説明

α−ケトエステル化合物の製造方法

【課題】α−ケトエステル化合物の工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールとスルホン化剤とを反応させて得られた化合物とアルカリ金属原子ハロゲン化合物等を反応させて、式(5)


で示される化合物を得る工程、式(5)で示される化合物と金属マグネシウムとを反応させ、次いでシュウ酸エステル化合物を反応させて、式(7)で示されるα−ケトエステル化合物を製造する工程、を含む製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−ケトエステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(7)

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表わす。)
で示されるα−ケトエステル化合物は、医薬の合成中間体として有用な式(9)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ヒドロキシカルボン酸化合物の前駆体として有用であり(例えば特許文献1参照。)、その製造方法として、4−(4−メトキシフェニル)ブタン酸エチルとシュウ酸ジエチルとを反応させる方法が知られている。しかしながら、原料である4−(4−メトキシフェニル)ブタン酸エチルを製造する際に、塩化水銀を用いる必要があり、前記製造方法は工業的な製造方法としては満足し得るものとは言えず、改良が望まれていた(例えば非特許文献1および2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−37761号公報
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,58,2319(1936)
【非特許文献2】Synth.Commun.,31,1467(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況のもと、本発明者らは、式(7)で示されるα−ケトエステル化合物の工業的に有利な製造方法を開発すべく検討したところ、4−メトキシ桂皮酸エチル等の桂皮酸化合物を還元処理して得られる3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールを原料とすることにより、目的とする式(7)で示されるα−ケトエステル化合物を製造することができることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、(A)3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールと式(1)

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を表わし、Zはハロゲン原子または下記

で示される基を表わす。)
で示されるスルホン化剤とを反応させて、式(2)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を得る工程、
(B)前記工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と式(3)

(式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物または式(4)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R、RおよびRが結合してその結合窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。)
で示される化合物とを反応させて、式(5)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を得る工程、
(C)前記工程(B)で得られた式(5)で示される化合物と金属マグネシウムとを反応させ、次いで式(6)

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表わす。)
で示されるシュウ酸エステル化合物を反応させて、式(7)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ケトエステル化合物を製造する工程、を含むことを特徴とするα−ケトエステル化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、α−ケトエステル化合物を、工業的により有利に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、(A)3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールと式(1)

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を表わし、Zはハロゲン原子または下記

で示される基を表わす。)
で示されるスルホン化剤(以下、スルホン化剤(1)と略記する。)とを反応させて、式(2)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(2)と略記する。)を得る工程について説明する。
【0008】
スルホン化剤(1)の式中、Rは置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を表わし、置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、4−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の無置換アルキル基およびこれらアルキル基の一つまたは二つ以上の水素原子が置換基で置換された置換アルキル基が挙げられる。置換アルキル基の置換基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、例えばフェニル基、ナフチル基等のアリール基、例えばN−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の置換アミノ基、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基等が挙げられ、かかる置換アルキル基としては、例えばメトキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシエチル基等が挙げられる。
【0009】
置換されていてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等の無置換アリール基およびこれら無置換アリール基の一つまたは二つ以上の水素原子が置換基で置換された置換アリール基が挙げられる。置換基としては、例えば前記無置換もしくは置換アルキル基、前記無置換もしくは置換アリール基、前記アルコキシ基、前記置換アミノ基、前記ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられ、かかる置換アリール基としては、例えば4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ニトロフェニル基等が挙げられる。
【0010】
スルホン化剤(1)としては、例えばメタンスルホニルクロリド、メタンスルホニルブロミド、エタンスルホニルクロリド、エタンスルホニルブロミド、プロパンスルホニルクロリド、プロパンスルホニルブロミド、クロロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルブロミド、ベンゼンスルホニルクロリド、ベンゼンスルホニルブロミド、p−トルエンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルブロミド、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、2−ニトロベンゼンスルホニルブロミド等のスルホン酸ハロゲン化物、例えばメタンスルホン酸無水物、エタンスルホン酸無水物、プロパンスルホン酸無水物、クロロメタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ベンゼンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物、2−ニトロベンゼンスルホン酸無水物等のスルホン酸無水物が挙げられ、Zが

