説明

X線検査装置

【課題】 簡素化された構成で、転がり易かったり滑り易かったりする物品の検査とシールドボックスの搬入口及び搬出口からの一次散乱X線の漏洩防止とが両立するX線検査装置を提供する。
【解決手段】 シールドボックス本体11を水平に貫通して、両端部が搬入口及び搬出口から突出する第2搬送コンベア6を設ける。また、第2搬送コンベア6の上流側に、該第2搬送コンベア6の搬送面より高い搬送面を有する第1搬送コンベア5を連設し、該第1搬送コンベア5の下流側端部で前記搬入口を覆う。また、第2搬送コンベア6の下流側に、該第2搬送コンベア6の搬送面より低い搬送面を有する第3搬送コンベア7を連設する。そして、シールドボックス本体11の下流側に防護カバー13を連設し、該カバー13の後壁面13aを前記第2搬送コンベア6の搬送面の高さまで垂下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品にX線を照射して、該物品への異物混入や該物品の形状異常等を検査するX線検査装置に関し、物品検査の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドボックス内に搬送コンベアとX線照射器とX線検出器とを収容し、X線を搬送中の物品に照射すると共に該物品を透過したX線を検出することにより、該物品への異物混入や該物品の形状異常等を検査するX線検査装置が用いられている。
【0003】
このようなX線検査装置では、X線が物品に照射されたことによって発生する一次散乱X線が、物品の搬入及び搬出のためシールドボックスに設けられた搬入口及び搬出口を介して外部に漏洩するのを防止する必要があり、これに対処するものとして、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示のX線検査装置がある。
【0004】
まず、図8に示すように、特許文献1に開示のX線検査装置Aは、架台B上に上流側から順に物品Mを矢印方向に搬送するための搬入コンベアC、搬送コンベアD、及び搬出コンベアEを有し、かつ、搬送コンベアDを挟んで上下にX線照射器FとX線検出器Gとを備えている。搬送コンベアDは、上下流側傾斜面部D1,D2と両傾斜面部D1,D2間の水平面部D3とを有しており、搬送面は全体として山型に構成されている。また、両側の傾斜面部D1,D2の両端部を除いて搬送コンベアDの大部分とX線照射器FとX線検出器Gとは、シールドボックスH内に収容されている。そして、シールドボックスHの両端部に、上流側傾斜面部D1の上流側端部が突出する搬入口H1と下流側傾斜面部D2の下流側端部が突出する搬出口H2とが設けられている。
【0005】
これにより、物品Mに太い鎖線xで示すX線が照射されることによって発生する一次散乱X線は、細い鎖線x′で示すように搬入口H1や搬出口H2に向かって直進するとき、搬送コンベアDに備えられたプーリD4,D4で遮蔽されて前記搬入口H1や搬出口H2を指向することができず、これら搬入口H1や搬出口H2の上縁部より上方に入射するので、シールドボックスH外部への一次散乱X線の漏洩が防止されることになる。
【0006】
また、図9に示すように、特許文献2に開示のX線検査装置Pは、第1架台Q1に支持されたX線照射器R、X線検出器S、及びシールドボックスTと、第2架台Q2に支持された物品Mを矢印方向に搬送する第1及び第2搬送コンベアU,Vとを有している。第1搬送コンベアUは、上流側端部がシールドボックスTに設けられた搬入口T1から突出すると共に搬送面がシールドボックスT内に向かって上方に傾斜している。一方、第2搬送コンベアVは、上流側端部が前記第1搬送コンベアUの下流側端部下方に位置すると共に、下流側端部がシールドボックスTに設けられた搬出口T2から突出し、かつ、X線検出器S上方を走行する搬送面は略水平とされた上で、下流側は搬出口T2に向かって下方に傾斜している。つまり、この場合にも搬送面は全体として山型に構成されている。
【0007】
そして、物品Mに太い鎖線xで示すX線が照射されると、第1及び第2搬送コンベアU,VやシールドボックスTの搬入口T1及び搬出口T2は、細い鎖線x′で示す一次散乱X線がシールドボックスTから漏洩しない位置関係に設定されているため、つまり図例のように一次散乱X線は前記搬入口T1や搬出口T2の上縁部より上方に入射するようになるため、シールドボックスT外部への一次散乱X線の漏洩が防止されることになる。
