説明

α‐1プロテイナーゼインヒビターのための組成物、方法およびキット

本発明は、APIおよび少なくとも一のアミノ酸を含む組成物、特に、液体API調合物が、アミノ酸を含み、およびそれに関連する方法およびキットを提供する。これらのアミノ酸は、API組成物に組み込まれたとき、API調合物に安定性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α‐1プロテイナーゼインヒビター(API)、特に安定なAPI組成物を含む組成物に関する。本発明はまた、対象に対してAPIを提供するための、特にAPIの治療的にまたは予防的に効果的な量を提供するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
API欠損は、肝臓疾患および/または肺気腫について発症した個人の素因となる比較的一般的な遺伝子疾患である。もっとも一般的なタイプのAPI欠損は、プロテアーゼインヒビタータイプZ(PiZ)と呼ばれ、常染色体性の劣性形質として遺伝し、およびほとんどの北ヨーロッパおよび北アメリカの人口について1700人の出生あたり約1人に影響する。PiZ突然変異は、1アミノ酸置換(グルタミン342からリジン)を生じる1ヌクレオチド置換である。
【0003】
ヒトAPIは、52kDaの全分子量を与えられ、1のシステイン残基、および3の炭化水素(糖)側鎖を持つ、394アミノ酸を有する。反応中心ループ(RCL)は、358‐359位のMet‐Ser配列に位置する。APIの三次構造は、8の詳細に明らかにされたα‐へリックス(A‐H)および3の大きなβシート(A‐C)を含む。セルピンが、不可逆的な「自殺基質(suicide‐substrate)」機構を介して機能すると考えられている。プロテアーゼによる切断時には、セルピンが、コンフォメーションの変化を起こし、それによって、RCLが、切断されおよびβシートの中心内に挿入され、およびプロテアーゼが、分子の遠心端に転位置される。この構造的転移は、セルピンの安定化およびプロテアーゼの三次構造の広範な歪みに起因し、そしてそれは、その触媒機構を不活性化する。APIの生物活性は、例えば分子内、または分子間重合、酸化、複合体形成、および/または非特異的なプロテアーゼによる切断を含む化学的修飾により影響を受けるであろう。
【0004】
APIの主な生理的機能は、好中球エラスターゼ、カセプシンG、およびプロテイナーゼ3の阻害と考えられている。特異的なエラスターゼ阻害能について減少するかもしれないが、PiZ API欠損を伴う個人において産生されるAPIは、機能的に活性である。API合成の主要な部位は、肝臓であるが、またマクロファージ、腸管上皮細胞、および腸パネート細胞を含む肝外細胞タイプ中でも合成される。
【0005】
API欠損における肺傷害の病因は、利用可能なAPI活性における顕著な減少に起因しうる。APIは、肺胞洗浄液中の好中球エラスターゼインヒビター活性の90%超を構成することが見出されている。従って、API欠損を伴う多くの個人について破壊的な肺疾患が見られるのは、肺内のエラスターゼおよびAPI間の正味のバランスにおける撹乱によると思われる。好中球エラスターゼ、カセプシンG、およびプロテイナーゼ3の阻害されていない活性は、順番に、肺の統合性結合組織の緩慢な破壊の結果である。結合組織のこの破壊は、膨張しすぎまたは減少された呼気性の気流となる肺の収縮性の力について減少となる。喫煙は、APIが存在する酸化不活性化を引き起こすことにより、問題を悪化させる。
【0006】
現時点では、API欠損と関連する症状の個人のための治療選択肢は、限られている。API欠損と関連する肝臓疾患は、同所性肝移植により治療されている。欠損したAPI遺伝子を置換するための体細胞遺伝子治療が、議論されているが、いまだにうまく使用されていない。
【0007】
従って、安定でありおよび対象に対しての以下の投与のための所望のAPI血漿生体利用能レベルを提供するAPI組成物のための要求がある。
【発明の概要】
【0008】
一つの側面では、(a)α1‐プロテイナーゼインヒビター(API);(b)少なくとも一のアミノ酸を含む組成物をここで提供する。
【0009】
他の側面では、本発明は、本組成物を調製するための方法を提供する。
【0010】
他の側面では、組成物を含むキットが、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1の表1に示された液体API調合物の凝集プロファイルを示すグラフである。
【図2】図2は、アラニン、スクロース、またはスクロース/アラニンを含むAPI調合物の凝集プロファイルを示すグラフである。
【図3】図3は、アラニン、マンニトール、またはマンニトール/アラニンを含むAPI調合物の凝集プロファイルを示すグラフである。
【図4】図4は、アラニン、スクロース、またはトレハロースを含むAPI調合物の凝集プロファイルを示すグラフである。
【図5】図5は、40℃で1週間インキュベーション後、API調合物の凝集に対するアミノ酸濃度の影響を示すグラフである。
【図6】図6は、40℃で2週間インキュベーション後、API調合物の凝集に対するアミノ酸濃度の影響を示すグラフである。
【図7】図7は、酸素スカベンジャーを異なる濃度で含むまたは含まないAPI調合物の凝集プロファイルを示すグラフである。
【図8】図8は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の効力(potency)プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図9】図9は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物のネフェロメトリー(NTU)プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図10】図10は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の比活性プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図11】図11は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の脱アミド化プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図12】図12は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の凝集増加プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図13】図13は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の凝集プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図14】図14は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物のオリゴマーレベルプロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図15】図15は、5℃での、実施例6に記載されたAPI調合物のモノマーレベルプロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図16】図16は、25℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の効力プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図17】図17は、25℃での、実施例6に記載されたAPI調合物のNTUプロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図18】図18は、25℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の比活性プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図19】図19は、25℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の脱アミド化プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図20】図20は、25℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の凝集増加プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図21】図21は、25℃での、実施例6に記載されたAPI調合物の凝集プロファイルを示すグラフであり:「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図22】図22は、25℃での、API調合物のオリゴマープロファイルを示すグラフである。「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図23】図23は、25℃での、API調合物のモノマープロファイルを示すグラフである。「グリシン」は調合物1(API(50mg/ml)グリシン(250mM))を示し、「アラニン」は調合物2(API(50mg/ml)L‐アラニン(250mM))を示し、「アラニン/スクロース」は調合物3(API(50mg/ml)L‐アラニン(125mM)/スクロース(125mM))を示し、およびNaClは調合物4(API(50mg/ml)/NaCl(250mM))を示す。
