説明

PUFAサプリメント

【課題】血中におけるn-3またはn-6 PUFA(多価不飽和脂肪酸)の異常または低いレベルに関連する疾患または状態の予防、防止、改善または治療用処方物の提供。
【解決手段】アラキドン酸(ARA)を含有する食用処方物であって、それらは1日当たり150mg〜1gのARAを送達するのに適合しており、他のPUFA、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含有していてもよい。DHAの用量は1日当たり400〜600mgであり、ARA:DHAの比率は1:5〜5:1である。処方物は、ARA:DHA=1:1〜1:2の比率でARAおよびDHAを含有する医薬組成物、または0.1〜5%のARAを含有する食料品である。かかる処方物は、例えば、妊娠している女性における、あるいは低いARAレベルに関連する疾患または状態を有する人々に対して、インビボARAレベルを上昇させるのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、ヒトおよび動物の食餌における多価不飽和脂肪酸(PUFA)の供給に関する。さらに具体的には、本発明は、n-6およびn-3系の多価不飽和脂肪酸、特にn-6脂肪酸のアラキドン酸(ARA)およびn-3脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)の供給、ならびに、そのバランスの取れた量の比率に関する。
【0002】
本発明は、部分的には、n-6およびn-3系の至適なバランスが健康および慢性疾患の防止に重要な役割を果たし得るという発見に基づいている。この主な理由は、この2つの系がC18前駆体から長鎖メンバーを形成するために同じ酵素に対して拮抗するということである。その結果として、また、これは従来技術の組成物に生じることであるが、一方の系の過剰なメンバーが他方の系の量を減少させる傾向にある。さらに、2つの系のメンバーは、場合によっては、身体の本質的な機能、例えば、血液凝固および免疫応答に悪影響を与え得る。
【0003】
食餌にC18 n-6脂肪酸であるリノール酸を供給することは、この脂肪酸が通常の植物油、例えば、コーン油および大豆油に豊富に存在することから、技術的には比較的容易である。また、C18 n-3脂肪酸であるα-リノレン酸を含有する植物油、例えば、菜種油が利用可能であるが、それらの安定性が低いので、それほど容易に用いられない。このことから、現代の食餌では、通常、n-3系よりn-6系が過剰になる。
【0004】
それゆえ、n-3脂肪酸は、比較的に欠乏していると疑われる多くの場合に補給すべきであると言われている。一般的には、これはC18前駆体を供給することによって達成することができない。そのC20およびC22誘導体への変換効率が低いからである。それゆえ、C20およびC22 n-3脂肪酸(EPAおよびDHA)は、それ自体を供給すべきであるということで意見が一致している。
【0005】
多くの場合、この補給の背後にある原理は、長鎖n-6脂肪酸であるARAの作用を低減することである。魚油または微生物(藻類)油に由来するn-3 PUFAの添加は、実際、ARAレベルを低下させる。魚油の場合、このことは魚油が少量のARAを含有するという事実にもかかわらず発生する。
【0006】
このようなARA含量の低下は、必ずしも望ましいわけではない。かくして、本発明は、ARAレベルに悪影響を与えることなく、動物のDHAおよび/またはEPA状態を強化しうるか、あるいは逆に、DHAおよび/またはEPA状態に影響を与えることなく、ARAを強化しうる調製品を提供しようとするものである。
【0007】
ARAおよびn-3 PUFAの両方を含有する調製品の使用は、以前、乳幼児用フォーミュラへのPUFAの供給において記載されたことがある。この背後にある原理は、ヒト母乳は乳幼児の発達に有用であると考えられるARAおよびDHAを相当量含有しているということである。
【0008】
対照的に、成人の栄養摂取にとって、このようなPUFAの天然源は存在しないが、ARAおよびDHAの両方はヒト食餌の成分として見出すことができる。しかし、多数の理由から、これらのPUFAレベルは至適以下であると思われる。さらに、様々な集団は様々なレベルのこれらPUFAを有し、このことは適当な用量に影響を与え得る。天然由来のモデルが存在しないので、用いるべきPUFAの相対的な量を決定する必要があり、本発明は、この問題を扱い、幾つかの応用のためにPUFAの様々な処方物および比率を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0009】
(背景技術)
エム・マクリデス(M. Makrides)ら[ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ケミカル・ニュートリション(European Journal of Chemical Nutrition)50:352-357(1996)]は、DHAの内部摂取(1日当たり0〜1.3gのDHA)を変化させることの母乳脂肪酸に対する影響を評価する研究に言及している。授乳する母親に供給された食餌中のDHAは、母乳DHAに対する強い特異的な用量依存性の影響を与えたが、ARAレベルに影響を与えなかった。この研究では、マルテック・コーポレイション(Martek Corporation)(アメリカ合衆国)から商標名ニューロミンズ(NEUROMINSTM)で利用可能な藻類油が用いられた。
【0010】