で示される基であるスルホン酸無水物が好ましい。
【0011】
かかるスルホン化剤(1)の使用量は、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面等も考慮すると、実用的には、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールに対して、10モル倍以下である。
【0012】
3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールとスルホン化剤(1)との反応は、通常有機塩基の存在下に実施される。かかる有機塩基としては、例えばピリジン、キノリン、2,4,6−コリジン等のピリジン塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン等の第三級アミン等が挙げられ、第三級アミンが好ましく、なかでもトリエチルアミンおよびN−メチルモルホリンが特に好ましい。かかる有機塩基の使用量は、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特になく、反応条件下で液体である有機塩基であれば、溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよいが、実用的には、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールに対して、10モル倍以下である。また、反応速度を上げるため、4−ジメチルアミノピリジンやトリメチルアミン・塩酸塩を触媒として用いてもよく、その使用量は、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールに対して、通常0.01〜0.5モル倍である。
【0013】
3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールとスルホン化剤(1)との反応は、無溶媒もしくは有機溶媒中で、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールとスルホン化剤(1)と有機塩基を混合することにより実施される。有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率や反応液の性状等を考慮すると、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールに対して、通常2〜100重量倍、好ましくは2〜30重量倍である。
【0014】
反応温度は、通常−20℃〜反応液の還流温度の範囲、好ましくは0〜50℃の範囲である。
【0015】
反応終了後、反応液を後処理することなく次工程に用いてもよいし、例えば反応液に水および必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理して、化合物(2)を取り出し、次工程に用いてもよい。取り出した化合物(2)は、必要に応じてさらに精製処理した後、次工程に用いてもよい。また、前記抽出処理して得られる化合物(2)を含む有機層をそのまま次工程に用いてもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0016】
かくして得られる化合物(2)としては、例えばメタンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、エタンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、プロパンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、クロロメタンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、トリフルオロメタンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、ベンゼンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、p−トルエンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}、2−ニトロベンゼンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)プロピル}等が挙げられる。
【0017】
続いて、(B)前記工程(A)で得られた化合物(2)と式(3)

(式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(3)と略記する。)または式(4)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R、RおよびRが結合してその結合窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。)
で示される化合物(以下、化合物(4)と略記する。)とを反応させて、式(5)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(5)と略記する。)を得る工程について説明する。
【0018】
化合物(3)の式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。アルカリ金属原子としては、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられ、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。かかる化合物(3)としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられ、通常市販されているものが使用される。
【0019】
化合物(4)の式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R、RおよびRが結合してその結合窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、前記アルキル基と前記アリール基とから構成されるもの、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0020】
かかる化合物(4)としては、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムブロミド、n−ヘキサデシルピリジニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、テトラエチルアンモニウムヨーダイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨーダイド、テトラオクチルアンモニウムヨーダイド、トリエチルベンジルアンモニウムヨーダイド、n−ヘキサデシルピリジニウムヨーダイド、ピリジン・塩酸塩等が挙げられ、通常市販されているものが使用される。また、前記工程(A)で、Zがハロゲン原子であるスルホン化剤を用いた場合には、化合物(4)が副生するため、かかる場合であって、前記工程(A)で得られた反応液をそのまま本工程(B)に用いるときは、化合物(3)や化合物(4)を新たに加えなくてもよい。
【0021】
かかる化合物(3)または化合物(4)の使用量は、化合物(2)に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、化合物(2)に対して、10モル倍以下である。
【0022】
反応温度は、通常0〜50℃である。
【0023】
化合物(2)と化合物(3)または化合物(4)との反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は、化合物(2)に対して、通常1〜100重量倍であり、好ましくは1〜20重量倍である。
【0024】
反応終了後、例えば反応液に水および必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、化合物(5)を取り出すことができる。取り出した化合物(5)は、そのままもしくは必要に応じてさらに精製処理した後、次工程に用いられる。また、前記抽出処理して得られる化合物(5)を含む有機層をそのまま次工程に用いてもよい。水に不溶の有機溶媒としては、前記したものと同様のものが挙げられる。なお、前記抽出処理して得られる化合物(5)を含む有機層をそのまま次工程に用いる場合には、前記有機層を脱水処理しておくことが好ましい。
【0025】
かくして得られる化合物(5)としては、例えば1−クロロ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン、1−ブロモ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン、1−ヨード−3−(4−メトキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0026】
続いて、(C)前記工程(B)で得られた化合物(5)と金属マグネシウムとを反応させ、次いで式(6)

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表わす。)
で示されるシュウ酸エステル化合物(以下、シュウ酸エステル化合物(6)と略記する。)を反応させて、式(7)

