説明

UVルミネセンス化合物のポリマー材料への組み込み方法

本発明は、繊維を、(a)UV吸収基を少なくとも1個有する有機アニオン配位子を3個含有するルミネセンスランタニドキレート1種以上、および(b)溶剤1種以上を含む組成物で処理することを特徴とするルミネセンス紡織繊維の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はUVルミネセンスポリマー材料の製造方法およびその使用に関する。
【0002】
セキュリティマーキングとして、特別な効果として、または装飾として働きうる、UV照射のもとでだけ見えるようになる隠密効果(covert effect)を、織物に与えることへのニーズがある。
【0003】
したがって、本発明の目的は、肉眼では見えないが、UV照射のもとでは強いルミネセンスを生じる物質を含む染色用組成物を提供することであり、該組成物は羊毛、絹、セルロース系材料、天然および合成繊維などの織物を含むポリマー材料の従来の染色用途全てに、ならびに生地およびプラスチック用途に用いる物を含むポリマー材料の練込み染色(mass dyeing)に使用できる。
【0004】
本発明はルミネセンスポリマー繊維を製造する方法であって、繊維を
(a)UV吸収基を少なくとも1個有する有機アニオン配位子を3個または4個含有する、ルミネセンスランタニドキレート1種以上、および
(b)溶剤1種以上
を含む組成物で処理することを特徴とする方法に関する。
【0005】
好ましくは、成分(a)は、式(I):
m−Ln3+(Ch-n (I)
(式中、Lnはランタニドを表し、
Ch-はUV吸収二重結合を少なくとも1個含有する負に荷電した配位子であり、
nは3または4を意味し、mは0〜4の数を意味し、
nが3の場合には、mは0〜4の数を意味し、Lは窒素、酸素または硫黄を含有する中性の単座または多座配位子であり、
nが4の場合には、mは1を意味し、Lは1価に荷電したカチオンである)の化合物である。
【0006】
より好ましくは、成分(a)は式(II)、(III)または(IV)
【0007】
【化4】

【0008】
(式中、Lnはランタニドを表し、
nは3または4を意味し、mは0〜4の数を意味し、
nが3の場合には、mは0〜4の数を意味し、Lは窒素、酸素または硫黄を含有する中性の単座または多座配位子であり、
nが4の場合には、mは1を意味し、Lは1価に荷電したカチオンであり、
2は水素またはC1〜C6アルキルであり、
1およびR3は互いに独立に水素、C1〜C6アルキル、CF3、C5〜C24アリールまたはC4〜C24ヘテロアリールである)の化合物である。
【0009】
式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物は、基本的に窒素、酸素または硫黄を含有する中性の単座または多座配位子、たとえば、非置換または置換ピリジン、ピラジン、ピペリジン、キノリン、アニリン、ビピリジン、フェナントロリン、ターピリジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ビスイミダゾール、ビスベンゾイミダゾール、ピリミジン、ビピリミジン、ナフチリジン、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンポリアミン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ホスフィン−オキシド誘導体(トリアルキルまたはトリアリール)、トリアジン、ビストリアジン、オキサゾール、ビスオキサゾール、オキサゾリン、ビスオキサゾリンおよびこれらの置換誘導体、ならびに上で挙げた配位子の適当な(ポリ)N−オキシド誘導体の全てのいずれかを含有することができる。
【0010】
nが3を意味し、Lが窒素を含有する配位子である、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物が、特に好ましい。
【0011】
Lは、たとえば4,4’−ビピリジルのようなポリキレート配位子(polychelating ligand)であることができるので、式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物には多金属キレート(multimetallic chelate)、たとえば二座配位子を介してつながった2個のMIII−(ジケトン)3またはMIII−(カルボキシレート)3単位を含有する、式(XIII)および(XIV):
【0012】
【化5】