WO-A-92/12711(マルテック(Martek))は、ARAおよびDHAを、例えば、ARA:DHA=3:1〜2:1の比率で、特に乳幼児用フォーミュラ中におけるこれらのPUFAレベルをヒト母乳(ARAレベルが0.5〜0.6%)に匹敵する量で提供するように含有する配合油に言及している。
【0011】
多数のPUFA含有組成物が現在市販されている。エファナタル(EFANATALTM)はカプセルであり、1日当たり2カプセルを服用することにより、DHA(125mg)、ARA(8.6mg)およびGLA(40mg)を毎日摂取することになる。このカプセルは、魚油を主成分とする油を含有する。本出願人は、カプセル中のARA含量に対するDHA含量が高すぎるので、これがインビボARAレベルを低下させることを見出した。かくして、この製品は、それがARAを含有するという事実にもかかわらず、実際には、ARAを上昇させるよりむしろARAを低下させる組成物である。この製品と本発明の製品との比較は、後に示す。
【0012】
エファマリン(EFAMARINETM)もカプセルであり、主として魚油およびマツヨイグサ油を含有している。EPA(34mg)、DHA(22mg)およびGLA(68mg)を毎日摂取するように1日当たり2カプセルを服用しなければならない。
【0013】
エファレックス(EFALEXTM)は配合油であり、茶さじ1杯(5ml)を1日当たり2回服用することを意図し、茶さじ1杯当たりDHA(100mg)、GLA(21mg)、ARA(8mg)およびタイム油(6mg)を与える。
【発明の概要】
【0014】
(発明の開示)
本発明の第1の態様は、1日当たり用量150mg〜1g(のARA)を送達するのに適合した量でARAを含有する食用処方物に関する。
【0015】
好ましくは、上記処方物は、1日当たり250〜900mg、例えば、1日当たり200〜700mg、至適には1日当たり250〜400または500mgのARAを送達するのに適合している。
【0016】
食用処方物としては、食餌サプリメント、ならびに(医薬)処方物および調製品、例えば、錠剤、丸剤およびカプセルが挙げられる。さらに、(固形または液状)食料品、例えば、乳製品(マーガリン、バター、牛乳、ヨーグルト)、パン、ケーキ;ドリンク類、例えば、飲料(お茶、コーヒー、ココア、チョコレートドリンク)、フルーツジュース、ソフトドリンク(例えば、炭酸飲料);菓子;油性食品(スナック、サラダドレッシング、マヨネーズ)、スープ、ソース、炭水化物に富む食品(ご飯、麺類、パスタ)、魚入り食品、ベビーフード(例えば、乳幼児用フォーミュラ、液状または粉末として)、ペットフード、および調理済み食品または電子レンジで調理可能な食品が挙げられる。
【0017】
ARAは、任意の適当な起源に由来することができる。天然物(例えば、植物または海産物)の起源に由来していても、また、微生物起源に由来するか、あるいは微生物、例えば、真菌類、細菌類または酵母に由来していてもよい。
【0018】
適当な真菌類は、ムコラレス(Mucorales)目、例えば、モルチエレラ(Mortierella)、ピチウム(Pythium)またはエントモフトラ(Entomophthora)に属するものである。ARAの好ましい起源は、モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)またはピチウム・インシジオスム(Pythium insidiosum)由来である。適当な市販品の入手可能なARA油としては、DSM/ヒストブロカデス(Gist-brocades)(ウォーターリングセヴェーグ(Wateringseweg)、P.O. Box. 1、2600MA、デルフト(Delft)、オランダ)から商標名オプティマール(OPTIMARTM)で入手可能なもの、およびマルテック・コーポレイション(Martek Corporation)(ドビン・ロード(Dobbin Road)6480番、コロンビア(Columbia)、メリーランド州21045、アメリカ合衆国)から商標名アラスコ(ARASCOTM)で入手可能なものが挙げられる。
【0019】
ARAに加えて、1種またはそれ以上の付加的なPUFAを供給してもよい。これは、ARAに加えて別のn-6 PUFA(例えば、C18、C20またはC22脂肪酸)であってもよいし、n-3脂肪酸(例えば、C18、C20またはC22脂肪酸)、特にEPAおよび/またはDHAであってもよい。本発明に用いうる各PUFAは、リン脂質として、あるいはトリグリセリドとして、遊離の脂肪酸、脂肪酸エステル(例えば、メチルまたはエチルエステル)の形態でありうる。
【0020】
上記処方物がn-3脂肪酸を含有すれば、これはEPAまたはDHAであることが好ましい。それがDHAであれば、上記処方物は、好ましくはARAに対して特定されているのと同じ用量、例えば、1日当たり400〜600mgのDHAを送達するように適合されている。あるいは、また、加えて、上記処方物がEPAを含有すれば、それは、好ましくは1日当たり用量150mg〜1gのEPA、例えば、1日当たり用量250〜500mgのEPAを送達するように適合されている。
【0021】
上記処方物が1日に1回服用(食事または摂取)すべきであれば、それは150mg〜1gのARAを含有することができる。1日に2回であれば、上記処方物は、75mg〜0.5gのARAを有することができ、1日に3回の場合には、50mg〜330gのARA含量など、より頻繁に投与する場合には、比例配分すればよい。存在しうる他のPUFA、例えば、DHAに同じ計算を適用することができる。
【0022】
