説明

α−アミノニトリルの製造触媒

【課題】高い触媒活性を有し、かつ分離・回収が容易で基質適応範囲の広い新規α−アミノニトリルの製造触媒を提供すること、及びこの触媒を用いてα−アミノニトリル化合物を高収率かつ簡便に製造する方法を提供すること。
【解決手段】
有機カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物とを反応させてα−アミノニトリル化合物を製造する方法であって、アルミニウムを含んでいてもよいメソポーラスシリカまたはシリカアルミナを触媒として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なα−アミノニトリル化合物の製造触媒及びこれを用いるα−アミノニトリル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−アミノニトリル化合物は、α−アミノ酸類や1,2−ジアミン類、含窒素複素環化合物など、医薬、農薬、有機材料などの分野における重要な合成中間体として有用なものである。
【0003】
従来、α−アミノニトリル化合物の製造方法としては、たとえば、ルイス酸などの均一系触媒の存在下、有機カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物を反応させる、所謂ストレッカー型反応により製造できることが知られている。たとえば、イッテルビウムトリフラート(特許文献1)、ガリウムトリフラート(非特許文献1)などがあげられる。
しかしながら、一般に、このような均一系触媒は、触媒の分離・回収が困難であるといった欠点があった。
【0004】
このような問題点を解消するために、たとえば、モンモリロナイトKSF(非特許文献2)、硫酸シリカゲル(非特許文献3)、ヘテロポリ酸(非特許文献4)などの触媒の分離・回収が容易な、固体触媒を用いるストレッカー型反応や触媒を用いないストレッカー型反応(非特許文献5)も報告されているが、いずれも基質である有機カルボニル化合物がアルデヒド類に限られ、ケトン類を出発物質として用いることができない。
【0005】
【特許文献1】特開平11−21275号
【非特許文献1】Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2007, 104, p3703-3706
【非特許文献2】Tetrahedron, 2004, 60, p1767-1771
【非特許文献3】Synlett, 2005, p2293-2296
【非特許文献4】Synlett, 2006, p1768-1770
【非特許文献5】Tetrahedron Lett., 2005, 46, p8471-8474
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、原料の選択自由度が拡がり、高い触媒活性を有し、かつ分離・回収が容易な新規なストレッカー型反応用固体触媒を提供すること、及びこの触媒を用いてα−アミノニトリル化合物を高収率かつ簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、有機カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物とを反応させてα−アミノニトリル化合物を製造するにあたり、メソポーラスシリカまたはシリカアルミナが極めて高活性な固体触媒として機能することを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉メソポーラスシリカまたはシリカアルミナを主成分とする、α−アミノニトリルの製造触媒。
〈2〉メソポーラスシリカがアルミニウムを含有することを特徴とする〈1〉に記載のα−アミノニトリルの製造触媒。
〈3〉アルミニウムを含有するメソポーラスシリカが1〜20 nmの規則性細孔を有するものであることを特徴とする〈1〉または〈2〉に記載のα−アミノニトリルの製造触媒。
〈4〉アルミニウムを含有するメソポーラスシリカまたはシリカアルミナに含まれるケイ素とアルミニウムのモル比Si/Alが1〜100であることを特徴とする〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のα−アミノニトリルの製造触媒。
〈5〉有機カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物とを、〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載のα−アミノニトリルの製造触媒の存在下で反応させることを特徴とするα−アミノニトリル化合物の製造方法。
〈6〉前記有機カルボニル化合物が、一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、置換基を有してもよい、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環;R2は水素、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基またはヘテロ環を示す。ただしR1とR2は互いに結合して環を形成していてもよい)
で示される化合物であることを特徴とする〈5〉に記載のα−アミノニトリル化合物の製造方法。
〈7〉アミン化合物が、一般式(2)
【化2】

(式中、R3, R4は、水素、置換基を有してもよい、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環を示す。ただしR3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい)
で示される化合物であることを特徴とする〈5〉に記載のα−アミノニトリル化合物の製造方法。
〈8〉シアン化トリアルキルシリル化合物が、一般式(3)
【化3】

