説明

PCSK9イムノアッセイ

PCSK9アンタゴニストを使用する方法。より具体的には、イムノアッセイを用いて生体試料中の循環PCSK9レベルを測定するための方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
神経アポトーシス調節転換酵素1(NARC−1)としても公知のプロタンパク質転換酵素スブチリシン−ケキシン9型(PCSK9)は、分泌性サブチラーゼファミリーの9番目のメンバーとして同定されるプロテイナーゼK様サブチラーゼである(Seidah,N.G.,et al.,2003 PROC NATL ACAD SCI USA 100:928−933)。PCSK9は、増殖および分化の能力のある細胞、例えば肝細胞、腎臓間葉細胞、回腸、結腸上皮および胎児終脳神経(embryonic brain telencephalic neurons)などで発現する(Seidah et al.,2003)。
【0002】
ヒトPCSK9の遺伝子は、既に配列決定され、692アミノ酸タンパク質をコードする12個のエキソンを含む、約22kbの長さであることが見出された(NP_777596.2)。PCSK9は、PCT公報国際公開第01/31007号、同第01/57081号、同第02/14358号、同第01/98468号、同第02/102993号、同第02/102994号、同第02/46383号、同第02/90526号、同第01/77137号、および同第01/34768号、米国特許出願公開第2004/0009553号および同第2003/0119038号、ならびに欧州特許出願公開第1440981号、同第1067182号、および同第1471152号を含む、いくつかの特許公報において開示され、および/または特許請求されている。
【0003】
PCSK9は、コレステロール生合成または取り込みにおいて特異的役割を有するが、コレステロールホメオスタシスに関与してきた。コレステロール摂食ラットの研究において、マックスウェルらは、PCSK9が、コレステロール生合成に関与するその他の遺伝子と同様の様式で下方制御されることを見出した(Maxwell et al.,2003 J.LIPID RES.44:2109−2119)。PCSK9の発現は、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)により調節されたが、これはコレステロール代謝に関与するその他の遺伝子においても見られることである(Maxwell et al.,2003)。
【0004】
その上、PCSK9発現は、薬物のコレステロール低下作用に起因する様式で、スタチンにより上方制御される(Dubuc et al.,2004 ARTERIOSCLER.THROMB.VASC.BIOL.24:1454−1459)。PCSK9のアデノウイルス発現は、循環低比重リポタンパク質(LDL)の注目すべき時間依存的増加をもたらすことが示され(Benjannet et al.,2004 J.BIOL.CHEM.279:48865−48875)、PCSK9遺伝子欠失マウスは、肝臓LDL受容体(LDLR)のレベルを増加させ、血漿からより迅速にLDLを排除する(Rashid et al.,2005 PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 102:5374−5379)。一過性にPCSK9をトランスフェクトしたHepG2細胞由来培養液は、トランスフェクトされていないHepG2細胞に移した場合に、細胞表面LDLRおよびLDLの内部移行の量を低下させる(Cameron et al.,2006 HUMAN MOL.GENET.15:1551−1558)。さらに、HepG2細胞の培養液に添加した精製PCSK9は、用量および時間依存的な様式で細胞表面LDLRの数を低下させる作用を有することが実証された(Lagace et al,2006 J.CLIN.INVEST.116:2995−3005)。
【0005】
また、遺伝子PCSK9中のいくつかの変異も、早発性心血管不全を導き得る血漿中の低比重リポタンパク質(「LDL」)粒子の著しい上昇を特徴とする遺伝性代謝障害である、常染色体優勢高コレステロール血症(ADH)に関連していると決定付けられた(例えば、Abifadel et al.,2003 NATURE GENETICS 34:154−156、Timms et al.,2004 HUM.GENET.114:349−353、Leren,2004 CLIN.GENET.65:419−422)。
【0006】
従って、PCSK9は、LDL産生の調節に役割を果たす。PCSK9の発現または上方制御は、LDLコレステロールの血漿レベルの増加に関連し、PCSK9の発現の抑制または欠如は、低LDLコレステロール血漿レベルに関連する。意義深いことに、PCSK9の配列多様性に関連してLDLコレステロールのレベルが低いことにより、冠動脈心疾患に対する保護が与えられる(Cohen,et al.,2006 N.ENGL.J.MED.354:1264−1272)。
【0007】
臨床試験データは、LDLコレステロールレベルの低下が冠動脈イベントの比率に関連することを実証した(Law et al.,2003 BMJ 326:1423−1427)。血漿LDLコレステロールレベルの中程度の生涯にわたる低下は、非脂質関連心血管危険因子の高い有病率を持つ集団においてさえも、冠動脈イベントの発生率の実質的な低下と実質的に相関していることが示された(Cohen et al,2006,前掲)。従って、LDLコレステロールレベルをうまく制御することから得られる利益は大きい。
【0008】
従って、PCSK9を心血管疾患の治療のための標的としてさらに調査することが望ましい。PCSK9アンタゴニストとして有用な抗体は、既に同定されており、治療薬としての有用性を有する。そのような調査の裏付けとして、PCSK9アンタゴニスト、例えば抗体などに曝露された生体試料中の循環PCSK9のレベルを測定するための方法を有することが有用である。
【0009】
心血管疾患の治療において効果的な化合物および/または薬剤の追求を支援するために、新規なPCSK9アンタゴニストを同定することができることはさらに望ましい。そのため、例えば、推定PCSK9アンタゴニストの有効性を評価することなどのそのような目的のために、生体試料において循環PCSK9のレベルを測定するための方法が望ましい。
【0010】
その上、生体試料において循環PCSK9のレベルを検定するためのキットを提供することが役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第01/31007号
【特許文献2】国際公開第01/57081号
【特許文献3】国際公開第02/14358号
【特許文献4】国際公開第01/98468号
【特許文献5】国際公開第02/102993号
【特許文献6】国際公開第02/102994号
【特許文献7】国際公開第02/46383号
