説明

α−ケトピメリン酸の調製

本発明は、α−ケトピメリン酸を調製するための方法であって、2−ヒドロキシヘプタン二酸をα−ケトピメリン酸に変換することを含み、この変換が、生体触媒を用いて触媒される、方法に関する。さらに、本発明は、2−ヒドロキシヘプタン二酸からα−ケトピメリン酸への変換において触媒活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む異種細胞に関する。さらに、本発明は、カプロラクタム、ジアミノヘキサンまたはアジピン酸の調製における本発明による異種細胞の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、α−ケトピメリン酸(以下、「AKP」とも呼ばれる;AKPは2−オキソ−ヘプタン二酸としても知られている)を調製するための方法に関する。本発明はさらに、6−アミノカプロン酸(以下、「6−ACA」とも呼ばれる)を調製するための方法に関する。本発明はまた、アジピン酸の調製のための方法、5−ホルミルペンタン酸(以下、「5−FVA」とも呼ばれる)を調製するための方法、αアミノ−ピメリン酸(AAP)を調製するための方法、およびジアミノヘキサン(1,6−ヘキサンジアミンとしても知られる)の調製のための方法に関する。本発明はさらに、本発明による方法で使用し得る異種細胞に関する。本発明はさらに、ε−カプロラクタム(以下、「カプロラクタム」と呼ばれる)、アジピン酸、またはジアミノヘキサンの調製における異種細胞の使用に関する。
【0002】
アジピン酸(ヘキサン二酸)は、とりわけ、ポリアミドの産生に用いられる。さらに、アジピン酸のエステルは、可塑剤、潤滑剤、溶媒中に、および種々のポリウレタン樹脂中に用いることができる。アジピン酸の他の用途には、食品酸味料としてのもの、接着剤、殺虫剤、なめしおよび染色での適用がある。既知の調製方法としては、シクロヘキサノールもしくはシクロヘキサノンまたはそれらの混合物(KA油)の硝酸による酸化が挙げられる。
【0003】
ジアミノヘキサンは、とりわけ、ナイロン6,6などのポリアミドの産生に用いられる。他の用途としては、他のビルディングブロック(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)の出発材料としての用途およびエポキシドの架橋剤としての用途が挙げられる。既知の調製方法は、アクリロニトリルからアジポニトリルを経て進行する。
【0004】
カプロラクタムは、ポリアミド、例えば、ナイロン−6またはナイロン−6,12(カプロラクタムとラウロラクタムのコポリマー)の産生に使用し得るラクタムである。大量の化学物質からカプロラクタムを調製する様々な方法が当技術分野で知られており、これには、シクロヘキサノン、トルエン、フェノール、シクロヘキサノール、ベンゼンまたはシクロヘキサンからのカプロラクタムの調製が含まれる。これらの中間体化合物は、通常、鉱油から得られる。
【0005】
より持続可能な技術を用いて材料を調製する意欲の高まりを考慮すれば、カプロラクタム、アジピン酸またはジアミノヘキサンを、生物学的に再生可能な供給源から入手することができる中間体化合物からまたは少なくとも生化学的な方法を用いてカプロラクタムに変換される中間体化合物から調製する方法を提供することが望ましいであろう。さらに、石油化学源由来の大量の化学物質を利用する従来の化学的プロセスよりもエネルギーのかからない方法を提供することが望ましいであろう。
【0006】
例えば、米国特許第A6,194,572号明細書に記載されているように、6−ACAからカプロラクタムを調製することが知られている。国際公開第2005/068643号パンフレットに開示されているように、6−ACAは、α,β−エン酸レダクターゼ活性を有する酵素の存在下で6−アミノヘキス−2−エン酸(6−AHEA)を変換することによって生化学的に調製し得る。6−AHEAは、例えば、生化学的にまたは純粋な化学合成によってリジンから調製し得る。6−AHEAの還元を介する6−ACAの調製は、国際公開第2005/068643号パンフレットに開示されている方法によって実現可能であるものの、本発明者らは、還元反応条件下では、6−AHEAが自然にかつ実質的に不可逆的に環化して、望ましくない副産物、特に、β−ホモプロリンを形成する場合があることを見出した。この環化は、6−ACAの産生の障害となる場合があり、かつ産生量のかなりの損失をもたらすこともある。
【0007】
本発明者らは、AKPから6−ACAを調製することが可能であることに気づいた。AKPは、例えば、H.Jaeger et al.Chem.Ber.1959,92,2492−2499によって記載されているような方法に基づいて、化学的に調製することができる。AKPは、ナトリウムエトキシドを塩基として用いてシクロペンタノンをシュウ酸ジエチルでアルキル化し、得られた産物を強酸(2M HCl)中で還流させ、産物を、例えば、トルエンからの結晶化によって回収することによって調製することができる。しかしながら、上で示したように、より持続可能な技術を用いて材料を調製する意欲が高まっている。このため、本発明者らは、生物学的に再生可能な供給源から入手することができる中間体化合物からAKPを調製する方法を提供することが望ましいことに気づいた。
【0008】
特に、6−ACA、アジピン酸、ジアミノヘキサンまたは別の化合物の調製のために使用し得るAKPを調製するための新規の方法を提供することが本発明の目的である。
【0009】
さらに、AKPを調製するための方法における1つ以上の反応工程を触媒するのに好適な新規の生体触媒を提供することが目的である。
【0010】
本発明によって解決され得る1つ以上のさらなる目的は、以下の説明から理解されるであろう。
【0011】
本発明者らは、特定の生体触媒を用いてAKPを調製することが可能であることに気づいた。
【0012】
したがって、本発明は、α−ケトピメリン酸(AKP)を調製するための方法であって、2−ヒドロキシヘプタン二酸をα−ケトピメリン酸(AKP)に変換することを含み、この変換が、生体触媒、特に、異種生体触媒を用いて触媒される、方法に関する。
【0013】
本発明の方法で調製されるAKPはさらに、別の化合物の調製で用いることができるか、またはそれ自体として、例えば、生化学研究用の化学物質として、もしくは例えば、液体クロマトグラフィーもしくはキャピラリー電気泳動などの分取または分析的分離技術で使用されるpH緩衝化合物として用いることができる。特に、必要に応じて、AKPは、5−FVA、AAP(2−アミノヘプタン二酸、α−アミノピメリン酸としても知られている)、6−ACA、またはアジピン酸の調製のために用いることができる。FVA、AAPまたは6−ACAの生体触媒的調製のための好適な生体触媒は、例えば、国際公開第2009/113855号パンフレットに見られる。
【0014】
したがって、本発明はさらに、5−FVAを調製するための方法であって、本発明による方法で調製されるAKPを生体触媒的に脱カルボキシル化し、それによって、5−FVAを形成させることを含む、方法に関する。
【0015】
5−FVAは、例えば、6−ACA、カプロラクタム、ジアミノヘキサンまたはアジピン酸を調製するための好適な中間体化合物である。
【0016】
AKPは、例えば、AAPの調製における中間体として用いることができる。
【0017】
したがって、本発明はさらに、AAPを調製するための方法であって、本発明による方法で調製されるAKPを生体触媒的に転移させ、それによって、AAPを形成させることを含む、方法に関する。
【0018】
AAPは、例えば、6−ACA、ジ−アミノヘキサンまたはカプロラクタムを調製するための好適な中間体化合物である。
【0019】
6−ACAは、例えば、カプロラクタムまたはジアミノヘキサンに変換することができる。
【0020】
本発明はさらに、2−ヒドロキシヘプタン二酸からα−ケトピメリン酸への変換において触媒活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む異種細胞に関する。この核酸配列およびコードされた酵素は、通常、細胞にとって異種のものである。
【0021】
本発明による細胞は、特に、AKP、5−FVA、6−ACA、AAP、アジピン酸、ジアミノヘキサンおよびカプロラクタムの群から選択される少なくとも1つの化合物を調製するための方法における生体触媒として用いることができる。
【0022】
本発明によれば、6−ACAおよび場合によりカプロラクタムを形成したときに収率の損失をもたらす、中間生成物の望ましくない環化に関して、全く問題は見られない。
【0023】
本発明の方法は、国際公開第2005/68643号パンフレットに記載の方法と同程度のまたはそれよりもさらに良好な収率を可能にすることが予想される。本発明の方法は、生きた生物を、特に、その生物の増殖および維持を考慮に入れた方法で利用する場合に、特に有利であり得ることが予想される。
【0024】
本発明の実施形態では、本発明の方法における6−ACAの生産性(形成されるg/l.h)が改善され得ることがさらに予想される。
【0025】
本明細書で使用する場合の「または」という用語は、別途規定がない限り、「および/または」と定義される。
【0026】
本明細書で使用する場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語は、別途規定がない限り、「少なくとも1つの」と定義される。
【0027】
単数形の名詞(例えば、化合物、添加物など)に言及する場合、複数形を含むことが意図される。したがって、特定の部分、例えば、「化合物」に言及する場合、これは、別途規定がない限り、その部分の「少なくとも1つ」、例えば、「少なくとも1つの化合物」を意味する。
【0028】
本明細書でカルボン酸またはカルボキシレート、例えば、6−ACA、別のアミノ酸、5−FVA、アジピン酸/アジペート、コハク酸/スクシネート、酢酸/アセテートに言及する場合、これらの用語は、別途規定がない限り、プロトン化されたカルボン酸(遊離酸)、対応するカルボキシレート(その共役塩基)およびそれらの塩を含むことが意図される。本明細書でアミノ酸、例えば、6−ACAに言及する場合、この用語は、(アミノ基がプロトン化されたものであり、カルボキシレート基が脱プロトン化形態である)両性イオン形態のアミノ酸、アミノ基がプロトン化され、カルボン酸基が中性形態であるアミノ酸、およびアミノ基が中性形態であり、カルボキシレート基が脱プロトン化形態であるアミノ酸、ならびにそれらの塩を含むことが意図される。
【0029】
そのいくつかの異性体が存在する化合物(例えば、シス異性体およびトランス異性体、RエナンチオマーおよびSエナンチオマー)に言及する場合、化合物は、原則として、本発明の特定の方法で使用し得るその化合物の全てのエナンチオマー、ジアステレオマーおよびシス/トランス異性体を含む。
【0030】
酵素が括弧内の酵素クラス(EC)に関して言及されている場合、その酵素クラスは、その酵素が、Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology(NC−IUBMB)によって提供されている酵素命名法を基にして分類されているかまたは分類され得るクラスである。この命名法は、http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/で見ることができる。特定のクラスに(まだ)分類されていないが、そのようなものに分類され得る他の好適な酵素を含むことが意図される。
【0031】
受託番号を参照して本明細書でタンパク質または遺伝子に言及する場合、この番号は、特に、別途規定しない限り、2009年9月11日にUniprotで見られるような配列を有するタンパク質または遺伝子を指すために用いられる。
【0032】
「ホモログ」という用語は、本明細書では特に、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも85%、より特に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して用いられる。
【0033】
さらに、ホモログは一般に、通常30%を上回る顕著な配列類似性、特に、少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも85%、より特に少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列類似性を有する。
【0034】
ホモログは、通常それぞれ、そのポリペプチドがホモログとなるポリヌクレオチドと共通の意図される機能を有し、例えば、それぞれ、同じ反応(通常、同じ基質から同じ化合物への変換)または類似反応を触媒することができる同じペプチドをコードする。「類似反応」は、通常、同じタイプの反応、例えば、脱カルボキシル化またはアミノ基転移である。したがって、大まかに言うと、相同な酵素は、ECクラスの最初の3つの数字(x.y.z)を共有するECクラス、例えば、カルボキシラーゼを表すEC 4.1.1に分類することができる。通常、類似反応では、類似反応が類似する反応の基質と同じクラスの基質(例えば、アミン、カルボン酸、アミノ酸)が、類似反応が類似する反応の産物と同じクラスの産物に変換される。類似反応には、特に、同じKEGG RDMパターンによって規定されるのと同じ化学変換によって規定される反応が含まれ、このパターンでは、R−原子とD−原子によって化学変換が説明される(KEGG RDMパターン:Oh,M.et al.(2007) Systematic analysis of enzyme−catalyzed reaction patterns and prediction of microbial biodegradation pathways.J.Chem.Inf.Model.,47,1702−1712)。
【0035】
ホモログという用語は、遺伝暗号の縮重または実験的適合のために別の核酸配列とは異なっており、かつ同じポリペプチド配列をコードしている核酸配列(ポリヌクレオチド配列)を含むことも意図される。
【0036】
「機能的類似体」という用語は、本明細書では、前記類似体がその類似体となる所与の配列とは異なるが、同じアミノ酸配列を有するペプチド(タンパク質、酵素)をコードするかまたはそのようなペプチドのホモログをコードする核酸配列に対して用いられる。特に、好ましい機能的類似体は、機能的類似体であると言及されているヌクレオチド配列と同様の、同一のまたはそれよりも良好なレベルの目的の宿主細胞における発現を有するヌクレオチド配列である。この点において、当業者が理解するように、ペプチド(タンパク質、酵素)の発現が望ましい場合、発現レベルが良好であるほど、通常、発現レベルがより高いことが認められる。しかしながら、特定の実施形態では、発現レベルが良好であるほど、発現レベルがより低いことがあるが、それは、前記宿主細胞における代謝経路との関連で、より低い発現レベルが望ましいことがあるからである。機能的類似体は、天然の配列、すなわち、野生型の機能的類似体、または遺伝子改変された配列、すなわち、非野生型の機能的類似体であることができる。特定のペプチドをコードするコドン最適化された配列は、通常、所望の発現レベルを達成することを目的とした、野生型配列の非野生型の機能的類似体である。
【0037】
配列同一性または類似性は、本明細書では、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上の核酸配列を比較することによって決定されるような、これらの配列間の関係性として定義される。通常、配列同一性または類似性は、配列の全長にわたって比較されるが、互いに整列させて配列の一部のみについて比較することもできる。当技術分野では、「同一性」または「類似性」は、場合によっては、ポリペプチド配列または核酸配列間の一致によって決定されるような、配列間の配列関連性の程度も意味する。同一性または類似性を決定するための好ましい方法は、検討される配列間で最大の一致を生じさせることを目的としている。本発明との関連で、2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法としては、BLASTPおよびBLASTN(Altschul,S.F.et al.,J.Mol.Biol.1990,215,403−410、NCBIおよび他の供給元(BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,MD 20894)から一般に入手可能である)が挙げられる。BLASTPを用いたポリペプチド配列比較のための好ましいパラメータは、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5、Blosum 62マトリックスである。BLASTNを用いた核酸配列比較のための好ましいパラメータは、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5、DNA完全マトリックス(DNA同一性マトリックス)である。
【0038】
本明細書で使用する場合の、異種生体触媒、特に、異種細胞は、異種タンパク質または(通常、細胞のDNAもしくはRNAの一部としての)異種核酸を含む生体触媒である。核酸配列(DNAもしくはRNA)、またはタンパク質に関して使用するときの、「異種」という用語は、それが存在する生物、細胞、ゲノムもしくはDNAもしくはRNA配列の一部として天然には生じないか、またはそれが天然に見られる細胞もしくはゲノム中の1つもしくは複数の場所もしくはDNAもしくはRNA配列とは異なる細胞もしくはゲノム中の1つもしくは複数の場所もしくはDNAもしくはRNA配列に見られる核酸またはタンパク質を指す。異種生物内の異種DNAは、その異種生物のゲノムの一部であることが理解される。異種核酸またはタンパク質は、それらが導入される細胞にとって内在性のものではなく、別の細胞から得られたものまたは合成もしくは組換えによって産生されたものである。通常、そのような核酸は、そのDNAが転写または発現される細胞によって通常は産生されないタンパク質をコードするが、必ずしもそうとは限らない。同様に、異種RNAは、異種RNAが存在する細胞内で通常は発現されないタンパク質をコードする。異種核酸およびタンパク質は、外来核酸またはタンパク質と呼ぶこともできる。当業者が、任意の核酸またはタンパク質が発現される細胞にとって異種または外来であると認識する、当該核酸またはタンパク質は、本明細書では、異種核酸またはタンパク質という用語によって包含される。
【0039】
特定の供給源由来の酵素または別の生体触媒部分に言及する場合、第1の生物に由来するが、実際には(遺伝子改変された)第2の生物で産生される組換え酵素または他の組換え生体触媒部分は、その第1の生物由来の酵素または他の生体触媒部分として含まれることが特に意図される。
【0040】
本発明の方法では、生体触媒が用いられる、すなわち、本方法における少なくとも1つの反応工程は、生物学的供給源に由来する生物学的材料または部分、例えば、生物またはそれに由来する生体分子によって触媒される。生体触媒は、特に、1つ以上の酵素を含むことができる。生体触媒反応は、1つ以上の化学的変換を含むことができ、その少なくとも1つは、生体触媒的に触媒される。したがって、「生体触媒」は、AKPの調製における少なくとも1つの反応工程、AKPからの5−FVAもしくはAAPの調製における少なくとも1つの反応工程、5−FVAからの6−ACAもしくはアジピン酸の調製における少なくとも1つの反応工程、AAPからの6−ACAの調製における少なくとも1つの反応工程、ジアミノヘキサンの調製における少なくとも1つの反応工程、または6−ACAからのカプロラクタムの調製における少なくとも1つの反応工程における化学反応を加速させることができる。
【0041】