(式中、R5, R6, R7は同じであっても互いに異なっていてもよい、置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を示す)
で示される化合物であることを特徴とする〈5〉に記載のα−アミノニトリル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、有機カルボニル化合物として、アルデヒド類だけでなくケトン類を用いてもストレッカー型反応により、α−アミノニトリル化合物を効率的に製造することができ、該反応における原料の選択自由度が大幅に拡がる。また、本発明方法は、安価な原料から簡便に調製でき、かつ回収再利用が可能な固体触媒を用いるという点で反応原価の観点で有利であり、さらに、穏和な条件下、短時間かつ高収率でα−アミノニトリル化合物を得ることができ、しかも反応副生物がなく反応後の処理が極めて容易であるという優れた特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のα−アミノニトリルの製造触媒は、メソポーラスシリカまたはシリカアルミナを主成分とすることを特徴とする。
ここで、メソポーラスシリカとは、一般に界面活性剤を鋳型として調製される、細孔径分布の小さい均一な大きさのメソ細孔が空間的に規則正しく配列したシリカである。
また、シリカアルミナとは、ケイ素とアルミニウムを主成分とする複合酸化物であり、結晶性のものであっても、非晶質のものであってもよい。前者の例としては、A型、X型、Y型、MFI型、MOR型、ベータ型などのゼオライトが、後者の例としては、所謂アモルファスシリカアルミナが例示される。
【0010】
メソポーラスシリカが有する規則性細孔の平均細孔径は、1〜20 nmが好ましく、2〜10 nmがより好ましい。
本発明においては、メソポーシリカには、アルミニウムが含有されていてもよい。アルミニウムの含有形態としては、アルミニウムがシリカ骨格内に4配位の状態で存在することが好ましいが、アルミニウムの一部がシリカ骨格外に存在していてもよい。
メソポーラスシリカは、その規則構造に特に制限はなく、MCM-41やSBA-15に代表される2d六方構造を有するものでもよく、MCM-48やSBA-16に代表される立方構造を有するものでもよい。アルミニウムを含有するメソポーラスシリカを用いる場合には、それに含有されるケイ素とアルミニウムのモル比Si/Alは、1〜100が好ましく、10〜50がより好ましい。また、シリカアルミナを用いる場合にもの、それに含有されるケイ素とアルミニウムのモル比Si/Alは、1〜100が好ましく、1〜50がより好ましい。
【0011】
本発明で好ましく使用されるアルミニウムを含有するメソポーラスシリカとして、入手容易なものとしては、たとえば、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1995, p711-712やMicropor. Mesopor. Mater.,2000, 34, p43-54に記載されているような、アルキルトリメチルアンモニウムからなる界面活性剤の集合体をテンプレートとして用い、水熱合成によって得られるアルミニウム含有メソポーラスシリカ(Al-MCM-41)等があげられるが、上述したように、アルミニウムを含有したメソポーラスシリカであれば、その原料、合成方法や規則構造、対カチオンに特に制限を受けるものではない。
【0012】
また、本発明のα−アミノニトリルの製造触媒の形態に特に制限はないが、通常は微粉状、あるいは粒子状である。
【0013】
本発明のα−アミノニトリル化合物の製造方法は、上述したα−アミノニトリルの製造触媒の存在下、有機カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物を反応させることを特徴とする。
【0014】
有機カルボニル化合物としては、特に制約されないが、好ましくは、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、置換基を有してもよい、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環;R2は水素、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基またはヘテロ環を示す。ただしR1とR2は互いに結合して環を形成していてもよい)で表される有機カルボニル化合物が用いられる。
【0015】
一般式(1)で示される有機カルボニル化合物としては、たとえば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレロアルデヒド、カプロンアルデヒド、エナントアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ピバルアルデヒド、シクロヘキサンカルボアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド及びそれらの各種置換体、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、クミンアルデヒド、アニスアルデヒド、ナフトアルデヒド、フルフラール、チオフェンアルデヒドなどの芳香族アルデヒド及びそれらの各種置換体、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒドなどの不飽和アルデヒド及びそれらの置換体、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキシルメチルケトン、ジイソプロピルケトン、ベンジルアセトンなどの脂肪族ケトン及びそれらの各種置換体、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノンなどの環状ケトン及びそれらの各種置換体、アセトフェノン、プロピオフェノン、ブチロフェノン、バレロフェノン、ピバロフェノン、カプロフェノン、カプリロフェノン、カプリフェノン、アセトナフトン、ベンゾフェノンなどの芳香族ケトン及びそれらの各種置換体、シクロへキセノン、ベンザルアセトン、カルコンなどの不飽和ケトン及びそれらの各種置換体が例示される。
【0016】
アミン化合物としては、特に制約されないが、好ましくは、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R3, R4は、水素、置換基を有してもよい、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環を示す。ただしR3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい)で表されるアミン化合物が用いられる。
【0017】
一般式(2)で示されるアミン化合物としては、たとえば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジン、アニシジンなどの第一級アミン及びそれらの各種置換体、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルメチルアミン、ベンジルエチルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミンなどの第二級アミン及びそれらの各種置換体、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、ジアゼチジン、イミダゾリジン、ピペラジン、ジアゼパン、ジアゾカン、トリアジナン、トリアゼパン、トリアゾカン、モルホリンなどの環状アミン及びそれらの各種置換体、アンモニアが例示される。
【0018】
また、他方の原料であるシアン化トリアルキルシリル化合物としては、特に制約されないが、好ましくは、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R5, R6, R7は同じであっても互いに異なっていてもよい、置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を示す)で示される化合物が用いられる。
【0019】
一般式(3)で示されるシアン化トリアルキルシリル化合物としては、たとえば、シアン化トリメチルシリル、シアン化トリエチルシリル、シアン化トリイソプロピルシリル、シアン化ジメチルイソプロピルシリル、シアン化ジエチルイソプロピルシリル、シアン化tert-ブチルジメチルシリル、シアン化tert-ブチルジフェニルシリルが例示される。
【0020】
一般式(1)で表される有機カルボニル化合物及び一般式(2)で示されるアミン化合物と一般式(3)で示されるシアン化トリアルキルシリル化合物とを反応させると下記の合成反応式(5)に示されるように、一般式(4)
【化4】