【特許文献8】国際公開第02/90526号
【特許文献9】国際公開第01/77137号
【特許文献10】国際公開第01/34768号
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0009553号
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0119038号
【特許文献13】欧州特許出願公開第1440981号
【特許文献14】欧州特許出願公開第1067182号
【特許文献15】欧州特許出願公開第1471152号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Seidah,N.G.,et al.,2003 PROC NATL ACAD SCI USA 100:928−933
【非特許文献2】Maxwell et al.,2003 J.LIPID RES.44:2109−2119
【非特許文献3】Dubuc et al.,2004 ARTERIOSCLER.THROMB.VASC.BIOL.24:1454−1459
【非特許文献4】Benjannet et al.,2004 J.BIOL.CHEM.279:48865−48875
【非特許文献5】Rashid et al.,2005 PROC.NATL.ACAD.SCI.USA 102:5374−5379
【非特許文献6】Cameron et al.,2006 HUMAN MOL.GENET.15:1551−1558
【非特許文献7】Lagace et al,2006 J.CLIN.INVEST.116:2995−3005
【非特許文献8】Abifadel et al.,2003 NATURE GENETICS 34:154−156
【非特許文献9】Timms et al.,2004 HUM.GENET.114:349−353
【非特許文献10】Leren,2004 CLIN.GENET.65:419−422
【非特許文献11】Cohen,et al.,2006 N.ENGL.J.MED.354:1264−1272
【非特許文献12】Law et al.,2003 BMJ 326:1423−1427
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、生体試料において循環PCSK9のレベルを測定する方法に関する。前記方法は、被験体から入手した生体試料でイムノアッセイを実施する段階および前記試料中のPCSK9のレベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較する段階を含む。
【0014】
本発明はさらに、推定PCSK9アンタゴニストと接触させた生体試料でイムノアッセイを実施する段階、および前記試料中のPCSK9のレベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較する段階を含む、新規なPCSK9アンタゴニストを同定する方法に関する。
【0015】
本発明のさらなる態様は、生体試料において循環PCSK9のレベルを測定するためのキットに関し、この際、前記キットは、
a)生体試料収集装置、
b)コーティングもしくは捕捉抗体および検出抗体を含む、イムノアッセイを構成する組成物、および
c)試料中のPCSK9抗原とイムノアッセイにおける抗体との間の反応を検出するための手段
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】ランタニドキレート遅延時間およびストークスシフトを説明する図である。
【図1B】ランタニドキレート遅延時間およびストークスシフトを説明する図である。
【図2】アッセイバッファーに希釈した組換えヒトPCSK9標準曲線を説明する図である。曲線の範囲は、10.26nM〜0.005nMである。
【図3】3週間の間の3つの異なる日に示された、6名の正常な健常ボランティアの生物学的多様性を説明する図である。濃度はnMで示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、被験体から得た生体試料でイムノアッセイを実施する段階、および前記試料中のPCSK9のレベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較する段階を含む、生体試料において循環PCSK9レベルを測定する方法に関する。本アッセイは、ヒトPCSK9を測定するために特に有用である。
【0018】
イムノアッセイは、分析物に特異的に結合する抗体を利用する分析法または方法論である。イムノアッセイは、分析物を単離、標的化、または定量化するために、少なくとも1つの特定の抗体の特異的結合特性を用いることを特徴とする。
【0019】
特定の実施形態では、イムノアッセイは、(a)それに結合した固定化結合抗PCSK9抗体AX213を有する支持体の上に試料を付着させる段階、(b)その上に該生体試料を付着させた該支持体と、検出可能な標識を有する抗PCSK9抗体AX1を接触させる段階、および(c)標識を検出する段階を含む。
【0020】
PCSK9とは、文献に定義されているように、分泌性サブチラーゼファミリーの9番目のメンバーとして同定されるプロテイナーゼK様サブチラーゼである(Seidah,N.G.,et al.,2003 PROC NATL ACAD SCI USA 100:928−933)、神経アポトーシス調節転換酵素1(NARC−1)としても公知のプロタンパク質転換酵素スブチリシン−ケキシン9型(PCSK9)をさし、特に指定のない限り、可溶性形態と不溶性形態の両方を含む。この用語は、適切な文脈中でその抗原成分かまたは遺伝子座のいずれかをさし得る。
【0021】
AX213は、配列番号3を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号7を含む重鎖可変(「VH」)配列を含む抗体分子である。特定の実施形態では、AX213は、全長抗体分子である。特定の実施形態では、AX213はIgG抗体分子であり、特定の実施形態では、IgG2である。特定の実施形態では、AX213は、(a)配列番号1または配列番号11を含む軽鎖および(b)配列番号9を含む重鎖を含む。
【0022】
AX1は、配列番号15を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号19を含む重鎖可変(「VH」)配列を含む抗体分子である。特定の実施形態では、AX1は、全長抗体分子であり、特定の実施形態では、AX213は、IgG抗体分子であり、特定の実施形態では、IgG2である。特定の実施形態では、AX213は、(a)配列番号13または配列番号23を含む軽鎖および(b)配列番号21を含む重鎖を含む。
【0023】