【図24】図24は、40℃での、API溶液について1週間、2週間、3週間の凝集に対するpHおよびタンパク質濃度の2Dコンタープロットである。
【図25】図25は、40℃で1週間、2週間、3週間のAPI溶液のpHおよび凝集相互作用プロットである。
【図26】図26は、40℃で1週間、2週間、3週間のAPI溶液について凝集に対するpHの影響を示す。
【図27】図27は、40℃で1週間、2週間、3週間のAPI溶液について凝集プロファイルに対するタンパク質濃度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、相対的に安定なAPIを含む組成物が、また一またはそれ以上のアミノ酸を組成物中に含むことにより調製できる発見に基づいている。特定の実施態様では、本発明は、治療的または予防的効果のため対象に投与するためのAPIを提供するために好適である安定なAPIを含む医薬組成物を包含する。APIに関連する障害または疾患(例えば、通常の血漿APIレベルより低い)、および特に有用であろう本実施態様の非限定的な例は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、肺気腫)などの肺疾患、肝臓疾患、血管疾患(例えば、頭蓋内動脈瘤(intracranial aneurysms)、動脈の線維筋性形成異常症(arterial fibromuscular dysplasia)、重度の出血障害、および高血圧)、脂肪組織炎、眼疾患(例えば、前部ブドウ膜炎)、全身性壊死性血管炎およびウェゲナー肉芽腫症を含むが、限定されない。
【0013】
I.組成物
一つの側面では、本発明は、以下:
(i)API;および
(ii)少なくとも一のアミノ酸
を含む組成物を提供する。
【0014】
いくつかの実施態様では、組成物は、APIおよび少なくとも一のアミノ酸からなるまたは本質的になる。
【0015】
本発明の組成物は、相対的に純品で提供できる。例えば、いくつかの実施態様では、組成は、医薬品グレードとして特徴づけられる。
【0016】
組成物は、固体、液体、または半固体形態についてでもよい。例えば、組成物は、水溶液、水性懸濁液、油性懸濁液などを含む液体調合物であってもよいが、限定されない。代替的に、本組成物は、凍結乾燥製剤、乾燥粉末、固体粒子などでもよいが、限定されない。他の例は、コロイド、エマルジョン、ゲル、および軟膏を含むが、限定されない。
【0017】
一つの実施態様では、本組成物は、液体調合物、好ましくは水溶液である。他の実施態様では、組成物は、医薬品使用に適当であり、例えば、医薬的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物である。
【0018】
一つの実施態様では、組成物は、API、アミノ酸、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物である。本明細書で使用されるように、「医薬的に許容される担体」は、生理的に適合性の任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング剤などを含む。担体のタイプは、意図する投与経路に基づいて選択できる。いくつかの実施態様では、担体は、静脈内、吸入、非経口、皮下、筋肉内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、小脳内、脳室内、結腸内、頸内、胃内、肝臓内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、髄腔内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、膀胱内(intravesical)、ボーラス、膣内、直腸、頬側、舌下、鼻腔内、または経皮手段を経由して投与するために適当であるが、限定されない。医薬的に許容される担体は、滅菌 注射用溶液または分散液の調製のための滅菌水溶液または分散液および滅菌粉末を含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、組成物は、滅菌であり、および製造および保存の一またはそれ以上の状況下で、安定である。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または他の要求された構造として処方できる。例えば、滅菌注射可能な溶液は、フィルター滅菌により調製できる。分散剤は、分散媒を含む滅菌賦形剤(vehicle)内にAPIを組み込むことにより調製できる。滅菌注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、好ましくは、それについて、従前の滅菌フィルター溶液由来のAPI粉末および任意の追加的な所望する成分を加えたアミノ酸を含む組成物を提供する真空乾燥および凍結乾燥である。
【0020】
代表的な希釈剤(例えば、組成物の希釈、再調製用に使用のための)は、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌食塩溶液、およびリンガー溶液またはデキストロース溶液を含むが、限定されない。希釈剤は、場合により、防腐剤を含む。使用される防腐剤の量は、APIとの適合性のための異なる防腐剤の濃度の評価および防腐剤の有効性の試験により決定される。
【0021】
吸入治療は、気道に対してエアロゾル形態での薬の投与を含む。エアロゾル送達は、深部肺部位(肺胞)に対する送達が、仮に分子が生体利用可能なら、肺上皮組織の95%の割合で、上皮膜を介してタンパク質の輸送を顕著に増強することができるコンセプトに基づいている。液体エアロゾルは、APIの溶液を噴霧することにより産生できる。代替的に、固体粒子は、定量噴霧式吸入器から投与される噴霧剤中に浮遊した粉末形態または単純に乾燥粉末吸入器から投与された粉末としての形態のいずれかでよい。例えば、固体粒子エアロゾルは、溶液からAPIを凍結乾燥すること(例えば、凍結乾燥(freeze‐dry)すること)により調製でき、その後、肺投与のための所望する粒子サイズ分布に凍結乾燥薬を製粉しまたは粉砕する。スプレー乾燥に関連する他の技術は、そしてそれは、連続的な液体供給の微粒化により生成された分散液滴を蒸発するためのホットガスストリーム(高温ガスストリーム)(通常気体)由来の熱を使用する脱水プロセスである。これらの方法を使用することにより、APIを含む組成物は、細かい粒子内に、好ましくは、水置換剤(water−replacing agent)として機能できるような賦形剤の適当なタイプおよび量で、乾燥され得る。
【0022】
加圧された定量噴霧式吸入器は、現在当該技術分野で周知である。患者の肺または鼻に対する薬の適当な適用である任意の定量噴霧式吸入器が、使用できる。エアロゾル調合剤および絞り弁(metering valve)は、APIの治療的または予防的効果を提供するために選択できる。
【0023】
A.API
本明細書中で使用される用語「API」は、特に断らないかぎり、広範であることを意図する。本用語は、APIのすべての天然型多形を指す。本用語はまた、APIの機能的フラグメント、APIまたはそれらの機能的フラグメントを含むキメラタンパク質、APIの一またはそれ以上のアミノ酸の類似性置換により得られたホモログ、および種ホモログを含む。本用語はまた、遺伝子導入技術の製品であるAPIを含む組み換えDNA技術の製品であるすべてのAPIポリペプチドを指す。例えば、APIをコードする遺伝子は、DNA配列が、例えば、米国特許第5,322,775号中に記載されたような乳腺において発現するそのような方法についてミルクホエイタンパク質をコードする哺乳類の遺伝子内に挿入でき、そしてそれは、タンパク質性の組成物を製造するための方法のその教授のため参照により本明細書中に取り込まれる。本用語はまた、例えば、固相ペプチド合成などの当該技術分野において知られた方法により化学的に合成されたすべてのAPIタンパク質を指す。本用語はまた、血漿から調製されるAPIを指す。本用語はまた、商業的に得ることができるAPIを指す。APIは、ヒトまたは非ヒトAPIと対応できる。
【0024】
一つの実施態様では、APIは、血漿由来のAPIである。他の実施態様では、APIは、コーン画分(Cohn Fraction)IV‐1ペーストから調製される。他の実施態様では、APIは、アルブミン欠乏血漿画分、コーンV沈殿物、または予備精製されたAPI調製画分から調製される。米国特許第6,974,792号は、APIを調製するための方法のその教授のため参照により本明細書に取り込まれる。
【0025】