【0008】
【特許文献1】特開平9−49883号公報
【特許文献2】特開平9−145343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述したような構成のX線検査装置では、搬送面を全体として山型に構成しているので、そもそも搬送機構が複雑化し、コスト高騰を招きかねない。
【0010】
しかも、前記X線検査装置は、上方に傾斜する搬送面を備えているため、例えばトレイに包装されたものではなくバラ品で転がり易かったり滑り易かったりする物品を安定的に搬送することはできず、したがってこのような物品の検査には不向きである。
【0011】
そこで、本発明は、簡素化された構成で、転がり易かったり滑り易かったりする物品の検査とシールドボックスの搬入口及び搬出口からの一次散乱X線の漏洩防止とが両立するX線検査装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、請求項1に記載の発明は、物品にX線を照射するX線照射器と該X線照射器から照射されて前記物品を透過するX線を検出するX線検出器とが設けられたシールドボックス本体と、上下流側端部が前記シールドボックス本体の両端部に設けられた搬入口及び搬出口からそれぞれ所定長さだけ突出した状態で該シールドボックス本体を水平に貫通する主搬送手段と、該主搬送手段の上流側に連設されて、供給された物品を搬送して該主搬送手段の上流側端部に受け渡す供給側搬送手段と、前記主搬送手段の下流側に連設されて、該主搬送手段の下流側端部から受け渡された物品を搬出する搬出側搬送手段とを有するX線検査装置に関するもので、前記供給側搬送手段は、その搬送面が前記主搬送手段の搬送面より上方に位置し、その下流側端部が前記シールドボックス本体の搬入口を覆う高さを備えていると共に、前記搬出側搬送手段は、その搬送面が前記主搬送手段の搬送面より下方に位置し、かつ、前記シールドボックス本体の搬出口より下流側に、少なくとも該搬出口から前記主搬送手段と前記搬出側搬送手段との間の物品受渡部までを覆うカバーが連設されて、該カバーの下流側端部に前記主搬送手段の搬送面の高さまで垂下した後壁面が設けられていることを特徴とする。
【0014】
次に、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のX線検査装置において、前記カバーの後壁面は、前記搬出口から所定の距離を隔てた位置に設けられていることを特徴とする。なお、前記所定の距離とは、シールドボックス本体の搬出口を介して漏洩する物品からの一次散乱X線が減衰して、実質的に無害となるに必要な距離である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1また請求項2に記載のX線検査装置において、前記供給側搬送手段は、その下流側端部に、前記物品を該供給側搬送手段から前記主搬送手段に向けて滑落させるシュートを備えており、該シュートは、前記供給側搬送手段の下面と前記主搬送手段の搬送面との間に生じる隙間を覆うように設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載のX線検査装置において、前記供給側搬送手段は、その下流側端部の下方に、該供給側搬送手段の下面と前記主搬送手段の搬送面との間に生じる隙間を覆う遮蔽板を備えていることを特徴とする。
【0017】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線検査装置において、前記シールドボックス本体の搬入口及び搬出口の高さは、前記物品の高さに応じて調節可能とされており、かつ、前記搬入口の高さは、最高高さに設定されたときにも前記供給側搬送手段の搬送面を超えないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
