説明

TRP−P8活性化合物と治療的処置方法

【課題】細胞増殖、血管新生、又はアポトーシス媒介疾患のような疾患又は障害の予防と治療に効果的な組成物およびそれを用いた治療方法の提供。
【解決手段】有効量の冷感誘起化合物に癌性細胞を接触させることを含んでなる癌の治療方法。当該冷感誘起化合物は以下化合物等に代表される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(背景)
皮膚に適用したときに生理学的な冷感(クールセンセーション)を生じさせる化合物が知られており、例えば、"New Compounds with the Menthol Cooling Effect," H. R. Watson等, J Soc. Cosmet. Chem., 1978, 29,1185-200が参照できる。
Wei, E.T.等, J. Pharm. Pharmacol., 1983, 35(2), 110-112は、その冷感誘起特性に由来して「イシリン(icilin)」と名付けられた次の式の化合物(AG-3-5としても知られている)又は3-(2-ヒドロキシ-フェニル)-6-(3-ニトロ-フェニル)-3,4-ジヒドロ-1H-ピリミジン-2-オンを記述している:

【0002】
冷感作用を有する更に他の化合物が最近報告されており、H. Ottinger等, J Agric. Food Chem., 2001, 49, 5383-5390を参照のこと。
米国特許第4150052号は、皮膚に対して生理学的な冷感作用を有することが報告されている例えば式IIa3-1:

のメンタンカルボキシアミド化合物を開示している。
米国特許第4070496号は、皮膚に対して生理学的な冷感作用を有することが報告されているある種のホスフィンオキシド(RP=O)化合物及び組成物を開示している。
米国特許第3821221号は、抑制薬又は興奮薬として中枢神経系を有することが知られているある種のテトラヒドロピリミジン-2-オン化合物を開示している。
【0003】
最近、ある種のTRPレセプターが熱センセーション(thermosensation)に役割を担っていることが示されている。D. D.McKemy等, "Identification of a Cold Receptor Reveals a General Role for TRP Channels in Thermosensation," Nature, 2002, Mar 7; 416(6876):52-8を参照のこと。「TRPイオンチャネルファミリー」の最近の概説として、D. E. Clapham等, Nature Reviews, Neuroscience, 2001,2, 387-396 <www. nature.com/reviews/neuro>を参照のこと。Okazawa等 Neuroscience letters (2004 Apr 8), 359(1-2):33-6;Nealen等 Journal of neurophysiology (2003 Jul),90(1):515-20:Thut等, Neuroscience (2003), 119 (4): 1071-83。
【0004】
遺伝子Trp-p8は前立腺特異的サブトラクションcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって発見された。予想されたタンパク質はCa2+チャネルタンパク質のtransient receptor potential(Trp)ファミリーと有意な相同性を有している。ノーザンブロット分析は、正常なヒト組織内でのTrp-p8発現は殆ど前立腺上皮細胞に限られていることを示している。インサイツハイブリダイゼーション分析は、Trp-p8mRNA発現が正常な前立腺組織では中程度のレベルであり、前立腺癌では増大すると思われることを示している。Trp-p8mRNAはまた乳房、大腸、肺、及び皮膚由来の多くの非前立腺原発性腫瘍においても発現する一方、Trp-p8をコードする転写物は対応する正常なヒト組織では殆ど又は全く検出されなかった(Tsavaler等 Cancer Research (2001), 61 (9): 3760-3769)。
【0005】
前立腺癌腫(PCa)の免疫療法は多くの割合の前立腺腫瘍中に存在している好適な標的抗原の同定に大きく依存している。推定カルシウムチャネルタンパク質Trp-p8はTrp-p8mRNA発現の消失とPSA無再発性生存までの有意に短い時間に関連している。Trp-p8の同定は前立腺癌の転帰に関連しており、前立腺発癌におけるこのレセプターの不可欠な役割を示唆している。PCa患者の細胞傷害性Tリンパ球によって認識される前立腺特異的タンパク質transient receptor potential-p8(Trp-p8)から誘導された免疫原性ペプチドが報告されている(Kiessling等 (2003) Prostate 56(4):270-279;Henshall等 Cancer Research (2003), 63(14):4196-4203;Fuessel等 International Journal of Oncology (2003), 23(1):221-228;米国特許出願公開第2003108963号)。新生物、過形成、及び類似の疾患又は症状の治療に効果的な治療薬剤の同定は、継続して顕著な研究努力の主題である。最近の研究は、ある種の抗体製剤との併用でのある種の治療剤は血管新生関連障害、及び類似の疾患又は症状の治療に効果的でありうることを示している。例えば米国特許第6582959号を参照のこと。
【0006】
Trp-p8レセプターの調節に関連する疾患及び症状を治療するのに有用な治療剤及び方法に対する必要性が現在も存在している。また癌性細胞に対して特異的で選択的であり、健康な細胞に対して低細胞傷害性を有する治療剤及び治療方法も必要とされている。Trp-p8レセプターの調節に関連する疾患及び症状を治療するのに有用な、例えば抗体製剤を含む更なる化学療法剤との併用での治療剤及びその併用治癒的処置方法も必要とされている。
【0007】
(概要)
しかして、生理学的な冷感(クールセンセーション)をつくり出す(「冷感誘起」)ことが知られているものを含むある種の化合物、例えば上述のテトラヒドロピリミジン-2-オン類、ホスフィンオキシド類、メンタンカルボキシアミド化合物、アルキル置換アルキルアミド化合物、及びαケトエナミン類が有用な生物活性、例えば抗腫瘍活性を示すことが発見された。
従って、本発明は、例示的実施態様において、Trp-p8レセプターを活性化する化合物を提供する。実施態様では、本発明は、癌性細胞中へのカルシウムイオンの流入を増大させる化合物(つまり、「流束活性化」又は「流束促進」化合物)及び治療方法を提供する。実施態様では、本発明は、例えばアポトーシスを生じさせることにより、癌性細胞を抑制又は死滅させる化合物、薬学的組成物、及び治療方法を提供する。
【0008】
実施態様では、本発明はまた次のものを提供する:
本発明の化合物と薬学的に許容可能な賦形剤を含有する薬学的組成物(組成物は好ましくは治療的有効量の化合物又は塩を含有する);
本発明の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体を含有する、腫瘍の治療に使用される薬学的組成物;
Trp-p8レセプターが関係しレセプター機能の調節が望まれる哺乳動物(例えばヒト)における疾患又は症状を治療する方法において、有効調節量の本発明の化合物を投与することを含んでなる方法;
哺乳動物におけるTrp-p8レセプター関連症状(例えば腫瘍)を治療又は予防する方法において、治療的有効量の本発明の化合物を投与することを含んでなる方法;
医療診断又は治療(例えば腫瘍のようなTrp-p8レセプター関連疾患又は症状の治療又は予防)での使用のための、本発明の化合物;
疾患又はTrp-p8レセプター関連症状を治療又は予防(例えば、腫瘍のようなTrp-p8レセプター関連疾患又は症状を治療又は予防)するために有用な医薬を調製するための、本発明の化合物の使用;
癌、例えば腫瘍を治療する方法において、有効量の本発明の化合物を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法;
Trp-p8レセプター機能の調節方法において、有効調節量の本発明の化合物を投与することを含んでなる方法;及び
Trp-p8レセプター機能の調節方法において、有効調節量の本発明の化合物にTrp-p-8レセプターを接触させることを含んでなる方法。
【0009】
我々はまた例えば生理学的な冷感をつくり出す(「冷感誘起」)ことが知られているものを含むある種の化合物、例えば上述のテトラヒドロピリミジン-2-オン類、ホスフィンオキシド類、メンタンカルボキシアミド化合物、アルキル置換アルキルアミド化合物、αケトエナミン類、及び類似化合物が、例えば抗体を含む更なる化学療法剤と併用すると、有用な生物活性、例えば抗腫瘍活性を示し得ることを発見した。
従って、本発明は実施態様において(Trp-p8レセプターを活性化させることができる)本発明の化合物と、例えば抗体を含む更なる化学療法剤の治療的組み合わせを提供する。実施態様では、本発明は、癌性細胞の治療において効果的でありうるそのような治療的組み合わせを提供する。実施態様では、本発明は、例えばアポトーシスを生じさせ、血管新生を阻害し、又はその双方をなすことによって、癌性細胞を抑制又は死滅させるのに有効でありうる、そのような治療的組み合わせ及びその治療方法を提供する。
【0010】
実施態様では、本発明はまた次のものを提供する:
抗体との併用での本発明の化合物と薬学的に許容可能な担体を含有する組成物;
本発明の化合物と抗体の治療的組み合わせと、薬学的に許容可能な賦形剤を含有する薬学的組成物(組成物は好ましくは治療的有効量の化合物又は塩と治療的有効量の少なくとも一種の更なる化学療法剤、例えば抗血管新生抗体を含有する);
例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効抗腫瘍量との併用での有効量の本発明の化合物又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な担体を含有する、腫瘍の治療に使用される薬学的組成物;
Trp-p8レセプターが関係し(例えば疾患又は症状がTrp-p8レセプターの過剰発現によって特徴付けられるもの)レセプター機能の調節が望まれる哺乳動物(例えばヒト)における疾患又は症状を治療する方法において、有効調節量の本発明の化合物を、例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効抗癌量と併用して投与することを含んでなる方法;
哺乳動物における疾患又はTrp-p8レセプター関連症状(例えば腫瘍)を治療又は予防する方法において、本発明の化合物と、例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の組み合わせの治療的有効量を投与することを含んでなる方法;
医療診断又は治療(例えば腫瘍のようなTrp-p8レセプター関連疾患又は症状の治療又は予防)における使用のための、例えば有効量の抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤との併用での本発明の化合物;
疾患又はTrp-p8レセプター関連症状の治療又は予防(例えば腫瘍のようなTrp-p8レセプター関連疾患又は症状の治療又は予防)に有用な医薬を調製するための、例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効量との併用での本発明の化合物の使用;
例えば腫瘍のような癌の治療方法において、そのような治療を必要とする哺乳動物に、例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効量との併用での本発明の化合物の有効量を投与することを含む方法;
Trp-p8レセプター機能の調節方法において、有効調節量の本発明の化合物を、例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効量と併用して投与することを含んでなる方法;
Trp-p8レセプター機能の調節方法において、例えば抗血管新生抗体のような少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効量と併用して有効調節量の本発明の化合物にTrp-p8レセプターを接触させることを含んでなる方法。
【0011】
我々はまた有用な生物活性、例えば細胞死滅抗腫瘍活性を示すことを特徴とする、ある種の他の化合物、例えば以下に記載するある種のメンタンカルボキシアミド化合物を発見した。
従って、実施態様では、本発明はまた次の式IIaの化合物を提供する:

上式中、
はH、又は(C-C)アルキルであり;
がフェニル又は式(-PhR

(ここで、
、R、R、及びRはそれぞれ独立して-H、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、又はハロであり;
はハロ、(C-C)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、-C(=O)(C-C)アルキル又は(C-C)アルカノイルであり;
又はRは-NR(ここで、RとRはそれぞれ独立して-H、(C-C)アルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合する窒素と共に、モルホリノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペルジノ、インドリノ、ベンズイミダゾリノ、アゼチジノ、アジリジノ、アゼピノ、1,4-オキサジノ、又はチオモルホリノ環を形成する)であり;
又はRとRが、それらが結合するフェニルと共に、4から7の原子を有する環を形成し、該環は1から3の不飽和を有する)
の置換フェニルであり;及び
立体異性体形態、立体異性体形態の混合物;
又はその薬学的に許容可能な塩で、
但し、-PhRのR、R、R、及びRが-Hである場合、Rは-CH、-OCH、-OH、-F、又は-NO以外であり;
但し、Rは3-ヒドロキシ-4-メチル-フェニル以外であり;更に
は2-ヒドロキシ-ナフチル、又はピリジル以外である。
【0012】
実施態様では、本発明はまた上述の式IIaの化合物を提供し、これは、化合物がTRP-p8を発現する細胞を死滅させるのに効果的であることを特徴とするが、発現細胞のカルシウムイオン流束は化合物の存在によって実質的に変化させられる必要はない。
実施態様では、本発明はまた次のものを提供する:
哺乳動物において標的細胞(例えば腫瘍)のカルシウム流束特性を実質的に変化させないでTrp-p8を発現する標的細胞を死滅させる方法において、式IIaの本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含む方法;
哺乳動物(例えばヒト)において疾患又は症状を治療する方法において、式IIaの本発明の化合物の有効量を投与することを含み、その化合物はTrp-p8レセプター及び増加したカルシウムイオン流束に対して細胞傷害性である方法;
哺乳動物において疾患又はTrp-p8レセプター関連症状を治療又は予防する方法において、式IIaの本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含み、その化合物はTrp-p8レセプターに対して細胞傷害性である方法;及び
細胞を死滅させ、疾患又は症状を治療し、又は疾患を治療又は予防するための任意の上記方法において、式IIaの本発明の化合物の治療的有効量を、本発明の他の化合物、抗血管新生抗体、又はその混合物との併用で、投与することを含む方法。
これらの実施態様及び他の実施態様をここで例証する。
【0013】
本発明は上述の薬学的組成物及び治療方法を提供する。本発明はまた式IIaの本発明の上記化合物、式IIaの本発明の化合物を含む薬学的組成物、及びそれを用いた治療方法を提供し、その化合物及び薬学的組成物はTrp-p8発現細胞に対して細胞傷害性である。
冷感誘起化合物の例は、例えば式(I−XIII)の化合物である:

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、Het、又はアリールであり、又は米国特許第3821221号に開示されている通りである);

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、又は米国特許第4150052号及びJ. Soc. Cosmet. Chem., 1978,29, 185-200に開示されている通りである);

(上式中、R、R、及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、又は例えばJ. Soc. Cosmet. Chem., 1978,29, 185-200(及び文献1のようにそこに引用されている文献)に開示されている通りである);

(上式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して直鎖状又は分枝状のアルキル又はシクロアルキルであり、又は米国特許第4070496号に開示されている通りである);

(上式中、Rは-OH、-S(O)R、-P(=O)R、-COH、-C(=O)NH、-OC(=O)-CH(OH)-CH、-C(=O)OC2n-OH(ここでnは1−4である)、-NR-C(=O)NR、-SO、-SONR、-SONRであり、RとRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、RはHであり、あるいはRとRはそれらが結合した炭素原子と共に、式-OCH-CH(CH-OH)-O-のヒドロキシメチル置換基を有していてもよい5員ケタール環であり、又は例えばJ. Soc. Cosmet. Chem., 1978,29, 185-200に開示されている通りである);
基VIの(-X)置換環状又は分枝状炭化水素から選択されるコア:

(上式中、XはN-アルキルカルボキシアミド、-C(=O)NR(ここで、RとRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、酸素(-O-)環ヘテロ原子で置換されていてもよい5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、又は例えばJ. Soc. Cosmet. Chem., 1978,29, 185-200に開示されている通りである);

(上式中、XはN-アルキルカルボキシアミド、-C(=O)NHRで、ここで、Rは、例えば-C(=O)NHEt又は-C(=O)NHCHCOEtにおけるようにアルキル又は置換アルキル、又は-SOEtにおけるようにアルキルスルホンであり、又は例えばJ. Soc. Cosmet. Chem., 1978,29, 185-200に開示されている通りである);
式VIIIのアルキル置換尿素:

又は例えばJ. Soc. Cosmet. Chem., 1978,29, 185-200に開示されている通りであり;

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、モルホリノ環のように、酸素(-O-)環ヘテロ原子で置換されていてもよい5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、該環は場合によってはアルファ-COH又はアルファ-COCH置換基で置換され得、
、R、及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルであり、又は例えばJ. Agric. Food Chem., 2001, 49, 5383-5390に開示されている通りである)

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、R、R、R、及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルであり、又は例えばJ. Agric. Food Chem., 2001, 49, 5383-5390に開示されている通りである)

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、R及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルであり、又は例えばJ. Agric. Food Chem., 2001, 49, 5383-5390に開示されている通りである)

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRは共に5員又は6員の飽和又は不飽和環を形成し、R及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルであり、又は例えばJ. Agric. Food Chem., 2001, 49, 5383-5390に開示されている通りである);又は

