説明

X線照射による肺障害の予防及び/または治療剤

【課題】 X線照射による肺障害の予防及び/または治療剤を提供すること。
【解決手段】 GPR4のシグナル伝達に関する機能を抑制する物質を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤、式(I)
【化24】


[式中、R1は置換もしくは非置換の複素環基、-NR5aR5b(式中、R5a及びR5bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル等を表す)等を表し、
R2は水素原子等を表し、
R3及びR4は同一または異なって水素原子等を表し、
nは0または1を表し、
Xは-(CH2)2等を表し、
Yは
【化25】


(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、
R8a及びR8bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル等を表し、
R9は水素原子等を表す)を表す]で表される含窒素三環式化合物もしくはその四級アンモニウム塩またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPR4のシグナル伝達に関する機能を抑制する物質を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肺が、種々の刺激によって繰り返し刺激を受けると、非常に予後の悪い肺線維症、間質性肺炎、特発性肺線維症等の肺障害へ移行することはよく知られている[ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)、第114巻、319-321頁、2004年]。例えば特発性肺線維症の場合、5年後の生存率は約50-70%と報告されている[アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピレートリー・アンド・クリティカル・ケア・メディシン(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)、第166巻、236-246頁、2002年]。しかし、これらの疾患の致死率を改善する治療法や薬剤は未だ充分ではない[アメリカン・ジャーナル・オブ・レスピレートリー・アンド・クリティカル・ケア・メディシン(American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine)、第160巻、1771-1777頁、1999年]。これらの疾患の原因は様々であり、特定することが難しい。種々のサイトカイン及びケモカイン、活性酸素、プロテアーゼ等によって肺の血管内皮細胞や肺胞上皮細胞が障害(急性肺障害)を受けた後、通常は肺胞II型上皮細胞等の修復機転が働くが、障害の程度が強い場合や繰り返し侵襲が加わった場合は、線維化へまで進展していくと言われている。これら重篤な肺障害を引き起こす刺激の1つにX線が挙げられる。肺癌の治療手段の一つとしてX線照射が行なわれている。しかし、X線照射の晩期の副作用の1つとして肺線維症が報告されている。
【0003】
X線照射によって惹起される急性肺障害の後に、肺線維症が起こることが知られている。X線照射によって比較的早期からproinflammatory cytokineである腫瘍壊死因子(TNF)-aの濃度が肺組織中で上昇することが報告されている[ストラーレンセラピー・ウント・オンコロジー(Strahlentherapie und Onkologie)、第180(7)巻、442-448頁、2004年]。また、X線照射によって強力なコラーゲン刺激作用を有するトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βの濃度が線維化に先立って上昇することが報告されている[インターナショナル・ジャーナル・オブ・ラディエーション・オンコロジー、バイオロジー、フィジクス(International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics)、第43(1)巻、169-181頁、1999年;同、第41巻、1029-1035頁、1998年]。一方、動物実験において、TNF-aの投与により、急性呼吸促迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome、ARDS)様の肺水腫が惹起され、これを抗TNF-a抗体が抑制することが知られている[ジャーナル・オブ・クリニカル・インべスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)、第89(3)巻、981-988頁、1992年]。さらに、TNF-aが急性肺障害及びARDSの発症に関与することが知られている(別冊医学のあゆみ、ARDSのすべて、医歯薬出版、2004年3月)。
【0004】
一方、オレイン酸処理によって肺の線維化にまで進行することが知られている。例えば、オレイン酸によってfibrin turnoverの異常が観察される[ザ・アメリカン・ジャーナル・オブ・パソロジー(The American Journal of Pathology)、第135(2)巻、387-399頁、1989年]。また、イヌにオレイン酸を頻回投与すると、肺線維症が観察されることも報告されている[ブレタン・ヨーロピアン・ド・フィジオパソロジー・レスピラトアーレ(Bulletin European de Physiopathologie Respiratoire)、第16(6)巻、733-743頁、1980年]。さらにオレイン酸処理によって急性肺障害が惹起されることが知られている[チェスト(Chest)、第106(2)巻、583-587頁、1994年]。
【0005】
以上述べた通り、X線照射による肺障害とオレイン酸による肺障害は、病態の経過が一致し、病変部も類似していることから、その発症には共通の因子が関与していることが示唆される。
GPR4は、肺に高発現する[ゲノミックス(Genomics)、第30巻、84-88頁、1995年]ことから、肺疾患との関与が示唆されている。GPR4は、G蛋白質共役型レセプター蛋白質であり、脂質であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)やリゾホスファチジルコリン(LPC)と結合し、シグナルを伝達すること及びGPR4発現細胞の遊走を誘導することが報告されている[ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)、第276巻、41325-41335頁、2001年]。
【0006】
従って、X線刺激またはオレイン酸等の刺激による早期の肺障害を抑制すればその後の線維化への進展を予防または阻害できる可能性があると考えられる。
本願で用いられる含窒素三環式化合物を有効成分とする、喘息、掻痒及び好中球性炎症疾患の治療剤が知られている(特許文献1、2及び3参照)。
【特許文献1】国際公開第2004/017994号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/017995号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/093912号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、GPR4のシグナル伝達に関する機能を抑制する物質を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の(1)〜(13)に関する。
(1)配列番号11で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質のシグナル伝達に関する機能を抑制する物質を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(2)以下の1)〜4)
1)配列番号12で表される塩基配列の連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
2)配列番号14で表される塩基配列の連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
3)配列番号18で表される塩基配列の連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
4)配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つで表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質のシグナル伝達に関する機能を抑制する15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
のいずれか一つを有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【0009】
(3)以下の1)〜4)
1)配列番号11で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と結合する抗体、
2)配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と結合する抗体、
3)配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と結合する抗体、
4)配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つで表されるアミノ酸配列において一つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質のシグナル伝達に関する機能を有する蛋白質と結合する抗体、
のいずれか一つを有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(4)式(I)
【0010】
【化11】

【0011】
[式中、R1はシアノ、ホルミル、置換もしくは非置換の複素環基、-NR5aR5b(式中、R5a及びR5bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、またはR5a及びR5bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)、-OR6(式中、R6は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)、-SR6a(式中、R6aは前記R6と同義である)、-CONR5cR5d(式中、R5c及びR5dはそれぞれ前記R5a及びR5bと同義である)または-CO2R6b(式中、R6bは前記R6と同義である)を表し、
R2は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、
R3及びR4は同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、
nは0または1を表し、
Xは-(CH2)2-または-CH=CH-を表し、
Yは
【0012】
【化12】

【0013】
(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、
R8a及びR8bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、またはR8a及びR8bがそれぞれ隣接する2つの炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の芳香環または置換もしくは非置換の複素環を形成し、
R9は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基または置換もしくは非置換のアラルキルを表す)を表す]で表される含窒素三環式化合物もしくはその四級アンモニウム塩またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(5)R1が-NR5gR5h(式中、R5g及びR5hは隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)であり、R2、R3及びR4が水素原子であり、nが1であり、Xが-(CH2)2-であり、Yが
【0014】
【化13】

【0015】
(式中、R10a、R10b及びR10cは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)である前記(4)記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(6)式(II)
【0016】
【化14】

【0017】
〔式中、R11は水素原子、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基または置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表し、
A1-A2-A3-A4はCR12a=CR12b-CR12c=CR12d(式中、R12a、R12b、R12c及びR12dは同一または異なって、それぞれ前記R11と同義である)、N=CR12b-CR12c=CR12d(式中、R12b、R12c及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=N-CR12c=CR12d(式中、R12a、R12c及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=CR12b-N=CR12d(式中、R12a、R12b及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=CR12b-CR12c=N(式中、R12a、R12b及びR12cはそれぞれ前記と同義である)、N=CR12b-N=CR12d(式中、R12b及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=N-CR12c=N(式中、R12a及びR12cはそれぞれ前記と同義である)またはN=CR12b-CR12c=N(式中、R12b及びR12cはそれぞれ前記と同義である)を表し、
【0018】
Qは置換もしくは非置換のフェニレン、置換もしくは非置換のナフチレン、置換もしくは非置換のヘテロアリレンまたは置換もしくは非置換の脂環式複素環基の脂環式複素環上から任意の1つの水素原子を除いてできる2価基を表し、
Tはホルミル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)、置換もしくは非置換の芳香族複素環カルボニル(該芳香族複素環カルボニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)、
【0019】
【化15】

【0020】
[式中、naは0〜3の整数を表し、
nbは1〜4の整数を表し、
Jは単結合またはカルボニルを表し、
Y1---Y2はCR14-CH2(式中、R14は水素原子、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、ホルミル、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、低級シクロアルキルカルボニルまたは低級アルコキシカルボニルアミノを表す)またはC=CHを表し、
R13は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]、
-NR15aR15b[式中、R15a及びR15bは同一または異なって、水素原子、ホルミル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)または置換もしくは非置換の芳香族複素環カルボニル(該芳香族複素環カルボニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)を表すか、またはR15a及びR15bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する]、
【0021】
-OR16[式中、R16は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)、置換もしくは非置換の芳香族複素環オキシカルボニル(該芳香族複素環オキシカルボニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)、置換もしくは非置換の低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換の芳香族複素環スルホニル(該芳香族複素環スルホニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)または-C(=O)NR15aR15b(式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義である)を表す]、
【0022】
【化16】

【0023】
(式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義であり、
R17は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアロイルを表す)、
【0024】
【化17】

【0025】
(式中、R17は前記と同義であり、
R18は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)、
【0026】
【化18】

【0027】
[式中、R18は前記と同義であり、
R19は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]、
-C(=X1)-OR20[式中、X1は酸素原子または硫黄原子を表し、R20は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す。但し、X1が酸素原子を表す場合は、R20は水素原子ではない]、
-C(=X2)-NR15aR15b(式中、X2は前記X1と同義であり、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義である)、または
【0028】
【化19】

【0029】
{式中、E---FはCR22a=CR22b[式中、R22a及びR22bは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]またはC≡Cを表し、
R21は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)または-C(R23a)(R23b)NR15aR15b[式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義であり、R23a及びR23bは同一または異なって水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表すか、R23a及びR23bが隣接する炭素原子と一緒になって飽和脂肪族環を形成するか、またはR23a及びR23bが一緒になって酸素原子または硫黄原子を表す]を表す}を表す〕
で表される二環性複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(7)式(III)
【0030】
【化20】

