説明

α−ケトカルボニルカルパイン阻害剤

本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患の治療のための新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤に関する。非活動性萎縮および一般的な筋肉の衰弱もまた治療することができる。目の疾患、特に白内障も同様に治療することができる。一般に、カルパインのレベルの上昇が関与する全ての状態を治療することができる。本発明の化合物はまた、他のチオールプロテアーゼ、例えば、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、パパインなどもまた阻害することができる。プロテアソームとしても周知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)また阻害され、そのため、化合物を使用して、癌、乾癬、および再狭窄などの細胞増殖性疾患を治療することができる。本発明の化合物はまた、フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞傷害の阻害剤であり、これを使用して、酸化的ストレスのレベルの上昇が関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患の治療のためのα-ケトカルボニルカルパイン阻害剤に関する。非活動性萎縮および一般的な筋肉の衰弱もまた治療することができる。心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、白内障および目の他の疾患もまた同様に治療することができる。一般に、カルパインレベルの上昇が関与する全ての状態を治療することができる。
【0002】
新規カルパイン阻害剤は、他のチオールプロテアーゼ、例えば、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンLおよびパパインもまた阻害することができる。プロテアソームとしても周知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた、本発明の化合物により阻害できる。本発明の化合物を使用して、MCPの上昇した活性と関連する疾患、例えば、筋ジストロフィー、非活動性萎縮、神経筋疾患、心臓悪液質、癌悪液質、乾癬、再狭窄、および癌を治療することができる。一般に、MCPの活性が関与する全ての状態を治療することができる。
【0003】
驚くべきことに、本発明の化合物はフリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞傷害の阻害剤でもあり、酸化的ストレスのレベルの上昇が関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる。
【0004】
本発明の化合物を含む薬学的組成物もまた提供する。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
脳を含む神経組織は様々なプロテアーゼ、例えば、少なくとも2つのカルシウム刺激性プロテアーゼ(カルパインIおよびカルパインIIと呼ばれる)を有することが知られている。カルパインは様々な組織および細胞中に存在するカルシウム依存性システインプロテアーゼであり、その触媒機構ではシステイン残基が使用される。カルパインはカルシウム濃度の上昇により活性化され、マイクロモル濃度のカルシウムイオンにより活性化されるカルパインI、すなわちμ-カルパインと、ミリモル濃度のカルシウムイオンにより活性化されるカルパインII、すなわちm-カルパインとの間で区別される(P.Johnson、Int.J.Biochem.、1990、22(8)、811-22)。カルパインの活性化が過剰になると、ニューロン内カルシウムの増加により誘発される虚血または損傷と病理学的神経変性との間に分子リンクが起こる。上昇したカルシウムレベルが未制御のままであると、ニューロンへの重篤な構造損傷が起こる場合がある。最近の研究では、カルパイン活性化が、様々な型の神経変性疾患における最終共通経路を示しうることが示唆されている。そのため、カルパインの阻害は、これらの疾患の治療において魅力的な治療アプローチであろう。カルパインは、蛋白質キナーゼCなどの調節蛋白質、MAP2およびスペクトリンなどの細胞骨格蛋白質、および筋肉蛋白質の開裂、関節リウマチにおける蛋白質分解、血小板の活性化と関連する蛋白質、神経ペプチド代謝、有糸分裂における蛋白質、およびM.J.Barett et al.、Life Sci.、1991、48、1659-69およびK.K.Wang et al.、Trends in Pharmacol. Sci.、1994、15、412-419に列挙されている他のものを含む様々な生理過程において重要な役割を果たす。上昇したカルパインレベルは様々な病態生理学的過程において測定されており、例えば、以下の過程である:心臓虚血(例えば、心筋梗塞)、腎臓虚血または中枢神経系虚血(例えば、脳卒中)、炎症、筋ジストロフィー、中枢神経系への損傷(例えば、外傷)、アルツハイマー病、など(K.K.Wangを参照のこと、上記)。これらの疾患は、上昇した、および持続性の細胞内カルシウムレベルと関連すると推定され、過活性化され、もはや生理学的制御を受けないカルシウム依存性過程が引き起こされる。対応する様式では、カルパインの過活性化はまた、病態生理学的過程を誘発することがある。これらの疾患の例は、心筋虚血、脳虚血、筋ジストロフィー、脳卒中、アルツハイマー病または外傷性脳損傷である。他の可能なカルパイン阻害剤の使用は、K.K.Wang、Trends in Pharmacol. Sci.、1994、15、412-419に列挙されている。カルパインまたはカテプシンなどのチオールプロテアーゼは、骨格筋の崩壊の最初の過程、すなわち筋肉疾患、例えば筋ジストロフィーまたは筋萎縮において見られるような筋線維蛋白質の分解によるZ線の消失に関与すると考えられる(Taisha、Metabolism、1988、25、183)。さらに、チオールプロテアーゼ阻害剤であるE-64-dはハムスターにおける実験筋ジストロフィーにおいて延命効果を有することが報告されている(Journal of Pharmacobiodynamics、1987、10、678)。したがって、そのようなチオールプロテアーゼ阻害剤は、例えば、筋ジストロフィーまたは筋萎縮の治療のための治療薬として有益であると期待される。
【0006】
カルパインの必須レンズ蛋白質のカルシウム媒介蛋白質分解のレベルの上昇が、いくつかの形態の白内障の重要な一因であるとも考えられている(S.Biwas et al.、Trends in Mol. Med.、2004)。したがって、カルパイン阻害剤は、白内障および目の疾患の治療に対する治療薬として有益であると期待される。
【0007】
真核細胞は絶えず分解し、細胞蛋白質を交換する。これにより、細胞は選択的に、かつ迅速に異常な構造を有する蛋白質およびペプチドを排除し、調節ペプチドのレベルを調整することにより代謝経路の制御を実施し、飢餓の場合のような必要な時に、エネルギーのためのアミノ酸を提供することができる。Goldberg, A.L. & St. John, A.C. Annu. Rev. Biochem.、1976、45、747-803を参照のこと。哺乳類の細胞機構により、蛋白分解に対する複数の経路が可能となる。これらの経路うちのいくつかは、アデノシン三リン酸(「ATP」)の形態でのエネルギー投入を必要とすると考えられる。Goldberg & St. John、上記を参照のこと。多触媒プロテアーゼ(MCP、典型的には、「多触媒プロテイナーゼ」、「プロテアソーム」、「多触媒プロテイナーゼ複合体」、「多触媒エンドペプチターゼ複合体」、「20Sプロテアソーム」および「インゲンシン」とも呼ばれる)は大分子量(700kD)真核生物非リソソームプロテイナーゼ複合体であり、ペプチドおよびアミノ酸への蛋白質分解に対する少なくとも2つの細胞経路において重要な役割を果たす。Orlowski、M.、Biochemistry、1990、9(45)、10289-10297を参照のこと。複合体は少なくとも3つの異なる型の加水分解活性を有する:(1)ペプチド結合が塩基性アミノ酸のカルボキシル側で開裂する、トリプシン様活性;(2)ペプチド結合が疎水性アミノ酸のカルボキシル側で開裂する、キモトリプシン様活性;および(3)ペプチド結合がグルタミン酸のカルボキシル側で開裂する活性。Rivett, A.J.、J.Biol.Chem.、1989、264(21)、12215-12210およびOrlowski、上記を参照のこと。MCPが関与する蛋白質加水分解の1つの経路には、ポリペプチド「ユビキチン」もまた関与する。Hershko, A. & Crechanovh, A.、Anuu. Rev. Biochem.、1982、51、335-364を参照のこと。この経路は、MCP、ATPおよびユビキチンを必要とし、非常に異常な蛋白質、一定の短命な正常蛋白質ならびに増殖線維芽細胞および成熟網状赤血球中のバルクの蛋白質の分解に関与すると考えられる。Driscoll, J. and Goldberg, A.L.、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A.、1989、86、787-791を参照のこと。この経路により分解される蛋白質は、ATP依存様式で、リシンアミノ基を介してユビキチンに共有結合されている。ユビキチン結合蛋白質はその後、蛋白質分解コアとしてMCPを含むATP依存性プロテアーゼ複合体、26Sプロテアソームにより小ペプチドに分解される。Goldberg, A.L. & Rock, K.L.、Nature、1992、357、375-379を参照のこと。MCPおよびATPを必要とするが、ユビキチンを必要としない蛋白質分解の第2経路についても記述されている。Driscoll, J. & Goldberg, A.L.、上記を参照のこと。この過程では、MCPはATP依存様式で蛋白質を加水分解する。Goldberg, A.L. & Rock, K.L.、上記、を参照のこと。この過程は、骨格筋で観察されている。Driscoll & Goldberg、上記を参照のこと。しかしながら、筋肉では、MCPは別のプロテアーゼ、マルチパイン(multipain)と相乗的に機能し、筋肉蛋白質の分解が促進されることが示唆されている。Goldberg & Rock、上記を参照のこと。MCPは、活性求核部位がN末端スレオニン残基のヒドロキシル基である蛋白質分解機構により機能することが報告されている。このように、MCPはスレオニンプロテアーゼの最初に知られた例である。Seemular et al.、Science、1995、268、579-582;Goldberg, A.L.、Science、1995、268、522-523を参照のこと。細胞蛋白質の合成および分解経路の相対活性により、蛋白質が蓄積されるのか、失われるのかが決定される。蛋白質質量の異常な損失は、筋ジストロフィー、非活動性萎縮、神経筋疾患、心臓悪液質、および癌悪液質などのいくつかの疾患状態と関連する。したがって、そのようなMCP阻害剤は、これらの疾患の治療のための治療薬として有益であることが予測される。
【0008】
サイクリンは真核生物の細胞周期制御に関与する蛋白質である。サイクリンはおそらく、蛋白質キナーゼの活性を調節することにより機能し、1つの段階から次の段階に移行するのに細胞周期の特定の段階でのプログラムされた分解が必要である。修飾ユビキチンを使用した実験(Glotzer et al.、Nature、1991、349、132-38;Hershko et al.、J. Biol. Chem.、1991、266、376)では、ユビキチン化/蛋白質分解経路がサイクリン分解に関与することが確立されている。したがって、この経路を阻害する化合物は細胞周期を阻止し、癌、乾癬、再狭窄および他の細胞増殖性疾患の治療において有益である。
【0009】
ある細胞レベルでは、上昇した酸化的ストレスにより、細胞傷害およびミトコンドリア障害、例えば、Schapira and Griggs(eds) 1999「Muscle Diseases」Butterworth-Heinemannに要約されているキーンズ・セイアー症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)、ミオクローヌス癲癇・赤色ぼろ線維(MERRF)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)、および進行性外眼筋麻痺(PEO)に至る。
【0010】
フリーラジカルにより誘発される細胞傷害はまた、一定の神経変性疾患に関与する。そのような疾患の例としては、変性運動失調、例えば、フリードライヒ失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病が挙げられる(Beal M.F.、Howell N.、Bodis-Wollner I.(eds)、1997「Mitochondria and free radicals in neurodegenerative diseases」Wiley-Liss)。
【0011】
カルパイン阻害剤は文献に記述されている。しかしながら、これらは、主に、不可逆阻害剤またはペプチド阻害剤のいずれかである。概して、不可逆阻害剤はアルキル化物質であり、生物中で非選択的に反応する、または不安定であるという欠点を有する。このように、これらの阻害剤はしばしば望ましくない副作用、例えば毒性を有し、そのため、使用が制限され、または不安定である。不可逆阻害剤の例は、E-64エポキシド(E.B.McGowan et.al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、1989、158、432-435)、α-ハロケトン(H.Angliker et al.、J. Med. Chem.、1992、35、216-220)およびジスルフィド(R.Matsueda et al.、Chem. Lett.、1990、191-194)である。
【0012】
システインプロテアーゼ、例えばカルパインの多くの周知の可逆阻害剤はペプチドアルデヒド、特にジペプチドまたはトリペプチドアルデヒド、例えばZ-Val-Phe-H(MDL 28170)(S.Mehdi、Trends in Biol. Sci.、1991、16、150-153)であり、代謝不活性化を非常に受けやすい。
【0013】
本発明の目的は、周知のカルパイン阻害剤に比べ、筋肉細胞で選択的に作用する新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤を提供することである。
【0014】
さらに、本発明のカルパイン阻害剤は、プロテアソーム(MCP)阻害活性および/または酸化的ストレスによる傷害からの筋肉細胞の保護などの他の有益な特性の独特な組み合わせを有することができる。そのような特性は、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症を治療するのに好都合である。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明は化学式(I)の新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤ならびにそれらの互変異性体および異性体、さらに、適切な場合には、生理的に許容される塩に関する:

【0016】
これらのα-ケトカルボニル化合物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患の治療に有効である。非活動性萎縮および一般的な筋肉の衰弱もまた治療することができる。心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、白内障および目の他の疾患もまた同様に治療することができる。一般に、カルパインレベルの上昇が関与する全ての状態を治療することができる。
【0017】
本発明の化合物はまた、他のチオールプロテアーゼ、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンLおよびパパインを阻害することができる。プロテアソームとしても周知の多触媒プロテアーゼ(MCP)もまた阻害され、これはまた筋ジストロフィーの治療に有益である。プロテアソーム阻害剤を使用して、癌、乾癬、再狭窄および他の細胞増殖性疾患を治療することもできる。
【0018】
驚くべきことに、本発明の化合物はフリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞傷害の阻害剤でもあり、上昇した酸化的ストレスのレベルが関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる。
【0019】
本発明はまた、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は化学式(I)の新規α-ケトカルボニルカルパイン阻害剤ならびにそれらの互変異性体および異性体、さらに、適切な場合には、生理的に許容される塩に関する:

式中、変数は下記の意味を有する:
R1
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリール、
-SO2-アルキル、
-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アルキル、
ヘテロシクリルまたは
-アルキレン-ヘテロシクリルを表し;
XはOまたはNHを表し;
R2
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリールまたは
-アルキレン-アリールを表し;
R3
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキルまたは
-アルキレン-シクロアルキルを表し;
Lは結合、または
-CO-(CH2)y-CO-(式中、yは1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6である)、
-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6である)、
-CO-シクロアルキレン-CO-、
-NH-シクロアルキレン-CO-、
CO-アリーレン-CO-および
-NH-アリーレン-CO-から選択される少なくとも1つの基を表し;
Tは

(式中、m、nおよびpの各々は0〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6を表す)からなる群より選択され;
R6
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
-アルキレン-アリール、
A-O-CO-、
A-NH-CO-、
A-CO-、
A-SO2-または
A-NH-SO2-を表し;
Aは
直鎖または分枝鎖アルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子により置換された直鎖または分枝鎖アルキル、
Bにより置換された直鎖または分枝鎖アルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子およびBで置換された直鎖または分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子を有するシクロアルキル、
Bで置換されたシクロアルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子およびBで置換されたシクロアルキル、
1つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
2つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Bで置換された1つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Bで置換された2つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
1-アダマンチル、
9-フルオレニル、
フェニル、
Dで置換されたフェニル、
Dで二置換されたフェニル、
Dで三置換されたフェニル、
ナフチル、
Dで置換されたナフチル、
Dで二置換されたナフチル、
Dで三置換されたナフチル、
1つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
2つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Dで置換された1つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Dで置換された2つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
1つの結合したフェノキシ基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
フェノキシ基上、Dで置換された1つの結合したフェノキシ基を有する直鎖または分枝鎖アルキルおよび
結合した9-フルオレニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキルからなる群より選択され;
Bは
ハロゲン、
COOH、
OH、
CN、
NO2
NH2
アルコキシ、
アルキルアミン、
ジアルキルアミン、
アルキル-O-CO-、
アルキル-O-CO-NH-および
アルキル-S-からなる群より選択され;
Dは
ハロゲン、
アルキル、
ペルフルオロアルキル、
アルコキシ、
NO2
CN、
OH、
COOH、
NH2
アルキルアミノ、
ジアルキルアミノ、
アシル、
アルキル-O-CO-および
アルキル-S-からなる群より選択され;
YおよびZは独立して
S、
SOまたは
CH2を表す。
【0021】
好ましくは、本発明は、化学式(I)の化合物に関し、式中、
R1
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリール、
-SO2-アルキル、
-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アルキル、
ヘテロシクリルまたは
-アルキレン-ヘテロシクリルを表し;
XはOまたはNHを表し;
R2
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリールまたは
-アルキレン-アリールを表し;
R3
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキルまたは
-アルキレン-シクロアルキルを表し;
Lは結合、または
-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6である)、
-NH-シクロアルキレン-CO-および
-NH-アリーレン-CO-から選択される少なくとも1つの基を表し;
Tは

