説明

PARP阻害剤による脂肪酸合成の阻害、及びその治療方法

本発明は、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、それを必要としている患者に投与して、脂肪酸合成を阻害するステップを含んで成る、肥満、糖尿病、又は心臓血管疾患であるところの脂肪酸合成関連疾病の治療方法に関する。本発明はまた、対象の癌の治療方法であって、以下のステップ:(i)上記対象からのサンプル中の脂肪酸レベルを確認し、そして(ii)PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、上記脂肪酸レベルに基づいて投与して、上記対象の脂肪酸合成を阻害し、その結果、対象の癌を治療する、を含んで成る前記治療方法に関する。本発明は、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、それを必要としている患者に投与して、脂肪酸合成を阻害することによるHer-2関連癌の治療方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
当該出願は、2006年9月5日付けで出願された米国仮出願番号第60/842,479号の利益を主張し、上記文献の全体を本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸シンターゼ(FAS)は、炭水化物を脂肪酸に変換するのに必要とされる酵素である。正常なヒトでは、脂肪酸合成経路は、十分に高いレベルの食餌性脂肪のため下方制御されている。しかしながら、様々なヒト悪性腫瘍及びそれらの前駆病変、例えば、前立腺癌、卵巣癌、及び乳癌などにおいて、組織は、高レベルの脂肪酸シンターゼを発現し、高レベルの脂肪酸をもたらす。ほとんどのヒトの癌におけるFASの上方制御は、FASが悪性の癌表現型の発現、維持、及び/又は亢進における役割を果たし、そして、FASが抗ガン性医薬品開発の標的となり得るという概念につながる。
【0003】
世界の約12億人は太っていて、その中の少なくとも3億人が肥満体である。合衆国では、9700万人超の成人‐それは半分を超えている‐が、太りすぎであり、そして、成人のほぼ5人に1人が肥満体である。肥満において、脂肪酸合成の低減は、肥満に関する効果的な治療である。
【0004】
FASによるβ-ケトアシル・シンターゼ反応の共有結合的失活剤である、セルレニンを用いた試験管内における癌細胞の治療は、アポトーシスによる細胞死につながり、高活性な脂肪酸合成を伴う癌細胞が機能的経路を必要とすることを実証した(Pizer et al. (1996) Cancer Res. 56, 2745-2747)。しかしながら、セルレニンは、生体内における活性を制限した。FASは、転写、翻訳、及び生合成活性のレベルでHer-2/neuによって調節される遺伝子の1つであることが示された(Menedez et al. (2005) Drug New Perspect, 18(6), July/August)。乳癌関連FASのこのHer-2/neu誘発上方制御は、トラスツズマブなどの抗Her-2/neu抗体によって阻害され得る。脂肪酸合成の阻害剤であるC75を用いた研究は、腫瘍組織における脂肪酸合成の阻害が抗腫瘍活性を示した(Kuhajda et al. (2000) Proc. Natl Acad. Sci. vol. 97, no. 7, 3450-3454)。FAS阻害剤が減量経路を活性化することも示された(Loftus, T.M. et al. (2000) Science 288, 2379-2381)。
【0005】
脂肪酸合成は、癌及び体重増加経路において役割を果たしているので、有効な脂肪酸合成阻害剤を開発する必要性は続くだろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つの態様は、脂肪酸合成及び代謝関連疾病を治療する方法であって、有効量のPARP阻害剤又はその代謝産物を、それを必要とする患者に投与して、脂肪酸合成を阻害するステップを含んで成り、ここで、上記脂肪酸合成関連疾病が、肥満、糖尿病、又は心臓血管疾患である前記方法に関する。
【0007】
本発明のもう1つの態様は、対象の癌を治療する方法であって、以下のステップ:(i)上記対象からのサンプル中の脂肪酸のレベルを確認し、そして、(ii)上記の脂肪酸レベルに基づいて、有効量のPARP阻害剤又はその代謝産物を投与して、脂肪酸合成を阻害し、その結果、対象の癌を治療する、を含んで成る前記方法に関する。
【0008】
本発明のいくつかの実施態様において、脂肪酸は、中鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸である。中鎖脂肪酸には、C:6-C:12が含まれる。長鎖脂肪酸には、12個超の炭素の鎖長が含まれる。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、グルコース経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、アセチルCo-A、マロニルCo-A、アセチルCo-Aカルボキシラーゼ、及び脂肪酸シンターゼから成る群から選択される少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸シンターゼには、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼと、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼが含まれる。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、脂肪酸シンターゼの少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、グルコースからのアセチル-CoAの合成を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、アセチル-CoAからの脂肪酸合成を阻害することを含んで成る。
【0009】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、長鎖脂肪酸はC:14-C:30である。いくつかの実施態様において、長鎖脂肪酸は、C:14、C:16、C:18、C:18-1、C:20、C:22、又はC:24である。いくつかの実施態様において、阻害は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の代謝産物又は分子フラックス(a molecular flux)について分析することによって測定される。いくつかの実施態様において、代謝産物は、グルコース、グリコーゲン、乳酸、CO2、脂肪酸、アセチルCo-A、RNAリボース、及びDNAデオキシリボースから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、代謝産物は、分析のために化学的に誘導体化される。いくつかの実施態様において、分析は、質量分析法を含んで成る。いくつかの実施態様において、質量分析法は、マス・アイソトポマー分布解析(mass isotopomer distribution analysis)である。いくつかの実施態様において、脂肪酸のレベルは上方制御される。
【0010】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤又は代謝産物は、以下の式(I):
【化1】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はプロドラッグである。いくつかの実施態様において、含硫部分は、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}である。
【0011】
本発明の前述の態様のいくつかの好ましい実施態様において、PARP阻害剤又はその代謝産物は、以下の式(II):
【化2】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、独立に、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つが常に水素であり;式中、R6が-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はプロドラッグである。いくつかの実施態様において、R6は、S結合システイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、あるいは、アミノ酸としてジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチド含有システインの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。
【0012】
本発明の前述の態様のいくつかの好ましい実施態様において、PARP阻害剤は、以下の式(III):
【化3】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、代謝産物、又はそのプロドラッグである。
【0013】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、癌は、結腸腺癌、食道腺癌、肝臓肝細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、膵臓腺癌、膵島細胞腫瘍、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質細胞癌、濾胞癌腫、乳頭癌腫、乳癌、腺管癌、小葉癌、管内癌、粘液性癌腫、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒膜細胞腫瘍(granulose cell tumor)、粘液性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰部扁平上皮細胞癌、基底細胞腺癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から成る群から選択される。
【0014】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、治療は、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与(parental administration)、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群から選択される。
【0015】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、対象からのサンプルは、腫瘍組織、髪、血液、細胞、組織、臓器、脳組織、血液、血清、痰、唾液、血漿、ニップル吸引物(nipple aspirant)、滑液、脳脊髄液、汗、尿、糞便、膵液、線維柱帯液(trabecular fluid)、脳脊髄液、涙液、気管支洗浄液、スワビング、気管支吸引物、精液、前立腺液、浸出液(precervicular fluid)、膣液、及び尿道球腺液から成る群から選択される。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、疾患の治療におけるPARP阻害剤又はその代謝産物の治療上の有効性をモニターする方法であって、以下の:(i)患者に有効量のPARP阻害剤又はその代謝産物を投与して、脂肪酸の合成を阻害し;(ii)患者からの最初のサンプルと2番目のサンプル中の脂肪酸のそれぞれ最初のレベルと2番目のレベルを比較するが、ここで、上記の最初のレベル及び最初のサンプルを、PARP阻害剤又はその代謝産物の投与前に入手し、且つ、2番目のレベルと2番目のサンプルを、PARP阻害剤又はその代謝産物の投与後に入手し、そして、(iii)比較に基づいて患者の疾患の治療におけるPARPが阻害剤又はその代謝産物の治療上の有効性を決定する、を含んで成る前記方法に関する。
【0017】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、2番目のサンプル中の2番目の脂肪酸レベルが、最初のサンプル中の最初の脂肪酸レベルより低いとき、その場合には、PARP阻害剤又はその代謝産物が治療上有効である。いくつかの実施態様において、2番目のサンプル中の2番目の脂肪酸レベルが、最初のサンプル中の最初の脂肪酸レベルより高いとき、その場合には、PARP阻害剤又はその代謝産物が治療上無効である。いくつかの実施態様において、脂肪酸の最初のレベル及び2番目のレベルは、アッセイ技術によって測定される。いくつかの実施態様において、脂肪酸の最初のレベル及び2番目のレベルは、質量分析法によって測定される。いくつかの実施態様において、質量分析法は、マス・アイソトポマー分布解析である。
【0018】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤又はその代謝産物は、以下の式(I):
【化4】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施態様において、含硫部分は、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}である。
【0019】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤又はその代謝産物は、以下の式(II):
【化5】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つが、常に水素であり;式中、R6が-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施態様において、R6が、S結合しているシステイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、又はアミノ酸としてシステインを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチドの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。
【0020】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、以下の式(III):
【化6】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。
【0021】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、疾患は、癌、心臓血管疾患、糖尿病、及び肥満である。いくつかの実施態様において、投与は、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群から選択される。いくつかの実施態様、最初のサンプル中の最初の脂肪酸レベルは、患者の病歴から決定される。
【0022】
本発明のもう1つの態様は、Her-2関連癌を治療する方法であって、有効量のPARP阻害剤又はその代謝産物を、それを必要としている患者に投与するステップを含んで成り、ここで、上記PARP阻害剤又はその代謝産物が、脂肪酸合成を阻害する前記方法に関する。本発明のさらに別の態様は、対象のHer-2関連癌を治療する方法であって、以下のステップ:(i)対象からのサンプル中のHer-2発現レベルを測定し、そして、(ii)上記対象に有効量のPARP阻害剤又はその代謝産物を投与して、脂肪酸合成を阻害する、ここで、上記投与は、Her-2発現レベルの定量に基づき、その結果、対象のHer-2関連癌を治療する、
を含んで成る前記方法に関する。
【0023】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸シンターゼの阻害は、脂肪酸合成の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成り、ここで、上記酵素が、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、Her-2発現のレベルは、上方制御される。
【0024】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、PARP阻害剤又はその代謝産物は、以下の式(II):
【化7】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の少なくとも2つが、常に水素であり;式中、R6が-SR6{R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施態様において、R6は、S結合システイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、又はアミノ酸としてシステインを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチドの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。
【0025】
本発明の前述の態様のいくつかの好ましい実施態様において、PARP阻害剤は、以下の式(III):
【化8】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。
【0026】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、治療は、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、サンプルは、癌細胞を含んで成る。いくつかの実施態様において、前記方法は、Her-2抗体を投与するステップをさらに含んで成る。いくつかの実施態様において、前記方法は、外科手術、放射線照射療法、化学療法、遺伝子治療、免疫療法、又はその組み合わせをさらに含んで成る。
【0027】
本発明のさらにもう1つの態様は、代謝性疾患を治療する方法であって、以下の式(II):
【化9】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の中の少なくとも2が、常に水素であり;式中、R6が-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグの有効量を、それを必要としている患者に投与するステップを含んで成る前記方法に関する。いくつかの実施態様において、R5は、S結合システイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、又はアミノ酸としてシステインを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチドの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。いくつかの好ましい実施態様において、式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグが、脂肪酸合成を阻害し、その結果、対象の代謝性疾患を治療する。
【0028】
本発明のさらにもう一つの態様は、対象の癌を治療する方法であって、以下のステップ:(i)対象からのサンプル中の脂肪酸レベルを定量し;(ii)式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグの有効量を、上記対象に投与し、ここで、上記投与が、脂肪酸レベルの定量に基づき、ここで、式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグが、以下の:
【化10】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の中の少なくとも2が、常に水素であり;式中、R6が-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び任意の置換基から成る群から選択される。}である。]を含んで成る、を含んで成る前記方法に関する。いくつかの実施態様において、R6が、S結合システイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、又はアミノ酸としてシステインを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチドの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。いくつかの好ましい実施態様において、式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグは、脂肪酸合成を阻害し、その結果、対象の癌を治療する。
【0029】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る。いくつかの実施態様において、脂肪酸合成の阻害は、脂肪酸シンターゼの少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成り、ここで、上記酵素が、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼから成る群から選択される。いくつかの実施態様において、式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグは、以下の式(III):
【化11】