他の実施態様では、APIは、組み換えAPIである。APIのためのアミノ酸および核酸配列および/または組み換えAPIの製品は、例えば、米国特許第4,711,848号、4,732,973号、4,931,373号、5,079,336号、5,134,119号、5,218,091号、6,072,029号、およびWright et al.,Biotechnology,9:830(1991)、およびArchibald et al.,PNAS,87:5178(1990)により記載され、そしてそれらそれぞれは、API配列、組み換えAPI、および/またはAPIの組み換え発現のその教授のため本明細書中に取り込まれる。
【0026】
一つの実施態様では、組成物は、90%超純度を有するAPIを含むことにより特徴づけられる。他の実施態様において、APIは、95%超、好ましくは少なくとも約99%の純度を有する。いくつかの実施態様では、少なくとも約50%、実例として、組成物中のすべてのAPIの約50%‐約100%、約60%‐約90%、約70%‐約80%が、活性APIである。
【0027】
一つの実施態様では、組成物は、治療上効果的な量のAPIを含む。「治療上効果的な量」は、例えばAPIの先天性欠損と関連する肺気腫の減少または阻害などの所望する治療上の結果を達成するために、必要な投与量および期間での効果的な量を指す。APIの治療上効果的な量は、個々の対象の疾態、年齢、性別、および体重、並びに対象中で所望する反応を引き出すためのAPIの能力などの要因により異なる。治療上効果的な量は、治療上有益な効果が、APIの任意の毒性なまたは有害な影響を上回る量であってもよい。
【0028】
他の実施態様では、組成物は予防上効果的な量のAPIを含む。「予防上効果的な量」は、例えば、APIの先天性の欠損に関連する肺気腫を予防することまたは阻害することなどの所望する予防的な結果を達成するために、必要な投与量および期間での効果的な量を指す。予防上の効果的な量は、治療上の効果的な量として上記されたように決定できる。
【0029】
APIの治療上または予防上の効果的な量を決定するときに考慮されてもよい一つの要因は、例えば、対象の気道の下部または気管支肺胞分泌液(ELF)中などの治療を受けるための対象の生体コンパートメント中で発現された機能的活性APIの濃度である。APIの治療上または予防上の効果的な量を決定するときにまた考慮してもよい他の要因は、APIの薬理学(例えば、薬物動態)である。
【0030】
APIの薬物動態は、対象の血液中のAPIの濃度またはレベルを指す。血中APIレベルの薬物動態パラメーターまたは測定は、曲面下面積(AUC)、Cmin(すなわち、トラフ)、およびCmaxを含む。AUCは、固定投与期間(例えば、8、12、および24時間)におよぶ対象血液中のAPIの総暴露である。Cmin(すなわち、トラフレベル)は、固定投与期間の間のAPIの最低血液レベルである。Cmaxは、固定投与期間におよぶ対象血液中のAPIにより達成される最高またはピークレベルである。
【0031】
一つの実施態様では、投与される治療上または予防上の効果的な量は、目標閾値レベルより上のAPI血液(例えば、血漿)トラフレベルを達成または維持するために十分である。一つの実施態様では、目標閾値レベルは、少なくとも約10mg/dL、実例として約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、および200mg/dLである。
【0032】
他の実施態様では、治療上または予防上の効果的な量は、少なくとも約50mg/dLのAPI血液トラフレベルを達成または維持するために十分である。他の実施態様では、APIの治療上または予防上の効果的な量は、少なくとも約80mg/dLのAPIトラフレベルを維持するために十分である。
【0033】
一つの実施態様では、組成物中のAPIの濃度は、少なくとも約0.1mg/ml、実例として、少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、および1000mg/mlである。一つの実施態様では、組成物中のAPIの比活性は、少なくとも約0.05mg活性API/mg全タンパク質、実例として少なくとも約0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、またはそれ以上の活性API/mg全タンパク質である。
【0034】
いくつかの実施態様では、組成物中に含まれたAPIの濃度は、重量パーセント(w/v)基準で、少なくとも約1%、実例として、約1‐約60%、約5‐55%、約10‐約45%、約20‐約30%(w/v)である。
【0035】
B.アミノ酸
本明細書中に特異的に列挙されたアミノ酸は、例示的な目的のみのためおよび本発明に関して使用できるアミノ酸を制限するための意図ではないことが理解される。本明細書中に特異的に列挙されていない他のアミノ酸は、それらの認められた物理的および化学的特性に基づいて容易に分類できる。さらに、本明細書中で列挙されたアミノ酸のいくつかは、遺伝子的にコードされるアミノ酸の面から例示されているが、しかしながら、アミノ酸は、遺伝子的にコードされたアミノ酸に限定する必要はなく、また遺伝子的にコードされないアミノ酸も含んでもよい。例えば、アミノ酸はまた、天然型のコードされないアミノ酸および合成アミノ酸(例えば、β‐アラニン、ヒドロキシプロリン)を含み得る。また、L‐エナンチオーマーのアミノ酸(L‐アミノ酸)およびD‐アミノ酸と同様に、フリーアミノ酸形態および/または生理的に許容される塩形態および/またはそれらの混合物を考慮する。
【0036】
表1は、アミノ酸のいくつかの非限定的な例を列挙する。
【0037】
【表1】

【0038】
一つの実施態様では、Ala(A)、Thr(T)、ヒドロキシプロリン、Gly(G)、Ser(S)、Gln(Q)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)、アセチルシステイン、Leu(L)、Ile(I)、Val(V)、Lys(K)、Pro(P)、Tyr(Y)、His(H)、Glu(E)、Asn(N)、Asp(D)、およびArg(R)からなる群から選択される少なくとも一つのアミノ酸それぞれを含む。
【0039】
他の実施態様では、Ala(A)、Thr(T)、ヒドロキシプロリン、Gly(G)、およびSer(S)からなる群から選択される少なくとも一のアミノ酸それぞれである。
【0040】
他の実施態様では、少なくとも一つのアミノ酸は、Ala(A)またはGly(G)である。
【0041】
いくつかの実施態様では、アミノ酸は、中性アミノ酸または親水性アミノ酸である。他の実施態様では、親水性アミノ酸は、コンセンサス疎水性尺度に従って、ゼロ未満の疎水性を示すものとして特徴づけられるアミノ酸である。
【0042】
一つの実施態様では、少なくとも一つのアミノ酸は、例えば、少なくとも一のアミノ酸を有しないAPI組成物に対して決定されるように、安定なAPI組成物を提供するために十分である全アミノ酸量について組成物中に存在する。
【0043】
他の実施態様では、全アミノ酸量は、APIが、ある温度で、ある期間の間、API活性の少なくとも約5%を保持するような十分な量であり、実例として、ある温度で、ある期間の間、API活性の少なくとも約5%‐約100%、約10%‐約95%、約20%‐約90%、約30%‐約80%、約40%‐約70%、および約50%‐約60%である。いくつかの実施態様では、期間および/または温度は、保存時間および/または温度(例えば、有効期間(shelf‐life)として特徴づけられる。一つの実施態様では、期間は、少なくとも約1日、1週間、2週間、3週間、1月、2月、3月、4月、5月、6月、8月、1年、2年、および3年である。他の実施態様では、温度は、約−120℃、−70℃、−20℃、0℃、5℃、25℃、37℃、40℃、および50℃相当または超である。
【0044】
一つの実施態様では、API活性は、例えば、Coan et al.,Vox Sang.,48:333(1985)により記載されたようにブタすい臓エラスターゼの阻害により決定(測定)でき、そしてそれは、そのすべてについて参照により本明細書中に取り込まれる。いくつかの実施態様では、API活性は、動物でインビトロ、インビボ、および/またはエクスビボ決定(定量)(例えば、治療指数、LD50、ED50など)により、効力としてまたは毒性として評価できる。例えば、バルクまたはストック溶液、または凍結乾燥されたまたは真空乾燥されたAPIを含む組成物の再調製液から連続的な希釈液に続いて、再調製されたまたは水溶性の組成物中に存在するAPIは、(少なくとも一のアミノ酸および/または少なくとも一のアミノ酸量のすべての存在で)生物学的に活性なAPIが、先に組成物中に組み込まれることを有する効力または毒性の少なくとも約5%超‐約100%を有する。
【0045】
他の実施態様では、APIの安定性は、例えば、酸化形成、タンパク質分解性、および/または脱アミド製品、分子量分布についての変化、効力の変化、機能性の変化、非酵素的なグリケーションなどの賦形剤の存在による製品の凝集または修飾などの不溶性物質の増加を含むが、限定されないAPIの分解を決定することにより決定できる。さらに、安定性は、例えば、揮発、吸着、化学修飾などによる濃度の変化として決定できる。従って、いくつかの実施態様では、安定なAPI組成物の貯蔵は、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70%未満のAPI分解を示す組成物の貯蔵である。安定な組成物の貯蔵は、また、それらの特性の任意の組み合わせを示してもよい。