(式中、m、nおよびpの各々は0〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6を表す)からなる群より選択され;
YおよびZは独立して
S、
SOまたは
CH2を表す。
【0022】
本発明では、化学式(I)に結合される置換基を以下の通り定義する:
【0023】
アルキル基は以下で定義するように、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基またはシクロアルキル基である。
【0024】
直鎖アルキル基は、-(CH2)xCH3基を意味し、式中、xは0または1もしくはそれ以上の整数である。好ましくはxは0または1〜9の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8または9であり、すなわち、直鎖アルキル基は1〜10個の炭素原子を有する。より好ましくは、xは0または1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6である。直鎖アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルおよびn-デシルである。
【0025】
分枝鎖アルキル基は少なくとも1個の第2級または第3級炭素原子を含む。例えば、分枝鎖アルキル基は、1、2または3個の第2級もしくは第3級炭素原子を含む。本発明では、分枝鎖アルキル基は好ましくは少なくとも3個の炭素原子、好ましくは3〜10個、すなわち、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有し、さらに好ましくは3〜6個の炭素原子、すなわち、3、4、5または6個の炭素原子を有する。それらの例は、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル(ネオペンチル)、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、3-エチルブチル、1-n-プロピルプロピル、2-n-プロピルプロピル、1-イソ-プロピルプロピル、2-イソ-プロピルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチルおよび4-メチルペンチルである。
【0026】
本発明では、シクロアルキル基は好ましくは3〜8個の炭素原子、すなわち3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。それらの例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。より好ましくは、シクロアルキル基は3〜6個の炭素原子を有し、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルである。
【0027】
本発明では、直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはシクロアルキル基は、F、Cl、BrおよびIからなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン原子により置換されてもよく、とりわけFが好ましい。好ましくは、直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはシクロアルキル基の1〜5の水素原子はハロゲン原子により置換されている。好ましいハロアルキル基としては、-CF3、-CH2CF3および-CF2CF3が挙げられる。
【0028】
本発明では、アルコキシ基は-O-アルキル基であり、ここでアルキルは上記で定義した通りである。
【0029】
本発明では、アルキルアミノ基は-NH-アルキル基であり、ここでアルキルは上記で定義した通りである。
【0030】
本発明では、ジアルキルアミノ基は、-N(アルキル)2基であり、ここでアルキルは上記で定義した通りであり、2つのアルキル基は同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
本発明では、アシル基は-CO-アルキル基であり、ここでアルキルは上記で定義した通りである。
【0032】
アルキル-O-CO-基、アルキル-O-CO-NH-基およびアルキル-S-基では、アルキルは上記で定義した通りである。
【0033】
アルキレン部分は直鎖または分枝鎖基としてもよい。アルキレン部分は好ましくは1〜6個、すなわち、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する。それらの例としては、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、n-ペンチレン、n-ヘキシレン、メチルメチレン、エチルメチレン、1-メチルエチレン、2-メチルエチレン、1-エチルエチレン、プロピルメチレン、2-エチルエチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、3-メチルプロピレン、1-エチルプロピレン、2-エチルプロピレン、3-エチルプロピレン、1,1-ジメチルプロピレン、1,2-ジメチルプロピレン、2,2-ジメチルプロピレン、1,1-ジメチルブチレン、1,2-ジメチルブチレン、1,3-ジメチルブチレン、2,2-ジメチルブチレン、2,3-ジメチルブチレン、3,3-ジメチルブチレン、1-エチルブチレン、2-エチルブチレン、3-エチルブチレン、4-エチルブチレン、1-n-プロピルプロピレン、2-n-プロピルプロピレン、1-イソ-プロピルプロピレン、2-イソ-プロピルプロピレン、1-メチルペンチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、4-メチルペンチレンおよび5-メチルペンチレンが挙げられる。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を有し、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、1-メチルエチレンおよび2-メチルエチレンである。
【0034】
本発明では、シクロアルキレン基は好ましくは3〜8個の炭素原子、すなわち、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有する。それらの例はシクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロヘプチレンおよびシクロオクチレンである。より好ましくは、シクロアルキレン基は3〜6個の炭素原子を有し、例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレンおよびシクロヘキシレンである。シクロアルキレン基では、2つの結合位は同じであっても隣接する炭素原子であってもよく、または2つの結合位間には1、2または3個の炭素原子が存在する。好ましいシクロアルキレン基では、2つの結合位は同じ炭素原子であるか、または1つまたは2つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。
【0035】
アリール基は炭素環または複素環芳香族単環もしくは多環式部分である。炭素環芳香族単環または多環式部分は好ましくは、少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは6〜20個の炭素原子を有する。それらの例はフェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インデニルおよびフェナントリルであり、フェニルおよびナフチルが好ましい。フェニルがとりわけ好ましい。複素環芳香族単環部分は好ましくは、炭素原子および少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、1、2または3個のヘテロ原子、例えば、N、Oおよび/またはSを含む5員環または6員環である。それらの例はチエニル、ピリジル、フラニル、ピロリル、チオフェニル、チアゾリルおよびオキサゾリルであり、チエニルおよびピリジルが好ましい。複素環芳香族多環部分は好ましくは6〜20個の炭素原子を有し、少なくとも1つの複素環が結合している芳香族部分である。それらの例はベンゾチエニル、ナフトチエニル、ベンゾフラニル、クロメニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、キナキサリニル、シノリニルおよびキナゾリニルである。
【0036】
アリール基は、1、2、3、4または5個の置換基を有していてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。置換基の例は上記で定義したような直鎖または分枝鎖アルキル基、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基(アルキル部分は上記で定義した通りである)、フルオロアルキル基(すなわち、アルキル基は上記で定義した通りであり、1〜(2x+3)個の水素原子がフルオロ原子で置換される)、特にトリフルオロメチル、-COOH基、-COO-アルキル基および-CONH-アルキル基(アルキル基は上記で定義した通りである)、ニトロ基、ならびにシアノ基である。
【0037】
アリーレン基は、分子の2つの基に結合された炭素環または複素環芳香族単環式もしくは多環式部分である。単環式アリーレン基では、2つの結合位が隣接する炭素原子であってもよく、または1つもしくは2つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。好ましい単環式アリーレン基では、1つまたは2つの炭素原子が2つの結合位間に存在する。多環式アリーレン基では、2つの結合位が同じ環上または異なる環上に存在してもよい。さらに、2つの結合位は隣接炭素原子であってもよく、または1つもしくは複数の炭素原子が2つの結合位間に存在する。好ましい多環式アリーレン基では、1つまたは複数の炭素原子が2つの結合位間に存在する。炭素環芳香族単環または多環部分は好ましくは少なくとも6個の炭素原子、より好ましくは6〜20個の炭素原子を有する。それらの例はフェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、テトラヒドロナフチレン、フルオレニレン、インデニレンおよびフェナントリレンであり、フェニレンおよびナフチレンが好ましい。フェニレンがとりわけ好ましい。複素環芳香族単環部分は好ましくは、少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、N、Oおよび/またはSなどの1、2または3個のヘテロ原子を含む5員環または6員環である。それらの例は、チエニレン、ピリジレン、フラニレン、ピロリレン、チオフェニレン、チアゾリレンおよびオキサゾリレンであり、チエニレンおよびピリジレンが好ましい。複素環芳香族多環部分は好ましくは、少なくとも1つの複素環が結合した、6〜20個の炭素原子を有する芳香族部分である。それらの例はベンゾチエニレン、ナフトチエニレン、ベンゾフラニレン、クロメニレン、インドリレン、イソインドリレン、インダゾリレン、キノリレン、イソキノリレン、フタラジニレン、キナキサリニレン、シノリニレンおよびキナゾリニレンである。
【0038】
アリーレン基は1、2、3、4または5個の置換基を有していてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。置換基の例は上記で定義したような直鎖または分枝鎖アルキル基、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン原子、アルキルオキシ基(アルキル部分は上記で定義した通りである)、フルオロアルキル基(すなわち、アルキル基は上記で定義した通りであり、1〜(2x+3)個の水素原子がフルオロ原子で置換される)、特にトリフルオロメチルである。
【0039】
ヘテロシクリル基は、炭素原子および少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、N、Oおよび/またはSなどの1、2または3個のヘテロ原子を含む飽和または不飽和非芳香族環である。それらの例はモルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニルおよびイミダゾリニルである。
【0040】
化学式(I)では、R1は水素としてもよい。
【0041】
化学式(I)では、R1は上記で定義したような直鎖アルキル基としてもよい。より好ましい直鎖アルキル基では、xは0または1〜3の整数であり、すなわち、R1の直鎖アルキル基は好ましくは、メチル、エチル、n-プロピルおよびn-ブチルから選択される。とりわけ好ましくは、直鎖アルキル基はエチルである。
【0042】
化学式(I)では、R1は上記で定義したような分枝鎖アルキル基としてもよい。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3または4個の炭素原子を有し、それらの例はイソ-プロピル、sec-ブチルおよびtert-ブチルである。
【0043】
化学式(I)では、R1は上記で定義したようなシクロアルキル基としてもよい。
【0044】
化学式(I)では、R1は-アルキレン-シクロアルキル基としてもよい。ここで、アルキレン部分およびシクロアルキル基は上記で定義した通りである。
【0045】
化学式(I)では、R1は上記で定義したようなアリール基としてもよい。より好ましくは、アリール基は単環式または二環式アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0046】
化学式(I)では、R1は-アルキレン-アリール基としてもよい。ここで、アルキレン部分およびアリール基は上記で定義した通りである。より好ましくはアルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。アルキレン部分に結合されるより好ましいアリール基は単環式または二環式アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0047】
化学式(I)では、R1はSO2-アルキル基としてもよく、ここでアルキルは上記で定義した通りである。
【0048】
化学式(I)では、R1はSO2-アリール基としてもよく、ここでアリールは上記で定義した通りである。
【0049】
化学式(I)では、R1は-アルキレン-SO2-アリール基としてもよい。ここで、アルキレンおよびアリールは上記で定義した通りである。より好ましくはアルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。SO2-部分に結合されるより好ましいアリール基は単環式または二環式アリールである。とりわけ好ましくは、アリール基はフェニルまたはピリジルである。
【0050】
化学式(I)では、R1は-アルキレン-SO2-アルキル基としてもよく、ここで、アルキレンおよびアルキルは上記で定義した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。
【0051】
化学式(I)では、R1は上記で定義したようなヘテロシクリル基としてもよい。
【0052】
化学式(I)では、R1は-アルキレン-ヘテロシクリル基としてもよく、ここで、アルキレン部分およびヘテロシクリル基は上記で定義した通りである。より好ましくは、アルキレン部分は1〜4個の炭素原子を含む。アルキレン部分に結合されるより好ましいヘテロシクリル基は単環式ヘテロシクリルである。とりわけ好ましくは、ヘテロシクリル基はモルホリニルである。
【0053】
好ましくは、R1は水素、直鎖アルキル、-アルキレン-アリール、および-アルキレン-ヘテロシクリル、および-アルキレン-SO2-アリールからなる群より選択される。より好ましくは、R1は水素または直鎖アルキルである。最も好ましくはR1はエチルである。
【0054】
または、R1は直鎖または分枝鎖アルキル、シクロアルキル、-アルキレン-シクロアルキル、-アルキレン-アリール、-アルキレン-ヘテロシクリル、および-アルキレン-SO2-アリールからなる群より選択される。
【0055】
化学式(I)では、R2は上記で定義したような直鎖アルキル基としてもよい。
【0056】
化学式(I)では、R2は上記で定義したような分枝鎖アルキル基としてもよい。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3または4個の炭素原子を有する。それらの例はイソプロピル、sec-ブチルおよび1-メチル-プロピルである。とりわけ、sec-ブチルが好ましい。
【0057】
化学式(I)では、R2は上記で定義したようなアリール基としてもよい。より好ましいアリール基は、1または2個の置換基を有する置換されていてもよいフェニル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけ、メチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。
【0058】
化学式(I)では、R2は-アルキレン-アリール基としてもよい。ここで、アルキレン部分およびアリール基は上記で定義した通りである。より好ましいアルキレ部分はメチレン基である。アルキレン部分に結合されるより好ましいアリール基は、1または2個の置換基を有する置換されていてもよいフェニル基である。好ましい置換基は、ハロゲン原子、とりわけFおよび/またはClおよび/またはBr、アルキル基、とりわけ、メチル、アルキルオキシ基、とりわけメトキシまたはエトキシ、フルオロアルキル基、例えばトリフルオロメチル、ならびにニトロおよびシアノ基からなる群より選択される。とりわけ好ましい置換基はF、Cl、Br、メチル、およびメトキシである。
【0059】
好ましくは、R2は置換または非置換ベンジル基である。より好ましくは、R2はハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基およびアルキルオキシ基からなる群より選択される1または2個の置換基を有する置換ベンジル基である。より好ましくは、R2はF、Cl、Br、メチルおよびメトキシからなる群より選択される1または2個の置換基を有する置換ベンジル基である。
【0060】
化学式(I)では、R3は上記で定義したような直鎖アルキル基としてもよい。
【0061】
化学式(I)では、R3は上記で定義したような分枝鎖アルキル基としてもよい。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3または4個の炭素原子を有し、それらの例はイソプロピル、sec-ブチルおよび1-メチル-プロピルである。イソプロピルおよびsec-ブチルがとりわけ好ましい。
【0062】
化学式(I)では、R3は上記で定義したようなシクロアルキル基としてもよい。好ましいシクロアルキル基はシクロプロピルである。
【0063】
化学式(I)では、R3は-アルキレン-シクロアルキル基としてもよい。ここで、アルキレン部分およびシクロアルキル基は上記で定義した通りである。好ましいアルキレン部分はメチレン基である。好ましいシクロアルキル基はシクロプロピルである。
【0064】
好ましくは、R3は上記で定義したような分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基、または-アルキレン-シクロアルキル基である。より好ましくは、R3は上記で定義したような分枝鎖アルキル基である。最も好ましくは、R3はイソプロピルまたはsec-ブチルである。
【0065】
化学式(I)では、Lは-NH-(CH2)z-CO-としてもよく、式中、zは1〜6の整数である。より好ましくは、zは1、2、3または4である。
【0066】
化学式(I)では、Lは上記で定義したような-NH-シクロアルキレン-CO-としてもよい。
【0067】
化学式(I)では、Lは上記で定義したような-NH-アリーレン-CO-としてもよい。より好ましくは、アリーレン部分はフェニルおよびピリジルから選択される。とりわけフェニルが好ましい。
【0068】
化学式(I)では、Lは、-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数、すなわち、1、2、3、4、5または6である)、-NH-シクロアルキレン-CO-、-NH-アリーレン-CO-から選択される少なくとも2つの基、例えば2、3または4個の基の組み合わせとしてもよい。より好ましくは、Lは-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数である)から選択される2つの基の組み合わせである。式中、zは好ましくは、2、3、4または5である。
【0069】
好ましくは、Lは結合、または-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数である)、もしくは-NH-シクロアルキレン-CO-、もしくは-NH-アリーレン-CO-、もしくは上記で定義したようなこれらの基のうちの2つの組み合わせから選択される基である。より好ましくは、Lは結合または-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1である)である。最も好ましくは、Lは結合である。
【0070】
化学式(I)では、Tは下記式としてもよい:

