RFIDタグ及びRFIDタグシステム
【課題】無効としたRFID機能を正当な権限者のみにより復活することができるRFIDタグ及びRFIDタグシステムの提供。
【解決手段】不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能又は1回だけ書き込み可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段と、RFIDタグのID識別コード要求を指示する誰何コマンドを受信したとき、該記憶手段を参照して動作制御フラグがONであるか否かを確認し、該フラグがONである場合には、自IDを送信し、該フラグがOFFである場合には該フラグがOFFである旨を送信するアンテナとの交信制御を行うタグコントローラとを備え、外部から動作オン又は動作オフコマンドと暗証コードとを受信した暗証コードと記憶手段に記憶した暗証コードとが一致したとき、前記記憶手段に記憶した動作制御フラグのオン又はオフを書き換えるもの。
【解決手段】不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能又は1回だけ書き込み可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段と、RFIDタグのID識別コード要求を指示する誰何コマンドを受信したとき、該記憶手段を参照して動作制御フラグがONであるか否かを確認し、該フラグがONである場合には、自IDを送信し、該フラグがOFFである場合には該フラグがOFFである旨を送信するアンテナとの交信制御を行うタグコントローラとを備え、外部から動作オン又は動作オフコマンドと暗証コードとを受信した暗証コードと記憶手段に記憶した暗証コードとが一致したとき、前記記憶手段に記憶した動作制御フラグのオン又はオフを書き換えるもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意に動作を制御することができるRFIDタグ及び該RFIDタグを用いたRFIDタグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にRFID(Radio Frequency Identification System)タグとは、電磁波により非接触で物体を識別するために用いられるものであって、自身の識別コードなどの情報が記録されており、電波を使って管理システムと情報を送受信する能力をもつ。このRFIDタグは、従来のバーコードに代わる商品識別・管理技術として研究が進められてきており、例えば商品に微小なRFIDタグを貼り付け又は内蔵させることにより、商品の流通経路をトレースするトレース機能が構想されている。
【0003】
このRFIDタグの用途のひとつとして、店舗等におけるリアルタイムの在庫監視がある。従来技術による在庫監視は、一般には送受信距離の長い(数百ミリメートル以上)タイプのタグを用い、保管棚または保管スペース全体を対象に交信を行い、該当エリアに存在するRFIDタグが貼り付けられた管理対象商品の存在を一括して確認する方式が提案されている。
【0004】
このRFIDタグは、消費者向けの商品に添付された場合、トレース機能はプライバシー侵害の可能性が有るという問題があり、このために個人情報を守る観点から、エンドユーザに商品が渡った時点でRFIDの動作を停止させる機能が実用化されている。
【特許文献1】実開平7−24166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記プライバシーの保護を目的として前記RFIDの動作を停止させるために二度と機能しなくなる無効化スイッチを組み込んだ従来技術は、無効化後のトレースが不可能となり、RFIDタグのライフサイクルに渡るトレースが可能という長所を生かせず、例えば、無効化後に生じた商品の不具合を製造元が解析しようとしても、RFID機能が無効化されているために、ID情報すら得ることができなくなると言う不具合があった。
【0006】
本発明の目的は、前述の従来技術による不具合を除去することであり、安価なRFIDタグを用い、一旦無効としたRFID機能を正当な権限者のみにより復活することができるRFIDタグシステムに有効なRFIDタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明は、所定の信号送受信距離範囲内で交信が可能なRFIDタグであって、不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能又は1回だけ書き込み可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段と、RFIDタグのID識別コード要求を指示する誰何(すいか)コマンドを受信したとき、該記憶手段を参照して動作制御フラグがONであるか否かを確認し、該フラグがONである場合には、自IDを送信し、該フラグがOFFである場合には該フラグがOFFである旨を送信するアンテナとの交信制御を行うタグコントローラとを備え、
該タグコントローラが、外部から動作オン又は動作オフコマンドと暗証コードとを受信し、前記記憶手段を参照して受信した暗証コードと記憶手段に記憶した暗証コードとが一致したとき、前記記憶手段に記憶した動作制御フラグのオン又はオフを書き換えることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記RFIDタグにおいて、前記記憶手段に記憶した暗証コードを複数とし、該複数の暗証コードの桁数が異なることを第2の特徴とし、このRFIDタグにおいて、前記タグコントローラが、動作の状態確認を行うコマンドを受信したとき、前記記憶手段の動作制御フラグを参照し、動作オン又はオフの状態であることを外部に送信することを第3の特徴とする。
【0009】
更に本発明は、所定の信号送受信距離範囲内で交信が可能且つ不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段を含むRFIDタグと、該RFIDタグを制御する制御システムとを備えるRFIDタグシステムであって、
複数のRFIDタグの識別コードに対応した暗証コードを格納するデータベースを備え、前記制御システムが、前記RFIDタグの識別コードをキーとしてデータベースを参照し、前記識別コードに対応した暗証コードを引き当て、前記識別コードと暗証コードを用いてRFIDタグの動作制御フラグを書き換えるコマンドを送信することを第4の特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるコマンドを受信し、前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するかを判定し、一致したとき前記動作制御フラグをオン状態に書き換えることを第5の特徴とし、このRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるオンコマンド及び暗証コードとを受信したとき、予め指定した時間が経過してから前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するか否かを判定するオンコマンド処理を実行することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるRFIDタグ及びRFIDタグシステムは、該RFIDタグのID及び暗証コードを用い、既に無効としたRFID機能を正当な権限者のみにより復活することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるRFIDタグ及びRFIDタグシステムの一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