【0046】
他の実施態様では、組成物の全アミノ酸量は、少なくとも一のアミノ酸を含まない組成物に対するAPIの融点を増加するために十分な量である。当業者は、例えば、示差走査熱量計(DSC)を使用することで、融点を決定できる。一つの実施態様では、組成物の全アミノ酸量は、少なくとも約0.01℃、0.1℃、1℃、1.2℃、1.4℃、1.6℃、1.8℃、および2℃融点を上昇するために十分である。
【0047】
他の実施態様では、組成物の全アミノ酸量は、ある温度で、ある期間、組成物の貯蔵後、組成物中の単量体APIのパーセンテージが、少なくとも50%、実例として、約50%‐約100%、約60%‐約99%、約70%‐約98%、約80%‐約95%、および約85%‐約90%であるのに十分な量である。一つの実施態様では、期間は、少なくとも約1日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、2月、3月、4月、5月、6月、8月、1年、2年、および3年である。他の実施態様では、温度は、約−120℃、−70℃、−20℃、0℃、5℃、25℃、37℃、40℃、および50℃相当または超である。
【0048】
他の実施態様では、組成物の全アミノ酸量は、ある温度で、ある期間の間、組成物の貯蔵後、組成物中のタンパク質凝集の存在が、約50%、40%、30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、および0%未満または相当であるのに十分な量である。一つの実施態様では、期間は、少なくとも約1日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、2月、3月、4月、5月、6月、8月、1年、2年、および3年である。他の実施態様では、温度は、約−120℃、−70℃、−20℃、0℃、5℃、25℃、37℃、40℃、および50℃相当または超である。
【0049】
組成物中のタンパク質凝集レベルは、例えば、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE‐HPLC)を使用することで、当業者により決定され得る。
【0050】
一つの実施態様では、組成物中に存在する全アミノ酸量は、少なくとも約0.01M,実例として、約0.01‐約3M、約0.03‐約1M、約0.05‐約0.5M、および約0.1‐0.3Mである。
【0051】
他の実施態様では、組成物中に存在する全アミノ酸量は、少なくとも約0.01M、少なくとも約0.03M、または少なくとも約0.3Mである。
【0052】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mアラニン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.01M‐約0.75Mアラニンの全アラニン濃度でアラニンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一つのアミノ酸がアラニンで、ここで、組成物がアラニン以外にアミノ酸を含まない。
【0053】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mのスレオニン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mスレオニンの全スレオニン濃度でスレオニンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一つのアミノ酸がスレオニンで、ここで、組成物がスレオニン以外にアミノ酸を含まない。
【0054】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mヒドロキシプロリン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mヒドロキシプロリンの全ヒドロキシプロリン濃度でヒドロキシプロリンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、ヒドロキシプロリンであり、ここで組成物が、ヒドロキシプロリン以外にアミノ酸を含まない。
【0055】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mグリシン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mグリシンの全グリシン濃度でグリシンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、グリシンであり、ここで組成物が、グリシン以外にアミノ酸を含まない。
【0056】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mセリン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mセリンの全セリン濃度でセリンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、セリンであり、ここで組成物が、セリン以外にアミノ酸を含まない。
【0057】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mグルタミン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mグルタミンの全グルタミン濃度でグルタミンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、グルタミンであり、ここで組成物が、グルタミン以外にアミノ酸を含まない。
【0058】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mフェニルアラニン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mフェニルアラニンの全フェニルアラニン濃度でフェニルアラニンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、フェニルアラニンであり、ここで組成物が、フェニルアラニン以外にアミノ酸を含まない。
【0059】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mトリプトファン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mトリプトファンの全トリプトファン濃度でトリプトファンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、トリプトファンであり、ここで組成物が、トリプトファン以外にアミノ酸を含まない。
【0060】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mメチオニン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mメチオニンの全メチオニン濃度でメチオニンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、メチオニンであり、ここで組成物が、メチオニン以外にアミノ酸を含まない。
【0061】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mアセチルシステイン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mアセチルシステインの全アセチルシステイン濃度でアセチルシステインを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、アセチルシステインであり、ここで組成物が、アセチルシステイン以外にアミノ酸を含まない。
【0062】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mロイシン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.03M‐約0.15Mロイシンの全ロイシン濃度でロイシンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、ロイシンであり、ここで組成物が、ロイシン以外にアミノ酸を含まない。
【0063】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mイソロイシン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mイソロイシンの全イソロイシン濃度でイソロイシンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、イソロイシンであり、ここで組成物が、イソロイシン以外にアミノ酸を含まない。