式中、m、n、YおよびZは上記で定義した通りである。より好ましくは、mは1〜2の整数であり、nは1〜4の整数であり、YおよびZはそれぞれ独立してSまたはSOを表す。とりわけ好ましくは、mは1であり、nは3であり、かつYおよびZはどちらもSまたはYであるか、またはYがSでZがSOであるか、またはYがSOでZがSである。
【0071】
化学式(I)では、Tは下記式としてもよい:

式中、pおよびYは上記で定義した通りである。より好ましくは、nは1〜4の整数であり、YはSまたはSOを表す。とりわけ好ましくは、nは3であり、YはSを表す。
【0072】
基R4を有する基Tの各々において、R4は上記で定義した通りである。好ましくは、R4はA-O-CO-、A-NH-CO-、A-CO-、およびA-NH-SO2-からなる群より選択される。
【0073】
本発明では、Aは直鎖アルキル基としてもよく、好ましくは、上記で定義したように1〜10個の炭素原子を有する。
【0074】
本発明では、Aは分枝鎖アルキル基としてもよく、好ましくは、上記で定義したように3〜10個の炭素原子を有する。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3〜6個の炭素原子を有する。とりわけ好ましくは、分枝鎖アルキル基はtert-ブチルである。
【0075】
本発明では、Aは直鎖アルキル基としてもよく、好ましくは、上記で定義したように1〜10個の炭素原子を有し、F、Cl、BrおよびI(とりわけ、Fが好ましい)から選択される少なくとも1つのハロゲン原子で置換される。特に好ましいハロアルキル基としては、-CF3、-CH2CF3および-CF2CF3が挙げられる。
【0076】
本発明では、Aは分枝鎖アルキル基としてもよく、好ましくは、上記で定義したように3〜10個の炭素原子を有し、F、Cl、BrおよびI(とりわけ、Fが好ましい)から選択される少なくとも1つのハロゲン原子で置換される。特に好ましくは、ペルフルオロアルキル基である。
【0077】
本発明では、AはBで置換された、上記で定義したような直鎖または分枝鎖アルキル基としてもよい。さらにAは、上記で定義したように少なくとも1つのハロゲンン原子で置換され、さらに上記で定義したようにBで置換された、直鎖または分枝鎖アルキル基としてもよい。
【0078】
Bが-O-アルキル、-NH-アルキル、-N(アルキル)2、アルキル-O-CO-NH-およびアルキル-S-からなる群より選択される場合、アルキルは好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基である。-N(アルキル)2基では、アルキル基は独立して、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
【0079】
本発明では、Aは、上記で定義したようにDで置換された、上記で定義したような基としてもよい。Dがアルキル、ペルフルオロアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシル、アルキル-O-CO-およびアルキル-S-からなる群より選択される場合、アルキルは上記で定義される通りである。
【0080】
好ましくは、R4はA-O-CO-、A-CO-、A-SO2-またはA-NH-CO-であり、式中、Aは、上記で定義したように、アルキル、-アルキレン-シクロアルキル、アリールまたは-アルキレン-アリール、-アルキレン-ヘテロシクリルである。とりわけ、R4はA-O-CO-、A-NH-CO-、A-CO-およびA-SO2-からなる群より選択され、式中、Aは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基;3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基;3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基;アルキレン部分が1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、シクロアルキル基が3〜8個の炭素原子を有する-アルキレン-シクロアルキル基;アリール基;アルキレン部分が1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、アリール基が置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニル、およびピリジルである-アルキレン-アリール基;またはアルキレン部分が1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である-アルキレン-ヘテロシクリル基である。
【0081】
基R5を有する基Tの各々において、R5は上記の通りである。好ましくは、R5はXH;X-;上記で定義したような-X-(CH2)xCH3(式中、xは好ましくは1〜6の整数である);上記で定義したような3〜6個の炭素原子を有する-X-分枝鎖アルキル;上記で定義したような3〜8個の炭素原子を有する-X-シクロアルキル;-X-アルキレン-シクロアルキル(アルキレン部分は、上記で定義したように好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、シクロアルキルは上記で定義したように3〜8個の炭素原子を有する);上記で定義したように、置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニルおよびピリジルから選択される-X-アリール;-X-アルキレン-アリール(式中、アルキレン部分は上記で定義したように好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、アリール基は上記で定義したように置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニル、およびピリジルから選択される);-X-SO2-アルキル、-X-SO2-アリール、-X-アルキレン-SO2-アリール、-X-アルキレン-SO2-アルキルまたは-X-アルキレン-ヘテロシクリル(式中、Xは上記で定義した通りである)からなる群より選択される。
【0082】
より好ましくは、R5は-X-アルキル、-X-分枝鎖アルキル、とりわけ-o-tert-ブチル、-X-シクロアルキル、-X-アルキレン-シクロアルキル、-X-アリール、-X-アルキレン-アリールまたは-X-アルキレン-ヘテロシクリルである。とりわけ、R5は-X-(CH2)xCH3(式中、xは1〜6の整数である);3〜6個の炭素原子を有する-X-分枝鎖アルキル、3〜8個の炭素原子を有する-X-シクロアルキル、-X-アルキレン-シクロアルキル(ここで、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、シクロアルキル基は3〜8個の炭素原子を有する);置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニル、およびピリジルから選択される-X-アリール、-X-アルキレン-アリール(ここで、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、アリール基は置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニルおよびピリジルから選択される)、-X-アルキレン-ヘテロシクリル(式中、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子の直鎖アルキレン基である)、-X-シクロアルキル、-X-アルキレン-シクロアルキル、-X-アリール、-X-アルキレン-アリールまたは-X-アルキレン-ヘテロシクリルである。
【0083】
基R6を有する各々の基Tでは、R6は上記で定義した通りである。好ましくは、R6は水素、上記で定義したような1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、とりわけメチル;上記で定義したように3〜8個の炭素原子、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、上記で定義したように3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基;-アルキレン-シクロアルキル(ここで、アルキレン部分は、上記で定義したように好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、シクロアルキル基は上記で定義したように3〜8個の炭素原子を有する);-アルキレン-アリール(ここで、アルキレン部分は、上記で定義したように好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、アリール基は上記で定義されるように置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニル、およびピリジルから選択される);A-O-CO-、A-NH-CO-、A-CO-、およびA-NH-SO2-(式中、Aは、上記で定義したように好ましくは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、または上記で定義したように好ましくは3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基または上記で定義したようなシクロアルキル、-アルキレン-シクロアルキル、アリール、または-アルキレン-アリール基、または-アルキレン-ヘテロシクリルとしてもよい)である。より好ましくは、分枝鎖アルキル基は3〜6個の炭素原子を有する。とりわけ好ましくは、分枝鎖アルキル基はtert-ブチルである。
【0084】
基R7を有する各々の基Tでは、R7は上記で定義した通りである。好ましくは、R7は-SO2NHR6である。
【0085】
好ましくは、Tは以下からなる群より選択される:

式中、mは1〜2の整数であり、nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数であり、YおよびZは独立してSまたはSOを表す。
【0086】
より好ましくは、Tは以下である:

式中、mは1〜2の整数であり、nは1〜4の整数であり、かつYおよびZはどちらもSであるか、またはYがSでZがSOであるか、またはYがSOでZがSである。
【0087】
最も好ましくは、Tは以下である:

式中、mは1であり、nは3であり、かつYおよびZはどちらもSであるか、またはYがSでZがSOであるか、またはYがSOでZがSである。
【0088】
構造式(I)の化合物は、効果的なカルパイン阻害剤であり、チオールプロテアーゼ、例えばカテプシンB、カテプシンH、カテプシンLまたはパパインも阻害することができる。プロテアソームとしても周知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた阻害される。化学式(I)の化合物は特にカルパイン阻害剤として効果的であり、そのため、カルパインの阻害に反応性の疾患、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患、同様に、非活動性萎縮および一般的な筋肉の衰弱ならびにカルパインが関連する他の疾患、例えば、心臓、腎臓または中枢神経系の虚血、白内障および目の他の疾患の治療および/または予防に有益である。
【0089】
光学異性体-ジアステレオマー-幾何異性体-互変異性体
構造式(I)の化合物は1つまたは複数の不斉中心を有し、ラセミ体およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして存在することができる。本発明は構造式(I)の化合物のそのような異性体を全て含むものとする。
【0090】
本明細書で記述した化合物のいくつかはケト-エノール互変異性体などの互変異性体として存在することがある。個々の互変異性体およびそれらの混合物は、構造式(I)の化合物内に含まれる。
【0091】
構造式(I)の化合物は、適した溶媒、例えばメタノールもしくは酢酸エチルまたはこれらの混合物からの分別結晶により、または光学的に活性な固定相を使用したキラルクロマトグラフィを介して個々のジアステレオ異性体に分離してもよい。絶対立体化学は、必要であれば、周知の絶対配置の不斉中心を含む試薬を用いて誘導体化される結晶生成物または結晶中間体のX線結晶法により決定してもよい。
【0092】
また、一般式(I)の化合物の任意の立体異性体は、光学的に純粋な開始材料または絶対配置が周知の試薬を用いた立体特異的合成により得てもよい。
【0093】

