説明

c−METキナーゼ阻害剤の製剤

本発明は、c−Metキナーゼ阻害剤を含有する医薬組成物に関する。また、前記医薬組成物を製造する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、c−Metキナーゼ阻害剤の製剤に関する。
【0002】
細胞増殖性障害の治療をはじめとする、c−Metキナーゼ機能と関連している種々の障害の治療のために、さまざまなc−Metキナーゼ阻害剤が開示されている。このような障害として、限定されないが、癌、肥厚化、再狭窄、心肥大免疫障害、及び炎症が挙げられる。c−Metキナーゼ阻害剤の代表的な例として、全文が本明細書に援用される、Merck & Co.,Inc.の2008年1月17日に開示された国際公開WO2008/008310に開示されるものを包含する。
【0003】
c−Metキナーゼ阻害剤は、直接打錠、湿式造粒、ホットメルト押出、噴霧乾燥、及び/又はローラー圧縮法を使用することによって、錠剤として経口投薬用に製剤してもよい。同様に、c−Metキナーゼ阻害剤は、ソフトカプセル剤中の液体であるゼラチンカプセル剤又は乾燥散剤又はハードカプセル剤中の半固体として経口投薬用に製剤してもよい。さらに、c−Metキナーゼ阻害剤は、静脈内投薬用に製剤してもよい。
【0004】
本発明の製剤は、c−Metキナーゼ阻害剤のその他の製剤を上回る利点を有する。多数のc−Metキナーゼ阻害剤は、pH範囲1〜7の間中でpH依存性溶解度を示し、酸性pHでより高い溶解度を有する。pHに対する溶解度の著しい依存に基づいて、これらの製剤の性能は、胃内pHの可変性に基づいて変わり得ると仮定することができる。例えば、化合物Aを用いる臨床研究から得られた最近のデータは、患者間での化合物A曝露の高い可変性を示し、制酸薬を同時に服用していた(すなわち、高い胃内pHを有する)一部の患者では低い曝露であった。曝露は、阻害剤が食品と一緒に摂取されるか否かをはじめ、多数の因子によって変わり得る。本発明の製剤は、その他の製剤よりも胃内pHの変化に対する感受性が低い、薬物に対するインビボ曝露を与える。したがって、本発明の製剤は、その他の製剤と同様に高い、低い胃内pHでの薬物に対する曝露を与え、本発明の製剤は、その他の製剤より高い、高い胃内pHでの薬物に対する曝露を与える。
【0005】
本発明に記載される酸味料の使用は、酸味料の即時使用よりも有効である。例えば、酸味料のない単純製剤をベースラインとして、本発明の使用からの高pHでの薬物可溶化の改善は、酸性飲料(例えば、コーラ)を同時投与することよりもかなり大きい。
【発明の概要】
【0006】
発明の要旨
本発明は、c−Metキナーゼ阻害剤を含有する医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知のその他の製剤よりも、胃内pHの変化に対する感受性が低い薬物に対するインビボ曝露を与える。本発明の製剤は、当技術分野で公知のその他の製剤と比較して、同様に高い、低い胃内pHでの薬物に対する曝露を与えるが、より高い、高い胃内pHでの薬物に対する曝露を与える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1、3、4、5、6、7に記載される化合物A製剤及び対照製剤の溶解性能を記載する図である。
【図2】予め溶解させた種々の量の無水クエン酸を含む、250mLのSGF中の、化合物A HCl塩の溶解度測定値を記載する図である。
【0008】
発明の詳細な記載
本発明は、c−Metキナーゼ阻害剤を含有する医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知のその他の製剤よりも、胃内pHの変化に対する感受性が低い薬物に対するインビボ曝露を与える。本発明の製剤は、当技術分野で公知のその他の製剤と比較して、同様に高い、低い胃内pHでの薬物に対する曝露を与えるが、より高い、高い胃内pHでの薬物に対する曝露を与える。
【0009】
特に有効なc−Metキナーゼ阻害剤として、1−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−5−オキソ−5H−ベンゾ[4,5]シクロヘプタ[1,2−b]ピリシン−7−イル]−N−(ピリジン−2−イルメチル)メタンスルホンアミド
【0010】
【化1】

