説明

α−オレフィン重合方法

【課題】長く持続する高い触媒活性にて、製造安定性に優れたα−オレフィン重合体を提供する。
【解決手段】(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;(B)有機アルミニウム化合物;および(C)電子供与体化合物を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;(2)得られた予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを接触させ;(3)該接触物と接触させた予備重合触媒を、α−オレフィンを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合することを特徴とする、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用樹脂であるα−オレフィン重合体、特にプロピレン系重合体の製造方法に関する。本発明の方法によると、長く持続する高い触媒効率で、立体規則性の高いα−オレフィン重合体を得ることができる。さらに、本発明の方法により得られたα−オレフィン重合体は、微粉の存在割合が非常に少ないという利点を有し、したがってかかるα−オレフィン重合体は製造安定性、成形加工性に優れている。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンを立体規則性触媒の存在下に重合し、結晶性ポリオレフインを製造する方法は多くの先行技術に提案されて公知である。これらの重合方法のうちで、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分とする高活性チタン固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物触媒成分および(C)電子供与体触媒成分から形成される触媒の存在下にα−オレフィンを重合させることにより高立体規則性の重合体が高い触媒活性で得られる方法は、多くの先行技術文献に提案されており、これらの方法は、重合後の重合体から触媒および非晶質重合体を除去する必要がない優れた重合方法として工業的規模で採用されている。しかしながら、当該技術分野においても合理化技術に対する要望は著しく、さらに高触媒活性の重合技術が求められている。
【0003】
特許文献1(日本国特許第2637076号)には、マグネシウム化合物、チタン化合物、および電子供与体としての多価カルボン酸化合物を接触させて形成される固体チタン触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを用いて前段重合工程でプロピレンを予備重合させ、次いで予備重合させた固体触媒成分と有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体としての有機ケイ素化合物触媒成分とを用いて、後段重合工程でプロピレンと他のα−オレフィンとを共重合させてプロピレンブロック共重合体を製造する方法が開示されている。特許文献1の実施例1には、予備重合工程(前段重合工程)でプロピレンを予備重合させた固体触媒成分と、トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)とn−プロピルトリエトキシシラン(電子供与体)とをプロピレン置換したオートクレーブに添加し、プロピレンを重合させ、次いで系内にエチレンプロピレン混合ガスを添加してエチレンプロピレン共重合体を得ることが開示されている。ここで、特許文献1は、予備重合触媒と有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体とを重合前に予備的に接触させることや、これらの化合物の接触順序については何ら開示していない。
【0004】
特許文献2(日本国特許第2740503号)には、マグネシウム化合物を4価のチタン化合物と反応させ、これと多価カルボン酸エステルとを反応させて得られたチタン固体触媒成分と、有機金属触媒成分ならびに有機ケイ素化合物とを用いてα−オレフィンを予備重合させ、次いで予備重合させた固体触媒成分を用いてα−オレフィンを重合させることが開示されている。特許文献2の実施例2には、チタン、マグネシウムならびにフタル酸ジイソブチルを含むチタン触媒成分と、トリエチルアルミニウムならびにジフェニルジメトキシシランとを用いてプロピレンを予備重合させ、得られた予備重合触媒とトリエチルアルミニウムならびにジフェニルジメトキシシランとをプロピレンを含むオートクレーブに添加し、プロピレンを重合させることが開示されている。ここで、特許文献2は、予備重合触媒と有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体とを重合前に予備的に接触させることや、これらの化合物の接触順序については何ら開示していない。
【0005】
特許文献3(日本国特許第3984304号)には、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、有機金属化合物触媒成分と、有機ケイ素化合物とを接触させて得られる接触物と、1,3−ジエーテル化合物と、有機金属化合物触媒成分とから形成されるオレフィン重合用触媒を用いてポリプロピレンを製造することが開示されている。特許文献3の実施例1には、塩化マグネシウム、四塩化チタン、フタル酸ジイソブチルから形成した固体触媒成分とトリエチルアルミニウムならびにジシクロペンチルジメトキシシランとを用いてプロピレンを予備重合させ、次いで得られた予備重合触媒とトリエチルアルミニウム、ならびに2−イソペンチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパンを、プロピレンを装填したオートクレーブに装入しプロピレンを重合したことが開示されている。ここで特許文献3は、予備重合触媒と有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体とを重合前に予備的に接触させることや、これらの化合物の接触順序については何ら開示していない。
【0006】
さらに特許文献4(日本国特許公報平6−23406号)には、ハロゲン化マグネシウムとハロゲン化チタンとを含むチタン複合体と有機アルミニウム化合物を用いてプロピレンを予備重合させ、次いで得られた固体触媒成分と有機アルミニウム化合物触媒成分ならびに有機ケイ素化合物を用いてプロピレン重合体を製造する方法が開示されている。ここれで特許文献4の実施例1では、予備重合触媒と第三ブチルメチルジメトキシシラン、ならびにトリエチルアルミニウムをオートクレーブに加え、プロピレンを重合させることが開示されている。ここで特許文献4は、予備重合触媒と有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体とを重合前に予備的に接触させることや、これらの化合物の接触順序については何ら開示していない。
【0007】
このように、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を含有する固体状チタン触媒成分を使用するにあたり、予めプロピレンを予備重合させることについては広く知られている。しかしながら予備重合させた触媒を本重合に使用するにあたり、予備重合させた触媒と、有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体化合物とを互いに予備的に接触させたり、これらの接触順序を検討したりした先行技術文献は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2637076号
【特許文献2】特許第2740503号
【特許文献3】特許第3984304号