によって表される化合物又はその代謝産物を含んで成る。
【0030】
本発明の前述の態様のいくつかの実施態様において、治療は、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与から成る群から選択される。いくつかの実施態様において、代謝性疾患は、心臓血管疾患、糖尿病、又は肥満である。いくつかの実施態様において、癌は、例えば、Her-2関連癌、結腸腺癌、食道腺癌、肝臓肝細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、膵臓腺癌、膵島細胞腫瘍、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質細胞癌、濾胞癌腫、乳頭癌腫、乳癌、腺管癌、小葉癌、管内癌、粘液性癌腫、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒膜細胞腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰部扁平上皮細胞癌、基底細胞腺癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫である。
【0031】
援用
本願明細書中で言及されたすべての刊行物及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が具体的、且つ、個別に援用されるべく示されたのと同程度に、本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の新たな特徴は、添付の請求項に詳細に説明されている。本発明の特徴と利点のより良い理解は、本発明の本質が利用されている、例証のための実施態様を説明している以下の詳述、及び以下の添付図面を参照することによって得られるだろう:
【図1】グルコース経路の代謝フラックスを示す。
【図2】グルコース経路の五炭糖と無益回路を示す。
【図3】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、HeLa細胞におけるミリスチン酸合成を阻害することを示す。
【図4】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、HeLa細胞におけるパルミチン酸合成を阻害することを示す。
【図5】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、HeLa細胞におけるステアリン酸合成を阻害することを示す。
【図6】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、HeLa細胞におけるオレイン酸合成を阻害することを示す。
【図7】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、HeLa細胞におけるC:22脂肪酸合成を阻害することを示す。
【図8】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、HeLa細胞におけるC:24脂肪酸合成を阻害することを示す。
【図9】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、OVCAR-3細胞におけるアラキジン酸合成を阻害することを示す。
【図10】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、OVCAR-3細胞におけるC:22脂肪酸合成を阻害することを示す。
【図11】3及び10μMの3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが、OVCAR-3細胞におけるC:24脂肪酸合成を阻害することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義:
用語「アリール」は、炭素原子だけを含む、場合により置換されている単環式又は二環式芳香族環を指す。前記用語にはまた、接着点が芳香族部分にある単環式シクロアルキル又は単環式シクロヘテロアルキル基に融合したフェニル基も含まれる。アリール基の例には、例えば、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、テトラヒドロナフチル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾピラニル、1,4-ベンゾジオキサニル等が含まれる。
【0034】
用語「複素環系」は、各環が約5〜約6個の原子を含むと同時に、少なくとも1種類のヘテロ原子(炭素以外の原子)、例えば、N、O、及びSなど、を含む、場合により置換されている単環式又は二環式芳香族環を指す。複素環基の例には、例えば、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、トリアジニル、チエニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フロ(2,3-b)ピリジル、キノリル、インドリル、イソキノリル等が含まれる。
【0035】
用語「阻害」、又はその文法的な相当語句、例えば、「阻害性」などは、考慮される生物学的活性、例えば、脂肪酸の合成など、の完全な低減を必要としないものとする。そのような低減は、好ましくは、阻害効果の不存在下、例えば、本発明で開示されたPARP阻害剤などの阻害剤の不存在下の分子の活性の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%まで、そして、より好ましくは少なくとも約95%までである。最も好ましくは、前記用語は、脂肪酸合成における観測可能な又は計測可能な低減を指す。治療シナリオにおいて、好ましくは、阻害は、治療される病態における治療上の、及び/又は予防上の利得を生じるのに十分である。
【0036】
用語「医薬として許容されるその塩」は、本明細書中に使用される場合、本発明の化合物の生物学的効果と特性を保ち、且つ、生物学的に又は別の点で望ましくないものではない塩を意味する。
【0037】
用語「対象」、又はその文法的な相当語句は、本明細書中では、健康であるか、罹患しているか、又は疾患に罹患していることが疑われる温血動物、例えば、哺乳動物などを指す。好ましくは、「対象」はヒトを指す。
【0038】
用語「治療」、又はその文法的な相当語句は、本明細書中に使用される場合、治療上の利得、及び/又は予防上の利得を達成することを意味する。治療上の利得は、治療される原因となっている障害の根絶又は改善を意味している。また、治療上の利得は、患者が原因となっている障害に罹患しているにもかかわらず、改善が患者において観察されるような、原因となっている障害に関連する生理学的な症状の1つ以上の根絶又は改善が達成される。予防上の利得のために、組成物は、特定の疾患を発現する危険性がある患者、又はこの疾患の診断がされなかったにもかかわらず、疾患の生理学的な症状の1つ以上が報告された患者に投与する。
【0039】
定義
「ニトロベンズアミド前駆体化合物」は、以下の式(Ia):
【化12】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、(C3-C7)シクロアルキル、及びフェニルから成る群から独立に選択され、式中、R1、R2、R3、R4、及びR5置換基の5つのうち少なくとも2つが、常に水素であり、その5つの置換基のうち少なくとも1つが、常にニトロであり、且つ、ニトロの隣に位置する少なくとも1つの置換基が、常にヨードである。}によって表される化合物、並びに医薬として許容されるその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝産物、類似体、又はプロドラッグを意味する。また、R1、R2、R3、R4、及びR5は、ハロゲン化物、例えば、クロロ、フルオロ、又はブロモなどである。「前駆体化合物」は、代謝化合物をもたらす1つ以上の化学的又は生物化学的過程を(例えば、細胞中、又は生物体中において)受ける化合物である。用語「前駆体」、「前駆体化合物」、「ベンズアミド前駆体」、又は「ニトロベンズアミド前駆体」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0040】
用語「代謝産物」は、開始化合物のものと比べて構造物が異なる生成物をもたらすいずれかの生体外又は生体内における代謝過程を通じて生成される化合物を意味する。言い換えれば、用語「代謝産物」には、ニトロベンズアミド代謝化合物が含まれる。代謝産物には、式(Ia)に示される前駆体化合物などの前駆体化合物に対して、いずれかの位置に存在する異なった数又はタイプの置換基が含まれる可能性がある。加えて、代謝産物には、本明細書中に記載の化合物に対して、いずれかの位置に存在する異なった数又はタイプの置換基が含まれる可能性がある。加えて、用語「代謝産物」、「代謝化合物」、「ベンズアミド代謝化合物」、又は「ニトロベンズアミド代謝化合物」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0041】
「外科手術」は、治癒的、治療的、又は診断的な効果を生じる、ヒト又は他の哺乳動物の体に対する手又は道具を持った手の動作を伴ういずれかの治療又は診断手段を意味する。
【0042】
「放射線治療」は、これだけに制限されることなく、X線、γ線、及び中性子を含めた高エネルギー放射線に患者を晒すことを意味する。このタイプの治療法には、これだけに制限されることなく、外部ビーム治療法、内部放射線治療法、インプラント放射線照射、小線源療法、全身的放射線照射療法、及び放射線治療法が含まれる。
【0043】
「化学療法」は、静脈内、経口、筋肉内、腹腔内、膀胱内、皮下、経皮、口腔剤、若しくは吸入法を含めた様々な方法、又は坐剤の形態による、癌患者への1種類以上の抗癌剤、及び/又は他の作用物質の投与を意味する。化学療法は、それを摘出する外科的処置の前に大きな腫瘍を縮ませるために、外科手術の前に与えられ、いくらかの体内に残った癌細胞の成長を予防するために、外科手術又は放射線照射療法の後に与えられるかもしれない。
【0044】
用語「有効量」又は「医薬としての有効量」は、無毒であるが、所望の生物学的、治療的、及び/又は予防的な成果を提供するのに十分な作用物質の量を指す。その成果は、標徴、症状、若しくは疾患の原因の低減、及び/又は緩和、あるいは、何か他の所望される生体系の変調である。例えば、治療用途に関する「有効量」は、疾患の臨床的に有意な軽減をもたらすのに必要とされる、本明細書中に開示されるニトロベンズアミド代謝化合物それ自体、又は本明細書中のニトロベンズアミド代謝化合物を含んで成る組成物の量である。あらゆる個々の症例における適切な有効量が、日常的な実験を使用して当業者によって決定されるかもしれない。
【0045】
用語「PARP阻害剤又はその代謝産物」には、PARP阻害剤それ自体、並びにそれらの化合物の活性代謝産物である化合物が含まれる。いくつかの実施態様において、前述のPARP阻害剤の代謝産物は、単離されたか否かに関係なく、PARP阻害剤それ自体である。いくつかの実施態様において、前述のPARP阻害剤の代謝産物は、本明細書中により詳細に記載される医薬として許容される剤形を作るために1種類以上の医薬として許容される構成要素と組み合わせられる前に、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%の純度まで、又は純粋になるまで単離され、そして、精製される。PARP阻害剤の代謝産物は、本明細書中により詳細に記載されるPARP阻害剤「前駆体化合物」又は「前駆体」の代謝された形態である。
【0046】
「医薬として許容される」又は「薬理学的に許容される」は、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない材料を意味する、すなわち、その材料は、あらゆる望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく、又はそれが含まれている組成物のいずれかの成分と、有害な様式で相互作用することなく、個人に投与されるかもしれない物質を意味する。
【0047】
用語「治療」又はその文法的な相当語句には、本明細書中で使用される場合、治療上の利得、及び/又は予防上の利得を達成することが挙げられる。治療上の利得は、治療されるべき原因となっている障害の根絶又は改善を意味している。例えば、癌患者では、治療上の利得には、原因となっている癌の根絶又は改善が含まれる。また、治療上の利得は、患者が原因となっている障害にまだ罹患しているかもしれないという事実にもかかわらず、改善が患者で観察されるように、原因となっている障害に関連する生理学的な症状の1つ以上の根絶又は改善により達成される。予防上の利得について、癌を発現する危険性のある患者、又は、その病態の診断がないけれど、そのような病態の生理学的な症状の1つ以上が報告された患者に対して、本発明の方法が実施されるか、又は本発明の組成物が投与されるかもしれない。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「BA」は、4-ヨード-3-ニトロベンズアミドを意味し;「BNO」は、4-ヨード-3-ニトロソベンズアミドを意味し;「BNHOH」は、4-ヨード-3-ヒドロキシアミノベンズアミドを意味する。
【0049】
ニトロベンズアミド代謝化合物
本発明で有用なPARP阻害剤(前駆体化合物)は、以下の式(Ia):
【化13】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、(C3-C7)シクロアルキル、及びフェニルから成る群から独立に選択され、式中、R1、R2、R3、R4、及びR5置換基の5つのうち少なくとも2つが常に水素であり、その5つの置換基のうち少なくとも1つが常にニトロであり、そして、ニトロの隣に位置する少なくとも1つの置換基が常にヨードである。}によって表されるもの、及び医薬として許容されるその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝産物、類似体、又はプロドラッグである。R1、R2、R3、R4、及びR5はまた、クロロ、フルオロ、又はブロモ置換基などのハロゲン化物である。
【0050】
式(Ia)によって表される好ましい(PARP阻害剤)前駆体化合物は、以下のものである:
【化14】

【0051】
本発明で有用なPARP阻害剤の代謝産物は、以下の式(IIa):
【化15】

{式中、(1)R1、R2、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも1つが、常に含硫置換基であり、且つ、R1、R2、R3、R4、及びR5の残りの置換基が、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、(C3-C7)シクロアルキル、及びフェニルから成る群から独立に選択され、式中、R1、R2、R3、R4、及びR5の5つの置換基のうち少なくとも2つが、常に水素であるか、あるいは、(2)R1、R2、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも1つが含硫置換基でなく、且つ、R1、R2、R3、R4、及びR5の5つの置換基のうち少なくとも1つが、常にヨードであり、そして、式中、上述のヨードが、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ、若しくはアミノ基であるR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接している、のいずれかである。}によって表されるのもの、及び医薬として許容されるその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝産物、類似体、又はプロドラッグである。いくつかの実施態様において、(2)によって表される化合物は、ヨード基が、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ、又はアミノ基であるR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接するようなものである。いくつかの実施態様において、(2)によって表される化合物は、ヨード基が、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、又はアミノ基であるR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接するようなものである。いくつかの実施態様において、含硫置換基は、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}である。
【0052】
以下の組成物は、それぞれ化学式によって表された式(IIa)によって包含される一部の好ましいPARP阻害剤代謝化合物である:
【化16】

[式中、R6は水素、アルキル(C1-C8)、アルコキシ(C1-C8)、イソキノリノン、インドール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルである。]
【化17】

【化18】

【0053】
いずれか1つの特定の作用機序に限定されないが、次のものは、ニトロレダクターゼ又はグルタチオン抱合作用機序によるMS292代謝の例を提供する:
【化19】