【0064】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mバリン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mバリンの全バリン濃度でバリンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、バリンであり、ここで組成物が、バリン以外にアミノ酸を含まない。
【0065】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mリジン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mリジンの全リジン濃度でリジンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、リジンであり、ここで組成物が、リジン以外にアミノ酸を含まない。
【0066】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mプロリン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mプロリンの全プロリン濃度でプロリンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、プロリンであり、ここで組成物が、プロリン以外にアミノ酸を含まない。
【0067】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mチロシン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mチロシンの全チロシン濃度でセリンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、チロシンであり、ここで組成物が、チロシン以外にアミノ酸を含まない。
【0068】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mヒスチジン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mヒスチジンの全ヒスチジン濃度でヒスチジンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、ヒスチジンであり、ここで組成物が、ヒスチジン以外にアミノ酸を含まない。
【0069】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mグルタミン酸、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mグルタミン酸の全グルタミン酸濃度でグルタミン酸を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、グルタミン酸であり、ここで組成物が、グルタミン酸以外にアミノ酸を含まない。
【0070】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mアスパラギン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mアスパラギンの全アスパラギン濃度でアスパラギンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、アスパラギンであり、ここで組成物が、アスパラギン以外にアミノ酸を含まない。
【0071】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mアスパラギン酸、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.1M‐約0.3Mアスパラギン酸の全アスパラギン酸濃度でアスパラギン酸を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、アスパラギン酸であり、ここで組成物が、アスパラギン酸以外にアミノ酸を含まない。
【0072】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mアルギニン、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.17M‐約0.3Mアルギニンの全アルギニン濃度でアルギニンを含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のアミノ酸が、アルギニンであり、ここで組成物が、アルギニン以外にアミノ酸を含まない。
【0073】
C.賦形剤
他の実施態様では、本発明は、以下:
(i)API;
(ii)少なくとも一のアミノ酸、ここで組成物は、さらに一またはそれ以上の賦形剤を含む
を含む組成物を提供する。賦形剤の非限定的な例では、ポリオール、糖、界面活性剤、抗酸化剤、塩(例えば、無機塩)、金属キレート剤、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、シクロデキストリン、デキストラン)、ウレア、塩化グアニジウム、ポリペプチド(例えば、抗体)、およびそれらの組み合わせを含む。従って、当業者は、本明細書中で使用される用語「賦形剤」が、広範であることを意図し、およびタンパク質を含む組成物を調製するために当業者により通常使用されるようなそのような剤を含み得る。
【0074】
いくつかの実施態様では、賦形剤は、ポリオールまたは糖である。例えば、ポリオールまたは糖は、スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトール、ソルボース、メレチトース、グリセロール、フルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース、グルコース、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ラフィノース、および/またはなどでよいが、限定されない。
【0075】
一つの実施態様では、一またはそれ以上の賦形剤それぞれは、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デキストラン、トレハロース、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、サッカリンナトリウム、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG3350、PEG2000、PEG8000)、および1,2‐プロパンジオールからなる群から選択される。他の実施態様では、賦形剤は、スクロースまたはマンニトールである。
【0076】
他の実施態様では、スクロースの全量は、仮に組成物中に存在すれば、20%(w/v)未満であり、実例として、約0%‐約15%(w/v)、約2.5%‐約7.5%、および約4%‐約5%(w/v)である。一つの実施態様では、組成物は、スクロースを含まない。
【0077】
それぞれの賦形剤の全量および/または組成物の全賦形剤量は、例えば、種類および/または使用される賦形剤量および/または種類および/またはAPIを含む組成物中に存在する他の成分量に依拠して、変更できる。
【0078】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mの糖、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.125‐約0.75Mの糖の全糖濃度で糖を含む。いくつかの実施態様では、糖はスクロースである。他の実施態様では、糖はスクロースであり、ここで、組成物はスクロース以外に糖を含まない。
【0079】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mのポリオール、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.125‐約0.75Mのポリオールの全ポリオール濃度でポリオールを含む。いくつかの実施態様では、ポリオールはマンニトールである。他の実施態様では、ポリオールはマンニトールであり、ここで、組成物はマンニトール以外にポリオールを含まない。
【0080】
他の実施態様では、少なくとも約0.25%(w/v)のポリオール、実例として、約0.25‐5%(w/v)のポリオールの全ポリオール濃度でポリオールを含む。いくつかの実施態様では、ポリオールはグリセロールである。他の実施態様では、ポリオールは、グリセロールであり、ここで、組成物は、グリセロール以外にポリオールを含まない。
【0081】
一つの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mのポリオール、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.27‐約0.55Mポリオールの全ポリオール濃度でポリオールを含む。いくつかの実施態様では、ポリオールはソルビトールである。他の実施態様では、ポリオールはソルビトールであり、ここで、組成物はソルビトール以外にポリオールを含まない。