(上式中、RからRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、Rは-OH、-S(O)R、-P(=O)R、-COH、-C(=O)NH、-OC(=O)-CH(OH)-CH、-C(=O)OC2n-OH(ここでnは1−4である)、-NR-C(=O)NR、-SO、-SONR、-SONRであり、RのRとRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、RはHであり、あるいはRとRはそれらが結合した炭素原子と共に、式-OCH-CH(CH-OH)-O-のヒドロキシメチル置換基を有する5員ケタール環である);
又はその薬学的に許容可能な塩。
【0014】
別段の記載をしない限り、次の定義を使用する:ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードである。アルキル、アルコキシ等は直鎖状及び分枝状の基を示す;例えば「プロピル」のような個々の基の記載は直鎖状の基のみを含み、「イソプロピル」のような分枝状鎖異性体は特に言及される。
「アルキル」は通常の、第二級、第三級又は環状炭素原子を含むC−C18炭化水素である。例はメチル(Me,-CH)、エチル(Et,-CHCH)、1-プロピル(n-Pr,n-プロピル,-CHCHCH)、2-プロピル(i-Pr,i-プロピル,-CH(CH))、1-ブチル(n-Bu,n-ブチル,-CHCHCHCH)、2-メチル-1-プロピル(i-Bu,i-ブチル,-CHCH(CH))、2-ブチル(s-Bu,s-ブチル,-CH(CH)CHCH)、2-メチル-2-プロピル(t-Bu,t-ブチル,-C(CH))、1-ペンチル(n-ペンチル,-CHCHCHCHCH)、2-ペンチル(-CH(CH)CHCHCH)、3-ペンチル(-CH(CHCH))、2-メチル-2-ブチル(-C(CH)CHCH)、3-メチル-2-ブチル(-CH(CH)CH(CH))、3-メチル-1-ブチル(-CHCHCH(CH))、2-メチル-1-ブチル(-CHCH(CH)CHCH)、1-ヘキシル(-CHCHCHCHCHCH)、2-ヘキシル(-CH(CH)CHCHCHCH)、3-ヘキシル(-CH(CHCH)(CHCHCH))、2-メチル-2-ペンチル(-C(CH)CHCHCH)、3-メチル-2-ペンチル(-CH(CH)CH(CH)CHCH)、4-メチル-2-ペンチル(-CH(CH)CHCH(CH))、3-メチル-3-ペンチル(-C(CH)(CHCH))、2-メチル-3-ペンチル(-CH(CHCH)CH(CH))、2,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH)CH(CH))、3,3-ジメチル-2-ブチル(-CH(CH)C(CH))である。
【0015】
「アリール」は、少なくとも一つの環が芳香族である約9から20の環原子を有するオルト縮合二環式炭素環基又はフェニル基を意味する。アリール(Ar)は置換アリール、例えば1から5の置換基、例えばアルキル、アルコキシ、及び類似置換基を持つフェニル基を含み得、その置換基は化合物に整合しており、式(I−XIII)の化合物に対して上述の特許又は刊行物に開示された置換基を含む。
【0016】
ここでの「抗体」という用語は最も広義に使用され、特に無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つの無傷の抗体から形成される多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、並びにそれらが所望の生物学的活性を示す限り抗体断片を包含する。抗体は特定の抗原を認識しそれに結合することができる免疫系によって産生されるタンパク質である。その構造を記述すると、抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖の4本のアミノ酸鎖からなるY字形のタンパク質である。このアピールに十分な単純化モデルでは、各抗体は主として二つの領域、つまり可変領域と定常領域を有している。Yのアームの末端に位置している可変領域が標的抗原に結合しそれと相互作用する。この可変領域は特定の抗原上の特異的結合部位を認識しそれに結合する相補性決定領域(CDR)を含んでいる。Yの尾部に位置している定常領域は免疫系によって認識され、これと相互作用する(Janeway, C., Travers, P., Walport, M., Shlomchik (2001) Immuno Biology, 5版, Garland Publishing, New York)。標的抗原は複数の抗体上のCDRによって認識されるエピトープとも呼ばれる多くの結合部位を一般に有している。異なったエピトープに特異的に結合する各抗体は異なった構造を有している。よって、一抗原は一を越える対応する抗体を有しうる。
【0017】
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体によって汚染されないで合成できる点で有利である。「モノクローナル」なる修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等 (1975) Nature 256:495により記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、あるいは組換えDNA法によって作製することができる(米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は例えばClackson等(1991) Nature 352:624-628及びMarks等(1991) J. Mol. Biol. 222:581-597に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0018】
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物活性を有する限りそのような抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号; Morrison等(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855)。ここで対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿等)から由来する可変ドメイン抗原-結合配列及びヒト定常領域配列を含む「プリマタイズ(primatized)」抗体を含む。
【0019】
「化学治療剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学治療剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン(piposulfan);アジリジン類、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン類(特にブラタシン及びブラタシノン);δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン(lapachone);ラパコール;コルヒチン類;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトセシン、スコポレクチン、及び9-アミノカンプトセシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素蛋白エネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マーセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリン類似体、例えばフルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(maytansinoid)類、例えばメイタンシン(maytansine)及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカーバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANE(商標)パクリタキセルのクレモフォール非含有アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン(gemcitabine)(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド類;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標));上述したものの何れかの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体;並びにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニソロンの併用療法に対する略称であるCHOP、及び5-FU及びロイコボビンと併用したオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))での治療レジメンの略称であるFOLFOXのような上記のものの二以上の組み合わせが含まれる。
【0020】
この定義にまた含まれるものは、癌の成長を促進することができるホルモンの作用を調節、低減、ブロック又は阻害するように働き、しばしば全身性又は身体全体の治療の形態である抗ホルモン剤である。それらはホルモン自体でありうる。例としては、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン(raloxifene)、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン(onapristone)、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン類;エストロゲンレセプター・ダウンレギュレーター(ERDs);卵巣を抑制し又は停止させるように機能する薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン;他の抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド(nilutamide)及びビカルタミド;及び副腎中でのエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)-イミダゾール類、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールが含まれる。また、化学療法剤のそのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロネート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、又はACTONEL(登録商標)リセドロネート;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に不粘着性細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を抑制するもの、例えばPKC-α、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子レセプター(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子療法ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパチニブジトシレート(GW572016としても知られているErbB-2及びEGFRデュアルチロシンキナーゼ小分子インヒビター);抗癌作用を有する抗体、特にVEGF-1、VEGF-2、VEGF-3、VEGF-R、HER-2、CD20等々に結合するもの、及び上記のものの何れかの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体が含まれる。
【0021】
「Het」は、オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、及び窒素からなる群から選択される1、2、3、又は4のヘテロ原子を有する4、5、6、又は7員の飽和又は不飽和の複素環であり、その環はベンゼン環に縮合していてもよい。Hetは、炭素及びそれぞれ非ペルオキシドオキシ、チオ、及びN(X)(ここでXは存在しないか又はH、O、C1−4アルキル、フェニル又はベンジルである)からなる群から選択される1、2、3、又は4のヘテロ原子からなる5又は6の環原子を含む単環芳香環の環炭素を介して結合している基、並びにそれから誘導される約8から10の環原子のオルト縮合二環複素環の基、特にベンズ誘導体又はそれにプロピレン、トリメチレン、又はテトラメチレンジラジカルを縮合させることによって誘導されるものを包含する「ヘテロアリール」を含む。