【特許文献4】特公平6−23406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与体化合物とから形成される触媒の存在下にα−オレフィンを重合させる方法であって、少量の有機アルミニウム化合物の存在下に該固体触媒成分を用いてα−オレフィンを予備重合させて予備重合触媒を得、次いで得られた予備重合触媒と、有機アルミニウム化合物と電子供与体化合物とを予め接触させて得た接触物とを、α−オレフィンを重合させる前に予め接触させてから、α−オレフィンを重合させることを特徴とする。予備重合触媒と、有機アルミニウム化合物ならびに電子供与体とを予め接触させるにあたり、これらの成分の接触順序を検討した結果、予備重合触媒と電子供与体化合物とがそれぞれ単独成分として接触する機会を避けると、触媒活性を著しく高めることができ、かつ得られる重合体の性状が優れていることが判明した。
【0010】
本発明の態様は、以下の通りである:
1.(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;
(B)有機アルミニウム化合物;および
(C)電子供与体化合物
を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、
(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;
(2)得られた予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを接触させ;
(3)該接触物と接触させた予備重合触媒を、α−オレフィンを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合する
ことを特徴とする、前記方法。
2.工程(2)の接触時間が、20分間を超えない、上記1に記載の方法。
3.(C)成分が有機ケイ素化合物である、上記1または2に記載の方法。
4.(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;
(B)有機アルミニウム化合物;および
(C)電子供与体化合物
を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、
(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;
(2)得られた予備重合触媒を(B)成分に接触させ;
(3)(B)成分に接触させた予備重合触媒を、(C)成分とα−オレフィンとを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合する
ことを特徴とする、前記方法。
5.工程(2)の接触時間が、20分間を超えない、上記4に記載の方法。
6.(C)成分が有機ケイ素化合物である、上記4または5に記載の方法。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
まず、本発明のα−オレフィンの重合方法の第1の態様を説明する。本発明は、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;(B)有機アルミニウム化合物;および(C)電子供与体化合物を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;(2)得られた予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを接触させ;(3)該接触物と接触させた予備重合触媒を、α−オレフィンを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合することを特徴とする、前記方法にかかる。
【0013】
本発明で重合させるべきα−オレフィンは、エチレン、および炭素数が3〜20のα−オレフィン、たとえばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等の、一般的なα−オレフィンから広くから選択することができ、特に本発明はプロピレンの重合において有意な効果を発揮する。
【0014】
本発明で用いる(A)成分である固体触媒成分は、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する。この固体触媒成分については、多くの先行技術文献が、その製造方法を提示している。具体的には、この固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物ならびに電子供与体化合物を相互接触させることにより得られる。例えば、(1)マグネシウム化合物あるいはマグネシウム化合物と電子供与体化合物の錯化合物を、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下、粉砕し、または粉砕することなく、電子供与体化合物および/または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理し、又は予備処理せずに得た固体と反応条件下に液相をなすチタン化合物と反応させる方法;(2)マグネシウム化合物の液状物と、液状のチタン化合物を電子供与体化合物の存在下または不存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法;(3)固体状のマグネシウム化合物と液状のチタン化合物および電子供与体化合物と反応させる方法;(4)上記(2)や(3)で得られるものに、さらにチタン化合物を反応させる方法;(5)上記(1)や(2)や(3)で得られるものにさらに電子供与体化合物およびチタン化合物を反応させる方法;(6)マグネシウム化合物あるいはマグネシウム化合物と電子供与体化合物の錯化合物を、電子供与体化合物、粉砕助剤等の存在下または不存在下、およびチタン化合物の存在下に粉砕し、電子供与体化合物および/または有機アルミニウム化合物やハロゲン含有ケイ素化合物のような反応助剤で予備処理し、又は予備処理せずに得た固体をハロゲン又はハロゲン化合物または芳香族炭化水素で処理する方法;および(7)前記(1)〜(5)で得られる化合物をハロゲン又はハロゲン化合物又は芳香族炭化水素で処理する方法など、様々な方法にて、本発明で用いる(A)成分である固体触媒成分を得ることができる。
【0015】
本発明で用いる固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:
【0016】
【化1】

【0017】
(Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4)で表される4価のチタン化合物が好適である。より具体的には、TiCl4、TiBr4、TiI4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(On−C49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(OisoC49)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC25)2Cl2、Ti(On−C49)2Cl2、Ti(OC25)2Br2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(OC25)3Cl、Ti(On−C49)3Cl、Ti(OC25)3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH3)4、Ti(OC25)4、Ti(On−C49)4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられ、これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、とくにテトラハロゲン化チタンであり、とくに好ましいものは、四塩化チタンである。