(式中、R1, R2, R3, R4は前記と同じ)で表されるα−アミノニトリル化合物が得られる。
【0021】
すなわち、本発明の方法は一般式(5)
【化5】

(式中、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7は前記と同じ)で表すことができる。
【0022】
この一般式(5)で示されるα−アミノニトリル化合物は、α−アミノ酸類、1,2−ジアミン類などの合成中間体として有用なものである。たとえば、この化合物を酸加水分解することによりα−アミノ酸類が得られる。また、α−アミノニトリル化合物に水素化リチウムアルミニウムを反応させることにより1,2−ジアミン類が得られる。
【0023】
本発明のα−アミノニトリルの合成反応を具体的に実施するには、たとえば、α−アミノニトリルの製造触媒を入れた容器に、カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物とを加えて攪拌することにより、反応させればよい。ここで、α−アミノニトリルの製造触媒はあらかじめ有機溶媒に懸濁させて用いてもよく、また、カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物は有機溶媒に溶解して加えてもよい。
【0024】
反応系内に添加するα−アミノニトリルの製造触媒の添加量は特に制限はないが、有機カルボニル化合物に対して0.1〜100重量%の範囲が好ましく、5〜50重量%がより好ましい。有機カルボニル化合物とアミン化合物の割合は特に限定されないが、例えば、カルボニル化合物1モルに対して0.5〜数モル、好ましくは1〜1.5モルのアミンを用いることができる。有機カルボニル化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物の割合は特に限定されないが、例えば、カルボニル化合物1モルに対して0.5〜数モル、好ましくは1〜1.5モルのシアン化トリアルキルシリルを用いることができる。
【0025】
また、α−アミノニトリルの合成反応は、アルゴンなどの不活性雰囲気下、常圧で行うのが好ましい。また、このα−アミノニトリルの合成反応は、無溶媒であっても溶媒中であっても進行する。反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン含有炭化水素類が好ましい。反応温度は特に限定されないが、室温で十分に反応が進行する。必要に応じて加温下または氷冷下で反応を行うことも可能である。反応時間は特に制限はないが、通常数時間〜24時間程度である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
[参考例1]
(アルミニウムを含有したメソポーラスシリカ(Al-MCM-41, Si/Al = 20)の合成)
臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(15.1 g)、アルミン酸ナトリウム(1.14 g)、アンモニア水(1 mL)及び蒸留水(100 mL)の混合溶液に、水酸化ナトリウム(3.1 g)、コロイダルシリカ(56.3 g)及び蒸留水(135 mL)の混合溶液を加え、97 ℃で1日攪拌した。室温に冷却後、酢酸水溶液を用いて、pHを10.2に調整した。加熱、pH調整の操作は、さらに2回繰り返した。97 ℃で1日攪拌後、生じた白色の固体を回収し、蒸留水で洗浄した。乾燥後、空気中550 ℃で焼成し、Al-MCM-41(Si/Al = 20)を得た。元素分析より、該Al-MCM-41の組成は、ケイ素:42.5 wt%, アルミニウム:1.8 wt%, ナトリウム:0.2 wt%であった。また、該Al-MCM-41の窒素吸着法から求めた比表面積は969 m2/g、細孔容量は1.14 cm3/g、平均細孔径は2.7 nmであった。
【0028】
[参考例2]
(アルミニウムの含有量の異なるメソポーラスシリカ(Al-MCM-41, Si/Al = 50)の合成)
参考例1と同様な操作により、アルミン酸ナトリウムの量を変えることによりAl-MCM-41(Si/Al = 50)を得た。元素分析より、該Al-MCM-41の組成は、ケイ素:44.4 wt%, アルミニウム:0.7 wt%, ナトリウム:0.1 wt%であった。また、該Al-MCM-41の窒素吸着法から求めた比表面積は1039 m2/g、細孔容量は1.06 cm3/g、平均細孔径は2.9 nmであった。
