剤はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤)を含み得る。これらは、一般的に、薬学的に受容可能な投薬形態(乳剤および懸濁剤を含む)の処方物において使用され得る。他の一般に使用される界面活性剤(例えば、Tween、Spanおよび他の乳化剤またはバイオアベイラビリティーエンハンサー(これらは、薬学的に受容可能な固体、液体または他の投薬形態の製造において一般的に使用される))もまた、目的の処方物のために用いられ得る。
【0138】
本発明の薬学的組成物は、以下の任意の経口的に受容可能な投薬形態において経口投与され得るが、これらに制限されない:カプセル、錠剤、水性懸濁剤または溶媒。経口使用のための錠剤の場合において、一般的に使用されるキャリアとしては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)もまた、代表的に添加される。カプセル形態における経口投与のために有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥されたコーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤が経口使用のために必要とされる場合、活性成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わされる。所望の場合、特定の甘味料、香味料または着色剤もまた、添加され得る。
【0139】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、直腸投与のための坐剤形態で投与され得る。これらは、室温で固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸で溶解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と共にこの薬剤を混合することによって、調製され得る。このような材料としては、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0140】
本発明の薬学的組成物は、特に、処置の標的(眼、皮膚または腸管下部の疾患を含む)が、局所的適用によって容易に接近可能な領域または器官を含む場合に、局所的に投与され得る。適切な局所的処方物は、これらの領域または器官の各々のために容易に調製される。
【0141】
腸管下部に対する局所的適用は、直腸坐剤処方物(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方物でもたらされ得る。局所的な経皮パッチもまた使用され得る。
【0142】
局所的適用のために、この薬学的組成物は、1以上のキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含む適切な軟膏中に処方され得る。本発明の化合物の局所的投与のためのキャリアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:鉱油、流動パラフィン、白色鉱油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水。あるいは、この薬学的組成物は、1以上の薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁または溶解された活性成分を含む、適切なクリームまたはローション中に処方され得る。適切なキャリアとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水。
【0143】
眼での使用のために、この薬学的組成物は、等張の、pH調節した滅菌生理食塩水中の微細化懸濁物として、または好ましくは、塩化ベンザルコニウムのような保存料ありまたはなしのいずれかの、等張の、pH調節した滅菌生理食塩水中の溶液として処方され得る。あるいは、眼での使用のために、この薬学的組成物は、ペトロラタムのような軟膏中に処方され得る。
【0144】
本発明の薬学的処方物はまた、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的組成物の分野で周知の技術に従って調製され、そして生理食塩水中の溶液として、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存料、バイオアベイラビリティを増強するための吸着促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、調製され得る。
【0145】