【0018】
本発明で用いる固体触媒成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物として、マグネシウム・炭素結合やマグネシウム・水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いる事もでき、また、液状状態であっても固体状態であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、沃化マグネシウム、弗化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フエノキシ塩化マグネシウム、メチルフエノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フエノキシマグネシウム、ジメチルフエノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0019】
本発明の固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸又は無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物のような含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネートの如き含窒素電子供与体などを挙げることができる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデカノール、オクタデシルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、クミルアルコール、イソプロピルベンジルアルコールなどの炭素数1ないし18のアルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフエノール、プロピルフエノール、クミルフエノール、ノニルフエノール、ナフトールなどのアルキル基を有してよい炭素数6ないし25のフェノール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフエノン、ベンゾフエノンなどの炭素数3ないし15のケトン類;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ナフトアルデヒドなどの炭素数2ないし15のアルデヒド類;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロル酢酸メチル、ジクロル酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエチル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ2−エチルヘキシル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、クマリン、フタリド、炭酸エチレンなどのチタン触媒成分に含有されることが望ましい後記エステルを含む炭素数2ないし30の有機酸エステル類;ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの無機酸エステル類;アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド、トルイル酸クロリド、アニス酸クロリド、フタル酸ジクロリドなどの炭素数2ないし15の酸ハライド類;メチルエーテル、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジフェニルエーテルなどの炭素数2ないし20のエーテル類;2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(ジフェニルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−ナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−フルオロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(1−デカヒドロナフチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジエチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−メチル−2−エチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−プロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−メチルシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−クロロフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−フェニルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−シクロヘキシルエチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(2−エチルヘキシル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(p−メチルフェニル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−sec−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジ−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−フェニル−2−ベンジル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、1,1−ビス(メトキシメチル)−シクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフェニルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5−テトラフルオロシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)−3,4−ジシクロペンチルシクロペンタジエン、1,1−ビス(メトキシメチル)インデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,5,6,7−テトラヒドロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラフルオロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−3,6−ジメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−フェニル−2−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4−シクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)インデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリメチルシリルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−トリフルオロメチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−4,7−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロペンチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−イソプロピルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−シクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert−ブチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−tert−ブチル−2−メチルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−7−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−2−フェニルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−ベンズインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)−1H−2−メチルベンズインデン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−テトラメチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,4,5,6,7−ヘキサフルオロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3−ベンゾフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,3,6,7−ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジイソプロピルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジフルオロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−4−tert−ブチルフルオレンなどの1,3−ジエーテル類;酢酸アミド、安息香酸アミド、トルイル酸アミドなどの酸アミド類;無水安息香酸、無水フタル酸などの酸無水物;メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、トリベンジルアミン、アニリン、ピリジン、ピコリン、テトラメチルエチレンジアミンなどのアミン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル、トルニトリルなどのニトリル類;などを挙げることができる。これらの電子供与体化合物は、2種以上併用することができる。
【0020】
固体触媒成分に含有されることが望ましい電子供与体化合物は、エステルであり、さらに好ましいものは、一般式:
【0021】
【化2】

【0022】
(ここでR1は置換または非置換の炭化水素基、R2、R5、R6は水素または置換または非置換の炭化水素基、R3、R4は、水素あるいは置換又は非置換の炭化水素基であり、好ましくはその少なくとも一方は置換又は非置換の炭化水素基である。また、R3とR4は互いに連結されていてもよい。上記R1〜R6の置換の炭化水素基としては、N、O、Sなどの異原子を含むもので、例えばC−O−C、COOR、COOH、OH、SO3H、−C−N−C−、NH2などの基を有するものである。)で表わされる骨格を有するものを挙げることができる。
【0023】
この中でとくに好ましいのは、R1、R2の少なくとも一つが炭素数が2以上のアルキル基であるジカルボン酸のジエステル(多価カルボン酸ジエステル)である。
【0024】
多価カルボン酸ジエステルとして好ましいものの具体例としては、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジエチル、ジイソプロピルコハク酸ジエチル、α−メチルグルタル酸ジイソブチル、マロン酸ジブチルメチル、マロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジエチル、フェニルマロン酸ジエチル、ジエチルマロン酸ジエチル、アリルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジノルマルブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジエチル、β−メチルグルタル酸ジイソプロピル、エチルコハク酸ジアリル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、シトラコン酸ジオクチル、シトラコン酸ジメチルなどの脂肪族ポリカルボン酸エステル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジイソブチル、テトラヒドロフタル酸ジエチル、ナジツク酸ジエチルのような脂環族ポリカルボン酸エステル、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸モノイソブチル、フタル酸モノノルマルブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸エチルノルマルブチル、フタル酸ジn−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジn−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジn−ヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジn−オクチル、フタル酸ジネオペンチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジフェニル、ナフタリンジカルボン酸ジエチル、ナフタリンジカルボン酸ジブチル、トリメリツト酸トリエチル、トリメリツト酸ジブチルなどの芳香族ポリカルボン酸エステル、3,4−フランジカルボン酸などの異節環ポリカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
【0025】
また、電子供与体化合物として多価ヒドロキシ化合物エステルを用いることができ、好ましいものの具体例として、1,2−ジアセトキシベンゼン、1−メチル−2,3−ジアセトキシベンゼン、2,3−ジアセトキシナフタリン、エチレングリコールジピバレート、ブタンジオールピバレートなどを挙げることができる。
【0026】
同様に電子供与体化合物として好ましく用いることができるヒドロキシ置換カルボン酸のエステルの例としては、ベンゾイルエチルサリチレート、アセチルイソブチルサリチレート、アセチルメチルサリチレートなどを挙げることができる。
【0027】
固体触媒成分中に担持させることのできる多価カルボン酸ジエステルの他の例としては、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジn−ブチル、セバシン酸ジn−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの長鎖ジカルボン酸のエステル類をあげることができる。
【0028】
これらの多官能性エステルの中で好ましいのは、前述した一般式の骨格を有するものであり、さらに好ましくはフタル酸、マレイン酸、置換マロン酸などと炭素数2以上のアルコールとのエステルであり、とくに好ましくは、フタル酸と炭素数2以上のアルコールとのジエステルである。
【0029】
固体触媒成分に担持させることのできる他の電子供与体化合物は、RCOOR′(R、R′は置換基を有していてよいヒドロカルビル基であって、少なくともいずれかが分岐鎖状(脂環状を含む)又は環含有鎖状の基である)で示されるモノカルボン酸エステルである。例えばR及び/又はR′として、
【0030】