まず、請求項1に記載の発明によれば、主搬送手段はシールドボックス本体を水平に貫通するもので、従来のX線検査装置におけるように搬送面を山型に構成していないため、搬送機構が簡素化される。また、上方に傾斜する搬送面を有していないので、転がり易かったり滑り易かったりする物品を安定的に搬送することができ、したがってこのような物品の検査にも好適である。
【0019】
その上で、供給側搬送手段をその搬送面が主搬送手段の搬送面より上方になるように位置させ、かつ、その下流側端部でシールドボックス本体の搬入口を覆うように構成したので、搬入口を介して漏洩しようとする物品からの一次散乱X線は該下流側端部に入射して遮蔽される。したがって、供給側搬送手段の下流側端部を利用するという簡素化された構成で、シールドボックス本体の搬入口からの一次散乱X線の漏洩を防止することができる。
【0020】
一方、搬出側搬送手段をその搬送面が主搬送手段の搬送面より下方になるように位置させ、かつ、シールドボックス本体の下流側にカバーを連設し、該カバーの下流側端部に前記主搬送手段の搬送面の高さまで垂下する後壁面を設けたので、シールドボックス本体の搬出口を介して漏洩しようとする物品からの一次散乱X線は前記後壁面に入射して遮蔽される。したがって、シールドボックス本体の搬出口からの一次散乱X線の漏洩も確実に防止することができる。
【0021】
次に、請求項2に記載の発明によれば、前記カバーの構成がさらに具体化される。つまり、物品からの一次散乱X線が減衰して、実質的に無害となる位置にカバーの後壁面を設けるので、仮に該後壁面下方から漏洩する一次散乱X線があったとしても、もはや無害なものとなる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明によれば、供給側搬送手段は、その下流側端部にシュートを備えたので、該供給側搬送手段から主搬送手段への物品の受け渡しが一層確実かつ円滑に行なわれ、特に物品がバラ品である場合に好適となる。そして、このシュートは、供給側搬送手段の下面と主搬送手段の搬送面との間の隙間を覆うので、こうしてなる供給側搬送手段の下流側端部は、搬入口から漏洩しようとする一次散乱X線を遮蔽することができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明によれば、供給側搬送手段は、その下流側端部の下方に、該供給側搬送手段の下面と主搬送手段の搬送面との間の隙間を覆う遮蔽板を備えたので、該隙間から漏洩しようとする一次散乱X線を遮蔽板という簡素化された構成によって遮蔽することができ、大幅なコスト高騰を招くことはない。
【0024】
そして、請求項5に記載の発明によれば、シールドボックス本体の搬入口及び搬出口の高さを物品の高さに応じて調節可能としたので、汎用性のあるX線検査装置が実現される。
【0025】
その上で、搬入口の高さを最高高さに設定したときにも供給側搬送手段の搬送面を超えないようにしたので、該搬入口を介して漏洩しようとする一次散乱X線は確実に遮蔽される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施の形態に係るX線検査装置について説明する。
【0027】
図1に示すように、このX線検査装置1は、物品Mを搬送しつつ該物品Mへの異物混入の有無を検査するためのもので、主要な構成要素として、シールドボックス2と、該シールドボックス2内に配設されて物品Mに太い鎖線で示す矢印xのようにX線を照射するX線照射器3並びに物品Mを透過するX線を検出するラインセンサ等のX線検出器4と、シールドボックス2内に矢印aで示す水平方向に物品Mを搬入する第1搬送コンベア5と、シールドボックス2内に配設されて前記第1搬送コンベア5から矢印bで示すように受け渡された物品Mを矢印cで示す水平方向に搬送する第2搬送コンベア6と、X線検査の結果、物品Mが良品と判定された場合に前記第2搬送コンベア6から矢印dで示すように受け渡された物品Mを矢印eで示す水平方向にシールドボックス2から搬出すると共に、物品Mが不良品と判定された場合には鎖線で示すように搬送面が揺動することによって該物品Mを矢印e′方向に搬出する振分機能を備えた第3搬送コンベア7とを有している。
【0028】
次に、主要な各構成要素について説明する。
【0029】
シールドボックス2は概ね箱状の本体11と、該本体11の上下流側にそれぞれ連設されたフード状の防護カバー12,13とを有している。