生体触媒は任意の形態で用いることができる。一実施形態では、1つ以上の酵素は、生物(例えば、生きた全細胞)の一部を形成する。酵素は、細胞内部で触媒機能を果たすことができる。細胞が存在する培地中に酵素が分泌される可能性もある。一実施形態では、天然の環境から単離された(それが産生された生物から単離された)1つ以上の酵素は、例えば、溶液、エマルジョン、分散液、フリーズドライした細胞(の懸濁液)、ライセート、または支持体表面に固相化されたものとして用いられる。由来する生物から単離された酵素の使用は、反応平衡を所望の側に移動させるように反応条件を調整する際の柔軟性の増加を考慮すると、特に有用であり得る。
【0042】
生きた細胞は、増殖する細胞、休止もしくは休眠細胞(例えば、胞子)または静止期の細胞であることができる。透過処理された(すなわち、酵素の基質または1つもしくは複数の酵素の基質の前駆体に対して透過性になった)細胞の部分を形成する酵素を用いることも可能である。
【0043】
(本発明の方法で用いられる)生体触媒は、原則として、任意の生物であってもよく、または任意の生物から得られるものもしくは任意の生物に由来するものであってもよい。この生物は、天然の生物または異種生物であってもよい。異種生物は、通常、本発明の方法における少なくとも1つの反応工程を触媒することができる異種酵素をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む宿主細胞である。異種核酸配列が由来する生物は、真核生物または原核生物であってもよい。特に、前記生物は、動物(ヒトを含む)、植物、細菌、古細菌、酵母および真菌から独立して選択することができる。
【0044】
宿主細胞は、真核生物または原核生物であってもよい。一実施形態では、宿主細胞は、真菌、酵母、ユーグレナ、古細菌および細菌の群から選択される。宿主細胞は、特に、アスペルギルス属(Aspergillus)、アオカビ属(Penicillium)、黒穂菌属(Ustilago)、セファロスポリウム属(Cephalosporium)、トリコフィツム属(Trichophytum)、ペシロミセス属(Paecilomyces)、ピキア属(Pichia)、ハンセヌラ属(Hansenula)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、カンジダ属(Candida)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エシェリキア属(Escherichia)、アゾトバクター属(Azotobacter)、フランキア属(Frankia)、根粒菌属(Rhizobium)、ブラッディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、アナベナ属(Anabaena)、シネコシスティス属(Synechocystis)、ミクロシスティス属(Microcystis)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サーマス属(Thermus)、デイノコッカス属(Deinococcus)およびグルコノバクター属(Gluconobacter)からなる属から選択することができる。
【0045】
特に、本発明の方法で用いられる宿主株、ひいては宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アナベナ属の種(Anabaena sp.)、シネコシスティス属の種(Synechocystis sp.)、ミクロシスティス・アエルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、デイノコッカス・ラディオウランス(Deinococcus radiourans)、デイノコッカス・ゲオテルマリス(Deinococcus geothermalis)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・メタノリクス(Bacillus methanolicus)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、アオカビ(Penicillium notatum)、ペシロミセス・カルネウス(Paecilomyces carneus)、セファロスポリウム・アクレモニウム(Cephalosporium acremonium)、トウモロコシ黒穂菌(Ustilago maydis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・クルセイ(Candida crucei)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)宿主細胞の群から選択することができる。特に、AKPをさらなる産物、例えば、5−FVA、AAP、アジペート、ジアミノヘキサンまたは6−ACAに変換しようとする実施形態では、宿主細胞は、AKPを天然にそのような産物に変換することができるか、または少なくとも必要な反応の1つを触媒することができる生物であることが有利であると考えられる。例えば、大腸菌(Escherichia coli)は、アミノトランスフェラーゼ活性を有しており、それにより、大腸菌(E.coli)は、AKPからのAAPの形成(下記も参照)または5−FVA(これは、細胞が好適なデカルボキシラーゼも含有する場合、細胞内で形成され得る、下記も参照)から6−ACAへの変換を触媒することができる。さらに、大腸菌(E.coli)は、(AKPを5−FVAに変換するのに好適な)AKPデカルボキシラーゼ活性および/または(5−FVAからのアジペートの調製を触媒する)アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を有する場合がある。
【0046】
さらに、宿主細胞がピメレートを合成するための酵素系(ピメレート合成経路)またはその一部を含むことは有利であると考えられる。ピメレートは、ビオチン生合成における中間体として知られており、そのため、本発明者らは、ビオチンのデノボ合成が可能な生物は、ピメレートの合成経路も含有することが予想されると考えている。ピメレートは、脂肪酸から(その酸化を介して)産生されると記載されている。これによって炭素鎖の破壊が起こり、第2のカルボン酸機能性が生じる(W.R.Streit,P.Entcheva.Biotin in microbes,the genes involved in its biosynthesis,its biochemical role and perspectives for biotechnological production.Appl Microbiol Biotechnol(2003)61:21−31;Max J.Cryle,Ilme Schlichting.Structural insights from a P450 Carrier Protein complex reveal how specificity is achieved in the P450 Biol ACP complex.PNAS(2008)105(41):15696−15701)。
【0047】
ピメレート合成の酵素系を提供するさらなる生物は、バチルス・センス・ラト(Bacillus sensu lato)群、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ブレビバチルス属(Brevibacillus)などの属から選択することができる(Zeigler and Perkins,2008,Practical Handbook of Microbiology”,第2版(E.Goldman and L.Green,編),pp301−329,CRC Press,Boca Raton,FLの表1を参照されたい)。特に、バチルス・センス・ストリクト((Bacillus sensu stricto)群、特に、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・レンティモルブス(Bacillus lentimorbus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・パントテンティクス(Bacillus pantothenticus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)(Zeigler and Perkins,2008,同書)によって代表されるバチルス属(Bacillus)種から。より具体的には、枯草菌(Bacillus subtilis)168およびその株派生物から。さらに、ピメレート合成の酵素系を提供する生物は、例えば、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococci)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、およびシュードモナス属(Pseudomonas)といった属から選択することもできる。特に、ピメレートを合成するための酵素系を含む宿主細胞は、グラム陽性細菌の群から選択することができる(Streit and Entcheva,Appl Microbiol Biotechnol(2003)61:21−31)。例えば、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)は、ピメレートを合成するための酵素系を含むと報告されている(Gloeckler et al.,Gene 87:63−70,1990)。さらに、枯草菌(Bacillus subtilis)は、ピメレート合成経路の酵素を含む生物の一例である(例えば、欧州特許出願公開第A635572号明細書を参照されたい)。
【0048】
グラム陰性細菌もピメリン酸を提供することができる。これらの微生物は、通常、ピメロイル−CoAを調製するための酵素系も含む、例えば、大腸菌(Escherichia coli)については、Otsuka et al.,J.Biol.Chem.263:19577−19585(1988);O’Regan et al..Nucleic Acids Res.17:8004(1989)を参照されたい))。これらの細菌の野生型株が、ピメロイル−CoAを調製するその能力によってピメリン酸を産生することができない場合でも、それらは、ピメロイル−CoAの加水分解のときに、ピメレートが形成されるという点において、ピメレートの供給源を提供することができる。
【0049】
特定の実施形態では、ピメレートを合成するための酵素系を含む本発明による宿主細胞は、ピメレートの前駆体として機能することができる1つ以上の脂質を高収率で産生することができる。宿主細胞は、天然に前記脂質産生を可能とするか、またはその野生型が天然に前記脂質産生を可能とする生物から前記脂質産生に関与する1つ以上の遺伝子を組み入れることによって遺伝子改変されている。そのような生物の例としては、油性酵母、微細藻類、真菌および細菌が挙げられる。
【0050】
好適な微細藻類は、ドナリエラ・バーダウィル(Dunalliela bardawil)、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、ハプト藻(Prymnesium parvum)、パリエトクロリス・インシサ(Parietochloris incisa)、フェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)、クリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)の群から選択することができる。
【0051】
好適な細菌は、グラム陽性細菌、特に、放線菌目(Actinomycetales)のグラム陽性細菌、例えば、ストレプトミセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトミセス・アルブス(Streptomyces albus)、ストレプトミセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、ノカルジア・コラリーナ(Nocardia corallina)、ノカルジア・グロベルラ(Nocardia globerula)、ノカルジア・レストリクタ(Nocardia restricta)、ロドコッカス・エリスポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス・ファシアンス(Rhodococcus fascians)、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス・ルーバー(Rhodococcus ruber)、ロドコッカス属の種(Rhodococcus sp.)の株20、トリ結核菌(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・ラティスボネンセ(Mycobacterium ratisbonense)、マイコバクテリウム・スメグマティス(Mycobacterium smegmatis)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ディエジア・マリス(Dietzia maris)、およびスカム原因菌(Gordonia amarae);グラム陰性細菌、例えば、アシネトバクター・カルコアセティクス(Acinetobacter calcoaceticus)、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwoffi)、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp)H01−N、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)211、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);ならびにシアノバクテリア(Cyanobacteria)、例えば、トリコデスミウム・エリスラエウム(Trichodesmium erythraeum)およびイシクラゲ(Nostoc commune)の群から選択することができる。
【0052】
好適な酵母および真菌は、クリプトコッカス・カルバタス(Cryptococcus curvatus)、リポミセス・スタルケイイ(Lipomyces starkeyi)、ロドスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ピキア・シフェリイ(Pichia ciferii)、ロドトルラ・グラミニス(Rhodotorula graminis)、エントモルフトラ・コロナータ(Entomophtora coronata)、クンニングアメラ・ジャポニカ(Cunninghamella japonica)、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)、ムコール・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、ピシウム・ウルティマム(Pythium ultimum)、クリプテコディニウム・コーニー(Crypthecodinium cohnii)、シゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)、およびトラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)の群から選ぶことができる(好適な酵母および真菌については、Ratledge C,Wynn JP.The Biochemistry and molecular biology of lipid accumulation in oleaginous microorganisms,Advances in applied microbiology(2002)51:1−51を参照されたく、さらに、Qiang Hu,Milton Sommerfeld,Eric Jarvis,Maria Ghirardi,Matthew Posewitz,Michael Seibert and Al Darzins.Microalgal triacylglycerols as feedstocks for biofuel production:perspectives and advances,The Plant Journal(2008)54,621−639;およびH.M.Alvarez,A.Steinbuechel.Triacylglycerols in prokaryotic microorganisms,Appl Microbiol Biotechnol(2002)60:367−376も参照されたい。これらの文献は、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0053】
カルボン酸のエステルまたはチオエステル、例えば、ピメレートエステルまたはピメレートチオエステル、アジペートエステルまたはチオエステル、チオエステルのアセテートエステル、スクシネートエステルまたはチオエステルに言及するとき、これらの用語は、任意の活性化基、特に、任意の生物学的活性化基を含むことが意図され、それには、補酵素A(CoAとも呼ばれる)、ホスホ−パンテテイン(これは、アシルまたはペプチジル担体タンパク質(それぞれ、ACPまたはPCP)に結合し得る)、N−アセチル−システアミン、メチル−チオ−グリコレート、メチル−メルカプト−プロピオネート、エチル−メルカプト−プロピオネート、メチル−メルカプト−ブチレート、メチル−メルカプト−ブチレート、メルカプトプロピオネートおよび同一または同様の機能を与える他のエステルまたはチオエステルが含まれる。生きた細胞を生体触媒として使用する場合、エステルまたはチオエステル、特に、CoAは、使用された生体触媒によって産生されるか、または反応を触媒するための好適な酵素を産生することもできる生物に由来してもよい。CoA−リガーゼおよびCoA−トランスフェラーゼは多くの生物で同定されており、所望の活性化エステルまたはチオエステルを提供し得る。
【0054】
一実施形態では、宿主細胞は、動物、特に、その一部、例えば、肝臓、膵臓、脳、腎臓、心臓または他の器官に由来する異種核酸配列を含む。動物は、特に、哺乳動物の群から選択してもよく、より具体的には、ウサギ科(Leporidae)、ネズミ科(Muridae)、イノシシ科(Suidae)、ウシ科(Bovidae)、およびヒト科(Hominidae)の群から選択してもよい。ヒト科(Hominidae)に由来する配列は、特に、ヒト亜科(Homininae)の群から選択される哺乳動物、より具体的には、ヒト(Homo sapiens)から選択してもよい。特に、ヒト(Homo sapiens)に由来する配列を用いる場合、それをヒトの体から単離して用いる。
【0055】
一実施形態では、宿主細胞は、植物に由来する異種核酸配列を含む。好適な植物としては、特に、チャセンシダ属(Asplenium);ウリ科(Cucurbitaceae)、特に、カボチャ属(Curcurbita)、例えば、カボチャ(Curcurbita moschata(カボチャ(squash)))、またはキュウリ属(Cucumis);アブラナ科(Brassicaceae)、特に、アラビドプシス属(Arabidopsis)、例えば、シロイヌナズナ(A.thaliana);メルクリアリス属(Mercurialis)、例えば、メルクリアリス・ペレンニス(Mercurialis perennis);ヒドノカルプス属(Hydnocarpus);およびセラトニア属(Ceratonia)の群から選択される植物が挙げられる。
【0056】