抗体分子、例えば、無傷の免疫グロブリンとして、または、例えば様々なペプチダーゼでの消化により精製される、いくつかの十分に特徴付けられた断片として存在することができる。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、γ、μ、α、δ、またはεに分類され、それは順にそれぞれ免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定義する。「全」抗体または「全長」抗体は、多くの場合、ジスルフィド結合により相互に接続した2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むタンパク質をさし、(1)重鎖に関して、可変領域(本明細書において「V」と省略する)および、3つのドメイン、CH、CH、およびCHを含む重鎖定常領域、ならびに(2)軽鎖に関して、軽鎖可変領域(本明細書において「V」と省略する)および、1つのドメイン、Cを含む軽鎖定常領域を含む。ペプシンは、抗体をヒンジ領域のジスルフィド結合の下で消化して、それ自体がジスルフィド結合によりV−C1に結合した軽鎖であるFabの二量体である、F(ab)’を生成する。F(ab)’は、温和な条件下で還元されて、ヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによりF(ab)’二量体をFab’モノマーに変換することができる。Fab’モノマーは、本質的に、ヒンジ領域の一部が切断されたFabである。無傷の抗体の消化に関して様々な抗体フラグメントが定義されているが、当業者は、かかるFab’断片は、化学的にまたは組換えDNA方法論を利用することにより新規に合成することができることを理解するであろう。よって、本明細書において用いられる抗体という用語には、全抗体の修飾により生成された抗体フラグメントまたは組換えDNA方法論を用いて新規に合成された抗体フラグメントのどちらも含まれる。
【0024】
特定の実施形態では、AX213およびAX1抗体分子は、独立に、使用前に単離される。「単離された」とは、本明細書において、それらを天然に見出されるものとは異なる形態にする特性をさす。この違いは、例えば、それらが天然に見出されるものとは異なる純度であることであってもよいし、それらが天然に見出されるものとは異なる構造であるかまたはその一部を形成することであってもよい。天然に見出されない構造には、例えば、組換えヒト免疫グロブリン構造が含まれる。天然に見出されない構造のその他の例は、その他の細胞物質を実質的に含まない抗体分子である。
【0025】
検出可能な標識とは、本明細書において、抗体分子の中に組み込まれるかまたは抗体分子に取り付けられる別の分子または作用薬をさす。一実施形態では、標識は、検出可能なマーカー、例えば、放射標識されたアミノ酸、あるいは、標識されたアビジンにより検出することのできる、ビオチニル部分のポリペプチドへのアタッチメント(attachment)(例えば、光学的または比色分析的方法により検出することのできる蛍光マーカーまたは酵素活性を含有するストレプトアビジン)である。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野で公知であり、それらを使用することができる。ポリペプチドに対する標識の例としては、限定されるものではないが、以下の、放射性同位元素または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターに認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、ガドリニウムキレートなどの磁性剤(magnetic agents)、百日咳毒素などの毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または同族体が挙げられる。一部の実施形態では、潜在的な立体障害を減少させるために様々な長さのスペーサーアームで標識を結合させる。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、イムノアッセイは、固相イムノアッセイである。特定の実施形態では、固相イムノアッセイは、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)である。しかし、当業者にとって十分精通したものとなるどんな溶液系もしくは固相イムノアッセイを使用することも、本発明の範囲内である。そのようなアッセイとしては、限定されることなく、磁性ビーズを酵素の代わりに標識として使用するアッセイ、ELISA、放射性同位元素、または蛍光部分(蛍光イムノアッセイ)が挙げられる。
【0027】
生体試料は、血液、血漿および血清からなる群から選択される。特定の実施形態では、血液、血漿および血清は、限定されるものではないが、ヒトを含む哺乳類被験体に由来する。
【0028】
本発明はさらに、推定PCSK9アンタゴニストの存在下でPCSK9を測定するための方法に関する。前記方法は、推定PCSK9アンタゴニストに接触させた生体試料でイムノアッセイを実施する段階および前記試料中のPCSK9のレベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較する段階を含む。特定の実施形態では、本方法は、(a)生体試料を固定化された抗PCSK9抗体AX213を有する支持体の上に付着させること、(b)その上に該生体試料を付着させた該支持体を、検出可能な標識を有する抗PCSK9抗体AX1と接触させること、(c)標識を検出すること、および(d)前記試料中のPCSK9のレベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較することを含む。好ましい実施形態では、イムノアッセイは、固相イムノアッセイである。より好ましい実施形態では、固相イムノアッセイは、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)である。
【0029】
抗PCSK9固定化抗体AX213は、特定の実施形態において、プレート(特定の実施形態では、黒色高結合アッセイプレート(black high binding assay plates))に一晩コーティングされる。特定の実施形態では、黒色高結合アッセイプレートは、100〜500ng/ウェルのAX213抗体で4℃にて一晩コーティングされる。
【0030】
生体試料は、血液、血漿および血清からなる群から選択される。特定の実施形態では、血液、血漿および血清は、限定されるものではないが、ヒトを含む哺乳類被験体に由来する。
【0031】
特定の実施形態では、10〜50ng/ウェルのビオチン化AX1IgGを抗原の検出に使用する。
【0032】