【0054】
BAグルタチオン抱合と代謝:
【化20】

【0055】
本発明は、乳腺の腺管癌を含めた他の乳癌、末梢血の急性前骨髄球性白血病を含めた白血病の他の形態、卵巣癌、肺癌、膀胱癌、前立腺癌、膵臓癌、及び子宮頚癌、並びに本明細書中に記載の他の癌タイプの治療のための前述のニトロベンズアミド代謝化合物の使用を提供する。
【0056】
ニトロベンズアミド代謝化合物が、悪性癌細胞に対して選択的細胞毒性をもつが、非悪性癌細胞に対してそれをもたないことが報告された。Rice et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7703-7707 (1992)を参照のこと。1つの実施態様において、本発明の方法で利用されるニトロベンズアミド代謝化合物は、非腫瘍細胞に比べて、腫瘍細胞に向けてより選択的な毒性を示すかもしれない。
【0057】
本発明の1つの態様は、脂肪酸合成を阻害するポリ(ADP)リボース・ポリメラーゼ酵素(PARP)阻害剤の有効量を投与することによって、脂肪酸合成関連疾病を治療する方法を提供する。脂肪酸合成関連疾患には、これだけに制限されることなく、癌、糖尿病、肥満、ニーマン-ピック病、ゴーシェ病、異染性白質萎縮症、ファブリー病、ヒアリン膜症、テイ-サックス病、サンドホフ病、クラッベ病、フコース症、スルファチド脂質症(sulfatide lipodosis)、及びファーバーの脂肪肉芽腫症が含まれる。脂肪酸合成関連疾病には、脂肪酸代謝に異常がある疾患が含まれる。
【0058】
脂肪酸合成はまた、炎症(主に関節、皮膚、及び眼のもの)、(分娩誘発を含めた)生殖機能、胃酸分泌の阻害、血管拡張又は収縮を通じた血圧調節、及び血小板凝集と血栓形成の阻害又は活性化にも関連する。いくつかの好ましい実施態様において、脂肪酸合成関連疾病には、肥満、糖尿病、又は心臓血管疾患が含まれる。
【0059】
本発明のもう1つの態様は、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を投与するのによる、対象における癌治療の方法に関し、ここで、上記PARP阻害剤又はその代謝産物が脂肪酸合成を阻害する。前記方法は、対象のサンプル中の脂肪酸レベルを定量し、そして、脂肪酸レベルに基づき、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を投与して、脂肪酸合成を阻害することによって、その結果、対象における癌を治療する、対象における癌を治療することに特に関する。
【0060】
試験サンプルは、起源から得られたそのままを使用するか、又はサンプルの特徴を修正するための前処理に続いて使用してもよい。サンプルは、どんな生物学的起源、例えば、細胞を含めた組織又は抽出物、及び生理液、例えば、全血、血漿、血清、唾液、眼レンズ液(ocular lens fluid)、脳脊髄液、汗、尿、ミルク、アスコット液(ascots fluid)、滑液、腹水等に由来してもよい。サンプルは、動物又はヒトから、好ましくはヒトから得られる。サンプルは、例えば、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈等、使用の前に処理されてもよい。サンプルを処理する方法には、濾過、蒸留、抽出、濃縮、干渉性成分の不活性化、試薬の添加等が含まれうる。
【0061】
通常、正常なヒトでは、脂肪酸生合成経路は下方制御されていて、且つ、体内の脂肪酸の大部分は食餌性脂肪に由来する。しかしながら、癌に罹患しているヒトでは、脂肪酸生合成経路が上方制御されていて、腫瘍組織において高レベルの脂肪酸をもたらす。様々な癌における上方制御された脂肪酸合成は、脂肪酸合成が腫瘍増殖に利益をもたらすことを示唆している。脂肪酸合成の阻害は、細胞死を引き起こし得る細胞膜脂質の減少をもたらす可能性がある(Khaddar et al. Proc. Natl. Acad. Sic. 1994, vol. 91, p. 6379-6383)。本発明は、脂肪酸合成を阻害するところのPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を用いた癌治療を提供する。様々な癌には、これだけに制限されることなく、膀胱、乳房、結腸、直腸、前立腺、卵巣、唾液腺、皮膚付属器、胆管、子宮頚内膜、子宮頚膣部、膣、食道、鼻咽頭、口腔咽頭、又は生殖細胞起源のもの、胃、子宮内膜、腎臓、肝臓、及び肺の癌腫若しくは腺癌、黒色腫及び中皮腫が含まれる。
【0062】
本発明のいくつかの実施態様において、前記方法には、脂肪酸合成を阻害するところのPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を投与することによるHer-2関連癌の治療が含まれる。本発明の範囲を制限しないものとして、脂肪酸シンターゼ(FAS)触媒デノボ脂肪酸生合成は、Her-2/neu(erbB-2)癌遺伝子の発現と活性を特異的に調節するその能力の効力によって癌表現型に寄付するかもしれない(Menendez JA et al. Drug News Perspect. 2005, 18(6), 375-85; Menendez JA et al. J. Cell Biochem. 2005, 94(5), 857-63)。PARP阻害剤又はその代謝産物による脂肪酸合成の阻害は、Her-2関連癌の治療をもたらす可能性がある。
【0063】
本発明のいくつかの実施態様において、Her-2関連癌の治療方法は、対象からのサンプル中のHer-2発現レベルを測定し、そして、その対象からのサンプル中のHer-2発現レベルの定量に基づいて、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を上記対象に投与して、脂肪酸合成を阻害することが含まれる。一部の好ましい実施態様において、サンプルは、癌細胞を含んで成る。サンプル中のHer-2発現レベルが高いなら、患者は、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を用いて治療される。本発明の範囲を制限することなしに、PARP阻害剤又はその代謝産物は、脂肪酸合成を阻害し、その結果、Her-2関連癌を治療する。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤又はその代謝産物は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の1つ以上の酵素を阻害することによって脂肪酸合成を阻害する。いくつかの実施態様において、PARP阻害剤又はその代謝産物は、Her-2抗体と組み合わせて投与される。Her-2抗体の例は、ハーセプチンである。
【0064】
いくつかの好ましい実施態様において、前記方法は、脂肪酸合成を阻害するところのPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を投与することによる肥満の治療が含まれる。肥満は、成人の間で一般的になり、子供や若者で急速に増えている重大な健康問題である。肥満は、広範な身体的、感情的、及び社会経済的な問題に結びついた。肥満軽減のための本発明の方法は、ヒトと、脊椎動物、特に哺乳動物を含めた他の動物に適切である。動物には、筋肉量の減少を伴わない脂肪蓄積の減少が、獣医学的な健康、又は経済的理由によって望ましいところの家禽、ブタ、ウシ、ヒツジ、及び他の動物が含まれる。PARP阻害剤は、本発明の方法に従って、獣医学の健康上の理由のためにイヌ、ネコ、ウマ、及び他の動物に投与されてもよい。
【0065】
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、前記方法は、脂肪酸合成を阻害するところのPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を投与することによる心臓血管疾患の治療が含まれる。一部の人々において、過剰な体脂が、心臓病や脳卒中を含めた血管病に関して高い危険性を招く。腹腔内堆積物内に蓄積された脂肪の増加は、アテローム硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスク因子の増加に関連し、且つ、それを招く可能性がある。ASCVDのリスク因子には:高血圧症、血中コレステロール、特にLDL-コレステロール・レベルの上昇、糖尿病、及び高血糖が含まれる。高血圧症の人々は、一種の前糖尿病である耐糖能異常を発現しやすい。
【0066】
いくつかの好ましい実施態様において、前記方法には、脂肪酸合成を阻害するところのPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を投与することによる糖尿病の治療が含まれる。糖尿病に罹患している患者は、いくつかの脂質異常のいずれかを患っている可能性がある。糖尿病患者の一般的な脂質特徴には、正常に比べて低いレベルの高密度リポタンパク質(HDL)に加えて、トリグリセリド、低密度リポタンパク質(LDL)、及び超低密度リポタンパク質(VLDL)レベルの上昇が含まれる。これらの因子の組み合わせ効果は、アテローム性動脈硬化症と血栓形成の促進をもたらす。その他の疾患には、これだけに制限されることなく、高インスリン血症、インスリン抵抗性、心筋梗塞、脂肪肝、多嚢胞性卵巣症候群、血色素症、非アルコール性脂肪性肝炎、糖尿病性腎臓疾患などが含まれる。
【0067】
対象の脂肪酸レベルがPARP阻害剤又はその代謝産物を用いた治療前に測定されることが好ましい一方で、熟練した臨床医は、そのような定量が常に必要であるわけではないことに気付くだろう。PARP阻害剤又はその代謝産物を用いた癌患者の治療後の腫瘍組織量の減少は、治療前の腫瘍における脂肪酸レベルの上昇の存在を実証した。癌患者が本願発明の方法によって首尾よく治療され得る場合には、対象の脂肪酸レベルの独立した定量が不必要である可能性がある。脂肪酸レベルの上昇を発現することが通常分かっているタイプの癌のそのような実証的な治療もまた、本発明の範囲内にある。
【0068】
本発明のもう1つの態様は、脂肪酸合成を阻害するためにPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を患者に投与し;患者からの最初と2番目のサンプル中の最初と2番目の脂肪酸レベル(ここで、最初のレベルと最初のサンプルをPARP阻害剤又はその代謝産物の投与前に得、及びPARP阻害剤又はその代謝産物の投与後に2番目のレベルと2番目のサンプルを得る)を比較し;そして、その比較に基づいて、患者の疾患の治療におけるPARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性を判断することによる、疾患の治療におけるPARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性をモニターする方法に関する。
【0069】
最初のサンプルからの最初の脂肪酸レベルは、患者へのPARP阻害剤又はその代謝産物の投与の直前に測定されても、又は患者へのPARP阻害剤又はその代謝産物の投与の数日前、数週前、数ヶ月前、又は数年前に得られてもよい。最初のサンプルからの最初のレベルは、患者の病歴から得られてもよい。2番目のサンプルからの2番目の脂肪酸レベルが、最初のサンプルからの最初の脂肪酸レベルより低いことが分かり、その結果、PARP阻害剤又はその代謝産物による患者の脂肪酸合成の阻害を示し、したがって、PARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性を示すことができる。2番目のサンプルからの2番目の脂肪酸レベルが、最初のサンプルからの最初の脂肪酸レベルより高いことが分かり、その結果、PARP阻害剤又はその代謝産物のより低い治療有効性を示すかもしれない。PARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性のそのような観察は、患者のための投薬量の調整、及び投薬レジメンの個別化に有用である。そのような観察もまた、臨床実験において使用できる。
【0070】
本発明の方法における脂肪酸合成の阻害は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の1種類以上の酵素の阻害を含む可能性がある。本発明の範囲を制限することなく、グルコース経路と脂肪酸生合成経路にかかわる様々なステップと酵素が、本明細書中に開示される。いずれか1種類以上のステップ、及び/又は酵素が、本発明のPARP阻害剤又はその代謝産物によって阻害される可能性がある。
【0071】
グルコース経路
グルコースの酸化は、グルコースが乳酸又はピルビン酸のいずれかに酸化するところの解糖として知られている。好気的条件下では、ほとんどの組織における生成物はピルビン酸であるので、その経路は好気的解糖として知られている。例えば、長時間の激しい運動中のように酸素を使い果たしたとき、多くの組織において優位な糖分解生成物は乳酸であるので、その過程は嫌気的解糖として知られている。解糖の経路は、2つの別個の段階から成ると考えられる。第1段階では、2当量のATPが、グルコースからフルクトース1,6-ビスリン酸(F1,6BP)への変換のために使用される。第2段階では、4当量のATP及び2当量のNADHの産生を伴って、F1,6BPが、ピルビン酸に分解される(図1及び2を参照のこと)。
【0072】
グルコース6-リン酸(G6P)を形成するためのグルコースのATP依存性リン酸化は、解糖の最初の反応であり、そして、ヘキソキナーゼとして知られている組織特異的イソ酵素によって触媒される。ヘキソキナーゼの4種類の哺乳動物アイソザイムが知られていて(I〜IV型)、IV型アイソザイムは、多くの場合、グルコキナーゼと呼ばれる。グルコキナーゼは、肝細胞で見つけられた酵素の形態である。ヘキソキナーゼとグルコキナーゼの活性の調整もまた、異なっている。ヘキソキナーゼI、II、及びIIIは、生成物(G6P)蓄積によってアロステリックに阻害される一方で、グルコキナーゼはそうでない。後者は、エネルギーを末梢組織に供給するのにグルコースが必要であるときに、末梢のグルコース利用を助けながら、グルコース過剰な期間のグルコース貯蔵の肝臓蓄積をさらに確保する。
【0073】
解糖の2番目の反応は、G6Pがフルクトース6-リン酸(F6P)に変換される異性化である。この反応を触媒する酵素は、ホスホヘキソース・イソメラーゼ(別名ホスホグルコース・イソメラーゼ)である。解糖の次の反応は、F6Pをフルクトース1,6-ビスリン酸(F1,6BP)に変換するための2つ目のATPの利用を伴う。この反応は、ホスホフルクトキナーゼ-1又はPFK-1としてよりよく知られている6-ホスホフルクト-1-キナーゼによって触媒される。フルクトース・ユニットは、加水分解酵素であるフルクトース1,6-ビスホスファターゼ(F-1,6-BPase)の遍在的存在のため、容易に反対(糖新生)の方向に流れる。同じ細胞コンパートメント内のこれらの2種類の酵素の存在は、調節されないなら急速に細胞エネルギー貯蔵を使い果たすだろう代謝性無益回路の例を提供する。しかしながら、これらの2種類の酵素の活性は、PFK-1が解糖の律速酵素であると考えられ、及びF-1,6-BPaseが、糖新生における律速酵素であると考えられるほど高度に調節されている。
【0074】
アルドラーゼは、2つの3炭素生成物:ジヒドロキシアセトンリン酸(DHAP)とグリセルアルデヒド3-リン酸(G3P)へのF1,6BPの加水分解を触媒する。アルドラーゼ反応は、逆方向に容易に進み、解糖と糖新生の両方に利用される。アルドラーゼ反応の2つの生成物は、トリオースリン酸イソメラーゼによって触媒される反応によって容易に平衡化する。続いて起こる解糖の反応は、基質としてG3Pを利用し;これにより、アルドラーゼ反応は質量作用の原理によって糖分解方向に引き寄せられる。
【0075】
グルコース異化の第2段階は、ATPとNADHを産生するエネルギー生成糖分解反応を特徴とする。これらの反応で最初に、グリセルアルデヒド-3-Pデヒドロゲナーゼ(G3PDH)が、G3Pの、1,3-ビスホスホグリセリン酸(1,3BPG)とNADHへのNAD+依存性酸化を触媒する。G3PDH反応が可逆的であるので、同じ酵素が、糖新生の間、逆反応を触媒する。
【0076】
1,3-BPGの高エネルギーリン酸は、酵素、ホスホグリセリン酸キナーゼによるATPと3-ホスホグリセリン酸(3PG)を形成するのに使用される。赤血球における重要な反応である、酵素ビスホスホグリセリン酸ムターゼによる2,3-ビスホスホグリセリン酸(2,3BPG)の形成が、ホスホグリセリン酸キナーゼ経路に関連する。2,3BPGは、酸素に対するヘモグロビンの親和性の重要な調節物質である。2,3-ビスホスホグリセリン酸ホスファターゼは、2,3BPGを、解糖の正常中間体である3-ホスホグリセリン酸に分解する。これにより、2,3BPGシャントは、そのシャントを通過するトリオースあたり1当量のATPの消費により作動する。
【0077】
解糖の残りの反応は、ホスホグリセリン酸ムターゼによって3PGを2PGに変換することが目的とされ、そして、ホスホエノルピルビン酸(PEP)への2PG変換はエノラーゼによって触媒される。好気的解糖の最終的な反応は、高度に調節している酵素のピルビン酸キナーゼ(PK)によって触媒される。この発エルゴン反応では、PEPの高エネルギーリン酸が、ATPとして蓄積される。PEPによるリン酸の損失は、不安定なエノール型のピルビン酸の産生につながり、上記エノール型は、より安定したピルビン酸のケト型に自然に互変異性化する。嫌気的条件下、及び好気的条件下の赤血球において、ピルビン酸は、酵素の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によって乳酸に変換され、そして、その乳酸は細胞から循環内に輸送される。
【0078】
好気的条件下では、ほとんどの細胞においてピルビン酸はTCAサイクルを介してさらに代謝される。ピルビン酸は、TCAサイクルで優先的にCO2とH2Oに酸化する。ミトコンドリアに輸送されると、ピルビン酸は、2種類の主要な代謝酵素:ピルビン酸カルボキシラーゼ(糖新生酵素)とピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)(PDH複合体の最初の酵素)に遭遇する。エネルギー充足率が低いときに、CoAはアシル化されず、ピルビン酸カルボキシラーゼは不活性であるので、ピルビン酸が、PDH複合体とTCAサイクルの酵素によって優先的にCO2とH2Oに代謝される。PDH複合体は、3つの別々の酵素の複数のコピー:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(20〜30コピー)、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(60コピー)、及びジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(6コピー)を含んで成る。前記複合体はまた、5つの異なった補酵素:CoA、NAD+、FAD+、リポ酸、及びチアミンピロリン酸(TPP)も必要とする。PDH複合体の反応の最終結果は、以下の:
ピルビン酸+CoA+NAD+→CO2+アセチル-CoA+NADH+H+
となる。
【0079】
PDH複合体の反応は、解糖、糖新生、及び脂肪酸合成の代謝経路をTCAサイクルに相互接続する。
【0080】
脂肪酸生合成経路
脂肪酸は、基質であるアセチルCoA、マロニルCoA、及びNADPHを使用する脂肪酸シンターゼ(FAS)によって合成される。これにより、脂肪酸合成経路は、通常、4つの酵素、FAS、及びその基質を産生する3つの酵素:アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)、リンゴ酸酵素、及びクエン酸リアーゼを含むと考えられる。経路に基質を送り込むことができる他の酵素、例えば、ヘキソース一リン酸シャントを介してNADPHを産生する酵素などもまた、脂肪酸合成速度に影響するので、これにより、細胞において、それは内因的に合成された脂肪酸に依存する。これらの酵素の発現又は活性の阻害は、内因的に合成された脂肪酸に依存する癌細胞の増殖に影響する。
【0081】
マロニル-CoAの合成は、脂肪酸合成の最初のステップであり、この反応を触媒する酵素であるアセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)は、脂肪酸合成の調整部位である。CO2を基質に移す他の酵素のように、ACCはビオチン補因子を必要とする。アセチル-CoA及びマロニル-CoAからの脂肪酸の合成は、脂肪酸シンターゼ、FASによって行われる。活性酵素は、同一のサブユニットから成る二量体である。
【0082】
脂肪酸合成の反応のすべてが、FASの多様な酵素活性によって行われる。脂肪の酸化のように、脂肪合成は4つの酵素活性に関与する。これらは、β-ケト-ACPシンターゼ、β-ケト-ACPレダクターゼ、3-OHアシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-CoAレダクターゼである。2回の還元反応が、NADPHのNADP+への酸化に必要である。FASによって合成される一次脂肪酸は、パルミチン酸である。
【0083】
パルミチン酸は、16:0脂肪酸である、すなわち、16個の炭素があり、且つ、不飽和部位がない。次に、パルミチン酸が酵素から放出され、そして、次に、別々の伸長、及び/又は不飽和化を受けて、他の脂肪酸分子を生み出す。脂肪酸の伸長と不飽和化は、ミトコンドリアと小胞体の両方(ミクロゾーム膜)において起こる。これらの過程の主要な部位は、ER膜にある。伸長は、マロニルCoAとのアシル-CoA基の縮合を伴う。飽和脂肪酸を得る還元、脱水、及び還元を受けて得られた産物は、炭素2個だけ長い(FAS反応のようにCO2がマロニルCoAから放出される)。伸長の還元反応は、まさしくFASによって触媒された類似反応のように、補因子としてNADPHを必要とする。ミトコンドリアによる伸長は、アセチル-CoAユニットを伴い、且つ、最終的な還元が補因子としてFADH2の代わりにNADPHを利用することを除いて、酸化の反転である。
【0084】
不飽和化もまた、ER膜、おまけに哺乳動物細胞内で起こり、且つ、4種類の広い特異性をもつ脂肪アシルCoAデサチュラーゼ(非ヘム鉄酵素)を伴う。これらの酵素は、C4、C5、C6、又はC9に不飽和を導入する。不飽和化中に酸化型脂肪酸から移された電子は、デサチュラーゼからシトクロムb5に、次に、NADH‐シトクロムb5レダクターゼまで移る。一部の飽和脂肪酸には、これだけに制限されることなく、ラウリン酸(C:12)、ミリスチン酸(C:14)、パルミチン酸(C:16)、ステアリン酸(C:18)、オレイン酸(C:18-1)、アラキジン酸(C:20)、C:22、及びC:24が含まれる。一部の不飽和酸には、これだけに制限されることなく、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、アラキドン酸、オレイン酸、及びエルカ酸が含まれる。
【0085】
分析技術
対象のサンプル中の脂肪酸のレベルの定量、又はPARP阻害剤又はその代謝産物を用いた治療後の脂肪酸合成の阻害の定量には、これだけに制限されることなく、酵素アッセイ、ガス・クロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)などの質量分析、質量選択検出器分析(MSD)、化学イオン化及び選択モニタリング(SIM)、マス・アイソトポマー分布解析(MIDA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又は核磁気共鳴(NMR)を含めた当該技術分野で知られている様々な検出方法が含まれる。
【0086】
PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を用いた対象の治療後の脂肪酸合成の阻害の定量は、対象からのサンプル中の様々な代謝産物、グルコースの分子フラックス、又は脂肪酸生合成経路を分析することを含むかもしれない。前記定量は、基準サンプルとの1回以上の比較を含む。基準サンプルは、通常、同じ対象、又は疾患に罹患していないか(正常な対象)、又は患者である別の対象から得る。基準サンプルは、1の対象、複数の対象から得られるか、又は合成によって作り出されるかもしれない。識別はまた、識別データのデータベースとの比較を伴う。本発明の1つの実施態様は、癌などの疾患に罹患した対象の脂肪酸レベルを定量し、そして、正常な対象の脂肪酸レベルとそれを相関させることに関する。疾患に罹患した対象において脂肪酸レベルが上方制御されているなら、その対象は、脂肪酸の合成を阻害するPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量で治療される。
【0087】
いくつかの実施態様において、脂肪酸レベルの比較ステップは、ソフトウェア・アルゴリズムによって実施される。好ましくは、生成されたデータは、コンピュータの読み込み可能な形態に変換され;そして、病的な患者の脂肪酸レベルと正常な対象の脂肪酸レベルを表すシグナルを検出するために、ユーザ入力パラメータによりデータを分類するアルゴリズムは実行される。
【0088】
本発明の方法により分析され得るグルコースの代謝産物又は脂肪酸生合成経路には、これだけに制限されることなく、脂肪酸又はその代謝産物、酵素、グルコース、グルタミン酸、グリコーゲン、乳酸、CO2、アセチルCo-A、RNAリボース、及びDNAデオキシリボースが含まれる。グルコースの分子フラックス、又は脂肪酸生合成経路には、これだけに制限されることなく、培地からのグルコース摂取;グルコースからの乳酸生成(嫌気的解糖);TCAサイクルを介したグルコースから13CO2の放出;TCAサイクル・アナプレロティック・フラックス;グリコーゲン合成;デノボ脂肪酸合成、伸長、不飽和化、及びアセチル-CoA合成、並びに酸化及び非酸化反応を介したペントース・サイクル‐RNA及びDNAリボース合成が含まれる。代謝産物は、抽出後と分析前に化学的に誘導体化される。分析技術は、当該技術分野で周知であり、且つ、本発明の範囲内にある。
【0089】
アッセイ技術には、活性分析若しくは染色、抗体を使用した免疫学的アッセイ、FAS mRNAなどの酵素のmRNAを計測するアッセイ等が含まれる。グルコース経路又は脂肪酸生合成経路に関与する酵素の発現は、例えば、免疫組織化学、サイトゾル酵素免疫学的アッセイ若しくは放射免疫測定、mRNA標的と核酸のin situハイブリダイゼーション、又は酵素活性度の直接測定などのアッセイを使用して、例えば、生検検体、切除術、又は針吸引などの手順によって得られた腫瘍組織サンプル中で直接測定され得る。酵素の発現は、いずれかの好適なアッセイを使用して、対象から得られた生体液サンプル、例えば、血液、尿、血清、リンパ液、唾液、精液、腹水、又は特に血漿などにおいて間接的に計測される。好ましいアッセイには、酵素免疫学的アッセイ又は放射免疫測定が含まれる。
【0090】
いくつかの実施態様において、細胞、組織、又は生物体に対するPARP阻害剤又はその代謝産物の治療上の利得は、PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量の投与後の細胞、組織、又は生物体における、例えば、脂肪酸などの複数の代謝産物の合成又は除去の速度を分析することによって決定されてもよい。この方法によって、PARP阻害剤又はその代謝産物による脂肪酸合成の阻害が、観察され得る。
【0091】
本発明のいくつかの好ましい実施態様において、グルコース又は脂肪酸生合成経路の代謝産物又は分子フラックスが、マス・アイソトポマー分布解析(MIDA)によって分析される。いくつかの実施態様において、全細胞、細胞の一部、組織、又は生物体内の複数の代謝産物の分子フラックス速度が分析される。1種類以上の同位体標識代謝産物又は代謝産物前駆体を、1種類以上の同位体標識が細胞、組織、又は生物体内の複数の代謝産物中に組み込まれるのに十分な期間、細胞、組織、又は生物体に投与される。培地又は細胞ペレットが、細胞、組織、又は生物体から回収される。細胞ペレット又は培地中の個々の代謝産物に相当するイオンの複数のマス・アイソトポマー・エンベロープが、質量分析によって定量される。加えて、それぞれの同定された代謝産物に相当する同位体エンベロープ内のイオンの相対及び絶対マス・アイソトポマー存在度は、質量分析法で定量化される。これらの相対及び絶対のマス・アイソトポマー存在度は、それぞれの同定された代謝産物の合成又は除去の速度が計算されることを可能にし、その結果、複数の代謝産物の分子フラックス速度が測定されることを可能にする。いくつかの実施態様において、代謝産物は、質量分析計への導入前に誘導体化される。誘導体化は、例えば、代謝産物を生化学的に分解するか、又は代謝産物を化学的に変えることなどの当該技術分野で知られているいずれかの方法である。
【0092】
同位体標識には、2H、13C、15N、18O、35S、34Sなどの生体分子内に存在している元素の特異的な重同位元素が含まれるか、又は生体分子内に存在している元素の他の同位体、例えば、3H、14C、35S、125I、131Iなどが含まれる。同位体標識代謝産物は、これだけに制限されることなく、2H2O、15NH313CO2、H13CO32H標識アミノ酸、13C標識アミノ酸、15N標識アミノ酸、18O標識アミノ酸、33S又は34S標識アミノ酸、3H2O、3H標識アミノ酸、14C標識アミノ酸、14CO2、又はH14CO2などが含まれる。
【0093】
代謝フラックスの概算が、生体内における生化学反応の定常状態速度を明らかにすることに関係する。フラックスに関する知識が、着目の生成代謝産物の高収率に向けた代謝経路の最適化において助けとなる。13C標識基質の使用は、2つの代謝産物の間に2つ以上の代替経路があるとき、細胞の細胞内フラックスを定量化する方法である。本発明において、[1,2-13C2]-D-グルコースが、グルコースの唯一の供給源として培地に使用される。追跡方法は、アイソトポマー分布、すなわち、それらの相対的量による代謝産物の異なった13C-同位体バージョンを計測することに基づく。各代替経路を使用したときに予想される分布と、計測したアイソトポマー分布を比較することによって、経路間のフラックスの分布についての情報が推論され得る。
【0094】
原子の位置アイソトポマー分布を測定する2つの方法、核磁気共鳴(NMR)と質量分析(MS)が存在する。MSは、液体(LC-MS)又はガス(GC-MS)クロマトグラフィー分離と組み合わせてもよい。前記方法はまた、位置アイソトポマー分布と、これにより、さらにフラックスについて詳しい情報を得るために組み合わせてもよい。本発明のいくつかの好ましい実施態様において、原子のアイソトポマー分布と代謝フラックスは、質量分析法によって測定される。使用される質量分光学方法は、電子衝突(EI)イオン化と完全走査モードを備えたGC-MS法である。代謝産物分子のマス・アイソトポマーが、高いエネルギーのため、電離箱内で同時に断片化されるので、1組のフラグメント・イオンがスペクトル中に観察される。GCタンデム質量分光分析法(GC-MS/MS)が使用されるとき、着目のアイソトポマー・イオンは、追加的な情報を得るために、選ばれ、そして、断片化されてもよい(娘イオン・スキャニング)。分析された代謝産物の多くに極性があるので、誘導体化は、GC-MS分析法のために十分に揮発性であるように代謝産物を変換する必要があるかもしれない。アイソトポマー分布計算では、脚色試薬(dramatizing reagent)からの原子もまた、考慮される。LC-MS法で、エレクトロスプレーイオン化(ESI)が極性代謝産物を分析するために使用されるとき、通常、誘導体化は必要ないかもしれない。
【0095】
アイソトポマー分布がタンデム質量分析データから確認可能である程度は、2つの態様に依存する可能性がある:1つ目に、マス・アイソトポマーの周波数が、対応するピークに関して、確実に検出されるために十分であることが必要であるかもしれない。2つ目に、分子の断片化が、十分であることが必要であるかもしれない。それぞれのアイソトポマーの存在度を完全に特定するために、すべての組の炭素に関して、厳密にその炭素の1つが現れる断片であることが必要であるかもしれない。
【0096】
PARP阻害剤又はその代謝産物を用いた治療
本発明における使用に好適な化合物は、脂肪酸合成を阻害する化合物である。好ましくは、前記阻害剤(及びその代謝産物)は、PARP阻害剤である。本明細書中に提供される化合物による脂肪酸合成の阻害は、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の1種類以上の酵素の阻害を含み得る。本発明の好ましいPARP阻害剤は、以下の式(I):
【化21】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施態様において、前記含硫部分は、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}である。
【0097】
別の好ましいPARP阻害剤は、以下の式(II):
【化22】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の中の少なくとも2つが常に水素であり;式中、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施態様において、R6は、S結合システイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、又はアミノ酸としてシステインを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチドの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。
【0098】
好ましいPARP阻害剤は、以下の式(III):
【化23】