<RFIDタグの説明>
【0013】
本発明の一実施形態によるRFIDタグは、一般の外部のアンテナエレメントからの電波等に応じて自己の識別IDを発信するものであり、特に本発明においては、前記機能をオン・オフする機能を付加するものであって、この実施形態を図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係わるRFIDタグの内部構成図、図2は前記RFIDタグの制御システムを説明する構成図、図3は本システムで使用するデータ群の構成を示す図、図4は本実施形態に係わる制御システムが、RFIDタグの動作をオフにするシーケンスを示す図、図5は本RFIDタグがリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図、図6は本RFIDタグが状態を質問するコマンドに対して回答するシーケンス図、図7は本発明に係わるRFIDタグがリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図、図8は本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図、図9は本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図、図10は個別IDコード、個別暗証コード、カテゴリIDコード、カテゴリ暗証コードの関係を示す概念図、図11は個別IDコードの内部をメーカカテゴリ識別IDコード、製品識別IDコードとした例を説明した図、図12はメーカカテゴリ暗証コードの内部を製品暗証コード、個別暗証コードとした例を説明した図、図13は、上位の暗証コードを用いたオンコマンド処理のシーケンスを説明する図、図14はRFIDタグの動作状況を確認する簡易手段が動作するシーケンスを説明する図、図15はRFIDタグの動作状況を確認する簡易手段の実現例を説明する図である。
<RFIDタグ構成の説明>
【0014】
本実施形態に係わるRFIDタグの制御方式およびそのシステムの実施例を説明する。図1に示すRFIDタグ211は、タグ識別コード212と動作制御フラグ213と暗証コード214とタグコントローラ215とを内蔵し、タグコントローラ215の制御下で動作する様に構成され、図2に示す如く、リーダ/ライタ222を介して上位コンピュータ223と接続して各種データ交信を行うものである。尚、前記上位コンピュータ223は、RFIDタグの利用形態によってはPOS等の店舗端末であっても良い。
【0015】
この上位コンピュータ223は、図3に示す如く、個々のRFIDタグに付与されている複数の識別コード群231と、その個別の識別コードとリンクしたRFIDタグを添付された管理対象物の個別情報群232と、前記個別の識別コードとリンクした個別の暗証コード群333とにアクセスすることができる。これら情報は、上位コンピュータ223内に保管されていてもいいし、またはネットワークを経由してアクセスできるのであってもいい。
<RFIDタグのオフ動作の説明>
【0016】
この様に構成された本システムは、上位コンピュータ223からの指示によってRFIDタグの動作をオン・オフするものであり、まず制御システムが、RFIDタグの動作をオフ(OFF)にするシーケンスを図4に示す。本シーケンスは、図に示す如く、RFIDタグ211がリーダ/ライタ222を経由し、オフ設定の対象とするRFIDタグを特定するための識別コード(またはIDコード)とオフ機能をRFIDタグが受け入れるための暗証コードが付与されたオフコマンドを受信(ステップST241)すると、タグコントローラ215が前記オフコマンドにより指示されたIDが自己のIDか否かの判定を行う(ステップST242)。
【0017】
このステップST242において受信したIDコードが自己宛のオフコマンドであった場合、タグコントローラ215は、暗証コードを比較して暗証コードが一致するか否かの判定(ステップST243)を行い、一致した場合、前記動作制御フラグ213をオフにセットする(ステップST244)。
前記動作フラグ213は、単一の、書き換え可能なメモリであっても、または複数の一回だけ書き込み可能なメモリであってもよい。
複数の一回だけ書き込み可能なメモリの場合の動作は以下のように行う。RFIDタグに第1から第4までのメモリがある場合に、一つも書き込まれていない場合は状態オン、第1のメモリに書き込まれていた場合は状態オフ、第2のメモリに書き込まれていた場合は状態オン……と定義する。これにより、書き換え可能なメモリではなくても、状態オンと状態オフを作り出せる。
【0018】
このように本実施形態におけるオフコマンドの実行のためには、IDコードと暗証コードの両方が一致する必要があり、無数に存在するIDコード毎に異なる暗証コードが設定され、データとしてIDコードとリンクされた暗証コードが図示しないデータベース等に保管される。これらの暗証コード及びIDコードは、管理対象物の納品と共に物流の上流である問屋やメーカーから送られることや、RFIDタグの製造元のRFIDタグメーカが管理する情報センタに保管されることが考えられる。後者の場合には、オフ機能の実行ごとにネットワーク経由で暗証コードを取り寄せる。
【0019】
本実施形態におけるRFIDタグのオフ動作は、例えば製品である管理対象物が正規に購入されたことを、レジに配されたPOSシステムが検知したときが好適である。
<RFIDタグ確認の説明>
【0020】
次いで本実施形態によるRFIDタグのリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンスを図5を参照して説明する。本実施形態によるRFIDタグ211は、まず、リーダ/ライタ222からのIDコードを問いかけるコマンドである誰何(すいか)コマンドを受信(ステップST251)したとき、タグコントローラ215が動作制御フラグ213を参照し、該動作制御フラグ213がオンであるか否かの判定(ステップST252)を行い、オンのとき、自分のIDコードを送出(ステップST253)し、処理を終了する(ステップST254)。
【0021】