用語「アンタゴニスト」またはその誘導体(例えば、「拮抗すること」)の使用は、対象分子または作用薬が、PCSK9の機能に拮抗する、対立する、対抗する、阻害する、中和する、または削減することができるという事実をさす。特定の実施形態では、アンタゴニストは、PCSK9の機能または活性を少なくとも10%、または少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%低下させる。本明細書においてPCSK9機能またはPCSK9活性への言及は、PCSK9により動かされる、PCSK9の求める、あるいはPCSK9により悪化または強化されるあらゆる機能または活性をさす。
【0033】
本発明はさらに、
a)生体試料収集装置、
b)コーティングもしくは捕捉抗体および検出抗体を含む、イムノアッセイを構成する組成物、および
c)試料中のPCSK9抗原とイムノアッセイにおける抗体との間の反応を検出するための手段
を含む、生体試料中の循環PCSK9レベルを測定するためのキットに関し、この際、コーティングもしくは捕捉抗体は、AX213であり、検出抗体は、AX1である。
【0034】
特定の実施形態では、キットは、支持体上に固定化されているAX213抗体を含む。
【0035】
キットは、一般に、キットの内容物の使用目的を示す標識を含むが、必ずしも含まなくてもよい。キットと関連して、標識という用語は、キットに供給されるかまたはキットに含まれるか、またあるいはキットに添付される、あらゆる記述または記録された材料を含む。
【0036】
下の実施例は、本発明をこれに限定することなく説明するために提供される。以下の頭字語のリストを実施例に用いる。
BSA:ウシ血清アルブミン
ddH2O 二重蒸留水
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
IPTG:イソプロピル−β−d−チオガラクトピラノシド
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PBSTまたはPBS−T:Tweenを含有するリン酸緩衝生理食塩水
TBS−T:Tweenを含有するトリス緩衝生理食塩水
【実施例1】
【0037】
PCSK9アンタゴニストAX213およびAX1
このアッセイで使用されるPCSK9アンタゴニストは、抗体AX213およびAX1である。AX213およびAX1は、2009年10月30日出願の、同時係属出願第61/256,732号および同第61/256,720号に開示され、これらはその全文が本明細書に援用される。
【0038】
PCSK9タンパク質に対するPDL1ファージライブラリーパンニング:AX1およびAX213を、VH3/Vκ3およびVH3/Vκ1 PDL1 Abmaxis合成ヒトFabライブラリーをヒトPCSK9に対してパンニングすることにより同定した。抗原タンパク質PCSK9を、Maxisorpウェルストリップ(well stripe)(Nunc−Immuno Modules)の上に、1〜10μg/mlの濃度で一晩4℃にてコーティングした。複数ウェルの抗原を各々のライブラリーに調製した。PBS中5%のミルクを用いて、コーティングしたウェルを室温で1〜2時間ブロッキングした。PBSで洗浄した後、100μlのファージライブラリー溶液/ウェル(通常2%ミルク−PBS中1〜5×1012)を、4つの平行なウェルに添加し、予定した時間の長さの間(通常1〜2時間)、インキュベートした。PBSTおよびPBSで数回洗浄した後、結合したファージを、新しく調製したddH2O中1.4%トリエチルアミンでウェルから溶出し(室温にて10分のインキュベーション)、その直後に50μlの1Mトリス−HCl(pH6.8)を添加することにより中和した。
【0039】
溶出し、濃縮されたファージプールを、次の段階によってさらに増幅させた。最初に、TG1細胞を37℃で1時間、溶出したファージに感染させた後、一晩培養のために2%グルコースおよび100μg/mlカルベニシリンを含む2YT寒天プレートにプレートアウトした。このようにして、濃縮したファージミドライブラリーを持つTG1細胞をプレートから回収し、ヘルパーファージGMCTに1時間感染させた。次に、Fab−ディスプレイファージを、22℃の2xYT/カルベニシリン/カナマイシン中で一晩増殖させることにより、ライブラリーファージミドとGMCTヘルパーファージゲノムの両方を持つTG1細胞から作成した。PEG/NaClで沈殿させ、PBSに再懸濁させることにより、一晩培養物上清からファージミド粒子を精製した。PEG沈殿を1回繰り返した。ファージ濃度はOD268測定により決定した。
【0040】
増幅した第1ラウンドのファージで、上記のようなパンニングプロセスを、PCSK9結合ファージをさらに濃縮するために2回繰り返した。第3ラウンドのパンニングから溶出したファージを用いてTG1細胞を感染させた。第3ラウンドのパンニングからのファージミドを持つTG1細胞を、Fab ELISAスクリーニングアッセイのために2YT寒天プレートから選び取った。
【0041】
PCSK9結合剤のためのFab ELISAスクリーニング:第3ラウンドのパンニングから10,000を上回るクローンを、Megapix Picking Robot(Genetix)により選び取り、450rpmで振盪しながら30℃で一晩培養するための、60μlの2YT/2%グルコース/カルベニシリンを含む384ウェルプレートに接種した。各々のウェルから約1〜3μlの一晩培養物を、50μl/ウェルの2YT/0.1%グルコース/カルベニシリンを含む新しいプレートに移すことにより、複製プレートを作成した。複製プレートを、30℃のシェーカー内で6時間インキュベートした後、10μl/ウェルのIPTGを1mMの終濃度となるように添加した。22℃で一晩培養した後、IPTG誘導プレート中の可溶性Fabを、リゾチームを各々のウェルに添加することにより遊離させた。
【0042】
上記実験から作成された可溶性Fabの抗原結合活性を検出するため、5μg/ml抗原を一晩コーティングすることにより抗原プレートを作成した。ミルク−PBSでブロッキングし、PBSTで洗浄した後、IPTG誘導プレートから15〜20μlのFab試料を抗原プレートに移し、1〜2時間室温にてインキュベートした。プレートをPBS−Tで5回洗浄し、1時間のインキュベーションのために5% MPBS中1:2000希釈ヤギ抗ヒトκ−HRP(SouthernBiotech社カタログ番号2060−05)または1:10,000希釈ヤギ抗ヒトFab−HRPを添加した。結合しなかったHRPコンジュゲートをPBSTで洗い流した後、基質溶液QuantaBlu WS(Pierce15169)を、次に各々ウェルに添加し、5〜15分間インキュベートした。励起波長330nmおよび発光検出波長410nmを用いることにより、各々のウェルの相対蛍光単位(RFU)を測定してFab結合活性を決定した。
【0043】
ELISAの結果は、個々のPDL1サン−ライブラリー(sun−libraries)の第3ラウンドのパンニングからの30〜80%のクローンが、抗原PCSK9と結合することを示した。陽性クローンを、次にDNA塩基配列決定に送った。
【0044】
配列は、次のように示される。
AX213
AX213全長軽鎖タンパク質[配列番号1]