【0027】
(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ケトエステル化合物(以下、α−ケトエステル化合物(7)と略記する。)を製造する工程について説明する。
【0028】
金属マグネシウムは、通常市販されているものが用いられ、その使用量は、化合物(5)に対して、通常0.8〜5モル倍であり、好ましくは1〜1.5モル倍である。
【0029】
化合物(5)と金属マグネシウムとの反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒は、通常脱水処理したものが用いられる。かかる溶媒の使用量は、化合物(5)に対して、通常2〜100重量倍、好ましくは5〜40重量倍である。
【0030】
化合物(5)と金属マグネシウムとの反応の反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜70℃である。
【0031】
化合物(5)と金属マグネシウムとの反応において、予め金属マグネシウムと少量の活性化剤とを反応させて金属マグネシウムを活性化させておき、化合物(5)と反応させてもよい。かかる活性化剤としては、例えばジブロモエタン、ヨウ素等が挙げられる。
【0032】
化合物(5)と金属マグネシウムとを反応させると、3−(4−メトキシフェニル)プロピルマグネシウムハロゲン化物が生成するが、通常は、3−(4−メトキシフェニル)プロピルマグネシウムハロゲン化物を取り出すことなく、得られる反応液とシュウ酸エステル化合物(6)とを混合させ、反応が実施される。
【0033】
シュウ酸エステル(6)の式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表わし、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
【0034】
かかるシュウ酸エステル(6)としては、例えばシュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−プロピル、シュウ酸ジイソプロピル、シュウ酸ジ−n−ブチル、シュウ酸ジイソブチル、シュウ酸ジ−sec−ブチル、シュウ酸ジ−tert−ブチル、シュウ酸ジn−ペンチル、シュウ酸ジ−n−ヘキシル、シュウ酸ジ−n−ヘプチル、シュウ酸ジ−n−オクチル等が挙げられる。かかるシュウ酸エステル化合物(6)は通常市販されているものが用いられる。
【0035】
かかるシュウ酸エステル化合物(6)の使用量は、化合物(5)に対して、通常1〜10モル倍、好ましくは2〜5モル倍である。
【0036】
反応温度は、通常−70〜30℃、好ましくは−25〜0℃である。
【0037】
反応終了後、例えば反応液と水、塩酸等とを混合した後、トルエン等の水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することによりα−ケトエステル化合物(7)を取り出すことができる。取り出したα−ケトエステル化合物(7)は、例えば蒸留等によりさらに精製してもよい。
【0038】
かくして得られるα−ケトエステル化合物(7)としては、例えば5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸メチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸n−プロピル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸イソプロピル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸n−ブチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸イソブチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸sec−ブチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸tert−ブチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸n−ペンチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸n−ヘキシル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸n−ヘプチル、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸n−オクチル等が挙げられる。
【0039】
前記工程(A)で用いられる3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールは、式(8)