キャリア材料と組み合わされて単回投薬形態を生じ得るp38またはZAP70インヒビターの量は、処置される宿主および投与の特定の様式に依存して異なる。好ましくは、この組成物は、0.01〜100mg/kg体重/日のインヒビターの投薬量がこれらの化合物を受ける患者に投与可能なように、処方されるべきである。
【0146】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量および処置レジメンが、種々の因子(使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食餌、投与の時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、ならびに処置を行う医師の判断、および処置される特定の疾患の重篤度を含む)に依存する。インヒビターの量もまた、この組成物中の特定の化合物に依存する。
【0147】
別の実施形態に従って、本発明は、p38媒介性の状態を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、患者に、上記の薬学的組成物のうち1つを投与する工程を包含する。用語「患者」は、本明細書中で使用される場合、動物、好ましくはヒトを意味する。
【0148】
好ましくは、この方法は、以下からなる群より選択される状態を処置または予防するために使用される:炎症疾患、自己免疫疾患、破壊的骨障害、増殖性疾患、感染症、変性疾患、アレルギー、発作における再灌流/虚血、心臓発作、脈管形成障害、器官低酸素症、血管の過形成、心肥大およびトロンビン誘導性血小板凝集。
【0149】
別の実施形態に従って、本発明のインヒビターは、IL−1、IL−6、IL−8もしくはTNF媒介性の疾患または障害を、処置または予防するために使用される。このような状態は、上に記載される。
【0150】
処置または予防されるべき特定のp38媒介性の状態に依存して、この状態を処置または予防するために通常投与されるさらなる薬物が、本発明のインヒビターと共に投与され得る。例えば、化学療法剤または他の抗増殖剤が、本発明のp38インヒビターと組み合わされて、増殖性疾患を処置し得る。
【0151】
これらのさらなる薬剤は、複数投薬レジメンの一部として、p38インヒビター含有組成物とは別に投与され得る。あるいは、これらの薬剤は、単一組成物中でp38インヒビターと一緒に混合された、単回投薬形態の一部であり得る。
【0152】
別の実施形態に従って、本発明は、ZAP70媒介性の状態を処置または予防するための方法を提供し、この方法は、患者に、上記の薬学的組成物のうち1つを投与する工程を包含する。
【0153】
本明細書中で記載される本発明がより完全に理解され得るために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示の目的のみであり、そしていかなる様式においても本発明を限定するとは解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0154】
(実施例1)
(p38インヒビター化合物7の合成)
【0155】
【化43】

LDA(60mmol、40mL)の溶液に、−78℃で、THF(30mL、乾燥)中の2,6−ジブロモピリジン(40mmol、9.48g)を滴下して添加した。この混合物を−78℃で20分間攪拌した。蟻酸エチル(400mmol、32.3mL)を添加し、そして攪拌を−78℃で2時間続けた。飽和塩化アンモニウム(200mL)を添加し、そしてこの混合物を室温まで温めた。この反応混合物を酢酸エチルで希釈し、そして有機層を水性の酸および塩基で洗浄した。この有機層を乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。得られた物質をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー、その後のn−ヘキサン中10%の酢酸エチルによって精製し、白色固体として1を得た(32mmol、8.41g)。
【0156】
【化44】

エタノール(750mL)中に溶解された1(776mmol、205.6g)およびトリエチルオルトホルメート(200mL)の溶液を、一晩還流した。この反応混合物を冷却し、減圧下でエバポレートした。得られた赤色油をヘキサン中に溶解させ、そしてシリカゲルのプラグで濾過した。このプラグを、50%のCHCl/ヘキサンで溶出した。この濾過物をエバポレートして油として2を得た。
【0157】
【化45】