AX213全長軽鎖核酸[配列番号2]


AX213−VL[配列番号3]、CDRに下線

AX213−VL[配列番号4]

AX213 FD鎖(Fab用)タンパク質[配列番号5]

AX213 FD鎖(Fab用)核酸[配列番号6]

AX213−VH[配列番号7]、CDRに下線

AX213−VH[配列番号8]

AX213 IGG2重鎖タンパク質[配列番号9]

AX213 IGG2重鎖核酸[配列番号10]


AX213全長軽鎖タンパク質[配列番号11]

IGG2核酸と対になったAX213 IGG軽鎖[配列番号12]

AX1
AX1全長軽鎖タンパク質[配列番号13]

AX1全長軽鎖核酸[配列番号14]

AX1−VL[配列番号15]、CDRに下線

AX1−VL[配列番号16]

AX1 FD鎖(Fab用)タンパク質[配列番号17]

AX1 FD鎖(Fab用)核酸[配列番号18]


AX1−VH[配列番号19]、CDRに下線

AX1−VH[配列番号20]

AX1 IGG2重鎖タンパク質[配列番号21]

AX1 IGG2重鎖核酸[配列番号22]


AX1全長軽鎖タンパク質[配列番号23]

IGG2核酸と対になったAX1 IGG軽鎖[配列番号24]