【0030】
図2に示すように、矢印x方向にX線を照射するX線照射器3と物品Mを透過したX線を検出するX線検出器4とが収容されたシールドボックス本体11の前壁面11aと後壁面11bとに、物品Mが通過可能にそれぞれ開口11a′,11b′が設けられている。該開口11a′,11b′は、シールドボックス本体11に汎用性を持たせるため、取り扱う物品Mの高さの割りには比較的大寸法に設けられている。
【0031】
また、上流側防護カバー12の前壁面12aと下流側防護カバー13の後壁面13aとに、同じく物品Mが通過可能に開口12a′,13a′がそれぞれ設けられている。
【0032】
また、上流側防護カバー12の前壁面12aと下流側防護カバー13の後壁面13aとは、前記シールドボックス本体11の各開口11a′,11b′からそれぞれ所定の距離kを隔てた位置に設けられている。なお、前記所定の距離kとは、前述したシールドボックス本体11の各開口11a′,11b′を介して漏洩する物品Mからの一次散乱X線が減衰して、実質的に無害となるに必要な距離である。
【0033】
また、シールドボックス本体11の前後壁面11a,11bには、第2搬送コンベア6の搬送面から高さhの位置まで下端部が垂下して物品Mからの一次散乱X線を遮蔽すると共に、垂下する下端部によってシールドボックス本体11における実質的な搬入口及び搬出口を形成するX線遮蔽部材14,15がそれぞれ備えられており、該X線遮蔽部材14,15は、比較的大寸法に設けられた前記開口11a′,11b′の上部をそれぞれ覆っている。
【0034】
また、上流側防護カバー12の前壁面12aにも、第1搬送コンベア5の搬送面から高さhの位置まで垂下するX線遮蔽部材16が備えられており、該X線遮蔽部材16は前記開口12a′の上部を覆っている。なお、前記X線遮蔽部材14〜16には、金属板あるいは鉛を含有するゴム材料でなるのれん状のもの等が適用される。
【0035】
そして、これらのX線遮蔽部材14〜16は、例えばピンやピン孔等を用いた適宜の手段により、垂下する下端部の高さを物品Mの高さに応じて調節可能に備えられており、かつ、X線遮蔽部材14の下端部によって形成されるシールドボックス本体11の実質的な搬入口の高さhは、図例のように最高高さに設定されたときにも後述する第1搬送コンベア5の搬送面を超えないようにされている。前記高さhは、物品Mが円滑に通過可能かつ一次散乱X線を適正に遮蔽可能に設定されており、例えば物品Mの高さが30mmであれば、高さhは40mm程度に設定される。
【0036】
第1搬送コンベア5は、物品Mを矢印aで示す水平方向に搬送するベルトコンベア式のもので、一対のローラ21,22と該ローラ21,22間に巻き掛けられた平ベルト23とを有し、図示しない駆動手段によって駆動される。そして、第1搬送コンベア5の上流側は上流側防護カバー12の開口12a′から突出する一方、下流側は上流側防護カバー12内に突入して第1搬送コンベア6の上流側端部近傍まで延びており、供給された物品Mを搬送して第2搬送コンベア6の上流端部に矢印bで示すように受け渡す。
【0037】
第2搬送コンベア6は、物品Mを矢印cで示す水平方向に搬送するベルトコンベア式のもので、都合4つのローラ31〜34と、該ローラ31〜34間に巻き掛けられた平ベルト35とを有し、図示しない駆動手段によって駆動される。そして、第2搬送コンベア6の上下流側端部はシールドボックス本体11の両開口11a′,11b′ないし前記X線遮蔽部材14,15によって形成された実質的な搬入口及び搬出口からそれぞれ所定長さだけ突出しており、シールドボックス本体11を水平に貫通している。
【0038】
第3搬送コンベア7は、第2搬送コンベア6から矢印dで示すように受け渡された物品Mが良品の場合には矢印eで示す水平方向に搬出すると共に、物品Mが不良品の場合には上流側端部を支点に鎖線で示すように搬送面が揺動して矢印e′方向に搬出するドロップベルト式振分装置として機能するもので、一対のローラ41,42と該ローラ41,42間に巻き掛けられた平ベルト43とを有し、図示しない駆動手段によって駆動される。そして、第3搬送コンベア7の上流側は下流側防護カバー13内に突入して第2搬送コンベア6の上流側端部近傍まで延びる一方、下流側は下流側防護カバー13の開口13a′から突出している。