THF(100mL)中の60%NaH(130mmol、5.20g)および2(61.2mmol、20.76g)の懸濁物に、還流しながら、THF(100mL)中の2,6−ジフルオロアニリン(61.3mmol、20g)の溶液を滴下して添加した。アニリンの添加後、Pd(PPh(100mg)を添加した。この混合物を1時間還流し、そして冷却した。塩酸(1N、100mL)を添加し、そして攪拌を1時間続けた。この反応混合物を、CHClで抽出した。この有機抽出物を乾燥させ、そして減圧下でエバポレートした。得られた物質を最少量のCHCl中に溶解させ、そしてヘキサンを添加した。この溶液を冷却し、黄色固体として3を沈降させた。
【0158】
【化46】

p−フルオロフェニルボロン酸(57.5mmol、8.05g)および3(46.9mmol、14.70g)を、ジメトキシエタン(300mL)中に溶解させた。フッ化セシウム(68.6mmol、10.42g)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(100mg)をこの溶液に添加し、そして懸濁物を一晩還流させた。この反応混合物を水中に注ぎ、そしてCHClで抽出した。この有機抽出物を1N NaOHで洗浄し、MgSOで乾燥させ、そしてシリカゲルのプラグで濾過した。このプラグをCHClで溶出して、そして濾過物を減圧下でエバポレートした。得られた黄色固体を50%CHCl/ヘキサンで粉砕して、黄色固体として4を得た(9.50g、62%)。
【0159】
【化47】

トルエン(250mL)中の4(70.1mmol、23.01g)の溶液を、トルエン中のホスゲンの20%溶液(151mmol、80mL)と合わせ、そして2時間加熱して還流した。この反応物を冷却し、そして水酸化アンモニウム中に注いだ。この混合物を5分間攪拌し、そして塩化メチレンで抽出した。この有機抽出物を乾燥させ、そしてシリカゲルのプラグで濾過した。このプラグを塩化メチレンで溶出して、残渣の出発物質を除去した。次いで、これを、50%の酢酸エチル/塩化メチレンで溶出して、5を得た。この濾過物を減圧下でエバポレートし、白色固体として5を得た(21.38g、86%)。
【0160】
【化48】

ホウ化水素ナトリウム(36.5mmol、1.38g)を、THF(100mL)中の5(60.0mmol、21.38g)の溶液に添加し、そして0℃で1時間攪拌し、次いで室温で2時間攪拌した。この反応物を1N HCl中に注ぎ、そして塩化メチレンで抽出した。この有機抽出物を乾燥させ、そしてシリカゲルのプラグで濾過した。このプラグを5%酢酸エチル/塩化メチレンで溶出して、残渣の出発物質を除去した。次いで、これを酢酸エチルで溶出して6を得た。この濾過物をエバポレートして白色固体として6を得た。
【0161】
化合物6についてのスペクトルデータは、以下であった:H NMR(500MHz、CDCl)δ7.90(d、1H)、7.60(d、2H)、7.5〜7.3(m、5H)、6.30(d、2H)、4.5(s、2H)、2.3(s、2H)。
【0162】
【化49】

6(2.79mmol、1.00g)およびp−ニトロフェニルクロロホルメート(5.56mmol、1.12g)の溶液を、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(14.3mmol、2.0mL)を添加し、そしてこの溶液を15分間攪拌し、そして水酸化アンモニウム中に注いだ。この溶液混合物を、水中に注ぎ、そして塩化メチレンで抽出した。この有機抽出物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させ、そして減圧下でエバポレートして白色固体として7を得た(730mg、65%)。
【0163】
(実施例2)
(p38インヒビタープロドラッグ9および10の合成)
【0164】
【化50】

10mLトルエン中の8(1.0g、2.30mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(1.01g、6.91mmol)の混合物を、80℃で20分間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。シリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc:10/4)の前の通常の精密検査によって、白色固体としてアミジン9(表1の化合物101)を得た。化合物9についてのスペクトルデータは、以下であった:H NMR(500MHz、CDCl)δ8.3(s、1H)、7.7(d、1H)、7.5〜7.4(m、1H)、7.1〜7.0(m、1H)、6.95〜6.85(t、2H)、6.85〜6.75(m、1H)、6.45〜6.4(d、1H)、6.2(s、1H)、4.95(s、2H)、3.05(s、3H)、2.95(s、3H)。
【0165】
【化51】