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表わす。)
で示される桂皮酸化合物(以下、桂皮酸化合物(8)と略記する。)を還元処理することにより製造することができる。
【0040】
炭素数1〜8のアルキル基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0041】
桂皮酸化合物(8)としては、例えば4−メトキシ桂皮酸、4−メトキシ桂皮酸メチル、4−メトキシ桂皮酸エチル、4−メトキシ桂皮酸n−プロピル、4−メトキシ桂皮酸イソプロピル、4−メトキシ桂皮酸n−ブチル、4−メトキシ桂皮酸イソブチル、4−メトキシ桂皮酸tert−ブチル、4−メトキシ桂皮酸n−ヘキシル、4−メトキシ桂皮酸n−オクチル等が挙げられ、通常市販されているものが用いられる。また、Rが炭素数1〜8のアルキル基である桂皮酸エステル化合物は、例えば4−メトキシ桂皮酸と対応するアルコール化合物とを、酸の存在下に反応させて得られるものを用いてもよい。
【0042】
桂皮酸化合物(8)の還元処理は、通常金属触媒の存在下に、桂皮酸化合物(8)と水素源とを反応させて、式(10)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるプロピオン酸化合物(以下、プロピオン酸化合物(10)と略記する。)を得、得られたプロピオン酸化合物(10)と還元剤とを反応させることにより実施される。
【0043】
金属触媒としては、炭素−炭素二重結合を水素化して炭素−炭素単結合とする反応に使用される金属触媒であればよく、例えば酸化白金、白金/炭素、パラジウム/炭素、ラネーニッケル等が挙げられる。かかる金属触媒の使用量は、金属換算で、桂皮酸化合物(8)に対して、通常0.01〜1重量倍である。
【0044】
水素源としては、例えば水素ガス、ギ酸等が挙げられ、その使用量は、桂皮酸化合物(8)に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特に制限されない。
【0045】
桂皮酸化合物(8)と水素源との反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればよく、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は、特に制限されない。
【0046】
反応温度は、通常0℃〜反応液の還流温度の範囲である。
【0047】
反応終了後、例えば反応液から金属触媒を濾別し、濃縮処理することにより、プロピオン酸化合物(10)を取り出すことができる。取り出したプロピオン酸化合物(10)は、例えば蒸留等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。
【0048】
かくして得られるプロピオン酸化合物(10)としては、例えば3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸エチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸n−プロピル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸イソプロピル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸n−ブチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸イソブチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸sec−ブチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸tert−ブチル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル等が挙げられる。
【0049】
得られたプロピオン酸化合物(10)と還元剤との反応に用いられる還元剤としては、例えば水素化ホウ素化合物、水素化アルミニウム化合物等が挙げられる。水素化ホウ素化合物としては、例えば水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられ、水素化アルミニウム化合物としては、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等が挙げられる。かかる還元剤の使用量は、プロピオン酸化合物(10)に対して、通常1〜10モル倍である。Rが水素原子であるプロピオン酸化合物の場合には、水素化ホウ素化合物として、例えばジボラン、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、ボラン・ピリジン錯体、ボラン・ジメチルスルフィド錯体等のボラン化合物を用いてもよく、かかるボラン化合物の使用量は、Rが水素原子であるプロピオン酸化合物に対して、通常1〜5モル倍、好ましくは1〜1.5モル倍である。また、水素化ホウ素ナトリウムと、例えば三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体等のルイス酸とを反応させてボラン化合物を反応系中で発生せしめてもよい。
【0050】
プロピオン酸化合物(10)と還元剤との反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、用いる還元剤の種類に応じて適宜選択すればよく、還元剤として水素化ホウ素化合物を用いる場合には、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が、還元剤として水素化アルミニウム化合物を用いる場合には、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は、特に制限されない。
【0051】
反応温度は、通常−78〜100℃である。
【0052】
反応終了後、例えば反応液と水、塩酸等とを混合した後、例えばトルエン等の水に不溶の有機溶媒を加えて抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールを取り出すことができる。取り出した3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールはそのまま前記工程(A)に用いてもよいし、例えば蒸留等の通常の精製手段によりさらに精製した後用いてもよい。
【0053】
また、桂皮酸化合物(8)のうち、Rが炭素数1〜8のアルキル基である桂皮酸エステル化合物を用いる場合には、Rが炭素数1〜8のアルキル基である桂皮酸エステル化合物と還元剤とを反応させることにより、一段階で3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールを得ることができる。還元剤としては、例えば水素化ホウ素化合物、水素化アルミニウム化合物等が挙げられる。水素化ホウ素化合物としては、例えば水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられ、水素化アルミニウム化合物としては、例えば水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等が挙げられる。かかる還元剤の使用量は、Rが炭素数1〜8のアルキル基である桂皮酸エステル化合物に対して、通常1〜20モル倍、好ましくは1〜10モル倍である。