【化3】

【0031】
などの基であってよい。RまたはR′のいずれか一方が上記のような基であれば、他方は上記の基であってもよく、あるいは他の基、例えば直鎖状、環状の基であってもよい。
具体的には、ジメチル酢酸、トリメチル酢酸、α−メチル酪酸、β−メチル酪酸、メタクリル酸、ベンゾイル酢酸等の各種モノエステル、イソプロパノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、などのアルコールの各種モノカルボン酸エステルを例示することができる。
【0032】
さらに電子供与体化合物として、炭酸エステルを選択することもできる。具体的には、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、フェニルエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0033】
固体触媒成分を構成するハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物をあげることができ、とくに塩素が好ましい。
【0034】
本発明の方法に使用する(B)成分である有機アルミニウム化合物は、例えば、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシドのほかに、R12.5Al(OR2)0.5などで表わされる平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミドのようなジアルキルアルミニウムハロゲニド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドのようなアルキルアルミニウムセスキハロゲニド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム等から選択することができる。
【0035】
本発明の方法に使用する(C)成分である電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、有機ケイ素化合物を用いるのが好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサンなどが挙げられ、とりわけエチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、2−ノネボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0036】
本発明の方法は、以下の順序:(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;
(2)得られた予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを接触させ;
(3)該接触物と接触させた予備重合触媒を用いて、α−オレフィンを重合する
で行われることに特徴がある。
【0037】
まず、(A)成分である固体触媒成分と(B)成分である有機アルミニウム化合物との存在下に、α−オレフィンを予備重合させる。この際、用いる(B)成分の量は本重合時に使用する(B)成分の量と比較すると少量であり、通常は(A)成分中のTi原子1molに対して(B)成分で0.5〜50mol、好ましくは1.0〜20molである。予備重合の段階で(B)成分の量を多くしすぎると、得られる予備重合触媒の保存性が低下するおそれがあるため、本段階ではこのような少量の(B)成分の存在下で、(A)成分を用いてα−オレフィンを予備重合させる。α−オレフィンの予備重合は、その後のα−オレフィンの本重合の足がかりとなるα−オレフィンの鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。
【0038】
予備重合は回分式、連続式等の公知の方法で行うことができるが、高濃度の固体触媒を使用でき、また予備重合を行うα―オレフィン量を制御する点において回分式の方が好ましい。また、予備重合は無溶媒下又は不活性媒体中で行なうことができるが、不活性炭化水素媒体中での予備重合が好ましい。このような不活性炭化水素溶媒としては例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素が使用できる。予備重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。予備重合させるα−オレフィンの量は、固体触媒1gに対して0.5〜300g、好ましくは、1〜100g、より好ましくは2〜30gである。
【0039】
予備重合で使用するα−オレフィンとしては、エチレン及び炭素数が3〜20のα−オレフィン、たとえばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなどを例示することができるが、プロピレン単独、またはプロピレンとエチレンおよび/または少量のα−オレフィンを使用することが好ましい。また、予備重合時には必要に応じ、分子量調節剤として水素を使用することができる。
【0040】
次いで、上記工程(1)にて得られた予備重合触媒を、(B)成分と(C)成分である電子供与体化合物とを予め接触させて得た接触物に接触させる。(B)成分と(C)成分との接触において、その成分比は(B)成分1molに対して、(C)成分0.005〜2.0mol、好ましくは0.01mol〜1.0molであり、通常は50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下で行われる。接触にあたっては、不活性溶媒中で行うこともできる。この接触方法は特に限定されないが、例えば、配管、金属容器、攪拌機付き金属容器等を使用して各成分を接触させることができる。
【0041】
予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを重合系外で予備的に接触させる時間(本明細書において「予備接触時間」と称する。)は、20分間を超えないことが好ましい。特に予備接触時間は10分間以下であることが好ましく、1分間以下、あるいは0.5分間以下、0.25分間以下などの、極めて短時間の時間であっても良い。この予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物との接触を行う方法に特に限定はないが、接触物を連続的に本重合反応器に供給する場合は、反応器に接続される配管内、あるいは金属製容器内、攪拌付き金属製容器内で行うことができる。この際、配管の長さや、容器内の滞留時間を変えることにより、上記予備接触時間を適宜調整することができる。
【0042】
予備重合触媒と接触させる(B)成分と(C)成分の量は、予備重合触媒中に含まれるTi原子1molに対し、(B)成分として30〜3000mol、(C)成分として0.03〜3000molであることが好ましいが、用いる(B)成分ならびに(C)成分の種類によっても変わり得る。本発明では、予備重合触媒と、(B)成分ならびに(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを特定の予備接触時間の間、予め重合系外にて接触させる予備接触工程を経ることが重要であって、接触させる各成分の割合は用途に応じて適宜変えることができる。なお、(B)成分と(C)成分との接触、ならびに予備重合触媒と該接触物とを予備接触させる際に用いてもよい不活性溶媒は、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンエチルベンゼンなどの炭化水素化合物が挙げられる。各成分の接触は、通常は50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下で行われる。
【0043】
このようにして得た予備接触触媒を、α−オレフィンを装填した重合反応系内に添加して、α−オレフィンの本重合を行う。