によって表される3-ニトロ-4-ヨードベンズアミド、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである。
【0099】
本発明のいくつかの実施態様は、脂肪酸合成を阻害するところの以下の式(II):
【化24】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基の中の少なくとも2つが、常に水素であり;式中、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグの有効量をそれを必要としている患者に投与し、その結果、上記対象の代謝性疾患を治療する、代謝性疾患の治療方法に関する。いくつかの実施態様において、R6は、S結合システイン部分の残基であるか、単一のシステイン・アミノ酸であるかもしれないか、アミノ酸としてシステインを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくは高次ペプチドの一部を形成するかもしれないところの、場合により置換されている(C1-C6)アルキルである。
【0100】
本発明は、式(I)によって表される化合物の代謝産物の使用をさらに想定する。本発明で有用ないくつかの代謝産物は、以下の式(IIa):
【化25】

{式中、(1)R1、R2、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも1つが常に含硫置換基であり、且つ、R1、R2、R3、R4、及びR5の残りの置換基が、水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ヨード、ブロモ、フルオロ、クロロ、(C1-C6)アルキル、(C1-C6)アルコキシ、(C3-C7)シクロアルキル、及びフェニルから成る群から独立に選択され、式中、R1、R2、R3、R4、及びR5置換基の中の少なくとも2つが、常に水素であるか;あるいは、(2)R1、R2、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも1つが、含硫置換基ではなく、且つ、R1、R2、R3、R4、及びR5の5つの置換基のうち少なくとも1つが、常にヨードであり、そして、ここで、上述のヨードが、ニトロ、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ、若しくはアミノ基のいずれかであるところのR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接している、のいずれかである。}によって表されるもの、及び医薬として許容されるその塩、溶媒和物、異性体、互変異性体、代謝産物、類似体、又はそのプロドラッグである。いくつかの実施態様において、(2)によって表される化合物は、ヨード基が、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ、又はアミノ基であるところのR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接するようなものである。いくつかの実施態様において、(2)によって表される化合物は、ヨード基が、ニトロソ、ヒドロキシアミノ、又はアミノ基であるところのR1、R2、R3、R4、又はR5基に常に隣接するようなものである。
【0101】
以下の組成物が、化学式によってそれぞれ表された好ましい代謝化合物である:
【化26】

[式中、R6は水素、アルキル(C1-C8)、アルコキシ(C1-C8)、イソキノリン、インドール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チオフェン、又はフェニルからなる群から選ばれる。]
【化27】