【0039】
そして、特徴的なこととして、第1搬送コンベア5の搬送面は第2搬送コンベア6の搬送面より高さhつまりX線遮蔽部材14の下端部が形成するシールドボックス本体11の実質的な搬入口の高さhだけ高く設定されていると共に、第1搬送コンベア5のローラ21,22の径は、前記高さhと同等の寸法に設定されている。さらに、第1搬送コンベア5の下流側端部と第2搬送コンベア6の上流側端部とは、水平方向に若干オーバーラップするように配設されている。
【0040】
一方、第3搬送コンベア7の搬送面は第2搬送コンベア6の搬送面より前記高さhだけ低く設定されている。そして、前記下流側防護カバー13の後壁面13aは、第2搬送コンベア6の搬送面の高さまで垂下している。したがって、該後壁面13aと第3搬送コンベア7の搬送面との間の間隔は前記高さhに等しいことになる。
【0041】
ここで、このX線検査装置1の作用について説明する。
【0042】
すなわち、図2に示したように、上流側から第1搬送コンベア5に物品Mが供給されると、該物品Mは矢印a方向に搬送される。そして、物品Mは上流側防護カバー12の開口12a′上部を覆っているX線遮蔽部材16の下端部を潜り抜けて上流側防護カバー12内に搬入されたのち、矢印bで示すように落下して、シールドボックス本体11から突出する第2搬送コンベア6の上流側端部に受け渡される。
【0043】
なお、前記X線遮蔽部材16の下端部の高さhを物品Mの高さに応じて調節可能とすることで、例えば第1搬送コンベア5に多重に重なって物品Mが供給された場合に、前記下端部によって多重に重なった上方の物品Mを払い落とすことができる。したがって、後述するX線検査時には多重に重なった物品Mを検査するのではなく、搬送面上を単層状態で搬送される物品Mを検査することができ、検査の信頼性が維持されるメリットが生まれる。
【0044】
第2搬送コンベア6に受け渡された物品Mは、シールドボックス本体11の上流側開口11a′上部を覆っているX線遮蔽部材14の下端部を潜り抜けてシールドボックス本体11内に搬入される。そして、矢印c方向に搬送される過程で物品MにX線照射器3からのX線が太い鎖線xで示すように照射され、物品Mを透過したX線はX線検出器4に入射されて異物混入の検査が行われる。
【0045】
X線が照射されたのち、物品Mはシールドボックス本体11の下流側開口11b′に向かい、該開口11b′上部を覆っているX線遮蔽部材15の下端部を潜り抜けたのち、矢印dで示すように落下して、シールドボックス本体11から突出する第2搬送コンベア6の下流側端部から第3搬送コンベア7に受け渡される。
【0046】
そして、物品Mが良品である場合、搬送面が実線で示す水平姿勢を維持した第3搬送コンベア7によって該物品Mは矢印e方向に搬出されて、さらに下流側の装置に受け渡たされる。一方、物品Mが不良品である場合、搬送面が鎖線で示すように動作する第3搬送コンベア7によって該物品Mは矢印e′方向に搬出されて、例えば不良品回収箱に回収される。
【0047】
その場合に、まず、第2搬送コンベア6はシールドボックス本体11を水平に貫通するもので、従来のX線検査装置におけるように搬送面を山型に構成していないため、搬送機構が簡素化される。また、上方に傾斜する搬送面を有していないので、転がり易かったり滑り易かったりする物品Mを安定的に搬送することができ、したがってこのような物品Mの検査にも好適である。
【0048】
その上で、図3に示すように、上流側防護カバー12内に突入する第1搬送コンベア5をその搬送面が第2搬送コンベア6の搬送面より高さhだけ上方になるように位置させ、かつ、その下流側端部つまり径を前記高さhと同じ寸法とされた下流側ローラ22でシールドボックス本体11の搬入口つまりX線遮蔽部材14の下端部で形成された高さhの実質的な搬入口を覆うように構成したので、図例の太い鎖線xで示すX線が物品Mを透過してX線検出器4に入射するとき、搬入口を介して漏洩しようとする物品Mからの細い鎖線x′で示す一次散乱X線は該下流側端部つまり下流側ローラ22に入射して遮蔽される。したがって、第1搬送コンベア5の下流側端部を利用するという簡素化された構成で、シールドボックス本体11の搬入口からの一次散乱X線の漏洩を防止することができる。