次いでリーダ/ライタ222は、図5に示したシーケンスにおいて返信が無い場合に、RFIDタグ(またはシステム)が故障しているのか、RFIDタグがそもそも貼付されていないのか、それとも動作制御フラグがオフになっているのかを区別できないため、図6に示すように、状態を質問する状態コマンドを用意し、リーダ/ライタ222から前記状態コマンドを受信(ステップST261)したとき、タグコントローラ215が動作制御フラグ213を参照して該フラグがオンであるか否かを判定(ステップST262)し、動作制御フラグがオンのときに"ON"状態である旨を返信し(ステップST263)、動作制御フラグがオフの場合"OFF"状態である旨を返信(ステップST264)し、処理を終了する(ステップST265)。
【0022】
即ちシステムは、図5で示したIDコードを問いかけるコマンドである誰何コマンドによってシステムに応答し、この応答がないとき、状態コマンドによってRFIDタグ(またはシステム)が故障/RFIDタグがそもそも貼付されていない/動作制御フラグがオフになっているのかを区別するため、状態コマンドに応じて動作制御フラグ213がオンかオフかの問い合わせを行う様に動作する。
【0023】
尚、前記実施形態においては、図5に示した誰何コマンドと状態コマンドの両者を用いる例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、図7に示す如く、誰何コマンドを受信(ステップST271)したときに動作制御フラグ213がオンか否かを判定(ステップST272)し、オンのときに自己IDを送信(ステップST273)し、オフのときに"OFF"状態の返信(ステップST274)を行う様に構成しても良い。このシーケンスによれば、応答がないときはRFIDタグ等が故障又は貼付されていないと判定することができる。
【0024】
また本実施形態による誰何コマンドを用いた場合の動作制御フラグのオフ動作は、IDコードと暗証コードの両方の送出が必要なことから、オフコマンドと誰何コマンドがペアで実行され、図8にその上位コンピュータ23側のシーケンスで示す。
【0025】
このシーケンスは、上位が誰何コマンドを送出(ステップST282)し、対象とするRFIDタグのIDコードを受信(ステップST283)すると、次にそのIDコードに該当する暗証コードを検索(ステップST284)して暗証コードを入手し、その暗証コードとIDコードを送信(ステップST285)することにより、実行される。
<オン動作の説明>
【0026】
さて、例えば一旦販売された商品が返品され、その返品商品の履歴を記録する必要が生じた場合/不具合が出た商品の履歴を調査する場合/盗難物の履歴を調査する等のやむを得ない事情で動作制御フラグ213を再びオン状態に戻す必要があり、この動作制御フラグをオンにする動作を次に説明する。
【0027】
この動作は、まず図9に示す如く、RFIDタグ211のタグコントローラ215がリーダ/ライタ222を介してオンコマンドを受信(ステップST291)したとき、該オンコマンドに含まれるIDコードが自己のIDか否かを判定(ステップST292)し、自己のIDと一致したとき暗証コードが自己と一致するか否かの判定(ステップST293)を行い、一致したときに動作制御フラグ213をオンに設定(ステップST294)し、前記ステップST293又は294においてIDや暗証コードと一致しないときには処理を終了する様に動作する。
<IDコード認識動作>
【0028】
前記動作制御フラグをオンとする場合には、オフ状態の対象RFIDタグが誰何コマンドを実行しないために、IDコードを知る方法が無いという問題が発生する。本発明では、この問題に対して、階層構造のIDコードと暗証コードを設けることにより対処する。
【0029】
これを順を追って説明すると、まず、小売店の店頭等で、取り扱っている物流量が限られている状況を想定した場合、オフコマンドを設定したRFIDタグの個数も限られているので、小売店では、過去にオフコマンドを発行したIDコードとその暗証コードをしらみつぶしに送出する。または、対象の商品をキーに、過去にオフコマンドを発行したIDコードとその暗証コードから範囲を絞って送出する。これにより、時間はかかるものの、実用的な時間の範囲で動作制御フラグをオンにすることが出来る。
【0030】
また、オフコマンドを実行した店舗が不明等の状況で、前記過去にオフコマンドを発行したIDコードとその暗証コードが入手できないような状況を想定した場合、全くの手がかりなしにデータをしらみつぶしに送っても、現実的な時間の範囲で動作制御フラグをオンにすることが出来ない。
【0031】
このため本実施形態においては、管理対象のあるカテゴリ(例えば製品の種別またはメーカ自体)に対して一括に作用させるように構成した上位の暗証コード及びIDコードの組を用意し、この上位の暗証コード及びIDコードの組を使用することによって、個別の識別IDが不明であっても、目的の管理対象物の動作制御フラグをオンにすることが出来る。
【0032】
前記上位の暗証コード及びIDコードは、管理対象物の製造元またはRFIDタグの製造元だけが知る情報として厳重に保管され、セキュリティを向上させるために、暗証番号コードの桁数を、個別IDコード用に比べて多くしておくことが望ましい。
【0033】
例えば、図10に示すごとく、個別IDコード315に比べて桁数が短くなるカテゴリIDコード(例えば製品識別IDコード313やメーカカテゴリ識別IDコード311)に合わせて、カテゴリ暗証コード(例えば製品暗証コード314やメーカカテゴリ暗証コード312)の桁数を多くすることが望ましい。
【0034】
更に本実施形態においては、RFIDタグ上での識別コードや暗証コードが占めるメモリ領域を節約するため、一部を共用し、例えば図11に示すごとく、個別IDコード全体101の内の上位部分をメーカカテゴリ識別ID、さらに下位まで延長した部分を製品識別ID、その間の部分を製品識別IDとすることが望ましい。同様に暗証コードについても、図12に示すごとく、メーカカテゴリ暗証コード全体431の内の上位部分を製品暗証コードとし、さらにその上位を個別暗証コードとし、この間の部分を製品暗証コードとしても良い。
<第三者の不正防止>
【0035】
また前記実施形態によれば不正な第三者が、しらみつぶしでの暗証コード解読を行うことが考えられる。このため本実施形態においては、図13に示す如く、RFIDタグ211のタグコントローラ215が、前記上位の暗証コードを用いたオンコマンド処理については、オンコマンドの処理時間を意図的に長くすることにより、しらみつぶしのコード解読が現実的な時間では不可能にしておくことが望ましい。このシーケンスは、図13に示す如く、RFIDタグのタグコントローラ215が、上位暗証コードを用いたオンコマンドを受信する(ステップST421)と、上位暗証コードに対応した経過時間のループを回り(ステップST422)、その後にオンコマンド処理(ステップST423)を行うことにより達成される。
<動作制御フラグの設定の確認>
【0036】