本重合は、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法及びこれらを組み合わせた公知の重合法が用いられる。本重合は回分式、半連続式、あるいは連続式のいずれでもよいが、工業的に使用する場合は、連続式が好ましい。重合温度は常温〜150℃であり、好ましくは、40℃〜100℃である。圧力は常圧〜10Mpaで行うのが一般的であり、好ましくは0.5〜6MPaである。重合時間は、通常は10時間以下であり、好ましくは10分から5時間である。
【0044】
本重合で使用されるα―オレフィンとしては、エチレン及び炭素数が3〜20のα−オレフィン、たとえばプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなどを挙げることができるが、本発明はプロピレンの単独重合体の他に、プロピレン/α−オレフィンランダム共重合体、またはプロピレン/α-オレフィンブロック共重合体の製造に特に好適である。プロピレンとの共重合に使用されるプロピレン以外のα−オレフィンとしては、エチレンまたはブテン−1などが挙げられる。また、本重合時には、分子量調節剤として水素を使用することができる。
【0045】
本発明の方法により、重合体の収率を向上(すなわち、触媒活性を向上)させることができる。
【0046】
本発明の第2の態様は、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;(B)有機アルミニウム化合物;および(C)電子供与体化合物を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;(2)得られた予備重合触媒を(B)成分に接触させ;(3)(B)成分に接触させた予備重合触媒を、(C)成分とα−オレフィンとを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合することを特徴とする、前記方法にかかる。
【0047】
本発明の第2の態様において、第1の態様と異なる点は、工程(2)において、予備重合触媒と(B)成分のみとをまず予備接触させること、さらに工程(2)で得られた(B)成分のみと予備接触させた予備重合触媒を、(C)成分とα−オレフィンとを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合させることである。すなわち、工程(1)で得た予備重合触媒は、工程(2)で(B)成分のみと接触される。本発明では、α−オレフィンの本重合を開始するに先立ち、まず予備重合触媒と、(B)成分とを重合系外で(例えば、反応器に接続される配管内、あるいは金属製容器内、攪拌付き金属製容器内あるいは重合反応容器に備えられた追添器などを利用して)予備的に接触させる。予備重合触媒と(B)成分とを重合系外で予備的に接触させる時間(予備接触時間)は、20分間を超えないことが好ましい。特に予備接触時間は10分間以下であることが好ましく、1分間以下、あるいは0.5分間以下、0.25分間以下などの、極めて短時間の時間であっても良い。本発明の第1の態様と同様、工程(1)の予備重合の段階では、少量の(B)成分(好ましくは(A)成分中のTi原子1molに対して(B)成分で0.5〜50mol、好ましくは1.0〜20mol)を用いて予備重合を行う。予備重合の段階で(B)成分の量を多くしすぎると、得られる予備重合触媒の保存性が低下するおそれがあるからである。予備重合触媒と接触させる(B)成分の量は、予備重合触媒中のTi原子1molに対し、30〜3000molであることが好ましいが、用いる(B)成分ならびに次工程で用いる(C)成分の種類によって変わり得る。本発明では、予備重合触媒と(B)成分とを特定の予備接触時間の間、予め重合系外にて予備接触させる工程を経ることが重要であって、接触させる各成分の割合は用途に応じて適宜変えることができる。なお、予備重合触媒と(B)成分を予備接触させる際に用いても良い不活性溶媒は、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの炭化水素化合物が挙げられる。なお、予備重合させるα−オレフィンの量は、固体触媒1gに対して0.5〜300g、好ましくは、1〜100g、より好ましくは2〜30gである。
【0048】
このようにして得た予備接触触媒を、(C)成分(工程(2)で接触させた(B)成分1molに対し0.005〜2.0mol)とα−オレフィンとを装填した重合反応系内に添加して、α−オレフィンの本重合を行う。
【0049】
本発明の方法により、重合体の収率を向上(すなわち、触媒活性を向上)させることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の方法により、α−オレフィン重合体の収率を向上させ、また、触媒活性を長時間維持することが可能となる。本発明の方法により得られたα−オレフィン重合体は、微粉の存在割合が小さく、したがって、微粉凝集による製造ライン閉塞などのトラブルを減少させることができるため安定的に製造でき、また加工特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、本発明の第1の態様の重合方法の工程を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第2に態様の重合方法の工程を示す図である。
【図3】図3は、比較例の重合方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に本発明の第1の態様の重合方法を具体的に説明する。まず、本発明に使用する(A)成分である、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分は、当業者に公知の従来技術に倣い、適宜用意することができる。
【0053】
次に、用意した固体触媒成分にα−オレフィンを予備重合させる。不活性ガス(例えば窒素、アルゴンなど)で置換した反応容器中に不活性溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)を加え、冷却する(40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下)。ここに有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなど)の不活性溶媒溶液を加え、上で得られた(A)成分である固体触媒成分を加える。次いで予備重合させるα−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテンなど)を反応器内に供給し、α−オレフィンを予備重合させる。得られた予備重合触媒(固相)を適宜洗浄溶媒を用いて洗浄し、洗浄した予備重合触媒を不活性溶媒に溶解してスラリー状の予備重合触媒を得ることができる。
【0054】
続いて、(B)成分である有機アルミニウム化合物と(C)成分である電子供与体化合物とを接触させ、続いてこの接触させて得た接触物に予備重合触媒を接触させる。α−オレフィンの本重合で使用する重合反応容器(オートクレーブなど)に、予備重合触媒と有機アルミニウムならびに電子供与体化合物とを予備的に接触させるための容器(例えば、金属製の追添器などが好ましいが、これらの物質を無理なく予備接触させることができ、かつ予備接触触媒を重合反応容器に供給することができる機能を有していれば、如何なる容器を用いても良い。)を取り付ける(以下、「予備接触容器」と称する。)。取り付けた予備接触容器に有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなど)と電子供与体化合物(例えばジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなど)とを入れる。ここに上で得た予備重合触媒スラリーを添加して、20分間以下、好ましくは10分間以下、さらに好ましくは1分間以下、最も好ましくは0.5分間以下の時間、これらの物質を予備接触させる。接触させる温度は、通常50℃以下、好ましくは40℃、より好ましくは30℃以下である。