【0011】
があり、これは、全文が本明細書に援用される、Merck & Co.,Inc.の2008年1月17日に公開された国際公開WO2008/008310に記載される手順によって調製できる。この化合物はまた、化合物Aとしても知られている。
【0012】
本発明は、任意の薬学的に許容される増量剤/圧縮助剤、崩壊剤、超崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、フィルムコーティング、及び溶媒の使用を考慮する。これらの成分の例は、以下に示されており、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、A.Wade及びP.J.Weller編、1994年、The Pharmaceutical Press、London、Englandにより詳細に記載されている。
【0013】
本発明は、5重量%〜80重量%のc−Metキナーゼ阻害剤と、5重量%〜80重量%の酸味料と、0重量%〜90重量%の希釈剤と、0〜15重量%の崩壊剤と、0〜5.0重量%の滑沢剤とを含む医薬組成物を含む。本発明の一クラスでは、30重量%〜35重量%のc−Metキナーゼ阻害剤と、40重量%〜45重量%の酸味料と、20重量%〜25重量%の希釈剤と、1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤と、0.5重量%〜2.0重量%の滑沢剤とを含む医薬組成物がある。
【0014】
本発明の一実施態様では、酸味料に対するc−Metキナーゼ阻害剤の重量比は、0.3〜5.0の範囲内から選択される。
【0015】
本発明の一実施態様では、c−Metキナーゼ阻害剤は、1−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−5−オキソ−5H−ベンゾ[4,5]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−7−イル]−N−(ピリジン−2−イルメチル)メタンスルホンアミド(化合物A)又はその薬学的に許容される塩である。
【0016】
本発明の一実施態様では、酸味料(acidulent)は、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、エタンジスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルタミン酸、乳酸、シュウ酸、L−アスパラギン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、パモ酸、マロン酸、ゲンチジン酸、サリチル酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、カンファースルホン酸、及びオレイン酸からなる群から選択される。本発明の一クラスでは、酸味料(acidulent)は、クエン酸である。
【0017】
本発明の一実施態様では、希釈剤は、微晶質セルロース、ラクトース、マンニトール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、スクロース、グルコース、ソルビトール、硫酸カルシウム、粉末セルロース、ケイ化微晶質セルロース、酢酸セルロース、圧縮糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース(ethylcelluose)、フルクトース、パルミトステアリン酸グリセリル、カオリン、ラクチトール、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、中鎖トリグリセリド、ポリデキストロース、ポリメタクリレート、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、トラガカント、トレハロース、キシリトール、及びデンプンからなる群から選択される。本発明の一クラスでは、希釈剤は、微晶質セルロースである。
【0018】
本発明の一実施態様では、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムデンプン、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、アルギン酸、三塩基性のリン酸カルシウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、粉末セルロース、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ポビドン、及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される。本発明の一クラスでは、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0019】
本発明の一実施態様では、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムステアリルフマラート(sodium stearyl fumerate)、タルク、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸マグネシウム、中鎖トリグリセリド、ポロキサマー、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びステアリン酸亜鉛からなる群から選択される。本発明の一クラスでは、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0020】