【0013】
の化合物が含まれる。
【0014】
nが4を意味する場合、1価に荷電したカチオンとしてのLは、基本的に任意の金属カチオン(たとえばLi+、K+、Na+)、非置換もしくは置換アンモニウム(たとえばNH4+、ポリアルキルアンモニウム)または上述したような任意のプロトン化もしくはアルキル化単座または多座配位子であることができる。
【0015】
好適な正に荷電した配位子は、ピペリジニウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、特にトリアルキルアンモニウムである。
【0016】
トリエチルアンモニウムが特に好ましい。
【0017】
Lが式(V)〜(XII):
【0018】
【化6】

【0019】
の化合物であるか、式:H−N+(R73のカチオンである(式中、R4、R5およびR6は互いに独立に水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C5〜C24アリール、C6〜C24アラルキル、C1〜C6アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノまたは環状アミノ基であり、R7は水素、C1〜C6アルキル、C5〜C24アリール、C6〜C24アラルキルまたはビニルである)、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物が特に好ましい。
【0020】
置換基R1〜R7としてのアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。例としてメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n−ヘキシルおよびイソヘキシルが挙げられる。
【0021】
置換基R4〜R6としてのアルコキシ基は、たとえばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシまたはt−ブトキシであることができる。
【0022】
5〜C24アリール基の例は、フェニル、トリル、メシチル、イシチル、ジフェニル、ナフチルおよびアントリルである。フェニルが好ましい。
【0023】
ヘテロアリール基は、4個または5個の炭素原子、ならびにO、SおよびNから選択する1個または2個のヘテロ原子を含有するのが好ましい。例えばピロリル、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、プリニルまたはキノリルである。
【0024】
置換基R4〜R7としてのアラルキル基は、たとえばベンジル、2−フェニルエチル、トリルメチル、メシチルメチルおよび4−クロロフェニルメチルであることができる。
【0025】
適切なジアルキルアミノ基は、たとえばジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジ−n−プロピルアミノ、N−メチル-N−エチルアミノ、特にジメチルアミノまたはピロリジノである。
【0026】
適切な環状アミノ基はピロリジノおよびピペリジノである。
【0027】
置換基R4〜R6としてのハロゲン原子は、フッ素、塩素または臭素が好ましいが、特に塩素である。
【0028】
本発明による好ましい組成物は、成分(a)として式(II)〔式中、Lは式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)(式中、R4、R5およびR6は水素、メチル、アミノ、ピロリジノまたはジメチルアミノである)の化合物であるか、Lは式:H−N+(R73(式中、R7はC1〜C6アルキルである)のカチオンである〕の化合物を含有する。
【0029】
好ましい成分(a)は、式(I)、(II)、(III)または(IV)(式中、LnはEu、Tb、Dy、SmまたはNdである)の化合物である。
【0030】
さらに、R1およびR3がメチル、t−ブチル、n−ペンチルまたはフェニルである、式(II)および(III)の化合物が好ましい。
【0031】
式(II)では、R2は水素であるのが好ましい。
【0032】
成分(a)として特に好ましいのは、式(XIII)〜(CVI):
【0033】
【化7】





【0034】
の化合物である。
【0035】
前記したタイプIの好ましい構造から誘導した、タイプIIおよびIIIの構造の好ましい誘導体のいくつかを下の表にまとめる。
【0036】
【表1】