【0031】
{式中、R24は前記Tと同義であり、
Wは窒素原子またはCR27[式中、R27は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]を表し、
R25は水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニルアミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の脂環式複素環基を表し、
R26a、R26b及びR26cは同一または異なって水素原子、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基または置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す}で表される二環性複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【0032】
(8)R24が-NR15aR15b(式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義である)である前記(7)記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(9)R24が-NHR15a(式中、R15aは前記と同義である)である前記(7)記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(10)R24が-NHR15c(式中、R15cは置換もしくは非置換の低級シクロアルキルを表す)である前記(7)記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(11)R25が水素原子であり、R26a、R26b及びR26cが置換もしくは非置換の低級アルキルである前記(7)〜(10)のいずれかに記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(12)WがCR27(式中、R27は前記と同義である)である前記(7)〜(11)のいずれかに記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
(13)WがCHである前記(7)〜(11)のいずれかに記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、GPR4のシグナル伝達に関する機能を抑制する物質を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、式(I)、(II)または(III)で表される化合物をそれぞれ化合物(I)、(II)または(III)という。他の式番号の化合物についても同様である。
化合物(I)、(II)及び(III)の各基の定義において、
ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。
低級アルキルとしては、例えば直鎖状または分岐状の炭素数1〜10のアルキル、より具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
【0035】
低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルコキシカルボニル、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルキルスルホニル及びモノまたはジ低級アルキルアミノにおける低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義である。ジ低級アルキルアミノの2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
低級シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜10の単環性、二環性または三環性のシクロアルキル、より具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、アダマンチル等が挙げられる。
【0036】
低級シクロアルキルカルボニルの低級シクロアルキル部分は前記低級シクロアルキルと同義である。
低級アルケニルとしては、例えば直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルケニルが挙げられ、より具体的にはビニル、アリル、2-ブテニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、6-ヘプテニル、7-オクテニル、8-ノネニル、9-デセニル等が挙げられる。
【0037】
低級アルキニルとしては、例えば直鎖状または分岐状の炭素数2〜10のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、プロパルギル、3-ブチニル、3-ヘキシニル、4-メチル-2-ペンチニル、6-ヘプチニル、7-オクチニル、8-ノニニル、9-デシニル等が挙げられる。
隣接する炭素原子と一緒になって形成される飽和脂肪族環としては、例えば炭素数 3〜8 の飽和脂肪族環、より具体的にはシクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等が挙げられる。
【0038】
アリール及びそれぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成される芳香環から水素原子を1つ除いた基としては、例えば炭素数6〜14のアリールが挙げられ、より具体的にはフェニル、ナフチル、インデニル、アントリル等が挙げられる。
アリールオキシカルボニル、アリールスルホニル及びアロイルのアリール部分は前記アリールと同義である。
【0039】
アラルキルのアリール部分は前記アリールと同義であり、アルキレン部分は前記低級アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義である。さらにアラルキルのアリール部分としては前記に加え、例えばアリールとシクロアルキルとが縮合した縮合環から水素原子を一つ除いた基も挙げられ、具体的にはインダニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプチル等が挙げられる。
【0040】
フェニレンはフェニルから水素原子を1つ除去したものと同義である。
ナフチレンはナフチルから水素原子を1つ除去したものと同義である。
芳香族複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性芳香族複素環基等が挙げられ、より具体的にはフリル、チエニル、ピロリル、ピリジル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリミジニル、トリアジニル、インドリル、キノリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリドニル、オキサジアゾリル、ピラジニル等が挙げられる。
【0041】
芳香族複素環カルボニル、芳香族複素環オキシカルボニル及び芳香族複素環スルホニルの芳香族複素環基部分は前記芳香族複素環基と同義である。
ヘテロアリレンは前記芳香族複素環基から水素原子を1つ除去したものと同義である。
脂環式複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性脂環式複素環基等が挙げられ、より具体的にはピロリジニル、ピペリジノ、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリノ、モルホリニル、チオモルホリノ、チオモルホリニル、ホモピペリジノ、ホモピペリジル、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロベンゾフラニル、キヌクリジニル、インドリニル、イソインドリニル等が挙げられる。
【0042】
脂環式複素環基の脂環式複素環上から任意の1つの水素原子を除いてできる2価基は前記脂環式複素環基から水素原子を1つ除いたものと同義である。
複素環基としては、例えば前記芳香族複素環基、脂環式複素環基等が挙げられる。
隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、隣接する窒素原子と一緒になって形成される脂環式複素環基、隣接する窒素原子と一緒になって形成される芳香族複素環基等が挙げられ、隣接する窒素原子と一緒になって形成される脂環式複素環基としては例えば少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の単環性脂環式複素環基(該単環性脂環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で少なくとも1個の窒素原子を含む縮環性脂環式複素環基(該縮環性脂環式複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)等が挙げられ、具体的にはピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ホモピペリジノ、ホモピペラジニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、インドリニル、イソインドリニル等が挙げられ、隣接する窒素原子と一緒になって形成される芳香族複素環基としては、例えば少なくとも1個の窒素原子を含む5員または6員の単環性芳香族複素環基(該単環性芳香族複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で少なくとも1個の窒素原子を含む縮環性芳香族複素環基(該縮環性芳香族複素環基は、他の窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい)等が挙げられ、より具体的にはピロリル、イミダゾリル、インドリル、インダゾリル、カルバゾリル等が挙げられる。
【0043】
それぞれが隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成される複素環から水素原子と1つ除いた基は、前記複素環基と同義である。
置換低級アルキル、置換低級アルコキシ、置換低級アルカノイル、置換低級シクロアルキル、置換低級シクロアルキルカルボニル、置換低級アルコキシカルボニル、置換低級アルキルスルホニル、置換低級アルケニル及び置換低級アルキニルにおける置換基(置換基群A)としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロメチル、ビニル、スチリル、フェニルエチニル、低級アルコキシカルボニル、アリールオキシ、アラルキルオキシ、アロイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル[該置換低級シクロアルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アリール、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)等が挙げられる]、置換もしくは非置換の低級アルコキシ(該置換低級アルコキシにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはヒドロキシ、低級アルコキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはアリール等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル(該置換低級シクロアルキルカルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはアリール等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアラルキル(該置換低級アラルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基は後記置換基群Bと同義である)、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く。なお、該置換芳香族複素環基における置換基は後記置換基群Bと同義である)、モノもしくはジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノカルボニル[該モノもしくはジ(置換低級アルキル) アミノカルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)等が挙げられる]、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル[該置換脂環式複素環カルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)等が挙げられる]、-C(=NOR28)R29[式中、R28は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル(該置換低級シクロアルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアラルキル(該置換アラルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル等が挙げられる)または置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く。なお、該置換芳香族複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル等が挙げられる)を表し、R29は置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル(該置換低級シクロアルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル等が挙げられる)または置換もしくは非置換のアラルキル(該置換アラルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル等が挙げられる)を表す]等が挙げられ、置換低級シクロアルキル及び置換低級シクロアルキルカルボニルにおける置換基は前記の置換基に加え、オキソ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル〈該置換低級アルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の脂環式複素環基{該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル、モノもしくはジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ[該モノもしくはジ(置換低級アルキル)アミノにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、脂環式複素環基等が挙げられる]、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的には低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)等が挙げられる}、モノもしくはジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ[該モノもしくはジ(置換低級アルキル)アミノにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、脂環式複素環基等が挙げられる]等が挙げられる〉であってもよい。さらに、置換低級アルコキシ、置換低級アルカノイル、置換低級シクロアルキル、置換低級シクロアルキルカルボニル、置換低級アルコキシカルボニル、置換低級アルキルスルホニル、置換低級アルケニル及び置換低級アルキニルにおける置換基は前記の置換基に加え、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、低級アルコキシ等が挙げられる)であってもよい。
【0044】
前記置換低級アルキル、置換低級アルコキシ、置換低級アルカノイル、置換低級シクロアルキル、置換低級シクロアルキルカルボニル、置換低級アルコキシカルボニル、置換低級アルキルスルホニル、置換低級アルケニル及び置換低級アルキニルにおける置換基の定義において、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル及び低級アルカノイルの低級アルキル部分、低級シクロアルキル及び低級シクロアルキルカルボニルの低級シクロアルキル部分、アリール、アリールオキシ及びアロイルのアリール部分、アラルキル及びアラルキルオキシのアリール部分及びアルキレン部分、脂環式複素環基ならびに芳香族複素環基はそれぞれ前記と同義であり、モノもしくはジ(低級アルキル)アミノ及びモノもしくはジ(低級アルキル)アミノカルボニルの低級アルキル部分は前記低級アルキルと同義であり、ハロゲン置換低級アルキル及びヒドロキシ置換低級アルキルのアルキレン部分は、前記低級アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義であり、ハロゲン置換低級アルキルのハロゲン部分は前記ハロゲンと同義であり、脂環式複素環カルボニルの脂環式複素環基部分は前記脂環式複素環基と同義である。なお、ジ(低級アルキル)アミノ及びジ(低級アルキル)アミノカルボニルの2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
【0045】
置換アリール、置換アラルキル、置換アロイル、置換アリールオキシカルボニル、置換アリールスルホニル、置換複素環基、置換脂環式複素環基、置換芳香族複素環基、置換芳香族複素環カルボニル、置換芳香族複素環オキシカルボニル、置換芳香族複素環スルホニル、隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成される置換芳香族複素環及び置換複素環、置換フェニレン、置換ナフチレン、置換ヘテロアリレンならびに置換脂環式複素環基の脂環式複素環上から任意の1つの水素原子を除いてできる2価基における置換基(置換基群B)としては、例えば同一または異なって置換数 1〜3 の、より具体的にはハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、ホルミル及びその等価体(該ホルミルの等価体としては、例えば1,3-ジオキソラン-2-イル等が挙げられる)、カルバモイル、トリフルオロメトキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、低級アルコキシ、モノもしくはジ低級アルキルアミノ、低級アルカノイルアミノ、低級アルコキシカルボニルアミノ、置換もしくは非置換の低級アルキル{該置換低級アルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的には低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)、モノもしくはジ(置換もしくは非置換の低級アルキル)アミノ[該モノもしくはジ(置換低級アルキル)アミノにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、脂環式複素環基等が挙げられる]等が挙げられる}、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル[該置換低級シクロアルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)等が挙げられる]、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル(該置換低級アルコキシカルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルオキシカルボニル(該置換低級シクロアルキルオキシカルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級アルカノイル(該置換低級アルカノイルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル(該置換低級シクロアルキルカルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアリールオキシ(該置換アリールオキシにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアラルキル(該置換アラルキルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアラルキルオキシ(該置換アラルキルオキシにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換のアロイル(該置換アロイルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(該置換芳香族複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ等が挙げられる)、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)、置換もしくは非置換の脂環式複素環カルボニル(該置換脂環式複素環カルボニルにおける置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の低級アルキル、ハロゲン置換低級アルキル、ヒドロキシ置換低級アルキル、低級アルコキシカルボニル等が挙げられる)等が挙げられる。また、置換脂環式複素環基及び置換脂環式複素環基の脂環式複素環上から任意の1つの水素原子を除いてできる2価基における置換基は、前記の置換基に加えオキソであってもよい。
【0046】
置換アリール、置換アラルキル、置換アロイル、置換アリールオキシカルボニル、置換アリールスルホニル、置換複素環基、置換脂環式複素環基、置換芳香族複素環基、置換芳香族複素環カルボニル、置換芳香族複素環オキシカルボニル、置換芳香族複素環スルホニル、隣接する2つの炭素原子と一緒になって形成される置換芳香族複素環及び置換複素環、置換フェニレン、置換ナフチレン、置換ヘテロアリレンならびに置換脂環式複素環基の脂環式複素環上から任意の1つの水素原子を除いてできる2価基における置換基の定義において、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルコキシカルボニルアミノ、低級アルカノイル、低級アルカノイルアミノ及びモノもしくはジ低級アルキルアミノの低級アルキル部分、低級シクロアルキル、低級シクロアルキルカルボニル及び低級シクロアルキルオキシカルボニルの低級シクロアルキル部分、アリール、アリールオキシ及びアロイルのアリール部分、アラルキル及びアラルキルオキシのアリール部分及びアルキレン部分、芳香族複素環基ならびに脂環式複素環基はそれぞれ前記と同義であり、ハロゲン置換低級アルキル及びヒドロキシ置換低級アルキルのアルキレン部分は前記低級アルキルから水素原子を1つ除いたものと同義であり、ハロゲン置換低級アルキルのハロゲン部分は前記ハロゲンと同義である。なお、ジ(低級アルキル)アミノの2つの低級アルキル部分は同一でも異なっていてもよい。
【0047】
隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基としては、例えば同一または異なって置換数1〜3の、より具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、カルバモイル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、低級シクロアルキルカルボニル、低級アルキルスルホニル、芳香族複素環カルボニル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は前記置換基群Aと同義である)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル(該置換低級シクロアルキルにおける置換基は前記置換基群Aと同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は前記置換基群Bと同義である)、置換もしくは非置換のアラルキル(該置換アラルキルにおける置換基は前記置換基群Bと同義である)、置換もしくは置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基は前記置換基群Bと同義である)、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く。なお、該置換芳香族複素環基における置換基は前記置換基群Bと同義である)、-NR30aR30b[式中、R30a及びR30bは同一または異なって低級アルカノイル、低級アルキルスルホニル、芳香族複素環カルボニル、置換もしくは非置換の低級アルキル(該置換低級アルキルにおける置換基は前記置換基群Aと同義である)、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル(該置換低級シクロアルキルにおける置換基は前記置換基群Aと同義である)、置換もしくは非置換のアリール(該置換アリールにおける置換基は前記置換基群Bと同義である)、置換もしくは非置換のアラルキル(該置換アラルキルにおける置換基は前記置換基群Bと同義である)、置換もしくは非置換の脂環式複素環基(該置換脂環式複素環基における置換基は前記置換基群Bと同義である)または置換もしくは非置換の芳香族複素環基(該置換芳香族複素環基における置換基は前記置換基群Bと同義である)を表すか、またはR30aとR30bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基(該隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基は前記置換基群Bと同義である)を形成する]、-CONR30cR30d(式中、R30c及びR30dはそれぞれ前記R30a及びR30bと同義である)等が挙げられる。
【0048】
前記隣接する窒素原子と一緒になって形成される置換複素環基における置換基の定義において、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル及び低級アルキルスルホニルの低級アルキル部分、低級シクロアルキル及び低級シクロアルキルカルボニルの低級シクロアルキル部分、アリール及びアラルキルのアリール部分、アラルキルのアルキレン部分、芳香族複素環基及び芳香族複素環カルボニルの芳香族複素環基部分、脂環式複素環基ならびに隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基はそれぞれ前記と同義である。
【0049】
化合物(I)、(II)及び(III)の薬理学的に許容される塩としては、薬理学的に許容される金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩、酸付加塩等が挙げられる。薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩が挙げられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、リジン、グリシン、フェニルアラニン等のアミノ酸の付加塩が挙げられ、薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。
【0050】
本発明者らは、GPCRであるGPR4の有するシグナル伝達に関する機能を抑制する物質が、X線照射による肺障害の予防及び/または治療に有効であるとの新知見を見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、構成活性型のGPCRであるGPR4の構成的活性を抑制する物質の探索を行い、GPR4の構成的活性を抑制する物質が、X線照射による肺障害の予防及び/または治療に有効であることを見出した。
【0051】
GPR4の有するシグナル伝達に関する機能を抑制する物質としては、GPR4自身の発現を阻害または抑制する物質、リガンドのGPR4への結合を阻害する物質、GPR4へのリガンド結合により生ずるシグナル伝達[例えば、細胞内cAMP濃度の変化、細胞内Ca2+濃度の変化、mitogen-activated protein(MAP)キナーゼのリン酸化等が含まれる]を抑制する物質、GPR4の構成的活性により生ずるシグナル伝達を抑制する物質(例えばGPR4のインバースアゴニスト等が含まれる)、抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)等によりGPR4発現細胞を減少させる物質等が含まれる。上記物質は、これら機能を有する物質であれば、その構造は特に限定されず、公知の構造を有するものでもよい。GPR4としては、例えば配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質、あるいは配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つに記載のアミノ酸配列において一つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有し、かつ配列番号11記載のアミノ酸配列を有する蛋白質のシグナル伝達に関する機能を有する蛋白質等が挙げられる。