TG1細胞からのFabタンパク質の発現および精製:2YT/2%グルコース/カルベニシリン100μg/ml中の個々のクローンに対して50mlの一晩培養物を、37℃シェーカーインキュベーターで増殖させた。第2日目、750mL〜1Lの2YT/0.1%グルコース/100ug/mLカルベニシリンを、5〜10mlの一晩培養物を移すことによって各々のクローンに接種した。培養物を、30℃にて振盪しながら約3〜4時間、OD600が約1となるまで増殖させた。終濃度が0.1〜0.5mMに達するようにIPTGを培養物に添加した。22℃で一晩IPTG誘導した後、細胞ペレットを、10,000rpmで10〜15分間の遠心分離により収集して、周辺質調製に進んだ。
【0045】
可溶性Fabは、細胞周辺質から抽出した。周辺質調製は、次の通り実施した。TGIペレットを、20mLの予冷したPPBバッファー(20%スクロース+2mM EDTA+30mMトリス、pH=8)に再懸濁し、氷上で1時間インキュベートした。可溶性Fabを含む上清を遠心分離により収集した。その後、細胞ペレットをさらに20mLの予冷した5mM硫酸マグネシウムに再懸濁し、氷上で1時間インキュベートした。さらなるFab精製のために2つの上清を合わせた。
【0046】
周辺質抽出物由来の可溶性Fabを、HiTrapタンパク質G HPカラム(GEヘルスケア)を用いて精製した。カラムを最初に平衡バッファー(PBSまたはトリス、pH7.3)で平衡化した。周辺質調製物由来の上清を、1mlまたは5mLタンパク質Gカラム(HiTrap、GEヘルスケア)に装入した。10カラム容積(CV)の平衡バッファーで洗浄した後、Fabタンパク質を8CVの溶出バッファー(0.3M酢酸、pH3)で溶出した。溶出画分を回収し、0.5容積の1Mトリス、pH9バッファーで中和した。Fab試料を、10kD分子量カットオフのAmicon遠心濾過機を用いてPBSに緩衝液交換した。精製したFabの品質を、サイズ排除HPLC(SE−HPLC)を用いて分析した。また、精製したFabをELISAアッセイおよびBiacoreアッセイ(下)にも使用した。全体に、Fab収量の概要は、約1〜2mg/Lで変動性が高く、1mg/L未満から10mg/Lを優に上回る。全てのFabは、SE−HPLCで単一の主ピークを示す。ELISAアッセイの結果により、全てのFabがヒトPCSK9抗原に結合していることが確認された。
【0047】
糖鎖改変型(Glycoengineered)ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)由来の抗PCSK9モノクローナル抗体の精製:末端ガラクトースをその複合体N結合グリカンで移動させる能力のある、糖鎖を改変した(glyco−engineered)ピキア・パストリス(Pichia pastoris)GFI5.0宿主YGLY8316で発現した抗PCSK9モノクローナル抗体。抗PCSK9重鎖および軽鎖をコドン最適化し、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)α接合因子プレ配列を分泌シグナル配列として用いる、メタノール密接(tightly)誘導性プロモーターAOX1下で発現させた。この抗体を産生する糖鎖改変型ピキア株を、YGLY18513と名付けた。YGLY18513からの抗PCSK9抗体を、GEヘルスケア製MabSelect(商標)培地(カタログ番号17−5199−01)を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、無細胞上清培地から捕捉した。無細胞上清を、3カラム容積の20mMトリス−HCl pH7.0で流速5.0mL/分で前平衡化した、Mabselectカラム(XK16/20、1.6cm×10.0cm)に装入した。カラムを3カラム容積の20mMトリス−HCl pH7.0で洗浄し、それに続いて1M NaClを含有する20mMトリス−HCl pH7.0を含む5カラム容積の洗液で洗浄して宿主細胞タンパク質を除去した。抗PCSK9抗体を、5カラム容積の100mMグリシン、100mMアルギニンpH3.0で溶出し、1Mトリス−HCl pH8.0で直ちに中和した。抗体はピキアでよく発現した。
【0048】