【0082】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.25%(w/v)のポリマー、実例として、約0.25‐約5%(w/v)ポリマーの全ポリマー濃度でポリマーを含む。いくつかの実施態様では、ポリオールはデキストランである。他の実施態様では、ポリマーはデキストランであり、ここで組成物は、デキストラン以外にポリマーを含まない。
【0083】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mの糖、実例として、約0.01‐約1M、および約0.15‐約0.75Mの糖の全糖濃度で糖を含む。いくつかの実施態様では、糖はトレハロースである。他の実施態様では、糖はトレハロースであり、ここで、組成物は、トレハロース以外に糖を含まない。
【0084】
一つの実施態様では、少なくとも約0.25%(w/v)のHES、実例として、約0.25‐約5%(w/v)のHESの全HES濃度でHESを含む。
【0085】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mのサッカリンナトリウム、実例として、約0.01‐約1Mおよび約0.15‐0.75Mのサッカリンナトリウムの全サッカリンナトリウム濃度でサッカリンナトリウムを含む。
【0086】
他の実施態様では、組成物は、少なくとも約0.25%(w/v)のPEG、実例として、約0.25‐約10%(w/v)のPEG、および約1‐5%(w/v)のPEGの全PEG濃度でPEGを含む。いくつかの実施態様では、PEGは、PEG3350である。いくつかの実施態様では、PEGは、約5%(w/v)のPEG3350であり、ここで組成物は、PEG3350以外にPEGを含まない。
【0087】
いくつかの実施態様では、組成物は、少なくとも約0.01Mの1,2‐プロパンジオール、実例として、約0.01‐約1M、および約0.125‐約0.3Mの1,2‐プロパンジオールの全1,2‐プロパンジオール濃度で1,2プロパンジオールを含む。
【0088】
界面活性剤は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコール(例えば、プルロニックF68)のブロックポリマー、またはポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(例えば、ツイーン80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(ツイーン20)、および/またはなどに限定されないが、含み得る。
【0089】
一つの実施態様では、組成物は、さらに、少なくとも約0.0025%(v/v)の界面活性剤、実例として、約0.0025‐約1%(v/v)の界面活性剤、約0.025‐約0.1%(v/v)の界面活性剤、および約0.05‐約0.075%(v/v)の界面活性剤の全界面活性剤濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施態様では、界面活性剤は、プルロニックF68またはツイーン80である。
【0090】
他の実施態様では、本発明は、以下:
(i)API
(ii)少なくとも一のアミノ酸、ここで組成物は、さらに塩、好ましくは無機塩を含む
を含む組成物を提供する。無機塩の例は、塩化ナトリウムまたはリン酸ナトリウムを含むが、限定されない。
【0091】
一つの実施態様では、無機塩は、少なくとも0.01M、実例として約0.01‐約0.5M、約0.05‐約0.4M、および約0.1‐約0.15Mの無機塩の全無機塩量について組成物中に存在する。いくつかの実施態様では、無機塩は、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせである。
【0092】
本明細書中で使用されるように、用語「抗酸化剤」は、酸化を低減しまたは防止する物質を指す。「抗酸化剤」は、メチオニン、グルタチオン、アセチルシステイン、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシルアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシルトルエン(BHT)、およびマレイン酸を含むが、限定されない。
【0093】
一つの実施態様では、本発明は、以下:
(i)API
(ii)少なくとも一のアミノ酸、ここで、組成物はさらに、抗酸化剤を含む。いくつかの実施態様では、抗酸化剤はメチオニンである。他の実施態様では、抗酸化剤は、グルタミンである。他の実施態様では、抗酸化剤は、少なくとも約0.01%(w/v)、実例として、約0.01‐約5%(w/v)、および約0.05‐約0.7%(w/v)の全酸化剤量について組成物中に存在する。
【0094】
金属キレート剤の非限定的な例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(0.1‐0.5%)、[エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)]四酢酸(EGTA)、1,2‐ビス(2‐アミノフェノキシ)エタン‐N,N,N’,N’‐四酢酸(BAPTA)、ヒドロキシエチレントリアミン三酢酸(HEDTA)、またはそれらの塩を含む。一つの実施態様では、金属キレート剤は、二価金属キレート剤である。他の実施態様では、金属キレート剤は、EDTA、EGTA、BAPTA、HEDTA、またはそれらの塩である。いくつかの実施態様では、組成物は、金属キレート剤の組み合わせを含む。他の実施態様では、金属キレート剤は、少なくとも約0.01%(w/v)、実例として、約0.01‐約1%(w/v)、約0.05%‐約0.5%(w/v)、および約0.1‐約0.25%の全キレート剤量で組成物中に存在する。
【0095】
他の実施態様では、本発明は、以下:
(i)API;
(ii)少なくとも一のアミノ酸、ここで、組成物はさらに、金属キレート剤を含む
を含む組成物を提供する。
【0096】
従って、他の実施態様では、本発明は、以下:
(a)API;および
(b)アミノ酸、
ここで組成物はさらに、または場合によりさらに、一またはそれ以上の賦形剤を含む、を含む組成物を提供する。
【0097】
異なるAPIを含む組成物の多様性は、本発明に従って提供される。そのような調合物内の活性成分は、APIであり、そしてそれは、ヒトまたはヒト以外の組み換えAPIでもよく、上述したようにまた、血漿源から抽出されたAPIを含んでもよい。APIは、単独の活性成分としてそれ自体で存在できるが、APIはまた、一またはそれ以上の追加の活性成分と一緒に存在してもよい。
【0098】
II.組成物を調製するための方法
他の側面では、本発明は、APIおよび少なくとも一のアミノ酸を含む組成物を調製するための方法を提供する。
【0099】
一つの実施態様では、方法は、仮に組成物中に存在すれば、塩を除去するために、APIを含む第一組成物を透析することを含む。
【0100】
例えば、第一組成物は、緩衝液中または接触して調製されたAPIを含む組成物でもよく、ここで第一組成物は、塩を含む。組成物は、血漿(例えば、ヒト血漿)からAPIを調製するためのバルク生産プロセスまたは組み換えAPI調製から得た組成物でもよいが、限定されない。
【0101】
一つの実施態様では、第一組成物は、リン酸緩衝液(例えば、20mM リン酸ナトリウム、pH7)中にAPIを含み、ここで、塩化ナトリウムは、緩衝液中に、例えば、約100mM NaClで、存在する。いくつかの実施態様では、透析は、限外ろ過/ダイヤフィルトレーション(UF/DF)である。
【0102】
いくつかの実施態様では、本方法は、さらに、透析ステップに続いて、組成物に一またはそれ以上のアミノ酸を提供することを含む。賦形剤および/または任意の他の剤などは、アミノ酸と一緒に添加してもよく、アミノ酸添加に続いて、またはアミノ酸添加と同時でもよい。
【0103】
他の実施態様では、本方法は、少なくとも一のアミノ酸および/または賦形剤および/または任意の他の剤を含む緩衝液(例えば、リン酸緩衝液 20mM、pH7)中にAPIを含む第一組成物を透析することを含む。
【0104】
一つの実施態様では、本方法はさらに、APIを含む組成物のpHを、約6.0‐約8.0、好ましくは、約6.6‐約7.4に維持することを含む。例えば、他の実施態様では、緩衝塩は、アミノ酸および/または賦形剤および/または任意の他の剤/成分の添加に続いて、効果的なpH範囲を達成するために最初に添加できる。他の実施態様では、アミノ酸および/または賦形剤、および/または他の剤は、APIを含む組成物に添加するために組み合わせてもよい。
【0105】
III.キット
他の側面では、本発明はさらに、キット、例えば、API発現または活性に関連する疾患または症状を治療するためのキットを提供する。一つの実施態様では、キットは、本発明に拠る組成物、特にAPIおよびアミノ酸を含む医薬組成物、および場合により、APIと関連した疾患または症状、例えば通常の血漿APIレベルよりも低いことに関連し、またはそれによって引き起こされる疾患または症状の治療または予防について使用するための説明書を含む。
【0106】