【0022】
「治療する(treat)」、「治療」、「治療する(treating)」及び類似用語は、実施態様では、例えば本発明の化合物の有効量の投与によって、又は有効量の更なる化学療法剤、例えば抗血管新生抗体との併用での本発明の化合物の有効量の投与によって疾患又は症状を低減し、排除し、阻害し、改善し、改変し、又は予防することを意味し、治癒的療法、予防的(prophylactic)療法及び予防的(preventative)療法を意味しうる。
「調節する(modulate)」、「調節」、「調節する(modulating)」、「調節性」及び類似用語は、実施態様では、癌性細胞、例えばTrp-p8発現細胞の多価イオン(例えばカルシウムイオン)透過性を、他の細胞、例えば健康な又は非癌性細胞及びTrp-p8を発現しない細胞の相対的非感受性と比較して、選択的にかつ相対的に低い用量レベルで調節又は改変する有効量の本発明の化合物の能力を意味する。
【0023】
本発明の目的に対して「癌治療」、「癌を治療する」及び類似用語は、実施態様では、癌細胞成長の阻害、癌細胞の死滅化、患者の生存時間の増加、又はその組み合わせを達成するために本発明の化合物に癌性細胞を接触させること、又は癌細胞成長の阻害、癌細胞の死滅化、患者の生存時間の増加、抗血管新生効果、又はその組み合わせを達成するために抗血管新生抗体との併用で本発明の化合物に癌性細胞を接触させることを含む癌を治療する方法を意味する。本発明の方法による癌の治療は、腫瘍のような癌性細胞においてTrp-p8レセプターを活性化させるために本発明の化合物に細胞を接触させ、多価イオンの増大した流束レベルを細胞中へ生じさせ、細胞静止又は細胞死を生じさせることをまた含む。癌は異常な細胞が制御されないで分裂する疾患を含みうる。癌細胞はまた近くの組織に浸潤し得、血流及びリンパ系を通じて身体の他の部位に広がりうる。癌の主要なカテゴリーは、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫である。これら主要なカテゴリー内には、例えば胃の腺癌又は肺の燕麦細胞癌のような、一般に癌が由来する器官を記述する数多くのサブグループがある。
【0024】
「腫瘍」は、例えば、炎症性ではなく、前もって存在している組織の細胞から生じ、何ら生理学的機能を有していない組織の異常な良性又は悪性塊を意味する。良性腫瘍は、例えば嚢腫、いぼ、ホクロ、及びポリープを含み、一般に身体の他の部分には広がらない。悪性腫瘍は典型的には急速に成長し、正常な細胞からそれを区別する他の異常な性質を有しており、しばしば他の正常な組織に浸潤する細胞から構成される。
「血管内皮細胞増殖因子」又は「VEGF」は例えば米国特許第5332671号に定義されたような哺乳動物の成長因子を意味する。天然VEGFの生物学的活性は、ウシ角膜内皮細胞、水晶体上皮細胞、副腎皮質細胞、BHK-21線維芽細胞、又はケラチン生成細胞のものではなく血管内皮細胞の選択的成長を促進する任意の類似体又はその変異体によって共有される。
【0025】
「血管新生疾患」又は「血管新生欠陥」は、血管新生を阻害する薬剤、例えば本発明の化合物と抗血管新生抗体の組み合わせのような血管新生抑制(angiostatic)化合物又は組成物での治療を必要とする異常な症状を意味する。そのような疾患には、例えば、血管腫瘍、例えば血管腫(毛細血管及び海綿状)、グロムス腫瘍、末梢血管拡張、細菌性血管腫症、血管内皮腫、血管肉腫、血管外皮細胞腫、カポジ肉腫、リンパ管腫、及びリンパ管肉腫、及び腫瘍の血管新生のような癌のタイプが含まれる。
一又は複数の更なる治療剤「との併用での」投与は同時(併用)投与及び任意の順序の連続投与を含む。
【0026】
冷感誘起化合物は哺乳動物での使用に好適である。ここで使用する場合、「哺乳動物」は、例えばヒト、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ウサギ、及びサルを含む乳腺から分泌される乳でその子供に栄養を与える任意のクラスの高等脊椎動物を意味する。
「アポトーシス細胞死」、「プログラム細胞死」、「アポトーシス」及び類似用語は、細胞分化の特定の段階で特定の刺激に応答して生じる細胞性事象の複雑なカスケードから生じうる任意の細胞死を意味する。アポトーシス細胞死は死滅しつつある細胞の細胞質と核の凝縮によって特徴付けることができる。アポトーシスは新しいタンパク質合成を必要とする活動的なプロセスである。典型的には、そのプロセスにはATPが必要で、新規のRNA及びタンパク質合成を含み、細胞のDNAを分解する内在性エンドヌクレアーゼの活性化で終わり、それによって細胞のホメオスタシスに必要とされる遺伝子鋳型を破壊する。アポトーシスは変態、分化、及び一般的細胞代謝回転の間に細胞の制御された除去において観察され、レセプター結合事象によって通常は調節されると思われる。このために、アポトーシスは「プログラム細胞死」又は「細胞自殺」と呼ばれている。あらゆる細胞は自殺をする遺伝子プログラムを有している可能性があるが、通常はそれは抑制される。通常の状況下では、生物によってもはや必要とされていない細胞のみがこの自己破壊プログラムを活性化させる。
【0027】
「治療的有効量」は、実施態様では、例えばTrp-p8を活性化し、アポトーシスを刺激し、又はその両方によって腫瘍成長をインビボ、インビトロ、又は両方で、阻害し、低減し又はなくする本発明の化合物の用量、又は賦形剤を伴うか伴わない、本発明の化合物と他の化学療法剤の組み合わせの用量を意味する。正確な用量は治療目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって確かめられる。
本発明の一実施態様では、本発明の化合物は、例えば他の抗体療法剤との併用療法に使用される。一実施態様では、本発明の化合物は既知の癌治療抗体との併用で使用される。一般的には、例えば、PCT/US02/19592;PCT/US01/20118;PCT/US01/25464;PCT/US01/26626;PCT/US02/28859;PCT/US02/41798;PCT/US02/12206;PCT/US03/11148;PCT/US02/12619;及びPCT/US02/33050を参照のこと。他の実施態様では、本発明の化合物はヒト、非ヒト、マウス、ハイブリッド、及びキメラ形態を含む抗VEGF抗体及び類似抗体との併用で使用される。例えば米国特許第6582959号(VEGF)及び米国特許出願第2002/0122797A1(ヒトVEGF)を参照のこと。
【0028】
本発明の実施態様では、本発明の化合物は、例えば例えばB細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)、補助細胞(マクロファージ及び他の抗原提示細胞)、キラー細胞(NK及びK細胞)、肥満細胞、及び類似細胞を含む、免疫応答細胞を含む免疫学的疾患又は症状を治療するために例えば上述の抗体のような他の治療剤との併用で使用することができる。
好適な実施態様では、本発明に有用な化合物は非中枢神経系細胞又は疾患の治療のための非放射標識化合物を含む。実施態様では、本発明の化合物は放射標識を含まず、放射性ではない。本発明の未標識化合物はここに例証された癌細胞、例えばTrp-p8発現細胞、例えば前立腺癌細胞及び肝癌細胞を死滅させるために使用することができる。
本発明の目的のための「患者」には、ヒトと他の動物、特に哺乳動物の双方が含まれる。よって、本方法はヒトの治療及び獣医用途の双方に適用可能である。好適な実施態様では、患者は哺乳動物であり、最も好適な実施態様ではヒトである。
【0029】
「改善された治療結果」又は「腫瘍細胞数の減少」又は「減少した腫瘍サイズ」は、治療前と治療後又は双方において患者から採取された試料、患者の検査によって測定した場合での、腫瘍サイズ又は体積、血液、罹患組織、又は器官中の検出可能な循環癌細胞の数の、50%の減少、好ましくは80%の減少、より好ましくは90%の減少、更により好ましくは100%の減少を意味する。
「化合物」、「分子」、「ポリペプチド」及び類似の用語には、合成的に調製された化合物、遺伝子操作された化合物(例えば組換えDNA発現タンパク質)、天然に生じる化合物、及び異なった化合物の投与後にインビボで産生されるものが含まれる。ここに記載された投与化合物のインビボ効果は、化合物そのものによって生じるのではなく、投与された化合物(群)又は分子(群)の、一又は複数の分解産物、例えば代謝産物、コンジュゲート、包接体、イオン錯体、キレート、水和物、溶媒和物、又は類似の生物学的変換体又は組み合わせによって生じる場合がある。「薬学的に許容可能な塩」はまたここで例証されているものに加えて、インビボで形成され又は存在する塩のサブクラスを含みうる。
【0030】
本発明はTRP(一過性受容器電位)イオンチャネルファミリーのある種のレセプターに結合する化合物を提供する。より詳細には、本発明は長TRP(又はTRPM)チャネルのサブグループに特異的に結合する化合物を提供し、最も詳細には、「Trp-p8」(又はTRP-M8)と呼ばれるTRPチャネルに特異的に結合する化合物を提供する。Trp-p8レセプターは、典型的には、前立腺癌のような癌に高いレベルで存在する。本発明の化合物にはTrp-p8レセプター活性化活性が賦与される。Trp-p8レセプターの活性化が癌性細胞中へのカルシウムイオン流の増大を引き起こし、最終的に細胞死を引き起こす。本発明の化合物は、限定されるものではないが、細胞増殖疾患又は障害の治療、及びアポトーシスの刺激に有用である。例えばここに記載される標準的な試験法を使用して又は他の類似の試験法を使用して、Trp-p8レセプター活性を如何にして定量するかはまた当該分野においてよく知られており、ここで例証される。
【0031】
キラル中心を有する本発明の化合物は光学的に活性な形態及びラセミ体として存在し分離することができることは当業者によって理解されるであろう。ある種の化合物は多形性を示しうる。本発明は、ここに記載された有用な性質を有する本発明の化合物のあらゆるラセミ、光学活性、多形性、互変異性、又は立体異性形態又はその混合物を包含することが理解され、(例えば再結晶技術によるラセミ形態の分割、光学的に活性な出発材料からの合成、キラル合成、又はキラル静止相を使用するクロマトグラフィー分離により)如何にして光学的に活性な形態を調製するかは当該分野でよく知られている。特に、例えば式(I−XIII)のような本発明の化合物は、例えば式(I)のR置換基、式(V)のR置換基、及び式(XIII)のRからR置換基にキラル中心を含みうる。式(I)のような本発明の化合物は「エノール」型又は対応する互変異性「ケト」型で存在し得、そのような互変異性体の全てが本発明の範囲の化合物として含まれることがまた理解される。
【0032】
様々な炭化水素含有部分の炭素原子量は、その部分の炭素原子の下限数と上限数を示す接頭文字で示す。つまり、接頭文字Ci−jは整数「i」から整数「j」の炭素原子(限界値を含む)の部分を示す。よって、例えば、C1−6アルキル又は(C1−6)アルキルは1から6の炭素原子(限界数を含む)のアルキルを意味する。
本発明の化合物は一般にIUPAC命名法に従って名称が付与されている。当業者にはよく知られている略号を用いることができる(例えばフェニルに対して「Ph」、メチルに対して「Me」、エチルに対して「Et」、時間に対して「h」及び室温に対して「rt」)。
基(ラジカル)、置換基、及び範囲に対して以下に列挙する特定の好ましい基(values)は例示のためのみのものである;それらは基及び置換基に対して定義された範囲内の他の基又は他の定義される基を排除するものではない。本発明の化合物には、ここに記載された基、特定の基、より特定の基、及び好適な基の任意の組み合わせを有する式(I−XIII)の化合物が含まれる。
【0033】
特に、アリールは、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、テトラヒドロナフチル、又はインダニルでありうる。
特に、(C1−6)アルキルのようなアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、ヘキシル、又はヘプチルであり得;(C2−6)アルキルはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、又はヘキシルであり得;(C3−12)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、二環式、又は多環式置換基、例えば次の式のものでありうる:

【0034】
1−6アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシ、又はヘキシルオキシであり得;-C(=O)アルキル又は(C-C)アルカノイルは、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、4-メチルペンタノイル、ヘキサノイル、又はヘプタノイルであり得;アリールはフェニル、インデニル、又はナフチルであり得;Hetはピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、又はヘテロアリールであり得;ヘテロアリールはフリル、イミダゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾイル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル(又はそのN-オキシド)、チエニル、ピリミジニル(又はそのN-オキシド)、インドリル、イソキノリル(又はそのN-オキシド)又はキノリル(又はそのN-オキシド)であり得る。
【0035】
Hetに対する特定の値は、1、2、3、又は4のヘテロ原子、例えば非ペルオキシドオキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、及び窒素を含む5員、6員、又は7員の飽和又は不飽和環であり;またそれから誘導された約8から12の環原子のオルト縮合二環式複素環の基、特にそれにプロピレン、トリメチレン、テトラメチレン又は他の単環式Hetジラジカルを縮合させて誘導されたもの又はベンズ誘導体である。
【0036】
式(I)の特定の化合物は次の式(A)

の化合物である。
式(II)の特定の化合物は次の式(B)

の化合物である。
式(II)の他の特定の化合物は、好ましい立体化学を示す式(C)

の化合物である。
【0037】
式(II)の他の特定の化合物は、式(D):

の化合物である。
式(III)の特定の化合物は次の式(E):

の化合物である。
式(IV)の特定の化合物は次の式(F):

の化合物である。
【0038】
式(V)の特定の化合物は次の式(G):

の化合物である。
式(VI)の特定の化合物は次の式(H):

の化合物である。
式(VII)の特定の化合物は次の式(I'):

の化合物である。
【0039】
式(IX)の特定の化合物は次の式(J):

の化合物である。
式(X)の特定の化合物は次の式(K):

の化合物である。
式(XI)の特定の化合物は次の式(L):

の化合物である。
【0040】
式(XII)の特定の化合物は次の式(M):

の化合物である。
式(XIII)の特定の化合物は次の式(N):

の化合物である。
【0041】
式(A−N)の上述の特定の化合物及び本発明の全ての他の化合物はその薬学的に許容可能な塩であり得又はそれを含みうることが理解される。
特定の化合物は、3-(2-ヒドロキシ-フェニル)-6-(3-ニトロ-フェニル)-3,4-ジヒドロ-1H-ピリミジン-2-オン;又はその薬学的に許容可能な塩である。
他の特定の化合物は、2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-メトキシ-フェニル)-アミド;又はその薬学的に許容可能な塩である。
他の特定の化合物は、2-イソプロピル-2,3,-N-トリメチル-ブチルアミド;又はその薬学的に許容可能な塩である。
他の特定の化合物は、1-(sec-ブチル-イソブチル-ホスフィノイル)-ヘプタン;又はその薬学的に許容可能な塩である。
他の特定の化合物は、2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサノール;又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0042】
式IIaの特定の化合物は式IIa1:

の化合物又はその薬学的に許容可能な塩であり;ここでR、R、R、R、R、及びRはここに定義した通りである。
【0043】
式IIaの他の特定の化合物は式IIa2−IIa12の個々の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩であり、ここでR置換基はここに定義した通りである:



【0044】
式IIaの特定の化合物は次のものを含む:
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4モルホリン-4-イル-フェニル)-アミド、又はその薬学的に許容可能な塩;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(3-クロロ-4-メトキシフェニル)-アミド、又はその薬学的に許容可能な塩;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-sec-ブチル-フェニル)-アミド、又はその薬学的に許容可能な塩;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸インダン-5-イルアミド、又はその薬学的に許容可能な塩;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-tert-ブチル-フェニル)-アミド、又はその薬学的に許容可能な塩;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-プロピル-フェニル)-アミド、又はその薬学的に許容可能な塩;及び
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-イソプロピル-3-メチル-フェニル)-アミド、又はその薬学的に許容可能な塩。
【0045】
式(I−XIII)の化合物及び式A−Nの上述の特定の化合物に対する調製手順、特徴付け、冷感誘起特性、臭気特性、構造−冷感誘起活性関係、設計則、及び類似情報は対応する上述の刊行物又は特許で報告されている。
本発明の化合物、例えば式B、C、D又はNの化合物は、例えば以下のスキームで例証されるようにして、それに類似の手順によって、上述の文献又は特許の手順によって、又は当業者に知られ又は直ぐに分かる手順によって、調製することができる。スキームにおいて使用される変動要因の全ては以下に又は本明細書の他の場所において明確にした通りである。スキーム1は、アミノ化合物3(IIa4-1)のような本発明の代表的な化合物の調製を例証している。クロロ化合物1をグリニャール中間体を経てカルボキシル化してカルボン酸2を得、この酸2をアミド3に、本明細書の実施例1に記載されているようにして転換させた。