【0037】
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
【0038】
さらに適切なランタニドキレートは、
DMAPの代わりにピリジン、アミノピリジン、ピロリジノピリジン、メチルピリジン、メトキシピリジン、ピリジン-N−オキシド、ビピリジン、フェナントロリン、イミダゾール、あるいはN、OもしくはSを含有する他の誘導体または類似体の単座もしくは多座配位子のいずれかを、
Et3NH+の代わりにピペリジニウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、ピリジニウム、またはNを含有する他の類似体のプロトン化種のいずれかを
含有することができる。
【0039】
特定の用途の場合、異なるランタニドの組み合わせ、たとえばEuとTbを使用することが勧められる。このような混合物は、隠された色合いのセキュリティの度合い、セキュリティレベルの高度化を高め、コード化の可能性を増加させる。
【0040】
式(I)、(II)、(III)および(IV)の化合物は、たとえばWO96/20942およびC.R. Hurt et al., Nature 212, 179-1808(1966) から知られており、あるいはそれ自体公知の方法で製造することができる。たとえば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、ジピバロイルメタン、サリチル酸、吉草酸、カプロン酸などの配位子を、適切な条件下で希土類金属ハロゲン化物、たとえばランタニドトリクロリドと反応させて希土類金属キレートを製造することができる。さらに窒素、酸素または硫黄を含有する単座または多座配位子Lと反応させ、こうして式(I)、(II)、(III)および(IV)の希土類金属キレート化合物を与える。
【0041】
ルミネセンスランタニドキレートは、粉末として、溶液として、または分散液として適用することができる。
【0042】
したがって、成分(b)は水、有機溶剤、2種以上の有機溶剤の混合物、または水と有機溶剤1種以上との混合物であることができる。
【0043】
成分(b)は、水、水混和性の有機溶剤1種以上、または水と水混和性の有機溶剤1種以上との混合物であるのが好ましい。
【0044】
適切な有機溶剤にはアルコール、グリコール、エーテルアルコール、スルホキシド、アミド、アミン、複素環溶剤、ケトン、エーテル、エステル、ニトリルならびに脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素が含まれる。
【0045】
適切な有機溶剤の例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、エトキシブタノール、2−ブトキシエタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、2−ブタノン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、エチルプロピオネート、アセトニトリル、ピリジン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンである。
【0046】
水混和性の有機溶剤は、脂肪族アルコール、エーテルアルコール、グリコール、脂肪族ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、脂肪族ニトリル、脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族スルホキシドが好ましい。
【0047】
特に好ましい水混和性の有機溶剤は、エタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0048】
本発明による組成物は、成分(a)および(b)に加えて、着色剤(c)を1種以上含むことができる。
【0049】
適切な着色剤は、種々の顔料と染料の混合物を含む、周知の顔料および染料である。
【0050】
本発明による組成物では、成分(a)および(b)、ならびに適切な場合には(c)および/またはさらなる成分(d)の量を、広い範囲で変えることができる。
【0051】
練込み染色法の場合、本発明による組成物は、成分(a)からなる。場合により、ポリマー材料にUVルミネセンスに加えて追加の特性を同時に与えるため、(a)と一緒に、さらなる成分(c)および/または(d)を加えることもできる。
【0052】
染色工程に好適な組成物は、成分(a)+(b)の合計量に基づいて、成分(a)を0.01〜20.0%、より好ましくは0.05〜10%、特に0.1〜5.0重量%、成分(b)を80.0〜99.99重量%、より好ましくは90.0〜99.95重量%および特に95.0〜99.9重量%含有する。
【0053】
成分(c)の量は、基材のタイプならびに特定の顔料または染料に依存する。有利な量は繊維の重量に基づいて、通常、着色剤0.01%〜15重量%、特に0.1%〜10重量%である。
【0054】
本発明による組成物中に存在してもよい、さらなる成分(d)は、たとえば蛍光増白剤、殺生剤、殺菌剤、殺カビ剤、殺虫剤および芳香剤である。
【0055】
ランタニドキレートを1種以上含有する組成物は、当業者に知られている任意の適切な方法により製造することができる。たとえば、組成物の成分を適切なミキサーまたはブレンダー中で合わせて混合することができる。
【0056】
本発明による組成物は、製品化された天然、人工および特に合成疎水性材料、特に繊維材料に含浸させるのに有効である。
【0057】
このような製品化された天然ポリマーまたは合成疎水性繊維材料を含む織物のブレンド布で構成される繊維材料は、同様に本発明の組成物で含浸させることができる。
【0058】
有用な製品化された天然ポリマー繊維材料は、特に羊毛、木綿、絹、セルロースアセテートおよびセルローストリアセテートである。
【0059】
合成疎水性繊維材料は、特に直鎖状芳香族ポリエステル、たとえばテレフタル酸とグリコール、特にはエチレングリコールとから形成されたポリエステル、またはテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの縮合物;ポリカーボネート、たとえばα,α-ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンとホスゲンから形成されたポリカーボネート;またはポリ塩化ビニルまたはポリアミドを主成分とする繊維である。