一実施形態では、宿主細胞は、細菌に由来する異種核酸配列を含む。好適な細菌は、特に、ビブリオ属(Vibrio)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、アナベナ属(Anabaena)、ミクロシスティス属(Microcystis)、シネコシスティス属(Synechocystis)、根粒菌属(Rhizobium)、ブラッディリゾビウム属(Bradyrhizobium)、サーマス属(Thermus)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ザイモモナス属(Zymomonas)、プロテウス属(Proteus)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、アゾトバクター属(Azotobacter)、Ralstonia、ロドバクター属(Rhodobacter)、パラコッカス属(Paracoccus)、ノボスフィンゴビウム属(Novosphingobium)、ニトロソモナス属(Nitrosomonas)、レジオネラ属(Legionella)、ナイセリア属(Neisseria)、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、デイノコッカス属(Deinococcus)、アエロコッカス属(Aerococcus)およびサルモネラ属(Salmonella)の群の中から選択することができる。
【0057】
一実施形態では、宿主細胞は、真菌に由来する異種核酸配列を含む。好適な真菌は、特に、クモノスカビ属(Rhizopus)、ファネロケーテ属(Phanerochaete)、エメリセラ属(Emericella)、黒穂菌属(Ustilago)、アカパンカビ属(Neurospora)、アオカビ属(Penicillium)、セファロスポリウム属(Cephalosporium)、ペシロミセス属(Paecilomyces)、白癬菌属(Trichophytum)およびアスペルギルス属(Aspergillus)の群の中から選択することができる。
【0058】
一実施形態では、宿主細胞は、酵母に由来する異種核酸配列を含む。好適な酵母は、特に、カンジダ属(Candida)、ハンセヌラ属(Hansenula)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ヤロウィア属(Yarrowia)およびサッカロミセス属(Saccharomyces)の群の中から選択することができる。
【0059】
天然の生体触媒部分(例えば、酵素)を発現する生体触媒(野生型)または本発明による方法で好適な活性を有する天然の生体触媒部分の突然変異体を利用することができることが当業者には明白であろう。天然の生体触媒部分の特性は、当業者に公知の生物学的技術によって、例えば、分子進化または合理的設計によって改善し得る。野生型生体触媒部分の突然変異体は、例えば、当業者に公知の突然変異誘発技術を用いて、生体触媒部分(例えば、酵素)を産生することができる生物のコードDNAを改変することによって作製することができる。これらには、ランダムな突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、定向進化、および遺伝子組換えが含まれる。特に、野生型酵素と少なくともアミノ酸1つだけ異なる酵素をコードし、その結果、野生型と比較して1つ以上のアミノ酸置換、欠失および/もしくは挿入を含む酵素をコードするように、または突然変異体が2つ以上の親酵素の配列を組み合わせるように、またはこのように改変されたDNAの発現を好適な(宿主)細胞で行うことによって、DNAを改変し得る。後者は、例えば、国際公開第2008/000632号パンフレットに記載されているような方法に基づくコドン最適化またはコドン対最適化などの当業者に公知の方法によって達成し得る。
【0060】
突然変異体生体触媒は、例えば、以下の側面:基質に対する選択性、活性、安定性、溶媒耐性、pHプロファイル、温度プロファイル、基質プロファイル、阻害に対する感受性、補因子の利用および基質親和性のうちの1つまたは複数に関して改善された特性を有し得る。改善された特性を有する突然変異体は、例えば、当業者に公知の方法に基づく好適なハイスループットスクリーニング法または選択法を適用することによって同定することができる。
【0061】
本発明の方法によって、AKPは2−ヒドロキシヘプタン二酸から調製される。2−ヒドロキシヘプタン二酸は、原則として、任意の方法で得てもよい。例えば、2−ヒドロキシヘプタン二酸は、2−オキソヘプタン二酸またはヘプタン二酸から調製してもよい。
【0062】
特定の実施形態では、2−ヒドロキシヘプタン二酸は、2−ヒドロキシヘプタン二酸のジエステルの加水分解によって調製される。このエステルは、例えば、以下の反応に従って調製することができる。
【化1】



【0063】
特定の実施形態では、2−ヒドロキシヘプタン二酸は、生体触媒的に得ることができる。より具体的には、2−ヒドロキシヘプタン二酸は、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する生体触媒を用いて、ヘプタン二酸から調製することができる。前記生体触媒は、一般に、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する酵素を含む。
【0064】
一実施形態では、この酸化を触媒する酵素は、(Oを酸化体として)対供与体に作用し、酸素を取り込むかまたは還元するオキシドレダクターゼ(EC 1.14)である。
【0065】
特に、そのような酵素は、EC 1.14.11(2−オキソグルタレートを一方の供与体とし、一方の酸素原子を他方の供与体または各々の供与体に取り込む)に分類可能な酵素、より具体的には、EC 1.14.11.1(γ−ブチロベタインジオキシゲナーゼ)、EC 1.14.12(NADHもしくはNADPHを一方の供与体とし、2つの酸素原子を他方の供与体に取り込む)、EC 1.14.13(NADHもしくはNADPHを一方の供与体とし、一方酸素原子を他方の供与体に取り込む)、EC 1.14.14(還元型のフラビンまたはフラボタンパク質を一方の供与体とし、1つの酸素原子を他方の供与体に取り込む)またはEC 1.14.15(還元型の鉄−硫黄タンパク質を一方の供与体とし、1つの酸素原子を他方供与体に取り込む)に分類可能な酵素の群から選択することができる。
【0066】
EC 1.14.13に分類可能な酵素を、特に、ヒドロキシフェニルアセトニトリル−2−モノオキシゲナーゼ(EC 1.14.13.42)の群から選択してもよい。
【0067】
さらなる実施形態では、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する酵素は、CHまたはCH2基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.17)である。細胞内のまたは本発明に従って用いられるEC 1.17の酵素は、特に、EC 1.17.1(NAD+またはNADP+を受容体とする)、EC 1.17.3(酸素を受容体とする)、EC 1.17.4(ジスルフィドを受容体とする)、EC 1.17.5(キノンまたは同様の化合物を受容体とする)、EC 1.17.7(鉄−硫黄タンパク質を受容体とする)、およびEC 1.17.99(その他の受容体)の群から選択してもよい。
【0068】
さらなる実施形態では、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する酵素は、ピメリン酸ヒドロキシラーゼ活性を有するヒドロキシラーゼである。
【0069】
さらなる実施形態では、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する酵素は、ピメリン酸−2−モノオキシゲナーゼ活性を有するヒドロキシラーゼである。
【0070】
特定の酵素に応じて、当業者は、好適な供与体/受容体系、好適な補因子などを選択することができる。
【0071】
ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する酵素は、原則として、そのような酵素をコードする核酸配列を有する任意の生物から選択することができる。特に、酵素は、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、エシェリキア属(Escherichia)(例えば、EC 1.1.3.3−大腸菌(Escherichia coli)由来のリンゴ酸オキシダーゼまたは本明細書中の以下の配列表で言及される大腸菌(E.coli)由来の酵素活性)、バチルス属(Bacillus)、ピキア属(Pichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ビブリオ属(Vibrio)、ザイモナス属(Zymonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)、クマネズミ属(Rattus)(例えば、ラット腎臓由来のEC 1.1.1.98:(R)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼまたはEC 1.1.1.99:(S)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ)、霊長類(例えば、EC 1.1.1.172:ヒト胎盤由来の2−オキソアジピン酸レダクターゼ)、サッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、EC 1.1.99.6:D−2−ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼまたは本明細書中の以下の配列表で言及されるサッカロミセス属(Saccharomyces)由来の酵素活性)、ミクロコッカス属(Micrococcus)(例えば、EC 1.1.3.3−単球菌(Micrococcus lysodeikticus)由来のリンゴ酸オキシダーゼ)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、カエノラブディティス属(Caenorhabditis)、ドロソフィラ属(Drosophila)、ウサギ科(Leporidae)(例えば、EC 1.1.99.6:ウサギ腎臓由来のD−2−ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ)の群から選択される生物に由来し得る。
【0072】
特定の実施形態では、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への酸化を触媒する酵素は、配列番号:191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210に示されるようなアミノ酸配列またはこれらの配列のいずれかのホモログを含む酵素の群から選択される。
【0073】
ヘプタン二酸は、任意の方法で得ることができ、例えば、ヘプタン二酸は、Sigma−Aldrichから購入することができるか、シクロヘキサノンから化学的に調製することができるか(Organic Syntheses,Coll.第2巻,p.531;第11巻,p42(1931)、またはピメレートを合成することができる生物から得ることができる。そのような生物は、例えば、ビオチンへのピメロイル−CoA経路を介してビオチンを産生することができる生物、例えば、大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis)またはB.スファエリクス(B.sphaericus)またはピメレートを合成することができる本明細書に言及した他の生物から得ることができる。未修飾タンパク質または遺伝子産物は、バチルス・センス・ラト(Bacillus sensu lato)群、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ブレビバチルス属(Brevibacillus)などの属から(Zeigler and Perkins,2008,Practical Handbook of Microbiology,第2版(E.Goldman and L.Green編),pp 301−329,CRC Press,Boca Raton,FLの表1を参照されたい)、さらにはコリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococci)、ストレプトミセス属(Streptomyces)(ストレプトミセス・リディクス(Streptomyces lydicus)、ストレプトミセス・ラベンジュレ(Streptomyces lavendulae)、およびシュードモナス属(Pseudomonas)などの属から得ることができる。より好ましくは、未修飾タンパク質は、バチルス・センス・ストリクト(Bacillus sensu stricto)群、特に、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・レンティモルブス(Bacillus lentimorbus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・パントテンティクス(Bacillus pantothenticus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)(Zeigler and Perkins,2008,同書)によって代表されるバチルス属(Bacillus)種から選択され得る。最も好ましくは、未修飾タンパク質は、枯草菌(Bacillus subtilis)168およびその株派生物から選択される。
【0074】
有利な実施形態では、本発明による(使用されている)生体触媒は、例えば、炭素源の発酵によって、ピメレートに変換することができる好適な炭素源からピメレートを調製するための酵素系を含む。有利な方法では、ピメレートは、炭素源の全細胞生体内変換を利用してピメレートを形成させて調製される。ピメレートは、酸化的切断を介して長鎖脂肪酸から形成されることが知られている。したがって、そのような脂肪酸は、例えば、本発明の方法で、植物油、脂肪酸エステル(バイオディーゼル)などを生体触媒(特に、宿主細胞の場合)に供給することによって、炭素源として提供し得る。例えば、そのような系を天然に含む宿主細胞、例えば、大腸菌(E.coli)もしくはバチルス・スファエリクス(B.sphaericus)、を選択してもよく、または宿主細胞を遺伝子改変によって得てもよい。例えば、宿主細胞に(大腸菌(E.coli)由来の)bioCおよびbioHから選択される少なくとも1つの遺伝子またはbioI、bioW、bioXおよびbioHから選択される少なくとも1つの遺伝子を提供し得る(W.R.Streit,P.Entcheva.Biotin in microbes,the genes involved in its biosynthesis,its biochemical role and perspectives for biotechnological production.Appl Microbiol Biotechnol(2003)61:21−31も参照されたい)。
【0075】
炭素源は、特に、一価アルコール、多価アルコール、カルボン酸、二酸化炭素、脂肪酸、グリセリド、トリアシルグリセリドおよびジアシルグリセリドの群から選択される少なくとも1つの化合物を、前記化合物のいずれかを含む混合物を含めて、含有し得る。好適な一価アルコールとしては、メタノールおよびエタノールが挙げられる、好適なポリオールとしては、グリセロールおよび炭水化物が挙げられる。好適な脂肪酸またはグリセリドは特に、好ましくは植物起源の食用油の形態で提供することができる。
【0076】
特に、炭水化物を用いることができるが、それは一般に、炭水化物を生物学的に再生可能な供給源、例えば、農産物、好ましくは農業廃棄物から大量に得ることができるからである。グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、サッカロース、デンプン、セルロースおよびヘミセルロースの群から選択される炭水化物を用いることが好ましい。グルコース、グルコースを含むオリゴ糖およびグルコースを含む多糖ならびに前記オリゴ糖または前記多糖の加水分解物が特に好ましい。
【0077】
本発明の方法に従って、2−ヒドロキシヘプタン二酸は、生体触媒的にAKPに変換される。生体触媒は、特に、
− 供与体のCH−OH基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.1)、特に、例えば、EC 1.1.1(NAD+またはNADP+を受容体とする)、EC 1.1.2(チトクロムを受容体とする)、EC 1.1.3(酸素を受容体とする)、EC 1.1.4(ジスルフィドを受容体とする)、EC 1.1.5(キノンまたは同様の化合物を受容体とする)、EC 1.1.7(鉄硫黄タンパク質を受容体とする)、およびEC 1.1.99(その他の受容体)の群から選択されるオキシドレダクターゼ;
− 供与体のアルデヒドまたはオキソ基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.2);
− 2−ヒドロキシピメリン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素、2−ヒドロキシピメリン酸オキシダーゼ活性を有する酵素;
− EC 1.97に分類されるオキシドレダクターゼ;ならびに
− EC 1.98に分類されるオキシドレダクターゼの群から選択される、ヒドロキシヘプタン二酸からAKPへの変換を触媒するための酵素を含み得る。
【0078】
ヒドロキシヘプタン二酸からAKPへの変換を触媒するEC 1.1.1に分類可能なオキシドレダクターゼは、特に、NAD+を受容体とするEC 1.1.1.1のアルコールデヒドロゲナーゼ;NADP+を受容体とするEC 1.1.1.2のアルコールデヒドロゲナーゼ;EC 1.1.1.26のグリオキシル酸レダクターゼ、EC 1.1.1.27のL−乳酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.28のD−乳酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.29のグリセリン酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.30の3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.31の3−ヒドロキシイソ酪酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.37のリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.59の3−ヒドロキシプロピオン酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.60の2−ヒドロキシ−3−オキソプロピオン酸レダクターゼ、EC 1.1.1.71のアルコールデヒドロゲナーゼ[NAD(P)+]、EC 1.1.1.79のグリオキシル酸レダクターゼ[NADP+]、EC 1.1.1.81のヒドロキシピルビン酸レダクターゼ、EC 1.1.1.82のリンゴ酸デヒドロゲナーゼ[NADP+]、EC 1.1.1.85の3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.93の酒石酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.98の(R)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.99の(S)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.167のヒドロキシマロン酸デヒドロゲナーゼ、EC 1.1.1.172の2−オキソアジピン酸レダクターゼ、EC 1.1.1.237のヒドロキシフェニルピルビン酸レダクターゼ、およびEC 1.1.1.259の3−ヒドロキシピメロイル−CoAデヒドロゲナーゼから選択することができる。