【0046】
化合物3(IIa4-1)及び関連したアミド化合物を調製するための代替の調製手順は上述のカルボン酸化合物2の対応する酸塩化物を使用する。カルボン酸化合物2の酸塩化物(SOCl及び類似試薬との反応で直ぐに調製される)を様々な第一級又は第二級アミン化合物と反応させてアミド3に類似の対応するアミドを生成させることができる。アミド3又は式IIに関連した他の化合物はここに例証し記載したようにして同様に調製した。
メンタンカルボン酸化合物2(IIa4-1のための出発材料)を製造するための合成手順に対しては、以下に述べるリストのD. G. Rowsell, Wilkinson Sword Ltd.の英国特許 (1975)を参照のこと。メンタンカルボン酸化合物を製造するための他の合成手順については、D. Cunningham等, J.Chem. Soc., Perkin Trans. I, 2002,2692-2698を参照のこと。
J. Soc. Cosmet. Cem., 1978,29, 185-200に述べられた冷感誘起化合物を製造するための更なる調製の詳細手順については、199頁の17の英国特許リスト中の文献1を参照のこと。
【0047】
ここで例証された様々な中間体から本発明の化合物を形成するのに好適な他の条件は当該分野でよく知られている。例えば、Feiser及びFeiser, "Reagents for Organic Synthesis, "Vol. 1,1967; March,J."Advanced Organic Chemistry," 4版, John Wiley & Sons, 1992; House, H.O., "Modern Synthetic Reactions", 2版, W. A. Benjamin, New York, 1972;及びLarock, R. C., "Comprehensive Organic Transformations," 2版, Wiley-VCH Publishers, New York, 1999を参照のこと。
ここに記載された合成方法において用いられる出発材料は市販され、科学文献に報告され、あるいは当該分野で知られている手順を使用して直ぐに入手できる出発材料から調製することができる。上述の又は代替の合成手順の全体又は一部において場合によっては保護基を使用することが望ましい場合がある。そのような保護基とその導入及び除去方法は当該分野でよく知られている。Greene, T.W.; Wutz, P.G.M. "Protecting Groups In Organic Synthesis" 2版, New York, John Wiley & Sons, Inc., 1991を参照のこと。
【0048】
化合物が安定な非毒性の酸又は塩基塩を形成するのに十分に塩基性又は酸性である場合、塩として本発明の化合物を投与することが適切である場合がある。薬学的に許容可能な塩の例は、酸によって形成された酸付加塩であり、その酸は生理学的に許容可能なアニオン、例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸、及びα-グリセロリン酸塩を形成する。塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、及び炭酸塩を含む好適な無機塩もまた形成することができる。
薬学的に許容可能な塩は、例えばアミンのような十分に塩基性の化合物を適当な酸と反応させて生理学的に許容可能なアニオンを形成することによって、当該分野でよく知られている標準的な手順を使用して得ることができる。カルボン酸の、アルカリ金属、例えばナトリウム、カリウム又はリチウム、あるいはアルカリ土類金属塩、例えばカルシウムをまた製造することができる。
【0049】
本発明の化合物は、好適な賦形剤との併用での化合物を含む薬学的組成物として簡便に投与することができ、その組成物は腫瘍の治療に役立つ。抗腫瘍用途に適した化合物を含む薬学的組成物は当該分野でよく知られている方法によって調製され当該分野でよく知られている賦形剤を含む。そのような方法及び成分の一般に認識された要約はE. W. MartinのRemington's Pharmaceutical Sciences (Mark Publ. Co., 15版, 1975)である。本発明の化合物及び組成物は、例えば腫瘍細胞の性質又は散在に応じて、非経口的、例えば静脈内、腹腔内又は筋肉内注射、経口又は直腸内投与することができる。
【0050】
実施態様では、本発明の範囲に含まれる抗体は、起源とする種や免疫グロブリンクラス又はサブクラス名によらず、ハイブリッド及び組換え抗体(例えば「ヒト化」及び「ヒト」抗体)、並びに抗体断片(例えば、Fab、F(ab')、及びF)を含む。米国特許第4816567号;Mage及びLamoyi, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 79-97, Marcel Dekker,Inc., New York, (1987)を参照のこと。
よって、「モノクローナル」という修飾詞は、実質上均一な抗体集団から得られたという抗体の性質を示し、抗体を何らかの特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明のモノクローナル抗体は、Kohler & Milstein, Nature 256:495(1975)によって初めて記載されたハイブリドーマ法を使用して作製することができ、あるいは組換えDNA法によって作製することができる。例えば、米国特許第4816567号を参照。抗体産生の他の既知の方法は例えばGoding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, 59-103, Academic Press(1986); Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984), Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51-63, Marcel Dekker, Inc., New York (1987)に記載されている。
【0051】
モノクローナル抗体(MAbs)を産生するために様々な方法が用いられてきている。抗体の単一のタイプを生産するクローン化細胞株を意味するハイブリドーマ技術は、マウス(ネズミ)、ハムスター、ラット、及びヒトを含む様々な種の細胞を使用する。MAbsを調製する他の方法は組換えDNA技術を含む遺伝子操作を使用する。これらの技術から作製されるモノクローナル抗体は、とりわけ、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。キメラ抗体は一を越えるタイプの種からのDNAコード領域を結合する。例えば、キメラ抗体はマウスの可変領域とヒトの定常領域に派生しうる。ヒト化抗体は、非ヒト部分を含んでいるが、主にヒトから生じる。キメラ抗体のように、ヒト化抗体は完全にヒト定常領域を含みうる。しかしキメラ抗体とは異なり、可変領域は部分的にヒトから由来しうる。ヒト化抗体の非ヒト合成部分はしばしばマウス抗体のCDRから生じる。とにかく、これらの領域は抗体が特異的抗原を認識しそれに結合することを可能にするために重要である。
【0052】
述べたように、マウス抗体はこれらの技術において重要な役割を担っている。診断及び短期の治療には有用であるが、マウス抗体は有害な免疫原性応答のリスクを増大させないで人々に長期にわたって投与することができない。ヒト抗マウス抗体(Humen Anti-Mouse Antibody: HAMA)と呼ばれるこの応答は、ヒト免疫系がマウス抗体を異物として認識しそれを攻撃するときに生じる。HAMA応答は毒性ショック又は死さえも生じうる。
キメラ及びヒト化抗体は投与された抗体の非ヒト部分を最小にすることによりHAMA応答の可能性を低減する。更に、キメラ及びヒト化抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害性のような二次ヒト免疫応答を活性化させるという更なる利点を有する。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合性又は可変領域を含んでなる。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディー(diabodies);直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0053】
「無傷の」抗体は、抗原結合可変領域並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2及びCH3を含んでなるものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。
無傷の抗体は一又は複数のエフェクター機能を有し、これは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰因する生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例は、Clq結合;補体依存性細胞傷害性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面レセプターのダウンレギュレーション(例えばB細胞レセプター;BCR)等を含む。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、無傷の抗体は異なる「クラス」に分類することができる。無傷の抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは更に「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2に分類される。異なる抗体クラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれている。異なったクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造はよく知られている。
【0054】
併用療法に対してインビボで使用される場合、抗体は治療的有効量(つまり患者の腫瘍の負荷をなくするか低減する量)で患者に投与することができる。本発明の化合物と抗体の組み合わせを同時に又は連続して投与することができる。それらは、通常、可能な場合には標的細胞部位に非経口的に、又は静脈内に投与される。用量と投薬レジメンは、例えば癌の性質(原発か転移性か)、その群状態、抗体が対象とする部位、特定の免疫毒素(使用される場合)の特性、例えばその治療係数、患者、及び患者の病歴に依存する。投与される抗体の量は典型的には患者の体重1kg当たり約0.1から約10mgの範囲である。抗体との併用時の投与される本発明の化合物の量は典型的には例えば患者の体重1kg当たり約5から1000mg、又は約0.1から300mgであり得、上述した因子及び考慮事項の多くのものに依存しうる。
【0055】
本発明はまた本発明の化合物と抗TRP-P8抗体の組み合わせを診断用途に使用することを考慮する。診断用途に対しては、本発明の抗体は典型的には検出可能な部分で標識されるであろう。検出可能な部分は、直接的であれ間接的であれ、検出可能なシグナルをつくり出すことができる任意のものでありうる。例えば、検出可能な部分は放射性同位元素、例えばH、14C、32P、35S、又は125I、蛍光又は化学発光化合物、例えばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、又はルシフェリン;又は酵素、例えばアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又は西洋わさびペルオキシダーゼでありうる。
Hunter等, Nature, 144: 945 (1962);David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974);Pain等, J.Immunol. Meth., 40: 219 (1981);及びNygren, J. Histochem. and Cytochem, 30: 407 (1982)によって記載されている方法を含む、検出可能な部分に抗体を別個に結合させるために当該分野で知られている任意の方法を使用することができる。
【0056】
治療的用途において、抗体は、静脈内ボーラスとして又は所定時間にわたっての連続注入によって、筋肉内、皮下、関節内、又は吸入経路によってヒトに投与することができるものを含む、薬学的に許容可能な投薬形態で、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。抗体はまた腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、又は病巣周囲経路によって好適に投与され、局所的並びに全身性治療効果をもたらす。
そのような投薬形態は本来的に非毒性で非治療性である既知の薬学的に許容可能な担体又はビヒクルを包含する。抗体は典型的には約0.1mg/mlから100mg/mlの濃度でそのようなビヒクル中に製剤される。
【0057】
疾患の予防又は治療において、本発明の化合物の組み合わせの適切な用量は、上述の治療される疾患のタイプ、疾患の重篤度及び経過、化合物が予防目的に投与されるか治療目的に投与されるか、過去の治療法、患者の臨床履歴及び化合物に対する反応、及び担当医師の裁量に依存する。化合物は、一時に又は一連の治療にわたって適切に患者に投与される。
疾患のタイプと重篤さに応じて、約0.015から15mg/kgの化合物が、例えば一以上の別々の投与であろうと、あるいは連続注入によるものであろうと、患者への初期候補投与量である。数日間又はそれ以上にわたる繰り返し投与の場合は、状況に応じて、疾患徴候の望ましい抑制が起こるまで治療を続ける。しかし、他の用量計画も有用でありうる。
【0058】
経口治療投与のためには、本発明の活性化合物を、一又は複数の賦形剤と混合し、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハース等の形態で使用する。そのような組成物及び製剤は典型的には少なくとも約0.1%の活性化合物を含む。組成物及び製剤のパーセントはもちろん変動し、簡便には与えられた単位投薬形態の重量の約2から約60%の間でありうる。そのような治療的に有用な組成物における活性化合物の量は、有効な用量レベルが得られる量である。
錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル剤等はまた次のものを含みうる:結合剤(バインダー)、例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、フルクトース、ラクトース又はアスパルテーム又は香料添加剤、例えばペパーミント、冬緑油、又はチェリー香料を添加することができる。単位投薬形態がカプセルである場合、それは、上述の物質に加えて、液体担体、例えば植物油又はポリエチレングリコールを含みうる。様々な他の物質がコーティングとして又は固形単位投薬形態の物理形態を改変等するために存在しうる。例えば、錠剤、丸薬、又はカプセル剤はゼラチン、ロウ、シェラック、又は糖などによってコーティングされうる。シロップ又はエリキシル剤は活性化合物、甘味料としてスクロース又はフルクトース、保存料としてメチル及びプロピルパラベン、染料(着色料)及び香味料、例えばチェリー又はオレンジ香味料を含みうる。もちろん、単位投薬形態を調製する場合に使用されるあらゆる材料は用いられる量で薬学的に許容可能であり実質的に非毒性でなければならない。また、活性化合物は徐放性製剤及びデバイス中に導入することもできる。
【0059】
本発明の化合物又は組成物はまた静脈内又は腹腔内に注入又は注射によって投与することができる。活性化合物又はその塩の溶液は、場合によっては非毒性の界面活性剤と共に、水中で調製することができる。分散液はまたグリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びその混合物中、また油中で調製することができる。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの製剤は微生物の成長を防止するために保存料を含む。