10mLのトルエン中の8(1.0g、2.30mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(3.3g、22.4mmol)の混合物を、80℃で90分間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した。シリカゲルでのクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc:2/1)の前の通常の精密検査によって、白色固体としてビス−アミド10(表1の化合物107)を得た。化合物10についてのスペクトルデータは、以下であった:H NMR(500MHz、CDCl)δ8.4(s、1H)、8.3(s、1H)、8.05〜7.95(s、1H)、7.15〜7.05(m、2H)、6.85〜6.75(t、2H)、6.75〜6.65(m、4H)、4.95(s、2H)、3.0〜2.95(d、9H)、2.65(s、3H)。
【0166】
(実施例3)
(p38インヒビタープロドラッグ13の合成)
【0167】
【化52】

テトラヒドロフラン(30mL)中の6(1.25g、3.35mmol)および4−ニトロフェニルクロロホルメート(0.81g、4.02mmol)の混合物に、トリエチルアミン(1.16mL、8.38mmol)を、0℃で滴下して添加した。エタノールアミン(0.6mL、10.0mmol)を添加し、そしてこの溶液を0℃で30分間攪拌した。シリカでのクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン:10/4)の前の通常の精密検査によって、白色固体として11を得た(1.03g、2.23mmol)。H NMR(500MHz、CDCl)δ7.75(d、1H)、7.65〜7.55(m、2H)、7.5〜7.4(m、1H)、7.25〜7.15(t、2H)、7.15〜7.05(t、2H)、6.4(d、1H)、5.2〜5.1(ds、1H)、5.15(s、2H)、3.75〜3.65(t、2H)、3.4〜3.3(m、2H)。
【0168】
【化53】

塩化メチレン(30mL)中の11(1.03g、2.23mmol)、(L)−BOC−Val−OH(0.97g、4.46mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)3−エチルカルボジイミドヒドロクロリドの混合物を、室温で1.5時間攪拌した。シリカでのクロマトグラフィー(ヘキサン/アセトン:10/4)の前の通常の精密検査によって、白色固体としてVal誘導体12を得た(1.38g、2.09mmol)。H NMR(500MHz、CDCl)7.75(d、1H)、7.65〜7.55(m、2H)、7.5〜7.4(m、1H)、7.25〜7.15(t、2H)、7.15〜7.05(t、2H)、6.4(d、1H)、5.40〜5.35(bs、1H)、5.05(s、2H)、5.00〜4.95(d、1H)、4.4〜4.3(m、1H)、4.25〜4.15(m、1H)、4.15〜4.05(m、1H)、3.55〜3.45(m、2H)、2.15〜2.05(m、1H)、1.45(s、9H)、1.0〜0.85(m、6H)。
【0169】
【化54】

塩化メチレン(20mL)中の12(1.38g、2.09mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を添加した。この溶液を室温で1時間攪拌させた。通常の精密検査によって白色固体を得、この白色固体をその塩酸塩に変換して、白色固体として13(表2の化合物111;0.61g、1.02mmol)を得た。化合物13についてのスペクトルデータは、以下であった:H NMR(500MHz、CDCl)7.65(d、1H)、7.55〜7.45(m、2H)、7.4〜7.3(m、1H)、7.15〜7.05(m、2H)、7.05〜6.95(m、2H)、6.35(d、1H)、5.05〜5.00(bs、1H)、4.95(s、2H)、4.15〜4.05(m、2H)、3.45〜3.25(m、2H)、3.2(s、1H)、1.95〜1.85(m、1H)、0.90〜0.75(m、6H)。
【0170】
(実施例4)
(昆虫細胞におけるp38キナーゼのクローニング)
ヒトp38キナーゼの2つのスプライス改変体CSBP1およびCSBP2を、同定した。特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用い、テンプレートとしてHeLa細胞ライブラリー(Stratagene)を使用して、CSBP2 cDNAのコード領域を増幅させた。ポリメラーゼ連鎖反応産物を、pET−15bベクター(Novagen)中にクローニングした。pET15b−(His)6−p38のXbaI−BamHIフラグメントを、プラスミドpVL1392(Pharmingen)の相補的な部位にサブクローニングすることにより、バキュロウイルス転移ベクターpVL−(His)6−p38を構築した。