【化28】

【0102】
いくつかの実施態様において、本明細書中に提供するような化合物の代謝産物が、本発明の方法において使用されるかもしれない。例えば、代謝産物には、「Treatment of Cancer」と題された米国特許出願;発明者Ernest Kun、Jerome Mendeleyev、Carol Basbaum、Hassan Lernjabbar-Alaoui、及びValeria Ossovskaya;2006年9月5日付けで出願;代理人整理番号第28825-729.101号に記載のものが含まれる、上記文献の全体を本明細書中に援用する。
【0103】
本発明のいくつかの実施態様は、対象からのサンプル中の脂肪酸レベルを測定し、そして、脂肪酸レベルの定量に基づき、式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグの有効量を上記対象に投与することによる対象の癌を治療する方法に関する。式(II)によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグが、脂肪酸合成を阻害し、その結果、対象の癌を治療する。
【0104】
代表的な塩は、無機イオンのもの、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム・イオン等である。そのような塩には、無機又は有機酸をもつ塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、又はマレイン酸などが含まれる。加えて、化合物がカルボキシ基又は他の酸性基を含むなら、それは無機又は有機塩基を用いて医薬として許容される付加塩に変換される。好適な塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が含まれる。
【0105】
本明細書中に記載のPARP阻害剤は、1つ以上の不斉中心を含み得るので、これにより、ラセミ体及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、並びにジアステレオマー混合物として生じる。これらの化合物のそのような異性体型のすべてが、本発明に明示的に含まれる。本明細書中に記載のPARP阻害剤はまた、多様な互変異性型でも表されていて、そのすべてが本明細書中に含まれる。PARP阻害剤はまた、cis-、trans-、E-、又はZ-二重結合異性体型でも生じるかもしれない。そのような異性体型のそのような阻害剤のすべてが、本発明に明示的に含まれる。本明細書中に記載のPARP阻害剤の結晶形のすべてが、本発明に明示的に含まれる。PARP阻害剤もまた、それらの医薬として許容される塩、誘導体、又はプロドラッグとして存在し得る。
【0106】
当該技術分野で知られている他のPARP阻害剤が存在し、そして、それらは本発明の範囲内にある。PARP阻害剤は、PARPの触媒部位に、天然基質であるNADと競合して結合するところのベンズアミドの類似体として設計されている。PARP阻害剤には、これだけに制限されることなく、ベンズアミド、キノロン及びイソキノロン、ベンゾピロン、メチル3,5-ジヨード-4-(4’-メトキシフェノキシ)安息香酸、及び3,5-ジヨード-4(4’-メトキシフェノキシ)アセトフェノンが含まれる(US 5,464,871、US 5,670,518、US 6,004,978、US 6,169,104、US 5,922,775、US 6,017,958、US 5,736,576、及びUS 5,484,951、上記文献の全体を本明細書中に援用する)。PARP阻害剤には、NAD部位において強力な阻害剤であるところの様々な環状ベンズアミド類似体(すなわち、ラクタム)が含まれる。他のPARP阻害剤には、これだけに制限されることなく、ベンゾイミダゾール及びインドールが含まれる(EP 841924、EP 1127052、US 6,100,283、US 6,310,082、US 2002/156050、US 2005/054631、WO 05/012305、WO 99/11628、及びUS 2002/028815)。当該技術分野で知られている他のPARP阻害剤はまた、脂肪酸の合成を阻害するので、本発明の範囲内にある(2006年6月12日付けで出願された米国特許出願番号第60/804,563号、上記文献の全体を本明細書中に援用する)。
【0107】
癌型
本発明における癌には、これだけに制限されることなく、結腸腺癌、食道腺癌、肝臓肝細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、膵臓腺癌、膵島細胞腫瘍、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質細胞癌、濾胞癌腫、乳頭癌腫、乳癌、腺管癌、小葉癌、管内癌、粘液性癌腫、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒膜細胞腫瘍、粘膜性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰部扁平上皮細胞癌、基底細胞腺癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫が含まれる。
【0108】
その他の癌の例には、これだけに制限されることなく、副腎皮質性癌、肛門癌、無形成性貧血、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨転移癌、成人CNS脳腫瘍、小児CNS脳腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頚癌、幼児期非ホジキン・リンパ腫、結直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング・ファミリーの腫瘍、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎癌、喉頭及び下咽頭癌、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、小児白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓癌、肺カルチノイド腫瘍、非ホジキン・リンパ腫、男性乳癌、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、膵臓癌、陰茎癌、脳下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(成人軟組織癌)、黒色腫皮膚癌、非黒色腫皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、腟癌、外陰部癌、及びヴァルデンストレーム・マクログロブリン血症が含まれる。
【0109】
本発明によって提供された方法は、他の治療法と組み合わせたPARP阻害剤の投与を含んで成るかもしれない。本発明の組成物と同時投与される治療法の選択は、1つには、治療される病態次第である。例えば、急性骨髄性白血病を治療するために、PARP阻害剤は、放射線照射療法、モノクローナル抗体治療法、化学療法、骨髄移植、遺伝子治療、免疫療法、又はそれらの組み合わせと組み合わせて使用される。
【0110】
Her-2関連癌
1つの態様において、本発明は、PARP阻害剤の有効量を投与することによるHer-2関連癌の治療方法を提供する。Her-2疾患は、一種の乳癌である。攻撃的な増殖と予後不良を特徴とし、腫瘍細胞における、過剰な数のHER2(ヒト上皮成長因子受容体-2)と呼ばれる遺伝子の存在に起因する。本明細書中に開示されるPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る治療法は、これだけに制限されることなく、例えば、ハーセプチンなどのHer-2抗体、抗ホルモン(例えば、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるタモキシフェン)、化学療法や放射線療法、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、及びエキセメスタン)、並びに抗エストロゲン剤(例えば、フルバスタチン(Faslodex))が含まれる。
【0111】
乳癌
1つの態様において、本発明は、これだけに制限されることなく、乳腺内の管組織における腺管癌を含めた乳癌の治療方法を提供する。
【0112】
上皮内小葉癌と非浸潤性乳管癌は、それぞれ、腺小葉と管において発現する乳癌であるが、乳房を囲む脂肪組織、又は身体の他の領域に拡散しないかもしれない。浸潤性(又は侵襲性)小葉癌と腺管癌は、それぞれ、腺小葉と管で発現し、そして、乳房の脂肪組織、及び/又は身体の他の部分のいずれかに拡散する癌である。本発明の方法によって提供される治療の利得を受ける乳房のその他の癌は、髄様癌と、粘液性癌腫と、管状癌と、炎症性乳癌である。
【0113】
いくつかの実施態様において、本発明は、いわゆる「トリプルネガティブ」乳癌の治療を提供する。古典的なバイオマーカーによって識別された乳癌のいくつかのサブクラス、例えば、エストロゲン受容体(ER)、及び/又はプロゲステロン受容体(PR)陽性腫瘍、HER2増幅腫瘍、及びER/PR/HER2陰性腫瘍などが存在する。これらの3つのサブタイプが、多様な乳癌における遺伝子発現プロファイルによって再現性よく識別され、そして、基本のようなサブタイプ発現プロファイルと予後不良を示す。トリプルネガティブ乳癌は、ER/PR/HER2陰性の腫瘍を特徴とする。
【0114】
卵巣癌
もう1つの態様において、本発明は、これだけに制限されることなく、上皮性卵巣腫瘍、卵巣の腺癌、及び卵巣から腹腔内に移動した腺癌を含めた卵巣癌の治療方法を提供する。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用される卵巣癌に関する治療には、これだけに制限されることなく、外科手術、免疫療法、化学療法、ホルモン療法、放射線照射療法、又はその組み合わせが含まれる。いくつかの可能な外科的処置には、デバルキング、及び片側だけ又は両側の卵巣切除術、及び/又は片側だけ又は両側の卵管切除術が含まれる。
【0115】
併用療法で使用される抗癌剤には、シクロホスファミド、エトポシド、アルトレトアミン(altretamine)、及びイホスファミドが含まれる。薬物のタモキシフェンを用いたホルモン療法は、卵巣腫瘍を縮小するために使用できる。放射線治療は、外照射療法、及び/又は小線源療法である。
【0116】
子宮頚癌
もう1つの態様において、本発明は、これだけに制限されることなく、子宮頚部上皮における腺癌を含めた子宮頚癌の治療方法を提供する。この癌の2つの主要なタイプ:扁平上皮細胞癌と腺癌、が存在する。一部の子宮頚癌は、これらの両方の特徴を有し、そして、腺扁平上皮癌腫又は混合性癌腫と呼ばれる。
【0117】
前立腺癌
もう1つの態様において、本発明は、これだけに制限されることなく、腺癌又は骨に移動した腺癌を含めた前立腺癌の治療方法を提供する。前立腺癌は、尿道の最初の部分を取り囲む、男性の前立腺臓器において発現する。
【0118】
膵臓癌
もう1つの態様において、本発明は、これだけに制限されることなく、膵管組織における類上皮癌腫、及び膵管における腺癌を含めた膵臓癌の治療方法を提供する。
【0119】
本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用される治療には、これだけに制限されることなく、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、及び化学療法が含まれる。可能な手術療法の選択肢には、遠位又は総膵切除術と、膵十二指腸切除(ウィップル手順)が含まれる。放射線照射が体外の機器によって腫瘍に集められるところの外部ビーム放射線照射などの放射線治療は、膵臓癌患者のための選択肢である。別の選択肢は、術中に施される術中電子ビーム照射である。
【0120】
膀胱癌
もう1つの態様において、本発明は、これだけに制限されることなく、膀胱の移行細胞癌を含めた膀胱癌の治療方法を提供する。膀胱癌は、尿路上皮癌(移行細胞癌)又は膀胱を内張りする尿路上皮細胞の腫瘍である。膀胱癌の残りの症例は、扁平上皮細胞癌と、腺癌と、小細胞癌である。それらが非侵襲性であるか又は侵襲性であるか、及びそれらが乳頭状であるか又は扁平であるかよって、いくつかの尿路上皮癌のサブタイプが存在する。非侵襲性の腫瘍が膀胱の最内層である尿管上皮に存在するのに対して、浸潤癌は尿管上皮から膀胱の主たる筋壁の深層まで広がった。侵襲性の乳頭状尿路上皮癌は、膀胱の中空に分岐し、且つ、膀胱壁内に外側にも増殖する細長い指のような突起である。非侵襲性の乳頭状尿路上皮腫瘍は、膀胱の中心に向かって増殖する。非侵襲性の扁平尿路上皮腫瘍(別名、扁平上皮内癌)が、膀胱の内面の空洞部分に最も近い細胞層に限定されるのに対して、侵襲性の扁平尿路上皮癌は、膀胱の深層、特に筋層に浸潤する。
【0121】
本発明のPARP阻害剤と組み合わせて膀胱癌の治療に使用される治療法には、外科手術、放射線照射療法、免疫療法、化学療法、又はその組み合わせが含まれる。一部の外科的な選択肢が、経尿道的切除、膀胱切除、又は根治的膀胱切除である。膀胱癌のための放射線治療には、外部ビーム放射線照射と小線源療法が含まれる。
【0122】
免疫療法は、膀胱癌患者を治療するのに使用される別の方法である。1つの方法が、結核ワクチンに使用されることもある細菌がカテーテルを通して膀胱に直接与えられるところのカルメット-ゲラン桿菌(BCG)である。体は細菌に対して免疫応答を開始し、その結果、癌細胞を攻撃し、そして、殺滅する。免疫療法の別の方法は、免疫応答を調節する糖タンパク質であるインターフェロンの投与である。インターフェロンαは、多くの場合、膀胱癌を治療するために使用される。
【0123】
膀胱癌を治療するのに組み合わせて使用される抗癌剤には、チオテパ、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、イホスファミド、ゲムシタビン、又はその組み合わせが含まれる。
【0124】
急性骨髄性白血病
もう1つの態様において、本発明は、急性骨髄性白血病(AML)、好ましくは末梢血の急性前骨髄性白血病の治療方法を提供する。AMLは骨髄で始まるが、例えば、リンパ節、肝臓、脾臓、中枢神経系、及び精巣を含めた身体の他の部分に拡散する可能性がある。AMLは、複製され、そして、蓄積し続ける、通常、顆粒球か単球である未成熟な骨髄細胞を特徴とする。
【0125】
AMLは、本発明のPARP阻害剤と組み合わせた他の治療法で治療されてもよい。そのような治療法には、これだけに制限されることなく、免疫療法、放射線照射療法、化学療法、骨髄又は末梢血幹細胞移植、又はその組み合わせが含まれる。放射線治療法には、外部ビーム放射線照射が含まれ、そして、副作用がある可能性がある。AMLを治療するための化学治療法に使用される抗癌剤には、シタラビン、アントラサイクリン、アントラセンジオン、イダルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、チオグアニン、ビンクリスチン、プレドニゾン、エトポシド、又はその組み合わせが含まれる。
【0126】
モノクローナル抗体治療が、AML患者を治療するために使用される。体内の白血病細胞を殺滅する手段を提供するために、小分子又は放射性化学薬品が、患者への投与前にこれらの抗体に付属されるかもしれない。AML細胞のCD33に結合するモノクローナル抗体であるゲムツズマブ・オゾガマイシンは、従前の化学療法を許容できないAML患者を治療するために使用される。骨髄又は末梢血幹細胞移植が、AML患者を治療するために使用される。一部の可能な移殖手順が、同種又は自己移植である。
【0127】
本発明によって提供された方法により治療され得る他のタイプの白血病には、これだけに制限されることなく、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、骨髄形成異常、及び骨髄増殖性疾患が含まれる。
【0128】
肺癌
もう1つの態様において、本発明は肺癌の治療方法を提供する。肺癌の一般的なタイプは、扁平上皮細胞癌、腺癌、及び大細胞未分化癌に分類される非小細胞肺癌(NSCLC)である。本発明のPARP阻害剤と組み合わせた肺癌のための治療の選択肢には、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、化学療法、光力学療法、又はその組み合わせが含まれる。肺癌の治療のためのいくつかの可能な外科的な選択肢は、区域若しくは楔状切除、葉切除術、又は一側肺全摘術である。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法である。
【0129】
肺癌を治療するために化学療法で使用されるいくつかの抗癌剤には、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドセタクセル、ゲムシタビン、ビノレルビン、イリノテカン、エトポシド、ビンブラスチン、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イホスファミド、メトトレキサート、又はその組み合わせが含まれる。光力学的療法(PDT)は、肺癌患者を治療するために使用できる。
【0130】
皮膚癌
もう1つの態様において、本発明は、皮膚癌の治療方法を提供する。皮膚で始まる数タイプの癌が存在する。最も一般的なタイプは、非黒色腫皮膚癌である基底細胞腺癌と扁平上皮細胞癌である。光線性角化症は、時々、扁平上皮細胞癌になる肌の状態である。非黒色腫皮膚癌は、身体の他の部分にめったに拡散しない。皮膚癌の最も稀な形態である黒色腫は、近くの組織に侵入して、身体の他の部分に拡散する傾向がより強い。
【0131】
本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る異なったタイプの治療には、これだけに制限されることなく、外科手術、放射線照射療法、化学療法、及び光力学療法が含まれる。皮膚癌の治療のためのいくつかの可能な外科的な選択肢が、モース顕微鏡手術と、単純切除術と、電気乾燥法と掻爬、凍結外科手術、及びレーザー手術である。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法であり得る。他のタイプの治療には、生物学的療法若しくは免疫療法、化学免疫療法、フルオロウラシルを用いた局所的化学療法、及び光力学療法が含まれる。
【0132】
眼癌、網膜芽細胞腫
もう1つの態様において、本発明は、眼の網膜芽細胞腫の治療方法を提供する。網膜芽細胞腫は網膜の悪性腫瘍である。腫瘍は、片眼だけに、又は両眼にある可能性がある。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用される治療の選択肢には、摘出(眼を取り出す手術)、放射線照射療法、凍結療法、光凝固、免疫療法、温熱療法、及び化学療法が含まれる。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法であり得る。
【0133】
眼癌、眼球内黒色腫
もう1つの態様において、本発明は、眼内(眼)黒色腫の治療方法を提供する。眼球内黒色腫は、癌細胞が葡萄膜と呼ばれる眼の部分に見つかる疾患である。葡萄膜には、虹彩、毛様体、及び脈絡膜が含まれる。眼球内黒色腫は、ほとんどの場合、中年の人で起こる。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用される治療には、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、及びレーザー療法が含まれる。外科手術は、眼球内黒色腫の最も一般的な治療である。いくつかの可能な外科的な選択肢は、虹彩切除、虹彩線維柱帯切除(iridotrabeculectomy)、虹彩毛様体切除、脈絡膜切除(choroidectomy)、摘出、及び眼窩内容除去である。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法であり得る。レーザー治療は、腫瘍を破壊する非常に強力な光線、温熱療法、又は光凝固であり得る。
【0134】
子宮内膜癌
もう1つの態様において、本発明は、子宮内膜癌の治療方法を提供する。子宮内膜癌は、子宮の内側の内壁である子宮内膜で始まる癌である。子宮及び子宮内膜の癌の例のいくつかには、これだけに制限されることなく、腺癌、腺類癌、腺扁平細胞癌、乳頭状漿液性腺癌、明細胞腺癌、子宮肉腫、間質性肉腫、悪性中胚葉性混合腫瘍、及び平滑筋肉腫が含まれる。
【0135】
肝臓癌
もう1つの態様において、本発明は、原発性肝癌(肝臓で始まる癌)の治療方法を提供する。原発性肝癌は、成人と子供の両方に起こり得る。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る異なったタイプの治療は、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、化学療法、及び経皮的エタノール注入法が含まれる。使用され得る外科手術のタイプは、凍結外科手術、部分肝切除、肝臓全摘出、及び高周波アブレーションである。放射線治療は、外照射療法、小線源療法、放射線増感剤、又は放射標識抗体であり得る。他のタイプの治療には、温熱療法と免疫療法が含まれる。
【0136】
腎癌
もう1つの態様において、本発明は、腎癌の治療方法を提供する。腎癌(別名、腎細胞癌又は腎臓腺癌)は、悪性細胞が腎臓で細管の内壁で見つかる疾患である。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る治療には、外科手術、放射線照射療法、化学療法、及び免疫療法が含まれる。腎癌を治療するいくつかの可能な外科的な選択肢は、部分腎摘出、単純腎切除、及び根治的腎摘出である。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法であり得る。幹細胞移植が、腎癌を治療するために使用され得る。
【0137】
甲状腺癌
もう1つの態様において、本発明は、甲状腺癌の治療方法を提供する。甲状腺癌は、癌(悪性)細胞が甲状腺の組織で見つかる疾患である。甲状腺癌の4つの主たるタイプは、乳頭癌、濾胞性癌、髄様癌、及び未分化癌である。甲状腺癌は、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、ホルモン療法、及び化学療法によって治療され得る。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得るいくつかの可能な外科的な選択肢は、これだけに制限されることなく、葉切除術、甲状腺全摘、甲状腺摘出、及びリンパ節切除が含まれる。放射線療法は、体外照射療法であり得るか、又は放射性ヨウ素が含まれる液体の摂取が求められる可能性がある。ホルモン療法は、癌細胞が成長するのを止めるホルモンを使用する。甲状腺癌を治療する際に、ホルモンは、体が癌細胞を増殖させるかもしれない他のホルモンを作るのを止めるために使用され得る。
【0138】
AIDS関連癌
AIDS関連リンパ腫
もう1つの態様において、本発明は、AIDS関連リンパ腫の治療方法を提供する。AEDS関連リンパ腫は、悪性細胞が後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹った患者のリンパ系で形成される疾患である。AIDSは、体の免疫系を攻撃し、そして、弱めるところのヒト免疫不全ウィルス(HIV)によって引き起こされる。免疫系は、その後、体に侵入する感染症及び疾患と戦うことができない。HIV疾患の人々には、感染症、リンパ腫、及び他のタイプの癌を発現する高い危険性がある。リンパ腫は、リンパ系の白血球に影響する癌である。リンパ腫は、2つの一般的なタイプ:ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫、に分類される。ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の両方がAIDS患者に起こり得るが、非ホジキンリンパ腫がより一般的である。AIDS保菌者が非ホジキンリンパ腫に罹っていると、それはAIDS関連リンパ腫と呼ばれる。非ホジキンリンパ腫は、緩慢性(増殖遅延型)又は侵攻性(急速増殖型)であり得る。AIDS関連のリンパ腫は、通常、侵攻性である。AIDS関連リンパ腫の3つの主要なタイプは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞免疫芽球性リンパ腫、及び小型非開裂細胞性リンパ腫である。
【0139】
高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は、HIVの進行を遅らせるために使用される。重篤になり得る感染症の予防及び治療のための薬もまた、使用される。AIDS関連リンパ腫は、化学療法、免疫療法、放射線照射療法、及び幹細胞移植を伴う高投与量化学療法によって処理され得る。放射線治療は、外部ビーム放射線照射療法又は小線源療法であり得る。AIDS関連のリンパ腫は、モノクローナル抗体療法によって治療され得る。
【0140】
カポジ肉腫
1つの態様において、本発明は、カポジ肉腫の治療方法を提供する。カポジ肉腫は、癌細胞が、皮膚、又は口、鼻、及び肛門を内張りする粘膜の下の組織で見つかる疾患である。カポジ肉腫は、免疫阻害剤を服用した人々において起こり得る。後天性免疫不全症候群(AIDS)に罹った患者のカポジ肉腫は、流行性カポジ肉腫と呼ばれる。カポジ肉腫は、外科手術、化学療法、放射線照射療法、及び免疫療法によって治療され得る。体外照射療法が、カポジ肉腫の一般的な治療である。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る治療には、これだけに制限されることなく、局所切除、電気乾燥法や掻爬、及び凍結療法が含まれる。
【0141】
ウイルス誘発性癌
もう1つの態様において、本発明は、ウイルス誘発性癌の治療方法を提供する。主要なウイルス‐悪性腫瘍系には、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、及び肝細胞癌腫;ヒト・リンパ球向性ウイルス1型(HTLV-1)及び成人T細胞白血病/リンパ腫;及びヒト乳頭腫ウイルス(HPV)や子宮頚癌が含まれる。
【0142】
ウイルス誘発性肝細胞癌腫
HBVとHCV、及び肝細胞癌腫又は肝臓癌は、細胞死とその後の再生を引き起こすことによって肝臓における慢性的な複製によって作動するように見える。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る治療には、これだけに制限されることなく、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、化学療法、及び経皮的エタノール注入法が含まれる。使用できる外科手術のタイプは、凍結外科手術、部分肝切除、肝臓全摘出、及び高周波アブレーションである。放射線治療は、外照射療法、小線源療法、放射線増感剤、又は放射標識抗体であり得る。他のタイプの治療には、温熱療法と免疫療法が含まれる。
【0143】
ウイルス誘発性成人T細胞白血病/リンパ腫
成人T細胞性白血病は、血液と骨髄の癌である。本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る成人T細胞性白血病/リンパ腫の治療には、これだけに制限されることなく、放射線照射療法、免疫療法、及び化学療法が含まれる。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法であり得る。成人T細胞性白血病/リンパ腫を治療する他の方法には、免疫療法、及び幹細胞移植を伴った高投与量化学療法が含まれる。
【0144】
ウイルス誘発性子宮頚癌
ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の子宮頚部への感染は、子宮頚癌の原因である。本発明のPARP阻害剤を組み合わせて使用され得る子宮頚癌の治療には、これだけに制限されることなく、外科手術、免疫療法、放射線照射療法、及び化学療法が含まれる。使用され得る外科手術のタイプは、円錐切除、子宮全摘出、両側卵管卵巣摘出、広汎性子宮全摘出、骨盤内容除去、凍結外科手術、レーザー手術、及び電気外科的ループ切除法である。放射線治療は、外照射療法又は小線源療法であり得る。
【0145】
CNS癌
脳及び脊髄腫瘍は、頭蓋骨、又は中枢神経系(CNS)の主な構成要素である骨性脊柱に見られる組織の異常増殖である。良性腫瘍は、非癌性であり、そして、悪性腫瘍は癌腫である。脳又は脊髄で起こる腫瘍は、原発腫瘍と呼ばれる。原発腫瘍は、特定の遺伝的疾患(例えば、神経線維腫症、結節性硬化症)から、又は放射線照射若しくは発癌性化学物質への暴露から生じ得る。
【0146】
成人の原発性脳腫瘍は、血液脳関門を作り上げ、そして、中枢神経系の栄養摂取に寄与する星状細胞と呼ばれる脳の細胞に由来する。これらの腫瘍は、神経膠腫(星状細胞腫、未分化星細胞腫、又は多形膠芽腫)と呼ばれる。一部の腫瘍は、これだけに制限されることなく、乏突起神経膠腫、上衣腫、髄膜腫、リンパ腫、神経鞘腫、及び髄芽腫である。
【0147】
CNSの神経上皮腫瘍
星状細胞腫瘍、例えば、星状細胞腫など;未分化(悪性)星状細胞腫、例えば、大脳半球、間脳、眼、脳幹、小脳などのもの;多形膠芽腫;毛様細胞性星状細胞腫、例えば、大脳半球、間脳、眼、脳幹、小脳などのもの;上衣下巨細胞性星状細胞腫;及び多形性黄色星状膠細胞腫。乏突起膠腫、例えば、腫瘍乏突起神経膠腫など;及び未分化(悪性)乏突起神経膠腫。上衣細胞腫瘍、例えば、上衣腫など;未分化上衣腫;粘液乳頭型脳室上衣腫;及び上衣下細胞腫。混合膠腫、例えば、混合乏突起星細胞腫など;未分化(悪性)乏突起星細胞腫;及び他のもの(例えば、上衣‐星状細胞腫(ependymo-astrocytomas))。不確実な起源の神経上皮腫瘍、例えば、極性海綿芽細胞腫;星状芽細胞腫;及び大脳神経膠腫症など。脈絡叢の腫瘍、例えば、脈絡叢乳頭腫;及び脈絡叢癌(未分化脈絡叢乳頭腫)など。ニューロン性及び混合性ニューロン性神経膠腫、例えば、神経節細胞腫;小脳の形成異常の神経節細胞腫(レルミット‐デュクロ);神経節膠腫;未分化(悪性)神経節膠腫;線維形成性乳児神経節膠腫、例えば、線維形成性乳児性星状細胞腫;中枢神経細胞腫;胚芽異形成性神経上皮腫瘍;臭覚性神経芽細胞腫;神経上皮腫など。松果体実質腫瘍、例えば、松果体細胞腫;松果体芽腫;及び混合性松果体細胞腫/松果体芽腫など。神経芽細胞又は膠芽細胞要素(胚芽腫)を有する腫瘍、例えば、髄様上皮腫など;多分化能分化を有する原始神経外胚葉腫瘍、例えば、髄芽腫;脳の原始神経外胚葉腫瘍;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;及び脳室上衣芽腫など。
【0148】
他のCNS新生物
トルコ鞍部の腫瘍、例えば、脳下垂体腺腫;下垂体癌;及び頭蓋咽頭腫など。造血器腫瘍、例えば、原発性悪性リンパ腫;形質細胞腫;及び顆粒球性肉腫など。胚細胞腫瘍、例えば、胚細胞腫;胚性癌腫;卵黄嚢腫瘍(内胚葉性洞腫瘍);絨毛癌;奇形腫;及び混合性胚細胞腫瘍など。髄膜の腫瘍、例えば、髄膜腫;異型髄膜腫;及び未分化(悪性)髄膜腫など。髄膜の非髄膜上皮性腫瘍、例えば、良性間葉;悪性間葉;一次メラノサイト病巣;造血系新生物;及び血管芽腫などの不確実な組織形成の腫瘍(毛細血管芽腫)など。脳及び脊髄神経の腫瘍、例えば、シュワン腫(神経線維腫症、神経鞘腫);神経線維腫;例えば、類上皮、分岐間葉若しくは上皮分化、及び黒色性などの悪性末梢神経鞘腫(悪性シュワン腫)など。局所腫瘍からの局所的な伸展;例えば、傍神経節腫(ケモデクトーマ);脊索腫;軟骨腫;軟骨肉腫;及び癌腫など。転移腫瘍、分類不能な腫瘍、並びに包嚢及び腫瘍様病変、例えば、ラトケ嚢腫;類上皮腫;類皮腫;第3脳室のコロイド嚢胞;腸性嚢胞;神経膠包嚢;顆粒細胞腫(分離腫、下垂体細胞腫);視床下部ニューロン性過誤腫;鼻腔内異所性膠細胞);及び形質細胞肉芽腫など。
【0149】
利用可能な化学療法剤は、これだけに制限されることなく、アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、BCNU、CCNU、ダカルバジン、プロカルバジン、ブスルファン、及びチオテパなど;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、及びクラドリビンなど;アントラサイクリン、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、及びミトキサントロンなど;抗生物質、例えば、ブレオマイシンなど;カンプトテシン、例えば、イリノテカン及びトポテカンなど;タキサン、例えば、パクリタキセル及びドセタクセルなど;並びにプラチナ、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンなど、である。
【0150】
PNS癌
末梢神経系は、脳と脊髄から枝分かれした神経から成る。これらの神経は、CNSと身体部分の間の通信網を形成する。末梢神経系は、体性神経系と不随意神経系にさらに細分される。体性神経系は、皮膚と筋に向かう神経から成り、意識的な活性に関与する。不随意神経系は、心臓、胃、腸などの内臓とCNSを接続する神経から成る。それは無意識の活性を媒介する。
【0151】
聴神経腫は、平衡神経(balance nerve)、別名、第八脳神経又は内耳神経から生じる良性の繊維状腫瘍である。悪性末梢神経鞘腫(MPNST)は、神経線維腫やシュワン腫などの良性軟組織腫瘍に対する悪性の対応物である。それは、深部軟組織、通常、神経幹の極めて近接において最も一般的である。最も一般的な部位には、坐骨神経、腕神経叢、及び仙骨神経叢が含まれる。
【0152】
MPNSTは、類上皮細胞、間葉、又は腺性を特徴とする三大カテゴリに分類される。一部のMPNSTには、これだけに制限されることなく、軟骨質分化を伴う皮下悪性類上皮シュワン腫、腺性悪性シュワン腫、神経鞘分化を伴う悪性末梢神経鞘腫、杆状特性を有する皮膚の類上皮悪性神経鞘腫瘍、表層類上皮MPNST、トリトン腫瘍(横紋筋芽細胞分化(rhabdomyoblastic differentiation)伴うMPNST)、横紋筋芽細胞分化を伴うシュワン腫が含まれる。稀なMPNST症例には、多様な肉腫性の組織タイプ、特に骨肉腫、軟骨肉腫、及び血管肉腫が含まれる。これらは、軟組織の悪性間葉腫と区別がつかないこともある。
【0153】
他のタイプのPNS癌には、これだけに制限されることなく、悪性線維性細胞腫、悪性線維性組織球腫、悪性髄膜腫、悪性中皮腫、及び悪性混合性ミューラー腫瘍が含まれる。
【0154】
口腔及び中咽頭癌
口腔の癌には、これだけに制限されることなく、下咽頭癌、喉頭癌、上咽頭癌、及び中咽頭癌が含まれる。
【0155】
胃癌
胃癌の3つの主要なタイプ:リンパ腫、胃間質腫瘍、及びカルチノイド腫瘍が存在する。リンパ腫は、胃壁で見つかることもある免疫系組織の癌である。胃間質腫瘍は、胃壁の組織から発達する。カルチノイド腫瘍は、胃のホルモン産生細胞の腫瘍である。
【0156】
精巣癌
精巣癌は、通常、若年男性の片方の又は両方の精巣で発現する癌である。精巣の癌は、生殖細胞として知られている特定の細胞において発現する。男性に起こる2タイプの胚細胞腫(GCTs)は、精上皮腫(60%)と非精上皮腫(40%)である。腫瘍はまた、精巣の支持組織及びホルモン産生組織、又は間質において生じ得る。そのような腫瘍は、生殖腺間質腫として知られている。2つのタイプは、ライディッヒ細胞腫とセルトーリ細胞腫である。二次精巣腫瘍は、別の臓器で始まり、次に精巣に拡散したものである。リンパ腫は、二次精巣癌である。
【0157】
胸腺癌
胸腺は、あなたの胸の上/前部に位置し、喉の基底部から心臓の前まで広がる小さな臓器である。胸腺には、2つの主要な細胞型、胸腺上皮細胞及びリンパ球が含まれる。胸腺上皮細胞は、胸線腫と胸腺癌の起源となる。リンパ球は、胸腺又はリンパ節にかかわらず、悪性になって、そして、ホジキン病と非ホジキンリンパ腫と呼ばれる癌を発現する可能性がある。胸腺癌には、通常、特定のホルモンを放出する、クルチツキー細胞又は神経内分泌細胞が含まれる。これらの細胞は、カルチノイド又はカルチノイド腫瘍と呼ばれる癌を生じ得る。
【0158】
本発明のPARP阻害剤と組み合わせて使用され得る治療には、これだけに制限されることなく、外科手術、免疫療法、化学療法、放射線照射療法、化学療法と放射線照射療法又は生物療法の組み合わせが含まれる。胸線腫と胸腺癌の治療に使用される抗腫瘍薬は、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、イホスファミド、及びコルチコステロイド(プレドニゾン)である。
【0159】
栄養障害及び代謝障害
栄養障害及び代謝障害の例には、これだけに制限されることなく、尿崩症、ファブリ病、脂肪酸代謝障害、乳糖血症、ゴーシェ病、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)、グルタル酸尿症、ハーラー症候群(hurler)、ハーラ‐シャイエ症候群、ハンター舌炎、低リン酸血症、I細胞(I-cell)、クラッベ病、乳酸アシドーシス、長鎖3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損(LCHAD)、リソソーム蓄積症、マンノシドーシス、メイプルシロップ尿、マロトー‐ラミー症候群、異染色性白質萎縮症、ミトコンドリア異常、モルキオ症候群、ムコ多糖体症、神経‐代謝異常、ニーマン・ピック病、有機酸血症、プリン、フェニルケトン尿症(PKU)、ポンペ病、偽ハーラー症候群、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損、サンドホフ病、サンフィリポ症候群、シャイエ症候群、スライ症候群、テイ‐サック病、トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)、尿素サイクル疾患、ビタミンD欠乏くる病、筋の代謝性疾患、遺伝性代謝障害、酸‐塩基平衡障害、酸中毒、アルカローシス、アルカプトン尿、α-マンノシドーシス、アミロイドーシス、貧血、鉄欠乏、アスコルビン酸欠乏、アビタミノーシス、脚気、ビオチニダーゼ欠損、糖タンパク質欠乏症候群、カルニチン障害、シスチン蓄積症、シスチン尿、ファブリ病、脂肪酸酸化障害、フコース症、乳糖血症、ゴーシェ病、ギルバート病、グルコースリン酸デヒドロゲナーゼ欠損、グルタル酸血症、糖原症、ハートナップ病、血色素症、血鉄症、肝レンズ核変性症、ヒスチジン血症、ホモシスチン尿症、高ビリルビン血症、高カルシウム血症、高インスリン症、高カリウム血症、高脂血症、シュウ酸過剰尿症、高ビタミンA症、低カルシウム血症、低血糖、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症、インスリン抵抗性、ヨウ素欠乏、鉄過剰症、黄疸、慢性特発性障害、リー疾患、レッシュ‐ナイハン症候群、ロイシン代謝障害、リソソーム蓄積症、マグネシウム欠乏、メイプルシロップ尿症、MELAS症候群、メンケス縮毛症候群、代謝症候群X、ムコリピドーシス、ムコ多糖症、ニーマン-ピック病、肥満、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ欠損症、骨軟化症、ペラグラ、ペルオキシソーム病、ポルフィリア、赤血球新生、斑岩、早老症、偽ゴーシェ病、レフサム病、ライ症候群、くる病、サンドホフ病、タンジアー疾患、テイ‐サックス病、テトラヒドロビオプテリン欠損、トリメチルアミン尿(魚臭症候群)、チロシン血症、尿素サイクル異常症、水‐電解質平衡異常、ウェルニッケ脳症、ビタミンA欠乏症、ビタミンB12欠乏症、ビタミンB欠乏症、ウォルマン病、及びツェルウェガー症候群が含まれる。