【0055】
引き続き、α−オレフィンの本重合を行う。不活性ガス(好ましくは窒素、アルゴンなど)で置換した重合反応容器に重合させるα−オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテンなど)を加え、室温以上、好ましくは30℃以上に加熱する。次いで上で予備接触させた予備重合触媒を含む予備接触容器を加圧して、重合反応容器内に予備接触触媒を圧入する。重合反応容器を昇温し(α−オレフィンの種類によって変わるが、一般的には常温〜150℃、好ましくは、40℃〜100℃)、α−オレフィンを重合させる。未反応のα−オレフィンを重合反応容器からパージして、目的物であるα−オレフィン重合体を得る。なお、所望の分子量のα−オレフィン重合体を得るために、重合反応容器に適宜水素などを添加することも可能である。
【0056】
本発明の第2の態様の重合方法についても、本質的に第1の態様の重合方法と同様である。まず、本発明に使用する(A)成分である、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分は、当業者に公知の従来技術に倣い、適宜用意することができる。
【0057】
次に、用意した固体触媒成分にα−オレフィンを予備重合させる。不活性ガス(例えば窒素、アルゴンなど)で置換した反応容器中に不活性溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)を加え、冷却する(40℃以下、好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下)。ここに有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなど)の不活性溶媒溶液を加え、上で得られた(A)成分である固体触媒成分を加える。次いで予備重合させるα−オレフィン(エチレン、プロピレン、1−ブテンなど)を反応器内に供給し、α−オレフィンを予備重合させる。得られた予備重合触媒(固相)を適宜洗浄溶媒を用いて洗浄し、洗浄した予備重合触媒を不活性溶媒に溶解してスラリー状の予備重合触媒を得ることができる。
【0058】
続いて、予備重合触媒に(B)成分である有機アルミニウム化合物を接触させる。α−オレフィンの本重合で使用する重合反応容器(オートクレーブなど)に、予備重合触媒と有機アルミニウムとを予備的に接触させるための容器(予備接触容器)を取り付ける。取り付けた予備接触容器に有機アルミニウム化合物(例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなど)を入れる。ここに上で得た予備重合触媒スラリーを添加して、20分間以下、好ましくは10分間以下、さらに好ましくは1分間以下、最も好ましくは0.5分間以下、これらの物質を予備接触させる。
【0059】
引き続き、α−オレフィンの本重合を行う。不活性ガス(好ましくは窒素、アルゴンなど)で置換した重合反応容器に重合させるα−オレフィン(エチレン、プロピレン、ブテンなど)および(C)成分である電子供与体化合物(例えば、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランなど)を加え、室温以上、好ましくは30℃以上に加熱する。次いで上で予備接触させた予備重合触媒を含む予備接触容器を加圧して、重合反応容器内に予備接触触媒を圧入する。重合反応容器を昇温し(α−オレフィンの種類によって変わるが、一般的には常温〜150℃、好ましくは、40℃〜100℃)、α−オレフィンを重合させる。未反応のα−オレフィンを重合反応容器からパージして、目的物であるα−オレフィン重合体を得る。なお、所望の分子量のα−オレフィン重合体を得るために、重合反応容器に適宜水素などを添加することも可能である。
【0060】
上記の本発明の重合方法によると、高い重合収率で立体規則性の高いα−オレフィン重合体を得ることができる。得られたα−オレフィン重合体は、微粉の存在割合が小さく、したがって加工特性に特に優れている。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を掲げ本発明についてさらに説明する。なお、実施例における各分析は以下の方法で行った。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
[XI(キシレン不溶成分量)]
300mLフラスコに重合体試料2.5gおよび250mLのオルトキシレンを入れ、攪拌しながら沸騰温度で30分間溶解した。続いて、溶液を100℃に放冷した後、フラスコを25℃の恒温水槽に入れ、25℃になってから1時間経過後、ろ過を行い、回収したろ液のオルトキシレンを蒸発させ、残った残渣の重量を仕込みの重合体試料の重量で除した値を100倍し、XIを求めた。
[重合活性]
島津製作所株式会社製AA660を用い、原子吸光法により、生成したポリマーサンプル中のマグネシウム含有量を測定し、元の触媒に含まれるマグネシウム含有量から触媒1gあたりのポリマー重合量として求めた。
[微粉量測定]
重合ポリマーについて、Ro−Tap篩振とう機を使用して篩分けを行い、目開き125μの金属製メッシュを通過した微粉量を重量により求めた。
[実施例1]
(1)固体触媒成分の調製
特開平9-25316号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下の通りである:
無水塩化マグネシウム56.8gを、無水エタノール100g、出光興産(株)製のワセリンオイルCP15N500mlおよび信越シリコーン(株)製のシリコーン油KF96 500ml中、窒素雰囲気下、120℃で完全に溶解させた。この混合物を、特殊機化工業(株)製のTKホモミキサーを用いて120℃、3000回転/分で3分間撹拌した。撹拌を保持しながら、2リットルの無水ヘプタン中に0℃を越えないような移送した。得られた白色固体は無水ヘプタンで十分に洗浄し室温下で真空乾燥した。得られたMgCl2 ・2.5C25 OHの球状固体30gを無水ヘプタン200ml中に懸濁させた。0℃で撹拌しながら、四塩化チタン500mlを1時間かけて滴下した。次に、加熱を始めて40℃になったところで、フタル酸ジイソブチル4.96gを加えて、100℃まで約1時間で昇温させた。100℃で2時間反応させた後、熱時ろ過にて固体部分を採取した。その後、この反応物に四塩化チタン500mlを加え撹拌させた後、120℃で1時間反応させた。反応終了後、再度、熱時ろ過にて固体部分を採取し、60℃のヘキサン1リットルで7回、室温のヘキサン1リットルで3回洗浄した。TiCl4[C64(COOiC492]の調製四塩化チタン19gを含むヘキサン1リットルの溶液に、フタル酸ジイソブチル:C64(COOiC49)227.8gを、温度0℃を維持しながら約30分で滴下した。滴下終了後、40℃に昇温し30分間反応させた。反応終了後、固体部分を採取しヘキサン500mlで5回洗浄し目的物である固体触媒成分を得た。該固体触媒成分を分析したところ、チタン含有量およびマグネシウム含有量は、それぞれ2.3wt%および17.7wt%であった。
(2)予備重合触媒の調製