【0049】
なお、シールドボックス本体11の前壁面11aの開口11a′上部を指向する同じく細い鎖線x′で示す一次散乱X線は、前記X線遮蔽部材14によって確実に遮蔽される。
【0050】
ところで、前記第1搬送コンベア5のローラ21,22の径を前記搬入口の高さhに等しく設定したが、これより大きく設定してもよい。
【0051】
一方、図4に示すように、第3搬送コンベア7をその搬送面が第2搬送コンベア6の搬送面より高さhだけ下方になるように位置させ、かつ、シールドボックス本体11の下流側に防護カバー13を連設し、該カバー13の下流側端部に前記第2搬送コンベア6の搬送面の高さまで垂下する後壁面13aを設けたので、図例の太い鎖線xで示すX線が物品Mを透過してX線検出器4に入射するとき、シールドボックス本体11の搬出口つまりX線遮蔽部材15の下端部で形成された高さhの実質的な搬入口を介して漏洩しようとする物品Mからの細い鎖線x′で示す一次散乱X線は前記後壁面13aに入射して遮蔽される。したがって、シールドボックス本体11の搬出口からの一次散乱X線の漏洩も確実に防止することができる。
【0052】
また、物品Mからの一次散乱X線が減衰して、実質的に無害となる位置つまり前記シールドボックス本体11の実質的な搬出口ひいては下流側開口11b′から距離kを隔てた位置に下流側防護カバー13の後壁面13aを設けたので、仮に該後壁面13a下方から漏洩する一次散乱X線があったとしても、もはや無害なものとなる。ちなみに、上流側防護カバー12の前壁面12aも同様の構成としたので、同様の作用が得られる。
【0053】
なお、シールドボックス本体11の後壁面11bの開口11b′上部を指向する同じく細い鎖線x′で示す一次散乱X線は、前記X線遮蔽部材15によって確実に遮蔽される。
【0054】
そして、図3及び図4に示したように、シールドボックス本体11の搬入口及び搬出口つまり両X線遮蔽部材14,15の下端部によって形成される実質的な搬入口及び搬出口の高さhを物品Mの高さに応じて調節可能としたので、汎用性のあるX線検査装置1が実現される。
【0055】
その上で、図3に示したように、前記搬入口の高さhを最高高さに設定したときにも第1搬送コンベア5の搬送面を超えないようにしたので、該搬入口を介して漏洩しようとする一次散乱X線は確実に遮蔽される。
【0056】
次に、第2の実施の形態に係るX線検査装置について説明する。なお、前記第1の実施の形態と共通する構成要素については、特に混乱を招かない限り同じ符号を付し、また、重複する部分は省略すると共に特徴的な部分を中心に説明することにする。
【0057】
すなわち、図5に示すように、このX線検査装置1Aの第1搬送コンベア5Aは、その下流側端部に、物品Mを該第1搬送コンベア5Aから第2搬送コンベア6に向けて滑落させると共に、第1搬送コンベア5Aの下面と第2搬送コンベア6の搬送面との間に生じる隙間を覆う金属製のシュート24Aが備えられている。その場合、前記第1搬送コンベア5Aの搬送面は第2搬送コンベア6の搬送面より高さhだけ上方に位置すると共に、そのローラ(下流側のみ図示)22Aの径h′は、前述した第1の実施の形態における第1搬送コンベア5のローラ22の径hに比較して小さく設定されている。
【0058】
これによれば、第1搬送コンベア5Aの下流側端部にシュート24Aを備えたので、該第1搬送コンベア5Aから第2搬送コンベア6への物品Mの受け渡しが一層確実かつ円滑に行なわれ、特に物品Mがバラ品である場合に好適となる。
【0059】
そして、このシュート24Aは、第1搬送コンベア5Aの下面と第2搬送コンベア6の搬送面との間の隙間を覆うので、図例の太い鎖線xで示すX線が物品Mを透過してX線検出器4に入射するとき、シールドボックス本体11の搬入口つまりX線遮蔽部材14の下端部で形成された高さhの実質的な搬入口を介して漏洩しようとする物品Mからの細い鎖線x′で示す一次散乱X線は、シュート24Aや第1搬送コンベア5Aの下流側ローラ22Aに入射して遮蔽されるようになる。
【0060】
次に、第3の実施の形態に係るX線検査装置について説明する。なお、この場合にも、前記第1の実施の形態と共通する構成要素については、特に混乱を招かない限り同じ符号を付し、また、重複する部分は省略すると共に特徴的な部分を中心に説明することにする。