【0060】
本発明による配合物は、既知の染色法にしたがって繊維材料に適用する。たとえばポリエステル繊維は、通常のアニオンまたはノニオン分散剤の存在下で、通常のキャリヤを用いて、あるいは用いずに、水性分散液から、温度80〜140℃、好ましくは120〜135℃で吸尽染色する。セルロースアセテートは60〜85℃で染色するのが好ましく、セルローストリアセテートは115℃までである。
【0061】
本発明により用いる配合物は、サーモゾル、吸尽法および連続法による染色ならびに捺染法に有効である。吸尽法が好ましい。浴比は、装置、基材および組成形態に依存する。浴比は広い範囲、たとえば4:1〜100:1の範囲にあるように選択することができるが、好ましくは6:1〜25:1である。
【0062】
言及した繊維材料は、たとえば繊維、糸またはウエブとしてあるいは織物またはループ形成メリヤス生地として、種々の加工形態で存在できる。
【0063】
本発明のルミネセンスランタニドキレートは、プラスチックの練込み染色に同様に有用である。
【0064】
したがって、本発明はさらに、プラスチック材料の量に基づいて、式(I)、(II)、(III)または(IV)の化合物0.01〜10.0重量%の存在下で、プラスチック材料を押出すことを特徴とするルミネセンスプラスチックの製造方法に関する。
【0065】
練込み染色に有効なプラスチックには、たとえば、誘電率≧2.5である染色可能な高分子量有機材料(ポリマー)、特にポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン/アクリロニトリル(SAN)またはアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)が含まれる。ポリエステルおよびポリアミドが好ましい。テレフタル酸とグリコール、特にエチレングリコールとの重縮合により得られる直鎖状芳香族ポリエステル、またはテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンとの縮合物、たとえばポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBTP);ポリカーボネート、たとえばα,α-ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンとホスゲンから形成されたポリカーボネート;ポリ塩化ビニルまたはポリアミドを主成分とするポリマー、たとえばナイロン6またはナイロン6.6、ポリスチレン(PS)またはポリプロピレン(PP)が特に好ましい。
【0066】
直鎖状芳香族ポリエステル、たとえばテレフタル酸とグリコール、特にエチレングリコールとから形成された直鎖状芳香族ポリエステル、またはテレフタル酸と1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンの縮合物、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)またはポリスチレン(PS)を主成分とするプラスチックが、とりわけ好ましい例としてあげられる。
【0067】
プラスチックは、たとえば、ロールミルまたは混合もしくは粉砕装置を用いて、成分(a)によるルミネセンスランタニドキレートをその基材に混合することにより染色し、それによりランタニドキレートをプラスチック中に溶解または微分散させる。次に、染料と混合したプラスチックを従来の方法、たとえば圧延、プレス、押出、塗布、スピニング、キャスティングまたは射出成形で加工し、それにより染色した材料はその最終の形状を得る。成分の混合は、実際の加工工程の直前に、たとえば粉末の固体、ランタニドキレートおよび粒状または粉末のプラスチック、ならびに場合により追加の物質、たとえば添加剤なども同時に、直接、押出機の入り口ゾーンに連続的に計量供給することにより行うこともでき、そこで加工のすぐ前に混合が起こる。しかし、一般に先にランタニドキレートをプラスチックに混合するのが好ましく、それは、より均一に含浸した基材が得られるからである。
【0068】
本発明はさらに、上述した方法で製造したルミネセンス紡織繊維およびルミネセンスプラスチックに関する。
【0069】
本発明は、種々の無色、白色、淡色または暗色基材に、UV照射のもとで現れることができる、無色または有色の隠されたマークを組み入れることを可能にする。
【0070】
本特許請求の方法は、信用書類(fiduciary documents)または他の材料に適用することができるセキュリティ繊維(security fibres)またはセキュリティ糸(security threads)の製造に特に有効である。
【0071】
セキュリティ繊維は、同一であることの確認、認証や、模造、模倣または偽造からの保護を確保する目的で、信用書類または他の材料に組み入れられる。セキュリティ糸は、セキュリティ繊維と同じ目的で信用書類に導入された、連続糸またはフィルムのストリップである。
【0072】
表現「信用書類」は、紙、たとえば銀行券、小切手、株、紙幣、切手、公文書、身分証明書、パスポート、記録本、ノート、チケット、バウチャー、ブリティン、会計帳簿用の紙、ならびにクレジット、支払い、アクセスまたは多機能カード、必然的に高度なセキュリティを包含する同様の書類を意味する。
【0073】
セキュリティ繊維またはセキュリティ糸の製造は、たとえば、U.S. Patents No. 4,655,788, No. 5,759,349 およびNo. 6,045,656, EP-A 185 396 EP-A および1 013 824に記載されているような既知の方法で行うことができる。
【0074】
ランタニドキレート化合物の組み込みは、従来の染色または印刷法により行うことができる。
【0075】
本特許請求の方法に適切な繊維は、木材または植物パルプ、セルロースパルプ、木綿、リネンまたは合成繊維から得ることができる。
【0076】
紙繊維または合成繊維を使用するのが好ましい。
【0077】
特に好ましい実施態様では、請求項1記載の方法は抗偽造の書類、カード、小切手または銀行券の製造に使用する。
【0078】
本発明による組成物は、顕著なルミネセンス量子収率、長く続くルミネセンスおよび高いルミネセンス強度で、従来の類似組成物から区別される。
【0079】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0080】
インク組成物A
1,2−プロピレングリコール中の化合物(XVII)の濃縮物
【0081】
【化8】