【0052】
配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つに記載のアミノ酸配列において一つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有し、かつ配列番号11記載のアミノ酸配列を有する蛋白質のシグナル伝達に関する機能を有する蛋白質は、文献[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons(1987-1997年)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research, 10, 6487(1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)等]記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
【0053】
欠失、置換または付加したアミノ酸の数は特に限定されないが、1個〜数10個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つに記載のアミノ酸配列において一つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加したとは、該アミノ酸配列中の任意かつ1もしくは複数の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換または付加があることを意味し、欠失、置換または付加が同時に生じてもよく、欠失、置換または付加されるアミノ酸残基については、天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸残基としては、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、L-グルタミン酸、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-アルギニン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン及びL-システインの各残基等が挙げられる。
【0054】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、tert-ブチルグリシン、tert-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
また、配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つに記載のアミノ酸配列において一つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換または付加したアミノ酸配列を有する蛋白質が、配列番号11記載のアミノ酸配列を有する蛋白質のシグナル伝達に関する機能を有するには、そのアミノ酸配列と配列番号11記載のアミノ酸配列とが、少なくとも75%以上、通常は80%以上、好ましくは90%以上、さらには95%以上の同一性を有していることが好ましい。
【0055】
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTN(塩基対塩基データベース)やBLASTX(塩基対アミノ酸データベース)とよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいたBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる{Gapped BLASTについては文献[Nuc. Acids Res., 25, 3389-3402 (1997)]を参照}。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.参照)。
【0056】
GPR4自身の発現を阻害または抑制する物質としては、例えば、配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列から選ばれる連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、アンチセンス・オリゴヌクレオチドともいう)、配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ配列番号11記載のアミノ酸配列を有する蛋白質の発現を阻害または抑制するオリゴヌクレオチド、これらのオリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)等が挙げられる。
【0057】
上記アンチセンス・オリゴヌクレオチドとしては、配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列から選ばれる連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドであれば特に限定されないが、好ましくは17〜60塩基、より好ましくは20〜60塩基、さらに好ましくは30〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドが挙げられる。特に好ましくは翻訳開始領域にある上記オリゴヌクレオチドの相補的配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチドが挙げられる。該アンチセンス・オリゴヌクレオチドは、配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列またはその断片の塩基配列に関する情報に基づき、常法により、例えばDNA合成機を用いることにより調製することができる。
【0058】
オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’-P5’ホスホアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステルとの結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾリルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’-O-プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’-メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる[細胞工学, 16, 1463 (1997)]。
【0059】
上記アンチセンス・オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体を用い、アンチセンスRNA/DNA技術[バイオサイエンスとインダストリー, 50, 322 (1992)、化学, 46, 681 (1991)、Biotechnology, 9, 358 (1992)、Trends in Biotechnology, 10, 87 (1992) 、Trends in Biotechnology, 10, 152 (1992)、細胞工学, 16, 1463 (1997)]、トリプル・ヘリックス技術[Trends in Biotechnology, 10, 132 (1992)]、リボザイム技術[Current Opinion in Chemical Biology, 3, 274 (1999)、FEMS Microbiology Reviews, 23, 257 (1999)、Frontiers in Bioscience, 4, D497 (1999)、Chemistry & Biology, 6, R33 (1999)、Nucleic Acids Research, 26, 5237 (1998)、Trends in Biotechnology, 16, 438 (1998)]、あるいはデコイDNA法[Nippon Rinsho - Japanese Journal of Clinical Medicine, 56, 563 (1998)、Circulation Research, 82, 1023 (1998)、Experimental Nephrology, 5, 429 (1997)、Nippon Rinsho - Japanese Journal of Clinical Medicine, 54, 2583 (1996)]に準じて、GPR4自身の発現を阻害または抑制することができる。
【0060】
配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチドとは、配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列を有するDNAの一部、または全部をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーまたはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0 mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65 ℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150 mmol/L塩化ナトリウム、15 mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65 ℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNA等を挙げることができる。ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University (1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズするヌクレオチドとしては、例えば上記BLASTやFASTA等を用いて計算したときに12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列を有するDNAの相補的配列を有するDNAと少なくとも75%以上の相同性を有するDNAが好ましく、より好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。ヌクレオチドとしては、DNA、RNA等いずれも用いられるがDNAが好適に用いられる。
【0061】
上記アンチセンス・オリゴヌクレオチドもしくは該アンチセンス・オリゴヌクレオチド誘導体、または配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つに記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチドもしくは該ヌクレオチド誘導体を単独でまたはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノウィルスアソシエーテッドウィルスベクター等の遺伝子治療用ベクターに挿入した後、下記に記載した常法に従って製剤化したものをX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤として使用することもできる。
【0062】
遺伝子治療用ベクターを該予防及び/または治療剤として用いる場合には、該遺伝子治療用ベクターと遺伝子治療剤に用いる基剤を調合することにより製造することができる[Nature Genet., 8, 42 (1994)]。
上記基剤としては、通常注射剤に用いる基剤であればどのようなものでもよく、例えば蒸留水、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムと無機塩との混合物等の塩溶液、マンニトール、乳糖、デキストラン、ブドウ糖等の糖溶液、グリシン、アルギニン等のアミノ酸溶液、有機酸溶液または塩溶液とグルコース溶液との混合溶液等が挙げられる。また常法に従い、これらの基剤に浸透圧調整剤、pH調整剤、ゴマ油、ダイズ油等の植物油またはレシチンもしくは非イオン界面活性剤等の界面活性剤等の助剤を加えて、溶液、懸濁液または分散液として注射剤を調製してもよい。これらの注射剤を、粉末化、凍結乾燥等の操作により用時溶解用製剤として調製することもできる。
【0063】
該予防及び/または治療剤は、液体の場合はそのままで、固体の場合は、投与直前に、必要により滅菌処理をした上記の基剤に溶解して使用することができる。
投与方法としては、例えば患者の治療部位に吸収されるように、局所的に投与する方法を挙げることができる。また、非ウイルス遺伝子移入法によっても目的とする治療部位にDNAを輸送することができる。
【0064】
非ウイルス遺伝子移入法としては、リン酸カルシウム共沈法[Virology, 52, 456-467 (1973);Science, 209, 1414-1422 (1980)]、マイクロインジェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77, 5399-5403 (1980);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77, 7380-7384 (1980);Cell, 27, 223-231 (1981);Nature, 294, 92-94 (1981) ]、リポソームを介した膜融合-介在移入法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA,84, 7413-7417 (1987); Biochemistry, 28, 9508-9514 (1989);J. Biol. Chem., 264, 12126-12129 (1989);Hum. Gene Ther., 3, 267-275 (1992);Science, 249, 1285-1288 (1990);Circulation, 83, 2007-2011 (1992) ]、直接DNA取り込みまたは受容体-媒介DNA移入法[Science, 247, 1465-1468 (1990);J. Biol. Chem., 266, 14338-14342 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87, 3655-3659 (1991);J. Biol. Chem., 264, 16985-16987 (1989);BioTechniques, 11, 474-485 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87, 3410-3414 (1990);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88, 4255-4259 (1991);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87, 4033-4037 (1990);Proc. Natl. Acad. Sci. USA,88, 8850-8854 (1991);Hum. Gene Ther., 3, 147-154 (1991) ]等をあげることができる。
【0065】
リガンドのGPR4への結合を阻害する物質としては、例えば、GPR4を認識する抗体、GPR4に拮抗作用を有する化合物等をあげることができる。
上記抗体としては、GPR4を認識する抗体であればいずれも用いることができるが、GPR4を特異的に認識する抗体が好ましい。また該抗体はポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。このような抗体として、例えば、GPR4を認識する中和抗体等をあげることができる。また、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体等も本発明における抗体として用いることができる。GPR4を発現している細胞を減少させて、その機能を抑制する抗体としては、例えば、抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)を持つ抗体等をあげることができる。
【0066】
上記抗体は、例えば、以下の方法に準じて調製することができる。
(1)ポリクローナル抗体の作製
GPR4またはその部分断片ポリペプチドの精製標品、あるいはGPR4の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することによりポリクローナル抗体を作製することができる。
【0067】
投与する動物としては、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。
該抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100 μgが好ましい。
ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)や牛チログロブリン等のキャリア蛋白に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。
【0068】
該抗原の投与は、1 回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、該血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊(1976年)、Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]等で確認する。
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、該血清を分離、精製することによりポリクローナル抗体を取得することができる。
【0069】
分離、精製する方法としては、遠心分離、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿[Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988) ]、またはDEAE-セファロースカラム、陰イオン交換カラム、プロテインAまたはG-カラムあるいはゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィー等を、単独でまたは組み合わせて処理する方法が挙げられる。
(2)モノクローナル抗体の作製
(a)抗体産生細胞の調製
免疫に用いたGPR4またはその部分断片ポリペプチドの精製標品、あるいはGPR4の一部のアミノ酸配列を有するペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として供する。
【0070】
該抗体価を示したラットに抗原物質を最終投与した後3〜7日目に、脾臓を摘出する。
該脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
得られた沈殿画分の脾細胞をトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去した後、MEM培地で3回洗浄し、得られた脾細胞を抗体産生細胞として用いる。
【0071】
(b)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスまたはラットから取得した株化細胞を使用する。例えば、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(以下、P3-U1と略す)[Curr. Topics Microbiol. Immunol., 81, 1 (1978); Eur. J. Immunol., 6, 511 (1976)]、SP2/0-Ag14(SP-2)[Nature, 276, 269 (1978)]、P3-X63-Ag8653(653) [J. Immunol., 123, 1548 (1979) ]、P3-X63-Ag8(X63)[Nature, 256, 495 (1975) ]等を用いることができる。これらの細胞株は、8-アザグアニン培地[RPMI-1640培地にグルタミン(1.5 mmol/l)、2-メルカプトエタノール(5×10-5 mol/l)、ジェンタマイシン(10 μg/ml)及び牛胎児血清(FCS)(CSL社製、10%)を加えた培地(以下、正常培地という)に、さらに8-アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地]で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地で培養し、融合には該細胞を2×107個以上用いる。
【0072】
(c)ハイブリドーマの作製
(a)で取得した抗体産生細胞と(b)で取得した骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83 g、リン酸一カリウム0.21 g、食塩7.65 g、蒸留水1リットル、pH 7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
【0073】
得られた沈殿画分の細胞群をよくほぐし、該細胞群に、攪拌しながら、37 ℃で、108抗体産生細胞あたり、ポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)2 g、MEM 2 ml及びジメチルスルホキシド(DMSO)0.7 mlを混合した溶液を0.2〜1ml添加し、さらに1〜2分間毎にMEM培地1〜2 mlを数回添加する。
添加後、MEM培地を加えて全量が50 mlになるように調製する。該調製液を900rpmで5分間遠心分離後、上清を捨てる。得られた沈殿画分の細胞を、ゆるやかにほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかにHAT培地[正常培地にヒポキサンチン(10-4 mol/l)、チミジン(1.5×10-5 mol/l)及びアミノプテリン(4×10-7 mol/l)を加えた培地]100 ml中に懸濁する。
【0074】
該懸濁液を96穴培養用プレートに100 μl/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37 ℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部をとり文献[アンチボディズ(Antibodies)、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Chapter 14 (1988)]等に述べられている酵素免疫測定法により、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。
【0075】
酵素免疫測定法の具体例として、以下の方法をあげることができる。
免疫の際、抗原に用いたGPR4またはその部分断片ポリペプチドの精製標品、あるいはGPR4の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを適当なプレートにコートし、ハイブリドーマ培養上清もしくは後述の(d)で得られる精製抗体を第一抗体として反応させ、さらに第二抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗ラットまたは抗マウスイムノグロブリン抗体を反応させた後に標識物質に応じた反応を行い、抗原に用いたポリペプチドに特異的に反応するものを本発明で用いられるモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマとして選択する。
【0076】
該ハイブリドーマを用いて、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し[1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する]、安定して強い抗体価の認められたものを本発明で用いられるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ株として選択する。
(d)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2, 6, 10, 14-テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(c)で取得した本発明で用いられるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞5〜20×106細胞/匹を腹腔内に注射する。10〜21日間でハイブリドーマは腹水癌化する。
【0077】
該腹水癌化したマウスから腹水を採取し、3,000rpmで5分間遠心分離して固形分を除去する。
得られた上清より、ポリクローナル抗体で用いた方法と同様の方法でモノクローナル抗体を精製、取得することができる。
抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピングキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキットを用いて行う。ポリペプチド量は、ローリー法あるいは280 nmでの吸光度より算出する。
【0078】
上記、GPR4を認識する抗体を含有する、X線照射による肺障害の予防及び/または治療剤は以下のように調製することができる。
該抗体を有効成分として含有する医薬は、該有効成分を単独で投与することも可能ではあるが、通常は該有効成分を薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。好ましくは水、あるいは食塩、グリシン、グルコース、ヒトアルブミン等の水溶液等の水性担体に溶解した無菌的な溶液が用いられる。また、製剤溶液を生理的条件に近づけるための緩衝化剤や等張化剤のような、薬理学的に許容される添加剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム等を添加することもできる。また、凍結乾燥して貯蔵し、使用時に適当な溶媒に溶解させて用いることもできる。
【0079】
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または静脈内投与等の非経口投与をあげることができる。投与形態としては、錠剤、注射剤等が挙げられる。
経口投与に適当な製剤としては、錠剤等が挙げられる。錠剤等は、乳糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
【0080】
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤等が挙げられる。例えば、注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液または両者の混合物からなる担体等を用いて調製する。また、非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、通常成人1日当たり10 μg/kg〜8 mg/kgである。
【0081】
GPR4の構成的活性により生じるシグナル伝達を抑制する物質は、該構成的活性により生ずるシグナル伝達を抑制することのできる物質を探索することによっても取得することができる。
次に、化合物(I)及び化合物(III)の製造方法について説明する。
以下に示した製造法において、定義した基が反応条件下変化するか、または方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で常用される方法、例えば官能基の保護、脱保護等[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス 第三版(Protective Groups in Organic Synthesis, the third edition)、グリーン(T. W. Greene)、ワッツ(Peter G. M. Wuts)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)]の手段に付すことにより容易に製造を実施することができる。また、必要に応じて置換基導入等の反応工程の順序を変えることもできる。
【0082】
化合物(I)は、例えばWO2004/017995に記載の方法によって得ることができる。
次に、化合物(II)及び(III)の製造方法について説明する。化合物(II)及び(III)は、例えば以下の製造法によって得ることができる。
製造法1
【0083】
【化21】