【0160】
いくつかの好ましい実施態様において、代謝性疾患には、糖尿病と肥満が含まれる。
【0161】
使用方法
本発明における使用に好適な化合物は、脂肪酸合成を阻害する化合物である。好ましくは、前記阻害剤は、PARP阻害剤である。PARP阻害剤の有効量を用いた治療の前、及び/又は後の脂肪酸レベルの分析は、様々な治療上の、及び診断上の適用があった。臨床適用には、例えば、疾患の検出、予後の情報を提供するための病状の識別、例えば、PARP阻害剤の有効量を用いた治療などの治療法の選択、治療反応の予測、疾患の病期診断、病気の経過の同定、PARP阻害剤を用いた治療法の有効性の予測、(例えば、疾患発症前の)患者軌跡の観察、PARP阻害剤に対する拒絶反応の予測、治療法に関連する有効性と毒性の観察、及び再発の検出が含まれる。対象の脂肪酸レベルの識別もまた、治療法の選択、及びPARP阻害剤による治療用の対象のための用量レジメンの個別化のために使用され得る。
【0162】
対象における脂肪酸レベルの識別と、それに続くPARP阻害剤の有効量を用いた治療は、治療薬のための医薬品の開発過程に可能性を与えるか、又は助けるための使用され得る。脂肪酸レベルの識別は、PARP阻害剤の臨床試験に登録される対象を選択するために使用され得る。さらに、脂肪酸レベルの識別は、臨床実験中に治療を受ける対象の疾患の状況を示し、且つ、PARP阻害剤を用いた治療中の状況の変化を明らかにすることができる。脂肪酸レベルの識別は、PARP阻害剤を用いた治療の有効性を実証でき、且つ、様々な治療法に対するそれらの応答に従った対象の階層化のために使用できる。脂肪酸レベルの識別はまた、PARP阻害剤を用いた治療のために対象に関して個別化された用量レジメンを選択するためにも使用され得る。
【0163】
特定の実施態様において、患者、医師や看護婦などの医療提供者、又は医療管理者は、PARP阻害剤の有効量を用いた対象の治療を、その対象からのサンプルの脂肪酸レベルに基づいて選択する。前記方法は、経時的に治療の有効性を評価するために使用され得る。例えば、患者がPARP阻害剤を用いた治療を受けている期間にわたって患者から生物学的サンプルを得ることができる。異なるサンプルにおける、脂肪酸レベルは、治療の有効性を判断するために、互いに比較される。また、本明細書中に記載される方法は、PARP阻害剤を用いた治療が含まれる異なった疾患治療の有効性、及び/又は(例えば、民族性、家族歴など)異なった集団における1つ以上の治療に対する応答を比較するのに使用される。
【0164】
製剤と医薬組成物
本発明によって提供された方法は、他の治療法と組み合わせて、本明細書中に提供される阻害剤の有効量の投与を含んで成ることができる。本発明の組成物と同時投与され得る治療の選択は、1つには、治療される病態次第であるだろう。例えば、急性骨髄性白血病を治療するために、本発明のいくつかの実施態様の化合物は、放射線照射療法、モノクローナル抗体療法、化学療法、骨髄移植、又はその組み合わせ、と組み合わせて使用され得る。
【0165】
放射線増感剤は、PARP阻害剤の治療的有効量と組み合わせて投与されてもよく、ここで、上記PARP阻害剤は、標的細胞への放射線増感剤の取り込みを促進できるか、又は上記PARP阻害剤は、標的細胞への治療薬、栄養物、及び/又は酸素の流量を制御できる。同様に、化学増感剤もまた、化学療法化合物の毒性効果に対する癌細胞の感度を増強することが知られている。PARP阻害剤と併用して使用され得る代表的な化学療法薬には、これだけに制限されることなく、アドリアマイシン、カンプトテシン、ダカルバジン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドセタクセル、ドキソルビシン、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン2、イリノテカン(innotecan)、パクリタキセル、ストレプトゾトシン、テモゾロマイド、トポテカン、並びに治療的に有効な類似体及び誘導体が含まれる。加えて、PARP阻害剤と併用して使用され得る他の治療薬には、これだけに制限されることなく、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、5’-アミノ-5’-デオキシチミジン、酸素、カルボゲン、赤血球輸血、ペルフルオロカーボン(例えば、Fluosol-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウム・チャネル遮断薬、ペントキシフィリン、血管新生抑制化合物、ヒドララジン、及びL-BSOが含まれる。
【0166】
放射線増感剤は、電磁放射線の毒性効果に対する癌細胞の感度を増強することが知られている。多くの癌治療プロトコールが、現在、X線の電磁放射線によって活性化される放射線増感剤を利用する。X線により活性化される放射線増感剤の例は、これだけに制限されることなく、以下の:メトロニダソール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU1069、SR4233、EO9、RB6145、ニコチンアミド、5-ブロムデキシウリジン(BUdR)、5-ヨードデオキシウリジン(ILfdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FudR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、並びに治療的に有効な類似体及び誘導体が含まれる。
【0167】
癌の光力学療法(PDT)は、増感剤の放射線活性化因子として可視光を用いる。光力学的放射線増感剤の例には、これだけに制限されることなく、以下の:ヘマトポルフィリン誘導体、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe6、スズ・エチオポルフィリンSnET2、フェオボルビド、バクテリオクロロフィル、ナフタロシアニン、フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、並びに治療的に有効な類似体及び誘導体が含まれる。
【0168】
本明細書中に開示される治療方法は、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、、鼻腔内投与、吸入、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、経皮投与、及び直腸投与を介したものであり得る。
【0169】
非侵襲性の投与には、(1)軟膏剤又はクリーム剤の形態での皮膚への局所適用;(2)口咽頭組織への直接的な局所適用;(3)経口投与;(4)エアゾールとしての鼻腔内投与;(5)坐剤、クリーム剤、又はフォームの形態での阻害剤の腟内適用;(6)子宮頚部への直接適用;(7)坐剤、灌注、他の好適な手段による直腸投与;(8)膀胱灌注;並びに(9)肺への阻害剤のエアゾール化製剤の投与、が含まれる。
【0170】
本発明の方法のためのPARP阻害剤の医薬組成物には、有効成分が治療的又は予防的有効量で含まれている組成物が含まれる。特定の適用に有効な実際の量は、とりわけ、治療される病態と投与経路に依存するだろう。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。医薬組成物は、PARP阻害剤、1種類以上の医薬として許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、及び、場合により、追加的な治療薬を含んで成る。前記組成物は、徐放又は遅延放出のために処方される。
【0171】
いくつかの実施態様において、PARP阻害剤は、ゲル、軟膏剤、溶液、含浸包帯、リポソーム、又は生体分解性マイクロカプセルの状態で部分的に又は局所的に投与されてもよい。局所適用のための組成物又は剤形には、溶液、ローション、軟膏剤、クリーム、ゲル、坐剤、スプレー、エアゾール、懸濁液、散剤、含浸包帯及び包帯剤、リポソーム、生分解性高分子、並びに人工皮膚が含まれる。前記の組成物を作り出す代表的な医薬担体には、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アガロース、ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、植物油、鉱油、ステアリン酸、ステアリル・アルコール、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ポリ乳酸、ポリグリコラート、ポリ無水物、リン脂質、ポリビニールピロリドン等が含まれる。
【0172】
前記組成物は、注射によって、局所的に、経口的に、経皮的に、経直腸的に、又は吸入によって投与される。治療薬が投与される経口剤の形には、散剤、錠剤、カプセル剤、溶液、又はエマルジョンが含まれる。有効量は、単回投与で投与されても、又は時間などの適当な時間間隔によって隔てられた一連の用量で投与されてもよい。医薬組成物は、活性化合物の医薬的に使用され得る調製品への加工を容易にする賦形剤及び補助剤を含んで成る1種類以上の生理学的に許容される担体を使用した従来の様式により処方され得る。適切な製剤は、選ばれた投与経路に依存している。本発明の治療薬の医薬組成物の調製のための好適な技術は、当該技術分野で周知である。
【0173】
活性化合物、及び活性化合物を含んで成る組成物の適切な投薬量が、患者によって異なることは、理解されるだろう。最適な用量の決定は、一般に、あらゆる危険性、又は本発明の治療の有害な副作用に対する治療上の利得のレベルのバランスはかかわるだろう。選択される投与量レベルは、これだけに制限されることなく、特定のPARP阻害剤の活性、投与経路、投与時間、上記化合物の排泄経路、治療の持続、組み合わせて使用される他の剤、化合物、及び/又は物質、並びに患者の年齢、性別、体重、病態、健康全般、及び前病歴を含めた様々な要因群に依存するだろう。一般に、投薬量は、かなり危険な又は有害な副作用を引き起こすことなく、期待される効果を発揮する局所濃度を作用部位において達成するためのものであるが、化合物の量と投与経路は、結局、医師の裁量によるだろう。
【0174】
生体内における投与は、治療経過を通じて、連続的又は断続的に1種類の用量で(例えば、適切な間隔で隔てられた用量で)もたらされてもよい。最も効果的な投与の手段と投薬量を決定する方法は、当業者にとって周知であり、そして、治療法に使用される製剤、治療法の目的、治療される標的細胞、及び治療される対象により異なるだろう。単回又は複数回の投与が、治療にあたる医師によって選択された量レベルとパターンを用いて実施される。
【実施例】
【0175】
実施例I
目標:この研究は、グルコースの唯一の供給源として[1,2-13C2]D-グルコースを使用して、培養OVCAR-3細胞とHeLa細胞の代謝フラックスに対する3-ニトロ-4-ヨードベンズアミド(式(III)によって表される化合物)の試験管内における効果を分析することに関する。前記分析には、細胞成長修飾効果とフラックスを相関させるステップ、抗増殖作用の作用機序を分析するステップ、並びに潜在的な毒性、選択性、及び有効性を分析するステップが含まれる。標的代謝産物には、グルコース(培地とペレットのグリコーゲン)、乳酸(培地)、13CO2(培地)、C:14(ミリスチン酸);C:16(パルミチン酸);C:18(ステアリン酸);C:18-1(オレイン酸);C:20;C:22;C:24(細胞ペレット)、脂肪酸に関するアセチル-CoA合成(細胞ペレット)、並びにRNAリボース及びDNAデオキシリボース(細胞ペレット)が含まれる。標的フラックスには、培地からのグルコース摂取;グルコースからの乳酸産生(嫌気的解糖);TCAサイクルを介したグルコースからの13CO2の放出;グリコーゲン合成;デノボ脂肪酸合成、伸長、不飽和化、及びアセチルCoA合成;並びに酸化及び非酸化反応を介したペントース・サイクル‐RNA及びDNAリボース合成が含まれる。
【0176】
材料と方法:この代謝プロファイリング研究のためのトレイサーである安定同位体[1,2-13C2]-D-グルコースを、それぞれの状況に関して>99%の純度と99%の同位体濃縮の状態で、Cambridge Isotope Laboratories, Inc.(Andover, Massachusetts)から購入する。
【0177】
細胞と細胞培養:OVCAR3とHeLa細胞を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から購入する。その細胞を、ATCCから入手した教示に従って培養する。細胞を、37℃、5%のCO2、及び95%の湿度にてインキューベートし、そして、ATCCからの受領後からこの研究での使用前までに10回未満、トリプシン0.25%(Gibco/BRL)を使用することによって継代する。
【0178】
75%集密の培養物細胞を、[1,2-13C2]D-グルコース含有培地(100mg/dlの総濃度=5mM;50%の同位体濃縮−すなわち、半分が非標識グルコース、半分が安定同位体13Cトレイサーで標識されている)中でインキューベートする。細胞を、T75培養フラスコあたり106の密度で播種し、そして、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドを、0.3及び3μMの濃度範囲で培地に加える。対照培養物を、ビヒクルだけで処理する。本研究のための3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドの用量を、この薬物がヒト細胞においてグルコース存在下又は不存在下でグリコーゲン・ホスホリラーゼ活性を効果的に制御することを実証した試験管内における実験に基づいて選択する(Andersen B, et al. 2002, Biochem J. 367:443-450)。培地中のグルコース及び乳酸レベルは、Cobas Mira化学分析装置(Roche Diagnostics, Pleasanton, CA, USA)を使用して計測する。
【0179】
RNAリボースの安定同位体研究:RNAリボースを、細胞抽出物のTrizol精製後の細胞内RNAの酸性加水分解によって単離する。全RNA量を、三重反復培養において、分光光度法による定量によって算定する。リボースを、質量スペクトル解析の前に、無水酢酸(Supelco、Bellefonte、PA)を含むピリジン中、ヒドロキシルアミンを使用して、そのアルドニトリル酢酸(aldonitrile acetate)型に誘導体化する。イオン群を、m/z256(リボースの第1〜5炭素)(化学的イオン化、CI)、m/z217(リボースの第3〜5炭素)、及びm/z242(リボースの第1〜4炭素)(電子衝突電離、EI)付近で観察して、リボース内の13Cのモル濃縮と位置的分布を測定する。慣例により、12C-化合物(それらの誘導体化作用物質を含む)の基準質量を、質量分析法によって計測されるm0として得る(Boros LG, et al. 2002, Drug Discov. Today 7: 364-372)。
【0180】
RNAから回収した最初の炭素位置(m1)において単独の13C原子で標識されたリボース分子を、G6PD経路を通ったグルコースの直接酸化によって産生されたリボース断片を測るために使用する。最初の2つの炭素位置(m2)において13Cで標識されたリボース分子を、トランスケトラーゼによって産生された断片を計測するために使用する。二倍、4番目と5番目の炭素位置において二重に標識されたリボース分子(m2とm4)を、トリオースリン酸イソメラーゼとトランスケトラーゼによって産生されたモル断片を計測するために使用する。
【0181】
乳酸:細胞培養液(0.2ml)からの乳酸を、HCLを用いた酸性化処理後に塩化エチレンによって抽出する。乳酸を、そのプロピルアミン-ヘプタフルオロ酪酸エステル型に誘導体化し、そして、ペントース・サイクル活性の推定のためのm1(PCを通って再生された乳酸)及びm2(エンブデン‐マイアーホフ‐パルナス経路によって産生された乳酸)の検出のために、m/z328(乳酸の第1〜3炭素)(化学的イオン化、CI)を観察する(Lee WN, et al. 1998, Am J Physiol 274: E843-E851)。乳酸において示されたm1/m2比を、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミド治療に対する応答における嫌気的解糖に対するペントース・サイクル活性を測定するためにOVCAR3とHeLa細胞によって記録し、そして、発表する。
【0182】
グルタミン酸:グルコースからのグルタミン酸標識分布は、アナプレロティック・フラックスとしても知られるTCAサイクル内で使用される同化性グルコースに対するグルコース酸化を測定するのに好適である。組織培養液を、最初に、6%の過塩素酸で処理し、そして、上清を3cm3のDowex-50(H+)カラムに通す。アミノ酸を、15mlの2N水酸化アンモニウムで溶出する。グルタミンからグルタミン酸をさらに分けるために、アミノ酸混合物を、3cm3のDowex-1(酢酸)カラムに通し、次に、15mlの0.5N酢酸によって回収する。培地からのグルタミン酸画分を、そのトリフルオロアセチル・ブチル・エステル(TAB)に変換する。EI条件下、TAB‐グルタミン酸の電離作用は、グルタミン酸のC2-C5とC2-C4に相当する2つの断片m/z198とm/z152を生じる(Lee WN, et al. 1996, Developmental Neuroscience 18: 469-477)。第4〜5炭素位置で標識されたグルタミン酸が、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性を示す一方で、第2〜3炭素位置で標識されたグルタミン酸は、TCAサイクルへのグルコース炭素の加入のためのピルビン酸・カルボキシラーゼ活性を示す。TCAサイクルの同化グルコース利用は、グルタミン酸のm1/m2比に基づいて計算される(Leimer KR, et al, 1977, J. Chromatography 141:121-144)。
【0183】
脂肪酸:パルミチン酸、ステアリン酸、コレステロール、及びオレイン酸を、石油エーテルを使用して、30%のKOH及び100%のエタノール中、細胞ペレットの鹸化後に抽出する。脂肪酸を、0.5Nのメタノール-HCLを使用して、それらのメチル化誘導体に変換する。パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸を、異なるアイソトポマーのマス・アイソトポマー分布解析(MIDA)によって測定される新しい脂質画分の合成、伸長、及び不飽和化を反映する13C標識アセチル・ユニットの濃縮により、それぞれ、m/z270、m/z298、及びm/z264にて観察する(Lee WN, et al. 1998, J. Biol. Chem. 273: 20929-20934;Lee WN, et al. 1995, Anal Biochem 226: 100-112)。
【0184】
ガス・クロマトグラフィー/質量分析法(GC/MS):質量スペクトル・データを、HP6890ガスクロマトグラフに接続されたHP5973質量選択検出器により得る。設定は、以下の:GC入口250℃、移送ライン280℃、MS源230℃、MS回路150℃、である。HP-5キャピラリーカラム(30mの長さ、250μmの直径、0.25μmの膜厚)を、グルコース、リボース、及び乳酸分析のために使用する。トランスケトラーゼは、ペントース・サイクルの非酸化性枝路において最も高い代謝制御係数を有する(Sabate L, et al. 1995, Mol Cell Biochem. 142: 9-17;Comm-Anduix B, et al. 2001, Eur. J. Biochem. 268:4177-4182)。とはいえ、トランスケトラーゼ及びトランスアルドラーゼ、それに加えて、他の酵素のすべてが、ヒト細胞における非酸化的ペントース・サイクル代謝に参加することに留意のこと。
【0185】
データ分析と統計的方法:各実験の中で各条件について三重反復の細胞培養を使用して実施し、そして、実験を1度繰り返す。質量分光分析を、自動サンプラーによる1μlのサンプルの3回の独立した自動注入によって実施し、そして、標準サンプル偏差が標準化ピーク強度の1%未満である場合にだけ、受け入れる。統計的分析は、不対サンプルに関するスチューデントt-アッセイを使用して実施する。99%の信頼区間(μ+/−2.58σ)の両側有意、p<0.01は、対照と3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドのグルコース炭素代謝における有意差を示す。
【0186】
結果:トレイサー処理は、HeLa細胞において成功し、そして、すべての培養物のトレイサー標識グルコース画分が、0.0分の時点で総グルコースの45%〜55%であった。24、48、及び72時間のトレイサー・インキュベーションは、HeLa細胞に特異的な代謝産物標識特性を発生させるのに十分である。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドに対応してHeLa細胞グルコース代謝に相違が存在している。効果は、用量反応性であり、グルコースからの中鎖及び長鎖脂肪酸デノボ合成の減少と最も整合している。アラキジン酸(C:20)のデノボ合成は、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドの阻害作用を免れている。アラキジン酸合成のためのグルコースからのアセチル-CoA濃縮は、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミド処理したHeLa培養物において高かった。
【0187】
TCAサイクルにおけるCO2へのグルコースの酸化とATP産生は、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドによって影響を受けていない。グルコースから長鎖飽和脂肪酸(C:20-C:24)までのアセチル-CoA寄与の用量依存的な増大が存在した。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、HeLa細胞内で代謝的に活性な化合物である。デノボ中鎖及び長鎖脂肪酸(C:14-C:18)合成は、グルコースからのアセチル-CoA合成に対する低い寄与に従って減少している。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、HeLa細胞におけるその細胞増殖抑制作用の原因となる機構としての限定されたデノボ脂肪酸合成を介して細胞膜形成を減少させる。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、アラキジン酸形成のためのグルコースからのアセチル-CoA形成を増加させ、そのため、プロスタグランジン合成を刺激することができる。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、細胞エネルギー産生、核酸の代謝回転、及びグリコーゲン合成に対する毒性効果を持っていない。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、基質(グルコース)取り込み、及び活性化(リン酸化)に対する阻害効果を持っていない。
【0188】
トレイサー処理は、OVCAR-3細胞において成功し、そして、すべての培養物のトレイサー標識グルコース画分が、0.0分の時点で総グルコースの45%〜55%であった。72時間のトレイサー・インキュベーションは、HeLa細胞に特異的な代謝産物標識特性を発生させるのに十分である。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドに対応してOVCAR-3細胞グルコース代謝に有意差が存在している。効果は、用量反応性であり、グルコースからの中鎖及び長鎖脂肪酸デノボ合成の減少、並びにグルコースからのアセチル-CoA合成の減少と最も整合している。
【0189】
OVCAR-3細胞において、中鎖及び長鎖脂肪酸デノボ合成(C:14-C:18)は、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドの阻害作用から免れている。OVCAR-3細胞において、デノボ脂肪酸合成は比較的に低い(30%)。アルドラーゼとトリオースリン酸イソメラーゼは、DNA合成中には活性であり、そして、トランスケトラーゼ、並びにG6PDHは、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミド治療の標的酵素である。直接経路を介したグリコーゲン合成と分解は、3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドによって阻害される。
【0190】
グルコースから長鎖飽和脂肪酸(C:20-C:24)までのアセチル-CoA寄与の用量依存的な増大が存在する。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、OVCAR-3細胞において代謝的に活性な化合物である。デノボ中鎖及び長鎖脂肪酸(C:14-C:18)合成は、グルコースからのアセチル-CoA合成における有意差なしにわずかに増強される。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、OVCAR-3細胞における細胞増殖抑制作用の原因となる機構としての限定されたデノボ長鎖(C:20-C:24)脂肪酸合成を介して細胞膜形成を減少させる。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドはまた、、DNAデオキシリボース合成と直接的なグリコーゲン合成に関するG6PDH及びトランスケトラーゼのフラックスを阻害する。3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドは、細胞エネルギー産生、及び核酸RNAの代謝回転に毒性効果を持たない。これらの研究の結果を、図3A、3B(72時間の時点の13C標識ミリスチン酸(C:14))、4A、4B(72時間の時点の13C標識パルミチン酸(C:16))、5A、5B(72時間の時点の13C標識ステアリン酸(C:18))、6A、6B(72時間の時点の13C標識オレイン酸(C:18l))、7A、7B(72時間の時点の13C標識C:22脂肪酸)、8A、8B(72時間の時点の13C標識C:24脂肪酸)、9A、9B(72時間の時点の13C標識アラキジン酸(C:20))、10A、10B(72時間の時点の13C標識C:22脂肪酸)、及び11A、11B(72時間の時点の13C標識C:24脂肪酸)に示す。いずれの場合にも、「A」図は、細胞ペレット内への脂肪酸取り込み量を示すのに対して、「B」図は、グルコース(左側)及び新規脂肪酸合成の画分(右側)からの13アセチルCo-A濃縮を示す。これらの結果は、PARP-1阻害剤である3-ニトロ-4-ヨードベンズアミドが細胞における脂肪酸合成を阻害することを実証している。
【0191】
本発明の好ましい実施態様を示し、そして、本明細書中に記載したが、そのような実施態様が一例としてのみ提供されることは、当業者にとって明らかであるだろう。本発明から逸脱することのない、多数の変形、変更、及び置換が、当業者にはすぐに思い当たるだろう。本明細書中に記載の本発明の実施態様に対する様々な代替手段が本発明を実施する際に利用できることは、理解されるべきである。以下の請求項が、本発明の範囲を規定し、従って、これらの請求項の範囲内の方法と構築物、並びにそれらの同等物を包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、それを必要としている患者に投与して、脂肪酸合成を阻害することを含んで成る脂肪酸合成関連疾病の治療方法であって、ここで、上述の脂肪酸合成関連疾病が、肥満、糖尿病、又は心臓血管疾患である前記治療方法。
【請求項2】
前記の脂肪酸が、中鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害することを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記の脂肪酸合成の阻害が、アセチルCo-A、マロニルCo-A、アセチルCo-Aカルボキシラーゼ、及び脂肪酸シンターゼから成る群から選択される少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸シンターゼの中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の脂肪酸シンターゼが、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼを含んで成る、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコースからのアセチル-CoAの合成を阻害するステップを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の脂肪酸合成の阻害が、アセチル-CoAからの前記の脂肪酸合成を阻害するステップを含んで成る、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の代謝産物又は分子フラックスを分析することによって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記の代謝産物が、グルコース、グリコーゲン、乳酸、CO2、脂肪酸、アセチルCo-A、RNAリボース、及びDNAデオキシリボースから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記の代謝産物が、前記の分析のために化学的に誘導体化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記の分析が、質量分析法を含んで成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記の質量分析法が、マス・アイソトポマー分布解析である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(I):
【化1】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(II):
【化2】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つが、常に水素であり;ここで、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記のPARP阻害剤が、以下の式(III):
【化3】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
以下のステップ:(i)PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を患者に投与して、脂肪酸合成を阻害し;(ii)上述の患者からの最初と2番目のサンプル中の最初と2番目の脂肪酸レベルを比較するが、ここで、上述の最初のレベル及び上述の最初のサンプルを、上述のPARP阻害剤又はその代謝産物の投与前に入手し、そして、上述の2番目のレベル及び上述の2番目のサンプルを、上述のPARP阻害剤又はその代謝産物の投与後に入手し;そして(iii)上述の比較に基づいて、上述の患者の疾患の治療における上述のPARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性を決定する、を含んで成る、疾患の治療におけるPARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性をモニターする方法。
【請求項20】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記の2番目のサンプル中の前記の2番目の脂肪酸レベルが、前記の最初のサンプル中の前記の最初の脂肪酸レベルに比べて低ければ、前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が治療的に有効である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記の2番目のサンプル中の前記の2番目の脂肪酸レベルが、前記の最初のサンプル中の前記の最初の脂肪酸レベルと比べて高ければ、前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が治療的に無効である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記の最初の脂肪酸レベルと前記の2番目の脂肪酸レベルが、アッセイ技術によって測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記の最初の脂肪酸レベルと前記の2番目の脂肪酸レベルが、質量分析法によって測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記の質量分析法が、マス・アイソトポマー分布解析である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(I):
【化4】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(II):
【化5】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つのが、常に水素であり;ここで、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記のPARP阻害剤が、以下の式(III):
【化6】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記の疾患が、癌、心臓血管、糖尿病、又は肥満である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記の投与が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記の最初のサンプル中の前記の最初の脂肪酸レベルが、前記の患者の病歴から決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
脂肪酸合成を阻害するところのPARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、それを必要としている患者に投与するステップを含んで成る、Her-2関連癌の治療方法。
【請求項33】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸シンターゼの中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成って、ここで、上述の酵素が、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼから成る群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(II):
【化7】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つのが、常に水素であり;ここで、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記のPARP阻害剤が、以下の式(III):
【化8】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記の治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
Her-2抗体を投与するステップをさらに含んで成る、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
外科手術、放射線照射療法、化学療法、遺伝子治療、免疫療法、又はその組み合わせをさらに含んで成る、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
以下のステップ:
以下の式(II):
【化9】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6{R6が、水素、(C1-C6)アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つが、常に水素である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグの有効量を、それを必要としている患者に投与し;そして
ここで、上述の式(II)によって表される化合物、上述の医薬として許容される塩、又は上述のそのプロドラッグが脂肪酸合成を阻害し、その結果、上述の対象の上述の代謝性疾患を治療する、
を含んで成る代謝性疾患の治療方法。
【請求項41】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸シンターゼの中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成って、ここで、上述の酵素が、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼから成る群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記の式(II)によって表される化合物、前記の医薬として許容される塩、又は前記のそのプロドラッグが、以下の式(III):
【化10】