【0082】
化合物(VIII)1gを1,2−プロピレングリコール99gに、100℃で1時間加熱して溶解させた。透明な黄色溶液を放冷し、ろ過(清澄法)した後に、UV光のもとで強い赤色ルミネセンスを示す安定なインク組成物Aを与えた。この濃縮物はさらに、溶剤系または水系のいずれかで、紙、織物、皮革、木材、プラスチックまたは他の適合した基材用の、従来または先端技術(インクジェット)の印刷配合物に用いることができる。
【0083】
実施例1
交互循環染色装置(Callebault de Blicquy)でセルロースボビン(0.75kg 木綿糸40tex)の含浸を、浴比1対10で、35℃で20分間行った(3分サイクル)。浴は、2−ブトキシエタノール中に式(XVII)
【0084】
【化9】

【0085】
の化合物4.5%を含有する。
【0086】
ボビンの処理、遠心分離および自然乾燥後、UV光のもとで強い赤燈色の蛍光が観察された。
【0087】
実施例2
絹糸(10g)の含浸を、実施例1での記載と同じ溶液および繊維材料に対する浴比で、25℃で10〜60分行った。糸の処理、遠心分離および自然乾燥後、UV光のもとで強い赤燈色蛍光が現れた。
【0088】
実施例3
合成、人工、天然(植物および動物)繊維の別個の帯を数種類含有するパッチワーク布(20g)の含浸を、実施例1での記載と同じ溶液および繊維材料に対する浴比で、25℃で10〜60分行った。パッチワークの処理、遠心分離および自然乾燥後、ほとんどの繊維でUV光のもとで強い赤燈色の蛍光が現れた。
【0089】
UV照射のもとで他の発光波長を示す他のランタニド錯体(たとえばテルビウム、ジスプロシウム、サマリウム、ネオジム)を用いる同様の方法から、同等の結果が得られた。
【0090】
実施例4
ポリエステル(PES)フィラメントの高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、PESフィラメント(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0091】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解した式(XVII)のランタニド錯体3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0092】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理したPESフィラメントは、365nmでの照射のもとで強い赤燈色の蛍光を示した。
【0093】
実施例5
ベルベットPES布の高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、ベルベットPES布(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0094】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解した式(XVII)のランタニド錯体3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0095】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理したPESフィラメントは、365nmでの照射のもとで強い赤燈色の蛍光を示した。
【0096】
実施例6
ベルベットPES布の高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、白色ベルベットPES布(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0097】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタンド錯体(XV)
【0098】
【化10】