【0029】
[参考例3]
(アルミニウムの含有量の異なるメソポーラスシリカ(Al-MCM-41, Si/Al = 100)の合成)
参考例1と同様な操作により、アルミン酸ナトリウムの量を変えることによりAl-MCM-41(Si/Al = 100)を得た。元素分析より、該Al-MCM-41の組成は、ケイ素:43.9 wt%, アルミニウム:0.4 wt%, ナトリウム:0.0 wt%であった。また、該Al-MCM-41の窒素吸着法から求めた比表面積は1032 m2/g、細孔容量は1.05 cm3/g、平均細孔径は2.8 nmであった。
【0030】
[参考例4]
(アルミニウムを含有しないメソポーラスシリカ(MCM-41)の合成)
アルミニウム源であるアルミン酸ナトリウムを加えずに、参考例1と同様な操作により、MCM-41を得た。該MCM-41の窒素吸着法から求めた比表面積は1056 m2/g、細孔容量は1.06 cm3/g、平均細孔径は2.7 nmであった。
【0031】
[参考例5]
(規則性細孔を有しないアモルファスのシリカアルミナ(Si/Al = 20)の合成)
界面活性剤である臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを加えずに、参考例1と同様な操作により、シリカアルミナを得た。該シリカアルミナの窒素吸着法から求めた比表面積は157 m2/g、細孔容量は1.21 cm3/gであった。
【0032】
[参考例6]
(H-Yの調製)
市販のY型ゼオライト(東ソー株式会社製、HSZ-320NAA、比表面積:870 m2/g、細孔容量:0.36 cm3/g)を塩化アンモニウム水溶液でイオン交換後、550 ℃で焼成し、H-Yを得た。
【0033】
[実施例1〜6、比較例1〜2]
(触媒活性の比較)
触媒として参考例1〜3で合成したAl-MCM-41(実施例1〜3)、参考例4で合成したMCM-41(実施例4)、参考例5で合成した規則性細孔を有さないアモルファスのシリカアルミナ(実施例5)、参考例6で合成したH-Y(実施例6)、及び市販のシリカ(富士シリシア化学株式会社製、Q-10、比表面積:263 m2/g、細孔容量:1.2 cm3/g)(比較例1)を用いて、触媒活性の比較を行った。
【0034】
すなわち、テフロン(登録商標)でコートされた攪拌子を入れたガラス製シュレンクフラスコに、参考例1で合成したAl-MCM-41(50 mg)を加え、減圧下、120 ℃で1時間乾燥させた。室温に冷却した後、アルゴン雰囲気とし、ベンジルアセトン(148 mg, 1.0 mmol)の塩化メチレン(2 mL)溶液とアニリン(0.11 mL, 1.2 mmol)を加えた。引き続きシアン化トリメチルシリル(0.16 mL, 1.2 mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。触媒をろ別した後、溶媒を減圧下留去し、目的物であるα−アミノニトリル(2−メチル−2−フェニルアミノ−4−フェニルブタンニトリル)の収率を内部標準1,1,2,2−テトラクロロエタンを用いてプロトン核磁気共鳴法(NMR)により分析した(実施例1)。
【0035】
また、参考例2で合成したAl-MCM-41(実施例2)、参考例3で合成したAl-MCM-41(実施例3)、参考例4で合成したMCM-41(実施例4)、参考例5で合成した規則性細孔を有さないシリカアルミナ(実施例5)、H-Y(実施例6)、及び市販のシリカ(比較例1)を用い、同様な操作により、触媒活性を比較した。また、触媒を用いずに同様な反応を行った(比較例1)。それらの収率を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜4と比較例1の結果から、α−アミノニトリルの製造触媒としては、規則性細孔を有することが重要であることが分かる。また、実施例5及び6と比較例1の結果から、α−アミノニトリルの製造触媒には、アルミニウムを含むことが必要であることが分かる。すなわち、本発明のα−アミノニトリルの製造触媒は、規則性細孔を有するアルミニウムを含んでいてもよいメソポーラスシリカまたはシリカアルミナであることで、高い触媒活性を発現していることが示唆される。