上記処方物が1種より多くのPUFAを含有すれば、各PUFAの量は相対的に比率で表現することができる。例えば、n-3 PUFAがさらに供給されるのであれば、ARA n-3 PUFA(例えば、DHAまたはEPA)の比率は、1:5〜5:1、好ましくは2:1〜1:3、至適には1:1〜1:2とすることができる。PUFAの相対的な量は、個体の状態に留意しながら、PUFAレベルを補給するようにバランスさせる、すなわち増加させる(あるいは、少なくとも有意に減少させないようにする)ことができる。
【0023】
好ましくは、PUFAは油中に存在する。これは純粋な油、加工油(例えば、化学的および/または酵素的に処理した油)または濃縮油でありうる。この油は10〜100%のPUFAを含有しうるが、所望のPUFA、例えば、ARAの含量は、微生物油であれば、20〜45%、至適には30〜45%であればよい。もちろん、この油は、1種またはそれ以上のPUFAをこれら百分率の濃度範囲内で含有しうる。この油は、単独の細胞または微生物起源に由来する単独油であってもよいし、これらまたは他の(例えば、植物または海産物)起源に由来する2種またはそれ以上の油の配合油または混合油であってもよい。この油は、例えば、1種またはそれ以上の酸化防止剤(例えば、トコフェロール、ビタミンE、パルミチン酸塩またはエステル)を、50〜800ppm、例えば、100〜700ppmの濃度で含有していてもよい。PUFAを製造する適当な方法は、国際特許出願第PCT/EP97/01446(WO-A-97/36996)号、第PCT/EP97/01448(WO-A-97/37032)号およびに第PCT/US92/00517(WO-A-92/13086)号に記載されている。
【0024】
本発明の第2の態様は、ARAおよびDHAをARA:DHA=1:1〜1:2の比率で含有する(医薬)組成物に関する。このPUFAの比率は、良好なバランスを提供し、インビボDHAレベルを、非常に高いDHA含量によりARAレベルを低下させることなく、上昇させることが判明した。DHAは、天然物(例えば、海産物)起源に由来することも、微生物起源(例えば、藻類)に由来することができる。
【0025】
第3の態様は、0.1〜3または5%のARAを含有する食用処方物(例えば、食料品)に関する。好ましくは、この量は0.5〜1.5または2%、至適には0.3〜0.8%である。適当な食料品は、第1の態様に関連して、すでに考察されている。乳幼児用フォーミュラを製造する好ましい方法は、国際出願第PCT/EP97/01447(WO-A-97/35487)号および第PCT/EP97/01449(WO-A-97/35488)号に記載されている。
【0026】
適当な処方物としては、例えば、経口的に服用される油を挙げることができる。この油は、そのまま服用してもよいし、例えば、カプセル被膜に入れ、かくして、カプセルの形態であってもよい。被膜またはカプセルは、ゼラチンおよび/またはグリセリンを含有していてもよい。この処方物は、他の成分、例えば、香味剤(例えば、レモンまたはライム香料)を含有していてもよい。
【0027】
本発明は、正常な健康で十分に食事をした (通常は、適当な食餌療法を行っても、有益であると期待されない)個体のPUFAレベルを向上させるのに用いられる。しかし、PUFAレベルが低いまたは不足している個体に用いることもできる。
【0028】
かくして、本発明の第4の態様は、下記の女性に対するARAの(例えば、食餌または栄養サプリメントとしての、あるいは、医薬品を製造するための)使用に関する:
【0029】
a.妊娠している年齢15〜20歳の女性;
b.妊娠している年齢40〜60歳、例えば、年齢50〜55歳の女性;
c.4番目、5番目またはそれ以降の子供を妊娠している女性;
d.双子、三つ子または四つ子を妊娠している女性;
e.妊娠している妊娠1〜3ヶ月の女性;
f.体外人工授精(IVF)の結果として妊娠しているか、あるいはIVF治療を受けているが、まだ妊娠していない女性;
g.妊娠第20週またはそれ以降の妊娠している女性;
h.妊娠しているにもかかわらず、栄養不良であるか、乏しい栄養または少しの栄養しか摂取していないか、栄養不良または吸収不良に罹患しているか、あるいは1種またはそれ以上の必須脂肪酸(例えば、PUFA)が欠乏している女性;
i.妊娠しようとしている女性;
j.妊娠しており、胎児の健全な子宮内成長を促進しようとする女性;あるいは、
k.授乳しており、その母乳中におけるARAまたはEPAのレベルを上昇させようとする女性。
【0030】
(h)の場合、これらの条件は、西欧では比較的まれであるが、アフリカや幾つかのアジアの国々(例えば、パキスタン)の女性に見出しうる。
【0031】
妊娠している女性の場合、(j)の胎児に対する利益は、母親と胎児との間における体液の輸送には個体差があるので、必ずしも予期できないし、直ちに明白であるとも限らない。胎盤と胎児との結合(臍帯)は大きさおよび生理学的状態が変化することができ、それゆえ、従来は、母親にPUFAを補給しても、必ずしも胎児がこれらのPUFAを受け取り、それゆえ胎児も利益を得ることを示さなかった。
【0032】
第5の態様は、50歳以上、好ましくは65歳以上のヒト(男性または女性)に対するARAの(食餌または栄養サプリメントとしての)使用に関する。
【0033】
第6の態様は、妊娠または授乳している非ヒト哺乳動物に対するARAの(食餌または栄養サプリメントとしての)使用に関する。
【0034】
ARAは、好ましくは1日当たり150〜700mg、至適には1日当たり250〜500mgで摂取される。
【0035】