また、実際のシステムおいては、動作制御フラグがオフであることを確認する簡便な手段を用意することが、本システムの信頼性を向上させるために有効である。このような確認手段は、図14に示すシーケンスで動作し、起動するとまず、誰何コマンド等のRFIDが動作開始するコマンドを送信(ステップST441)し、次に該ステップST441のコマンドに対応して受信があるかを判定(ステップST442)し、この判定において、動作中を示す受信があれば、チェックすべきRFIDタグは動作中であるとして「動作中」を示す表示(ステップ143)し、前記ステップST441で正常に受信することができず、且つ動作中をあらわす受信が一定時間待っても受信できない場合(ステップST444)、RFIDタグは非動作中として「タグ動作がオフ」であることを表す表示を行う。
【0037】
この確認装置451は、例えば図15に示す如く、携帯性を良くするためにカード状に構成し、電源となる太陽電池セル452と、RFIDタグと交信するためのアンテナ453と、RFIDタグが動作中であるか否かの確認を開始するための確認開始スイッチ454と、確認結果を表示する表示器155及び156と、図示しない制御回路とを備え、該制御回路が前記図13に示したシーケンスに従って動作し、その結果に応じて表示器455又は456を点灯させる様に構成されている。
【0038】
これら表示器455及び456は、RFIDタグの動作確認を行うものであった場合、動作がOK、すなわち動作オン状態ならば「OK」または正常を表す表示が点灯し、動作がNG、すなわち動作オフ状態ならば「NG」または異常を表す表示が点灯する。一方、確認装置451が、RFIDタグの停止によるプライバシー確保の確認を行うものであった場合、動作オン状態ならばプライバシー確保がなされていないことを示す「NG」または異常を表す表示が点灯し、動作オフ状態ならばプライバシー確保がなされていることを示す「OK」または正常を表す表示が点灯する。尚、図35に示した確認装置451の形状は、他の形状でもあっても良い。
【0039】
この様に本実施形態によるRFIDタグは、上位装置からの指令によって、動作制御フラグのオン・オフを行うことができ、これによって例えばタグを添付した商品が一般顧客に販売された際には機能をオフとし、その返品商品の履歴を記録する必要が生じた場合/不具合が出た商品の履歴を調査する場合/盗難物の履歴を調査する等のやむを得ない事情で動作制御フラグ213を再びオン状態に戻す必要が生じた場合に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によるRFIDタグは、個人消費者向けの製品の、プライバシー保護に配慮した流通管理に用いる。個人消費者向けの製品が、小売店から個人消費者に渡る時点で、小売店の店頭に置いてRFIDタグの動作を停止させ、個人のプライバシー保護を確実に行うと同時に、RFIDタグの再動作を可能とすることによって、製品事故や盗難時の調査に有効なデータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係わるRFIDタグの内部構成図。
【図2】前記RFIDタグの制御システムを説明する構成図。
【図3】本システムで使用するデータ群の構成を示す図。
【図4】制御システムがRFIDタグの動作をオフにするシーケンスを示す図。
【図5】リーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図。
【図6】本RFIDタグが状態コマンドに対して回答するシーケンス図。
【図7】RFIDタグがリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図。
【図8】本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図。
【図9】本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図。
【図10】個別ID/個別暗証/カテゴリID/カテゴリ暗証コードの関係を示す概念図。
【図11】個別IDコードの内部の例を説明する図。
【図12】メーカカテゴリ暗証コードの内部の例を説明する図。
【図13】上位の暗証コードを用いたオンコマンド処理のシーケンス図。
【図14】RFIDタグの動作状況を確認する動作シーケンスを説明する図。
【図15】RFIDタグの動作状況を確認する簡易手段の実現例を説明する図。
【符号の説明】
【0042】
212:タグ識別コード、213:動作制御フラグ、214:暗証コード、215:タグコントローラ、222:リーダ/ライタユニット、312:メーカカテゴリ暗証コード、314:製品暗証コード、431:メーカカテゴリ暗証コード全体、451:確認装置、452:太陽電池セル、453:アンテナ、454:確認開始スイッチ、455:表示器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意に動作を制御することができるRFIDタグ及び該RFIDタグを用いたRFIDタグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にRFID(Radio Frequency Identification System)タグとは、電磁波により非接触で物体を識別するために用いられるものであって、自身の識別コードなどの情報が記録されており、電波を使って管理システムと情報を送受信する能力をもつ。このRFIDタグは、従来のバーコードに代わる商品識別・管理技術として研究が進められてきており、例えば商品に微小なRFIDタグを貼り付け又は内蔵させることにより、商品の流通経路をトレースするトレース機能が構想されている。
【0003】
このRFIDタグの用途のひとつとして、店舗等におけるリアルタイムの在庫監視がある。従来技術による在庫監視は、一般には送受信距離の長い(数百ミリメートル以上)タイプのタグを用い、保管棚または保管スペース全体を対象に交信を行い、該当エリアに存在するRFIDタグが貼り付けられた管理対象商品の存在を一括して確認する方式が提案されている。
【0004】
このRFIDタグは、消費者向けの商品に添付された場合、トレース機能はプライバシー侵害の可能性が有るという問題があり、このために個人情報を守る観点から、エンドユーザに商品が渡った時点でRFIDの動作を停止させる機能が実用化されている。
【特許文献1】実開平7−24166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記プライバシーの保護を目的として前記RFIDの動作を停止させるために二度と機能しなくなる無効化スイッチを組み込んだ従来技術は、無効化後のトレースが不可能となり、RFIDタグのライフサイクルに渡るトレースが可能という長所を生かせず、例えば、無効化後に生じた商品の不具合を製造元が解析しようとしても、RFID機能が無効化されているために、ID情報すら得ることができなくなると言う不具合があった。
【0006】
本発明の目的は、前述の従来技術による不具合を除去することであり、安価なRFIDタグを用い、一旦無効としたRFID機能を正当な権限者のみにより復活することができるRFIDタグシステムに有効なRFIDタグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明は、所定の信号送受信距離範囲内で交信が可能なRFIDタグであって、不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能又は1回だけ書き込み可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段と、RFIDタグのID識別コード要求を指示する誰何(すいか)コマンドを受信したとき、該記憶手段を参照して動作制御フラグがONであるか否かを確認し、該フラグがONである場合には、自IDを送信し、該フラグがOFFである場合には該フラグがOFFである旨を送信するアンテナとの交信制御を行うタグコントローラとを備え、
該タグコントローラが、外部から動作オン又は動作オフコマンドと暗証コードとを受信し、前記記憶手段を参照して受信した暗証コードと記憶手段に記憶した暗証コードとが一致したとき、前記記憶手段に記憶した動作制御フラグのオン又はオフを書き換えることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記RFIDタグにおいて、前記記憶手段に記憶した暗証コードを複数とし、該複数の暗証コードの桁数が異なることを第2の特徴とし、このRFIDタグにおいて、前記タグコントローラが、動作の状態確認を行うコマンドを受信したとき、前記記憶手段の動作制御フラグを参照し、動作オン又はオフの状態であることを外部に送信することを第3の特徴とする。
【0009】
更に本発明は、所定の信号送受信距離範囲内で交信が可能且つ不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段を含むRFIDタグと、該RFIDタグを制御する制御システムとを備えるRFIDタグシステムであって、
複数のRFIDタグの識別コードに対応した暗証コードを格納するデータベースを備え、前記制御システムが、前記RFIDタグの識別コードをキーとしてデータベースを参照し、前記識別コードに対応した暗証コードを引き当て、前記識別コードと暗証コードを用いてRFIDタグの動作制御フラグを書き換えるコマンドを送信することを第4の特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記特徴のRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるコマンドを受信し、前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するかを判定し、一致したとき前記動作制御フラグをオン状態に書き換えることを第5の特徴とし、このRFIDタグシステムにおいて、前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるオンコマンド及び暗証コードとを受信したとき、予め指定した時間が経過してから前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するか否かを判定するオンコマンド処理を実行することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるRFIDタグ及びRFIDタグシステムは、該RFIDタグのID及び暗証コードを用い、既に無効としたRFID機能を正当な権限者のみにより復活することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明によるRFIDタグ及びRFIDタグシステムの一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
<RFIDタグの説明>
【0013】
本発明の一実施形態によるRFIDタグは、一般の外部のアンテナエレメントからの電波等に応じて自己の識別IDを発信するものであり、特に本発明においては、前記機能をオン・オフする機能を付加するものであって、この実施形態を図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係わるRFIDタグの内部構成図、図2は前記RFIDタグの制御システムを説明する構成図、図3は本システムで使用するデータ群の構成を示す図、図4は本実施形態に係わる制御システムが、RFIDタグの動作をオフにするシーケンスを示す図、図5は本RFIDタグがリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図、図6は本RFIDタグが状態を質問するコマンドに対して回答するシーケンス図、図7は本発明に係わるRFIDタグがリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図、図8は本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図、図9は本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図、図10は個別IDコード、個別暗証コード、カテゴリIDコード、カテゴリ暗証コードの関係を示す概念図、図11は個別IDコードの内部をメーカカテゴリ識別IDコード、製品識別IDコードとした例を説明した図、図12はメーカカテゴリ暗証コードの内部を製品暗証コード、個別暗証コードとした例を説明した図、図13は、上位の暗証コードを用いたオンコマンド処理のシーケンスを説明する図、図14はRFIDタグの動作状況を確認する簡易手段が動作するシーケンスを説明する図、図15はRFIDタグの動作状況を確認する簡易手段の実現例を説明する図である。
<RFIDタグ構成の説明>
【0014】
本実施形態に係わるRFIDタグの制御方式およびそのシステムの実施例を説明する。図1に示すRFIDタグ211は、タグ識別コード212と動作制御フラグ213と暗証コード214とタグコントローラ215とを内蔵し、タグコントローラ215の制御下で動作する様に構成され、図2に示す如く、リーダ/ライタ222を介して上位コンピュータ223と接続して各種データ交信を行うものである。尚、前記上位コンピュータ223は、RFIDタグの利用形態によってはPOS等の店舗端末であっても良い。
【0015】
この上位コンピュータ223は、図3に示す如く、個々のRFIDタグに付与されている複数の識別コード群231と、その個別の識別コードとリンクしたRFIDタグを添付された管理対象物の個別情報群232と、前記個別の識別コードとリンクした個別の暗証コード群333とにアクセスすることができる。これら情報は、上位コンピュータ223内に保管されていてもいいし、またはネットワークを経由してアクセスできるのであってもいい。
<RFIDタグのオフ動作の説明>
【0016】
この様に構成された本システムは、上位コンピュータ223からの指示によってRFIDタグの動作をオン・オフするものであり、まず制御システムが、RFIDタグの動作をオフ(OFF)にするシーケンスを図4に示す。本シーケンスは、図に示す如く、RFIDタグ211がリーダ/ライタ222を経由し、オフ設定の対象とするRFIDタグを特定するための識別コード(またはIDコード)とオフ機能をRFIDタグが受け入れるための暗証コードが付与されたオフコマンドを受信(ステップST241)すると、タグコントローラ215が前記オフコマンドにより指示されたIDが自己のIDか否かの判定を行う(ステップST242)。