本発明は、5重量%〜80重量%のc−Metキナーゼ阻害剤と、5重量%〜80重量%の酸味料と、0重量%〜90重量%の希釈剤と、0〜15重量%の崩壊剤と、0〜5.0重量%の滑沢剤とを含む医薬組成物を投与することによって、c−Metキナーゼ阻害剤の吸収を改善する方法をさらに含む。本発明の一クラスでは、C−metキナーゼ阻害剤は、化合物Aである。本発明の別のクラスでは、酸味料は、クエン酸であり、希釈剤は、微晶質セルロースであり、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムであり、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0021】
本発明は、酸味料に対するc−Metキナーゼ阻害剤の重量比が、0.3〜5.0の範囲内から選択される医薬組成物を投与することによって、c−Metキナーゼ阻害剤の吸収を改善する方法をさらに含む。本発明の一クラスでは、C−metキナーゼ阻害剤は、化合物Aであり、酸味料はクエン酸である。
【0022】
本発明は、製剤に酸味料(acidulent)を組み込むことによって、c−Metキナーゼ阻害剤を含有する製剤の溶解性能及びインビボ曝露を改善する方法をさらに含む。組成物への酸味料(acidulent)の組み込みは、インビトロ又はインビボで予め溶解した同量の酸味料(acidulent)を有することと比較して、高い胃内pHに対応して、より高い溶解性能及びインビボ曝露をもたらす。
【0023】
錠剤及びカプセル剤をはじめとする本発明の医薬組成物はまた、医薬製剤の技術分野で公知のさまざまな賦形剤から選択され得る1種以上のさらなる製剤成分を含有してもよい。組成物の所望の特性に従って、任意の数の成分を、医薬組成物の調製におけるその公知の用途に基づいて、単独で、又は組み合わせて選択してもよい。このような成分として、限定されないが、希釈剤、結合剤、圧縮助剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定剤(乾燥性非晶質シリカなど)、フレーバー、フレーバー増強剤、甘味料、保存料、着色料、及びコーティングが挙げられる。
【0024】
本明細書において用いる、用語「錠剤」とは、コーティングされているか否かに関らず、すべての形態及び大きさの圧縮された薬剤投与形製剤を包含するものとする。コーティングに使用してもよい物質として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化チタン、タルク、甘味料、及び着色料が挙げられる。
【0025】
本明細書において用いる、用語「カプセル剤」は、コーティングされているか否かに関らず、すべての形態及び大きさの圧縮された薬剤投与形製剤を包含するものとする。コーティングに使用してもよい物質として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化チタン、タルク、甘味料、及び着色料が挙げられる。コーティングに使用してもよい物質として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、二酸化チタン、タルク、甘味料、及び着色料が挙げられる。
【0026】
本発明の医薬組成物は、細胞増殖性障害の治療をはじめとする、c−Metキナーゼ機能と関連している障害の治療的又は予防的処置において有用である。このような障害として、限定されないが、癌、肥厚化、再狭窄、心肥大免疫障害、及び炎症が挙げられる。
【0027】
本発明の製剤は、c−metキナーゼ阻害剤の生物学的利益が、正常よりも高い胃内pHを有するもの(例えば、プロトンポンプ阻害剤などの胃内pH修飾薬を服用している患者)を含めた最大数の患者にわたって体験されることを確実にする。本発明の製剤は、限定されないが、オメプラゾール、ラベプラゾール(raberprazole)、エソメプラゾール、ランソプラゾール、及びパントプラゾール(patoprazole)をはじめとするプロトンポンプ阻害剤;限定されないが、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、及びラニチジンをはじめとするH−2遮断薬;及び限定されないが、カラフェート(carafate)、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムをはじめとする制酸薬の存在下で利益を提供するはずである。さらに、本発明の製剤は、胃内pHの自然な被験体間変動に起因する(pH修飾薬に起因するのではなく)曝露の可変性を低減すると予想される。
【0028】
以下の実施例は、本発明を例示する目的で与えられるのであって、本発明の範囲に対する限定と解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0029】
乾燥造粒によるクエン酸を含む化合物Aカプセル剤の調製
【0030】
【化2】