【0038】
[実施例4〜11]
実施例1の方法と同様にして、下記の表2に示す各種有機カルボニル化合物及びアミン化合物を用いてα−アミノニトリル化合物の合成を行った。その結果、いずれの場合においても、収率良く目的とするα−アミノニトリル化合物が得られた。また、実施例1及び4〜6の結果から、本発明のα−アミノニトリルの製造触媒は、従来法では困難であったケトンに対しても、非常に高い触媒活性を有することが示唆される。
【0039】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、α−アミノ酸類、1,2−ジアミン類、含窒素複素環化合物などへ誘導できる合成中間体(α−アミノニトリル化合物)の製造方法として極めて有効に利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポーラスシリカまたはシリカアルミナを主成分とする、α−アミノニトリルの製造触媒。
【請求項2】
メソポーラスシリカがアルミニウムを含有することを特徴とする請求項1に記載のα−アミノニトリルの製造触媒。
【請求項3】
アルミニウムを含有するメソポーラスシリカが1〜20 nmの規則性細孔を有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のα−アミノニトリルの製造触媒。
【請求項4】
アルミニウムを含有するメソポーラスシリカまたはシリカアルミナに含まれるケイ素とアルミニウムのモル比Si/Alが1〜100であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
有機カルボニル化合物及びアミン化合物とシアン化トリアルキルシリル化合物を、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒の存在下で反応させることを特徴とするα−アミノニトリル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記有機カルボニル化合物が、一般式(1)
【化1】

(式中、R1は、置換基を有してもよい、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環;R2は水素、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基またはヘテロ環を示す。ただしR1とR2は互いに結合して環を形成していてもよい)
で示される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のα−アミノニトリル化合物の製造方法。
【請求項7】
アミン化合物が、一般式(2)
【化2】

(式中、R3, R4は、水素、置換基を有してもよい、鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環を示す。ただしR3とR4は互いに結合して環を形成していてもよい)
で示される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のα−アミノニトリル化合物の製造方法。
【請求項8】
シアン化トリアルキルシリル化合物が、一般式(3)
【化3】

(式中、R5, R6, R7は同じであっても互いに異なっていてもよい、置換基を有してもよいアルキル基またはアリール基を示す)
で示される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のα−アミノニトリル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−268965(P2009−268965A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121239(P2008−121239)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年独立行政法人新エネルギー産業技術総合開発機構「革新的部材産業創出プログラム/新産業創造高度部材基盤技術開発・省エネルギー技術開発プログラム/革新的マイクロ反応場利用部材技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】