【0171】
プラスミドpVL−(His)6−p38は、23残基ペプチドからなる組換えタンパク質(MGSSHHHHHHSSGLVPRGSHMLE)(この配列を、DNA配列決定および発現タンパク質のN末端配列決定により確認した)の合成を指示する。ここで、LVPRGSは、p38のN末端にインフレームで融合したトロンビン切断部位を示す。Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞(ATCC)の単層培養物を、27℃にて、Tフラスコ中の10%胎仔ウシ血清を添加したTNM−FH培地(Gibco BRL)において維持した。対数期のSf9細胞を、Lipofectin(Invitrogen)を用いて、Autographa califonica核多角体病ウイルスの直鎖ウイルスDNA(Pharmingen)および転移ベクターpVL−(His)6−p38で同時トランスフェクトした。個々の組換えバキュロウイルスクローンを、1%低融点アガロースを用いてプラークアッセイにより精製した。
【0172】
(実施例5)
(組換えp38キナーゼの発現および精製)
Trichoplusia ni(Tn−368)High−FiveTM細胞(Invitrogen)を、27℃にて、振盪フラスコ中のExcel−405無タンパク質培地(JRH Bioscience)中で浮遊状態で増殖させた。1.5×10細胞/mlの密度の細胞に、上記の組換えバキュロウイルスを感染効率5で感染させた。組換えp38の発現レベルを、ウサギ抗p38抗体(Santa Cruz Biotechnology)を用いたイムノブロッティングによりモニターした。細胞塊を、p38の発現レベルが最大に達する感染後72時間で収集した。
【0173】
(His)タグを付加したp38を発現する細胞由来の凍結細胞ペーストを、5容量の緩衝液A(50mM NaHPO pH8.0、200mM NaCl、2mM β−メルカプトエタノール、10% グリセロール、および0.2mM PMSF)中で解凍した。マイクロフルーダイザー中で細胞を機械的に破壊した後、溶解物を30,000×gで30分間遠心分離した。この上清を、4℃にて3〜5時間、TalonTM(Clontech)金属アフィニティー樹脂(2〜4mgの推定p38あたり1mlの樹脂の割合)と共にバッチ式でインキュベートした。この樹脂を、500×g、5分間の遠心分離により沈殿させ、そして緩衝液Aによりバッチ式で穏やかに洗浄した。この樹脂をスラリー状にし、カラム(約2.6×5.0cm)に注ぎ、そして緩衝液A+5mM イミダゾールで洗浄した。
【0174】
(His)−p38を、緩衝液A+100mM イミダゾールを用いて溶出させ、次いで、2リットルの緩衝液B(50mM HEPES、pH7.5、25mM β−メルカプトエタノール、5%グリセロール、2mM DTT)に対して4℃で一晩透析した。Hisタグを、1mgのp38あたり1.5ユニットのトロンビン(Calbiochem)を添加し、20℃にて2〜3時間インキュベートすることにより除去した。0.2mM PMSFを添加することによってトロンビンをクエンチし、次いで全サンプルを、2ml ベンズアミジンアガロース(American International Chemical)カラムに充填した。
【0175】
通り抜けた画分(flow through fraction)を、予め緩衝液B+0.2mM PMSF中で平衡化した2.6×5.0cm Q−Sepharose(Pharmacia)カラムに直接充填した。p38を、20カラム容量の0.6M NaCl含有緩衝液Bへの直線勾配により溶出させた。溶出されたタンパク質ピークをプールし、そして緩衝液C(50mM HEPES pH7.5、5% グリセロール、50mM NaCl、2mM DTT、0.2mM PMSF)に対して4℃にて一晩透析した。
【0176】
透析したタンパク質を、Centriprep(Amicon)中で3〜4mlまで濃縮し、そして2.6×100cm Sephacryl S−100HR(Pharmacia)カラムにアプライした。35ml/時間の流速で、タンパク質を溶出した。主要なピークをプールし、20mM DTTに調整し、10〜80mg/mlまで濃縮し、そしてアリコートとして−70℃で凍結するかまたは直ちに使用した。
【0177】
(実施例6)
(p38の活性化)