本発明の第7の態様は、例えば、血中におけるn-3またはn-6 PUFAの異常または低いレベルに関連する疾患または状態の予防、防止、改善または治療用(において補助を行う)医薬品を製造するためのARAの使用に関する。それゆえ、本発明は、ARAレベルの低い被験者、例えば、リノール酸(LA)をARAに変換できないか、あるいは効果的に変換できない被験者への使用を提供する。それゆえ、適当な患者は、Δ6不飽和化酵素が機能不全、不十分または欠乏していればよい。
【0036】
PUFA欠乏の(マウス)モデルは、確立され、栄養不良の影響を真似るために用いられている。このモデルは、母親および胎児の両方に対する、妊娠期間中を含めて、本発明の処方物の有利な効果を示している。また、乏しい胎盤輸送や子宮内での成長の遅れを刺激することを可能にし、本発明の様々な態様で述べた個体(および妊娠していれば、胎児)における本発明の処方物を用いた補給の利益を示している。
【0037】
本出願人は、幾つかの疾患または状態、特に神経疾患が低いインビボPUFAレベル、特に低い血中ARAレベルと関連していることを見出した。それゆえ、ARAの投与またはPUFAのバランスが、これらの疾患または状態の予防、防止、改善または治療において補助を行い得ると考えられる。問題の疾患としては、神経疾患、例えば、精神分裂病、嚢胞性繊維症、突発性イムノグロブリンA腎症、多発性硬化症、色素性網膜炎、アッシャー症候群、セリアック病、黄斑変性、パーキンソン病、骨粗鬆症、アルツハイマー病またはフェニルケトン尿症が挙げられる。
【0038】
第8の態様は、所望により、DHAと共に、ヒトまたは非ヒトの雌哺乳動物における授乳および/または出産効率もしくは成功、あるいは受胎能力を促進するためのARAの使用に関する。
【0039】
本発明の第9の態様は、血中ARAレベルを上昇させる比率のARA:DHAでの(食用処方物中における)ARAおよびDHAの使用に関する。好ましくは、ARA:DHAの比率は1:5〜5:1、例えば、1:1〜1:2である。
【0040】
本発明は、特に、ARAレベルの低い人々、例えば、糖尿病患者、アルコール中毒者、薬物常用者、喫煙者、あるいは、免疫レベルが異常または低いか、あるいは免疫無防備状態の被験者に対する応用である。
【0041】
第4〜第9の態様の使用としては、ARA(および所望により、DHA)を、そのまま、あるいは処方物で、被験者(個体、ヒトまたは動物)に投与する方法(ここで、かかる被験者は、投与を必要としているか、あるいは投与により利益を得るものとする)、あるいは特定の目的を持った医薬品の製造におけるそれらの使用が挙げられる。処方物は、必要ならば、GLAおよび/またはDGLAを除外してもよい。
【0042】
ARA(および存在すれば、DHA)の用量または量は、好ましくは必須脂肪酸(EFA)充足指数(20:4 n-6(ARA)のレベルを20:3 n-9脂肪酸(ミード(mead)酸)のレベルで割った値として定義される)および/またはEFAバランス指数(22:6 n-3(DHA)のレベルを22:5 n-6のレベルで割った値として定義される)を上昇させるようなものである。ここで、レベルとしては、血液(例えば、赤血球)、脳、胎盤、肝臓、腸、血漿または胎児中のレベルが挙げられる。
【0043】
本発明のある態様の好ましい特徴および特性は、必要な変更を加えて、別の態様に等しく適用可能である。
【実施例】
【0044】
実施例
以下の実施例は、本発明を単に例示するために提供されるのであって、限定的に解釈すべきではない。
【0045】
実施例1〜3:バランスした比率のPUFAを含有する組成物の製造
本実施例は、単独のカプセルに入れることができるn-6およびn-3油の配合について説明する。
【0046】
本組成物は、n-6 PUFAに富む1種の油をn-3 PUFAに富む3種の異なる油と併用することにより製造した。n-6 PUFAに富む油は、糸状菌モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)の発酵により誘導され、約40%のARAを主要な脂肪酸として含有していた。n-3 PUFAに富む油としては、3種の異なる起源:高EPA(約45%)低DHA(約10%)魚油(プロノヴァ(Pronova)(ノルウェー)から商標名エパックス(EPAXTM)、商品番号EPAx4510TGで入手可能)、高DHA(約50%)低EPA(約20%)魚油(やはりプロノヴァ(Pronova)から同じ商標名、商品番号EPAx2050TGで入手可能)、および、40%DHAを主要脂肪酸として含有するが、実質的にEPAを有しない、単細胞藻類クリプテコジウム・コーニィー(Cryphtecodium cohnii)の発酵により誘導された油(マルテック・コーポレイション(Martek Corporation)(コロンビア州、アメリカ合衆国)から商標名ダスコ(DHASCOTM)で入手可能)であった。
【0047】
これらの油を適当量だけ混合して、所望の量および比率のn-3およびn-6 PUFAを得た。ここで、3つの配合油(実施例1〜3)に関するARA:DHAの比率は、1:1であった。この手順の間に、酸化に感受性を有する油は、酸素を含まない窒素ガスの雰囲気(ブランケット)により、環境中の酸素から保護した。引き続いて、これらの油を用いて、軟質ゼラチンカプセルを製造した。各カプセルは、400mgのARAおよび400mgのDHAを有していた。
【0048】
実施例4:妊娠している女性への妊娠初期または後期段階のバランスしたPUFAの供給