【0099】
3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0100】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理したベルベットPES布は白色であり、254nmでの照射のもとで強い緑色の蛍光を示した。
【0101】
実施例7
ポリアミド(PA)トリコットの高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する250mL漏れ防止がされたボトルに、PAトリコット(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0102】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XVII)3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0103】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理したPAトリコットは、365nmでの照射のもとで強い赤燈色の蛍光を示した。
【0104】
実施例8
PAトリコットの高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、白色PA トリコット(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0105】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XV)3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0106】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理したPAトリコットは白色であり、254nmでの照射のもとで強い緑色の蛍光を示した。
【0107】
実施例9
無色透明なPA糸の高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、無色透明なPA糸(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0108】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XVII)3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0109】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥した。このように処理した透明なPES糸は、365nmでの照射のもとで強い赤燈色の蛍光を示した。
【0110】
実施例10
練込み染色法によるポリアミド(PA)への式(XVII)の組み込み
Ultramid B3Kをランタニド錯体(XII) 2%の存在下、260℃で2分間押出すと、365nmでの照射に対して赤燈色の蛍光をもたらした。
【0111】
実施例11
練込み染色法によるポリスチレン(PS)への式(XVII)の組み込み
Polystyrol H165をランタニド錯体(XVII) 2%の存在下、300℃で5分間押出すと、365nmでの照射に対して赤燈色の蛍光をもたらした。
【0112】
実施例12
練込み染色法によるポリプロピレン(PP)への式(XVII)の組み込み
ポリプロピレン粒子(200g)と化合物(XVII)(2g)の均質化混合物を3mmケーブル押出機の融解チャンバー(200℃)に入れた。水浴で冷却した後、得られた硬いケーブルを再び粒子に切断し、これを今度はフィラメント押出機の融解チャンバー(230℃)に入れた。このように得た透明なマルチフィラメントの細いポリプロピレン糸(8dtex)は、365nmでの励起に対して強い赤燈色の蛍光を示した。
【0113】
実施例13
練込み染色法によるポリプロピレン(PP)への式(XVII)の組み込み
化合物(XVII)と共に二酸化チタンを同時に用いて、同様の方法で同様の蛍光特性を得た。
【0114】
実施例14
練込み染色法によるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)への式(XVII)の組み込み
Plexiglas 6Nをランタニド錯体(XVII) 2%の存在下、260℃で5分間押出すと、365nmでの照射に対して赤燈色の蛍光をもたらした。
【0115】
実施例15
練込み染色法によるアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)への式(XVII)の組み込み
Terluran 877Mをランタニド錯体(XVII) 2%の存在下、220℃で5分間押出すと、365nmでの照射に対して赤燈色の蛍光をもたらした。
【0116】
実施例16
有色PES細糸の高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、細いシアン色PES糸〔Irgalite Blue GLGP(C.I.Pigment Blue 15:3)、二酸化チタン(C.I.Pigment White 6)およびカーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)の混合物で予め練込み染色した〕(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0117】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XV)3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0118】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理した細いシアン色PES糸はシアン色であり、254nmでの照射のもとで強い緑色の蛍光を示し、365nmでの照射のもとでは蛍光を示さなかった。
【0119】
実施例17
有色PES細糸の高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、細い黒色PES糸〔二酸化チタン(C.I.Pigment White 6)およびカーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)を含有する顔料混合物で予め練込み染色した〕(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0120】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XV)3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0121】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理した細い黒色PES糸は黒色であり、254nmでの照射のもとで強い緑色の蛍光を示し、365nmでの照射のもとでは蛍光を示さなかった。
【0122】
実施例18
有色PES細糸の高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、細い黄色PESフィラメント〔Filester Yellow RNB(C.I.Pigment Yellow 147)で予め練込み染色した〕(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0123】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XV)3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0124】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理した細い黄色PES糸は黄色であり、254nmでの照射のもとで強い黄緑色の蛍光を示し、365nmでの照射のもとでは蛍光を示さなかった。
【0125】
実施例19
PESフィラメントの高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、PESフィラメント(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0126】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XXI)
【0127】
【化11】