GEヘルスケア製Source30S樹脂(カタログ番号17−1273−02)を用いる強陽イオン交換クロマトグラフィーを、第2段階の精製に使用してクリップ種(clipped species)および凝集体を除去した。抗PCSK9抗体のMabselectプールを、25mM酢酸ナトリウムpH5.0で5倍希釈し、3カラム容積の25mM酢酸ナトリウムpH5.0で前平衡化したSource30Sカラムに装入した。装入後、カラムを3カラム容積の25mM酢酸ナトリウムpH5.0で洗浄し、25mM酢酸ナトリウムpH5.0中100mM〜150mM塩化ナトリウムに及ぶ、10カラム容積にわたる直線勾配を展開させることにより溶出を実施した。良好な集められた抗PCSK9抗体を含有する画分を一緒にプールした。抗PCSK9抗体を含んでいたSource30Sプール画分を、6%スクロース、100mMアルギニン、100mMヒスチジンpH6.0(HyClone(登録商標)カタログ番号RR10804.02)を含有する調剤バッファーに緩衝液交換し、0.2μm PES(ポリエーテルスルホン)膜フィルタを用いて滅菌濾過し、放出するまで4℃にて貯蔵した。
【実施例2】
【0049】
ヒトEDTA血漿中のPCSK9の測定
このアッセイは、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)時間分解蛍光測定(TRF)法を用いる。DELFIA TRFアッセイは、長い蛍光減衰時間および大きいストークスシフトを可能にするランタニドキレート標識の蛍光特性に依存する。図1A〜Bを参照されたい。長い蛍光減衰時間は、バックグラウンド蛍光が鎮まった後に使用者が蛍光を測定することを可能にし、通常試料に伴うバックグラウンド発光を効果的に低減させる。その上、このアッセイは長いストークスシフト(360nM励起/620nM発光)を有し、ピークおよびピークショルダーに干渉することなく、クリーンなピーク蛍光検出を可能にする。DELFIA TRFのこれらの特徴は、バックグラウンド発光を、測定感度の増加を可能にするレベルまで効果的に低減する。
【0050】
このアッセイは、高結合性Costarプレートの表面への捕捉抗体の直接吸着に依存する。試料、標準物質、および対照をウェルに添加し、それに続いて二次抗体を添加し、免疫反応の後、ランタニド標識をエンハンスメント溶液中の複合体から解離する。遊離ランタニド(Eu3+、ユウロピウム)は、エンハンスメント溶液の成分と新しい高蛍光性の安定したキレートを急速に形成する。分析には、プレートをBiotek Synergy 2機器に装入し、360nmの波長で励起させ、620nmで発光を読み取る。このアッセイは、ヒト血漿中のPCSK9の濃度を定量的に測定する。
【0051】
装置:Biotek Synergy2プレートリーダー(励起フィルタ−360±40nM、発光フィルタ−620±40nM);アソーティッド・ピペッター;ボルテックスミキサー;プレートシェーカー;バイオヒット・マルチチャンネル・ピペッター(1200μL);ベックマン・コールターBiomek FX;Boekel Jitterbugモデル130000
供給元:マイクロプレート接着膜(USA Scientificカタログ番号2920−0000);1.5mLマイクロチューブ(エッペンドルフ、カタログ番号022363204);黒色高結合アッセイプレート(Costar3295番);ピペット用チップ;血漿収集のためのEDTAバキュテイナチューブ(BD、カタログ番号366643)
試薬:(1)DELFIA成分(パーキンエルマー)[ストレプトアビジン/ユウロピウム(100μg/mL)、4℃にて貯蔵(カタログ番号1244−360);DELFIAアッセイバッファー、4℃にて貯蔵(カタログ番号1244−111);DELFIAエンハンス、4℃にて貯蔵(カタログ番号1244−105)]、(2)抗体[AX213(ヒトPCSK9に対するモノクローナルAb)捕捉抗体、4℃にて貯蔵、およびAX1(ヒトPCSK9に対するモノクローナルAb)ビオチン化二次抗体、4℃にて貯蔵]、(3)ヘテロ親和性ブロッキング試薬1(HBR1、精製)、Scantibodies Laboratory、カタログ番号3KC533約20mg/mL、(4)10%Tween−20室温貯蔵(バイオ・ラッド、カタログ番号161−0781)、(5)MSDブロッカーA:4℃にて貯蔵(メソスケールディスカバリー、カタログ番号R93AA−1)、(6)TBS−T洗浄バッファー(シグマ、カタログ番号T−9039)[1包を1リットルMilli−Q等級の水に混合、終濃度:1000mL中50mMトリス緩衝生理食塩水、0.05%Tween−20、室温貯蔵]、(7)1Xリン酸緩衝生理食塩水溶液(Fluka、カタログ番号79383)[5.0mL 10X PBSを45mLのMilli−Q等級の水に希釈、終濃度:1X]、(8)コーティング溶液[使用直前に次の通り調製:5.00μLのAX213(ストック=10.05mg/mL)を5995μlの1X PBSに入れる、コート溶液は8.375μg/mL AX213]、(9)ブロッキング溶液[実験当日に次の通り調製:900mgのMSDブロッカーA(BSA)を30.0mLのTBS−T洗浄バッファーに入れる、終濃度:3%]、(10)アッセイバッファー(AB)[実験当日に下の表1中の通り調製]:
【0052】
【表1】