本実施例は、妊娠している女性に対して分娩(出産)までの妊娠期間中の第6週から第15週または第20週から第25週のいずれかにARAおよびDHAを補給する試験に関する。ARAの起源は、DSM/ヒストブロカデス(Gist-brocades)(デルフト(Delft)、オランダ)から商標名オプティマール(OPTIMARTM)で入手可能な、38%のARAを含有するトリグリセリド油であった。これは、真菌モルチエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)により産生される油である。DHAについては、DHAに富む食用の魚油、またはマルテック・コーポレイション(Martek Corporation)から商標名ダスコ(DHASCOTM)で入手可能な藻類由来の油のいずれかを採用した。
【0049】
それゆえ、出産時および引き続く授乳期間の間に測定した母親の脂肪酸状態が補給を受けていない対照グループと同程度かどうかを調べるために、妊婦への妊娠期間中のARAおよびDHAの補給を研究した。測定は、母親の赤血球のARAおよびDHA値、臍帯動脈および静脈血管壁のARAおよびDHA含量、母乳のARAおよびDHA含量について行った。
【0050】
この研究は、ケースを制御した研究であり、10人の妊娠している女性が参加した。ある実験グループ(5人の女性からなる)には、1日当たり1個またはそれ以上のゼラチンカプセル(各々、250mgのARAを含有)の油(38%のARAを含有)および1日当たり1個のカプセル(各々、500mgのDHAを含有)の油(25%のDHAを含有)を投与した。対照グループには、同量の偽薬ゼラチンカプセルを投与して、毎日のカロリー摂取の差をなくすようにした。実験グループおよび対照グループのビタミンE摂取は同一であり、カプセルは朝食の間に服用した。
【0051】
血液試料を試験の開始時および妊娠の終了時に採取した。赤血球中の脂肪酸は、水素炎イオン化によるキャピラリーガスクロマトグラフィーを用いて(リン脂質として)測定した。
【0052】
補給を行った女性は、妊娠期間中および出産時に赤血球中におけるDHAおよびARAのレベルが両方とも有意に高いことが判明した。注目すべきことは、これらの高いレベルが、授乳期間の間に、母親の赤血球およびその母乳の両方において明らかに持続したことである。母乳中のARAレベルは、0.8%〜1.0%のARAまで上昇していることが判明した。加えて、新生児の血中ARAレベルは、対照グループより高いことが判明した。この発見は、最少限の栄養摂取状態にある母親およびその子供にとって重要な意味を有する。
【0053】
実施例5:年配者へのバランスしたPUFAの供給
本出願人は、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの疾患が低PUFA状態と関連していることが判明している集団(年配者の集団については少なくない)のn-3 PUFA状態を強化する必要性に気づいている。これは、部分的には、Δ6不飽和化酵素が不十分または欠乏しているからであると考えられる。しかし、ARAレベルの低下が免疫系に負の影響を与えうるので、特に年配者には、注意が必要である。
【0054】
n-3およびn-6 PUFAをDHA:ARA=2:1の比率で含有する処方物を実施例1に従って調製した。これらのカプセルを健康な年配の男性および女性(年齢が少なくとも65歳)のグループに1日当たり用量1gのn-3 PUFAを与えた。
【0055】
1ヶ月後、被験者の赤血球のPUFA状態を評価した。すべての場合において、DHAレベルが上昇しているのに対し、ARAレベルは、一定のままであるか、あるいは、幾つかの場合において、わずかに上昇を示していることが判明した。かくして、バランスした処方物の使用により、患者のn-3 PUFA状態を、ARA状態を損なうことなく、強化することができた。
【0056】
実施例6:妊娠している女性へのPUFAの供給
PUFAを含有するカプセルを2種類調製した。第1の種類は、カプセル1個当たり500mgのARAを含有するものであった。これらは1日当たり1回服用すべきものであった。ARAは、DSM/ヒストブロカデス(Gist-brocades)(デルフト(Delft)、オランダ)から商標名オプティマール(OPTIMARTM)で入手可能な微生物油として供給された。これらのカプセルは、ゼラチンコートを有し、20mgのビタミンEを含有していた。マルテック・コーポレイション(Martek Corporation)(コロンビア州、アメリカ合衆国)から入手可能な微生物油(商標名ダスコ(DHASCOTM))として存在するDHAを同量(500mg)含有する同様のカプセルも調製した。これらのカプセルも1日当たり1回服用するように設計した。
【0057】
試験は、妊娠している女性に1日当たり1個のARAカプセルまたは1日当たり1個のARAカプセルおよび1個のDHAカプセルを摂取させることにより行った。この研究に選ばれた女性は、血中ARAレベルの比較的低いことが判明している人々であった。それゆえ、妊娠している多数の女性を血中インビボARAレベルについて試験し、この研究に参加する許可を得た。第1の女性グループは、年齢15歳から20歳までのティーンエージャーであった。これらの女性全員について、今回が最初の妊娠であった。早期の成熟ゆえに、彼女らは食事へのARA補給およびARA+DHA補給の両方から利益を得ることが判明した。両方の療法(regime)がインビボARAのレベルを増加させた。
【0058】
第2のやはり妊娠している女性グループを試験した。これらの女性は年齢40歳から50歳であった。妊娠中、彼女らの血中インビボレベルは、やはり両方の補給投与計画の下で上昇していることが判明した。この研究に選ばれた半数の女性は、4人目の子供を宿していた。
【0059】