【0079】
ヒドロキシヘプタン二酸からAKPへの変換を触媒するEC 1.1.2に分類可能な酵素は、特に、D−乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.2.4およびEC 1.1.2.5)から選択することができる。
【0080】
ヒドロキシヘプタン二酸からAKPへの変換を触媒するEC 1.1.3に分類可能な酵素は、特に、乳酸オキシダーゼおよび他のヒドロキシ酸オキシダーゼ;リンゴ酸オキシダーゼ(EC 1.1.3.3)、(S)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ(EC 1.1.3.15);二級アルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.18);ヒドロキシフィタン酸オキシダーゼ(EC 1.1.3.27)の群から選択することができる。
【0081】
ヒドロキシヘプタン二酸からAKPへの変換を触媒するEC 1.1.99に分類可能な酵素は、特に、2−ヒドロキシグルタル酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.2);D−2−ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.6);グリコール酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.14)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.16)、および2−オキソ−酸レダクターゼ(EC 1.1.99.30)から選択することができる。
【0082】
特に好ましい方法では、AKPの調製を触媒する酵素は、
−酸素を受容体とするオキシドレダクターゼ(EC 1.1.3)、例えば、乳酸オキシダーゼまたは別のヒドロキシ酸オキシダーゼ;例えば、ヒト科(Hominidae)由来、特に、ヒト(Homo sapiens)由来のヒドロキシ酸オキシダーゼHAO1(EC 1.1.3.15)またはアエロコッカス属(Aerococci)由来、特に、アエロコッカス・ビリダンス(Aerococcus viridans)由来の乳酸オキシダーゼ;
− L−乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27);
− D−乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.28);
− リンゴ酸デヒドロゲナーゼ[NAD+](EC 1.1.1.37);
− ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.81);
− リンゴ酸デヒドロゲナーゼ[NADP+](EC 1.1.1.82);
− 3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.85);
− 酒石酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.93);
− (R)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.98);
− (S)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.99);
− 2−オキソアジピン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.172);
− 2−ヒドロキシグルタル酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.2);ならびに
− D−2−ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.6)
の群から選択される。
【0083】
AKPの調製を触媒する酵素は、2−オキソアジピン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.172)の群から選択されることが最も好ましい。
【0084】
特に好ましい方法では、酵素は、配列番号:186、配列番号:189によるアミノ酸配列、またはこれらの配列のいずれかのホモログを含む。AKPの調製を触媒する酵素をコードする好適な核酸は、特に、配列番号:185、配列番号:187、配列番号:188、配列番号:190およびそれらの機能的類似体によって表される核酸配列を含み得る。
【0085】
特定の実施形態では、本発明によって調製されるAKPは、6−ACAの調製に用いられる。本発明者らは、第1のAKPを脱カルボキシル化して、5−FVAを形成させ、その後、アミノ基転移反応を用いて5−FVAから6−ACAを調製することができる方法または第1のAKPをアミノ基転移反応にかけて、AAPを形成させ、その後、脱カルボキシル化反応によってAAPから6−ACAを調製することができる方法によって、AKPを6−ACAに変換することができることに気づいた。
【0086】
6−ACAを調製するための好ましい方法では、調製は、α−ケト酸またはアミノ酸(すなわち、少なくとも1つのカルボン酸基と少なくとも1つのアミノ基を含む化合物)の脱カルボキシル化を触媒することができる生体触媒の存在下での生体触媒反応を含む。したがって、そのような触媒活性を有する酵素は、それぞれ、α−ケト酸デカルボキシラーゼ、アミノ酸デカルボキシラーゼと呼ぶことができる。
【0087】
前記酸は、二酸であることが好ましく、その場合、前記生体触媒は、ケト基またはアミノ基に隣接する酸基に対して選択的である。
【0088】
一般に、好適なデカルボキシラーゼは、AKPから5−FVAへの変換を触媒することができるα−ケトピメリン酸デカルボキシラーゼ活性またはAAPから6−ACAへの変換を触媒することができるα−アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性を有する。
【0089】
α−ケト酸またはアミノ酸を脱カルボキシル化することができる酵素は、特に、デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1)の群から、好ましくは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.15)、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.20)、アスパラギン酸1−デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.11)、分岐鎖α−ケト酸デカルボキシラーゼ、α−ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ、α−ケトグルタル酸デカルボキシラーゼ、およびピルビン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.1)の群から選択することができる。
【0090】
1つ以上の他の好適なデカルボキシラーゼは、特に、シュウ酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.2)、オキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.3)、アセト酢酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.4)、バリンデカルボキシラーゼ/ロイシンデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.14)、3−ヒドロキシグルタミン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.16)、オルニチンデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.17)、リジンデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.18)、アルギニンデカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.19)、2−オキソグルタル酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.71)、およびジアミノ酪酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.86)の群の中から選択することができる。
【0091】
デカルボキシラーゼは、特に、カボチャ;キュウリ;酵母;真菌、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・フラレリ(Candida flareri)、ハンセヌラ属の種(Hansenula sp.)、クルイベロミセス・マルキアヌス(Kluyveromyces marxianus)、リゾープス・ジャバニクス(Rhizopus javanicus)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、より具体的には、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)由来のピルビン酸デカルボキシラーゼ突然変異体I472A、およびアカパンカビ(Neurospora crassa);哺乳動物(特に、哺乳動物の脳由来のもの);ならびに細菌の群から選択される生物のデカルボキシラーゼであることができる。例えば、大腸菌(Eschericia coli)(大腸菌(E.coli))由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、α−ケト−イソ吉草酸デカルボキシラーゼおよび分岐鎖α−ケト酸デカルボキシラーゼを用いることができるか、またはアカパンカビ(Neurospora crassa)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、乳酸短杆菌(Lactobacillus brevis)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)またはラクトコッカス属(Lactococcus)由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼを用いることができる。グルタミン酸デカルボキシラーゼが由来し得るラクトコッカス属(Lactococcous)の種の例としては、特に、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、例えば、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)株B1157、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)IFPL730、より具体的には、ラクトコッカス・ラクチス変種マルチゲネス(Lactococcus lactis var.maltigenes)(旧名、ストレプトコッカス・ラクチス変種マルチゲネス(Streptococcus lactis var.maltigenes)が挙げられる。シュードモナス属(Pseudomonas)由来のオキサロ酢酸デカルボキシラーゼを特に用いることができる。
【0092】
使用し得るデカルボキシラーゼおよびそのようなデカルボキシラーゼをコードする遺伝子の具体例は、配列番号:105〜122に示されている。
【0093】
本発明の好ましい方法では、6−ACAの調製は、アミノトランスフェラーゼ(E.C.2.6.1)の群から選択される、アミノ供与体の存在下でアミノ基転移反応を触媒することができる酵素の存在下での酵素反応を含む。
【0094】
一般に、好適なアミノトランスフェラーゼは、5−FVAから6−ACAへの変換を触媒することができる6−アミノカプロン酸6−アミノトランスフェラーゼ活性またはAKPからAAPへの変換を触媒することができるα−アミノピメリン酸2−アミノトランスフェラーゼ活性を有する。
【0095】
アミノトランスフェラーゼは、特に、β−アミノイソ酪酸:α−ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼ、β−アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、4−アミノ−酪酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.19)、L−リジン6−アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.36)、2−アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.39)、5−アミノ吉草酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.48)、2−アミノヘキサン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.67)およびリジン:ピルビン酸6−アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.71)の群の中から選択することができる。
【0096】
一実施形態では、アミノトランスフェラーゼは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.2)、ロイシンアミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.6)、アラニン−オキソ酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.12)、β−アラニン−ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.18)、(S)−3−アミノ−2−メチルプロピオン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.22)、L,L−ジアミノピメリン酸アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.83)の群の中から選択することができる。
【0097】
アミノトランスフェラーゼは、特に、ビブリオ属(Vibrio)、特に、ビブリオ・フルビアーリス(Vibrio fluvialis);シュードモナス属(Pseudomonas)、特に、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa);バチルス属(Bacillus)、特に、バチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis);メルクリアリス属(Mercurialis)、特に、メルクリアリス・ペレンニス(Mercurialis perennis)、より具体的には、メルクリアリス・ペレンニス(Mercurialis perennis)のシュート;チャセンシダ属(Asplenium)、より具体的には、ホウビシダ(Asplenium unilaterale)もしくはアスプレニウム・セプテントリオナーレ(Asplenium septentrionale);セラトニア属(Ceratonia)、より具体的には、イナゴマメ(Ceratonia siliqua);哺乳動物;または酵母、特に、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のアミノトランスフェラーゼの中から選択することができる。酵素が哺乳動物起源である場合、それは特に、哺乳動物の腎臓、哺乳動物の肝臓、哺乳動物の心臓または哺乳動物の脳由来のものであってもよい。例えば、好適な酵素は、哺乳動物の腎臓由来のβ−アミノイソ酪酸:α−ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼ、特に、イノシシの腎臓由来のβ−アミノイソ酪酸:α−ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼ;哺乳動物の肝臓由来のβ−アラニンアミノトランスフェラーゼ、特に、ウサギの肝臓由来のβ−アラニンアミノトランスフェラーゼ;哺乳動物の心臓由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;特に、ブタの心臓由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;哺乳動物の肝臓由来の4−アミノ−酪酸アミノトランスフェラーゼ、特に、ブタの肝臓由来の4−アミノ−酪酸アミノトランスフェラーゼ;哺乳動物の脳由来の4−アミノ−酪酸アミノトランスフェラーゼ、特に、ヒト、ブタ、またはラットの脳由来の4−アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼの群の中から選択することができる。
【0098】
一実施形態では、アミノトランスフェラーゼは、アカパンカビ属(Neurospora)由来のα−ケトアジピン酸−グルタミン酸アミノトランスフェラーゼ、特に、アカパンカビ(Neurospora crassa)由来のα−ケトアジピン酸:グルタミン酸アミノトランスフェラーゼ;大腸菌(E.coli)由来の4−アミノ−酪酸アミノトランスフェラーゼ、またはサーマス属(Thermus)由来のα−アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼ、特に、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来のα−アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼ、およびクロストリジウム属(Clostridium)、特に、クロストリジウム・アミノワレリクム(Clostridium aminovalericum)由来の5−アミノ吉草酸アミノトランスフェラーゼの群から選択することができる。好適な2−アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼは、例えば、ピロバクルム・イスランディクム(Pyrobaculum islandicum)により提供してもよい。
【0099】
特定の実施形態では、配列番号:2、83、86、90、92、94、96、98、100、102、104によるアミノ酸配列、またはこの配列のホモログを含むアミノトランスフェラーゼを用いる。そのようなアミノトランスフェラーゼをコードする好適な核酸配列としては、配列番号:1、82、84、85、89、91、93、95、97、99、101、および103の配列が挙げられる。さらに、配列番号:3は、配列番号:2によるアミノ酸配列のコドン最適化核酸配列を表す。
【0100】
特に、アミノ供与体は、アンモニア、アンモニウムイオン、アミンまたはアミノ酸であることができる。好適なアミンは、一級アミンおよび二級アミンである。
【0101】
アミノ酸は、D−またはL−立体配置を有してもよい。アミノ供与体の例は、アラニン、グルタメート、イソプロピルアミン、2−アミノブタン、2−アミノヘプタン、フェニルメタンアミン、1−フェニル−1−アミノエタン、グルタミン、チロシン、フェニルアラニン、アスパルテート、β−アミノイソブチレート、β−アラニン、4−アミノブチレート、およびα−アミノアジペートである。