「薬学的に許容される塩」という用語は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製される塩を示す。無機塩基から誘導される塩としては、例えば、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(manganic)、亜マンガン(manganous)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩が特に好ましい。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第一、第二および第三アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトロメタミンの塩が挙げられる。
【0094】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩は薬学的に許容される非毒性酸、例えば、無機酸および有機酸から調製してもよい。そのような酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パルノイン酸(parnoic acid)、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、プトルエンスルホン酸(ptoluenesulhonic acid)およびトリフルオロ酢酸が挙げられる。クエン酸、フマル酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸および酒石酸が特に好ましい。
【0095】
本明細書で使用されるように、化学式(I)の化合物への言及は、薬学的に許容される塩も含むことを意味することは理解されるであろう。
【0096】
有用性
化学式(I)の化合物はカルパイン阻害剤であり、そのようなものとして、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを含む神経変性疾患および神経筋疾患などの、カルパインの阻害に応答性の疾患、障害または状態の治療、制御または予防のための薬剤の調製に有益である。筋ジストロフィーなどの神経筋疾患としては、Neuromuscular Disorders、2003、13、97-108に定義されているように、ジストロフィン異常症(dystrophinopathy)およびサルコグリカン異常症(sarcoglycanopathy)、肢帯筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパシー、末梢性および他のミオパシー、筋緊張症候群、イオンチャネル疾患、悪性高熱症、代謝性ミオパシー、遺伝性心筋症、先天性筋無力症候群、脊髄性筋萎縮症、遺伝性運動失調症、遺伝性運動感覚神経障害、遺伝性対麻痺、および他の神経筋障害が挙げられる。非活動性萎縮および一般的な筋肉の衰弱もまた治療することができる。一般に、心臓(例えば、心筋梗塞)、腎臓、または中枢神経(例えば、脳卒中)の虚血、炎症、筋ジストロフィー、白内障および目の他の疾患、中枢神経系に対する損傷(例えば、外傷)およびアルツハイマー病を含む、カルパインレベルの上昇が関与する全ての状態を治療することができる
【0097】
化学式(I)の化合物はまた、他のチオールプロテアーゼ、例えば、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンLおよびパパインを阻害することができる。プロテアソームとしても周知の多触媒性プロテアーゼ(MCP)もまた、本発明の化合物により阻害され、そのようなものとして、本発明の化合物は、筋ジストロフィー、非活動性萎縮、神経筋疾患、心臓悪液質、および癌悪液質などのMCPの阻害に応答性の疾患、障害または状態の治療、制御または予防のための薬剤の調製に有益である。癌、乾癬、再狭窄、および他の細胞増殖性疾患もまた治療することができる。
【0098】
驚くべきことに、化学式(I)の化合物はまた、フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞傷害の阻害剤でもあり、酸化的ストレスのレベルの上昇が関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる。
【0099】
とりわけ、Tが以下から選択される化学式(I)の化合物はフリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞傷害の阻害剤として作用し、酸化的ストレスのレベルの上昇が関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するために使用することができる:

式中、m、n、YおよびZは上記で定義した通りである。これらの化合物の中では、mが1であり、nが3であり、かつYおよびZはどちらもSであるか、またはYがSでZがSOであるか、またはYがSOでZがSである化合物がとりわけ好ましい。
【0100】
ミトコンドリア障害としては、Schapira and Griggs(eds) 1999 Muscle Diseases、Butterworth-Heinemannに要約されているキーンズ・セイアー症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)、ミオクローヌス癲癇・赤色ぼろ線維(MERRF)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)、および進行性外眼筋麻痺(PEO)が挙げられる。
【0101】
フリーラジカルが関与する神経変性疾患としては、変性運動失調、例えば、フリードライヒ失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病(Beal M.F.、Howell N.、Bodis-Wollner I.(eds)、1997「Mitochondria and free radicals in neurodegenerative diseases」Wiley-Liss)が挙げられる。
【0102】
投与および用量範囲
哺乳類、とりわけヒトに、有効用量の本発明の化合物を提供するために、任意の適した投与経路を使用してもよい。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼内、肺内または鼻内投与を使用してもよい。投与形態としては、例えば、錠剤、トローチ、分散物、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏およびエアロゾルが挙げられる。好ましくは、化学式(I)の化合物は経口、非経口または局所投与される。
【0103】
使用した活性成分の有効用量は使用した特定の化合物、投与様式、治療すべき状態および治療すべき状態の重篤度に依存して変動する場合がある。そのような用量は当業者であれば容易に確認することができる。
【0104】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーおよび他の筋ジストロフィーを治療する場合、一般に、本発明の化合物を、体重1kgあたり約0.001mg〜約100mgの1日投与量で、好ましくは1日1回、または1日2〜6回に分けて、または持続放出形態で、投与すると満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日あたりの総量は一般に、約0.07mg〜約3500mgである。この用量は最適な治療効果を得るために調整してもよい。
【0105】
心臓(例えば、心筋梗塞)、腎臓、または中枢神経(例えば、脳卒中)の虚血を治療する場合、一般に、本発明の化合物を、体重1kgあたり約0.001mg〜約100mgの1日投与量で、好ましくは1日1回、または1日2〜6回に分けて、または持続放出形態で、投与すると満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日あたりの総用量は一般に、約0.07mg〜約3500mgである。この用量は最適な治療効果を得るために調整してもよい。
【0106】
癌、乾癬、再狭窄、および他の細胞増殖性疾患を治療する場合、一般に、本発明の化合物を、体重1kgあたり約0.001mg〜約100mgの1日投与量で、好ましくは1日1回、または1日2〜6回に分けて、または持続放出形態で、投与すると満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日あたりの総用量は一般に、約0.07mg〜約3500mgである。この用量は最適な治療効果を得るために調整してもよい。
【0107】
酸化的ストレスが一因であるミトコンドリア障害または神経変性疾患を治療する場合、一般に、本発明の化合物を、体重1kgあたり約0.001mg〜約100mgの1日投与量で、好ましくは1日1回、または1日2〜6回に分けて、または持続放出形態で、投与すると満足のいく結果が得られる。70kgの成人のヒトの場合、1日あたりの総用量は一般に、約0.07mg〜約3500mgである。この用量は最適な治療効果を得るために調整してもよい。
【0108】
製剤
化学式(I)の化合物は好ましくは、投与前にある投与形態に製剤化される。したがって、本発明はまた、化学式(I)の化合物および適した薬学的担体を含む組成物を含む。
【0109】
本発明の薬学的組成物は、周知の、容易に入手可能な成分を用いて、周知の手順により調製される。本発明の製剤を製造する場合、活性成分(化学式(I)の化合物)は通常、担体と混合され、または担体により希釈され、または担体内に封入される(担体は、カプセル、サシェ(sachet)、紙または他の容器の形態としてもよい)。担体が希釈剤として機能する場合、ビヒクル、賦形剤または活性成分のための媒質として機能する固体、半固体、または液体材料としてもよい。このように、組成物は錠剤、ピル、粉末、ロゼンジ、サシェ、キャシェ(cachet)、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒質中)、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射剤、および滅菌パッケージ化粉末の形態とすることができる。
【0110】
適した担体、賦形剤および希釈剤のいくつかの例としては、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア・ゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガカント・ゴム、ゼラチン、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、メチルセルロール、メチルおよびプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油が挙げられる。製剤はさらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、保存剤、甘味剤および/または香味剤を含むことができる。本発明の組成物は、患者に投与された後、活性成分の速放性放出、持続性放出または遅延放出が得られるように製剤化されてもよい。
【0111】
本発明の化合物の調製
本発明の化学式(I)の化合物は、以下のスキームおよび実施例の手順に従い、適した材料を用いて調製することができる。下記特定の実施例によりさらに例示する。さらに、本明細書で記述した手順を、当技術分野における通常の技術と共に使用することにより、本発明の追加の化合物を容易に調製することができる。しかしながら、実施例で示した化合物は、本発明として考えられる唯一の属を形成するものと解釈すべきでない。実施例はさらに、本発明の化合物を調製するための詳細を示す。当業者であれば、下記調製手順の条件および過程の周知の変形を用いて、これらの化合物を調製することができることを容易に理解するであろう。即時化合物(instant compound)は一般に、その薬学的に許容される塩、例えば、以上で前述されたものの形態で単離される。単離された塩に対応する遊離アミン塩基は、適した塩基、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウム水溶液による中和により、および遊離させたアミン遊離塩基を有機溶媒中に抽出させ、続いて蒸発させることにより生成させることができる。このようにして単離したアミン遊離塩基はさらに、有機溶媒中に溶解し、その後、適当な酸を添加し、続いて蒸発、析出または結晶化することにより別の薬学的に許容される塩に変換することができる。温度は全て℃である。
【0112】
化学式(I)の本発明の化合物の調製について記述するにあたり、「T部分」、「L部分」および「ジペプチド」という用語を以下で使用する。この部分の概念を以下に示す。

【0113】
本発明の化合物の調製は、好都合なことに、逐次合成経路を介して実施することができる。熟練者であれば、一般に、化学式(I)の化合物の3つの部分はアミド結合を介して結合されることを認識するであろう。そのため、熟練者は、標準ペプチド結合反応条件を介して3つの部分を結合する多くの経路および方法を容易に想定するであろう。
【0114】
「標準ペプチド結合反応条件」という句は、DMFなどの不活性溶媒中、HOBtなどの触媒の存在下、酸活性化剤、例えばEDC、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを用いて、カルボン酸をアミンと結合させることを意味する。所望の反応を促進し望ましくない反応を最小に抑えるためにアミンおよびカルボン酸のための保護基を使用することはよく立証されている。存在しうる保護基を除去するのに必要な条件は、Greene、et al.「Protective Groups in Organic Synthesis」John Wiley & Sons、Inc.、New York、NY 1991において見出すことができる。
【0115】
合成では、Z、BocおよびFmocのような保護基が広く使用され、それらの除去条件は当業者には周知である。例えば、Z基の除去は、エタノールなどのプロトン性溶媒中、活性炭素上のパラジウムなどの貴金属またはその酸化物の存在下、水素による触媒的水素化により達成することができる。触媒的水素化が他の潜在的に反応性の基の存在により禁忌とされる場合、Zの除去はまた、酢酸に溶解した臭化水素の溶液で処理することにより、またはTFAおよびジメチルスルフィドの混合物で処理することにより、達成することができる。Boc保護基の除去は、塩化メチレン、メタノールまたは酢酸エチルなどの溶媒中、強酸、例えばTFAまたはHClまたは塩化水素ガスにより実施される。Fmoc保護基は、DMFなどの適した溶媒中のピペリジンにより除去することができる。
【0116】
所要のジペプチド部分は、R1-イソニトリル、適当に保護されたR2-アミノアルデヒド、および適当に保護されたR3-アミノ酸からPasserini反応(T.D.Owens et al.、Tet. Lett.、2001、42、6271;L.Banfi et al.、Tet. Lett.、2002、43、4067)により、続いて、N-脱保護およびアシル移動(対応するジペプチジルα-ヒドロキシ-アミドに至る)により、都合よく調製することができる。R1、R2およびR3は、化学式(I)に関し上記で定義した通りである。反応はCH2Cl2などの不活性溶媒中、室温で実施する。ジペプチド部分上のα-ケトアミド基は、典型的には、Dess-Martin酸化(S.Chatterjee et al.、J. Med. Chem.、1997、40、3820)を用い、CH2Cl2などの不活性溶媒中、0℃または室温で導入する。この酸化は、当業者に容易に認識されるように、化学式(I)の化合物の完全な構築後ペプチドカップリング反応を使用し、または3つの部分T、Lおよびジペプチドを結合させる順序の任意の好都合な中間段階において、実施することができる。
【0117】
化学式(I)の化合物は、ジアステレオマー混合物として存在する場合、メタノール、酢酸エチルまたはそれらの混合物などの適した溶媒からの分別結晶により鏡像異性体のジアステレオマー対に分離してもよい。このようにして得られた鏡像異性体の対は、分割剤として光学的に活性な酸を使用することにより従来の手段により個々の立体異性体に分離してもよい。また、光学的に純粋な材料または構造が周知の試薬を用いる立体特異的合成により化学式(I)の化合物の任意のエナンチオマーを得てもよい。
【0118】
上記説明ならびに、下記スキーム、調製および実施例では、様々な試薬の記号および略語は下記意味を有する。
Boc:t-ブトキシカルボニル
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EDC:1-(3-ジメチルアミノプロイル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
Et:エチル
EtOAc:酢酸エチル
Fmoc:9-フルオロメチル-カルバメート
HBTU:ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOAc:酢酸
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
h:時間
NMM:N-メチルモルホリン
Me:メチル
Phe:フェニルアラニン
PyBOP:ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TFA:トリフルオロ酢酸
TEA:トリエチルアミン
Z:ベンジルオキシカルボニル
【0119】
反応スキーム1:化学式(I)の化合物のためのカップリング技術