注射又は注入に適した医薬投薬形態は、滅菌水溶液又は分散液、滅菌注射可能又は注入可能溶液又は分散液の即時調製に適した活性成分を含有する滅菌パウダーを、場合によってはリポソーム又は移植可能な種剤又はペレットに封入された状態で、含みうる。全ての場合、最終的な投薬形態は、製造及び保存条件下で滅菌性、流体で安定でなければならない。液状担体又はビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、又は液体ポリエチレングリコール等々)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びその好適な混合物を含む溶媒又は液体分散体媒質でありうる。例えば、リポソームの生成、分散液の場合には要求された粒子サイズの維持、又は界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等々によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液又は塩化ナトリウムを含ませるのが望ましい。注射可能組成物の長期にわたる吸収は、組成物中に吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有させることによってもたらすことができる。
【0060】
滅菌性注射用溶液は、上に挙げた様々な他の成分と共に適切な溶媒中に必要な量の活性化合物を導入し、必要に応じて濾過殺菌することによって調製することができる。滅菌性注射用溶液の調製用の滅菌パウダーの場合には、好適な調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥法であり、これは活性成分とそれまでに滅菌濾過された溶液中に存在する任意の付加的な所望成分のパウダーを生じる。
有用な固形担体には、微細に破砕された固形物、例えばタルク、クレー、マイクロクリスタリンセルロース、シリカ、アルミナ等々が含まれる。有用な液体担体には、水、アルコール又はグリコール又は水-アルコール/グリコール混合物が含まれ、それに本発明の化合物を、場合によっては非毒性の界面活性剤を助剤として用いて有効レベルで溶解させ又は分散させることができる。アジュバント、例えば香料及び更なる抗菌剤を添加して与えられた用途に対する性質を最適化することができる。本発明の化合物の有用な投薬量はそのインビトロ活性及び動物モデルでのインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物における有効な用量のヒトへの推定は当該分野で既知である;例えば米国特許第4938949号を参照のこと。
【0061】
化合物は、簡便には、例えば単位投薬形態当たり活性成分が5から1000mg、簡便には10から750mg、最も簡便には50から500mg含む単位投薬形態で投与される。所望される用量は簡便には単一用量で提供してもよいし又は適当な間隔をあけて投与される分割用量で、例えば一日あたり2、3、4又はそれ以上のサブ用量で提供することができる。サブ用量自体を更に例えば複数の分散しゆるく離間した投薬に細分してもよく、例えば吸入器からの複数吸入である。
内部投与の場合、組成物は、遊離塩基として計算して、約0.1から300mg/kg、好ましくは1.0から30mg/kg(哺乳動物体重)の用量レベルで経口的に又は非経口的に投与することができ、単位用量当たり1から1000mgの量で毎日1回から4回投与される単位用量形態でヒトに使用することができる。
非経口投与又は目の治療の場合のように滴下剤としての投与の場合、化合物は約0.1から約10%、より好ましくは約0.1から約7%の濃度で水溶液中に存在する。溶液は他の成分、例えば乳化剤、抗酸化剤又はバッファーを含んでいてもよい。
【0062】
一般に、例えばIV(静脈内)のような、液体組成物中の式(I−XIII)の化合物の濃度は、約0.1から約25、好ましくは約0.5から約10重量パーセントである。ゲル又はパウダーのような半固形又は固形組成物中の濃度は約0.1から約5重量パーセント、好ましくは約0.5から約2.5重量パーセントである。
ここに開示した化合物及び組成物の投与に対する正確なレジメンは、治療されている個々の患者の必要性、治療のタイプ、そしてもちろんのこと臨床医の判断に必然的に依存する。
本発明の化合物の結合活性と結合選択性は本発明の化合物の抗腫瘍活性の優れた予測指標である。結合活性と結合選択性は当該分野でよく知られた薬理学的モデルを使用するか、又は以下に記載するアッセイを使用して測定することができる。生物学的試験法の例示的な結果を以下の表1にまとめる。
【0063】
生物学的活性の評価
カルシウムイオン流束又は細胞の取り込み、及びアポトーシスの誘導を評価し測定するためにR. Skyryma等, J Physiology, 2000,527. 1,71-83に開示された一般的な方法と材料を,本発明で使用し、ここに例証するために適合させた。細胞株培養、形質移入、及びインビボ及びインビトロ腫瘍成長阻害を含む以下に記載のような他の試験法及び手順は本発明を理解する際に当業者には直ぐにあきらかであろう。
【0064】
活性に対するアッセイ
癌の場合、様々なよく知られた動物モデルを使用して腫瘍の発生及び病因における遺伝子の役割を理解し、本発明の化合物と抗血管新生抗体の組み合わせを含む候補治療剤の効能を試験することができる。そのようなモデルのインビボ特性により特にヒト患者における応答を予測することができる。腫瘍及び癌(例えば乳癌、大腸癌、前立腺癌、肺癌等々)の動物モデルには非組換え及び組換え(トランスジェニック)双方の動物が含まれる。非組換え動物モデルには、例えば齧歯類、例えばマウスモデルが含まれる。そのようなモデルは、標準的な方法、例えば皮下注射、尾部静脈注射、脾臓移植、腹腔内移植、腎臓カプセル下での移植、又はオルトピン(orthopin)移植、例えば大腸組織に移植された大腸癌細胞を使用して同系マウス中に腫瘍細胞を導入することによって産生することができる。例えば1997年9月18日に公開されたPCT公報番号WO97/33551を参照のこと。
【0065】
腫瘍学研究において最も頻繁に使用されている動物種はおそらくは免疫不全マウス、特にヌードマウスである。胸腺形成不全症/無形成症のヌードマウスがヒト腫瘍異種移植に対するヒトの宿主として成功裏に作用しうるという知見により、この目的に対してそれを広く使用することに至った。常染色体性劣性nu遺伝子が、例えばASW、A/He、AKR、BALB/c、B10.LP、C17、C3H、C57BL、C57、CBA、DBA、DDD、I/st、NC、NFR、NFS、NFS/N、NZB、NZC、NZW、P、RIII、及びSJLを含むヌードマウスの非常に多数の別個のコンジェニック株に導入されている。また、ヌードマウス以外に遺伝的な免疫学的欠陥を持つ広範な他の動物が育種され、腫瘍異種移植のレシピエントとして使用されている。更なる詳細については、例えば、The Nude Mouse in Oncology Research, E. Boven及びB. Winograd編 (CRC Press,Inc.,1991)を参照のこと。
【0066】
そのような動物に導入される細胞は、既知の腫瘍/癌細胞株、例えば上に列挙した腫瘍細胞株の任意のもの、及び例えばB104-1-1細胞株(neuプロトオンコジーンを形質移入した安定なNIH-3T3細胞株);ras形質移入NIH-3T3細胞;Caco-2(ATCC HTB-37);又は中程度によく分化したグレードIIヒト大腸腺癌細胞株、HT-29(ATCC HTB-38)から;又は腫瘍及び癌から取り出すことができる。腫瘍又は癌細胞の試料は、液体窒素での凍結及び貯蔵を含む標準的な技術を使用して、手術を受けている患者から得ることができる。Karmali等, Br. J. Cancer, 48: 689-696 (1983)。腫瘍細胞は、様々な手順でヌードマウスのような動物中に導入することができる。マウスの皮下(s.c.)空間は腫瘍の移植のために非常に適している。腫瘍は固形ブロックとして、外套針を用いる針生検として、又は細胞懸濁物として皮下移植することができる。固形ブロック又は外套針移植の場合、適切なサイズの腫瘍組織断片が皮下空間中に導入される。細胞懸濁物は原発性腫瘍又は安定な腫瘍細胞株から新鮮に調製され、皮下注射される。腫瘍細胞はまた皮下植え込みとして注入されうる。この位置では、真皮結合組織の下部と皮下組織の間に接種材料が配される。
【0067】
乳癌の動物モデルは、本質的にDrebin等, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 83: 9129-9133(1986)に記載されているようにして、例えば(neu発癌遺伝子が最初に単離された)ラット神経芽細胞腫細胞、又はneu形質転換NIH-3T3細胞をヌードマウスに移植することによって産生することができる。
同様に、大腸癌の動物モデルは、動物、例えばヌードマウスに大腸癌細胞を継代させ、これらの動物に腫瘍を出現させることによって産生することができる。ヌードマウスにおけるヒト大腸癌の同所性移植モデルは例えばWang等, Cancer Research, 54: 4726-4728 (1994)及びToo等, Cancer Research, 55: 681-684 (1995)によって記載されている。このモデルはAntiCancer, Inc. (San Diego, Calif.)によって販売されているいわゆる「METAMOUSE」TMに基づいている。
【0068】
動物に生じる腫瘍は除去し、インビトロで培養することができる。インビトロ培養からの細胞をついで動物に継代させることができる。そのような腫瘍は更なる試験又は薬剤スクリーニングの標的となりうる。あるいは、継代から生じる腫瘍は単離することができ、継代前細胞からのRNAと一又は複数回の継代後に単離された細胞について対象遺伝子の差次的発現を分析することができる。そのような継代技術は、任意の知られた腫瘍又は癌細胞株を用いて実施することができる。次の実施例は上述した発明を用いる方法を更に十分に記載し、並びに本発明の様々な態様を実施するために考えられる最良の形態を記載するものである。これらの実施例は本発明の真の範囲を決して限定するものではなく、むしろ例示目的のために提供されていることが理解される。
【0069】
実施例1
(-)塩化メンチルからの化合物IIa4-1の調製。 1.39グラムのMg金属(57mmol)を100mLフラスコに配し、4mLのドライTHFを添加してMg金属を被覆した。ヨウ素の結晶を金属-THF混合物に添加し、数分間撹拌した後、10グラム(57mmol)の(-)塩化メンチル(Aldrich)の約1/3部を添加した。混合物を加熱してグリニャール生成を誘導し、残りの塩化メンチル(2/3部)を50mLのドライTHFに添加し、反応が完了するまで撹拌した。ついで、グリニャール溶液を窒素下でカニューレで過剰のドライアイスを含む容器中に入れた。このドライアイスで急冷した混合物を旋回させ2mLの濃HClを含む300mLの氷中に注いだ。ジエチルエーテルを添加し混合物を分離した。分離した有機層を混合し、水で洗浄し、ついでNaOH水溶液で抽出した。水溶液(及び油)を固形物が形成されるまでHClで酸性化し、ジエチルエーテルを添加し、酸を有機相中に抽出し、鹹水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して白色針状物として4.18グラム(40%)を得た。
【0070】
酸(0.57グラム、3.1mmol)を1.5mLのジメチルアセトアミド(DMA)に溶解させた。PyBOP(2.1グラム、4.0mmol)、p-アニシジン(0.58グラム、4.7mmol、Aldrich)及びDiPEA(2.7mL、15.5mmol)を添加した。更に0.25グラムのp-アニシジンを2時間後に、更に5時間後に加えた。反応物を7時間後に酢酸エチル(EtOAc)で希釈し、1NのHClで2回、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、ついで鹹水で洗浄した。分離した有機層を混合し硫酸ナトリウムで乾燥させ、褐色固形物に濃縮させた。この固形物を30%EtOAc/ヘキサンを用いたシリカゲルプラグに通過させて色を除去した。濃縮時に生成物は結晶化し初め、結晶化を生じさせ、ピペットで溶媒を除去し、白色の針状物を冷EtOAcで洗浄し、真空乾燥させて0.365グラム(1.26mmol、40%収率)の最初の収穫物を得た。母液の再結晶化により白色針状物として更に0.346グラム(1.2mmol、39%収率)が得られた。
LCMSは、生成物が所望の分子量に対応する289の分子量を有していることを示し、NMRスペクトルはそれが所望の構造を有していることを示した。
【0071】
実施例2
選択された冷感誘起化合物に対する応答におけるイオンチャネル活性の証明−カルシウムチャネル取り込みの評価。 カルシウムイオンの取り込み実験を次のようにして実施した。Trp-p8腫瘍抗原を発現する細胞及びTrp-p8腫瘍抗原を発現しない細胞に対して、各細胞株を本発明の冷感誘起化合物に接触させた後に、カルシウムの取り込みを測定した。その結果は、冷感誘起化合物濃度が約0.0001から約10マイクロMまでの約5桁分の濃度にわたっての増分で増加すると、Trp-p8腫瘍抗原を発現する細胞がカルシウムの取り込みを漸次増加させることを示している。化合物(IIa4-1)は意外にも全ての冷感誘起化合物濃度で特に高いカルシウム取り込みを示した。腫瘍抗原を発現しない細胞は全ての冷感誘起化合物濃度にわたって観察可能なカルシウムの取り込みは本質的になかった。非冷感誘起化合物のジメチルスルホキシド(DMSO)を、発現細胞株と非発現細胞株の双方においてコントロール化合物として使用し、そのDMSO暴露細胞は何れの濃度でも有意なカルシウム取り込みを示さなかった。細胞株は非発現株:293、PC3、及びPC3/neo;及び腫瘍抗原発現株:293、PC3、及びPC3/neo。
【0072】
実施例3
Trp-p8を活性化させる化合物によるインビトロでのヒト細胞の死滅化。 図を参照すると、図1では、ヒト細胞死滅化における選択された冷感誘起化合物の効果を評価した。冷感誘起化合物のオーダーと強さを二つのヒト細胞株において比較した。一つはTrp-p8を発現する293細胞であり第二はコントロールとして使用したTrp-p8を欠く(発現しない)一致した293細胞であった。プレーティングの際にウェル当たり約50000細胞が存在していた。プレーティングの際に冷感誘起化合物を加えた。約0.1から約1000マイクロMの変動濃度で72時間、個々の化合物に細胞を暴露することによって細胞を処理した。x軸は濃度の増分を、y軸は72時間の終わりの時点で残っている生存細胞の数(任意単位)を示している。図1A及び1Cは示された番号又は名前の冷感誘起化合物で処理されたTrp-p8発現細胞の応答を示している。図1B及び1Dは、Trp-p8がなく(発現せず)、また示された冷感誘起化合物で処理された細胞の応答を示している。図1A及び1Cの結果は、Trp-p8のある細胞が冷感誘起化合物に対してある範囲の死滅応答又は能力を有していることを示している。化合物IIa4-1はTrp-p8発現細胞に対して最良の死滅度(IC50<1マイクロM)を有していた。図1B及び1Dの比較例の結果は、Trp-p8のない細胞が、特に冷感誘起化合物の低濃度、例えば100マクロモル濃度以下で、同じ冷感誘起化合物に対して低い死滅応答か又は本質的に死滅応答を示さなかったことを示している。
【0073】
実施例4
Trp-p8を活性化させる化合物による腫瘍成長のインビボでの阻害の手順。 Trp-p8を発現するもののようなトランスフェクト癌性細胞を調製する方法は当業者には直ぐに自明である。例えばJ.M. Schallhorn等, Nucleic Acids Res., 1996, Feb 15;24(4):596-601を参照のこと。図2には、胸腺欠損マウス(5百万細胞/マウス)において、腫瘍抗原を発現するようにトランスフェクトされたPC3クローン細胞(PC3/Trp-p8.c8及び.c9)、及び腫瘍抗原を発現しないPC3クローン細胞(PC3-Neo)の成長が示されている。非Trp-p8発現腫瘍形成ヒト前立腺癌細胞株PC3-Neo200(-●-)は期待された指数腫瘍成長速度を示している。これに対して、Trp-p8発現(つまり、「過剰発現」)腫瘍形成ヒト前立腺癌細胞株PC3/Trp-p8:.c8(クローン8)220(-■-);及び.c9(クローン9)230(-▲-)はそれぞれ大幅に遅い成長速度及び停滞した成長速度を示している。
胸腺欠損マウス(グループ当たり8)の側腹部にTrp-p8を安定に発現する約5x10のPC3クローン細胞(cl.8)又はベクターコントロール細胞株(PC3-Neo)を接種した。腫瘍をそれぞれおよそ200mgのサイズにさせて、その時点で、約1−30mg/kg体重の範囲の用量で一日あたり一回又は二回、静脈内又は経口的に投与する。腫瘍体積を三日毎にノギスによって測定し、平均体積を算定する。
上に例証したもののようなTrp-p8発現癌性細胞を、ここに例証したような本発明の中程度から高能力のある種の冷感誘起化合物にインビボで接触させると、Trp-p8発現癌性細胞では高い細胞死滅化率となることが、健常細胞又は非Trp-p8発現細胞に対しては細胞死滅化はないか又は低い細胞死滅化を示すことが予想される。この予想は実施例3に提供したインビトロでの上述のヒト細胞死滅化結果と一致している。
【0074】
表1は、上に述べたか又は以下に例証する選択された冷感誘起化合物に対する例示的イオンチャネル活性及び細胞死滅応答をまとめるものであり、その化合物に対する比較又は相対活性のランク付けを提供する。