【0031】
以下のように製造した顆粒剤をカプセルに封入することによって、カプセル剤(HPMCシェル)を調製した。クエン酸、Avicel PH101、クロスカルメロースナトリウム、及び化合物Aを、ドラムブレンダー中で一緒に混合する。混合物に、ステアリン酸マグネシウムの顆粒内部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合物を潤滑にした。潤滑にされたブレンドを、内蔵ミル及び粗目スクリーン(複数可)を備えたローラーコンパクターを使用して乾燥造粒した。ステアリン酸マグネシウムの顆粒外部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合することによって、得られた顆粒剤を潤滑にした。
【実施例2】
【0032】
ホットメルト押出によるクエン酸を含む化合物Aカプセル剤の調製
【0033】
【化3】

【0034】
化合物A、クエン酸の共溶解物内部分、及びKollidon VA64を、Turbulaブレンダーを使用してガラス瓶中で一緒にブレンドした。ブレンドを手作業でゾーン7で16mm ThermoElectron押出機に入れた。ゾーン2〜8を連続的に冷却し、一方で、ゾーン9及び10は、200℃の設定点に加熱し、スクリュー速度は200RPMとした。3mmの円形オリフィスダイから出てくる押出物を回収し、空冷し、続いて、0030スクリーンを備えたFitzmillを6500RPMで使用して練った。
【0035】
次いで、共融解中間体のサンプルを、微晶質セルロース及びクエン酸の共融解物外部分と、turbulaブレンダーを使用してガラス瓶中でブレンドした。潤滑にされたブレンドを、スラッグ(すなわち、錠剤機上で作製された緩い圧縮粉)を粗目スクリーンに通すことによって乾燥造粒した。次いで、顆粒状物質をカプセルに詰めた。
【実施例3】
【0036】
乾燥造粒によるクエン酸を含む化合物A錠剤の調製
【0037】
【化4】

【0038】
以下のように調製した、顆粒を圧縮することによって、適したプレスを用いて錠剤を調製した。化合物A及びPVPを、Avicelの顆粒内部分、クエン酸、及びクロスカルメロースナトリウムと一緒に、ブレンダー中で一緒に混合した。混合物に、ステアリン酸マグネシウムの顆粒内部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ドラムブレンダーを使用して混合物を潤滑にした。潤滑にされたブレンドを、内蔵ミル及び粗目スクリーン(複数可)を備えたローラーコンパクターを使用して乾燥造粒した。ステアリン酸マグネシウムの顆粒外部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合することによって、得られた顆粒剤を潤滑にした。
【実施例4】
【0039】
乾燥造粒した充填を用いるグルタミン酸を含む化合物Aカプセル剤の調製
【0040】
【化5】

【0041】
以下のように製造した顆粒剤をカプセルに封入することによって、カプセル剤(ハードゼラチンシェル)を調製した。グルタミン酸、Avicel PH101、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム及び化合物Aを、ドラムブレンダー中で一緒に混合する。混合物に、ステアリン酸マグネシウムの顆粒内部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合物を潤滑にした。潤滑にされたブレンドを、スラッグ(すなわち、錠剤機上で作製された緩い圧縮粉)を粗目スクリーンに通すことによって乾燥造粒した。ステアリン酸マグネシウムの顆粒外部分(スクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合することによって、得られた顆粒剤を潤滑にした。
【実施例5】
【0042】
乾燥造粒した充填を用いるアスコルビン酸を含む化合物A錠剤の調製
【0043】
【化6】

【0044】
錠剤機を使用して、以下のように製造した顆粒剤を圧縮することによって錠剤を調製した。アスコルビン酸、PVP、Avicel PH101、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム及び化合物Aを、ドラムブレンダー中で一緒に混合する。混合物に、ステアリン酸マグネシウムの顆粒内部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合物を潤滑にした。潤滑にされたブレンドを、スラッグ(すなわち、錠剤機上で作製された緩い圧縮粉)を粗目スクリーンに通すことによって乾燥造粒した。ステアリン酸マグネシウムの顆粒外部分(スクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合することによって、得られた顆粒剤を潤滑にした。
【実施例6】
【0045】
乾燥造粒した充填を用いるマレイン酸を含む化合物Aカプセル剤の調製
【0046】
【化7】