【0061】
すなわち、図6に示すように、このX線検査装置1Bの第1搬送コンベア5Bは、その下流側端部の下方に、該第1搬送コンベア5Bの下面と第2搬送コンベア6の搬送面との間の隙間を覆う金属製の遮蔽板25Bが備えられている。その場合、前記第1搬送コンベア5Bの搬送面は第2搬送コンベア6の搬送面より高さhだけ上方に位置すると共に、そのローラ(下流側のみ図示)22Bの径h′は、前述した第2の実施の形態における第1搬送コンベア5Aのローラ径h′に等しく設定されている。
【0062】
これによれば、第1搬送コンベア5Bの下流側端部の下方に、該第1搬送コンベア5Bの下面と第2搬送コンベア6の搬送面との間の隙間を覆う遮蔽板25Bを備えたので、図例の太い鎖線xで示すX線が物品Mを透過してX線検出器4に入射するとき、シールドボックス本体11の搬入口つまりX線遮蔽部材14の下端部で形成された高さhの実質的な搬入口を介して漏洩しようとする物品Mからの細い鎖線x′で示す一次散乱X線は、遮蔽板25Bや第1搬送コンベア5Bの下流側ローラ22Bに入射して遮蔽されるようになる。すなわち、前記隙間からの一次散乱X線を遮蔽板25Bという簡素化された構成によって遮蔽することができ、大幅なコスト高騰を招くことはない。
【0063】
そして、第4の実施の形態に係るX線検査装置について説明する。なお、この場合にも、前記第1の実施の形態と共通する構成要素については、特に混乱を招かない限り同じ符号を付し、また、重複する部分は省略すると共に特徴的な部分を中心に説明することにする。
【0064】
すなわち、図7に示すように、このX線検査装置1Cは、第1搬送コンベア5Cの下流側端部の構成が前述した第1〜第3の実施の形態におけるものとは変更されており、該下流側端部に金属製の遮蔽板25Cを内蔵するように構成されている。その場合、前記第1搬送コンベア5Cの搬送面は第2搬送コンベア6の搬送面より高さhだけ上方に位置するように配設されている。また、下流側端部には3つのローラ22C,26C,27Cが図例のように配設されており、ローラ26Cは第2搬送コンベア6の搬送面より若干低い位置に設けられている。また、ローラ22Cの径h″は、前記高さhより小さく設定されている。
【0065】
そして、これらのローラ22C,26C,27Cと図示しない上流側のローラとの間に平ベルト23Cが巻き掛けられており、さらに、前記ローラ22C,26C間を走行する平ベルト23Cを裏面から支持するように、金属製の前記遮蔽板25Cが設けられている。この遮蔽板25Cは、第1搬送コンベア5の下流側ローラ22Cと第2搬送コンベア6の搬送面との間の隙間を覆うように構成されている。
【0066】
このような構成によっても、図例の太い鎖線xで示すX線が物品Mを透過してX線検出器4に入射するとき、シールドボックス本体11の搬入口つまりX線遮蔽部材14の下端部で形成された高さhの実質的な搬入口を介して漏洩しようとする物品Mからの細い鎖線x′で示す一次散乱X線は、第1搬送コンベア5Cの下流側端部つまりローラ22Cや遮蔽板25Cに入射して遮蔽されるようになる。したがって、図例のように下流側端部に平ベルト23Cを支持する支持板を備えた第1搬送コンベア5Cを用いる場合には、該支持板に遮蔽板25Cを兼ねさせることができるメリットがある。
【0067】
なお、前記第1の実施の形態では、第3搬送コンベア7に振分機能を備えたものを使用したが、振分機能を有さないものであってもよい。
【0068】
そして、前記第1の実施の形態では、第2搬送コンベア6と第3搬送コンベア7との間にシュートを設けなかったが、搬送する物品の性状に応じて適宜シュートを設けて、より円滑な物品の受け渡しを図るようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明によれば、簡素化された構成で、シールドボックスの搬入口及び搬出口からの一次散乱X線の漏洩を防止しつつ、転がり易かったり滑り易かったりする物品の検査にも好適なX線検査装置が提供される。すなわち、本発明は、物品にX線を照射して、該物品への異物混入や該物品の形状異常等を検査するX線検査装置に関し、物品検査の技術分野に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るX線検査装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】特徴的な部分を拡大して示す正面図である