【0017】
このステップST242において受信したIDコードが自己宛のオフコマンドであった場合、タグコントローラ215は、暗証コードを比較して暗証コードが一致するか否かの判定(ステップST243)を行い、一致した場合、前記動作制御フラグ213をオフにセットする(ステップST244)。
前記動作フラグ213は、単一の、書き換え可能なメモリであっても、または複数の一回だけ書き込み可能なメモリであってもよい。
複数の一回だけ書き込み可能なメモリの場合の動作は以下のように行う。RFIDタグに第1から第4までのメモリがある場合に、一つも書き込まれていない場合は状態オン、第1のメモリに書き込まれていた場合は状態オフ、第2のメモリに書き込まれていた場合は状態オン……と定義する。これにより、書き換え可能なメモリではなくても、状態オンと状態オフを作り出せる。
【0018】
このように本実施形態におけるオフコマンドの実行のためには、IDコードと暗証コードの両方が一致する必要があり、無数に存在するIDコード毎に異なる暗証コードが設定され、データとしてIDコードとリンクされた暗証コードが図示しないデータベース等に保管される。これらの暗証コード及びIDコードは、管理対象物の納品と共に物流の上流である問屋やメーカーから送られることや、RFIDタグの製造元のRFIDタグメーカが管理する情報センタに保管されることが考えられる。後者の場合には、オフ機能の実行ごとにネットワーク経由で暗証コードを取り寄せる。
【0019】
本実施形態におけるRFIDタグのオフ動作は、例えば製品である管理対象物が正規に購入されたことを、レジに配されたPOSシステムが検知したときが好適である。
<RFIDタグ確認の説明>
【0020】
次いで本実施形態によるRFIDタグのリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンスを図5を参照して説明する。本実施形態によるRFIDタグ211は、まず、リーダ/ライタ222からのIDコードを問いかけるコマンドである誰何(すいか)コマンドを受信(ステップST251)したとき、タグコントローラ215が動作制御フラグ213を参照し、該動作制御フラグ213がオンであるか否かの判定(ステップST252)を行い、オンのとき、自分のIDコードを送出(ステップST253)し、処理を終了する(ステップST254)。
【0021】
次いでリーダ/ライタ222は、図5に示したシーケンスにおいて返信が無い場合に、RFIDタグ(またはシステム)が故障しているのか、RFIDタグがそもそも貼付されていないのか、それとも動作制御フラグがオフになっているのかを区別できないため、図6に示すように、状態を質問する状態コマンドを用意し、リーダ/ライタ222から前記状態コマンドを受信(ステップST261)したとき、タグコントローラ215が動作制御フラグ213を参照して該フラグがオンであるか否かを判定(ステップST262)し、動作制御フラグがオンのときに"ON"状態である旨を返信し(ステップST263)、動作制御フラグがオフの場合"OFF"状態である旨を返信(ステップST264)し、処理を終了する(ステップST265)。
【0022】
即ちシステムは、図5で示したIDコードを問いかけるコマンドである誰何コマンドによってシステムに応答し、この応答がないとき、状態コマンドによってRFIDタグ(またはシステム)が故障/RFIDタグがそもそも貼付されていない/動作制御フラグがオフになっているのかを区別するため、状態コマンドに応じて動作制御フラグ213がオンかオフかの問い合わせを行う様に動作する。
【0023】
尚、前記実施形態においては、図5に示した誰何コマンドと状態コマンドの両者を用いる例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、図7に示す如く、誰何コマンドを受信(ステップST271)したときに動作制御フラグ213がオンか否かを判定(ステップST272)し、オンのときに自己IDを送信(ステップST273)し、オフのときに"OFF"状態の返信(ステップST274)を行う様に構成しても良い。このシーケンスによれば、応答がないときはRFIDタグ等が故障又は貼付されていないと判定することができる。
【0024】
また本実施形態による誰何コマンドを用いた場合の動作制御フラグのオフ動作は、IDコードと暗証コードの両方の送出が必要なことから、オフコマンドと誰何コマンドがペアで実行され、図8にその上位コンピュータ23側のシーケンスで示す。
【0025】
このシーケンスは、上位が誰何コマンドを送出(ステップST282)し、対象とするRFIDタグのIDコードを受信(ステップST283)すると、次にそのIDコードに該当する暗証コードを検索(ステップST284)して暗証コードを入手し、その暗証コードとIDコードを送信(ステップST285)することにより、実行される。
<オン動作の説明>
【0026】
さて、例えば一旦販売された商品が返品され、その返品商品の履歴を記録する必要が生じた場合/不具合が出た商品の履歴を調査する場合/盗難物の履歴を調査する等のやむを得ない事情で動作制御フラグ213を再びオン状態に戻す必要があり、この動作制御フラグをオンにする動作を次に説明する。
【0027】
この動作は、まず図9に示す如く、RFIDタグ211のタグコントローラ215がリーダ/ライタ222を介してオンコマンドを受信(ステップST291)したとき、該オンコマンドに含まれるIDコードが自己のIDか否かを判定(ステップST292)し、自己のIDと一致したとき暗証コードが自己と一致するか否かの判定(ステップST293)を行い、一致したときに動作制御フラグ213をオンに設定(ステップST294)し、前記ステップST293又は294においてIDや暗証コードと一致しないときには処理を終了する様に動作する。
<IDコード認識動作>
【0028】
前記動作制御フラグをオンとする場合には、オフ状態の対象RFIDタグが誰何コマンドを実行しないために、IDコードを知る方法が無いという問題が発生する。本発明では、この問題に対して、階層構造のIDコードと暗証コードを設けることにより対処する。
【0029】
これを順を追って説明すると、まず、小売店の店頭等で、取り扱っている物流量が限られている状況を想定した場合、オフコマンドを設定したRFIDタグの個数も限られているので、小売店では、過去にオフコマンドを発行したIDコードとその暗証コードをしらみつぶしに送出する。または、対象の商品をキーに、過去にオフコマンドを発行したIDコードとその暗証コードから範囲を絞って送出する。これにより、時間はかかるものの、実用的な時間の範囲で動作制御フラグをオンにすることが出来る。
【0030】
また、オフコマンドを実行した店舗が不明等の状況で、前記過去にオフコマンドを発行したIDコードとその暗証コードが入手できないような状況を想定した場合、全くの手がかりなしにデータをしらみつぶしに送っても、現実的な時間の範囲で動作制御フラグをオンにすることが出来ない。