【0102】
さらに好ましい実施形態では、6−ACAを調製するための方法は、供与体のCH−NH基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.4)の群から、特に、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1)の群から選択される、アンモニア源の存在下で還元アミノ化反応を触媒することができる酵素の存在下での生体触媒反応を含む。一般に、好適なアミノ酸デヒドロゲナーゼは、5−FVAから6−ACAへの変換を触媒する6−アミノカプロン酸6−デヒドロゲナーゼ活性を有するかまたはAKPからAAPへの変換を触媒するα−アミノピメリン酸2−デヒドロゲナーゼ活性を有する。特に、好適なアミノ酸デヒドロゲナーゼは、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.16)、リジン6−デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.18)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3;EC 1.4.1.4)、およびロイシンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.9)の群の中から選択される。
【0103】
一実施形態では、アミノ酸デヒドロゲナーゼは、NADまたはNADPを受容体として作用するグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3)、NADPを受容体として作用するグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.9)、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.16)、およびリジン6−デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.18)に分類されるアミノ酸デヒドロゲナーゼの中から選択することができる。
【0104】
アミノ酸デヒドロゲナーゼは、特に、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、特に、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum);プロテウス属(Proteus)、特に、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris);アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、特に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens);ゲオバチルス属(Geobacillus)、特に、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus);アシネトバクター属(Acinetobacter)、特に、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)ADP1;ラルストニア属(Ralstonia)、特に、青枯病菌(Ralstonia solanacearum);サルモネラ属(Salmonella)、特に、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);サッカロミセス属(Saccharomyces)、特に、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae);ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、特に、ブレビバクテリウム・フラブム(Brevibacterium flavum);およびバチルス属(Bacillus)、特に、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、セレウス菌(Bacillus cereus)または枯草菌(Bacillus subtilis)の群から選択される生物に由来してもよい。例えば、好適なアミノ酸デヒドロゲナーゼは、バチルス属(Bacillus)、特に、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ;ブレビバクテリウム属の種(Brevibacterium sp.)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ;コリネバクテリウム属(Corynebacterium)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、特に、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ;プロテウス属(Proteus)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、特に、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ;アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、特に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のリジン6−デヒドロゲナーゼ、ゲオバチルス属(Geobacillus)、特に、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のリジン6−デヒドロゲナーゼ;NADHまたはNADPHを補因子として作用する、アシネトバクター属(Acinetobacter)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3)、特に、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)ADP1由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ;ラルストニア属(Ralstonia)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3)、特に、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ;NADPHを補因子として作用する、サルモネラ属(Salmonella)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4)、特に、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ;サッカロミセス属(Saccharomyces)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4)、特に、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ;ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4)、特に、ブレビバクテリウム・フラブム(Brevibacterium flavum)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ;およびバチルス属(Bacillus)由来のロイシンデヒドロゲナーゼ、特に、セレウス菌(Bacillus cereus)または枯草菌(Bacillus subtilis)由来のロイシンデヒドロゲナーゼの中から選択することができる。
【0105】
特定の実施形態では、AKPは、デカルボキシラーゼまたは変換を触媒する他の生体触媒の存在下で、生体触媒的に5−ホルミルペンタノエート(5−FVA)に変換される。本発明に従って用いられるデカルボキシラーゼは、特に、大腸菌(E.coli)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクチス変種マルチゲネス(Lactococcus lactis var.maltigenes)またはラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)由来のα−ケト酸デカルボキシラーゼ;大腸菌(E.coli)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)株B1157またはラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)IFPL730由来の分岐鎖α−ケト酸デカルボキシラーゼ;出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・フラレリ(Candida flareri)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、ハンセヌラ属の種(Hansenula sp.)、リゾープス・ジャワニクス(Rhizopus javanicus)、アカパンカビ(Neurospora crassa)、またはクルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)由来のピルビン酸デカルボキシラーゼ;ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のα−ケトグルタレートデカルボキシラーゼ;大腸菌(E.coli)、乳酸短杆菌(Lactobacillus brevis)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、アカパンカビ(Neurospora crassa)またはウェルシュ菌(Clostridium perfringens)由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼ;および大腸菌(E.coli)由来のアスパラギン酸デカルボキシラーゼの群から選択することができる。
【0106】
その後、5−FVAは6−ACAに変換し得る。これは、化学的に行なうことができる:6−ACAは、欧州特許出願公開第A−628535号明細書または独国特許第4322065号明細書において、9−アミノノナン酸(9−アミノペラルゴン酸)および12−アミノドデカン酸(12−アミノラウリン酸)について記載されているように、水素化触媒、例えば、SiO/Al支持体表面のNiの上でアンモニアを用いる5−FVAの還元アミノ化によって高収率で調製することができる。
【0107】
あるいは、6−ACAは、5−FVAとヒドロキシルアミンの反応によって調製される6−オキシモカプロン酸のPtO上での水素化によって得ることができる(例えば、同族の12−アミノドデカン酸の合成に関する、F.O.Ayorinde,E.Y.Nana,P.D.Nicely,A.S.Woods,E.O.Price,CP.Nwaonicha J.Am.Oil Chem.Soc.1997,74,531−538を参照されたい)。
【0108】
一実施形態では、5−FVAから6−ACAへの変換は、(i)アミノ供与体および(ii)アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼまたはそのような変換を触媒することができる別の生体触媒の存在下で生体触媒的に行なってもよい。特に、そのような実施形態では、アミノトランスフェラーゼは、ビブリオ・フルビアーリス(Vibrio fluvialis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)またはバチルス・ウェイヘンステファネンシス(Bacillus weihenstephanensis)由来のアミノトランスフェラーゼ;イノシシの腎臓由来のβ−アミノイソ酪酸:αλπηα−ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼ;ウサギの肝臓由来のβ−アラニンアミノトランスフェラーゼ;メルクリアリス・ペレンニス(Mercurialis perennis)のシュート由来のアミノトランスフェラーゼ;ブタの肝臓由来またはヒト、ラット、もしくはブタの脳由来の4−アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ;ウサギの肝臓由来のβ−アラニンアミノトランスフェラーゼ;およびL−リジン:α−ケトグルタレート−ε−アミノトランスフェラーゼの群から選択することができる。アミノ酸デヒドロゲナーゼを用いる場合、そのようなアミノ酸デヒドロゲナーゼは、特に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のリジン6−デヒドロゲナーゼの群から選択することができる。別の好適なアミノ酸デヒドロゲナーゼは、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ブレビバクテリウム属の種(Brevibacterium sp.)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、もしくはプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)由来のジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼの群から;NADHもしくはNADPHを補因子として作用する、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)ADP1もしくは青枯病菌(Ralstonia solanacearum)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3)の群から;NADPHを補因子として作用する、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4)の群から;出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)もしくはブレビバクテリウム・フラブム(Brevibacterium flavum)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4)の群から;またはセレウス菌(Bacillus cereus)もしくは枯草菌(Bacillus subtilis)由来のロイシンデヒドロゲナーゼの群から選択することができる。
【0109】
特定の実施形態では、AKPは化学的に5−FVAに変換される。2−ケトカルボン酸から対応するアルデヒドへの効率的な化学的脱カルボキシル化は、例えば、Tetrahedron Lett.1982,23(4),459−462に記載されているような方法に基づく、共沸による水除去およびCOの同時消失下での、二級アミン、例えば、モルホリンを用いた中間体エナミン形成によって行なうことができる。中間体の末端エナミドは、次に、対応するアルデヒドに加水分解される。5−FVAは、その後、アミノトランスフェラーゼの存在下でのアミノ基転移によるか、またはアミノ酸デヒドロゲナーゼもしくはそのような変換を触媒することができる別の生体触媒による酵素的還元アミノ化によって、生体触媒的に6−ACAに変換することができる。そのようなアミノトランスフェラーゼまたはアミノ酸デヒドロゲナーゼは、特に、5−FVAから6−ACAへの変換を説明するときに上で述べた生体触媒から選択することができる。
【0110】
あるいは、5−FVAから6−ACAへの変換は、例えば、上で述べたような化学的方法によって行なうことができる。
【0111】
特定の実施形態では、AKPは、(i)アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、またはそのような変換を触媒することができる別の生体触媒および(ii)アミノ供与体の存在下で生体触媒的にAAPに変換される。AKPからAAPへの変換のために本発明に従って用いられるアミノトランスフェラーゼは、特に、ブタの心臓由来のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;アカパンカビ(Neurospora crassa)または酵母由来のα−ケトアジピン酸:グルタミン酸アミノトランスフェラーゼ;メルクリアリス・ペレンニス(Mercurialis perennis)のシュート由来のアミノトランスフェラーゼ;大腸菌(E.coli)由来の4−アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ;サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来のα−アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼ;アスプレニウム・セプテントリオナール(Asplenium septentrionale)またはホウビシダ(Asplenium unilateral)由来のアミノトランスフェラーゼ;およびイナゴマメ(Ceratonia siliqua)由来のアミノトランスフェラーゼの群から選択することができる。
【0112】
好適なアミノ酸デヒドロゲナーゼは、特に、NADHまたはNADPHを補因子として作用する、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)ADP1または青枯病菌(Ralstonia solanacearum)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3);NADPHを補因子として作用する、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、またはブレビバクテリウム・フラブム(Brevibacterium flavum)由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.4);バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、ブレビバクテリウム属の種(Brevibacterium sp.)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、またはプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)由来のアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼの群の中から選択することができる。別の好適なアミノ酸デヒドロゲナーゼは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)もしくはゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)由来のリジン6−デヒドロゲナーゼの群から;またはセレウス菌(Bacillus cereus)もしくは枯草菌(Bacillus subtilis)由来のロイシンデヒドロゲナーゼの群から選択することができる。
【0113】
その後、AAPは、脱カルボキシル化によって化学的に6−ACAに変換し得る。これは、ケトンまたはアルデヒド触媒の存在下、高沸騰溶媒中で加熱することによって行うことができる。例えば、アミノ酸は、Chem.Lett.1986,893−896の中で、M.Hashimoto,Y.Eda,Y.Osanai,T.Iwai and S.Aokiによって記載されているように、1〜2v/v%のシクロヘキセノンを含む150〜160℃のシクロヘキサノールにて高収率で脱カルボキシル化される。同様の方法は、Daiso著、Eur.Pat.Appl.1586553,2005に、およびS.D.Brandt,D.Mansell,S.Freeman,I.A.Fleet,J.F.Alder著、J.Pharm.Biomed.Anal.2006,41,872−882に記載されている。