0.5mg/mlのp38と0.005mg/mlのDD二重変異MKK6を、緩衝液B+10mM MgCl、2mM ATP、0.2mM NaVO中で20℃にて30分間混合させることにより、p38を活性化した。次いで、この活性化混合物を、1.0×10cm MonoQカラム(Pharmacia)に充填し、そして1.0M NaCl含有緩衝液Bへの20カラム容量の直線勾配で溶出させた。活性化p38を、ADPおよびATPの後に溶出させた。活性化p38のピークをプールし、そして緩衝液B+0.2mM NaVOに対して透析し、NaClを除去した。透析したタンパク質に4.0Mストック溶液を添加することにより、1.1M リン酸カリウムに調整し、そして予め緩衝液D(10%グリセロール、20mM β−メルカプトエタノール、2.0mM DTT)+1.1M KHPO中で平衡化した1.0×10cm HIC(Rainin Hydropore)カラムに充填した。緩衝液D+50mM KHPOへの20カラム容量の直線勾配により、タンパク質を溶出させた。二重リン酸化p38が、主要ピークとして溶出し、そしてこれを、緩衝液B+0.2mM NaVOに対する透析のためにプールした。活性化p38を、−70℃で保存した。
【0178】
(実施例7)
(p38阻害アッセイ)
(A.EGFレセプターペプチドのリン酸化の阻害)
このアッセイを、10mM MgCl、25mM β−メルカプトエタノール、10% グリセロール、および100mM HEPES緩衝液(pH7.6)の存在下で実施した。代表的なIC50決定のために、上記成分の全ておよび活性化p38(5nM)を含むストック溶液を調製した。このストック溶液を、複数のバイアルに等分した。固定量のDMSOまたはインヒビター含有DMSO(反応物中のDMSOの終濃度は5%)を、各バイアルに加え、混合し、そして室温で15分間インキュベートした。p38触媒キナーゼ反応(1)において、EGFレセプターペプチド、KRELVEPLTPSGEAPNQALLR、ホスホリルアクセプターを、各バイアルに添加した(終濃度200μM)。このキナーゼ反応をATP(100μM)により開始させ、そしてこのバイアルを30℃でインキュベートした。30分後、等量の10% トリフルオロ酢酸(TFA)によりこの反応をクエンチした。
【0179】
リン酸化ペプチドを、HPLC分析により定量した。非リン酸化ペプチドからのリン酸化ペプチドの分離を、水およびアセトニトリル(各々0.1% TFAを含む)の二次元勾配を用いて逆相カラム(Deltapak、5μm、C18 100D、Part no.011795)で達成した。IC50(50% 阻害を生じるインヒビターの濃度)を、インヒビター濃度に対して残存する活性のパーセント(%)をプロットすることにより決定した。
【0180】
(B.ATPase活性の阻害)
このアッセイを、10mM MgCl、25mM β−メルカプトエタノール、10% グリセロール、および100mM HEPES緩衝液(pH7.6)の存在下で実施する。代表的なKi決定のために、活性化p38反応のATPase活性におけるATPのKmを、インヒビターの非存在下および2つの濃度のインヒビターの存在下で決定する。上記成分の全ておよび活性化p38(60nM)を含むストック溶液を調製する。このストック溶液を、複数のバイアルに等分した。固定量のDMSOまたはインヒビター含有DMSO(反応物中のDMSOの終濃度は2.5%)を、各バイアルに加え、混合し、そして室温で15分間インキュベートする。種々の濃度のATPを添加することによりこの反応を開始させ、次いで、30℃でインキュベートする。30分後、50μlのEDTA(0.1M、終濃度)、pH8.0を用いてこの反応をクエンチする。p38 ATPase活性の産物であるADPを、HPLC分析により定量する。
【0181】
ATPからのADPの分離を、以下の組成の二次元溶媒を用いて、逆相カラム(Supelcosil、LC−18、3μm、part no.5−8985)で達成する:溶媒A−8mM 硫酸水素テトラブチルアンモニウム(Sigma Chemical Co.、カタログ番号T−7158)を含む0.1M リン酸緩衝液、溶媒B−30%メタノールを含む溶媒A。
【0182】
Kiを、インヒビターおよびATP濃度の関数として、速度データから決定する。
【0183】
本発明のp38インヒビターは、p38のATPase活性を阻害する。
【0184】
(C.LPS刺激したPBMCにおけるIL−1、TNF、IL−6、およびIL−8産生の阻害)
インヒビターを、20mMストックからのDMSO中で連続希釈した。少なくとも6つの連続希釈を調製した。次いで、4μlのインヒビター希釈液を1mlのRPMI1640培地/10%ウシ胎仔血清に添加することにより、4×インヒビターストックを調製した。4×インヒビターストックは、80μM、32μM、12.8μM、5.12μM、2.048μM、0.819μM、0.328μM、0.131μM、0.052μM、0.021μMなどの濃度でインヒビターを含んだ。この4×インヒビターストックを、使用するまで37℃で暖めた。