【0084】
[式中、R31は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表し、Dは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表し、R25、R26a、R26b、R26c及びWはそれぞれ前記と同義である]
工程1
化合物(VI)は、市販の化合物(IV)をUS5151435記載の方法またはそれに準じた方法に付すことによって合成することができる。
【0085】
化合物(V)は特開平3-95181記載の方法またはそれに準じた方法によって得られる。
工程2
化合物(VII)は、化合物(VI)を溶媒中、1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の還元剤存在下、必要により触媒量から大過剰の無機化合物または酸を加え、0 ℃から使用する溶媒の沸点の間の温度、好ましくは室温から120 ℃で、10分間から48時間反応させることによって合成することができる。
【0086】
溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、それらの混合溶媒等を用いることができ、好ましくはメタノールまたはエタノールを用いることができる。
還元剤としては、例えばスズ(0)、塩化スズ(II)、塩化チタン(III)、塩化クロム(II)、亜鉛、鉄、ニッケル、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等を用いることができ、好ましくは塩化スズ(II)、塩化チタン(III)、鉄を用いることができる。
【0087】
無機化合物としては、例えば塩化ニッケル(II)、ラネーニッケル、塩化コバルト(II)等を用いることができる。
酸としては、例えば塩酸、硫酸、酢酸等を用いることができ、好ましくは塩酸を用いることができる。
工程3
化合物(III-a)は、化合物(VII)を溶媒中、1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の塩基存在下、1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の(VIII)または(IX)と、0 ℃から使用する溶媒の沸点の間の温度、好ましくは室温から120 ℃で10分間から48時間反応させることによって合成することができる。
【0088】
塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムtert-ブトキシド、ピリジン、N-メチルモルホリン、炭酸カリウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、または酸クロリドもしくは酸無水物と反応しない塩基性官能基が担持された機能性レジン等を用いることができ、好ましくはトリエチルアミン、ピリジンまたはポリビニルピリジンを用いることができる。
【0089】
溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、THF、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、DMF、DMA、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ピリジン、テトラリン、それらの混合溶媒等を用いることができ、好ましくはクロロホルムまたはジクロロメタンを用いることができる。
製造法2
【0090】
【化22】