【0128】
3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0129】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理したPESフィラメントは、365nmでの照射のもとで強い赤燈色の蛍光を示した。
【0130】
実施例20
PESフィラメントの高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、白色PESフィラメント(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0131】
染色浴は次の2種の溶液:
〇ランタニド錯体(XX)
【0132】
【化12】

【0133】
2%を含有するNMP懸濁液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0134】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後、糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理した白色PESフィラメントは白色であり、254nmでの照射のもとで桃赤色の蛍光を示し、365nmでの照射のもとでは蛍光を示さなかった。
【0135】
実施例21
PESフィラメントの高温染色(HTD)(135℃、60分)
染色浴200mlを含有する漏れ防止がされた250mLボトルに、白色PESフィラメント(10g)を入れた(すなわち、浴比1対20)。
【0136】
染色浴は次の2種の溶液:
〇NMPに溶解したランタニド錯体(XXII)
【0137】
【化13】

【0138】
3〜5%を含有する溶剤系溶液(5〜30ml)
〇・Univadin DP(Ciba Specialty Chemicals)0.6g/L
・Cibatex AB 45(Ciba Specialty Chemicals)2.5g/L
・炭酸水素ナトリウム0.4g/L
を含有する水溶液(pH=4.5)(195〜170ml)
の混合物として調製した。
【0139】
ボトルを出発浴温度70℃の回転高温染色オートクレーブに装着した。次に温度を30分かけて135℃まで上げ、さらに1時間変動せず保った。最後に処理温度を15分かけて40℃まで下げ、その後糸をボトルから取り出し、温水(35℃)で5分間すすぎ、遠心脱水し、さらに熱風(90〜105℃)で乾燥させた。このように処理した白色PESフィラメントは白色であり、254nmでの照射のもとで緑色の蛍光を示し、365nmでの照射のもとでは蛍光を示さなかった。
【0140】
実施例22
PESの高温染色(HTD)(135℃、60分)
上記実施例の全ての高温染色も、NMPを用いず、分散染料と同様の製造法により、分散染料を適用するUV蛍光ランタニドキレートに替えることにより、実現した。
【0141】
実施例23
UV蛍光ランタニドキレート1種以上を含有する転写配合物を使用して、UV蛍光ランタニドキレートを用いる転写を行った。これらの配合物は、分散染料の代わりにランタニドキレート1種以上を用いるか、分散染料に加えてランタニドキレート1種以上を用いることにより、従来の転写配合物と同様の方法で調製した。
【0142】
実施例24
多成分セキュリティ糸の製造
ポリマー混合物〔たとえば、Akzoplastiksから供給される共重合ポリアミドAkulon(登録商標)〕を3台の押出機に分配し、粒子を溶融した。糸の外側成分用であることを示す溶融物それぞれと、式(XVII)の化合物3重量%とを、ポリアミド溶融物中に均一に溶解するように混合した。多成分糸の押出後、セキュリティ糸が得られ、そのエッジストリップはUV光のもとで蛍光を発するのに対して、中心ストリップは全く蛍光を示さなかった。ランタニドキレートと染料または顔料1種以上とを同時に押出し、同様にUV光のもとで蛍光性である有色糸を与えた。
【0143】
実施例25
多成分セキュリティ糸の製造
実施例24に記載されているように、式(XVII)の化合物と式(XV)の化合物の1:1混合物を3重量%含有するポリアミド溶融物の押出により、セキュリティ糸を製造した。種々の波長のUV光を照射すると、赤色および/または緑色の蛍光が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を
(a)UV吸収基を少なくとも1個有する有機アニオン配位子を3個または4個含有する、ルミネセンスランタニドキレート1種以上、および
(b)溶剤1種以上
を含む組成物で処理することを特徴とする、ルミネセンスポリマー繊維の製造方法。
【請求項2】
成分(a)が、式(I):
m−Ln3+(Ch-n (I)
(式中、Lnはランタニドを表し、
Ch-はUV吸収二重結合を少なくとも1個含有する負に荷電した配位子であり、
nは3または4を意味し、mは0〜4の数を意味し、
nが3の場合には、mは0〜4の数を意味し、Lは窒素、酸素または硫黄を含有する中性の単座または多座配位子であり、
nが4の場合には、mは1を意味し、Lは1価に荷電したカチオンである)の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成分(a)が、式(II)、(III)または(IV):
【化1】