【図3】同じく上流側をさらに拡大して示す正面図である。
【図4】同じく下流側をさらに拡大して示す正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るX線検査装置の図3に相当する正面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るX線検査装置の図3に相当する正面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るX線検査装置の図3に相当する正面図である。
【図8】従来のX線検査装置の正面図である。
【図9】別なる従来のX線検査装置の正面図である。
【符号の説明】
【0071】
1,1A〜1C X線検査装置
3 X線照射器
4 X線検出器
5,5A〜5C 第1搬送コンベア(供給側搬送手段)
6 第2搬送コンベア(主搬送手段)
7 第3搬送コンベア(搬出側搬送手段)
11 シールドボックス本体
13 下流側防護カバー(カバー)
13a 後壁面
24A シュート
25B,25C 遮蔽板
M 物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品にX線を照射するX線照射器と該X線照射器から照射されて前記物品を透過するX線を検出するX線検出器とが設けられたシールドボックス本体と、上下流側端部が前記シールドボックス本体の両端部に設けられた搬入口及び搬出口からそれぞれ所定長さだけ突出した状態で該シールドボックス本体を水平に貫通する主搬送手段と、該主搬送手段の上流側に連設されて、供給された物品を搬送して該主搬送手段の上流側端部に受け渡す供給側搬送手段と、前記主搬送手段の下流側に連設されて、該主搬送手段の下流側端部から受け渡された物品を搬出する搬出側搬送手段とを有するX線検査装置であって、前記供給側搬送手段は、その搬送面が前記主搬送手段の搬送面より上方に位置し、その下流側端部が前記シールドボックス本体の搬入口を覆う高さを備えていると共に、前記搬出側搬送手段は、その搬送面が前記主搬送手段の搬送面より下方に位置し、かつ、前記シールドボックス本体の搬出口より下流側に、少なくとも該搬出口から前記主搬送手段と前記搬出側搬送手段との間の物品受渡部までを覆うカバーが連設されて、該カバーの下流側端部に前記主搬送手段の搬送面の高さまで垂下した後壁面が設けられていることを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記カバーの後壁面は、前記搬出口から所定の距離を隔てた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記供給側搬送手段は、その下流側端部に、前記物品を該供給側搬送手段から前記主搬送手段に向けて滑落させるシュートを備えており、該シュートは、前記供給側搬送手段の下面と前記主搬送手段の搬送面との間に生じる隙間を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記供給側搬送手段は、その下流側端部の下方に、該供給側搬送手段の下面と前記主搬送手段の搬送面との間に生じる隙間を覆う遮蔽板を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記シールドボックス本体の搬入口及び搬出口の高さは、前記物品の高さに応じて調節可能とされており、かつ、前記搬入口の高さは、最高高さに設定されたときにも前記供給側搬送手段の搬送面を超えないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−47032(P2006−47032A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226416(P2004−226416)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】