【0091】
(式中、R32a及びR32bは、同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキルまたは置換もしくは非置換の低級シクロアルキルを表すか、またはR32aとR32bが一緒になって置換もしくは非置換の低級シクロアルキルを形成し、R25、R26a、R26b、R26c及びWはそれぞれ前記と同義である)
工程4
化合物(III-b)は、溶媒中、1当量から大過剰量、好ましくは1〜3当量の還元剤存在下、化合物(VII)及び1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の化合物(X)を、-78〜100 ℃、好ましくは0〜50 ℃で、10分間から24時間反応させることによって合成することができる。また、この反応は、必要により触媒量から大過剰量、好ましくは0.5〜5当量の酸を添加してもよい。
【0092】
還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができ、好ましくはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いることができる。
酸としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、塩酸等を用いることができ、好ましくは酢酸を用いることができる。
【0093】
溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMA、アセトニトリル、ヘキサン、それらの混合溶媒等を用いることができ、好ましくはTHFまたはジクロロメタンを用いることができる。
製造法3
【0094】
【化23】

【0095】
(式中、ncは0〜3の整数を表わし、R33は低級アルキルを表し、R34a及びR34bはそれぞれ前記R15a及びR15bと同義であり、R25、R26a、R26b、R26c及びWはそれぞれ前記と同義である)
工程5
化合物(XI)は、製造法2に準じて得られる化合物(III-c)を溶媒中、0 ℃から使用する溶媒の沸点の間の温度、好ましくは室温から100 ℃で、1当量から大過剰量の塩基存在下、1〜48時間、好ましくは1〜3時間反応させることによって合成することができる。
【0096】
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド等を用いることができ、好ましくは水酸化ナトリウムを用いることができる。
溶媒としては、例えば水、THF、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、それらの混合溶媒等を用いることができ、好ましくはTHF、メタノールまたはそれらと水の混合溶媒を用いることができる。
工程6
化合物(XI)を塩基性溶媒中、1当量から大過剰量、好ましくは1〜20当量のハロゲン化剤と、-10〜100 ℃、好ましくは室温で10分間から24時間反応させることによって相当する酸ハロゲン化物を合成することができる。
【0097】
塩基性溶媒としては、例えばピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、それらの混合溶媒等を用いるか、またはジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMA、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒にピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン等を混合して用いることでき、好ましくはピリジンを用いることができる。
【0098】
ハロゲン化剤としては、例えば塩化チオニル、オキサリルクロリド、オキシ塩化リンを用いることができ、好ましくは塩化チオニルを用いることができる。
次に、得られた酸ハロゲン化物を溶媒中、必要により1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の塩基存在下、1当量から大過剰量、好ましくは1〜10当量の化合物(XII)と、-30 ℃から使用する溶媒の沸点の間の温度、好ましくは0 ℃から室温で、1分間から24時間、好ましくは30分間から2時間反応させることによって化合物(III-d)を合成することができる。
【0099】
塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン等を用いることができ、好ましくはピリジンまたはトリエチルアミンを用いることができる。
溶媒としては、例えばジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMA、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等を用いることができる。
【0100】
化合物(III-d)の合成は、ペプチド化学で常用される手法を用いて行うこともできる。すなわち、化合物(XI)を溶媒中、0.5〜10当量の縮合剤存在下、1〜10当量の化合物(XII)と、0〜50 ℃で、10分間から70時間反応させることによって化合物(III-d)を合成することができる。
縮合剤としては、例えば1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド結合ポリスチレンレジン(EDCレジン)等が挙げられる。EDCレジンは文献[テトラヘドロン レターズ(Tetrahedron Letters)34巻、48号、7685頁 (1993年)]記載の方法で製造することができる。
【0101】
溶媒としては、例えばジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMA、DMSO、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等を用いることができ、好ましくはDMFまたはTHF等を用いることができる。
またこの時、N-ヒドロキシこはく酸イミド、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等、好ましくは1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等の添加剤を用いることもできる。
工程7
化合物(II-e)は、化合物(II-d)を溶媒中、-78〜100 ℃で、2〜4当量の還元剤と10分間から24時間、好ましくは1〜3時間反応させることによって製造することができる。
【0102】
還元剤としては、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、ジイソプロピル水素化アルミニウムリチウム等を用いることができ、好ましくは水素化アルミニウムリチウムまたは水素化ホウ素ナトリウムを用いることができる。
溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、THF、1,4-ジオキサン、DMF、DMA、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、それらの混合溶媒等を用いることができ、好ましくはメタノール、THFまたはトルエンを用いることができる。
【0103】
上記製造法における生成物の単離、精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことができる。さらに一般的な並列合成法で常用される精製法、例えば、スカベンジャーレジン、イオン交換レジンを用いて精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することもできる。
【0104】
化合物(I)、(II)及び(III)の塩を取得したい場合には、化合物(I)、(II)及び(III)の塩が得られるときはそのまま精製すればよく、また化合物(I)、(II)及び(III)が遊離の形で得られるときは、化合物(I)、(II)及び(III)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離・精製すればよい。
本発明のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤は、活性成分として単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0105】
投与形態としては、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、注射剤などがある。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物は、水、蔗糖、ソルビット、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。また、錠剤、散剤及び顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニット等の賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。
【0106】
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0107】
次に、化合物(I)、化合物(II)及び化合物(III)の薬理作用について実験例により具体的に説明する。
以下の試験例で用いた化合物1及び2は、それぞれ{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニル}{4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)シクロヘキシル}アミン及び2-(2-エチル-5,7-ジメチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)-8-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-10,11-ジヒドロ[b,f]アゼピン 2フマル酸塩(WO2004/017995)である。
試験例1: GPR4拮抗作用
WO03/087366記載の方法に準じて、ヒトGPR4のアッセイ細胞の構築を行った。本アッセイ細胞を用いることにより、ヒトGPR4の構成活性をレポーター(ホタル・ルシフェラーゼ)の活性で検出することができる。
【0108】
ヒトGPR4誘導発現プラスミドpAGal9-GPR4(2 μg:WO03/087366)及びレポータープラスミドpACREpluc(2 μg;WO03/087366)を、エレクトロポレーション法により、6×106細胞のKJMGER8(WO03/087366)に共導入した。該形質転換株を8 mLのRPMI1640・ITPSG培地〔RPMI1640培地(日水製薬社製)に、1/40量の7.5% NaHCO3、3% 200 mmol/L L-グルタミン溶液(インビトロジェン社製)、0.5% ペニシリン・ストレプトマイシン溶液(インビトロジェン社製、5,000 units/ml ペニシリン、5,000 μg/ml ストレプトマイシン)、10 mmol/L N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(N-2-hydroxyethylpiperazine-N'-2-ethanesulfonic acid; HEPES)、3 μg/mlインシュリン、5 μg/mlトランスフェリン、5 mmol/Lピルビン酸ナトリウム、125 nmol/L亜セレン酸ナトリウム、1 mg/ml ガラクトースを添加した培地〕に懸濁し、CO2インキュベーター中、37 ℃で24時間培養した。培養後、ブラストサイジンS(2.0μg/ml)、ハイグロマイシンB(300 μg/ml)及びジェネティシン(500 μg/ml)を添加し、さらに14日間培養して安定形質転換株(GPR4アッセイ細胞と呼ぶ)を取得した。該形質転換株を、ブラストサイジンS(2.0μg/ml)、ハイグロマイシンB(300 μg/ml)及びジェネティシン(500 μg/ml)を含むRPMI1640・ITPSG培地で継代した。
【0109】
同様にして、コントロールプラスミドpAGal9-nd(2 μg;WO03087366)及びレポータープラスミドpACREpluc(2 μg;WO03087366)をKJMGER8に共導入し、安定形質転換株(コントロール細胞と呼ぶ)を取得した。
得られたGPR4発現細胞を白色プレートに1ウェル当たり105個を播種し、反応液中10 nmol/Lになるようにβ-エストラジオール(β-estradiol、以下E2と略する;Sigma-Aldrich社)を培地で希釈したものと試験化合物を加え、37 ℃、5%CO2インキュベーター中で6 時間反応した。その後、Steady Glo Luciferase Assay System(Promega社)溶液を加え反応を停止し、トップカウント(Packard, Meriden, CT, USA)で1秒間の発光量を測定した。
【0110】
試験化合物の活性(拮抗作用)は、下の式に示す通りE2添加時と非添加時のカウント数(count per second)をもとに算出した阻害率で表した。IC50値は、阻害率からLogit-Log変換法の線形近似解析法によって算出した。
式中、A、B及びCはそれぞれ以下の意味を表す。
A:E2及び試験化合物を添加時のカウント数
B:E2及び試験化合物の両方が非添加時のカウント数
C:E2のみ添加時のカウント数
【0111】
【数1】