によって表される化合物を含んで成る、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記の治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記の代謝性疾患が、糖尿病又は肥満である、請求項46に記載の方法。
【請求項46】
対象の癌の治療方法であって、以下のステップ:(i)上述の対象からのサンプル中の脂肪酸レベルを確認し;そして(ii)PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、上述の脂肪酸レベルに基づいて投与して、脂肪酸合成を阻害し、その結果、上述の対象の上述の癌を治療する、を含んで成る前記治療方法。
【請求項47】
前記の脂肪酸が、中鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記の脂肪酸合成の阻害が、アセチルCo-A、マロニルCo-A、アセチルCo-Aカルボキシラーゼ、及び脂肪酸シンターゼから成る群から選択される少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸シンターゼの中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記の脂肪酸シンターゼが、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼを含んで成る、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコースからのアセチル-CoAの合成を阻害するステップを含んで成る、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記の脂肪酸合成の阻害が、アセチル-CoAからの前記の脂肪酸合成を阻害するステップを含んで成る、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記の長鎖脂肪酸がC:14〜C:30である、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記の長鎖脂肪酸が、C:14、C:16、C:18、C:18-1、C:20、C:22、又はC:24である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の代謝産物又は分子フラックスについて分析することによって測定される、請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記の代謝産物が、グルコース、グリコーゲン、乳酸、CO2、脂肪酸、アセチルCo-A、RNAリボース、及びDNAデオキシリボースから成る群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記の代謝産物が、前記の分析のために化学的に誘導体化される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記の分析が、質量分析法を含んで成る、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記の質量分析法が、マス・アイソトポマー分布解析である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記の脂肪酸レベルを上方制御する、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(I):
【化11】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(II):
【化12】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、ここで、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つのが、常に水素であり;ここで、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記のPARP阻害剤が、以下の式(III):
【化13】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記の癌が、結腸腺癌、食道腺癌、肝臓肝細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、膵臓腺癌、膵島細胞腫瘍、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質細胞癌、濾胞癌腫、乳頭癌腫、乳癌、腺管癌、小葉癌、管内癌、粘液性癌腫、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒膜細胞腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰部扁平上皮細胞癌、基底細胞腺癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から成る群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項67】
前記の治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項68】
以下のステップ:(i)PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を患者に投与して、脂肪酸合成を阻害し;(ii)上述の患者からの最初と2番目のサンプル中の最初と2番目の脂肪酸レベルを比較するが、ここで、上述の最初のレベル及び上述の最初のサンプルを、上述のPARP阻害剤又はその代謝産物の投与前に入手し、そして、上述の2番目のレベル及び上述の2番目のサンプルを、上述のPARP阻害剤又はその代謝産物の投与後に入手し;そして(iii)上述の比較に基づいて、上述の患者の疾患の治療における上述のPARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性を決定する、を含んで成る、疾患の治療におけるPARP阻害剤又はその代謝産物の治療有効性をモニターする方法。
【請求項69】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記の2番目のサンプル中の前記の2番目の脂肪酸レベルが、前記の最初のサンプル中の前記の最初の脂肪酸レベルに比べて低ければ、前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が治療的に有効である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記の2番目のサンプル中の前記の2番目の脂肪酸レベルが、前記の最初のサンプル中の前記の最初の脂肪酸レベルと比べて高ければ、前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が治療的に無効である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記の最初の脂肪酸レベルと前記の2番目の脂肪酸レベルが、アッセイ技術によって測定される、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記の最初の脂肪酸レベルと前記の2番目の脂肪酸レベルが、質量分析法によって測定される、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記の質量分析法が、マス・アイソトポマー分布解析である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(I):
【化14】