【0075】
実施例5
式IIaの他の選択された化合物の調製。 次の調製化合物の実施例の各々に対して、実施例1のアミン(p-アニシジン)共反応物を精製時に主要産物として示した構造を有する化合物をつくり出すために対応のアミンで置換した以外は、実施例1を一般に繰り返した。次の実施例の各々に対する主要産物は、例えば示した分子量の回りに親のピークを有する質量スペクトルによって特徴付けられた。



表2に、293/Trp-p8.クローン18及び293/Trp-p8.クローン10に対する示したメンタンカルボキサミド化合物のIC50の結果をまとめる。

【0076】
実施例6
表3に、293/Trp-p8.クローン21に対する示したメンタンカルボキサミド化合物のIC50の二回の結果をまとめる。

【0077】
実施例7
担体物品、例えば商業的に入手できるか又は特注製作される移植可能な種又はペレットを、単独で又は他の化学療法剤又は他の医薬又は賦形剤と併用して、本発明の一又は複数の化合物を製剤化し、含浸させることができる。好適な製剤は例えば冷感誘起化合物に対して又は例えば前立腺癌治療に使用される他の成分に対して選択可能な持続放出特性を有しうる。前立腺癌のような治療的癌処置における非放射性持続放出移植片の例については、開示の全体が出典明示によりここに取り込まれる米国特許第5633274号を参照のこと。
【0078】
実施例8
次の例は、ヒトにおける治療的又は予防的使用のための、式I又はIIの化合物のような本発明の化合物(「化合物x」)を含む代表的な薬学的投薬形態を例証する。
(i)錠剤1 mg/錠剤
「化合物x」 100.0
ラクトース 77.5
ポビドン 15.0
クロスカルメロースナトリウム 12.0
マイクロクリスタリンセルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム 3.0
300.0
(ii)錠剤2 mg/錠剤
「化合物x」 20.0
マイクロクリスタリンセルロース 410.0
デンプン 50.0
デンプングリコール酸ナトリウム 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
500.0
(iii)カプセル mg/カプセル
「化合物x」 10.0
コロイド状二酸化ケイ素 1.5
ラクトース 465.5
ゼラチン化前処理デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
600.0
(iv)注射剤1(1mg/ml) mg/ml
「化合物x」 1.0
二塩基性リン酸ナトリウム 12.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.7
塩化ナトリウム 4.5
1.0Nの水酸化ナトリウム溶液
(pHを7.0-7.5に調整) 適量
注射用水 1mLまで適量添加
(v)注射剤2(10mg/ml) mg/ml
「化合物x」 10.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.3
二塩基性リン酸ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
1.0Nの水酸化ナトリウム溶液
(pHを7.0-7.5に調整) 適量
注射用水 1mLまで適量添加
(vi)エアゾール mg/缶
「化合物x」 20.0
オレイン酸 10.0
トリクロロモノフルオロメタン 5000.0
ジクロロジフルオロメタン 10000.0
ジクロロテトラフルオロエタン 5000.0
上記の製剤は薬学的分野においてよく知られている常套的手順によって得ることができる。
【0079】
実施例9
併用療法−同時投与。 次の例は、ヒトにおける治療的又は予防的使用のための、抗体(集合的に「組成物y」)と直接組み合わせて(混合)本発明の化合物を含む代表的な薬学的投薬形態を例証する。よって、例えば本発明の化合物、例えば式I又はIIの化合物が、抗体、例えば抗VEGF抗体と混合される。得られた組み合わせ「組成物y」を、実施例8の上述の注射用製剤の一又は複数における「化合物x」の代わりにする。上記の製剤は薬学的分野においてよく知られている常套的手順によって得ることができる。
【0080】
実施例10
併用療法−連続投与。 次の例は、例えばヒトにおける治療的又は予防的使用のための、抗体(「抗体z」)との連続的併用での、本発明の化合物(「化合物x」)を含む代表的な薬学的投薬形態を例証する。よって、本発明の化合物、例えば式I又はIIの化合物が、抗体、例えば抗VEGF抗体と共に連続的に投与される。例えば、連続的に投与される組み合わせは、本発明の化合物(「化合物x」)の最初の投与が実施例7又は8の上述の製剤の何れかであり、その後に抗体(「抗体z」)の第二の注射による投与が続く。あるいは、「抗体z」が最初に投与され、次に「化合物x」が投与される。上記の製剤は薬学的分野においてよく知られている常套的手順によって得ることができる。
【0081】
実施例11
抗体の調製のための方法、実施例、及び更なる文献、及び抗原特異性、エピトープマッピング、アイソタイプ決定、結合親和性を含む抗体の特徴付けは、上述の米国特許第6582959号に開示されている。
全ての刊行物、特許及び特許文献は、あたかも個々に出典明示により取り込まれるかのようにその全体が出典明示によりここに取り込まれる。本発明を様々な特定の好適な実施態様及び技術を参照して記述した。しかしながら、本発明の精神と範囲内にありながら多くの変形と変更を行うことができることが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1A】図1Aは、Trp-p8を発現しないヒト細胞の相対的無感受性と比較してTrp-p8を発現するヒト細胞の死滅化における本発明の選択された冷感誘起化合物の効果を例証する。
【図1B】図1Bは、Trp-p8を発現しないヒト細胞の相対的無感受性と比較してTrp-p8を発現するヒト細胞の死滅化における本発明の選択された冷感誘起化合物の効果を例証する。
【図1C】図1Cは、Trp-p8を発現しないヒト細胞の相対的無感受性と比較してTrp-p8を発現するヒト細胞の死滅化における本発明の選択された冷感誘起化合物の効果を例証する。
【図1D】図1Dは、Trp-p8を発現しないヒト細胞の相対的無感受性と比較してTrp-p8を発現するヒト細胞の死滅化における本発明の選択された冷感誘起化合物の効果を例証する。
【図2】Trp-p8を発現しないコントロール細胞株(PC3-Neo)と比較したTrp-p8を発現するクローン化癌性細胞株(PC3/Trp-p8)に対する相対成長速度を例証する。図中、● PC3-Neo n=4/4 ■ PC3/Trp-p8.c8 n=5/5 ◆ PC3/Trp-p8.c9 n=1/5。■と◆はTrp-p8を発現する腫瘍形成ヒト前立腺癌細胞株。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の冷感誘起化合物に癌性細胞を接触させることを含んでなる癌の治療方法。
【請求項2】
冷感誘起化合物が、式(I−XIII)の化合物:

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、Het、又はアリールである);

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールである);

(上式中、R、R、及びRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールである);

(上式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して直鎖状又は分枝状のアルキル又はシクロアルキルである);

(上式中、Rは-OH、-S(O)R、-P(=O)R、-COH、-C(=O)NH、-OC(=O)-CH(OH)-CH、-C(=O)OC2n-OH(ここでnは1−4である)、-NR-C(=O)NR、-SO、-SONR、-SONRであり、RとRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、RはHであり、あるいはRとRはそれらが結合した炭素原子と共に、式-OCH-CH(CH-OH)-O-のヒドロキシメチル置換基を有していてもよい5員ケタール環である);
基VIの(-X)置換環状又は分枝状炭化水素から選択されるコア:

(上式中、XはN-アルキルカルボキシアミド、-C(=O)NR(ここで、RとRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、酸素(-O-)環ヘテロ原子で置換されていてもよい5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環である);

(上式中、XはN-アルキルカルボキシアミド、-C(=O)NHR(ここで、Rはアルキル又は置換アルキル、又はアルキルスルホンである);
式VIIIのアルキル置換尿素:

式IXのシクロペンテノン化合物:

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、モルホリノ環のように、酸素(-O-)環ヘテロ原子で置換されていてもよい5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、該環は場合によってはアルファ-COH又はアルファ-COCH置換基で置換され得、R、R、及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルである)
式Xのシクロヘキセノン化合物:

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、R、R、R、及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルである)
式XIの不飽和ラクトン化合物:

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合した窒素原子と共に、5員又は6員の飽和又は不飽和の複素環式(Het)環であり、R及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルである)
式XIIの化合物:

(上式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキルであるか、あるいはRとRは共に5員又は6員の飽和又は不飽和環を形成し、R及びRはそれぞれ独立してH又はアルキルである)
式XIIIの化合物:

(上式中、RからRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、Rは-OH、-S(O)R、-P(=O)R、-COH、-C(=O)NH、-OC(=O)-CH(OH)-CH、-C(=O)OC2n-OH(ここでnは1−4である)、-NR-C(=O)NR、-SO、-SONR、又は-SONRであり、RのRとRはそれぞれ独立してH、アルキル、又はアリールであり、RはHであり、あるいはRとRはそれらが結合した炭素原子と共に、式-OCH-CH(CH-OH)-O-のヒドロキシメチル置換基を有していてもよい5員ケタール環である);及び
式(I−XIII)の2以上の化合物の組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌性細胞を抑制又は死滅させる方法において、治療的有効量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩を細胞に投与することを含んでなる方法。
【請求項4】
癌性細胞においてアポトーシスを生じさせる方法において、治療的有効量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩に細胞を接触させることを含んでなる方法。
【請求項5】
Trp-p-8レセプターが関係しレセプター機能の調節が望まれる哺乳動物における疾患又は症状を治療する方法において、有効調節量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項6】
哺乳動物におけるTrp-p-8レセプター関連症状を治療又は予防する方法において、治療的有効量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項7】
式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤を含有する薬学的組成物。
【請求項8】
医療診断又は治療での使用のための、式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項9】
医療診断又は治療がTrp-p-8レセプター関連疾患又は症状の治療又は予防である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
疾患又はTrp-p-8レセプター関連症状を治療又は予防するために有用な医薬を調製するための、式(I−XIII)の化合物の使用。
【請求項11】
癌を治療する方法において、有効量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与することを含んでなる方法。
【請求項12】
Trp-p-8レセプター機能の調節方法において、有効調節量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
Trp-p-8レセプター機能の調節方法において、有効調節量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩にTrp-p-8レセプターを接触させることを含んでなる方法。
【請求項14】
癌性細胞においてアポトーシスを誘発させる方法において、有効量の式(I−XIII)の化合物、その組み合わせ、又はその薬学的に許容可能な塩を患者に投与して、細胞においてアポトーシスを生じさせることを含んでなる方法。
【請求項15】
癌が腫瘍抗原を発現する腫瘍形成ヒト前立腺細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
アポトーシスを生じさせ、血管新生を阻害し、又はその双方をなす抗体との併用で、冷感誘起化合物を投与することを更に含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
疾患又はTrp-p-8レセプター関連症状の治療又は予防に使用される少なくとも一種の更なる化学療法剤の有効量と併用される、式(I−XIII)の化合物、又はその薬学的に許容可能な塩。
【請求項18】
化学療法剤がVEGF抗体である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
式(I−XIII)の化合物が、
3-(2-ヒドロキシ-フェニル)-6-(3-ニトロ-フェニル)-3,4-ジヒドロ-1H-ピリミジン-2-オン;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-メトキシ-フェニル)-アミド;
2-イソプロピル-2,3,N-トリメチル-ブチルアミド;
1-(sec-ブチル-イソブチル-ホスフィノイル)-ヘプタン;及び
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサノール;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4モルホリン-4-イル-フェニル)-アミド;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(3-クロロ-4-メトキシフェニル)-アミド;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-sec-ブチル-フェニル)-アミド;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸インダン-5-イルアミド;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-tert-ブチル-フェニル)-アミド;
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-プロピル-フェニル)-アミド;及び
2-イソプロピル-5-メチル-シクロヘキサンカルボン酸(4-イソプロピル-3-メチル-フェニル)-アミド、
又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
式IIa:

{上式中、
がH、又は(C-C)アルキルであり;
がフェニル又は式(-PhR

(ここで、
、R、R、及びRはそれぞれ独立して-H、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、又はハロであり;
はハロ、(C-C)アルキル、(C-C12)シクロアルキル、(C-C)アルコキシ、-C(=O)(C-C)アルキル又は(C-C)アルカノイルであり;
又はRは-NR(ここで、RとRはそれぞれ独立して-H、(C-C)アルキルであるか、あるいはRとRはそれらが結合する窒素と共に、モルホリノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペルジノ、インドリノ、ベンズイミダゾリノ、アゼチジノ、アジリジノ、アゼピノ、1,4-オキサジノ、又はチオモルホリノ環を形成する)であり;
又はRとRが、それらが結合するフェニルと共に、4から7の原子を有する環を形成し、該環は1から3の不飽和を有する)
の置換フェニルである}の化合物;及び
その立体異性体形態、立体異性体形態の混合物;
又はその薬学的に許容可能な塩であって、
但し、-PhRのR、R、R、及びRが-Hである場合、Rは-CH、-OCH、-OH、-F、又は-NO以外であり;
但し、Rは3-ヒドロキシ-4-メチル-フェニル以外であり;更に
は2-ヒドロキシ-ナフチル、又はピリジル以外である化合物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236842(P2012−236842A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−168002(P2012−168002)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2006−518825(P2006−518825)の分割
【原出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】