【0112】
結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
以上の結果より、化合物1及び2が、GPR4拮抗作用を有することがわかった。この結果から、化合物(I)、(II)及び(III)が、GPR4拮抗作用を有することが示された。
試験例2:X線誘発TNF-α産生に対する化合物1の作用
以下の試験は、公知の方法[ストラーレンセラピー・ウント・オンコロジー(Strahlentherapie und Onkologie)、第180(7)巻、442-448頁、2004年]に準じて行った。 8週齢の雌性C57/BL6マウス(日本チャールス・リバー、神奈川)の胸部に12.5GyのX線を麻酔下で照射した。照射6時間後に気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、洗浄液(BALF)中のTNF-α量をELISA (DuoSet ELISA Development System、フナコシ、東京)にて測定した。溶媒及び薬物投与はX線照射の1時間前に実施した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
X線照射することにより無処置群に比較して、溶媒投与群のBALF中のTNF-α量は、2.6倍増加した。これに対し化合物1及びメチルプレドニゾロン投与群は、それぞれ40%及び36%の抑制作用を示した。
以上の結果から、本発明の化合物がX線照射による肺障害の治療に有用であることが示唆される。
試験例3-1:オレイン酸誘発肺障害モデルに対する抑制作用(1時間前投与)
Wistar系雄性ラットに0.1%牛血清アルブミン水溶液に懸濁した10 v/v%オレイン酸溶液または0.1%牛血清アルブミン水溶液(陰性対照群)を1 mL/kgで静脈内投与して、5時間後に肺胞洗浄を行い、回収した気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球浸潤及びBALF上清中の蛋白漏出量を評価した。メチルセルロースを0.5%含む水溶液(溶媒)に化合物1または2を懸濁し、オレイン酸溶液投与1時間前にそれぞれ30、100 mg/kgを経口投与した。また陽性対照群には化合物1または2懸濁液の代わりに溶媒を投与した。好中球の浸潤は、回収したBALF中の総細胞数を自動血球数測定装置(Celltac α MEK-6158;日本光電、東京)で測定した後、塗沫標本をCytospin3(Shandon, Inc., Pittsburgh, PA, USA)で作製し、ライト染色後、顕微鏡下で計数した。細胞数は総細胞数に好中球の百分率を乗じて算出した。また、BALF上清中の蛋白濃度は、BCA protein assay reagent kit (PIERCE, Rockford, USA)を用いて測定した。
【0117】
化合物1投与群を含む好中球数計数の結果を図1、蛋白濃度測定の結果を図2に示す。
図1に示すように、陰性対照群のBALF中好中球数は、一個体あたり(0.001±0.001)×105個(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、(24.433±4.308)×105個と好中球数の顕著な増加が認められた。化合物1投与群では、好中球数は1個体あたり(1.596±0.365)×105個であった。陽性対照群と比べ、化合物1投与群では好中球数の増加が93%抑制された。
【0118】
図2に示すように、陰性対照群のBALF上清中蛋白濃度は、0.102±0.024 mg/mL(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、9.841±0.994 mg/mLと蛋白濃度の顕著な増加が認められた。化合物1 投与群では、蛋白濃度1.889±0.414 mg/mLであり、陽性対照群と比べ蛋白濃度の上昇が81%抑制された。
化合物2投与群を含む好中球数計数の結果を図3、蛋白濃度測定の結果を図4に示す。
【0119】
図3に示すように、陰性対照群のBALF中好中球数は、一個体あたり(0.002±0.002)×105個(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、(31.861±5.966)×105個と好中球数の顕著な増加が認められた。化合物2 投与群では、好中球数は1個体あたり(3.264±0.521)×105個であった。陽性対照群と比べ、化合物2 投与群では好中球数の増加が89%抑制された。
【0120】
図4に示すように、陰性対照群のBALF上清中蛋白濃度は、0.001±0.001 mg/mL(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、7.463±1.089 mg/mLと蛋白濃度の顕著な増加が認められた。化合物2 投与群では、蛋白濃度3.697±0.426 mg/mLであり、陽性対照群と比べ蛋白濃度の上昇が50%抑制された。
試験例3-2:オレイン酸誘発肺障害モデルに対する抑制作用(5分後投与)
Wistar系雄性ラットに0.1%牛血清アルブミン水溶液に懸濁した10 v/v% オレイン酸溶液または0.1%牛血清アルブミン水溶液(陰性対照群)を1 mL/kgで静脈内投与して、5時間後に肺胞洗浄を行い、回収した気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球浸潤及びBALF上清中の蛋白漏出量を評価した。メチルセルロースを0.5%含む水溶液(溶媒)に化合物2を懸濁し、オレイン酸溶液投与5分後に100 mg/kgを経口投与した。また陽性対照群には化合物2懸濁液の代わりに溶媒を投与した。好中球の浸潤は、回収したBALF中の総細胞数を自動血球数測定装置(Celltac α MEK-6158;日本光電、東京)で測定した後、塗沫標本をCytospin3(Shandon, Inc., Pittsburgh, PA, USA)で作製し、ライト染色後、顕微鏡下で計数した。細胞数は総細胞数に好中球の百分率を乗じて算出した。また、BALF上清中の蛋白濃度は、BCA protein assay reagent kit(PIERCE, Rockford, USA)を用いて測定した。
【0121】
化合物2投与群を含む好中球数計数の結果を図5、蛋白濃度測定の結果を図6に示す。
図5に示すように、陰性対照群のBALF中好中球数は、一個体あたり(0.004±0.002)×105個(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、(8.938±1.174)×105個と好中球数の顕著な増加が認められた。化合物2投与群では、好中球数は1個体あたり(2.637±1.074)×105個であった。陽性対照群と比べ、化合物2投与群では好中球数の増加が84%抑制された。
【0122】
図6に示すように、陰性対照群のBALF上清中蛋白濃度は、0.124±0.014 mg/mL(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、3.989±0.474 mg/mLと蛋白濃度の顕著な増加が認められた。化合物2 投与群では、蛋白濃度1.136±0.364 mg/mLであり、陽性対照群と比べ蛋白濃度の上昇が74%抑制された。
試験例4:オレイン酸誘発肺障害モデルの肺浮腫に対する抑制作用(1時間前投与)
Wistar系雄性ラットに0.1%牛血清アルブミン水溶液に懸濁した10 v/v% オレイン酸溶液または0.1%牛血清アルブミン水溶液(陰性対照群)を1 mL/kgで静脈内投与して、2時間後に肺を摘出し、肺浮腫を評価した。メチルセルロースを0.5%含む水溶液(溶媒)に化合物1及び2を懸濁し、オレイン酸溶液投与1時間前にそれぞれ30、100 mg/kgを経口投与した。また陽性対照群には化合物懸濁液の代わりに溶媒を投与した。摘出した肺は湿重量を測定した後、オーブンで十分乾燥させて肺の乾燥重量を測定した。肺の湿重量から乾燥重量を引いた値を乾燥重量で割った値(肺乾湿重量比)を算出し、肺浮腫の指標とした。
【0123】
化合物1投与群を含む肺乾湿重量比の結果を図7に示す。
図7に示すように、陰性対照群の肺乾湿重量比は、一個体あたり、4.062±0.045(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、6.288±0.564と肺乾湿重量比の顕著な増加が認められた。化合物1投与群では、肺乾湿重量比1個体あたり、4.060±0.067であった。陽性対照群と比べ、化合物1投与群では肺乾湿重量比の増加が100%抑制された。
【0124】
化合物2投与群を含む肺乾湿重量比の結果を図8に示す。
図8に示すように、陰性対照群の肺乾湿重量比は、一個体あたり、3.884±0.040(平均値±標準誤差)であり、陽性対照群では、4.375±0.238と肺乾湿重量比の顕著な増加が認められた。化合物2 投与群では、肺乾湿重量比1個体あたり、3.899±0.017であった。陽性対照群と比べ、化合物2 投与群では肺乾湿重量比の増加が97%抑制された。
【0125】
化合物(I)、化合物(II)または化合物(III)の薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物及び人に使用されるものである。
本発明に係る医薬製剤は、活性成分として化合物(I)、化合物(II)または化合物(III)の薬理学的に許容される塩を単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0126】
投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば、経肺、静脈内等の非経口を挙げることができる。
投与形態としては、例えば錠剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。さらに、徐放的な適応も利用できる。
経口投与に適当な、例えば錠剤等は、乳糖、マンニット等の賦形剤、澱粉等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。
【0127】
経肺投与に適当な、例えば吸入剤は、活性成分化合物を粉末または液状にして、吸入噴射剤または担体中に配合し、適当な吸入容器に充填することにより製造される。また上記活性成分化合物が粉末の場合は通常の機械的粉末吸入器を、液状の場合はネブライザー等の吸入器をそれぞれ使用することもできる。ここで噴射剤としては公知のものを広く使用でき、フロン-11、フロン-12、フロン-21、フロン-22、フロン-113、フロン-114、フロン-123、フロン-142c、フロン-134a、フロン-227、フロン-C318、1,1,2,2-テトラフルオロエタン等のフロン系化合物、プロパン、イソブタン、n-ブタン等の炭化水素類、ジエチルエーテル等のエーテル類、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガス等を例示できる。さらに必要に応じて、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類等の希釈剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、例えばストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0128】
非経口投与に適当な注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0129】
化合物(I)、化合物(II)または化合物(III)と、それらの薬理学的に許容される塩の投与量及び投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常経口の場合、成人一人当り0.01 mg〜1 g、好ましくは0.05〜50 mgを一日一回ないし数回投与する。静脈内投与等の非経口投与の場合、成人一人当り0.001 〜100 mg 、好ましくは0.01〜10 mgを一日一回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量及び投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0130】
以下に、本発明の態様を実施例及び参考例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
参考例1:2-(2-エチル-5,7-ジメチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)-8-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-10,11-ジヒドロ[b,f]アゼピン 2フマル酸塩(化合物2)
WO2004/017995記載の合成法に従って化合物2を合成した。
参考例2:{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニル}{4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)シクロヘキシル}アミン(化合物1)
工程1
2-エチル-5,7-ジメチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(US5424432)(3.50 g, 20.0 mmol)をDMF(67 mL)に溶解し、水酸化リチウム1水和物(1.26 g, 30.0 mmol)を加え室温にて20分間攪拌した後に、p-ニトロベンジルブロミド(4.31 g, 20.0 mmol)をゆっくりと加え、そのまま室温で30分間攪拌した。反応混合物に水(130 mL)を加え、沈殿した結晶をろ取して水で洗浄し、減圧乾燥させ2-エチル-5,7-ジメチル-3-(4-ニトロベンジル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(4.91 g, 15.8 mmol, 収率79.1%)を得た。
APCI-MS: m/z 311 [M + H]+
1H NMR (CDCl3)δ(ppm): 1.32 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 2.57 (s, 3H), 2.64 (s, 3H), 2.77 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 5.45 (s, 2H), 6.92 (s, 1H), 7.28 (m, 2H), 8.16 (m, 1H).
工程2
工程1で得られた2-エチル-5,7-ジメチル-3-(4-ニトロベンジル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(4.81 g, 15.5 mmol)をメタノール(155 mL)に溶解し、パラジウム/炭素(10%, wet, 1.65 g, 1.55 mmol)及びギ酸アンモニウム(9.77 g, 155 mmol)を加え室温で40分間攪拌した。反応混合物をセライトでろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣に水を加えて析出した結晶をろ取し、水で洗浄した。得られた粗結晶に酢酸エチル−ヘキサン(2:3)を加え、還流下1時間攪拌し、室温に冷却して析出した結晶をろ取して3-(4-アミノベンジル)-2-エチル-5,7-ジメチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(3.53 g, 12.6 mmol, 収率81.2%)を得た。
APCI-MS: m/z 281 [M + H]+
1H NMR (CDCl3)δ(ppm): 1.29 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 2.59 (s, 3H), 2.62 (s, 3H), 2.76 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 3.52 (brs, 2H), 5.33 (s, 2H), 6.56 (m, 2H), 6.87 (s, 1H), 6.93 (m, 2H).
【0131】
工程3
工程2で得られた3-(4-アミノベンジル)-2-エチル-5,7-ジメチル-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(0.713 g, 2.54 mmol)をジクロロエタン(10 mL)に懸濁し、酢酸(1.0 mL)、4-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチル(0.811 mL, 5.09 mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(1.62 g, 7.63 mmol)を加え、室温で20分間攪拌した。反応混合物に2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=7:3)で精製し、4-{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニルアミノ}シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル (1.10 g, 2.54 mmol, 100%)をジアステレオマーの混合物(混合比=7:3)として得た。
APCI-MS: m/z 435 [M + H]+