(式中、
Lnはランタニドを表し、
nは3または4を意味し、mは0〜4の数を意味し、
nが3の場合には、mは0〜4の数を意味し、Lは窒素、酸素または硫黄を含有する中性の単座または多座配位子であり、
nが4の場合には、mは1を意味し、Lは1価に荷電したカチオンであり、
2は水素またはC1〜C6アルキルであり、
1およびR3は互いに独立に水素、C1〜C6アルキル、CF3、C5〜C24アリールまたはC4〜C24ヘテロアリールである)の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
成分(a)が、式(I)、(II)、(III)または(IV)(式中、nは3を意味し、Lは窒素を含有する配位子である)の化合物であることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
成分(a)が、式(I)、(II)、(III)または(IV)
〔式中、Lは式(V)〜(XII):
【化2】


の化合物であるか、式:H−N+(R73のカチオンである
(式中、R4、R5およびR6は互いに独立に水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C5〜C24アリール、C6〜C24アラルキル、C1〜C6アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノまたは環状アミノ基であり、R7は水素、C1〜C6アルキル、C5〜C24アリール、C6〜C24アラルキルまたはビニルである)〕
の化合物であることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項6】
成分(a)が、式(II)〔式中、Lは式(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII)(式中、R4、R5およびR6は水素、メチル、アミノ、ピロリジノまたはジメチルアミノである)の化合物であるか、Lは式:H−N+(R73(式中、R7はC1〜C6アルキルである)のカチオンである〕の化合物であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
成分(a)が、式(I)、(II)、(III)または(IV)(式中、LnはEu、Tb、Dy、SmまたはNdである)の化合物であることを特徴とする、請求項2または3記載の方法。
【請求項8】
成分(a)が、式(II)または(III)(式中、R1およびR3はメチル、t−ブチル、n−ペンチルまたはフェニルである)の化合物であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項9】
成分(a)が、式(II)(式中、R2は水素である)の化合物であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項10】
成分(a)が、式(XIII)〜(LII):
【化3】






の化合物であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項11】
成分(b)が、水、水混和性の有機溶剤1種以上、または水と水混和性の有機溶剤1種以上との混合物であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
水混和性の有機溶剤が、脂肪族アルコール、エーテルアルコール、グリコール、脂肪族ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、脂肪族ニトリル、脂肪族ポリエーテルまたは脂肪族スルホキシドであることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
水混和性の有機溶剤が、エタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルおよびジメチルスルホキシド(DMSO)よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項14】
組成物が、成分(a)+(b)の合計量に基づいて、成分(a)を0.01〜20.0重量%、成分(b)を80.0〜99.99重量%含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項15】
組成物が、さらに
(c)着色剤1種以上
を含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項16】
ポリマー材料の量に基づいて、請求項3記載の式(II)または(III)の化合物0.01〜10.0重量%の存在下でプラスチック材料を押出すことを特徴とする、ルミネセンスプラスチックの製造方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法により製造したルミネセンス紡織繊維。
【請求項18】
請求項16記載の方法により製造したルミネセンスプラスチック。
【請求項19】
ポリマー繊維が紙繊維または合成繊維である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法の、抗偽造書類、抗偽造カード、抗偽造小切手または抗偽造銀行券の製造のための使用。

【公表番号】特表2006−504883(P2006−504883A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501809(P2005−501809)
【出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011638
【国際公開番号】WO2004/039913
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】