【0031】
このため本実施形態においては、管理対象のあるカテゴリ(例えば製品の種別またはメーカ自体)に対して一括に作用させるように構成した上位の暗証コード及びIDコードの組を用意し、この上位の暗証コード及びIDコードの組を使用することによって、個別の識別IDが不明であっても、目的の管理対象物の動作制御フラグをオンにすることが出来る。
【0032】
前記上位の暗証コード及びIDコードは、管理対象物の製造元またはRFIDタグの製造元だけが知る情報として厳重に保管され、セキュリティを向上させるために、暗証番号コードの桁数を、個別IDコード用に比べて多くしておくことが望ましい。
【0033】
例えば、図10に示すごとく、個別IDコード315に比べて桁数が短くなるカテゴリIDコード(例えば製品識別IDコード313やメーカカテゴリ識別IDコード311)に合わせて、カテゴリ暗証コード(例えば製品暗証コード314やメーカカテゴリ暗証コード312)の桁数を多くすることが望ましい。
【0034】
更に本実施形態においては、RFIDタグ上での識別コードや暗証コードが占めるメモリ領域を節約するため、一部を共用し、例えば図11に示すごとく、個別IDコード全体101の内の上位部分をメーカカテゴリ識別ID、さらに下位まで延長した部分を製品識別ID、その間の部分を製品識別IDとすることが望ましい。同様に暗証コードについても、図12に示すごとく、メーカカテゴリ暗証コード全体431の内の上位部分を製品暗証コードとし、さらにその上位を個別暗証コードとし、この間の部分を製品暗証コードとしても良い。
<第三者の不正防止>
【0035】
また前記実施形態によれば不正な第三者が、しらみつぶしでの暗証コード解読を行うことが考えられる。このため本実施形態においては、図13に示す如く、RFIDタグ211のタグコントローラ215が、前記上位の暗証コードを用いたオンコマンド処理については、オンコマンドの処理時間を意図的に長くすることにより、しらみつぶしのコード解読が現実的な時間では不可能にしておくことが望ましい。このシーケンスは、図13に示す如く、RFIDタグのタグコントローラ215が、上位暗証コードを用いたオンコマンドを受信する(ステップST421)と、上位暗証コードに対応した経過時間のループを回り(ステップST422)、その後にオンコマンド処理(ステップST423)を行うことにより達成される。
<動作制御フラグの設定の確認>
【0036】
また、実際のシステムおいては、動作制御フラグがオフであることを確認する簡便な手段を用意することが、本システムの信頼性を向上させるために有効である。このような確認手段は、図14に示すシーケンスで動作し、起動するとまず、誰何コマンド等のRFIDが動作開始するコマンドを送信(ステップST441)し、次に該ステップST441のコマンドに対応して受信があるかを判定(ステップST442)し、この判定において、動作中を示す受信があれば、チェックすべきRFIDタグは動作中であるとして「動作中」を示す表示(ステップ143)し、前記ステップST441で正常に受信することができず、且つ動作中をあらわす受信が一定時間待っても受信できない場合(ステップST444)、RFIDタグは非動作中として「タグ動作がオフ」であることを表す表示を行う。
【0037】
この確認装置451は、例えば図15に示す如く、携帯性を良くするためにカード状に構成し、電源となる太陽電池セル452と、RFIDタグと交信するためのアンテナ453と、RFIDタグが動作中であるか否かの確認を開始するための確認開始スイッチ454と、確認結果を表示する表示器155及び156と、図示しない制御回路とを備え、該制御回路が前記図13に示したシーケンスに従って動作し、その結果に応じて表示器455又は456を点灯させる様に構成されている。
【0038】
これら表示器455及び456は、RFIDタグの動作確認を行うものであった場合、動作がOK、すなわち動作オン状態ならば「OK」または正常を表す表示が点灯し、動作がNG、すなわち動作オフ状態ならば「NG」または異常を表す表示が点灯する。一方、確認装置451が、RFIDタグの停止によるプライバシー確保の確認を行うものであった場合、動作オン状態ならばプライバシー確保がなされていないことを示す「NG」または異常を表す表示が点灯し、動作オフ状態ならばプライバシー確保がなされていることを示す「OK」または正常を表す表示が点灯する。尚、図35に示した確認装置451の形状は、他の形状でもあっても良い。
【0039】
この様に本実施形態によるRFIDタグは、上位装置からの指令によって、動作制御フラグのオン・オフを行うことができ、これによって例えばタグを添付した商品が一般顧客に販売された際には機能をオフとし、その返品商品の履歴を記録する必要が生じた場合/不具合が出た商品の履歴を調査する場合/盗難物の履歴を調査する等のやむを得ない事情で動作制御フラグ213を再びオン状態に戻す必要が生じた場合に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によるRFIDタグは、個人消費者向けの製品の、プライバシー保護に配慮した流通管理に用いる。個人消費者向けの製品が、小売店から個人消費者に渡る時点で、小売店の店頭に置いてRFIDタグの動作を停止させ、個人のプライバシー保護を確実に行うと同時に、RFIDタグの再動作を可能とすることによって、製品事故や盗難時の調査に有効なデータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態に係わるRFIDタグの内部構成図。
【図2】前記RFIDタグの制御システムを説明する構成図。
【図3】本システムで使用するデータ群の構成を示す図。
【図4】制御システムがRFIDタグの動作をオフにするシーケンスを示す図。
【図5】リーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図。
【図6】本RFIDタグが状態コマンドに対して回答するシーケンス図。
【図7】RFIDタグがリーダ/ライタ経由の交信要求に対して応答するシーケンス図。
【図8】本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図。
【図9】本RFIDタグがその動作をオンにするシーケンス図。
【図10】個別ID/個別暗証/カテゴリID/カテゴリ暗証コードの関係を示す概念図。
【図11】個別IDコードの内部の例を説明する図。
【図12】メーカカテゴリ暗証コードの内部の例を説明する図。
【図13】上位の暗証コードを用いたオンコマンド処理のシーケンス図。
【図14】RFIDタグの動作状況を確認する動作シーケンスを説明する図。
【図15】RFIDタグの動作状況を確認する簡易手段の実現例を説明する図。
【符号の説明】
【0042】