【0185】
新鮮なヒト血液軟膜細胞(blood buffy cell)を、Vacutainer CPT(Becton & Dicknson)(チューブを満たすために4mlの血液およびMg2+/Ca2+を含まない十分なDPBSを含む)中で、1500×gで15分間遠心分離することにより他の細胞から分離した。Vacutainerにおける勾配の上部に位置する末梢血単核細胞(PBMC)を取り、そしてRPMI1640培地/10%ウシ胎仔血清で2回洗浄した。500×gで10分間遠心分離することにより、PBMCを回収した。合計細胞数を、Neubauer Cell Chamberを用いて決定し、そしてこの細胞を、細胞培養培地(10%ウシ胎仔血清を含むRPMI1640)中で4.8×10細胞/mlの濃度に調製した。
【0186】
あるいは、抗凝血剤を含む全血を、このアッセイに直接使用した。
【0187】
100μlの細胞懸濁物または全血を、96ウェル細胞培養プレートの各ウェルにプレートした。次いで、50μlの4×インヒビターストックを、細胞に添加した。最後に、50μlのリポ多糖(LPS)作用ストック溶液(細胞培養培地中に16ng/ml)を添加し、このアッセイにおいて4ng/ml LPSの終濃度を与えた。また、50μlの細胞培養培地を添加することにより、ビヒクルコントロールの総アッセイ量を200μlに調製した。次いで、PBMC細胞または全血を、加湿雰囲気下、37℃/5%COにて一晩(12〜15時間)インキュベートした。
【0188】
次の日、この細胞を、シェーカーで3〜5分間混合し、その後、500×gで5分間遠心分離した。細胞培養上清を収集し、そしてELISAにより、販売元の説明書に従い、IL−1β(R&D Systems、Quantikineキット、#DBL50)、TNF−α(BioSource、#KHC3012)、IL−6(Endogen、#EH2−IL6)、およびIL−8(Endogen、#EH2−IL8)のレベルを分析した。このELISAデータを用いて、用量応答曲線を作成し、IC50値を得た。
【0189】
本発明の種々のp38インヒビターについての、LPS刺激したPBMC(「細胞」)におけるキナーゼアッセイ(「キナーゼ」;上記の小節A)、IL−1、およびTNF、ならびに全血(「WB」)におけるIL−1、TNF、およびIL−6の結果を、以下の表7に示す。
【0190】
【表4】

本発明の他のp38インヒビターはまた、EGFレセプターペプチドのリン酸化を阻害し、そしてLPS刺激したPBMCまたは全血におけるIL−1、TNF、およびIL−6、ならびにIL−8の産生を阻害する。
【0191】
(D.IL−1刺激したPBMCにおけるIL−6およびIL−8産生の阻害)
このアッセイを、50μlのIL−1b作用ストック溶液(細胞培養培地中に2ng/ml)を、(LPS)作用ストック溶液の代わりにこのアッセイに添加することを除いて、上記と正確に同じように、PBMCにおいて実施する。
【0192】
細胞培養上清を、上記のように収集し、そしてELISAにより、販売元の説明書に従って、IL−6(Endogen、#EH2−IL6)、およびIL−8(Endogen、#EH2−IL8)のレベルについて分析する。このELISAのデータを用いて、用量応答曲線を作成し、IC50値を得た。
【0193】
(E.PBMCにおけるLPS誘導性プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ−2(PGHS−2またはCOX−2)誘導の阻害)
ヒト末梢単核細胞(PBMC)を、Vacutainer CPT(Becton & Dickinson)中での遠心分離により、新鮮なヒト血液軟膜コートから単離する。15×10細胞を、10%ウシ胎仔血清、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、および2mM L−グルタミンを含むRPMI1640を含む6ウェル組織培養皿に播種する。化合物を、DMSO中での終濃度0.2μM、2.0μM、および20μMで添加する。次いで、LPSを、終濃度4ng/mlで添加し、酵素の発現を誘導する。培養物の最終容量は、10ml/ウェルである。
【0194】