【0114】
あるいは、AAPから6−ACAへの脱カルボキシル化は、デカルボキシラーゼまたはそのような脱カルボキシル化を触媒することができる他の生体触媒の存在下で生体触媒的に行なってもよい。デカルボキシラーゼは、α−アミノ酸の脱カルボキシル化を触媒することができるデカルボキシラーゼの中から選択することができる。特に、デカルボキシラーゼは、カボチャ(Curcurbita moschata)、キュウリ、酵母、またはウシの脳由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼ;およびジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.20)の群から選択することができる。ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼは、例えば、ジアミノピメレートからリジンを合成することができる生物由来のものであってもよい。そのような生物は、特に、細菌、古細菌および植物の中に見出すことができる。特に、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼは、グラム陰性細菌、例えば、大腸菌(E.coli)由来のものであってもよい。
【0115】
特定の実施形態では、AKPは化学的にAAPに変換される。AAPは、同様の化合物について記載されているような触媒的ロイカート・ヴァラッハ反応(Leuckart−Wallach reaction)によって、2−オキソピメリン酸から調製することができる。この反応は、メタノール中のギ酸アンモニウムと均質触媒としての[RhCpClとを用いて行なわれる(M.Kitamura,D.Lee,S.Hayashi,S.Tanaka,M.Yoshimura J.Org.Chem.2002,67,8685−8687)。あるいは、ロイカート・ヴァラッハ反応を、S.Ogo,K.Uehara and S.Fukuzumi in J.Am.Chem.Soc.2004,126,3020−3021によって記載されているように[IrIIICp(bpy)HO]SOを触媒として用いて、ギ酸アンモニウム水溶液を用いて行なうことができる。(キラル)ベンジルアミンを用いる反応およびその後のPd/CまたはPd(OH)/C上での中間体イミンの水素化によって、αλπηα−ケト酸から(エナンチオマーが濃縮された)アミノ酸への転換も可能である。例えば、R.G.Hiskey,R.C.Northrop J.Am.Chem.Soc.1961,83,4798を参照されたい。
【0116】
その後、AAPは、デカルボキシラーゼまたはそのような脱カルボキシル化を行なうことができる別の生体触媒の存在下で生体触媒的に6−ACAに変換することができる。そのようなデカルボキシラーゼは、特に、AAPから6−ACAへの変換のための生体触媒を説明するときに上で言及した生体触媒の中から選択してもよい。
【0117】
あるいは、AAPから6−ACAへの変換は、例えば、上で述べたような化学的な方法によって行なってもよい。
【0118】
特定の実施形態では、AKPは、デカルボキシラーゼまたは変換を触媒することができる他の生体触媒の存在下で生体触媒的に5−FVAに変換され、5−FVAは、その後、アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、またはそのような変換を触媒することができる他の生体触媒の存在下で6−ACAに変換される。これらの反応に好適なデカルボキシラーゼは、特に、AKPから5−FVAへの生体触媒変換を説明するときに上で述べたデカルボキシラーゼの群から選択することができる。5−FVAの変換のための好適なアミノトランスフェラーゼまたはアミノ酸デヒドロゲナーゼは、特に、5−FVAから6−ACAへの生体触媒変換を説明するときに上で述べたものから選択してもよい。
【0119】
特定の実施形態では、AKPは、アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、またはそのような変換を触媒することができる他の生体触媒の存在下で生体触媒的にAAPに変換され、AAPは、その後、デカルボキシラーゼの存在下で6−ACAに変換される。これらの反応に好適な酵素は、特に、アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、ならびにそれぞれ、AKPからAAPへの生体触媒変換およびAAPから6−ACAへの生体触媒変換を説明するときに上で記載したデカルボキシラーゼの群から選択することができる。
【0120】
本発明の別の実施形態では、本発明による方法で作製されるAKPから調製される5−FVAは、アルデヒド基の酸化によってアジピン酸に変換される。これは、化学的に(例えば、選択的な化学的酸化によって)または生体触媒的に達成され得る。本発明の好ましい方法では、調製は、アルデヒド基の酸化を触媒することができる生体触媒の存在下での生体触媒反応を含む。生体触媒は、NADまたはNADPを補因子として用いてもよい。
【0121】
アルデヒド基の酸化において触媒活性を有する酵素は、特に、オキシドレダクターゼ(EC 1.2.1)の群から、好ましくはアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.3、EC 1.2.1.4およびEC 1.2.1.5)、マロン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.15)、コハク酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.16およびEC 1.2.1.24);グルタル酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.20)、アミノアジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.31)、アジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.63)の群から選択してもよい。アジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性は、例えば、KEGGデータベース中のカプロラクタム分解経路に記載されている。
【0122】
アルデヒドデヒドロゲナーゼは、原則として、任意の生物から得ることができるか、または任意の生物に由来することができる。生物は、原核生物または真核生物であってもよい。特に、生物は、細菌、古細菌、酵母、真菌、原生生物、植物および動物(ヒトを含む)から選択してもよい。
【0123】
一実施形態では、細菌は、アシネトバクター属(Acinetobacter)(特に、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)およびアシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)NCIMB9871)、アゾスピリルム属(Azospirillum)(特に、アゾスピリルム・ブラシレンセ(Azospirillum brasilense))、ラルストニア属(Ralstonia)、ボルデテラ属(Bordetella)、バークホルデリア属(Burkholderia)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、キサントバクター属(Xanthobacter)、シノリゾビウム属(Sinorhizobium)、根粒菌属(Rhizobium)、ニトロバクター属(Nitrobacter)、ブルセラ属(Brucella)(特に、B.メリテンシス(B.melitensis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)(特に、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens))、バチルス属(Bacillus)、リステリア属(Listeria)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、およびフラボバクテリウム属(Flavobacterium)の群から選択される。
【0124】
一実施形態では、生物は、酵母および真菌の群から、特に、アスペルギルス属(Aspergillus)(特に、クロコウジカビ(A.niger)およびA.ニデュランス(A.nidulans))ならびにアオカビ属(Penicillium)(特に、P.クリソゲヌム(P.chrysogenum))の群から選択される。
【0125】
一実施形態では、生物は植物、特に、アラビドプシス属(Arabidopsis)、より具体的には、シロイヌナズナ(A.thaliana)である。
【0126】
特定の実施形態では、生体触媒は、配列番号78〜81によって表されているような(アルデヒド基の酸化において触媒活性を有する)酵素またはそのホモログを含む。
【0127】
本発明の別の実施形態では、本発明による方法で作製されるAKPから調製される6−ACAは、ジアミノヘキサンに変換される。これは、酸基を還元してアルデヒド基を形成させ、このようにして形成されたアルデヒド基のアミノ基を転移させ、それによりアミノ基を生じさせて、ジアミノヘキサンを生じさせることによって達成することができる。これは、化学的にまたは生体触媒的に達成することができる。本発明の好ましい方法では、調製は、酸の還元を触媒して、アルデヒド基を形成させることができる生体触媒の存在下での生体触媒反応および/またはアミノ供与体、例えば、本明細書の別の場所に記載されているようなアミノ供与体の存在下で前記アミノ基転移を触媒することができる生体触媒の存在下での生体触媒反応を含む。
【0128】
酸基の還元を触媒して、アルデヒド基を形成させることができる生体触媒は、特に、オキシドレダクターゼ(EC 1.2.1)の群から、好ましくは、例えば、本明細書の別の場所に記載されているような生物に見られるアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.3、EC 1.2.1.4およびEC 1.2.1.5)の群から選択される酵素を含むことができる。前記アミノ基転移を触媒することができる生体触媒は、特に、例えば、本明細書の別の場所に記載されているような生物に見られるアミノトランスフェラーゼ(E.C.2.6.1)の群から選択される酵素を含むことができる。
【0129】
本発明による方法で得られる産物(例えば、AKP、6−ACA)は、必要に応じて、生体触媒から単離してもよい。好適な単離方法は、当技術分野でよく知られている方法論に基づくものであってもよい。
【0130】
本発明の方法における反応条件は、生体触媒、特に、酵素に関する既知の条件、本明細書に開示されている情報、および場合により、いくつかのルーチンの実験によって選ぶことができる。
【0131】
原則として、使用される反応媒体のpHは、生体触媒がそのpH条件下で活性を有する限り、広い限度内で選ぶことができる。生体触媒および他の因子に応じて、アルカリ性条件、中性条件または酸性条件を用いることができる。本方法が、例えば、本発明の方法を触媒する酵素を発現するための微生物の使用を含む場合、pHは、その微生物がその意図される1つまたは複数の機能を果たすことができるように選択される。本質的に25℃の水溶液系の場合、pHは、特に、中性pHよりも4単位低いpHと中性pHよりも2単位高いpH、すなわち、pH3〜pH9の範囲内で選ぶことができる。水が唯一の溶媒または主な溶媒(全液体ベースで、>50重量%、特に、>90重量%)である場合、系は水性であると考えられ、この場合、例えば、存在し得る微生物に活性があり続けるような濃度で、微量(全液体ベースで、<50重量%、特に、<10重量%)のアルコールまたは別の溶媒が(例えば、炭素源として)溶解していてもよい。特に、酵母および/または真菌を用いる場合、酸性条件が好ましい場合があり、特に、pHは、本質的に25℃の水溶液系をベースにして、pH3〜pH8の範囲であってもよい。必要に応じて、pHは、酸および/もしくは塩基を用いて調整するか、または酸と塩基の好適な組合せを用いて緩衝化してもよい。
【0132】
原則として、インキュベーション条件は、生体触媒が十分な活性および/または増殖を示す限り、広い限度内で選ぶことができる。これには、好気条件、微好気条件、酸素制限条件および嫌気条件が含まれる。
【0133】
嫌気条件は、本明細書では、酸素を全く含まないか、または生体触媒、特に、微生物によって酸素が実質的に消費されない条件であると定義され、通常、5mmol/l.h未満の酸素消費、特に、2.5mmol/l.h未満、または1mmol/l.h未満の酸素消費に相当する。
【0134】
好気条件は、無制限な増殖に十分なレベルの酸素が培地中に溶解しており、少なくとも10mmol/l.h、より好ましくは20mmol/l.hを上回る、さらにより好ましくは50mmol/l.hを上回る、および最も好ましくは100mmol/l.hを上回る酸素消費速度を支持することができる条件である。
【0135】
酸素制限条件は、酸素消費が気体から液体への酸素転移によって制限される条件であると定義される。酸素制限条件の下限は、嫌気条件の上限、すなわち、通常少なくとも1mmol/l.h、および特に、少なくとも2.5mmol/l.h、または少なくとも5mmol/l.hによって決定される。酸素制限条件の上限は、好気条件の下限、すなわち、100mmol/l.h未満、50mmol/l.h未満、20mmol/l.h未満、または10mmol/l.h未満によって決定される。
【0136】
条件が、好気的であるか、嫌気的であるか、または酸素制限的であるかは、その方法が実施される条件、特に、流入する気体流の量および組成、使用される機器の実際の混合/物質移動特性、使用される微生物の種類ならびに微生物密度によって決まる。
【0137】
本発明の好ましい方法では、少なくともAKPの調製は発酵条件下で行なわれる。発酵条件という用語は、本明細書では、当技術分野で一般的であるような広い意味で用いられる。すなわち、この用語は、微生物を用いて目的の産物を調製する工業的方法を指すために用いられる。発酵条件下のそのような方法は、好気的、嫌気的または酸素制限的環境で実施することができる。この用語は、ある方法を、酵素が発現されている生物から単離された1つ以上の酵素を用いる生体触媒的方法と区別するために用いることができる。
【0138】
原則として、生体触媒、特に、酵素が実質的な活性を示す限り、使用される温度は重要ではない。通常、温度は、少なくとも0℃、特に、少なくとも15℃、より具体的には、少なくとも20℃であってもよい。望ましい最高温度は、生体触媒によって決まる。一般に、そのような最高温度は当技術分野で公知であり、例えば、市販の生体触媒の場合は製品データシートに示されており、またはそのような最高温度は、共通の一般知識および本明細書に開示されている情報に基づいてごく一般的に決定することができる。温度は通常、90℃以下、好ましくは70℃以下、特に50℃以下、またはより具体的には40℃以下である。
【0139】
特に、生体触媒反応を宿主生物の外で行なう場合、有機溶媒を含む反応媒体中で十分な活性を保持する酵素を用いるときには、そのような媒体を高濃度(例えば、50%超、または90重量%超)で用いることができる。
【0140】
本発明の方法における反応工程を触媒するための1つ以上の酵素を含む異種細胞は、当技術分野でそれ自体公知の分子生物学的技術を用いて構築することができる。例えば、そのような技術を用いて、前記生体触媒の1つまたは複数をコードする1つ以上の遺伝子を含むベクターを提供することができる。そのような遺伝子の1つまたは複数を含むベクターは、1つ以上の調節エレメント、例えば、生体触媒をコードする遺伝子に機能的に連結され得る1つ以上のプロモーターを含むことができる。
【0141】
本明細書で使用する場合、「機能的に連結されている」という用語は、機能的な関係にあるポリヌクレオチドエレメント(またはコード配列もしくは核酸配列)の連結を指す。核酸配列は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれているとき、「機能的に連結されている」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に機能的に連結されている。
【0142】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、遺伝子の転写開始部位の転写の方向に対して上流に位置する、1つ以上の遺伝子の転写を制御するように機能する核酸断片を指し、DNA依存的RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位ならびに、限定するものではないが、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびにプロモーターからの転写の量を直接的にまたは間接的に調節するように作用することが当業者に知られている任意の他のヌクレオチド配列を含む、任意の他のDNA配列の存在によって構造的に同定される。「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境および発生条件下で活性のあるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、環境または発生調節下で活性のあるプロモーターである。所与の(組換え)核酸またはポリペプチド分子と所与の宿主生物または宿主細胞との関係を示すために用いる場合の「相同な」という用語は、本来は、核酸またはポリペプチド分子が、同じ種、好ましくは同じ品種または株の宿主細胞または生物によって産生されることを意味するものと理解される。
【0143】
本発明の方法で用いられる酵素、特に、本明細書で上に記載したようなアミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼまたはデカルボキシラーゼをコードするヌクレオチド配列の発現を達成するために用いることができるプロモーターは、発現されるべき酵素をコードするヌクレオチド配列にとって天然のものであってもよいし、または機能的に連結されているヌクレオチド配列(コード配列)にとって異種のものであってもよい。プロモーターは、宿主細胞にとって相同なもの、すなわち、内在性のものであることが好ましい。
【0144】
(目的の酵素をコードするヌクレオチド配列にとっての)異種プロモーターを用いる場合、その異種プロモーターは、コード配列にとって天然のプロモーターよりも高い定常レベルの、コード配列を含む転写産物を産生することができる(または単位時間当たりに、より多くの転写産物分子、すなわち、mRNA分子を産生することができる)ことが好ましい。この文脈での好適なプロモーターには、構成的と誘導性の両方の天然プロモーターならびに当業者に周知の人工改変プロモーターが含まれる。
【0145】
「強力な構成的プロモーター」は、mRNAを天然の宿主細胞と比較して高い頻度でイニシエートさせるプロモーターである。グラム陽性微生物のそのような強力な構成的プロモーターの例としては、SP01−26、SP01−15、veg、pyc(ピルビン酸カルボキシラーゼプロモーター)、およびamyEが挙げられる。
【0146】
グラム陽性微生物の誘導性プロモーターの例としては、IPTG誘導性Pspacプロモーター、キシロース誘導性PxylAプロモーターが挙げられる。
【0147】