窒素置換した300mLの三口フラスコに少量の窒素をフィードしながら、精製ヘキサン100mLを加え冷却し、三口フラスコ内の温度を10℃以下にした。続いて、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウムのヘキサン溶液をトリエチルアルミニウムが2.3mmol加わるように三口フラスコに添加し、さらに上記方法で調製した固体触媒成分500mgを三口フラスコ内へ加えた。その後、10℃で撹拌しながらプロピレンガス5gを三口フラスコ内に供給し、さらに90分間静置してプロピレンを完全に反応させた。続いて、少量の窒素をフィードしながら、三口フラスコ内の液相部分のみをシリンジで除去し、残った固相である予備重合触媒にさらに精製ヘキサン50mLを加え、液相のみを取り除くことで洗浄し、この洗浄操作を2回行った。洗浄後の予備重合触媒に再度少量の精製ヘキサンを加え、スラリー状態(3g/L)にして20℃で保存した。
(3)プロピレンの重合
窒素置換した内容積3Lのオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、追添器を取り付けた。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素2400mLとプロピレン18.5molとを加え撹拌し、30℃に昇温した。少量の窒素をフィードした状態の追添器に、トリエチルアルミニウム4.9mmolと、電子供与体化合物としてジイソプロピルジメトキシシラン1.0mmolとを入れた。上記で調製した予備重合触媒スラリー2.5ml(予備重合触媒として7.5mg)を追添器に入れ、0.25分間予備接触させた。続いて、追添器内を窒素で4MPaに加圧して、予備接触触媒をオートクレーブ内に圧入した。オートクレーブを70℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従い、MFR、XI、重合活性の分析を行った。
[実施例2〜5]
予備接触時間をそれぞれ0.5、3、10、20分と変えた以外は実施例1と同様に行った。
[実施例6]
予備重合触媒の調製は、実施例1(1)〜(2)と同様に行った。次いで、窒素置換した内容積3Lのオートクレーブに少量の窒素フィードしながら、オートクレーブ内にジイソプロピルジメトキシシラン1.0mmolを入れ、追添器を取り付けた。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素2400mLとプロピレン18.5molとを加え、撹拌し30℃に昇温した。少量の窒素をフィードした状態の追添器に、トリエチルアルミニウム4.9mmolを入れた。上記で調製した予備重合触媒スラリー2.5ml(予備重合触媒として7.5mg)を追添器に入れ、0.5分間予備接触させた。続いて、追添器内を窒素で4MPaに加圧し、予備接触触媒をオートクレーブ内に圧入した。オートクレーブを70℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従って、MFR、XI、重合活性の分析を行った。
[比較例1]
予備重合触媒の調製は実施例1(1)〜(2)と同様に行った。窒素置換した内容積3Lのオートクレーブに少量の窒素をフィードしながら、オートクレーブ内にトリエチルアルミニウム4.9mmolを入れ追添器を取り付けた。オートクレーブ内をプロピレンガスで置換した後、25℃で水素2400mLとプロピレン18.5molとを加え撹拌し30℃に昇温した。少量の窒素をフィードした状態の追添器に、ジイソプロピルジメトキシシラン1.0mmolを入れ、続いて上記で調製した予備重合触媒スラリー2.5ml(予備重合触媒として7.5mg)を追添器に入れ、0.5分間予備接触させた。追添器内を窒素で4MPaに加圧し、予備接触触媒をオートクレーブ内に圧入した。オートクレーブを70℃に昇温し、60分間プロピレンを重合した。重合終了後、未反応プロピレンをパージし、ポリプロピレンを得た。得られたポリプロピレンを60℃で16時間真空乾燥し、上記の方法に従い、MFR、XI、重合活性の分析を行った。
[実施例7〜9]
予備接触時間をそれぞれ、0.25、0.5分、3分、重合時間を180分とした以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例2]
重合時間を180分とした以外は比較例1と同様に行った。
【0062】
各実施例および比較例の結果を、以下の表1にまとめる。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明の第1および第2の態様の方法によると、触媒活性が著しく向上することがわかる。特に予備接触時間が同じ(0.5分間)である実施例2(第1の態様)、および実施例6(第2の態様)の結果を比較例1を基準として比較すると、活性のアップ率はそれぞれ35.5%、および33.8%となった。
【0065】
また、実施例8は、予備接触時間を0.5分間、重合時間を180分間とした第1の態様による方法であるが、比較例2を基準とした活性のアップ率は39.3%であった。このように、本発明の方法によると、重合時間を長くしても高い触媒活性を維持することができる。
【0066】
本発明の方法で製造した得られたα−オレフィン重合体は、微粉の存在割合が小さい。実施例1と比較例1とでは予備接触時間が異なるため直接的に比較はできないが、実施例1にて製造した得られたα−オレフィン重合体は、微粉の存在割合が小さくなっていることがわかる。同様に実施例7と比較例2とを比較すると、実施例7にて製造した得られたα−オレフィン重合体は、微粉の存在割合が小さくなっていることがわかる。すなわち本発明の方法で製造した得られたα−オレフィン重合体は、微粉凝集による製造ライン閉塞などのトラブルを減少させることができるため安定的に製造でき、また加工特性に特に優れていると云える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;
(B)有機アルミニウム化合物;および
(C)電子供与体化合物
を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、
(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;
(2)得られた予備重合触媒と、(B)成分と(C)成分とを予め接触させて得た接触物とを接触させ;
(3)該接触物と接触させた予備重合触媒を、α−オレフィンを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
工程(2)の接触時間が、20分間を超えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(C)成分が有機ケイ素化合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒成分;
(B)有機アルミニウム化合物;および
(C)電子供与体化合物
を含む触媒を用いてα−オレフィン重合体を製造する方法であって、
(1)(A)成分と(B)成分との存在下に、α−オレフィンを予備重合させ;
(2)得られた予備重合触媒を(B)成分に接触させ;
(3)(B)成分に接触させた予備重合触媒を、(C)成分とα−オレフィンとを装填した重合反応容器中に添加して、α−オレフィンを重合する
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項5】
工程(2)の接触時間が、20分間を超えない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(C)成分が有機ケイ素化合物である、請求項4または5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14725(P2013−14725A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150001(P2011−150001)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(597021842)サンアロマー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】