【0047】
以下のように製造した顆粒剤をカプセルに封入することによって、カプセル剤(ハードゼラチンシェル)を調製した。マレイン酸、Avicel PH101、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム及び化合物Aを、ドラムブレンダー中で一緒に混合する。混合物に、ステアリン酸マグネシウムの顆粒内部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合物を潤滑にした。潤滑にされたブレンドを、スラッグ(すなわち、錠剤機上で作製された緩い圧縮粉)を粗目スクリーンに通すことによって乾燥造粒した。ステアリン酸マグネシウムの顆粒外部分(スクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合することによって、得られた顆粒剤を潤滑にした。
【実施例7】
【0048】
乾燥造粒によるクエン酸を含む化合物Aカプセル剤の調製
【0049】
【化8】

【0050】
以下のように製造した顆粒剤をカプセルに封入することによって、カプセル剤(ハードゼラチンシェル)を調製した。クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム及び化合物Aを、ドラムブレンダー中で一緒に混合する。混合物に、ステアリン酸マグネシウムの顆粒内部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合物を潤滑にした。潤滑にされたブレンドを、内蔵ミル及び粗目スクリーン(複数可)を備えたローラーコンパクターを使用して乾燥造粒した。ステアリン酸マグネシウムの顆粒外部分(細かいスクリーンを使用して解凝集された)を加え、ブレンダーを使用して混合することによって、得られた顆粒剤を潤滑にした。
【実施例8】
【0051】
絶食させた雄のビーグル犬における、化合物A固体錠剤(10MG用量/動物)の経口投与後の平均(SE)PKパラメータ
【0052】
【化9】