グラム陰性微生物の構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターの例としては、tac、tet、trp−tet、Ipp、lac、Ipp−lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara(PBAD)、SP6、λ−Pおよびλ−Pが挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
(糸状)真菌細胞のプロモーターは当技術分野で公知であり、例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼgpdAプロモーター、プロテアーゼプロモーター(例えば、pepA、pepB、pepC)、グルコアミラーゼglaAプロモーター、アミラーゼamyA、amyBプロモーター、カタラーゼcatRまたはcatAプロモーター、グルコースオキシダーゼgoxCプロモーター、β−ガラクトシダーゼlacAプロモーター、α−グルコシダーゼaglAプロモーター、翻訳伸長因子tefAプロモーター、キシラナーゼプロモーター(例えば、xlnA、xlnB、xlnC、xlnD)、セルラーゼプロモーター(例えば、eglA、eglB、cbhA)、転写調節因子のプロモーター(例えば、areA、creA、xlnR、pacC、prfTなど)または任意の他のものであってもよく、特に、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)で見ることができる。
【0149】
本発明はまた、AKPの調製、および場合により、AKPからのさらなる化合物、例えば、5−FVA、AAP、6−ACA、アジピン酸、ジアミノヘキサンまたはカプロラクタムの調製における少なくとも1つの反応工程を触媒することができる1つ以上の生体触媒を提供し得る新規の異種細胞に関する。本発明はまた、AKPの調製、および場合により、AKPからのさらなる化合物、例えば、5−FVA、AAP、6−ACA、アジピン酸、ジアミノヘキサンまたはカプロラクタムの調製における少なくとも1つの反応工程を触媒することができる1つ以上の酵素をコードする1つ以上の遺伝子を含む新規のベクターに関する。1つ以上の好適な遺伝子は、特に、本明細書において上で述べた酵素をコードする遺伝子の中から選択することができる。
【0150】
異種細胞は、特に、生体触媒を説明するときに上で述べたような細胞であることができる。
【0151】
特に、本発明による異種細胞は、2−ヒドロキシヘプタン二酸からのAKPの調製における反応工程を触媒することができる異種酵素をコードする(1つ以上のベクターの一部であってもよい)1つ以上の異種核酸配列を含む。
【0152】
さらなる実施形態では、細胞は、ヘプタン二酸からの2−ヒドロキシヘプタン二酸の調製を触媒する酵素をコードする核酸配列を含む。さらに、そのような細胞は、炭素源からのヘプタン二酸の調製を触媒するための酵素系をさらに含むことができる。
【0153】
さらなる実施形態では、本発明による異種細胞は、AKPからAAP、6−ACA、5−FVA、カプロラクタム、ジアミノヘキサン、またはアジピン酸への変換を触媒するための酵素をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む。そのような酵素をコードする核酸配列の存在は、細胞が、AKPからのさらなる産物、例えば、6−ACA、カプロラクタム、ジアミノヘキサンまたはアジピン酸へとさらに変換され得る5−FVAまたはAAPを調製するために用いられることが意図される場合に特に望ましい。
【0154】
異種細胞は、AKP、5−FVA、AAP、6−ACA、カプロラクタム、ジアミノヘキサン、またはアジピン酸を何らかの望ましくない副産物に分解または変換することができるいかなる酵素も含まないことが望ましい。例えば、カプロラクタムまたはアジペート分解経路の一部としての何らかのそのような活性が同定された場合は、この活性を、本明細書において上で記載したように除去するか、低下させるかまたは改変することができる。
【0155】
望ましくない活性をコードする遺伝子の不活化は、いくつかの方法によって達成することができる。1つの手法は、アンチセンス分子またはRNAi分子を用いる一過性の手法(例えば、Kamath et al.2003.Nature 421:231−237に基づくもの)である。別の手法は、テトラサイクリンのような外部トリガーを用いてスイッチを切ることができる調節可能なプロモーター系を用いるもの(例えば、Park and Morschhauser,2005,Eukaryot.Cell.4:1328−1342に基づくもの)である。また別の手法は、化学的阻害剤またはタンパク質阻害剤または物理的阻害剤を適用すること(例えば、Tour et al.2003.Nat Biotech 21:1505−1508に基づくもの)である。非常に好ましい方法は、望ましくない活性をコードする遺伝子全体またはその一部を除去することである。細胞に望ましくない活性を発揮させないようにそのゲノムを改変するさらに好適な方法は、トランスポゾン挿入によって遺伝子を不活化することである。そのような突然変異体を得るために、単一交差組換えまたは二重相同組換えのような最先端の方法を適用することができる。このためには、宿主細胞の染色体の所定の標的遺伝子座に組み込まれ得る組込み型クローニングベクターを構築する必要がある。本発明の好ましい実施形態では、組込み型クローニングベクターは、この所定の遺伝子座へのクローニングベクターの組込みを標的化するために、宿主細胞のゲノムの所定の標的遺伝子座のDNA配列に相同なDNA断片を含む。標的化組込みを促進するために、宿主細胞の形質転換前に、クローニングベクターを線状化することが好ましい。線状化は、クローニングベクターの少なくとも1つの、しかし、好ましくは両方の末端に、標的遺伝子座に相同な配列が隣接するように行なわれることが好ましい。標的遺伝子座に隣接する相同な配列の長さは、好ましくは少なくとも0.1kb、さらに好ましくは少なくとも0.2kb、より好ましくは少なくとも0.5kb、さらにより好ましくは少なくとも1kb、最も好ましくは少なくとも2kbである。最終的に実験で最も好適な長さは、生物、標的DNAの配列および長さによって決まる。
【0156】
好ましくは宿主細胞の細胞質コンパートメントにおけるピメレートの供給は、前駆体分子からピメレートへの変換を触媒する酵素をコードする相同遺伝子および/または異種遺伝子を過剰発現させることによって増大させ得る。
【0157】
別の態様では、本発明は、本発明による前記化合物を産生することができる細胞(これは、真核細胞あっても別の細胞であってもよい)におけるAKPまたは6−ACAまたはそれらの中間体(例えば、ピメレートもしくはヒドロキシピメレート)の産生を増大させるためのプロセスであって、前記化合物を産生することができる真核細胞の集団に突然変異を誘発させることおよび突然変異体真核細胞の集団を増大した産生について選択することを含む、プロセスに関する。例えば、少なくとも1%のわずかな改善で、既に興味深い。突然変異誘発は、突然変異体真核細胞の集団の少なくとも10%が、真核細胞の出発集団と比較して増大した産生を示すように行なわれることが好ましい。
【0158】
突然変異誘発は、当技術分野で公知の様々な方法、例えば、紫外線(UV)突然変異誘発、電離放射または突然変異原とのインキュベーションによって行なうことができる。好適な突然変異原(mutagentia)は、メタンスルホン酸エチル(EMS)、硫酸ジエチル(DES)、メタンスルホン酸メチル(MMS)、硫酸ジメチル(DMS)、ニトロキノリンオキシド(NQO)、ニトロソグアニジン(NTG)、ナイトロジェンマスタード(HN2)、β−プロピオラクトン、亜硝酸、ニトロソイミダゾリドン(NIL)およびトリチウム化ウリジンである。好適な突然変異誘発時間は、共通の一般知識に基づいて、例えば、突然変異原(mutagent)および生物に応じて、決定することができる。上限は、死滅曲線によって決定することができる。曝露させすぎると、細胞が全て死滅する可能性がある。これを前提に、当業者は、好適な上限を決定することができ、それは、例えば、3時間以下、または1時間以下であることができる。突然変異誘発後、産生が増大した突然変異体真核細胞の集団を選択する。細胞の突然変異誘発および産生が増大した突然変異体真核細胞の集団の選択を1回以上繰り返す。
【0159】
さらに好ましい実施形態では、本発明による異種細胞は、配列番号:186、配列番号:186またはそれらのホモログによって表される酵素をコードする少なくとも1つの核酸配列を含み、この核酸配列は、特に、配列番号:185、配列番号:187、配列番号:188、配列番号:190およびそれらの機能的類似体の群から選択することができる。それに加えてまたはその代わりに、好ましい異種細胞は、配列番号:191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208に示されるようなアミノ酸配列またはこれらの配列のいずれかのホモログを含む酵素を含む。
【0160】
一実施形態では、異種細胞は、α−ケトピメリン酸アミノトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列および/またはα−アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列(を含む組換えベクター)を含む。
【0161】
一実施形態では、本発明による異種細胞は、AKPデカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列および/または5−FVAアミノトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む。一実施形態では、本発明による異種細胞は、α−アミノピメリン酸2−デヒドロゲナーゼもしくはAKPアミノトランスフェラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列および/またはα−アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む。
【0162】
一実施形態では、本発明による異種細胞は、6−アミノカプロン酸6−デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列および場合により、α−ケトピメリン酸デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む。
【0163】
一実施形態では、本発明による異種細胞は、AKP−デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列および/またはアジピン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む。
【0164】
本発明はさらに、配列番号:187、配列番号:190によって表されるような配列を含む核酸またはそれらの非野生型機能類似体に関する。
【0165】
次に、本発明を以下の実施例によって説明する。
【0166】
[実施例]
[パートA:AKPの調製に関する実施例]
[一般的方法]
[分子および遺伝学的技術]
標準的な遺伝学および分子生物学の技術は、一般に、当技術分野で公知であり、かつ以前に記載されている(Maniatis et al.1982 “ cloning:a laboratory manual”.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, N.Y.;Miller 1972 “Experiments in molecular genetics”,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor;Sambrook and Russell 2001 “Molecular cloning:a laboratory manual”(第3版),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press;F.Ausubel et al,編,“Current protocols in molecular biology”,Green Publishing and Wiley Interscience,New York 1987)。
【0167】
[プラスミドおよび株]
pMS470(Balzer,D.;Ziegelin,G.;Pansegrau,W.;Kruft,V.;Lanka,E.Nucleic Acids Research 1992,20(8),1851−1858.)およびpBBR1MCS(Kovach ME,Phillips RW,Elzer PH,Roop RM 2nd,Peterson KM.Biotechniques.1994 May;16(5):800−2.pBBR1MCS:宿主範囲の広いクローニングベクター)は、以前に記載されている。大腸菌(E.coli)株TOP10およびDH10B(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を全てのクローニング手順に用いた。大腸菌(E.coli)株BL21 A1(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)およびBL21(Novagen(EMD/Merck),Nottingham,UK)をタンパク質発現に用いた。
【0168】
pRS414、pRS415およびpRS416(Sikorski,R.S.and Hieter,P.A system of shuttle vectors and yeast host strains designed for efficient manipulation of DNA in Saccharomyces cerevisiae Genetics 122(1),19−27(1989);Christianson,T.W.,Sikorski,R.S.,Dante,M.,SheroJ.H.and Hieter,P.Multifunctional yeast high−copy−number shuttle vectors.Gene 110(1),119−122(1992))を出芽酵母(S.cerevisiae)での発現に用いた。出芽酵母(S.cerevisiae)株CEN.PK113−6B(ura3、trp1、leu2、MATa)、CEN.PK113−5D(ura3、MATa)、CEN.PK102−3A(ura3、leu2、MATa)およびCEN.PK113−9D(ura3、trp1、MATa)をタンパク質発現に用いた。
【0169】
[培地]
2×TY培地(16g/lのトリプトペプトン、10g/lの酵母抽出物、5g/lのNaCl)を大腸菌(E.coli)の増殖に用いた。大腸菌(E.coli)内でプラスミドを維持するために、抗生物質(100μg/mlのアンピシリン、50〜100μg/mlのネオマイシン)を補充した。大腸菌(E.coli)内での遺伝子発現の誘導のために、アラビノース(BL21−AI派生物の場合)およびIPTG(pMS470、pBBR1MCS派生物の場合)を0.02%(アラビノース)および0.2mM(IPTG)の最終濃度で用いた。
【0170】
4%のガラクトースを含むVerduyn培地を出芽酵母(S.cerevisiae)の増殖に用いた。
【0171】
[プラスミドの同定]
異なる遺伝子を有するプラスミドを、当技術分野で一般に知られている遺伝学的、生化学的、および/または表現型による手段、例えば、形質転換体の抗生物質に対する耐性、形質転換体のPCR診断解析またはプラスミドDNAの精製、精製プラスミドDNAの制限解析またはDNA配列解析によって同定した。記載した全ての新しいコンストラクトの完全性を制限消化によって確認し、PCR工程を含む場合は、さらにシークエンシングによって確認した。
【0172】
[α−ケト酸の測定のためのUPLC−MS/MS分析法]
表1に示すような勾配溶出によるα−ケト酸の分離のために、Waters HSS T3カラム1.8μm、100mm2.1mmを用いた。溶離液Aは、0.1%のギ酸を含有するLC/MS等級の水からなり、溶離液Bは、0.1%のギ酸を含有するアセトニトリルからなる。流速は0.25ml/分とし、カラムは40℃の温度に温度調節された。
【0173】
【表1】



【0174】
Waters micromass Quattro micro APIを、多重反応モニタリング(MRM)を用いて、分析しようとする化合物に応じて、ポジティブイオン化モードまたはネガティブイオン化モードのいずれかのエレクトロスプレーで用いた。イオン源温度を130℃に保持したのに対し、脱溶媒和温度は、流速500L/hrで、350℃とする。
【0175】
AKPについては、脱プロトン化分子を10〜14eVでフラグメント化して、例えば、HO、COおよびCOの損失から特定のフラグメントが得られた。
【0176】
濃度を決定するために、合成によって調製した化合物の標準曲線を作成して、それぞれのイオンの応答係数を算出した。これを用いて、未知サンプルの濃度を算出した。
【0177】
[2−ヒドロキシヘプタン二酸の合成]
本方法は、AKPから2−ヒドロキシヘプタン二酸(HPDA)を作製する方法を例示する(HPDAは、実験目的で用いるために合成された)。
【0178】
AKPの生体触媒的産生のための基質として用いるための2−ヒドロキシヘプタン二酸は、AKP(Syncomによって提供された)の水素化によって合成された。AKP(2.2g、12.6mmol)をメタノール(50mL)に溶解させ、これに30mgのパラジウム炭を添加し(Pd/C、5%)、30バールの水素圧下、50℃で48時間、オートクレーブに入れた。反応混合物を室温に到達させておき、その後、Celite(登録商標)上で濾過し、真空中で濃縮すると、表題化合物が油(2.2g、99%)として得られた。
【0179】
生成物をH−NMRおよび13C−NMRによって特徴付けた。
【0180】
H−NMR(300MHz,DMSO):δ4.02−3.98および3.92−3.89(dd,J=7.6Hz,J=4.8Hz,1H),2.28および2.18(t,J=7.2Hz,2H),1.66−1.28(m,6H) 13C−NMR(75MHz,DMSO):δ174.9,173.6,70.0,51.6,34.0,33.6,24.6。
【0181】
[実施例1:異種ヒドロキシ酸オキシダーゼを用いたpBAD−DEST Top10細胞の調製]
HAOX5B(配列番号:187)およびLAOX8C(配列番号:190)をDNA合成によって得た。Gateway技術(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いるクローニングを容易にするために、attB部位を、リボソーム結合部位および開始コドンの上流と終止コドンの下流とで全ての遺伝子に付加した。これらの遺伝子コンストラクトを、Gateway技術(Invitrogen)を用いて、導入されたattB部位および製造元のプロトコル(www.invitrogen.com)に記載されているようなエントリーベクターとしてのpDONR201(Invitrogen)を介してpBAD/Myc−His−DEST発現ベクターにクローニングした。このようにして、それぞれ、発現ベクターpBAD−Vfl_ATおよびpBAD−Bwe_ATを得た。それぞれのpBAD発現ベクターによる化学的にコンピテントな大腸菌(E.coli)TOP10(Invitrogen)の形質転換によって、対応する発現株を得た。
【0182】
[実施例2:タンパク質発現のための大腸菌(E.coli)の増殖]