(11)1%BSA[実験当日に次の通り調製:4.0mLのブロッキング溶液をピペットで8.0mL TBS−T洗浄バッファーに入れる]、(12)ビオチン化二次抗体溶液[使用直前に次の通り調製:5.5μL AX1 Ab(ストック=1.0mg/mL)を5494.5μL 1%BSAに入れる、終濃度:1.0μg/Ml]、ならびに(12)Strep−Eu溶液[使用直前に調製し、光から保護、8.0μL Strep−Eu(ストック=100μg/mL)を7992μL DELFIAアッセイバッファーに入れる、終濃度:0.100μg/mL]。
【0053】
検量用試料曲線の作製:PCSK9のマスターストック濃度は、1.32mg/mLである。30μg/mLのストックを、マスターストックからのアッセイバッファーでの1:44希釈を用いて調製した。
【0054】
【表2】

Biomek FX手順:スパン−8ヘッドの全ての検量線を、PCSK9について特異的に作成した。全てのロボットピペッティング機能は、スパン−8ヘッドを用いて実施した。プログラムは、3つの部分に分けられる:(1)試料希釈:140μLのアッセイバッファーを、ポリプロピレン希釈プレートの各々のウェルに添加した。20μLの各々のQCおよび臨床試料を、アッセイバッファー含有するウェルに添加した。(2)試料添加:希釈プレート中の各々のQCおよび臨床試料を、3回混合した。50μLの各々のQCおよび臨床試料を、Costarアッセイプレートに二連で添加した。また、標準添加:50μLの各々の検量用試料を、Costarアッセイプレートに二連で添加した。
【0055】
Biotek Synergy 2の設定:プレートを、最も低い設定で5分間振盪した後、読み出した。励起および発光、それぞれ360nm(40nm範囲)および620nm(40nm範囲)。遅延時間は250μ秒であり、総計数時間は1000μ秒である。
【0056】
アッセイ手順:(1)プレートのコーティング:ウェル当たり60μLのコーティング溶液を添加し、4℃にて一晩静置し、プレーテッドシーラー(plated sealer)で密封した。(2)プレートのブロッキング:プレートを洗浄せずに、ウェル当たり150μLのブロッキング溶液を添加し、室温にて1時間振盪しながらインキュベートした。Jitterbugのスイッチを入れ、温度を37℃に設定した。(3)組換えPCSK9曲線:6.0μLの30μg/mLストックを、219.0μLアッセイバッファーに添加し、75μLの検量用試料を用いて150μLのアッセイバッファーに3倍連続希釈した。(4)試料および検量用試料の添加:ブロッキングの後、段階1に記載されるようにプレートを洗浄し、Biomek FXで動かした。プログラムは、試料およびQCをアッセイバッファー中1:8に希釈した。検量用試料(標準物質)は希釈しなかった。ウェル当たりの最終容積は50μLであった。次に、プレートをJitterbug中で1時間37℃にて振盪しながらインキュベートした。(5)抗体の検出:50μLのビオチン化二次抗体溶液を各々のウェルに添加した。抗体の終濃度は、1.0μg/mLであった。プレートを室温にて1時間振盪しながらインキュベートした。(6)Strep−Eu:75μLのStrep−Eu溶液を各々のウェルに添加した。Strep−Ruの濃度は0.10μg/mLであった。プレートを室温にて20分間振盪しながらインキュベートした。(7)エンハンス溶液:100μLのDELFIAエンハンス溶液を各々のウェルに添加し、プレートを黒色の蓋で覆い、Biotek Synergy2プレートリーダーで読んだ。(8)プレートの読み取り:DELFIAプログラムを実施した。プレートを5分振盪させた後、360nmの励起および620nmの発光で読み取った。
【0057】
計算:全ての計算は、Gen5ソフトウェアを用いて完了した。未知物質の濃度を、PCSK9のnMで表される検量用試料曲線から導いた。
【0058】
結果:図2は、アッセイバッファーに希釈した組換えヒトPCSK9標準曲線を説明する。曲線の範囲は、10.26nM〜0.005nMである。図3は、3週間の間の3つの異なる日に示された、6名の正常な健常ボランティアの生物学的多様性を説明する。濃度はnMで示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の循環PCSK9レベルを測定する方法であって、被験体から入手した生体試料でイムノアッセイを実施する段階、および前記試料中のPCSK9のレベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較する段階を含み、コーティングもしくは捕捉抗体がAX213であり、検出抗体がAX1である、方法。
【請求項2】
AX213およびAX1が全長抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
AX213が、配列番号3を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号7を含む重鎖可変(「VH」)配列を含み、かつ、AX1が、配列番号15を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号19を含む重鎖可変(「VH」)配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
AX213が、配列番号1または配列番号11を含む軽鎖と、配列番号9を含む重鎖を含み、AX1が、(a)配列番号13または配列番号23を含む軽鎖と(b)配列番号21を含む重鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
イムノアッセイを実施する段階が、(a)固定化された抗PCSK9抗体AX213を有する支持体に、生体試料を付着させること、(b)その上に該生体試料を付着させた該支持体と、検出可能な標識を有する抗PCSK9抗体AX1を接触させること、および(c)該標識を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該イムノアッセイが固相イムノアッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該固相イムノアッセイが、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、血液、血漿および血清からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該血液、血漿または血清がヒト由来である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
推定PCSK9アンタゴニストと接触させた生体試料でイムノアッセイを実施する方法であって、(a)固定化された抗PCSK9抗体AX213を有する支持体に該生体試料を付着させる段階、(b)その上に該生体試料を付着させた該支持体と、検出可能な標識を有する抗PCSK9抗体AX1を接触させる段階、(c)該標識を検出する段階、および(d)前記試料中のPCSK9の該レベルを既知濃度のPCSK9を有する標準物質と比較する段階を含む、方法。
【請求項11】
AX213およびAX1が全長抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
AX213が、配列番号3を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号7を含む重鎖可変(「VH」)配列を含み、AX1が、配列番号15を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号19を含む重鎖可変(「VH」)配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
AX213が、配列番号1または配列番号11を含む軽鎖と、配列番号9を含む重鎖を含み、AX1が、(a)配列番号13または配列番号23を含む軽鎖および(b)配列番号21を含む重鎖を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
該イムノアッセイが固相イムノアッセイである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
該固相イムノアッセイが、解離促進ランタニド蛍光イムノアッセイ(DELFIA)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、血液、血漿および血清からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
該血液、血漿または血清がヒト由来である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生体試料中の循環PCSK9レベルを測定するためのキットであって、
a)生体試料収集装置と、
b)コーティングもしくは捕捉抗体および検出抗体を含む、イムノアッセイを構成する組成物と、
c)該試料中のPCSK9抗原と該イムノアッセイにおける抗体との間の反応を検出するための手段とを含み、
該コーティングもしくは捕捉抗体がAX213であり、該検出抗体がAX1である、キット。
【請求項19】
AX213およびAX1が全長抗体である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
AX213が、配列番号3を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号7を含む重鎖可変(「VH」)配列を含み、AX1が、配列番号15を含む軽鎖可変(「VL」)配列と、配列番号19を含む重鎖可変(「VH」)配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
AX213が、配列番号1または配列番号11を含む軽鎖と、配列番号9を含む重鎖を含み、AX1が、(a)配列番号13または配列番号23を含む軽鎖および(b)配列番号21を含む重鎖を含む、請求項20に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509591(P2013−509591A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537087(P2012−537087)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/054595
【国際公開番号】WO2011/053743
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】