1H NMR (CDCl3)δ(ppm): 1.10 (m, 7/10H), 1.20-1.36 (m, 7+3/10H), 1.42-2.50 (m, 9H), 2.59 (s, 3H), 2.61 (s, 3H), 2.80 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 3.19 (m, 3/7H), 3.42 (m, 1H), 3.62 (m, 1H), 4.13 (m, 2+7/10H), 5.32 (s, 2H), 6.47 (brd, J = 8.2 Hz, 2H), 6.86 (s, 1H), 6.96 (d, J = 8.2 Hz, 2H).
工程4
工程3で得られた4-{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニルアミノ}シクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(1.18 g, 2.72 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解し、2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(10 mL)を加え室温で1.5時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、1 mol/L塩酸でpHを6に調整した後、塩化ナトリウムを加え、クロロホルムで5回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮し、4-{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニルアミノ}シクロヘキサンカルボン酸(1.11 g, 2.72 mmol, 収率100%)をジアステレオマーの混合物(混合比=7:3)として得た。
APCI-MS: m/z 407 [M + H]+
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm): 1.03-1.26 (m, 4H), 1.34-2.40 (m, 8H), 2.50 (6H, DMSOのピークとオーバーラップ), 2.78 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 3.07 (m, 1H), 5.23 (s, 2H), 5.38 (m, 3/10H), 5.46 (m, 7/10H), 6.48 (m, 2H), 6.87 (s, 1H), 6.91 (m, 2H).
【0132】
工程5
工程4で得られた4-{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニルアミノ}シクロヘキサンカルボン酸(1.15 g, 2.83 mmol)をTHF−DMF(5:1)(17 mL)に溶解し、N-メチルピペラジン(0.470 mL, 4.24 mmol)、EDC(0.813 g, 4.24 mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.433 g, 2.83 mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣に水及び飽和重曹水を加えて酢酸エチルで3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:トリエチルアミン:クロロホルム=2.5:2.5:95)で精製し、目的化合物を含む画分のうち、低極性の画分の濃縮残渣をジエチルエーテルに溶解し、シュウ酸を加え、生成した結晶をろ取しジエチルエーテルで洗浄して{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニル}{4-(4-メチルピペラジン-1-イルカルボニル)シクロヘキシル}アミンの一方のジアステレオマーのシュウ酸塩(0.518 g, 0.895 mmol, 収率32%)を得た。
APCI-MS: m/z 489 [M + H]+
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm): 1.23 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.43 (m, 2H), 1.50-1.77 (m, 6H), 2.50 (6H, DMSOのピークとオーバーラップ), 2.61 (s, 3H), 2.66 (m, 1H), 2.78 (q, J = 7.5 Hz, 3H), 2.90 (brs, 4H), 3.43 (m, 1H), 3.64 (brs, 4H), 5.24 (s, 2H), 6.53 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.89 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.92 (s, 1H).
また高極性の画分の濃縮残渣をエタノール−ジイソプロピルエーテルから再結晶し、{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニル}{4-(4-メチルピペラジン-1-イルカルボニル)シクロヘキシル}アミンのもう一方のジアステレオマー(0.105 g, 0.215 mmol, 収率7.6%)を得た。
APCI-MS: m/z 489 [M + H]+
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm): 1.14 (m, 2H), 1.22 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 1.45 (m, 2H), 1.65 (m, 2H), 1.94 (m, 2H), 2.17 (s, 3H), 2.24 (m, 4H), 2.50 (7H, DMSOのピークとオーバーラップ), 2.78 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 3.07 (brs, 1H), 3.44 (m, 4H), 5.23 (s, 2H), 5.39 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.48 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.89 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 6.92 (s, 1H).
【0133】
工程6
工程5で得られた{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニル}{4-(4-メチルピペラジン-1-イルカルボニル)シクロヘキシル}アミンの一方のジアステレオマーのシュウ酸塩(0.200 g,0.346 mmol)を飽和重曹水に懸濁し、クロロホルムで2回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して減圧濃縮した。残渣をTHF(2.5 mL)に溶解し、水素化リチウムアルミニウム(0.105 g, 2.76 mmol)及び塩化アルミニウム(0.092 g, 0.691 mmol)のTHF(8 mL)溶液を加えて、0 ℃で15分間攪拌した。反応混合物に2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した。残渣をジイソプロピルエーテルから結晶化し、化合物1の一方のジアステレオマー(0.125 g, 0.263 mmol, 収率76%)を得た。
APCI-MS: m/z 475 [M + H]+
1H NMR (CDCl3)δ(ppm): 1.27 (m, 2H), 1.30 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 1.55-1.72 (m, 7H), 2.18 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 2.27 (s, 3H), 2.37-2.47 (m, 8H), 2.59 (s, 3H), 2.61 (s, 3H), 2.80 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.51 (m, 1H), 3.70 (brs, 1H), 5.32 (s, 2H), 6.48 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.86 (s, 1H), 6.95 (d, J = 8.6 Hz, 2H).
また、工程5で得られた{4-(2-エチル-5,7-ジメチルイミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イルメチル)フェニル}{4-(4-メチルピペラジン-1-イルカルボニル)シクロヘキシル}アミンのもう一方のジアステレオマー(0.057 g, 0.117 mmol)をTHF(1.1 mL)に溶解し、水素化リチウムアルミニウム(0.0178 g, 0.468 mmol)及び塩化アルミニウム(0.031 g, 0.234 mmol)のTHF(3.0 mL)溶液を加えて、0 ℃で15分間攪拌した。反応混合物に2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮し、残渣をジイソプロピルエーテルから結晶化し、化合物1のもう一方のジアステレオマー(0.0426 mg, 0.0897 mmol, 収率77%)を得た。
APCI-MS: m/z 475 [M + H]+
1H NMR (CDCl3)δ(ppm): 0.95-1.06 (m, 4H), 1.30 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 1.47 (m, 1H), 1.66 (m, 2H), 1.86 (m, 2H), 2.10 (m, 2H), 2.14 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.43 (brs, 6H), 2.59 (s, 3H), 2.61 (s, 3H), 2.80 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.13 (m, 1H), 3.46 (brs, 1H), 5.31 (s, 2H), 6.46 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 6.86 (s, 1H), 6.95 (d, J = 8.6 Hz, 2H).
【実施例1】
【0134】
製剤例1:錠剤
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。40 gの化合物1、乳糖286.8 g及び馬鈴薯澱粉60 gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120 gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2 gを加えて混合し、径8 mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT-15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分10 mgを含有する)を得る。
処方 化合物1 20 mg
乳糖 143.4 mg
馬鈴薯澱粉 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6 mg
200 mg
実施例2:ドライパウダー吸入剤
ジェットミル(A-O JET;セイシン企業)を用いて、10 gの化合物1を、空気圧5 kg/cm2、1.5 g/分の送り速度で粉砕した(体積平均粒子径:5.7 μm)。得られた化合物1の粉砕物と乳糖(Pharmatose325M;DMV社製)とを重量比1:5で混合し、ドライパウダー製剤を得る。慣用のドライパウダー吸入器により、投与が可能である。
処方 化合物1 16.7 mg
乳糖 83.3 mg
100 mg
実施例3:注射剤
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。1 gの化合物1を精製大豆油に溶解させ、精製卵黄レシチン12 g及び注射用グリセリン25 gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000 mLとして練合・乳化する。得られた分散液を0.2 μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2 mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2 mgを含有する)を得る。
処方 化合物1 2 mg
精製大豆油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72 mL
2.00 mL
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】化合物1(前投与)のオレイン酸誘発気道内好中球浸潤に対する抑制作用を示す図である。
【図2】化合物1(前投与)のオレイン酸誘発気道内蛋白漏出に対する抑制作用を示す図である。
【図3】化合物2(前投与)のオレイン酸誘発気道内好中球浸潤に対する抑制作用を示す図である。
【図4】化合物2(前投与)のオレイン酸誘発気道内蛋白漏出に対する抑制作用を示す図である。
【図5】化合物2(後投与)のオレイン酸誘発気道内好中球浸潤に対する抑制作用を示す図である。
【図6】化合物2(後投与)のオレイン酸誘発気道内蛋白漏出に対する抑制作用を示す図である。
【図7】化合物1(前投与)のオレイン酸誘発肺浮腫に対する抑制作用を示す図である。
【図8】化合物2(前投与)のオレイン酸誘発肺浮腫に対する抑制作用を示す図である。
【符号の説明】
【0136】
###:p<0.001(陽性対照群の陰性対照群対比;Aspin-Welch test)
##:p<0.01(陽性対照群の陰性対照群対比;Aspin-Welch test)
#:p<0.05(陽性対照群の陰性対照群対比;Aspin-Welch test)
‡‡‡:p<0.001(化合物1投与群の陽性対照群対比;Aspin-Welch test)
‡:p<0.05(化合物1投与群の陽性対照群対比;Aspin-Welch test)
**:p<0.01(化合物2投与群の陽性対照群対比;Student’s t-test)
*:p<0.05(化合物2投与群の陽性対照群対比;Student’s t-test)
†:p<0.05(化合物2投与群の陽性対照群対比;Aspin-Welch test)
【配列表フリーテキスト】
【0137】
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:合成DNA
配列番号10−人工配列の説明:合成DNA
配列番号15−人工配列の説明:合成DNA
配列番号16−人工配列の説明:合成DNA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号11で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質のシグナル伝達に関する機能を抑制する物質を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項2】
以下の1)〜4)
1)配列番号12で表される塩基配列の連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
2)配列番号14で表される塩基配列の連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
3)配列番号18で表される塩基配列の連続した15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドの相補的配列を有するオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
4)配列番号12、14及び18から選ばれるいずれか一つで表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質のシグナル伝達に関する機能を抑制する15〜60塩基からなるオリゴヌクレオチドまたは該オリゴヌクレオチド誘導体、
のいずれか一つを有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項3】
以下の1)〜4)
1)配列番号11で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と結合する抗体、
2)配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と結合する抗体、
3)配列番号17で表されるアミノ酸配列を含む蛋白質と結合する抗体、
4)配列番号11、13及び17から選ばれるいずれか一つで表されるアミノ酸配列において一つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加したアミノ酸配列からなり、かつ配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質のシグナル伝達に関する機能を有する蛋白質と結合する抗体、
のいずれか一つを有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項4】
式(I)
【化1】