37℃、5% COでの一晩のインキュベーション後、この細胞を、掻き取りることにより収集し、次いで遠心分離して上清を除き、そしてこの細胞を、氷冷DPBS(Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水、BioWhittaker)中で2回洗浄する。この細胞を、氷上で10分間、1μlのベンゾナーゼ(MerckのDNAse)を含む、50μlの冷やした溶解緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.2、150mM NaCl、1% Triton−X−100、1% デオキシコール酸、0.1% SDS、1mM EDTA、2% アプロチニン(Sigma)、10μg/ml ペプスタチン、10μg/ml ロイペプチン、2mM PMSF、1mM ベンズアミジン、1mM DTT)中に溶解する。各サンプルのタンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce)および標準としてウシ胎仔アルブミンを用いて決定する。次いで、各サンプルのタンパク質濃度を、冷やした溶解緩衝液により1mg/mlに調製する。100μlの溶解物に、等量の2×SDS PAGE充填緩衝液を添加し、そしてサンプルを5分間沸騰させる。タンパク質(30μg/レーン)を、4〜20%SDS PAGE勾配ゲル(Novex)上でサイズ分画し、次いで、20% メタノールを含むTowbin転移緩衝液(25mM Tris、192mM グリシン)中での100mA、2時間の電気泳動手段により、ニトロセルロースメンブレンに移す。転移後、このメンブレンを、ブロッキング緩衝液(0.1%Tween−20を添加した5%脱脂粉乳DPBS)を用いて室温にて1時間、前処理し、そしてDPBS/0.1% Tween−20中で3回洗浄する。このメンブレンを1:250希釈のモノクローナル抗COX−2抗体(Transduction Laboratories)と共に、ブロッキング緩衝液中で4℃にて一晩インキュベートする。DPBS/0.1% Tween−20中での3回の洗浄後、このメンブレンをマウスIgに対する1:1000希釈の西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヒツジ抗血清(Amersham)と共に、ブロッキング緩衝液中で室温にて1時間インキュベートする。次いで、このメンブレンを、DPBS/0.1% Tween−20中で、再度、3回洗浄する。ECL検出システム(SuperSignalTM CL−PRP Substrate System、Pierce)を用いて、COX−2の発現レベルを決定する。
【0195】
(実施例8)
(ZAP70阻害アッセイ)
ZAP70の活性を、γ−33P ATP(MEN、Boston、MA)を用いてリン酸化ポリE4Y(Sigma Chemicals、St Louis MO)を決定することにより測定する。100mM HEPES、pH7.5、10mM MgCl、25mM NaCl、1mM DTT、および0.01% BSAを含む緩衝液中で、室温にて反応を実施する。ZAP20およびポリE4Yの終濃度は、それぞれ、20nMおよび5μMである。DMSO中の試験化合物(化合物の終濃度は、1.5% DMSO中で30μMであった)を、上記の成分を含む反応混合物に添加する。γ−33P ATP(終濃度20μM、特異的活性=0.018Ci/mmol)を添加することにより、この反応を開始させる。この反応を12分間進行させ、次いで、200mM ATPを含む10% TCAを添加することによりクエンチする。クエンチした反応物を、Tomtec 9600セルハーベスター(Tomtec、Hamden、CT)を用いて、GF/Cガラス線維フィルタープレート(Packard、Meriden、CT)上で収集する。このプレートを、1mM ATPおよび水を含む5%TCAで洗浄する。50μlのシンチレーション液を、このプレートに添加し、次いで、Packardシンチレーションカウンター(Packard、Meriden、CT)を用いて計数する。阻害性化合物のIC50を、同一のアッセイを用いて、一連の化合物濃度で決定した。
【0196】
本発明者らは、本明細書中でこれまでに本発明の多くの実施形態を示してきたが、本発明者らの基本的な構成が、本発明の方法を利用する他の実施形態を提供するために変更され得ることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【公開番号】特開2012−149085(P2012−149085A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−77626(P2012−77626)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【分割の表示】特願2002−519424(P2002−519424)の分割
【原出願日】平成13年8月10日(2001.8.10)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】