各々双子を妊娠している3人の女性を、1日当たり1個のARAカプセルおよび1個のDHAカプセルを用いた補給用に選んだ。彼女らのインビボARAレベルは、おそらく母親の血液中のARAが両方の胎児に吸収され消費されていることから、比較的低いことが判明した。これらの女性には、ARAおよびDHAカプセルを用いて補給を行い、血中ARAレベルが上昇することが判明した。
【0060】
実施例7:PUFA含量の低い被験者へのARAおよびDHAの供給
今回はARAカプセルが250mgのARAしか含有しないこと以外は、実施例6に記載したものと同じカプセルを用いた。これらのカプセルは、被験者およびその状態によって、毎日1回または2回服用することができた。
【0061】
この研究には、血中PUFAレベルが比較的低い多数の人々を選んだ。PUFA含量が低い理由は、必ずしも直ちに明白ではなかった。しかし、多数の疾患または悪い状態が低いPUFAレベルをもたらすことが判明しており、それゆえ、正しい用量のARAまたはARA:DHAのバランスのいずれかを提供すれば、インビボARAレベルを上昇させることができ、この状態の症状の幾つかを緩和しうると考えられた。これらの状態の幾つかは、前駆体のARA自体への変換の悪い効率、例えば、Δ6不飽和化酵素の欠陥または欠乏をもたらすと考えられた。低いPUFAレベルを生じることが多いことが本出願人により見出された状態としては、嚢胞性繊維症、多発性硬化症、セリアック病および骨粗鬆症が挙げられる。加えて、アルコール中毒、薬物に対する嗜癖の治療を受けている患者や免疫無防備状態にある患者(AIDS患者)についても、PUFAレベルの低いことが判明した。
【0062】
それゆえ、毎日1個または2個のARAカプセルを服用させて、ARA:DHA含量が1:1または1:2になるように研究を行った。ほとんどすべての場合に、これらのカプセルを(少なくとも3週間)服用している患者は、いずれも、試験の終了時に血中インビボARAレベルが上昇していることが判明した。
【0063】
実施例8:乳幼児用フォーミュラへのPUFAの供給
0.5%のARAおよび0.5%のDHAを含有する固形(粉末)および液状の乳幼児用フォーミュラ・ベビーフードを調製した。このフォーミュラを、子供に母乳を与えないと決めていた母親により赤ん坊に最初の3ヶ月間定期的に与えた。対照として、これらの子供の血中インビボARAレベルを同じ期間にわたり母乳を与えられていた子供と比較した。それを哺乳瓶で与えられていた乳幼児では、ARAレベルが母乳を与えられていた乳幼児に匹敵することが判明した。
【0064】
比較例9および実施例10
比較試験のために、母乳を与える多数の女性を選んだ。あるグループの女性には、(125mgのDHA、8.6mgのARAおよび40mgのGLAを毎日摂取させるために)1日当たり2個のエファナタル(EFANATALTM)カプセルを与えた。比較のために、第2のグループの女性には、カプセル1個当たり150mgのARAを含有する同様に調製したカプセル(ゼラチン/グリセリン被膜を有する)を与えた(1日当たり2カプセルずつ、300mgのARAを毎日摂取させた)。この第2のグループでは、カプセル1個当たりDHAを500mg含有する第3のカプセルも1日当たり1個ずつ服用させた。
【0065】
子供を出産した後、授乳している両方のグループの女性のARAレベルを比較した。母親の母乳中におけるARAレベルも比較した。
【0066】
第1のエファナタル(EFANATALTM)グループでは、エファナタル(EFANATALTM)の消費を伴う試験を開始してからわずか2週間後に、血中ARAレベルの減少は著しいが、母乳中におけるARAレベルの減少は少ないことが判明した。対照的に、1日当たりARAのカプセルを2個ずつとDHAのカプセルを1個ずつ服用している女性は、血中ARAレベルが上昇し、母乳中におけるARAレベルも約0.7%まで上昇していることが判明した。
【0067】
実施例11:ARAおよびDHAの補給によるマウス妊娠期間の脂肪酸欠乏の改善
ヒトおよび非ヒト哺乳動物の妊娠期間の主要な問題は、子宮内での成長の遅れの発生である。この状態は出産後の乳幼児に対する有意な健康リスクに関連しており、かかる健康リスクは成人まで存続するかもしれない。この状態は明らかに健康な女性の妊娠期間中でさえ発展することができ、予測することが困難である。一般的には、それは胎盤の交換機能が劣っていることにより、例えば、胎盤が小さすぎるか、あるいは悪い生理学的状態にあることから起こると考えられている。
【0068】
この非予測性は、この状態に対する信頼できる動物モデルの発達を妨害してきた。原則として、臍帯静脈の血流を減少させることにより、例えば、その太さを鉗子で制限することにより、悪い胎盤機能を刺激することはできた。この方法の問題は、妊娠している動物の手術が必要であり、胎児および母親の両方に悪影響を与え得ること、および、この方法で血流を均一に減少させるのが困難なことである。それゆえ、異なるモデルが開発されてきた。悪い胎盤機能は、胎児への必須脂肪酸(EFA)の供給減少として解釈される。「自然な」状態では、これは、健康な母親の血液中において、血流が減少するが、それ以外の生理学的濃度は正常である場合に起こる。本実施例では、母親の血液中における必須脂肪酸の濃度を減少させるが、胎盤を通る血流は正常に保つことにより、この状態を刺激した。この目的のために、妊娠しているマウスの脂肪酸欠乏の初期段階を誘発した。この段階では、欠乏は生化学的パラメーターで表されるが、機能的欠陥は明らかではない。かくして、妊娠が正常に進行しながら、胎児への必須脂肪酸の供給を制限することが保証された。
【0069】