【0054】
が炭素数1〜8のアルキル基である桂皮酸エステル化合物と還元剤との反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、用いる還元剤の種類に応じて適宜選択すればよく、還元剤として水素化ホウ素化合物を用いる場合には、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が、還元剤として水素化アルミニウム化合物を用いる場合には、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は特に制限されない。
【0055】
反応温度は、通常−78〜100℃である。
【0056】
反応終了後、例えば反応液と水、塩酸等とを混合した後、例えばトルエン等の水に不要の有機溶媒を加え抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールを取り出すことができる。取り出した3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールはそのまま前記工程(A)に用いてもよいし、例えば蒸留等の通常の精製手段によりさらに精製した後用いてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0058】
実施例1
実施例3で得られた3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノール40.5gと実施例4で得られた3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノール33gとトルエン368mLとを混合し、氷冷下で、トリエチルアミン53.8gを加えた。これに、内温15℃以下を保持しながら、メタンスルホニルクロリド55.8gを30分かけて滴下した。滴下終了後、室温まで昇温し、トリエチルアミン6.2mLおよびメタンスルホニルクロリド3.4mLを加え、1時間攪拌、反応させた。その後、イオン交換水368mLを滴下し、分液処理し、有機層と水層を得た。有機層をイオン交換水368mLで洗浄した後、濃縮処理し、メタンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパン}を得た。
【0059】
塩化リチウム24.3g、N,N−ジメチルホルムアミド110mLおよび上記で得たメタンスルホン酸{3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパン}を混合し、内温60℃で2時間攪拌、反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、イオン交換水147mLおよびトルエン221mLを加えて分液処理し、有機層と水層を得た。有機層をイオン交換水220mLで3回洗浄処理した後、濃縮処理した。得られた濃縮残渣を減圧条件下で蒸留処理し、1−クロロ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン65.5gを得た(操作圧400Pa,蒸留塔トップ温110℃で留出する成分を捕集)。収率:80%。
【0060】
H−NMR(CDCl,δ/ppm)
2.00−2.10(m,2H),2.72(t,J=7.3Hz,2H),3.52(t,J=6.6Hz,2H),3.79(s,3H),6.84(dd,J=2.0,6.5Hz,2H),7.11(dd,J=2.0,6.5Hz,2H)
【0061】
金属マグネシウム3.6gとテトラヒドロフラン50gとを混合した後、ジブロモエタン100μLを加えた。内温65℃に調整した後、上記で得られた1−クロロ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン25.2gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、内温80℃で2時間反応させ、3−(4−メトキシフェニル)プロピルマグネシウムクロリドを含む反応液を得た。該反応液を室温まで冷却した。
【0062】
内温−70℃以下に冷却しておいたシュウ酸ジエチル39.7gを含むテトラヒドロフラン溶液139.7gに、内温−50℃以下を保持しながら、上記で得た3−(4−メトキシフェニル)プロピルマグネシウムクロリドを含む反応液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、内温−10℃に昇温し、同温度で2.5時間保持した。反応液に3N塩酸50mLおよび水50mLを加えた後、トルエン100mLで2回抽出処理した。得られた有機層を5重量%食塩水50mLで洗浄処理した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後の有機層を濃縮処理した。得られた濃縮残渣を蒸留処理し、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペンタン酸エチル28.8gを得た(操作圧0.1mmHg(0.013KPa相当),蒸留塔トップ温128〜133℃で留出する成分を捕集)。収率:84%。
【0063】
H−NMR(CDCl,δ/ppm)
1.36(t,J=7.1Hz,3H),1.90−1.98(m,2H),2.61(t,J=7.5Hz,2H),2.84(t,J=7.3Hz,2H),3.79(s,3H),4.30(q,J=7.1Hz,2H),6.83(dd,J=2.0,6.6Hz,2H),7.09(dd,J=2.0,6.6Hz,2H)
【0064】
実施例2
実施例1と同様にして3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールから得られた1−クロロ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン60gと金属マグネシウム8.6gとを反応させて得られた3−(4−メトキシフェニル)プロピルマグネシウムクロリドを、シュウ酸ジエチル95gをテトラヒドロフラン200mLに溶解させた溶液中に、内温−8℃以下に保持しながら、1時間かけて滴下した。内温−8℃以下で5時間保持した後、前記実施例1と同様の後処理を行い、5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソペタン酸エチル57.4gを得た。収率:72%。
【0065】
実施例3
参考例1で得た4−メトキシ桂皮酸エチル100gをエタノール1000mLに溶解させた。これに、10重量%パラジウム/炭素(50重量%含水品)5gを加えて、常圧の水素雰囲気下、内温40℃で反応させた。反応開始から8時間経過後、水素の吸収が停止した。反応液中のパラジウム/炭素を濾別した後、減圧条件下で濃縮処理し、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸エチルを含む濃縮残渣115.5gを得た。得られた3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸エチルを含む濃縮残渣104gをテトラヒドロフラン360mLに溶解させた。これに、水素化ホウ素ナトリウム49.6gを加え、内温60℃に調整した。これに、メタノール80mLを滴下し、同温度で2時間反応させた。その後、反応液を、氷水500gと濃塩酸112mLとの混合物に加えた。