{式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び含硫部分から成る群から独立に選択される。}によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(II):
【化15】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、ここで、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つのが、常に水素であり;ここで、R6が、-SR6{式中、R6が、水素、C1-C6アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリール、並びに任意の置換基から成る群から選択される。}である。]によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記のPARP阻害剤が、以下の式(III):
【化16】

によって表される化合物、医薬として許容されるその塩、又はそのプロドラッグである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記の疾患が、癌、心臓血管、糖尿病、又は肥満である、請求項69に記載の方法。
【請求項79】
前記の投与が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈、筋肉内、舌下、皮下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項80】
前記の最初のサンプル中の前記の最初の脂肪酸レベルが、前記の患者の病歴から決定される、請求項69に記載の方法。
【請求項81】
対象のHer-2関連癌の治療方法であって、以下のステップ:(i)対象からのサンプル中のHer-2発現レベルを定量し;そして(ii)PARP阻害剤又はその代謝産物の有効量を、上述のHer-2発現レベルに基づいて投与して、上述の対象の脂肪酸合成を阻害し、その結果、上述の対象の上述のHer-2関連癌を治療する、を含んで成る前記治療方法。
【請求項82】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸シンターゼの中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成って、ここで、上述の酵素が、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼから成る群から選択される、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記のHer-2発現レベルを上方制御する、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(II):
【化17】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6{R6が、水素、(C1-C6)アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つが、常に水素である。]によって表される化合物、その医薬として許容される塩、又はそのプロドラッグである、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記のPARP阻害剤又はその代謝産物が、以下の式(III):
【化18】

によって表される化合物、その医薬として許容される塩、又はそのプロドラッグである、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
前記の治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記のサンプルが、癌細胞を含んで成る、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
Her-2抗体を投与するステップをさらに含んで成る、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
外科手術、放射線照射療法、化学療法、遺伝子治療、免疫療法、又はその組み合わせをさらに含んで成る、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
対象の癌の治療方法であって、以下のステップ:(i)対象からのサンプル中の脂肪酸レベルを定量し;(ii)上述の対象に、以下の式:
【化19】

[式中、R1、R3、R4、及びR5が、水素、ヒドロキシ、場合により置換されているアミン、カルボキシル、エステル、ニトロソ、ニトロ、ハロゲン、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C1-C6)アルコキシ、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、場合により置換されているアリール、及び-SR6{R6が、水素、(C1-C6)アシル、場合により置換されている(C1-C6)アルキル、場合により置換されている(C3-C7)シクロアルキル、場合により置換されている(C3-C7)複素環系、及び場合により置換されているアリールから成る群から選択される。}から成る群から独立に選択され;R2が、ニトロ又はニトロソのいずれかであり;且つ、式中、R1、R3、R4、及びR5置換基のうち少なくとも2つが、常に水素である。]によって表されるものを含んで成り、且つ、脂肪酸合成を阻害するところの式(II)によって表される化合物、その医薬として許容される塩、又はそのプロドラッグの有効量を、上述の脂肪酸レベルの定量に基づいて投与し、その結果、上述の対象の上述の癌を治療する、を含んで成る前記治療方法。
【請求項92】
前記の脂肪酸合成の阻害が、グルコース経路又は脂肪酸生合成経路の中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成る、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記の脂肪酸合成の阻害が、脂肪酸シンターゼの中の少なくとも1種類の酵素を阻害するステップを含んで成って、ここで、上述の酵素が、アシルキャリアタンパク質、アセチル・トランスフェラーゼ、マロニル・トランスフェラーゼ、3-ケト-アシル-ACPシンターゼ、3-ケトアシル-ACPレダクターゼ、3-ヒドロキシ-アシル-ACPデヒドラターゼ、及びエノイル-ACPレダクターゼから成る群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記の式(II)によって表される化合物、前記の医薬として許容される塩、又は前記のそのプロドラッグが、以下の式(III):
【化20】

によって表される化合物を含んで成る、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
前記の治療が、経口投与、経粘膜投与、口腔内投与、鼻腔内投与、吸入法、非経口投与、静脈内、皮下、筋肉内、舌下、及び経皮投与、並びに直腸投与から成る群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記の癌が、Her-2関連癌、結腸腺癌、食道腺癌、肝臓肝細胞癌腫、扁平上皮細胞癌、膵臓腺癌、膵島細胞腫瘍、直腸腺癌、消化管間質腫瘍、胃腺癌、副腎皮質細胞癌、濾胞癌腫、乳頭癌腫、乳癌、腺管癌、小葉癌、管内癌、粘液性癌腫、葉状腫瘍、卵巣腺癌、子宮内膜腺癌、顆粒膜細胞腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、子宮頚部腺癌、外陰部扁平上皮細胞癌、基底細胞腺癌、前立腺腺癌、骨巨細胞腫、骨肉腫、喉頭癌、肺腺癌、腎癌、膀胱癌、ウィルムス腫瘍、及びリンパ腫から成る群から選択される、請求項91に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−502731(P2010−502731A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527546(P2009−527546)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/077662
【国際公開番号】WO2008/030891
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(507401258)バイパー サイエンシズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】