他の実施態様では、分離したコンテナが、キットにより提供され、ここで、少なくとも一のコンテナが、APIを含む組成物を含み、および、一またはそれ以上のさらなるコンテナ中に、異なる組成物、特にAPI以外の活性成分を含む組成物を含む。場合により、キットは、そのうえさらに活性成分と結合して医薬的に許容される担体および希釈剤、および/または、分離したコンテナ中にそこから離れて含んでもよい。
【0107】
本発明は、実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0108】
実施例1:APIを含む液体調合物の安定性
APIを含む液体調合物の安定性を決定するために、加速安定性試験を行った。
【0109】
画分IV‐1製造からAPIを調製し、およびマクロベンチロットを、塩を除去するためにリン酸緩衝液(20mM、pH7)中で透析を行い、およびその後100mg/mlに濃縮した。透析に続いて、他の成分を含むさまざまなAPI調合物を、他の成分(複数)を含む2倍溶液を添加することで得た。10mlバイアルチューブ内に約2mlの最終調合物を加えることにより、最終API調合物をその後、API安定性について試験し、そしてそれをその後、40℃で3‐4週間、温度制御チャンバー中でインキュベートした。サンプルを、SEC‐HPLCを使用して凝集レベルを決定するために毎週採取した。
【0110】
結果を図1に示し、および表2で概要を述べる。
【0111】
【表2】

【0112】
図1および図2に示したように、APIのみを含む調合物および0.1M NaClを含む調合物が、もっとも多い凝集量を示した。スクロースを含むAPI調合物は、期間を通じて凝集形成のもっとも少ない量で、もっとも安定であった。
【0113】
加速安定性試験をまた、40℃で、API(50mg/mL)、API(50mg/mL)+アラニン(0.25M)またはスクロース(0.25M)、およびAPI(50mg/mL)+アラニン(0.125M)/スクロース(0.125M)を含む液体API調合物で行った。
【0114】
図2に示すように、アラニンのみは、期間を通じて、パーセント凝集レベルにより決定された、APIを含む組成物に対する安定性の程度を付与した。さらに、アラニンとスクロースの限定された量の組み合わせは、またある安定性の程度を提供し、そしてそれはアラニンのみより大きかった。
【0115】
実施例2:APIを含む液体調合物の安定性
実施例1で記載した加速安定性試験を、40℃で、API(50mg/mL)、API(50mg/mL)+アラニン(0.25M)またはマンニトール(0.25M)、およびAPI(50mg/mL)+アラニン(0.125M)/マンニトール(0.125M)を含む液体API調合物で行った。
【0116】
図3に示したように、アラニンのみは、期間を通じてパーセント凝集レベルにより決定するための組成物を含むAPIに安定性の程度を付与する。さらに、アラニンと伴に限定された量のマンニトールを組み合わせは、また安定性の程度を提供し、そしてそれは、アラニンのみより大きかった。
【0117】
実施例3:APIを含む液体調合物の安定性
実施例1で記載した加速安定性試験をまた、さまざまな濃度でスクロース、トレハロース、およびアラニンの安定化効果を決定するために、40℃で行った。スクロース、トレハロースおよびアラニンの安定化効果を評価するために、0.25M、0.5M、および0.75Mでこれらの成分を含む10の調合物それぞれを、調製しおよび無菌的に5mlバイアルチューブに充填した。40℃でこれらのサンプルの凝集を、4週間試験した。
【0118】
図4に結果を示す。開始凝集レベルは0であった。4週間のインキュベーションの間、APIの非凝集を、0.75Mスクロースまたは0.75Mトレハロース調合物で認めた。非凝集を、40℃で第1週において認めた。さまざまな成分が不存在であるAPIは、第1週で凝集しおよび凝集レベルは、それぞれの時点で、もっとも高かった。凝集レベルは、添加された成分の濃度の増加につれて減少した。トレハロースは、凝集に対して一番の安定化効果を提供し、続いてスクロースおよびアラニンであった。
【0119】
実施例4:APIを含む液体調合物の安定性
実施例1で記載した加速安定性試験をまた、API調合物におけるアラニンまたはグリシンの濃度の効果を決定するために、40℃で行った。0M、0.1M、0.15M、0.2M、0.25M、または0.3MでアラニンまたはグリシンをAPI液体調合物に添加し、および凝集レベルを40℃で、異なる期間について比較した。すべての調合物は、約1.3‐1.4%凝集レベルから開始した。
図5は、40℃で1週間インキュベーション後、アラニンまたはグリシンの異なる濃度を伴い処方されたAPI溶液中の凝集レベルを示す。図6は、2週間での凝集レベルを示す。結果は、1週間のデータと一致する。凝集レベルは、アラニンまたはグリシン濃度について増加につれて減少した。3および4週での凝集もまた、アラニンまたはグリシンのより多い添加につれて凝集がより少なくなることを示した(データ未記載)。
【0120】
実施例5:APIを含む液体調合物の安定性
実施例1に記載した加速安定性試験をまた、凝集について酸素スカベンジャーの効果を決定するために40℃で行った。従って、API(50mg/ml)およびアラニン(0.25M)を含む液体調合物を調製し、さらに0.3%、0.5%、および0.7%メチオニンを含む液体調合物を調製した。
【0121】
図7は、40℃での、凝集プロファイルを示す。凝集に対するメチオニンの効果は、最小であった。凝集レベルの顕著な低下は見られなかった。
【0122】
実施例6:APIを含む液体調合物の安定性
α‐1プロテイナーゼインヒビター(API)(ヒト血漿から調製;65mg/ml効力)を含むバルク溶液を、100mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸ナトリウム緩衝液中で得た。限外ろ過/ダイアフィルトレーション(UF/DF)を、エンドポイントに到達するために240Lのリン酸緩衝液を使用して、リン酸緩衝液(20mM、pH7)中でバルク溶液(30L)のろ過を適用した。アミノ酸および/または他の成分をその後添加し、および最終タンパク質濃度を50mg/mlに調整した。最終調合物溶液を、0.22μmフィルターを通してろ過し、およびラミナーフローフード下充填した。充填量は、20.0mlであった。バイアルを、オーバーシールしおよび標識した。
【0123】
調合物1は、250mMグリシンを含み、調合物2は、250mM L‐アラニンを含み、調合物3は、125mM L‐アラニンおよび4.2%スクロースを含み、調合物4は、100mM塩化ナトリウムを含む。それぞれの調合物について、APIは、50mg/mlであり、および緩衝液は、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(一塩基および二塩基性七水和物の混合物)であった。凍結乾燥製品について、再調製およびケーキ水分(cake moisture)後、溶解時間/外観を含む追加のアッセイを行った。
【0124】
サンプルを、5℃および25℃で、安定に設置した。以下:外観、線維、効力、pH、SEC‐HPLC、A280で吸光度の測定、ネフェロメトリー(NTU)測定、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)によるタンパク質組成、脱アミド化および動的光散乱(DLS)の試験を、調合物ごとに初期(開始)サンプル(0時間)について行った。ナトリウムの測定を、原子吸光分析法により行い、スクロースの分析を、イオンクロマトグラフィーにより行い、ネフェロメトリー:混濁測定を、HACH比濁計を使用して行い、およびAPIの定量測定を、96ウェルプレートベースの効力アッセイを使用することで行った。
【0125】
表3は、初期分析試験の結果を示す。
【0126】
【表3】

【0127】
5℃安定性データ:5℃で、3および6月で、アラニン/スクロースを伴って処方されたAPIにおいて線維は、ほとんど見られなかった。他の任意の調合物においては、任意の期間で線維が認められなかった。効力(図8)、NUT(図9)、pH、比活性(図10)、DLSおよび脱アミド化測定(図11)では、顕著な変化が見られなかった。効力のための最終コンテナ精度(BCS)は、5%である。NTUおよび脱アミド化のための中間精度は、3.0%および18.5%である。見られる相違は、アッセイのばらつきの範囲である。
【0128】
サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC‐HPLC)で、分子の流体力学的体積(hydrodynamic volume)を基準としたサンプルタンパク質を分離した。SEC‐HPLCにおいて、大きな流体力学的体積を伴う分子は、カラムの充填剤と最小の相互作用(仮にあれば)を有し、およびカラムの排除体積(void volume)で溶出する。より小さい流体力学的体積を伴う分子は、カラムの充填剤とより相互作用し、および排除体積の後、カラムから溶出する。
【0129】