実施例1で調製された細胞の小規模な増殖を、0.02%(w/v)のL−アラビノースを含有する940μlの培地を含む96ディープウェル中で行なった。96ウェルスタンプ(Kuehner,Birsfelden,Switzerland)を用いて凍結ストック培養物から細胞を移すことにより、播種を行なった。プレートをオービタルシェーカー(300rpm、5cm振幅)上にて25℃で48時間インキュベートした。通常、2〜4のOD620nmに到達させた。
【0183】
[実施例3:細胞ライセートの調製]
溶解バッファーは以下の成分を含有していた:
【0184】
【表2】



【0185】
この溶液を使用直前に新たに調製した。
【0186】
小規模増殖(実施例2参照)からの細胞を遠心分離で回収し、上清を捨てた。遠心分離の間に形成された細胞ペレットを−20℃で少なくとも16時間凍結させ、その後、氷上で融解させた。500μlの新たに調製された溶解バッファーを各ウェルに添加し、プレートを2〜5分間激しくボルテックス処理することによって細胞を再懸濁した。溶解を達成するために、プレートを室温で30分間インキュベートした。細胞破片を除去するために、プレートを4℃および6000gで20分間遠心分離した。上清(HAOX 5BまたはLAOX 8Cのいずれかのヒドロキシ酸オキシダーゼを含む)を新しいプレートに移し、さらに使用するまで氷上で保持した。
【0187】
[実施例4:AKPの酵素的調製]
2−ヒドロキシヘプタン二酸(最終濃度50mM、純度>95%、上記のように得られたもの)を、実施例3に記載されたように得られたヒドロキシ酸オキシダーゼ(HAOX 5BまたはLAOX 8Cのいずれか)と、以下のものを含有するバッファー溶液中で接触させた。
− 4−アミノアンチピリン(1mM)
− 3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゼンスルホン酸(DCHBS)(10mM)
− 50mMリン酸カリウムバッファー、pH7.5
− 西洋ワサビペルオキシダーゼ(200U/ml)
【0188】
反応液を37℃で20時間インキュベートした。サンプルを凍結させ、解析の前に、2分間加熱して95℃にし、タンパク質を沈殿させた。遠心分離後、上清をUPLC−MSで分析した。HAOX 5Bを含む試験由来のサンプル中のAKP濃度は、59mg/lであり、LAOX 8Cを含む試験由来のサンプル中のAKP濃度は、58mg/lであった。
【0189】
[実施例5:AKPからの5−FVAの酵素的調製]
5−FVAは、国際公開第2009/113855号パンフレットの実施例に記載されているように、AKPから調製することができる。
【0190】
100mMのリン酸カリウムバッファー、pH6.5中に50mMのAKP、5mMの塩化マグネシウム、100μΜのピリドキサル5’−リン酸(LysA用)または1mMのチアミン二リン酸(他の全ての酵素用)を含む反応混合物を調製した。4mlの反応混合物を反応容器に分注した。反応を開始させるために、超音波処理(sonification)で得られた1mlの無細胞抽出物を各々のウェルに添加した。市販のオキサロ酢酸デカルボキシラーゼ(Sigma−Aldrich製品番号04878)の場合、50Uを用いた。反応混合物を磁気撹拌子を用いて37℃で48時間インキュベートした。さらに、化学的ブランク混合物(無細胞抽出物を含まない)および生物学的ブランク(pBAD/Myc−His Cを有する大腸菌(E.coli)TOP10)を同じ条件下でインキュベートした。反応の間の異なる時点からのサンプルをHPLC−MSで分析した。結果を以下の表にまとめる。
【0191】
【表3】



【0192】
5−FVAがデカルボキシラーゼの存在下でAKPから形成されることが示されている。
【0193】
[実施例6:AKPからの6−ACAの酵素的調製]
6−ACAは、国際公開第2009/113855号パンフレットの実施例に記載されているように、AKPから調製することができる。
【0194】
100mMのリン酸カリウムバッファー、pH6.5中に50mMのAKP、5mMの塩化マグネシウム、100μΜのピリドキサル5’−リン酸(LysA用)または1mMのチアミン二リン酸(他の全ての試験された生体触媒用)を含む反応混合物を調製した。4mlの反応混合液を反応容器に分注した。反応を開始させるために、1mlの無細胞抽出物を各々のウェルに添加した。反応混合物を磁気撹拌子を用いて37℃で48時間インキュベートした。さらに、化学的ブランク混合物(無細胞抽出物を含まない)および生物学的ブランク(pBAD/Myc−His Cを有する大腸菌(E.coli)TOP10)を同じ条件下でインキュベートした。反応の間の異なる時点からのサンプルをHPLC−MSで分析した。結果を以下の表にまとめる。
【0195】
【表4】



【0196】
6−ACAがデカルボキシラーゼの存在下でAKPから形成されることが示されている。大腸菌(E.coli)が天然の5−FVAアミノトランスフェラーゼ活性を含有していたと考えられる。
【0197】
[実施例7 組換えデカルボキシラーゼおよび組換えアミノトランスフェラーゼの存在下でのAKPからの6−ACAの酵素的調製]
100mMのリン酸カリウムバッファー、pH6.5中に50mMのAKP、5mMの塩化マグネシウム、100μΜのピリドキサル5’−リン酸、1mMのチアミン二リン酸および50mMのラセミ型αメチルベンジルアミンを含む反応混合物を調製した。1.6mlの反応混合物を反応容器に分注した。反応を開始させるために、0.2mlのデカルボキシラーゼ含有無細胞抽出物および0.2mlのアミノトランスフェラーゼ含有無細胞抽出物を各々の反応容器に添加した。反応混合物を磁気撹拌子を用いて37℃で48時間インキュベートした。さらに、化学的ブランク混合物(無細胞抽出物を含まない)および生物学的ブランク(pBAD/Myc−His Cを有する大腸菌(E.coli)TOP10)を同じ条件下でインキュベートした。反応の間の異なる時点からのサンプルをHPLC−MSで分析した。結果を以下の表にまとめる。
【0198】
【表5】



【0199】
化学的ブランクおよび生物学的ブランクでは、6−ACAは検出されなかった。
【0200】
さらに、この結果は、組換えデカルボキシラーゼのみを有する(組換えアミノトランスフェラーゼは含まない)宿主細胞の例と比べて、6−ACAへの変換が改善されたことを示している。
【0201】
[実施例8 出芽酵母(S.cerevisiae)で共発現されたデカルボキシラーゼおよびアミノトランスフェラーゼの存在下におけるAKPから6−ACAへの変換の酵素的反応]
100mMのリン酸カリウムバッファー、pH6.5中に50mMのAKP、5mMの塩化マグネシウム、100μΜのピリドキサル5’−リン酸、1mMのチアミン二リン酸および50mMのラセミ型α−メチルベンジルアミンを含む反応混合物を調製した。1.6mlの反応混合物を反応容器に分注した。反応を開始させるために、デカルボキシラーゼおよびアミノトランスフェラーゼを含有する出芽酵母(S.cerevisiae)由来の0.4mlの無細胞抽出物を、各々の反応容器に添加した。反応混合物を磁気撹拌子を用いて37℃でインキュベートした。さらに、化学的ブランク混合物(無細胞抽出物を含まない)および生物学的ブランク(出芽酵母(S.cerevisiae))を同じ条件下でインキュベートした。インキュベーションしてから19時間後に採取したサンプルをHPLC−MSで分析した。結果を以下の表にまとめる。
【0202】
【表6】



【0203】
[実施例9 α−ケトピメリン酸からα−アミノピメリン酸への変換の酵素的反応]
50mMのリン酸カリウムバッファー、pH7.0中に10mMのα−ケトピメリン酸、20mMのL−アラニン、および50μΜのピリドキサル5’−リン酸を含む反応混合物を調製した。800μlの反応混合物をウェルプレートの各ウェルに分注した。反応を開始させるために、200μlの細胞ライセートを各々のウェルに添加した。反応混合物をシェーカー上にて37℃で24時間インキュベートした。さらに、化学的ブランク混合物(無細胞抽出物を含まない)および生物学的ブランク(pBAD/Myc−His Cを有する大腸菌(E.coli)TOP10)を同じ条件下でインキュベートした。サンプルをHPLC−MSで分析した。結果を以下の表にまとめる。
【0204】
【表7】



【0205】
AKPからのAAPの形成が生体触媒的に触媒されることが示されている。
【0206】
[実施例10 AAPからカプロラクタムへの化学的変換]
D,L−2−アミノピメリン酸1.5グラムのシクロヘキサノン懸濁液21mlに、シクロヘキサノン0.5mlを添加した。この混合物を油浴にて還流しながら20時間加熱した(約160℃)。室温に冷却した後、反応混合物をデカントで移し、透明な溶液を減圧下で蒸発させた。残りの2グラムの褐色の油をH−NMRおよびHPLCで分析したところ、これは、0.8wt%のカプロラクタムおよび6wt%のカプロラクタム環状オリゴマーを含有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−ケトピメリン酸を調製するための方法であって、2−ヒドロキシヘプタン二酸をα−ケトピメリン酸に変換する工程を含み、この変換が生体触媒を用いて触媒される、方法。
【請求項2】
前記生体触媒が、「供与体のCH−OH基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.1)」、「供与体のアルデヒドまたはオキソ基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.2)」、2−ヒドロキシピメリン酸デヒドロゲナーゼ活性を有する酵素、2−ヒドロキシピメリン酸オキシダーゼ活性を有する酵素、EC 1.97に分類されるオキシドレダクターゼ、およびEC 1.98に分類されるオキシドレダクターゼの群から選択される酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が、
− 酸素を受容体とするオキシドレダクターゼ(EC 1.1.3)、例えば、乳酸オキシダーゼまたは別のヒドロキシ酸オキシダーゼ;
− L−乳酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.27);
− ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ、β−ヒドロキシピルビン酸レダクターゼ;NADH:ヒドロキシピルビン酸レダクターゼおよびD−グリセリン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.81);
− リンゴ酸デヒドロゲナーゼ[NADP+]、NADP+−リンゴ酸酵素、NADP+−リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート);リンゴ酸NADPデヒドロゲナーゼ;NADP+リンゴ酸デヒドロゲナーゼ;NADP+−関連リンゴ酸デヒドロゲナーゼおよびリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(NADP+)(EC 1.1.1.82);
− 3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、β−イソプロピルリンゴ酸酵素;β−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ;トレオ−Ds−3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ、3−カルボキシ−2−ヒドロキシ− 4−メチルペンタン酸:NAD+オキシドレダクターゼ(EC 1.1.1.85);
− 酒石酸デヒドロゲナーゼ、メソ酒石酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.93);
− (R)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.98);
− (S)−2−ヒドロキシ−脂肪酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.99);
− 2−オキソアジピン酸レダクターゼ(EC 1.1.1.172)、2−ケトアジピン酸レダクターゼ、α−ケトアジピン酸レダクターゼ、2−ケトアジピン酸レダクターゼ
− 2−ヒドロキシグルタル酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.2);ならびに
− D−2−ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.99.6)
の群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素が、ヒト科(Hominidae)およびアエロコッカス属(Aerococcus)の群から;特に、ヒト亜科(Homininae)の群から、例えば、ヒト(Homo sapiens)から、およびアエロコッカス・ビリダンス(Aerococcus viridans)から選択される生物に由来する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
2−ヒドロキシヘプタン二酸がヘプタン二酸から調製される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ヒドロキシヘプタン二酸の調製が、
(Oを酸化体として)対供与体に作用し、酸素を取り込むかまたは還元するオキシドレダクターゼ(EC 1.14)、
CHまたはCH2基に作用するオキシドレダクターゼ(EC 1.17)
ピメリン酸ヒドロラーゼ活性を有するヒドロラーゼ(EC 3)ならびに
ピメリン酸−2−モノオキシゲナーゼ活性有するヒドロラーゼ(EC 3)
の群から選択される酵素を含む生体触媒によって触媒される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生体触媒が、配列番号186、配列番号189による配列またはそれらのホモログを含む酵素を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヘプタン二酸が、ピメレート合成経路の1つ以上の酵素を含む生体触媒を用いて調製され、前記ピメレート合成経路の1つ以上の酵素が、特に、BioI、BioZ、BioH、BioW、BioCなどの、ピメリル−CoAの生合成に関与する酵素の群から選択され得る、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酵素系が、細菌の群から、特に、エシェリキア属(Eschericia)およびバチルス属(Bacillus)の群から、より具体的には、大腸菌(Eschericia coli)およびバチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)から選択される生物に由来するものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
6−アミノカプロン酸を調製するための方法であって、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で調製されるα−ケトピメリン酸を6−アミノカプロン酸に変換することを含む、方法。
【請求項11】
アジピン酸を調製するための方法であって、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で調製されるα−ケトピメリン酸を生体触媒的に脱カルボキシル化し、それにより、5−ホルミルペンタン酸を形成させることと、
好ましくはアルデヒド還元によって、前記5−ホルミルペンタン酸をアジピン酸に変換することと
を含む、方法。
【請求項12】
前記方法が発酵条件下で実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
2−ヒドロキシヘプタン二酸からα−ケトピメリン酸への変換において触媒活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む、異種細胞。
【請求項14】
前記細胞が、ヘプタン二酸から2−ヒドロキシヘプタン二酸への変換において触媒活性を有する酵素をコードする核酸配列を含む、請求項13に記載の異種細胞。
【請求項15】
ピメレートを合成することができる生物のピメレート合成経路の酵素をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、請求項13または14に記載の異種細胞。
【請求項16】
α−ケトピメリン酸からの6−アミノカプロン酸の調製における反応工程を触媒することに関する触媒活性を有する酵素をコードする少なくとも1つの核酸配列、またはα−ケトピメリン酸からのアジピン酸の調製における反応工程を触媒することに関する触媒活性を有する酵素をコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、請求項13〜15のいずれか一項に記載の異種細胞。
【請求項17】
配列番号:186、189のいずれかによって表される酵素およびそれらのホモログをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む、請求項13〜16のいずれか一項に記載の異種細胞。
【請求項18】
前記細胞が、大腸菌(Escherichia coli)、アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アナベナ属の種(Anabaena sp.)、シネコシスティス属の種(Synechocystis sp.)、ミクロシスティス・アエルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)、デイノコッカス・ゲオテルマリス(Deinococcus geothermalis)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・スファエリクス(Bacillus sphaericus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・メタノリクス(Bacillus methanolicus)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ペニシリウム・クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum)、アオカビ(Penicillium notatum)、ペシロミセス・カルネウス(Paecilomyces carneus)、セファロスポリウム・アクレモニウム(Cephalosporium acremonium)、トウモロコシ黒穂菌(Ustilago maydis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・クルセイ(Candida crusei)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)の群から選択される生物に由来するものである、請求項13〜17のいずれか一項に記載の異種細胞。
【請求項19】
カプロラクタム、ジアミノヘキサンまたはアジピン酸の調製における請求項13〜18のいずれか一項に記載の異種細胞の使用。
【請求項20】
配列番号:187、配列番号:190によって表されるような配列を含む核酸またはその非野生型機能類似体。

【公表番号】特表2013−504320(P2013−504320A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528767(P2012−528767)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050573
【国際公開番号】WO2011/031146
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】