適当なジペプチド部分(例えば、H2N-Val-Phe(4-Cl)-ヒドロキシ-エチルアミド)をHBTU/HOBtの存在下、L部分(例えば、Boc-Gly-OH)に結合させ、その後、脱保護する。結合させたL-ジペプチドヒドロキシ-エチルアミド化合物をその後、適当なT部分に結合させ、続いて、Dess-Martin酸化により対応するα-ケトアミド化合物とする。
【0120】
一般に、ペプチドカップリング反応が完了した後、反応混合物を適当な有機溶媒、例えばEtOAC、CH2Cl2またはEt2Oで希釈することができ、その後、水溶液、例えば、水、HCl、NaHSO4、重炭酸塩、NaH2PO4、リン酸緩衝液(pH7)、塩類溶液またはそれらの任意の組み合わせを用いて洗浄する。反応混合物を濃縮し、その後、適当な有機溶媒と水溶液との間で分配させることができる。反応混合物を濃縮し、水溶液処理(aqueous workup)せずに、クロマトグラフィーにかけることができる。
【0121】
Boc、Z、FmocおよびCF3COなどの保護基は、H2/Pd-C、TFA/DCM、HCl/EtOAc、HCl/ドキサン、MeOH/Et2O中のHCl、NH3/MeOHまたはTBAFの存在下、カチオン捕捉剤、例えばチオアニソール、エタンチオールおよびジメチルスルフィド(DMS)を用いて、またはそれら無しで脱保護することができる。脱保護したアミンを得られた塩として使用することができ、またはDCMに溶解し、重炭酸塩水溶液またはNaOH水溶液で洗浄することにより遊離塩基化させる(freebased)。脱保護したアミンもまた、イオン交換クロマトグラフィーにより遊離塩基化することができる。
【0122】
化学式(I)の化合物の構築に対するより詳細な手順を、本発明の実施例を有するセクションで記述する。
【0123】
反応スキーム2:Passerini反応を使用した「ジペプチド部分」の調製

Pは前述したようなアミノ保護基であり;R1〜R3は化学式(I)について上記で定義した通りである。
【0124】
本発明のジペプチド部分は、一般に、市販の開始材料から周知の化学変換を介して調製してもよい。本発明の化合物のジペプチド部分の調製を上記反応スキームに示す。
【0125】
反応スキーム2に示すように、本発明の化合物の「ジペプチド部分」は、CH2Cl2などの有機溶媒中、適した温度での、Boc-保護アミノアルデヒド1、イソニトリル2および適当に保護されたアミノ酸3の間の3成分反応(Passerini反応)により調製することができる。CH2Cl2などの適した溶媒に溶解したTFAを用いBoc基を脱保護した後、CH2Cl2などの適した溶媒中、Et3NまたはDIEAなどの適した塩基を用いて塩基誘導アシル移動後、ジペプチド部分4が得られる。ジペプチド部分の調製のより詳細な例を以下で記述する。
【0126】
適当に官能性をもたせたL部分は市販されており、または、当業者であれば公表された手順(M. Hill et al.、FEBS Lett.、1979、102、282)に従い容易に調製することができる。
【0127】
適当に官能性をもたせたT部分は市販されており、または、当業者であれば、市販の前駆体から標準の保護基操作により容易に調製することができる。
【0128】
以下は本発明の詳細な実施例を記述したものである。
実施例1のための合成スキーム:

実施例169のための合成スキーム:

【0129】
実施例1:

1.2mlのDMSOおよび1.2mlのCH2Cl2に溶解した11.0mgの中間体1b)の溶液を氷中で冷却した。10.2mgのDess-Martin試薬を添加し、混合物を氷浴中、60分間撹拌した。冷却浴を除去し、撹拌を室温でさらに60分間続けた。CH2Cl2を添加し、混合物を1M Na2S2O3、飽和NaHCO3、およびH2Oで洗浄し、無水Na2SO4を用いて乾燥させ、真空蒸発させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると(CH2Cl2/MeOH 98:2→CH2Cl2/MeOH 95:5)、実施例1がわずかに黄色がかった固体の形態で得られた。さらに、少量の実施例2が無色固体として得られた。
Rf=0.61(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.209-212℃
【0130】
所要の中間体は下記のように合成することができる。
中間体1a):

14mlの無水CH2Cl2に溶解した1.00gのBoc-p-クロロ-フェニルアラニナールの溶液に、0.39mlのエチルイソシアニド、続いて0.76gのBoc-バリンを添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。得られた溶液を蒸発乾燥させ、残渣を14mlのCH2Cl2に再溶解した。5mlのTFAを添加し、反応物を室温で2時間撹拌した。揮発成分を真空で蒸発させ、残渣を真空で乾燥させた。得られた黄色油を14mlのCH2Cl2に溶解し、10mlのEt3Nを添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。その後、反応混合物を真空で蒸発乾燥させ、残渣を1N NaOHとEtOAcとの間で分配させた。有機層を1N NaOH、H2Oおよび塩類溶液で洗浄した。水層をEtOAcで逆抽出し、有機層を合わせ、Na2SO4上で乾燥させ、真空蒸発させた。粗生成物をEt2O中に懸濁させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄し、真空で乾燥させると、中間体1a)が白色固体として得られた。
Rf=0.27(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.187-190℃
【0131】
中間体1b):

1.50mlのDMFに溶解した30.9mgのDL-リポ酸および27.0mgのHOBtの溶液に、56.9mgのHBTU、続いて0.11mlのDIEAを添加し、混合物を室温で10分間撹拌した。その後、39.8mgの中間体1a)を添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。得られた溶液をEtOAcで希釈し、1N HCl(3x)、2N K2CO3(3x)、H2Oおよび塩類溶液で洗浄した。有機層を無水MgSO4を用いて乾燥させ、真空蒸発させた。粗生成物を熱Et2Oで倍散させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄し、真空で乾燥させると、中間体1b)が黄色がかった固体として得られた。
Rf=0.34(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.230-232℃
【0132】
実施例2:

Rf=0.49(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.201-203℃
【0133】
下記実施例の化合物は同様にして調製することができる。












































【0134】
実施例169:

1.2mlのDMSOおよび1.2mlのCH2Cl2に溶解した12.0mgの中間体169c)の溶液を氷中で冷却した。10.2mgのDess-Martin試薬を添加し、混合物を氷浴中で60分間撹拌した。冷却浴を除去し、撹拌を室温でさらに60分間続けた。CH2Cl2を添加し、混合物を1M Na2S2O3、飽和NaHCO3、およびH2Oで洗浄し、無水Na2SO4を用いて乾燥させ、真空蒸発させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると(CH2Cl2/MeOH 98:2→CH2Cl2/MeOH 95:5)、実施例169が黄色がかった固体の形態で得られた。さらに、少量の実施例170が無色固体として得られた。
Rf=0.36(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.198-200℃
【0135】
所要の中間体は下記のように合成することができる。
中間体169a):

1.50mlのDMFに溶解した44.6mgのFmoc-グリシンおよび27.0mgのHOBtの溶液に、56.9mgのHBTU、続いて0.11mlのDIEAを添加し、混合物を室温で10分間撹拌した。その後、44.5mgの中間体1a)を添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。得られた溶液を、EtOAcで希釈し、1N HCl(3×)、飽和NaHCO3(3×)、H2O、および塩類溶液で希釈した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、真空蒸発させた。粗生成物をEt2O中に懸濁させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄し、真空で乾燥させると、中間体169a)が黄色がかった固体として得られた。
Rf=0.32(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.175-177℃
【0136】
中間体169b):

64mgの中間体169a)を2mlのDMFに溶解し、0.18mlのEt2NHを添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。溶液を真空蒸発させ、残渣をEt2OおよびEtOAcに懸濁させ、濾過し、冷Et2Oで洗浄すると、中間体169b)が黄色がかった固体として得られ、これを真空乾燥させた。
Rf=0.02(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.223-225℃
【0137】
中間体169c):

1.50mlのDMFに溶解した30.9mgのDL-リポ酸および27.0mgのHOBtの溶液に、56.9mgのHBTU、続いて0.11mlのDIEAを添加し、混合物を室温で10分間撹拌した。その後、41.9mgの中間体169b)を添加し、反応物を室温で一晩中撹拌した。得られた溶液をEtOAcで希釈し、1N HCl(3x)、2N K2CO3(3x)、H2Oおよび塩類溶液で洗浄した。有機層を無水MgSO4を用いて乾燥させ、真空蒸発させた。粗生成物を熱CH2Cl2で倍散させ、濾過し、冷CH2Cl2で洗浄し、真空で乾燥させると、中間体169c)が白色固体として得られた。
Rf=0.22(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.178-180℃
【0138】
実施例170:

Rf=0.35(CH2Cl2/MeOH 9:1);Mp.172-173℃
【0139】
下記実施例の化合物は同様にして調製することができる。














【0140】
生物学的アッセイ法:
化学式(I)のα-ケトカルボニルカルパイン阻害剤の阻害効果を、文献で慣習的な酵素試験を用いて決定した。酵素活性の50%が阻害される阻害剤濃度(=IC50)を効能の尺度として決定した。いくつかの場合においては、Ki値もまた、決定した。これらの基準を使用して化合物(I)のカルパインI、カルパインIIおよびカテプシンBに対する阻害効果を測定した。
【0141】
酵素的カルパイン阻害アッセイ法
カルパイン阻害剤の阻害特性を、100mMのイミダゾール pH7.5、5mMのL-システイン-HCl、5mMのCaCl2、2.5μlのDMSOに溶解した250μMのカルパイン蛍光発生的基質Suc-Leu-Tyr-AMC(Sigma)(Sasaki et al.、J. Biol. Chem.、1984、259、12489-12949)および0.5μgのヒトμ-カルパイン(Calbiochem)を含む100μlの緩衝液中で試験した。1μlのDMSOに溶解した阻害剤を反応緩衝液に添加した。開裂生成物7-アミノ-4-メチルクマリン(AMC)の蛍光を、96穴プレート(Greiner)において30分間、30秒の間隔、λex=360nmおよびλem=440nmでSPECTRAmax GEMINI XS(Molecular Device)蛍光光度計において追跡した。異なる阻害剤濃度での反応初速度を、阻害剤濃度に対しプロットし、グラフからIC50値を決定した。
【0142】
C2C12筋芽細胞におけるカルパイン阻害アッセイ法
このアッセイ法は物質の細胞カルパインを阻害する能力をモニタすることを目的とする。C2C12筋芽細胞を96穴プレート中、成長培地(DMEM、20%ウシ胎児血清)において、集密に達するまで増殖させる。成長培地をその後、融合培地(DMEM、5%ウマ血清)で置換する。24時間後、融合培地を、1μlのDMSOに溶解した試験物質を含む融合培地で置換する。37℃で2時間インキュベートした後、135mM NaCl;5mM KCl;4mM CaCl2;1mM MgCl2;10mM ブドウ糖;10mM HEPES pH7.25を含む50μlの反応緩衝液中に含まれる400μMのカルパイン蛍光発生的基質Suc-Leu-Tyr-AMCを、20分間、室温で、細胞に添加する。細胞カルパインを活性化するのに必要なカルシウムの流入は、20μMのカルシウムイオノフォアBr-A-23187(Moleculer Probes)を含む50μlの反応緩衝液を添加することにより引き起こす。開裂生成物AMCの蛍光を、上記のように60分間、37℃、1分の間隔で測定する。IC50値を上記のように決定する。酵素的カルパイン阻害アッセイ法で決定したIC50をC2C12筋芽細胞カルパイン阻害アッセイ法で決定したIC50と比較すると、物質の細胞取り込みまたは膜透過性が評価できる。
【0143】
C2C12筋芽細胞におけるスペクトリン分解
カルパインは様々な蛋白性基質を開裂するが、細胞骨格蛋白質が特にカルパイン開裂を受けやすいと考えられる。特に、細胞骨格蛋白質α-スペクトリンのカルパイン特異的分解生成物(BDP)の蓄積を使用して、多くの生理学的および病理学的状態における細胞および組織内のカルパイン活性がモニタされている。このように、カルパイン活性化は、細胞骨格蛋白質α-スペクトリンの蛋白質分解をアッセイすることにより測定することができる。この場合、カルパインによる開裂により、大きな(150kD)、独特の安定な分解生成物が生成する(A.S. Harris、D.E. Croall & J.S. Morrow「The calmodulin-binding site in alpha-fodrin is near tha calcium-dependent protease-I cleave site」J. Biol. Chem.、1988、263(30)、15754-15761;Moon, R.T. & A.P. McMahon「Generation of diversity in nonerythroid spectins. Multiple polypeptides are predicted by sequence analysis of cDNAs encompassing the coding region of human nonerythroid alpha-spectrin」J. Biol. Chem.、1990、265(8)、4427-4433;P.W. Vanderklish & B.A. Bahr「The pathogenic activation of calpain: a marker and mediator of cellular toxicity and disease states」Int. J. Exp. Pathol.、2000、81(5)、323-339)。蛍光発生的基質を省略することを除き、上記C2C12筋芽細胞カルパイン阻害アッセイ法と同じ条件下でスペクトリン分解アッセイ法を実施する。カルシウムイオノフォアを用いて60分インキュベートした後、80mM Tris-HCl pH6.8;5mMのEGTA;2%のSDSを含む50μlの溶解緩衝液中で細胞を溶解させる。溶解物はその後、モノクローナル抗体mAb1622(Chemicon)を使用してウエスタンブロット上でプローブする。カルパインの活性化は、150kDのカルパイン特異的BDPの無傷の240kDaのα-スペクトリンバンドに対する比率をデンシトメトリー法により測定することにより決定する。
【0144】
カテプシンBアッセイ法
カテプシンBの阻害を、S.Hasnain et al.、J. Biol. Chem.、1993、268、235-240の方法と同様の方法により決定した。
【0145】
阻害剤およびDMSO(最終濃度:100μM〜0.01μM)から調製した2μlの阻害剤溶液を88μlのカテプシンB(500μM緩衝液中に5ユニットとなるように希釈したヒト肝臓カテプシンB(Calbiochem))に添加する。この混合物を室温(25℃)で60分プレインキュベートし、その後、10μLの10mM Z-Arg-Arg-pNA(10%のDMSOを含む緩衝液中)を添加することにより反応を開始させる。マイクロタイタプレートリーダーにおいて405nmで30分間反応を追跡する。その後、最大勾配からIC50を決定する。
【0146】
20Sプロテアソームアッセイ法
400μMの蛍光発生的基質Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-AMC(Bachem)を含む25μlの反応緩衝液を白色マイクロタイタプレートの各ウエルに分注する。0.5μlのDMSOに溶解した試験化合物を添加する。反応を開始させるために、35ngの酵素(20Sプロテアソーム、ウサギ、Calbiochem)を含む25μlの反応緩衝液を添加する。蛍光の増加(360nmでの励起;440nmでの発光)を30分にわたり30℃、30''で測定する。その後、勾配からIC50を決定する
【0147】
BSOアッセイ法
フリードライヒ失調症(FRDA)の分子診断を受けたドナーおよびミトコンドリア疾患のない対照ドナーから初代線維芽細胞を誘導した。細胞系をCoriell Cell Repositories(Camden、NJ;それぞれ、カタログ番号GM04078、GM08402およびGM08399)から得た。全ての細胞型について、PCRに基づく方法を用いて少なくとも400〜450反復のイントロンGAAトリプレット反復長に対し分子レベルで診断した。実験を文献(M.L.Jauslin et al.、Human Mol. Genet.、2002、11、3055-3063)に記述されているように実施した:細胞をマイクロタイタプレート中に、10%(v/v)ウシ胎児血清(PAA Laboratories、Linz、オーストリア)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(PAA Laboratories、Linz、オーストリア)、10μg/mlのインスリン(Sigma、Buchs、スイス)、10ng/ml EGF(Sigma、Buchs、スイス)、10ng/ml bFGF(PreproTech、Rocky Hill、NJ)および2mMグルタミン(Sigma、Buchs、スイス)を補充した、フェノールレッド(Bioconcept、Allshcwil、スイス)を含まない、25%(v/v)M199EBSおよび64%(v/v)MEM EBSを有する成長培地中、4'000細胞/100μlの密度で播種した。細胞を、様々な試験化合物の存在下、24時間インキュベートし、その後、L-ブチオニン-(S,R)-スルホキシイミン(BSO)を添加し、最終濃度1mMとした。BSO-処理対照に毒性の最初の徴候が現れた後(典型的には16〜48時間後)細胞生存度を測定した。細胞を60分間、室温で、PBS中、1.2μMのカルセインAMおよび4μMのエチジウムホモダイマー(Live/Dead assay、Molecular Probes、Eugene、OR)で染色した。蛍光強度をGemini Spectramax XS分光蛍光計(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で、485nmの励起波長および525nmの発光波長を用いて測定した。
【0148】
本発明の選択した実施例に対する生物学的データ:




【0149】
C2C12筋芽細胞におけるカルパイン阻害アッセイ法のIC50が1μMまたはそれ以下の実施例は一般に、10μMの試験濃度で、C2C12筋芽細胞においてスペクトリン分解の完全な阻害を示した。
【0150】
インビボ実験:
mdxマウスはデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する定着した動物モデルである(Bulfield G.、Siller W.G.「Wight P.A.、Moore K.J.、X chromosome-linked muscular dystrophy (mdx) in the mouse」Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、1984、81(4)、1189-1192)。選択した化合物を、下記手順に従い、mdxマウスの長期処置において試験した。
【0151】
マウス株:C57BL/10scsnおよびC57BL/10scsn mdxマウス株をThe Jackson Laboratory(ME、USA)で購入し、社内で飼育した。雄マウスを3または7週齢で、CO2窒息により屠殺した。
【0152】
処置:化合物を50%PEG、50%生理食塩水溶液中に溶解し、i.p.注入により適用した。
【0153】
組織学:前脛骨筋(TA)および横隔膜(Dia)筋を収集し、トラガカント・ゴム(Sigma-Aldrich、ドイツ)を使用してコルク支持材上に載置した。試料を溶融イソペンタン中で急速凍結させ(snap-frozen)、-80℃で保存した。中腹領域の筋肉の12μmの厚さの凍結切片を調製した。染色のために、切片を空気乾燥し、4%のPFAを含むPBSで5分間固定し、3度PBSで洗浄し、一晩中4℃で、2μg/mlのAlexa Fluor(登録商標)488結合小麦胚凝集素(WGA-Alexia、Molecular Probes、Eugen、OR、USA)を含むPBS中でインキュベートし、膜結合した細胞外エピトープを染色させ、1μg/mlの4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI;Molecular Probes)中でインキュベートし核を染色した。
【0154】
画像収集および分析:両方の標識の蛍光顕微鏡画像を、蛍光顕微鏡(Vanox S、Olympus、東京、日本)に結合させたデジタルカメラ(ColorView II、Soft Imaging System、Munster、ドイツ)を用いて収集した。これらの2つの染色を組み合わせ合成画像とし、いくつかの画像を構築し筋肉断面全体の完全画像とし、さらに、画像解析プログラムAnalySIS(Soft Imaging System)を用いて半自動分析を実施した。各セクションの1200〜2900筋線維の画像解析を3段階で実施した:1)筋線維境界の決定、2)筋線維サイズの決定、および3)中心核を含む筋線維の割合の決定。筋線維サイズを決定するための6つの異なる幾何学的パラメータを試験した:(a)「最小フェレ(feret)」(筋線維の反対の境界の平行接線の最小距離)、(b)「面積」、(c)「最小内径」(筋線維の中心を通る最小直径)、(d)「最小直径」(ステップ幅1°の0°〜179°の範囲の角度に対する筋線維最小直径)、(e)「最小外径」(外側の境界から外側の境界までの筋線維を通る最小直径)、および(f)「周囲」。筋線維サイズの分散係数は下記のように定義される:分散係数=(筋線維サイズの標準偏差/セクションの筋線維サイズの平均)*1000。異なる分散係数値の統計分析のために、Mann-Whitney U試験を使用した。
【0155】
本発明の選択した実施例はmdxマウスモデルにおいて、10mg/kg/日、3週齢マウスおよび4週間の処置期間を使用すると活性であった(N=5〜10)。
【0156】
10mg/kg/日の実施例64では、筋線維サイズの分散係数が、ビヒクルのみを摂取した対照mdxマウス(N=15)に比べ、TAでは43%(p<0.005;N=6)、Diaでは29%(p<0.005;N=6)減少した。中心核(centralized nuclei)の割合は、ビヒクルのみを摂取した対照mdxマウス(N=20)に比べ、TAでは28%(p<0.001;N=6)、Diaでは61%(p<0.001;N=5)減少した。
【0157】
この長期処置では、化合物の顕著な副作用は観察されなかった。
【0158】
これとは対照的に、強力な標準カルパイン阻害剤MDL-28170はこの実験では統計学的に有意な活性を示さなかった。
【0159】
上記で示した結果から明かなように、一般に本発明の化合物は、MDL-28170などの標準カルパイン阻害剤に比べ、C2C12筋細胞において著しく改善された活性を示す。選択した実施例に対し、細胞アッセイ法における改善は、1000の係数で過剰であるが、酵素的カルパインI阻害アッセイ法における活性はMDL-28170に匹敵する。
【0160】
これにより、本発明の選択した化合物は、周知の標準化合物MDL-28170に比べ非常に増強した筋細胞膜透過性を有し、カルパイン阻害に対する強力な活性は保持したままであることが示される。このように細胞透過が改善することにより、作用部位が筋肉組織である疾患、例えば、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症の治療に特に有益である。
【0161】
生物学的結果(上記参照のこと)により説明されるように、本発明の選択した実施例は、強力なカルパイン阻害活性を示すだけでなく、プロテアソーム(MCP)の強力な阻害剤であり、および/または効果的に、筋細胞を酸化的ストレスによる傷害から保護する。そのような付加的な有益な特性は、筋ジストロフィーおよび筋萎縮症などの筋肉疾患の治療に有益であろう。
【0162】
ペプチドアルデヒドクラスの周知のカルパイン阻害剤、例えばMDL-28170とは対照的に、本発明の化合物は必要な代謝安定性および物理化学特性を有し、これによりインビボでの適用が成功する。したがって、本発明の選択した化合物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスモデルにおける長期処置で強力な活性を示したが、この動物モデルにおける標準カルパイン阻害アルデヒド、例えば、MDL-28170の活性は統計的有意性に到達しなかった。
【0163】
薬学的組成物の実施例
本発明の経口組成物の特定の態様として、80mgの実施例1の化合物を、十分な微粉化乳糖と共に製剤化し、総量580〜590mgとし、サイズ0のハードゼラチンカプセルに充填する。
【0164】
本発明の化合物の経口組成物の別の特定の態様として、100mgの実施例169の化合物を、十分な微粉化乳糖と共に製剤化し、総量580〜590mgとし、サイズ0のハードゼラチンカプセルに充填する。
【0165】
本発明について、一定の好ましい態様を参照して記述し説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更、改変および置換が可能であることは、理解するであろう。例えば、以上で記述したような好ましい用量以外の効果的な用量を、観察される特定の薬理学的応答の結果として適用してもよく、その用量は選択した特別な活性化合物、ならびに採用した製剤の型および投与様式によって変動するかもしれず、そのような予測される、結果的な変動または差異は本発明の目的および実行に従い予期される。そのため、本発明は、以下の請求の範囲によってのみ限定されるものであり、そのような特許請求の範囲は妥当な限り広く解釈すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物:

(式中、
R1
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリール、
-アルキレン-アリール、
-SO2-アルキル、
-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アリール、
-アルキレン-SO2-アルキル、
ヘテロシクリルまたは
-アルキレン-ヘテロシクリルを表し;
XはOまたはNHを表し;
R2
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
アリールまたは
-アルキレン-アリールを表し;
R3
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキルまたは
-アルキレン-シクロアルキルを表し;
Lは
結合、または
-CO-(CH2)y-CO-(式中、yは1〜6の整数である)、
-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数である)、
-CO-シクロアルキレン-CO-、
-NH-シクロアルキレン-CO-、
CO-アリーレン-CO-および
-NH-アリーレン-CO-から選択される少なくとも1つの基を表し;
Tは

(式中、m、nおよびpの各々は0〜6の整数を表す)からなる群より選択され;
R6
水素、
直鎖アルキル、
分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
-アルキレン-シクロアルキル、
-アルキレン-アリールまたは
A-O-CO-、
A-NH-CO-、
A-CO-、
A-SO2-または
A-NH-SO2-を表し;
Aは
直鎖または分枝鎖アルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子により置換された直鎖または分枝鎖アルキル、
Bにより置換された直鎖または分枝鎖アルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子およびBで置換された直鎖または分枝鎖アルキル、
シクロアルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子を有するシクロアルキル、
Bで置換されたシクロアルキル、
少なくとも1つのハロゲン原子およびBで置換されたシクロアルキル、
1つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
2つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Bで置換された1つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Bで置換された2つの結合したシクロアルキル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
1-アダマンチル、
9-フルオレニル、
フェニル、
Dで置換されたフェニル、
Dで二置換されたフェニル、
Dで三置換されたフェニル、
ナフチル、
Dで置換されたナフチル、
Dで二置換されたナフチル、
Dで三置換されたナフチル、
1つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
2つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Dで置換された1つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
Dで置換された2つの結合したフェニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
1つの結合したフェノキシ基を有する直鎖または分枝鎖アルキル、
フェノキシ基上、Dで置換された1つの結合したフェノキシ基を有する直鎖または分枝鎖アルキルおよび
結合した9-フルオレニル基を有する直鎖または分枝鎖アルキルからなる群より選択され;
Bは
ハロゲン、
COOH、
OH、
CN、
NO2
NH2
アルコキシ、
アルキルアミン、
ジアルキルアミン、
アルキル-O-CO-、
アルキル-O-CO-NH-および
アルキル-S-からなる群より選択され;
Dは
ハロゲン、
アルキル、
ペルフルオロアルキル、
アルコキシ、
NO2
CN、
OH、
COOH、
NH2
アルキルアミノ、
ジアルキルアミノ、
アシル、
アルキル-O-CO-および
アルキル-S-からなる群より選択され;
YおよびZは独立して
S、
SOまたは
CH2を表す)。
【請求項2】
R1が、水素、直鎖アルキル、-アルキレン-ヘテロシクリル、および-アルキレン-アリール、および-アルキレン-SO2-アリールからなる群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R2が、置換または非置換ベンジル基である、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R3が、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル基または-アルキレン-シクロアルキル基である、請求項1〜3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
Lが結合、または-NH-(CH2)z-CO-(式中、zは1〜6の整数である)、もしくは-NH-シクロアルキレン-CO-、もしくはNH-アリーレン-CO-、もしくはこれらの基のうちの2つの組み合わせから選択される基である、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
Lが結合である、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
Tが以下からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物:

(式中、m、nおよびpは請求項1で定義した通りである)。
【請求項8】
Tが以下である、請求項1〜7のいずれか一項記載の化合物:

(式中、mおよびnは請求項1で定義した通りである)。
【請求項9】
R6が水素、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜8個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、-アルキレン-シクロアルキル基(ここで、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、シクロアルキル基は3〜8個の炭素原子を有する)、アリール基、-アルキレン-アリール基(ここで、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子の直鎖アルキレン基であり、アリール基は置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニルおよびピリジルから選択される)、-アルキレン-ヘテロシクリル基、またはA-O-CO-、A-NH-CO-、A-CO-、またはA-NH-SO2-であり、式中、Aは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル基、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、-アルキレン-シクロアルキル基(ここで、アルキレン部分は好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、シクロアルキル基は3〜8個の炭素原子を有する)、アリール基、-アルキレン-アリール基(ここで、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であり、アリール基は置換または非置換フェニル、ナフチル、チエニルおよびピリジルから選択される)、または-アルキレン-ヘテロシクリル基(ここで、アルキレン部分は1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である)である、請求項1〜8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
m=1、n=3であり、かつYおよびZは両方ともSであるか、またはYがSでZがSOであるか、またはYがSOでZがSである、請求項1〜9のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
薬剤として使用するための請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
カルパインIおよび他のチオールプロテアーゼの阻害に応答性である障害、疾患または状態を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項13】
カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、またはパパインの阻害に応答性である障害、疾患または状態を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項14】
多触媒プロテアーゼ(MCP)の阻害に応答性である障害、疾患または状態を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項15】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項16】
ベッカー型筋ジストロフィーを治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項17】
神経筋疾患を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項18】
ジストロフィン異常症(dystrophinopathy)およびサルコグリカン異常症(sarcoglycanopathy)、肢帯筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパシー、末梢性および他のミオパシー、筋緊張症候群、イオンチャネル疾患、悪性高熱症、代謝性ミオパシー、遺伝性心筋症、先天性筋無力症候群、脊髄性筋萎縮症、遺伝性運動失調症、遺伝性運動感覚神経障害、および遺伝性対麻痺を含む筋ジストロフィーを治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項17記載の使用。
【請求項19】
非活動性萎縮および一般的な筋肉の衰弱を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項20】
心臓、腎臓、または中枢神経系の虚血、炎症、筋ジストロフィー、中枢神経系に対する損傷、およびアルツハイマー病を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項21】
目の白内障および目の他の疾患を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項12記載の使用。
【請求項22】
癌を治療するための薬剤の調製のための、請求項14記載の使用。
【請求項23】
乾癬、および再狭窄、および他の細胞増殖性疾患を治療するための薬剤の調製のための、請求項14記載の使用。
【請求項24】
酸化的ストレスのレベルの上昇が関連するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療または予防するための薬剤の調製のための、請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項25】
キーンズ・セイアー症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)、ミオクローヌス癲癇・赤色ぼろ線維(MERRF)、レーベル遺伝性視神経症(LHON)、リー症候群、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)、および進行性外眼筋麻痺(PEO)を含むミトコンドリア障害を治療するための薬剤の調製のための、請求項24記載の使用。
【請求項26】
フリードライヒ失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、およびアルツハイマー病などの変性運動失調を含む、フリーラジカルが関与する神経変性疾患を治療するための薬剤の調製のための、請求項24記載の使用。
【請求項27】
フリーラジカルを介する酸化的ストレスによる細胞傷害を阻害するための薬剤の調製のための、請求項8記載の化合物の使用。
【請求項28】
酸化的ストレスのレベルの上昇が関与するミトコンドリア障害および神経変性疾患を治療するための薬剤の調製のための、請求項8記載の化合物の使用。
【請求項29】
請求項1〜10のいずれか一項記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。

【公表番号】特表2006−526571(P2006−526571A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500045(P2006−500045)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002142
【国際公開番号】WO2004/078908
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505336024)サンテラ ファーマシューティカルズ (シュバイツ) ゲーエムベーハー (21)
【Fターム(参考)】