この試験では、8〜10週齢の雌マウス40匹にマウス用の普通の食餌を1週間与えた。引き続いて、マウスを8つの実験グループに分割した:RD1〜4およびEFAD1〜4。RDグループには、6.5%の脂肪を含有する普通の食餌を与え続けた。EFADグループには、必須脂肪酸を欠いた食餌を与えた。番号1〜4は、表1に示すように、様々な脂質の補給を表す。以前の実施例に記載したように、ARAはDSM(デルフト(Delft))から、DHAはプロノヴァ(Pronova)から入手した。
【0070】
【表1】

【0071】
RD(普通の食餌)およびEFAD(必須脂肪酸欠乏)食餌ならびに油サプリメントの脂肪酸組成を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
2つの付加的な対照グループを含めた。一方のグループ(RD0)には、脂質サプリメントを与えなかった。第2のグループには、RD0と同じ食餌を与えたが、妊娠していない(NP)外集団として役立てた。これら動物は、無制限に食餌に近づけるようにした。
【0074】
実験グループは、下記に示す時間予定表に従って処理した。
【0075】
【表3】

【0076】
フォリゴナン(FolligonanTM)およびコーラロン(ChorulonTM)(オルガノン(Organon)(オランダ)から入手可能)でホルモン処理することにより、雌の排卵過剰を誘発した。この方法は、雄に短時間曝露することと組み合わせて、妊娠の妥当な確率を与えたが、保証はない。妊娠しているマウスおよびその胎児の両方の様々な組織または切片の脂肪酸組成をガスクロマトグラフィーで測定した。様々な組織の画分、均質化および抽出は、当該分野で公知の方法で行った。
【0077】
平均して、これらの動物は、様々なRDおよびEFADグループの間で有意な差はなく、1日当たり3.9gの食餌を消費した。PUFAの食餌用量を表4に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
まず、EFADが雌マウスの血液中における生化学的に関連した必須脂肪酸の欠乏を実際に誘発するかどうかを確認した。RD0およびNP(データを示していない)と比較すると分かるように、同じ食餌グループの妊娠しているマウスと妊娠していないマウスとの間には、様々な脂肪酸の血中レベルに少しの差しかなかった。それゆえ、妊娠している動物と妊娠していない動物との間に有意な差が存在する場合を除いて、これら2つのグループを比較して統計学的な比較能力を増大させた。それらの場合、妊娠している個体の値を用いた。結果を表5に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
EFADは、アラキドン酸を除いて、必須脂肪酸のレベルが著しく低下した。しかし、アラキドン酸のレベルが維持されているにもかかわらず、(n-6)必須脂肪酸の欠乏は著しかった。このことは、EFA充足指数、すなわちアラキドン酸(20:4 n-6)のレベルとその非必須類似体であるミード(mead)酸(20:3 n-9)との間の比率から明らかに分かる。この後者の脂肪酸は、必須脂肪酸が正常な生合成の基質として不十分である場合にだけ蓄積する。この場合、非必須脂肪酸であるオレイン酸(18:1 n-9)がその代わりに長鎖化され、不飽和化されて、生理学的なPUFAのn-9類似体が形成される。このEFA充足指数がEFAD供給マウスにおいて劇的に低下していることは、表5から明らかである。
【0082】
別の指数は、n-3およびn-6必須脂肪酸の正確なバランスを示している。このEFAバランス指数は、DHA(22:6 n-3)とアラキドン酸(22:4 n-6)との比率である。この指数もEFADグループにおいて強く減少した。
【0083】
従って、これらのデータは、EFAD食餌が意図されたように明確な生化学的EFA欠乏を実際に誘発したことを示している。
【0084】
次いで、食餌へのアラキドン酸および/またはDHAの添加が雌マウスの赤血球におけるこの欠乏を緩和をもたらすかどうかを確認した。まず、脂肪酸充足(RD)マウスの対照データを表6に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
ARAまたはDHAのいずれかのサプリメントの添加が他のPUFAのレベルを低下させることが判明した。対照的に、複合サプリメントは、脂肪酸充足マウスにおいても、PUFA状態の強化を可能にした。用いたサプリメントは、ARA状態をわずかに低下させ、EFAバランス指数を上昇させた。これは選択された比率、すなわちDHA:ARA=約2:1によるものであり得る。驚くべきことに、これらのマウスが明らかに脂肪酸欠乏でなくても、EFA充足指数もサプリメントにより強化された。
【0087】
次いで、PUFA補給がEFAD供給動物の血液細胞中における必須脂肪酸状態を向上させるかどうかを調べた。
【0088】
【表7】

【0089】
表7は、EFADマウスがPUFAサプリメントに対して、特にそれらのDHA状態において、極めて強く応答したことを示している。ARA補給がDHA状態を低下させる徴候は存在しないが、逆は明らかに真である:DHAサプリメントの添加はARA状態を明らかに低下させた。また、PUFAの添加が特異的にPUFAレベルを回復させることは明らかであるが、C18脂肪酸のレベルはそれほど影響を受けない。興味深いことに、複合補給はEFA充足指数を完全に回復させた唯一のものであった。
【0090】
最後に、母親の血液中におけるPUFA状態の強化が胎児の状態を向上させるかどうかを調べた。この目的のために、胎児の頭部を最も関連のある部分として選択した:脳(および他の神経組織)の成長はPUFAの供給に依存する定量的に最も重要な過程である。