安定性のデータによると、NaClを伴い処方されたAPI(調合物4)は、SEC‐HPLCにより測定したように他の調合物と比較してわずかに高い凝集レベルであった。6月で、凝集レベルは、NaCl(調合物4)、グリシン(調合物1)、アラニン(調合物2)およびアラニン/スクロース(調合物3)サンプルそれぞれについて、0.66%、0.58%、0.43%および0.42%増加し(図12および13)、並びにオリゴマーピークは、未変化を維持するように見え(図14)、並びにモノマーレベルは、0.87%、0.61%、0.57%および0.65%それぞれ減少した(図15)。
【0130】
25℃安定性データ:25℃で、6月で、すべての調合物で線維が見られなかった。効力(図16)、pHおよびDLSでほとんど変化が見られなかった。NTUは、NaClで、もっとも高い値7.88に達し増加した(図17)。
【0131】
比活性は、6月を通じてすべての調合物で0.2‐0.3減少した(図18)。この減少は、A280吸収の増加に起因でき、そしてそれは、6月を通じてすべての調合物について25AUから約28AU増加した(図19)。
【0132】
脱アミド化は、バルク製造プロセスで起こるかもしれず、そしてそれは開始材料の約6%脱アミド化レベルと説明してもよい。脱アミド化は、6月で、開始(初期)平均6%から20%まで増加した(図19)。さらに調合物4は、他の調合物(約20%)と比してわずかに低い脱アミド化レベル(17%)を示すが、相違は、18.5%のアッセイのばらつきの範囲内である。
【0133】
凝集レベルおよびオリゴマーレベルは、増加した(図21‐23)。モノマーレベルは、期間を通じて減少した(図23)。モノマーレベルについての減少は、凝集およびオリゴマー増加の合計と比較できる。6月で、凝集レベルは、調合物4、調合物1、調合物2、および調合物3でそれぞれ、3.52%、3.12%、2.6%および2.25%まで増加した(図20)。
【0134】
5℃で、6月間のインキュベーション後、明らかな変化は、効力、NTU、pH、比活性、DLSおよび脱アミド化測定により見られなかった。凝集レベルについてわずかな増加(<1%)およびモノマーレベルの対応する増加があった。これらの結果は、5℃で、6月間について、API調合物の安定性を示す。
【0135】
25℃で、6月間のインキュベーションの後、調合物4(すなわち、API+NaCl)について、凝集レベルおよびNTUで顕著な増加が見られた。グリシン、アラニン、およびアラニン/スクロースは、凝集およびNTUを減少し、アラニン/スクロースでもっとも効果的な安定化であった。脱アミド化は、劇的に増加した。これらの結果は、APIを含む液体調合物は、25℃で凝集および脱アミド化を受け、およびアミノ酸が凝集に対して保護を提供することを示す。5℃での凝集データから推定では、5%凝集レベルの到達する予測時間は、調合物4で〜25月、調合物2で44月、および調合物3で51月であることを示す。アミノ酸は、それゆえ、顕著なタンパク質安定化を与えることを期待され、および実質的に有効期間を増加することが期待される。
【0136】
実施例7:APIを含む液体調合物の融点
API調合物の融点を決定するために、さまざまなそれらの転移中点値(Tm)を測定するために、DSCを行った。
【0137】
API(50mg/ml)を含むAPI調合物を、さまざまな成分を含むように調製した。短時間で、API溶液を、表4に列挙されたそれぞれの成分を含むリン酸緩衝液(20mM、pH7)中で透析した。結果を表4に示す。
【0138】
【表4】

【0139】
pH7のリン酸緩衝液中でAPIタンパク質の融点は、61.54℃である。融点の増加を、APIタンパク質の立体構造の安定性について増加するための指標として提供できる。
【0140】
実施例8:APIを含む液体調合物のpHおよびタンパク質濃度の影響
凝集に対するpHおよびタンパク質濃度の影響を決定するため、異なるpHおよびタンパク質濃度で調製したAPI溶液を、40℃でインキュベーションし、および凝集データをE‐CHIP分析に供した。タンパク質濃度を、A280/0.53が50mg/mlの濃度値に対応するところで、280nmで吸光度を測定することにより計算した。表5に列挙した試験について、40℃での凝集データを決定した。
【0141】
【表5】

【0142】
50mg/mlのAPIでの最小凝集のための最適pHを示すE‐CHIPモデルは、6.9である(図24)。凝集は、pH6.3で見られ、および凝集量は、pH6.7および7.1でさらに少ない(図25)。凝集は、pH増加で減少し、およびpH6.9で最小値に達した(図26)。図27は、凝集が、タンパク質濃度でほとんど直線的に増加することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)α1‐プロテイナーゼインヒビター(API);および
(b)少なくとも一のアミノ酸
を含む、組成物。
【請求項2】
ある温度である期間、前記組成物を曝したときに、APIがその活性を少なくとも50%保持するような十分な量の全アミノ酸で、前記少なくとも一のアミノ酸が前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記温度が約5℃から約40℃である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記期間が少なくとも約6月である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一のアミノ酸が、中性または親水性のアミノ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも一のアミノ酸が、アラニン、スレオニン、セリン、ヒドロキシプロリン、グリシン、プロリン、ロイシン、およびヒスチジンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミノ酸がアラニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも一のアミノ酸が、約0.01から約3Mの全アミノ酸量について前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
さらに一またはそれ以上の賦形剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記一またはそれ以上の賦形剤が、スクロース、マンニトール、グリセロール、ソルビトール、デキストラン、トレハロース、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、および1,2‐プロパンジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
さらに医薬的に許容される担体含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
対象への静脈内投与に好適である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ある温度である期間、前記組成物を曝した後、前記少なくとも一のアミノ酸が、全タンパク質凝集を約5%未満に維持するために十分な全アミノ酸量について前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記温度が約25℃であり、期間が約6月である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記温度が約5℃であり、期間が約6月である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記温度で前記期間、前記組成物を曝した後、前記少なくとも一のアミノ酸が、全タンパク質凝集を約2%未満に維持するために十分な全アミノ酸量について前記組成物中に存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物のpHが、約6.3から約7.4である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物のpHが、約6.7から約7.1である、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
凍結乾燥形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
静脈内投与に好適な医薬組成物としての、請求項1に記載の組成物を含む、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2013−510158(P2013−510158A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537945(P2012−537945)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/055135
【国際公開番号】WO2011/056793
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(506074484)グリフオルス・セラピユーテイクス・インコーポレーテツド (10)
【氏名又は名称原語表記】Grifols Therapeutics,Inc.
【Fターム(参考)】