【0053】
高胃内pH(ファモチジン前処理した)ビーグル犬における動物研究を実施して、製剤を評価した。概して、クエン酸を含有する製剤(実施例1〜3)は、クエン酸を含有しない製剤と比較して、約2〜10倍高い曝露を提供した。これらのデータは、クエン酸を含有する製剤は、当技術分野で公知のその他の製剤よりも、高胃内pH条件下で薬物に対する高い曝露を与えたという主張を支持する。正常な胃内pH(ペンタガストリン前処理した)ビーグル犬における動物研究は、クエン酸を含む製剤(実施例1)は、クエン酸を含まない対照製剤と比較して、同様に高い薬物に対する曝露を与えたことを示す。
【0054】
上記で言及された対照製剤は、化合物A遊離塩基、ラクトース一水和物、及びステアリン酸マグネシウム(それぞれ、x、y、及びz mg/カプセル剤)の簡単なブレンドが詰められたハードゼラチンカプセル剤を含んでいたことは留意されたい。
【実施例9】
【0055】
化合物A製剤のインビトロ溶解
USP装置IIを使用するインビトロ溶解。
溶解媒体:SGF pH3.0 1Lを作製するために、1Lの水に2gのNaClを溶解し、濃塩酸を使用してpHを3.0に調整する。
溶解容器温度:37℃
櫂速度:100rpm
サンプル時点:5、10、20、30分、及び必要に応じてとられるさらなる時点。
サンプリング容量:1.5mL
フィルター:Gelman acrodisc 1μm ガラス繊維
希釈剤:50/50アセトニトリル/水+0.02% TFA(500mLのアセトニトリルを、500mLの水と混合し、200μLのTFAを加える)
サンプル希釈:250μLの濾過したサンプルを採取し、250μLの希釈剤を用いて希釈する。
【0056】
溶解サンプルの分析のためのHPLC法:
カラム:Phenomenex Luna C18、4.6mm×50mm、3μm
移動相A:水+0.02% TFA
移動相B:メタノール
溶出様式:イソクラティック(45% B)
カラム温度:45℃
注入容量:2μL
検出器波長:260nm
流速:2mL/分
実施時間:2分
【0057】
図1から、本発明において記載される実施例1及び3〜7はすべて、関連時間スケール(10〜30分)下で、対照製剤よりも高度の溶解を与えることがわかる。
【0058】
図1において言及される対照製剤は、化合物A遊離塩基、ラクトース一水和物、及びステアリン酸マグネシウム(それぞれ、50、91、及び1.42mg/カプセル剤)の簡単なブレンドで充填されたハードゼラチンカプセル剤を含むことは留意されたい。
【実施例10】
【0059】
化合物Aの溶解度測定値
図2のグラフは、300mgのクエン酸が、250mLのSGF pH3.0中に十分に溶解される場合の化合物Aの達成される最大溶解度は、およそ15mgであることを示す。これは、110mg力価カプセル剤の14%溶解に等しいと考えられる。しかし、42重量%無水クエン酸を含有する化合物A HCl塩110mg HPMCカプセル剤では、測定されたおよそ78%溶解が達成されるので、製剤は溶解性能を改善している。この製剤内で、利用可能な無水クエン酸の量は、160.44mgである(カプセル剤の標的充填重量は、382.0mgである)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5重量%〜80重量%のc−Metキナーゼ阻害剤と、5重量%〜80重量%の酸味料と、0重量%〜90重量%の希釈剤と、0〜15重量%の崩壊剤と、0〜5.0重量%の滑沢剤とを含む、医薬組成物。
【請求項2】
30重量%〜35重量%のc−Metキナーゼ阻害剤と、40重量%〜45重量%の酸味料と、20重量%〜25重量%の希釈剤と、1.0重量%〜5.0重量%の崩壊剤と、0.5重量%〜2.0重量%の滑沢剤とを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
酸味料に対するc−Metキナーゼ阻害剤の重量比が、0.3〜5.0の範囲内から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
c−Metキナーゼ阻害剤が、1−[3−(1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−5−オキソ−5H−ベンゾ[4,5]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−7−イル]−N−(ピリジン−2−イルメチル)メタンスルホンアミドである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
酸味料(acidulent)が、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、エタンジスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルタミン酸、乳酸、シュウ酸、L−アスパラギン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、パモ酸、マロン酸、ゲンチジン酸、サリチル酸、フマル酸、グルコヘプタン酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、ラクトビオン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、プロピオン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、カンファースルホン酸、及びオレイン酸からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
希釈剤が、微晶質セルロース、ラクトース、マンニトール、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、スクロース、グルコース、ソルビトール、硫酸カルシウム、粉末セルロース、ケイ化微晶質セルロース、酢酸セルロース、圧縮糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、エチルセルロース(ethylcelluose)、フルクトース、パルミトステアリン酸グリセリル、カオリン、ラクチトール、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、中鎖トリグリセリド、ポリデキストロース、ポリメタクリレート、シメチコン、アルギン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、トラガカント、トレハロース、キシリトール、及びデンプンからなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムデンプン、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、アルギン酸、三塩基性のリン酸カルシウム、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、粉末セルロース、キトサン、コロイド状二酸化ケイ素、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、ポビドン、及びアルギン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムステアリルフマラート(sodium stearyl fumerate)、タルク、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ラウリル硫酸マグネシウム、中鎖トリグリセリド、ポロキサマー、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びステアリン酸亜鉛からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
酸味料が、クエン酸であり、希釈剤が、微晶質セルロースであり、崩壊剤が、クロスカルメロースナトリウムであり、滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の医薬組成物を患者に投与することによって、c−Metキナーゼ阻害剤の吸収を改善する方法。
【請求項11】
酸味料(acidulent)を製剤に組み込むことによって、c−Metキナーゼ阻害剤を含有する製剤の溶解性能及びインビボ曝露を改善する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−506648(P2013−506648A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531499(P2012−531499)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051586
【国際公開番号】WO2011/039527
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】