【0091】
RD供給した母親の胎児に関するデータを表8に示す。
【0092】
【表8】

【0093】
これらのデータは、サプリメントがRD供給したマウスの胎児の頭部におけるPUFAの濃度を適度に変化させたことを示している。驚くべきことに、複合サプリメントの場合には、単独サプリメントとは逆に、EFA充足指数が著しく向上した。加えて、両方のDHA含有サプリメントは、EFAバランス指数を有意に上昇させた。
【0094】
【表9】

【0095】
胎児の脂肪酸欠乏は、母親の脂肪酸欠乏よりさらに重篤であった。PUFAサプリメントは、EFA充足指数を著しく向上させ、ほとんどRDレベルに回復させた。これは、EFAバランス指数がRD供給した母親の胎児よりさらに高いことから、おそらくサプリメント中におけるアラキドン酸の用量が比較的低いことによるものであった。このことは、PUFAが胎児の頭部に十分に導入されることを意味する。実際、サプリメントにアラキドン酸を含めると、その濃度が上昇するが、RDレベルまで上昇しない。このことは、補給をバランスさせる必要性を強調している。それゆえ、適当なバランスを実験的に評価することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用量150mg〜1g/日のアラキドン酸(ARA)を送達するのに適合した量でARAを含有する食用処方物。
【請求項2】
250〜500mg/日のARAを送達するのに適合した請求項1記載の処方物。
【請求項3】
さらにドコサヘキサエン酸(DHA)を送達するのに適合した請求項1または2記載の処方物。
【請求項4】
用量400〜600mg/日のDHAを送達するのに適合した前記請求項のいずれかに記載の処方物。
【請求項5】
ARA:DHAの比率が1:5〜5:1、例えば、1:1〜1:2である前記請求項のいずれかに記載の処方物。
【請求項6】
1日当たり1回摂取されることを意図した150〜700mgのARAを含有する食用処方物。
【請求項7】
1日当たり2回摂取されることを意図した75〜350mgのARAを含有する食用処方物。
【請求項8】
食品または栄養サプリメントである前記請求項のいずれかに記載の食用処方物。
【請求項9】
医薬組成物である前記請求項のいずれかに記載の食用処方物。
【請求項10】
ARA:DHA=1:1〜1:2の比率でARAおよびDHAを含有する医薬組成物。
【請求項11】
0.1〜5%のARAを含有する食料品。
【請求項12】
下記の女性用の食餌または栄養サプリメントとしてのARAの使用:
a.妊娠している年齢15〜20歳の女性;
b.妊娠している年齢40〜60歳、例えば、年齢50〜55歳の女性;
c.4番目、5番目またはそれ以降の子供を妊娠している女性;
d.双子、三つ子または四つ子を妊娠している女性;
e.妊娠している妊娠1〜3ヶ月の女性;
f.体外人工授精(IVF)の結果として妊娠している女性、またはIVF治療を受けているが、まだ妊娠していない女性;
g.妊娠第20週またはそれ以降の妊娠している女性;
h.妊娠しているにもかかわらず、栄養不良であるか、乏しい栄養または少しの栄養しか摂取していないか、栄養不良または吸収不良に罹患しているか、あるいは1種またはそれ以上の必須脂肪酸が欠乏している女性;
i.妊娠しようとしている女性;
j.妊娠しており、胎児の健全な子宮内成長を促進しようとする女性;あるいは、
k.授乳しており、その母乳中におけるARAまたはEPAのレベルを上昇させようとする女性。
【請求項13】
ARAが150〜700mg/日、例えば、250〜500mg/日で摂取される請求項12記載の使用。
【請求項14】
50歳以上、好ましくは65歳以上のヒト用の食餌または栄養サプリメントとしてのARAの使用。
【請求項15】
妊娠または授乳している非ヒト哺乳動物用の食餌または栄養サプリメントとしてのARAの使用。
【請求項16】
n-3またはn-6 PUFAの異常または低い血中レベルに関連する疾患または状態の予防、防止、改善または治療において補助を行う医薬品を製造するためのARAの使用。
【請求項17】
前記疾患または状態が、神経疾患、例えば、精神分裂病、嚢胞性繊維症、突発性イムノグロブリンA腎症、多発性硬化症、色素性網膜炎、アッシャー症候群、セリアック病、黄斑変性、パーキンソン病、骨粗鬆症、アルツハイマー病またはフェニルケトン尿症である請求項16記載の使用。
【請求項18】
ヒトまたは非ヒトの雌哺乳動物における授乳および/または出産効率もしくは成功、あるいは受胎能力を促進するためのARAの使用。
【請求項19】
血中ARAレベルを上昇させる比率のARA:DHAでの食用処方物中におけるARAおよびDHAの使用。
【請求項20】
ARA:DHAの比率が1:5〜5:1である請求項19記載の使用。
【請求項21】
ARA:DHAの比率が1:1〜1:2である請求項20記載の使用。
【請求項22】
糖尿病患者、アルコール中毒者、薬物常用者、喫煙者、あるいは、免疫無防備状態であるか、または免疫レベルが異常な人に対する請求項19〜21のいずれかに記載の使用。

【公開番号】特開2011−98966(P2011−98966A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−268487(P2010−268487)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【分割の表示】特願2000−575500(P2000−575500)の分割
【原出願日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】