[式中、R1はシアノ、ホルミル、置換もしくは非置換の複素環基、-NR5aR5b(式中、R5a及びR5bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、またはR5a及びR5bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)、-OR6(式中、R6は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)、-SR6a(式中、R6aは前記R6と同義である)、-CONR5cR5d(式中、R5c及びR5dはそれぞれ前記R5a及びR5bと同義である)または-CO2R6b(式中、R6bは前記R6と同義である)を表し、
R2は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表し、
R3及びR4は同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、
nは0または1を表し、
Xは-(CH2)2-または-CH=CH-を表し、
Yは
【化2】

(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、
R8a及びR8bは同一または異なって水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表すか、またはR8a及びR8bがそれぞれ隣接する2つの炭素原子と一緒になって置換もしくは非置換の芳香環または置換もしくは非置換の複素環を形成し、
R9は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換の複素環基または置換もしくは非置換のアラルキルを表す)を表す]で表される含窒素三環式化合物もしくはその四級アンモニウム塩またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項5】
R1が-NR5gR5h(式中、R5g及びR5hは隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する)であり、R2、R3及びR4が水素原子であり、nが1であり、Xが-(CH2)2-であり、Yが
【化3】

(式中、R10a、R10b及びR10cは同一または異なって水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルを表す)である請求項4記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項6】
式(II)
【化4】

〔式中、R11は水素原子、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基または置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表し、
A1-A2-A3-A4はCR12a=CR12b-CR12c=CR12d(式中、R12a、R12b、R12c及びR12dは同一または異なって、それぞれ前記R11と同義である)、N=CR12b-CR12c=CR12d(式中、R12b、R12c及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=N-CR12c=CR12d(式中、R12a、R12c及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=CR12b-N=CR12d(式中、R12a、R12b及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=CR12b-CR12c=N(式中、R12a、R12b及びR12cはそれぞれ前記と同義である)、N=CR12b-N=CR12d(式中、R12b及びR12dはそれぞれ前記と同義である)、CR12a=N-CR12c=N(式中、R12a及びR12cはそれぞれ前記と同義である)またはN=CR12b-CR12c=N(式中、R12b及びR12cはそれぞれ前記と同義である)を表し、
Qは置換もしくは非置換のフェニレン、置換もしくは非置換のナフチレン、置換もしくは非置換のヘテロアリレンまたは置換もしくは非置換の脂環式複素環基の脂環式複素環上から任意の1つの水素原子を除いてできる2価基を表し、
Tは(1)ホルミル、(2)置換もしくは非置換の低級アルキル、(3)置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、(4)置換もしくは非置換の低級アルカノイル、(5)置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、(6)置換もしくは非置換のアリール、(7)置換もしくは非置換のアラルキル、(8)置換もしくは非置換のアロイル、(9)置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)、(10)置換もしくは非置換の芳香族複素環カルボニル(該芳香族複素環カルボニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)、
(11)
【化5】

[式中、naは0〜3の整数を表し、
nbは1〜4の整数を表し、
Jは単結合またはカルボニルを表し、
Y1---Y2はCR14-CH2(式中、R14は水素原子、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ、シアノ、トリフルオロメチル、ホルミル、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、低級シクロアルキルカルボニルまたは低級アルコキシカルボニルアミノを表す)またはC=CHを表し、
R13は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]、
(12)-NR15aR15b[式中、R15a及びR15bは同一または異なって、水素原子、ホルミル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)または置換もしくは非置換の芳香族複素環カルボニル(該芳香族複素環カルボニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)を表すか、またはR15a及びR15bが隣接する窒素原子と一緒になって置換もしくは非置換の複素環基を形成する]、
(13)-OR16[式中、R16は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)、置換もしくは非置換の芳香族複素環オキシカルボニル(該芳香族複素環オキシカルボニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)、置換もしくは非置換の低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換のアリールスルホニル、置換もしくは非置換の芳香族複素環スルホニル(該芳香族複素環スルホニルの芳香族複素環基部分はテトラゾリルではない)または-C(=O)NR15aR15b(式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義である)を表す]、
(14)
【化6】

(式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義であり、
R17は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換のアロイルを表す)、
(15)
【化7】

(式中、R17は前記と同義であり、
R18は置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)、
(16)
【化8】

[式中、R18は前記と同義であり、
R19は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]、
(17)-C(=X1)-OR20[式中、X1は酸素原子または硫黄原子を表し、R20は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す。但し、X1が酸素原子を表す場合は、R20は水素原子ではない]、
(18)-C(=X2)-NR15aR15b(式中、X2は前記X1と同義であり、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義である)、または
(19)
【化9】

{式中、E---FはCR22a=CR22b[式中、R22a及びR22bは同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]またはC≡Cを表し、
R21は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)または-C(R23a)(R23b)NR15aR15b[式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義であり、R23a及びR23bは同一または異なって水素原子、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表すか、R23a及びR23bが隣接する炭素原子と一緒になって飽和脂肪族環を形成するか、またはR23a及びR23bが一緒になって酸素原子または硫黄原子を表す]を表す}を表す〕
で表される二環性複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項7】
式(III)
【化10】

{式中、R24は前記Tと同義であり、
Wは窒素原子またはCR27[式中、R27は水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルカノイル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイルまたは置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す]を表し、
R25は水素原子、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニルアミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、低級アルキルスルホニル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキルまたは置換もしくは非置換の脂環式複素環基を表し、
R26a、R26b及びR26cは同一または異なって水素原子、ハロゲン、シアノ、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級シクロアルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換の脂環式複素環基または置換もしくは非置換の芳香族複素環基(テトラゾリルを除く)を表す}で表される二環性複素環化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項8】
R24が-NR15aR15b(式中、R15a及びR15bはそれぞれ前記と同義である)である請求項7記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項9】
R24が-NHR15a(式中、R15aは前記と同義である)である請求項7記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項10】
R24が-NHR15c(式中、R15cは置換もしくは非置換の低級シクロアルキルを表す)である請求項7記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項11】
R25が水素原子であり、R26a、R26b及びR26cが置換もしくは非置換の低級アルキルである請求項7〜10のいずれかに記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤
【請求項12】
WがCR27(式中、R27は前記と同義である)である請求項7〜11のいずれかに記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。
【請求項13】
WがCHである請求項7〜11のいずれかに記載のX線照射による肺障害の予防及び/または治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−63261(P2007−63261A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207645(P2006−207645)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】