【0066】
各試剤の使用量を1/9として、上記と同様に実施し、得られた反応液も前記氷水500gと濃塩酸112mLとの混合物に加えた。
【0067】
減圧条件下で、得られた混合物を濃縮処理し、含まれるテトラヒドロフランの大部分を除去した。その後、トルエン500mLで2回抽出処理し、得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液500mL、次いでイオン交換水500mLで洗浄処理した。洗浄処理後の有機層を、減圧条件下で濃縮処理し、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノール77.1gを得た。
【0068】
実施例4
参考例1で得た4−メトキシ桂皮酸エチル145.5gをテトラヒドロフランに溶解させて、4−メトキシ桂皮酸エチルを含むテトラヒドロフラン溶液1164gを調製した。該テトラヒドロフラン溶液を内温0℃に冷却した。これに、水素化ホウ素ナトリウム132gを5分割し、35分かけて添加した。その後、内温62℃に昇温し、メタノール291gを3時間かけて滴下した。同温度でさらに2時間攪拌、反応させた。反応終了後、内温5℃まで冷却し、3N塩酸800mL中に、内温15℃以下を保持するように、得られた反応液をゆっくり加えた。さらに、3N塩酸でpH6.9に調整した。得られた混合液をトルエンで抽出処理し、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールを含む有機層を得た。該有機層を濃縮処理し、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノール66.7gを得た(操作圧0.2mmHg(0.027KPa相当),蒸留塔トップ温105〜110℃で留出する成分を捕集)。
【0069】
H−NMR(CDCl,δ/ppm)
1.81−1.91(m,2H),2.65(t,J=7.7Hz,2H),3.66(t,J=6.4Hz,2H),3.79(s,3H),6.83(dd,J=2.0,6.6Hz,2H),7.12(dd,J=2.0,6.6Hz,2H)
【0070】
実施例5
4−メトキシ桂皮酸17.8gをテトラヒドロフラン178mLに溶解させた。これに、10重量%パラジウム/炭素(50重量%含水品)0.89gを加えて、常圧の水素雰囲気下、室温で反応させた。反応開始から約1時間経過後、水素の吸収が停止した。反応液中のパラジウム/炭素を濾別した後、減圧条件下で濃縮処理し、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸を含む濃縮残渣18.2gを得た。得られた3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸を含む濃縮残渣12gをテトラヒドロフラン24mLに溶解させた。これを、内温5℃以下に冷却した水素化ホウ素ナトリウム2.3gとテトラヒドロフラン60mLとの混合物中に40分かけて加えた。これに、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体10.5mLを30分かけて滴下し、同温度で30分反応させた。その後、反応液を、1N塩酸60mL中に加え、一晩攪拌、保持した。減圧条件下で、得られた混合液を濃縮処理し、含まれるテトラヒドロフランの大部分を除去した。その後、トルエン500mLで2回抽出処理し、得られた有機層を水洗浄した。洗浄後の有機層を、減圧条件下で濃縮処理し、3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノール9.9gを得た。
【0071】
参考例1
4−メトキシ桂皮酸250gとエタノール550mLと濃硫酸78mLとを混合し、還流条件下で10時間反応させた。反応液を、氷水1000mL中へ加えた後、トルエンで抽出処理した。得られた有機層を水500mLで2回、次いで5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液500mLで1回洗浄処理した。洗浄処理後の有機層を乾燥させた後、減圧条件下で濃縮処理し、4−メトキシ桂皮酸エチル291gを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールと式(1)

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基または置換されていてもよいアリール基を表わし、Zはハロゲン原子または下記

で示される基を表わす。)
で示されるスルホン化剤とを反応させて、式(2)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を得る工程、
(B)前記工程(A)で得られた式(2)で示される化合物と式(3)

(式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xはハロゲン原子を表わす。)
で示される化合物または式(4)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わし、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R、RおよびRが結合してその結合窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。)
で示される化合物とを反応させて、式(5)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物を得る工程、
(C)前記工程(B)で得られた式(5)で示される化合物と金属マグネシウムとを反応させ、次いで式(6)

(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表わす。)
で示されるシュウ酸エステル化合物を反応させて、式(7)

(式中、Rは上記と同一の意味を表わす。)
で示されるα−ケトエステル化合物を製造する工程、を含むことを特徴とするα−ケトエステル化合物の製造方法。
【請求項2】
3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールが、式(8)

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表わす。)
で示される桂皮酸化合物を還元処理して得られる3−(4−メトキシフェニル)−1−プロパノールである請求項1に記載のα−ケトエステル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−206447(P2006−206447A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16680(P2005−16680)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】