212:タグ識別コード、213:動作制御フラグ、214:暗証コード、215:タグコントローラ、222:リーダ/ライタユニット、312:メーカカテゴリ暗証コード、314:製品暗証コード、431:メーカカテゴリ暗証コード全体、451:確認装置、452:太陽電池セル、453:アンテナ、454:確認開始スイッチ、455:表示器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定範囲の信号送受信距離との交信が可能なRFIDタグであって、実質的に不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能か、または複数の1回だけ書き込み可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段と、該記憶手段を参照してアンテナとの交信を制御するタグコントローラとを備え、該タグコントローラが、外部から動作オン又は動作オフコマンドと暗証コードとを受信し、前記記憶手段を参照して受信した暗証コードと記憶手段に記憶した暗証コードとが一致したとき、前記記憶手段に記憶した動作制御フラグのオン又はオフを書き換えることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶した暗証コードを複数とし、該複数の暗証コードの桁数が異なることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記タグコントローラは、動作の状態確認を行うコマンドを受信したとき、前記記憶手段の動作制御フラグを参照し、動作オン又はオフの状態であることを外部に送信することを特徴とする請求項1又は2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
所定の信号送受信距離範囲内で交信が可能且つ不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段を含むRFIDタグと、該RFIDタグを制御する制御システムとを備えるRFIDタグシステムであって、
複数のRFIDタグの識別コードに対応した暗証コードを格納するデータベースを備え、前記制御システムが、前記RFIDタグの識別コードをキーとしてデータベースを参照し、前記識別コードに対応した暗証コードを引き当て、前記識別コードと暗証コードを用いてRFIDタグの動作制御フラグを書き換えるコマンドを送信することを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項5】
前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるコマンドを受信し、前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するかを判定し、一致したとき前記動作制御フラグをオン状態に書き換えることを特徴とする請求項4記載のRFIDタグシステム。
【請求項6】
前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるオンコマンド及び暗証コードとを受信したとき、予め指定した時間が経過してから前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するか否かを判定するオンコマンド処理を実行することを特徴とする前記請求項5記載のRFIDタグシステム。
【請求項1】
所定範囲の信号送受信距離との交信が可能なRFIDタグであって、実質的に不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能か、または複数の1回だけ書き込み可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段と、該記憶手段を参照してアンテナとの交信を制御するタグコントローラとを備え、該タグコントローラが、外部から動作オン又は動作オフコマンドと暗証コードとを受信し、前記記憶手段を参照して受信した暗証コードと記憶手段に記憶した暗証コードとが一致したとき、前記記憶手段に記憶した動作制御フラグのオン又はオフを書き換えることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶した暗証コードを複数とし、該複数の暗証コードの桁数が異なることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記タグコントローラは、動作の状態確認を行うコマンドを受信したとき、前記記憶手段の動作制御フラグを参照し、動作オン又はオフの状態であることを外部に送信することを特徴とする請求項1又は2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
所定の信号送受信距離範囲内で交信が可能且つ不揮発性の書き換え不能な暗証コードと書き換え可能な動作のオン又はオフを設定する動作制御フラグとを記憶する記憶手段を含むRFIDタグと、該RFIDタグを制御する制御システムとを備えるRFIDタグシステムであって、
複数のRFIDタグの識別コードに対応した暗証コードを格納するデータベースを備え、前記制御システムが、前記RFIDタグの識別コードをキーとしてデータベースを参照し、前記識別コードに対応した暗証コードを引き当て、前記識別コードと暗証コードを用いてRFIDタグの動作制御フラグを書き換えるコマンドを送信することを特徴とするRFIDタグシステム。
【請求項5】
前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるコマンドを受信し、前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するかを判定し、一致したとき前記動作制御フラグをオン状態に書き換えることを特徴とする請求項4記載のRFIDタグシステム。
【請求項6】
前記RFIDタグが、動作制御フラグをオン状態に書き換えるオンコマンド及び暗証コードとを受信したとき、予め指定した時間が経過してから前記記憶手段に格納した識別IDと暗証コードと過去に動作をオフに設定したRFIDタグの識別IDと暗証コードとが一致するか否かを判定するオンコマンド処理を実行することを特徴とする前記請求項5記載のRFIDタグシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−21321(P2008−21321A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210184(P2007−210184)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【分割の表示】特願2004−190667(P2004−190667)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【分割の表示】特願2004−190667(P2004−190667)の分割
【原出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【Fターム(参考)】
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